JP2003212693A - 酸化亜鉛の製造方法 - Google Patents

酸化亜鉛の製造方法

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智一郎 岡元
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 所定形状の酸化亜鉛結晶を再現性良く製造す
ることができ、特にレーザー発振素子として好適な酸化
亜鉛結晶を製造することができる酸化亜鉛の製造方法を
提供すること。 【解決手段】 金属を堆積させた酸化亜鉛材を通電加熱
することにより、前記金属と酸化亜鉛との間のテルミッ
ト反応を生じさせつつ、酸化亜鉛結晶を生成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスセンサや発振
素子、プローブ、ポジショナ、マイクロマシン部品等と
して好適に用いられる外形略六角柱状の酸化亜鉛単結晶
およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化亜鉛(ZnO)の電気的特性は、酸
化ビスマス(Bi)、二酸化チタン(TiO
等の各種添加物を加えた場合に非直線抵抗性が発現する
ことが知られており、この特性を活かして、酸化亜鉛
は、サージ吸収用の電子デバイスとして実用化されてい
る。一方、酸化亜鉛はバンドギャップが3.37eVで
あることから、光学的に、紫外レーザ発振子等としての
応用が注目される物質でもある。
【0003】このような酸化亜鉛の単結晶は、例えば、
「Crystal Shapes of Zinc Oxide Prepared by the Hom
ogeneous Precipitation Method,藤田ら、窯業協会
誌、92巻、4月号、227〜230頁、1984」に
記載されているように、均一沈殿法によれば、粒状、棒
状、針状の形態となることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記文
献に記載されている酸化亜鉛単結晶は、その大きさや形
状が不揃いであるために、例えば、先端を用いて機能性
素子を再現性良く作製するといった目的には、必ずしも
適しているとは言えない。そこで、形状の揃った酸化亜
鉛単結晶及びこのような単結晶を再現性良く製造するこ
とができる製造方法が必要とされていた。
【0005】また、酸化亜鉛単結晶については、ウィス
カとしてc軸方向に成長しやすいことが知られており、
酸化亜鉛ウィスカを原料の1つとした複合材料には、レ
ーザ発振を含めた新機能性、高機能性の発現が期待され
る。したがって、このような観点から、針状または棒状
の形状の整った酸化亜鉛単結晶には、種々の電子製品、
光学製品等への応用が期待される。
【0006】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、所定形状の酸化亜鉛結晶を再現性良く製造す
ることができ、特にレーザー発振素子として好適な酸化
亜鉛結晶を製造することができる酸化亜鉛の製造方法を
提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、金
属を堆積させた酸化亜鉛材を通電加熱することにより、
前記金属と酸化亜鉛との間のテルミット反応を生じさせ
つつ、酸化亜鉛結晶を生成させることを特徴とする酸化
亜鉛の製造方法を提供する。この場合に、前記酸化亜鉛
材は線材であることが好ましく、前記金属としてはアル
ミニウムを好適に用いることができる。
【0008】本発明によれば、酸化亜鉛材を通電加熱す
ることによりその表面で亜鉛蒸気が発生し、酸化亜鉛材
の上の金属の融点付近に達した際にはテルミット反応が
生じ、その発熱によって金属堆積部の温度が上昇すると
ともに、酸化亜鉛の一部が還元されて金属化して多量の
蒸気が生成、供給されるので、極めて大きな成長速度で
所定形状の酸化亜鉛の結晶を再現性良く成長させること
ができる。また、このようにして製造された酸化亜鉛結
晶は、所定の波長の発光を生じるものであり、レーザー
発振素子として好適である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。本発明では、金属を堆積させた酸化亜鉛材を通
電加熱することにより、前記金属と酸化亜鉛との間のテ
ルミット反応を生じさせつつ、酸化亜鉛結晶を生成させ
る。
【0010】酸化亜鉛材は、典型的には原料粉末を成形
した後、焼成して得られた酸化亜鉛焼結体で構成する。
原料粉末としては酸化亜鉛粉末が好適であるが、焼成し
