JP2003207620A - 偏光板、製造方法及び液晶表示装置 - Google Patents

偏光板、製造方法及び液晶表示装置

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JP2003207620A
JP2003207620A JP2002003398A JP2002003398A JP2003207620A JP 2003207620 A JP2003207620 A JP 2003207620A JP 2002003398 A JP2002003398 A JP 2002003398A JP 2002003398 A JP2002003398 A JP 2002003398A JP 2003207620 A JP2003207620 A JP 2003207620A
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group
polarizing plate
polarizing
stretching
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JP2002003398A
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Hiromune Kitakoji
裕宗 北小路
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐久性、特に紫外線照射耐久性及び反り返り抑
制に優れた偏光板、更には偏光板打ち抜き工程における
得率を向上することができるロール形態の偏光板を提供
する。 【解決手段】偏光膜80の少なくとも片面に保護膜70
が被覆された偏光板であって、保護膜70の遅相軸71
と偏光膜80の吸収軸81との角度が10°以上90°
未満であり、偏光膜80と保護膜70を接着する層74
が、紫外線吸収剤及び水溶性の接着剤を含有することを
特徴とする偏光板。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐久性(特に紫外
線照射耐久性及び反り返り抑制)に優れた偏光板、その
製造方法及びそれを用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】偏光板は液晶表示装置(以下、LCD)
の普及に伴い、需要が急増している。偏光板は一般に、
偏光能を有する偏光膜の両面あるいは片面に、接着剤層
を介して保護膜(保護フィルム)を貼り合わせられてい
る。この接着剤層の中に紫外線吸収剤を添加させること
によって、偏光板に紫外線カット機能を付与させる技術
が、特開昭61−88204号公報に記載されている。
しかしこの技術のみでは、紫外線耐久性を持たせること
ができるが、反りの問題が解決できていなかった。
【0003】一方、偏光膜の素材としてはポリビニルア
ルコール(以下、PVA)が主に用いられており、PV
Aフィルムを一軸延伸してから、ヨウ素あるいは二色性
染料で染色するかあるいは染色してから延伸し、さらに
ホウ素化合物で架橋することにより偏光膜が形成され
る。偏光膜は、通常連続フィルムの走行方向(長手方
向)に沿って延伸(縦延伸)して製造されるため、偏光
膜の吸収軸は長手方向にほぼ平行となる。これに対し
て、偏光膜の少なくとも片面に貼り合わされる保護膜
は、複屈折率を持つと、偏光の状態を変えてしまうた
め、レタデーションが低いことが望まれる。しかしなが
ら、それでもレタデーションが環境温湿度に依存して増
加する問題があるため、従来は保護膜の遅相軸と偏光膜
の透過軸が垂直になるように(すなわち、保護膜の遅相
軸と偏光膜の吸収軸が平行になるように)貼り合わせる
ことで対策としていた。
【0004】他方、従来のLCDにおいては、画面の縦
あるいは横方向に対して偏光板の透過軸を45゜傾けて
配置しているため、上記の通り、偏光膜を縦延伸又は横
延伸して製造していたのでは、ロール形態で製造される
偏光板の打ち抜き工程において、ロール長手方向に対し
45゜方向に打ち抜く必要があったが、この場合、得率
が小さくなる、あるいは合わせ後の偏光板は材料の再利
用が難しく、結果として廃棄物が増えると言う問題があ
ったため、これを解決するために、フィルム搬送方向に
対しポリマーの配向軸を所望の角度傾斜させて偏光膜を