た後に酸化亜鉛となるものであれば特に限定されない。
粉末の成形方法としては、押出成形法や射出成形法、プ
レス成形法等の従来公知の各種成形方法を用いることが
でき、酸化亜鉛粉末に、酸化ビスマスや二酸化チタン等
を添加してもよい。
【0011】酸化亜鉛材は線材であることが好ましい。
線材を得るためには、粉末の成形段階で線材状に成形し
てもよいし、成形体から加工により線材状のものを切り
出してもよく、また、焼結体に機械加工を施すことで線
材を得てもよい。酸化亜鉛材を線材とすることが好まし
い理由は、後述するように、その長さ方向に所定の電流
を流す場合に、断面積が大きい棒状や板状であると、よ
り大きな電流を流す必要が生じ、装置コストや安全性等
の点でデメリットが生ずるからである。
【0012】なお、酸化亜鉛材を焼結体とせず、酸化亜
鉛粉末の成形体の状態のまま用いることも可能である。
ただし、一般的に成形体では成形体を構成する粒子どう
しの結合が密でないために抵抗が極めて大きくなり、こ
れにより所定の電流を流すためには印加する電圧を大き
くしなければならなくなる問題を生ずる。
【0013】本発明においてはこのような酸化亜鉛材、
好適には酸化亜鉛線材を通電加熱するのであるが、その
ために酸化亜鉛材の端面に金属電極を形成し、通電試料
とする。そして、所定の雰囲気下で通電試料の電極間に
所定の電流を流すことによりジュール熱を発生させ、こ
のジュール熱により通電試料そのものを加熱する。金属
電極は、好ましくは、金(Au)、銀(Ag)、白金
(Pt)等の貴金属ペーストを塗布して、焼き付けるこ
とにより形成される。なお、スパッタ法等により形成す
ることも可能である。また、形成された金属電極には、
銀線や白金線等を用いてリード線を設けてもよい。ま
た、この際の通電は直流電源を用いても交流電源を用い
てもよい。
【0014】このような通電加熱に先だって、酸化亜鉛
材上に金属を堆積させる。金属の形態の制限はないが、
粉末状のものが好適である。この金属としては、空気中
で酸化亜鉛の線材がその融点付近まで加熱されるとテル
ミット反応(酸化還元反応)を生じるものが選択され、
このテルミット反応により酸化亜鉛結晶成長が促進され
る。
【0015】金属としては、このようにテルミット反応
を起すものであればいずれでも使用可能であるが、沸点
や還元力の観点からアルミニウム(Al)、マグネシウ
ム(Mg)、カルシウム(Ca)およびリチウム(L
i)などが好ましく、特にアルミニウムが好適である。
【0016】本発明における酸化亜鉛結晶の製造過程
は、酸化亜鉛材として線材を例にとり、金属としてアル
ミニウムを例にとると、以下のように考えられる。ま
ず、通電加熱により発生するジュール熱によって酸化亜
鉛線材が加熱され、温度が上昇する。アルミニウムの融
点660℃以下においては、まず自己が発する熱によっ
て酸化亜鉛中の酸素が抜け出し、試料表面付近が亜鉛リ
ッチな組成となり、ここで金属亜鉛は融点が419℃、
沸点が906℃であるため、加熱によって蒸発して試料
の表面近傍に亜鉛蒸気となって漂い、フランク機構、コ
ッセル機構に従って、この亜鉛蒸気が蒸発源よりも離れ
た温度の低い部分に凝縮することにより単結晶が成長す
るものと考えられる。そして、アルミニウム堆積部の線
材温度がアルミニウムの融点付近に達すると、テルミッ
ト反応が始まり、アルミニウムの酸化反応によって発生
する発熱によってアルミニウム堆積部の温度が上昇する
とともに、酸化亜鉛の一部が還元されて金属化して多量
の蒸気が生成、供給され、極めて大きな成長速度で酸化
亜鉛の結晶が成長する。条件によっては、巨大な酸化亜
鉛結晶の生成が認められる。
【0017】本発明においては、酸化亜鉛材のかさ密
度、電流密度、ガス雰囲気、さらには金属の堆積量や厚
さをコントロールすることによって、再現性の良い酸化
亜鉛の結晶を得ることが可能である。
【0018】本発明における通電加熱は酸素含有雰囲気
で行う。雰囲気中の酸素分圧(Po2)は少なくとも1k
Pa以上であることが好ましい。1kPa未満では金属
と反応する酸素が不足して、金属が単に溶融するだけ
で、酸化亜鉛の結晶群が十分成長しない。酸素分圧の上
限は特には存在しないが、酸素分圧が高すぎると金属と
酸素との反応が爆発的に進行し、金属が飛散してしまう
虞がある。より好ましくは5〜40kPaである。
【0019】また、電極間に流す電流値(電流密度)は
酸化亜鉛材の大きさやかさ密度にもよるが、酸化亜鉛線
材の場合には50〜150A/cm2が好ましい。酸化
亜鉛線材のかさ密度は、成形が可能であり、また通電が