得る方法が提案されている(特開2000−9912号
公報、特開平3−182701号)。これらの方法によ
り、長手方向に対して平行でない吸収軸をもつ偏光膜が
理論的には得られるが、いずれもプラスチックフィルム
を延伸するに際して、フィルム進行速度がフィルムの左
右で変わるためフィルムにツレ、シワが生じてしまうた
め、望ましい傾斜角度(偏光板においては45゜)を有
する偏光膜を製造することが非常に困難であり、実用化
には至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上のような従来技術
が知られる中、本発明者らは、耐久性、特に紫外線照射
耐久性及び反り返り抑制に優れた偏光板及びそれを用い
た液晶表示装置を提供することを目的とするものであ
る。本発明の更なる目的は、耐久性に優れるとともに、
偏光板打ち抜き工程における得率を向上することができ
るロール形態の偏光板を提供することにある。本発明の
他の目的は、上記耐久性の優れた偏光板を容易に製造す
ることができる、斜め延伸法を利用した製造方法を提供
することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題は、下記の構成
により解決されることが見出された。 1)偏光膜の少なくとも片面に保護膜が被覆された偏光
板であって、保護膜の遅相軸と偏光膜の吸収軸との角度
が10°以上90°未満であり、偏光膜と保護膜を接着
する層が、紫外線吸収剤及び水溶性の接着剤を含有する
ことを特徴とする偏光板。
【0007】2)ロール状の偏光板であって、延伸軸が
長手方向に平行でも垂直でもない偏光膜の少なくとも片
面に、延伸軸が長手方向に平行な保護膜を接着剤層を介
して貼り合わせてなることを特徴とする上記1)に記載
の偏光板。
【0008】3)該偏光膜を、連続的に供給されるポリ
マーフィルムの両端を保持手段により保持し、該保持手
段をフィルムの長手方向に進行させつつ張力を付与して
延伸する工程を含み、ポリマーフィルムの一方端の実質
的な保持開始点から実質的な保持解除点までの保持手段
の軌跡L1及びポリマーフィルムのもう一端の実質的な
保持開始点から実質的な保持解除点までの保持手段の軌
跡L2と、二つの実質的な保持解除点の距離Wが下記式
(1)を満たし、かつ左右のフィルム把持手段の長手方
向の搬送速度差が1%未満である延伸方法により製造す
ることを特徴とする上記1)または2)に記載の偏光板
の製造方法。 式(1) |L2−L1|>0.4W
【0009】4)上記1)〜3)のいずれかに記載の偏
光板を液晶セルの少なくとも片側に貼り合わせたことを
特徴とする液晶表示装置。
【0010】すなわち、接着剤層を用いて偏光膜の少な
くとも片面に保護膜を被覆するにあたり、保護膜の遅相
軸と偏光膜の吸収軸との角度が10°以上90°未満と
なるように貼り合わせることにより、従来の保護膜の遅
相軸と偏光膜の吸収軸が平行である偏光板に比して、そ
の収縮力が分散されることにより反り返りが抑制される
とともに、該保護膜の接着層中に紫外線吸収剤と水溶性
の接着剤を含有させることにより、紫外線照射耐久性が
格段と向上することが見出されたものである。具体的に
は、本発明の構成をとることにより、試験後の単板透過
率の減少が抑えられ、偏光度の変化幅を小さくすること
ができることができた。更に、寸度安定性も向上し、優
れた耐久性が総合的に達成される。
【0011】具体的には、図1において、吸収軸81を
有する偏光膜80の少なくとも片面に、遅相軸71を有
する保護膜70を、水溶性の接着剤及び紫外線吸収剤を
含有する接着層75を介して貼り合わせた偏光板85に
おいて、偏光膜の吸収軸81と保護膜の遅相軸71(す
なわち点線の71′)との角度θが、10°以上90°
未満であることを特徴とする。この範囲内において、優
れた耐久性を得ることができる。
【0012】なお、ここで言う偏光板には、ロール形態
の長尺の偏光板のみならず、LCD用に該長尺偏光板か
ら打ち抜かれた後のものをも含む。ここで、偏光板の吸
収軸と保護膜の遅相軸との角度については、偏光板の保
護膜と偏光膜とを引き離して、偏光板の吸収軸と保護膜
の遅相軸を測定することにより、吸収軸と遅相軸とのな
す角度を見積もることができる。
【0013】また、偏光膜の吸収軸は、該偏光板を吸収
軸既知の偏光板とクロスニコル状態で重ねたときに最大
の透過濃度を与える軸方向とする。また保護膜の遅相軸
は保護膜面内の屈折率を測定し、最大屈折率を与える軸
方向とする。偏光膜の吸収軸と保護膜の遅相軸との角度
とは該軸方向のなす角度を言い、10°以上90°未満
である。偏光膜の透過濃度は透過濃度計(例えばステー
タスMフィルターを装着したX Rite.310T
R)で測定でき、保護膜の屈折率は偏光解析計(例えば
島津製作所(株)製偏光解析計AEP−10)で測定で
きる。
【0014】更に、上記保護膜70の遅相軸71は、偏
光板の長手方向82又は横手方向83に平行であり、偏
光膜80の吸収軸81は、偏光板の長手方向82又は横
手方向83に対して好ましくは10°〜90°、より好
ましくは20°〜70°、更に好ましくは40°〜50
°、特に好ましくは44°〜46°である。
【0015】本発明の遅相軸を有する保護膜は、保護膜
用フィルムを延伸することにより遅相軸(延伸軸)を有
する保護膜として作成することができる。延伸方法とし
ては、延伸工程を設けて延伸する他に、かかる独立した
延伸工程を設けないで、保護膜用のフィルム乾燥後の後
加熱工程でロール長手方向に付加的にかかる張力により
延伸する場合も含む。
【0016】上記偏光板は、偏光膜及び保護膜を、上記
角度を形成するようにそれぞれ設計し、貼り合わせるこ
とで容易に得ることができるが、より好ましくは、図2
に記載するような、吸収軸(延伸軸)81が長手方向8
2に平行でも垂直でもない偏光膜(すなわち、斜め配向
した偏光膜)の少なくとも片面に、遅相軸71が長手方
向に平行な保護膜(好ましくは延伸軸71が長手方向に
平行な一軸延伸した保護膜)を貼り合わせてなるロール
形状の偏光板を用いることである。このように長手方向
に平行でも垂直でもない(好ましくは長手方向に45°
の)延伸軸を有する偏光膜に接着剤層を介して長手方向
に平行な延伸軸を有する保護膜を有するロール形態の偏
光板を作成すれば、これを図2に示すようにして偏光板
を打ち抜くことにより、偏光板打ち抜き工程における得
率を向上させることができる。
【0017】図2に示すような斜め配向した偏光膜は、
従来公知の方法を用いて製造することができるが、好ま
しくは、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を
保持手段により保持し、該保持手段をフィルムの長手方
向に進行させつつ張力を付与して延伸する方法であっ
て、ポリマーフィルムの一方端の実質的な保持開始点か
ら実質的な保持解除点までの保持手段の軌跡L1及びポ
リマーフィルムのもう一端の実質的な保持開始点から実
質的な保持解除点までの保持手段の軌跡L2と、二つの
実質的な保持解除点の距離Wが下記式(1)を満たし、
かつ左右のフィルム把持手段の長手方向の搬送速度差が
1%未満である延伸方法により製造することができる
(以下、この方法を特に、特定の斜め延伸法を称す
る)。このようにして得られる斜め延伸した偏光膜の少
なくとも片面に、長手方向に延伸軸を有するロール形状
の保護膜フィルムを連続的に貼り合わせることにより、
ロール形状の偏光板を更に効率的に製造することができ
る。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。 <保護膜>まず、偏光膜の少なくとも片面に貼り合わせ
られる保護膜(保護フィルム)について説明する。保護
膜の種類は特に限定されず、セルロースアセテート、セ
ルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネ
ート等のセルロースエステル類、ポリカーボネート、ポ
リオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル等を用いる
ことができる。
【0019】保護膜のレターデーション値が一定値以上
であると、偏光軸と保護膜の配向軸が斜めにずれている
ため、直線偏光が楕円偏光に変化し、好ましくない。こ
のため保護膜のレターデーションは低いことが好まし
い。一方、本発明に用いられる保護膜は寸度安定性を良
化する目的で長手方向に延伸されていることが好まし
く、ロール長手方向にレタデーションが発生する。よっ
て保護膜のレタデーションは10nm以下で0nmより
大きいことが好ましく、より好ましくは1nm以上5n
m以下である。このような低レターデーションを得るた