可能である限り特に制限はない。
【0020】以上のようにして得られた酸化亜鉛の結晶
は、ウィスカー状、または、六角柱状で先端が六角錘で
ある結晶など各種の形態が認められ、条件を適宜設定す
ることによりこれらの形状の結晶を再現性良く得ること
ができる。本発明によって製造された酸化亜鉛結晶は、
紫外−紫色発光を生じるものであり、紫外レーザ発振素
子の用途としてその利用が有望視される。
【0021】
【実施例】純度99.999%の酸化亜鉛粉末を20M
Paの圧力で一軸プレス成形し、空気中、1000℃で
3時間焼成し、かさ密度が理論密度の約90%の焼結体
を得た。次に、この焼結体からダイヤモンドカッターを
用いて線材状試料(1mm×1mm×15mm)を切り
出し、その両端に銀ペーストと銀線を用いて電極端子を
形成して通電試料とし、水平に設置した。さらに、この
線材の中央部にアルミニウム粉末(添川理化学製、純度
99.9%)をおよそ0.5mmの厚さで堆積させた。
その際の状態を図1に示す。
【0022】電極端子に直流電源を接続し、電流密度7
0A/cm2、80A/cm2、100A/cm2とし、
空気中で通電を行った。通電試料の表面温度は、非接触
式赤外放射温度計により測定した。 線材の温度が66
0℃付近に達すると、アルミニウム堆積部の一部分がテ
ルミット反応による発熱のため発光し、その発光部分か
らZnO結晶群が成長した。その際のZnO結晶群の拡
大写真を図2に示す。通電終了後の通電試料の表面に析
出、成長した結晶群を光学顕微鏡によって観察した。そ
の際のZnO結晶群の光学顕微鏡写真を図3に示す。
【0023】さらに得られたZnO結晶群についてPL
(Photoluminescence)測定を行った。PL測定に際し
ては、励起光源としてビーム径がφ1.2mmのHe−
Cdレーザー(325nm、27mW)を用いた。図4
にZnO結晶群の先端部のPL特性を示した。図中、
(a)は70A/cm2、(b)は80A/cm2
(c)は100A/cm2の場合の先端部のPLスペク
トルである。この図に示すように、ZnO単結晶の先端
において、390nm付近をピーク波長とする紫外−紫
発光が観測された。目視でも鮮明に確認できるほどの発
光であった。以上から、本発明の酸化亜鉛結晶が紫外レ
ーザ発振素子として利用可能であることが確認された。
【0024】
【発明の効果】上述説明したように、本発明によれば、
所定形状の酸化亜鉛結晶を再現性よく製造することがで
き、特にレーザー発振素子として好適な酸化亜鉛結晶を
製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の方法を説明するための図。
【図2】本発明の実施例によって得られた酸化亜鉛結晶
群を拡大して示す写真。
【図3】本発明の実施例によって得られた酸化亜鉛結晶
群を示す光学顕微鏡写真。
【図4】本発明の実施例によって得られた酸化亜鉛結晶
のPL特性を示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 根崎 大 新潟県長岡市希望が丘1−534 (72)発明者 岡元 智一郎 新潟県長岡市深沢町1769−1 (72)発明者 松浦 茂 千葉県佐倉市大作二丁目4番2号 太平洋 セメント株式会社中央研究所内 (72)発明者 小川 賢治 千葉県佐倉市大作二丁目4番2号 太平洋 セメント株式会社中央研究所内 Fターム(参考) 4G047 AA02 AB01 AC03 AD04 4G077 AA04 AA10 BB07 CA01 CA02 EJ10 HA02 HA20 JA06

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属を堆積させた酸化亜鉛材を通電加熱
    することにより、前記金属と酸化亜鉛との間のテルミッ
    ト反応を生じさせつつ、酸化亜鉛結晶を生成させること
    を特徴とする酸化亜鉛の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記酸化亜鉛材は線材であることを特徴
    とする請求項1に記載の酸化亜鉛の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記金属がアルミニウムであることを特
    徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化亜鉛の製
    造方法。
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