めには、保護膜として使用するポリマーはセルロースト
リアセテートが特に好ましい。また、ゼオネックス、ゼ
オノア(共に日本ゼオン(株)製)、ARTON(JS
R(株)製)のようなポリオレフィン類も好ましく用い
られる。その他、例えば特開平8−110402号又は
特開平11−293116号に記載されているような非
複屈折性光学樹脂材料が挙げられる。また、偏光板保護
膜として好ましいセルローストリアセテートフィルムの
物性値については、公開技法(公技番号2001−17
45)に記載されている。
【0020】特に本発明においては、偏光膜の吸収軸と
保護膜の遅相軸とが一致しておらず、複屈折率の問題が
顕在化し易いため、保護膜のレターデーション値が低い
ことが好ましい。特にこの観点から、本発明に適する保
護膜としては、セルロースアセテートフィルムが好まし
く、中でも、メチレンクロライド型セルローストリアセ
テート又は脱メチレンクロライド型セルローストリアセ
テートが好ましい。
【0021】メチレンクロライド型セルロースアセテー
トの酢化度は、59乃至62%(一般に、セルロースト
リアセテートとして分類されるもの)であることが好ま
しい。酢化度が59%以上であれば、若干の割合でプロ
ピオネート(セルローアセテートプロピオネート)やブ
チレート(セルロースアセテートブチレート)がアセテ
ートと混合した混合脂肪酸エステルとなっていてもよ
い。
【0022】メチレンクロライド型セルロースアセテー
トフイルムは、90℃、相対湿度5%で120時間処理
後の流延方向の収縮率と、90℃、相対湿度65%で1
20時間処理後の流延方向の収縮率とが、いずれも0.
3%以下である寸度安定性を有する。収縮率は、いずれ
も0.2%以下であることが好ましい。横方向(流延方
向に直交する方向)の収縮率も、同様に低い値であるこ
とが好ましい。ただし、後述する製造方法に従い、流延
方向の収縮率を低下させると、同時に横方向の収縮率の
値も同様に低下させることができる。収縮率は、以下の
ように測定する。試料の流延方向および横方向より、3
0mm幅×120mm長さの試験片を各3枚採取する。
試験片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔
に開ける。これを、23±3℃、相対湿度65±5%の
室内で3時間以上調湿する。自動ピンゲージ(新東科学
(株)製)を用いて、パンチ間隔の原寸(R1)を最小
目盛り1/1000mmまで測定する。次に試験片を9
0℃±1℃、相対湿度5%または65%の恒温器に吊し
て120時間熱処理し、23±3℃、相対湿度65±5
%の室内で3時間以上調湿後、自動ピンゲージで熱処理
後のパンチ間隔の寸法(R2)を測定する。そして、次
式により熱収縮率を算出することができる。
【0023】熱収縮率(%)={(R1−R2)/R1
×100 (N=3の平均値で表示)
【0024】メチレンクロライド型セルロースアセテー
トフイルムの厚さは、50乃至90μmであることが好
ましく、70乃至85μmであることがさらに好まし
く、77乃至82μmであることが最も好ましい。メチ
レンクロライド型セルロースアセテートフイルム中に
は、可塑剤、染料、その他の添加剤(例、紫外線吸収
剤、滑り剤、劣化防止剤)が含まれていてもよい。可塑
剤としては、リン酸エステル系可塑剤(例、トリフェニ
ルホスフェート、ジフェニルビフェニルフォスフェー
ト)およびカルボン酸エステル系可塑剤が代表的であ
る。リン酸エステル系可塑剤が好ましい。二種類以上の
可塑剤を併用してもよい。フイルム中の可塑剤の量は、
1乃至12質量%の範囲であることが好ましく、2乃至
11質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0025】メチレンクロライド型セルロースアセテー
トフイルムの製造方法には、メルトキャスト法とソルベ
ントキャスト法がある。メルトキャスト法では、加熱溶
融したセルロースアセテートを支持体上に流延し、冷却
することによりフイルムを形成する。ソルベントキャス
ト法では、セルロースアセテートを有機溶媒中に溶解し
た支持体上に流延し、乾燥することによりフイルムを形
成する。本発明では、ソルベントキャスト法によりフイ
ルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法
では、セルロースアセテートを有機溶媒中に溶解してド
ープを形成する。有機溶媒の例には、炭化水素(例、ベ
ンゼン、トルエン)、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロ
ロメタン、メチレンクロライド、クロロベンゼン)、ア
ルコール(例、メタノール、エタノール、ジエチレング
リコール)、ケトン(例、アセトン)、エステル(例、
酢酸エチル、酢酸プロピル)およびエーテル(例、テト
ラヒドロフラン、メチルセロソルブ)が含まれる。メチ
レンクロライドが最も好ましい。二種類以上の有機溶媒
を混合して用いてもよい。ドープ中のセルロースアセテ
ートの濃度は、一般に5乃至40質量%であり、好まし
くは10乃至35重量%である。ドープ中には、可塑剤
あるいは他の添加剤を加えてもよい。
【0026】得られたドープは、支持体上に流延し、フ
イルムを形成する。支持体としては、バンドを用いる方
法(バンド流延法)とドラムを用いる方法(ドラム流延
法)がある。バンド流延法については、特公昭39−2
9211号、同62−43848号および特開昭61−
100421号各公報に記載がある。ドラム流延法につ
いては、特開昭62−64514号および同62−11
5035号各公報に記載がある。次に、形成したフイル
ムを支持体から剥ぎ取る。本発明に従うフイルムを製造
するためには、フイルム中に有機溶媒が60質量%未満
の量で含まれている状態で、フイルムを支持体から剥ぎ
取ることが好ましい。剥ぎ取る際のフイルム中の有機溶
媒の量は、50質量%未満であることがより好ましく、
45質量%未満であることがさらに好ましく、40質量
%未満であることが最も好ましい。また、有機溶媒の残
留量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量
%以上であることがより好ましく、20質量%以上であ
ることがさらに好ましく、30質量%以上であることが
最も好ましい。フイルム中の有機溶媒の量を減少させる
ため、必要に応じて、支持体上でフイルムを乾燥させ
る。
【0027】剥ぎ取ったフイルムは、120乃至135
℃の温度で4分以上熱処理することにより、有機溶媒を
蒸発させて乾燥する。熱処理温度は、120乃至130
℃であることがさらに好ましく、125乃至130℃で
あることが最も好ましい。熱処理温度は、処理中に若干
変動してもよいが、変動幅が上記の温度範囲内となるよ
うに加熱手段を調整する。熱処理時間は、4分乃至30
分であることが好ましく、5分乃至20分であることが
さらに好ましく、6分乃至10分であることが最も好ま
しい。熱処理後のフイルム中の有機溶媒の残留量は、2
0質量%未満であることが好ましく、15質量%未満で
あることがより好ましく、10質量%未満であることが
さらに好ましく、5質量%未満であることが最も好まし
い。
【0028】フイルムの熱処理は、フイルムにかかる張
力(テンション)を8kg/100cm以下に調整しな
がら実施することが好ましい。熱処理においてフイルム
にかかる張力は、通常、フイルムの搬送装置(例えば、
ロール状フイルムを巻き取るローラー)によって発生す
る。従って、搬送装置の駆動機構を調節して、フイルム
にかかる張力を可能な限り低下させることが好ましい。
また、特別な搬送方法(例えば、エアーフローティング
法)を採用することにより、フイルムにかかる張力を低
下させることも可能である。フイルムにかかる張力は、
7kg/100cm以下であることがさらに好ましく、
6kg/100cm以下であることが最も好ましい。
【0029】以上の熱処理が終了してから、さらにフイ
ルムを乾燥してもよい(二次乾燥処理)。最終的に得ら
れるフイルム中の有機溶媒の量は、0.1乃至0.8質
量%であることが好ましい。製造したセルロースアセテ
ートフイルムは、様々な用途に用いられる。本発明に従
うセルロースアセテートフイルムは、偏光板保護膜とし
て特に有利に用いることができる。偏光板保護膜として
用いるセルロースアセテートフイルムには、前述した可
塑剤、紫外線吸収剤、滑り剤や劣化防止剤を添加するこ
とができる。偏光板の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二
色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜があ
る。いずれの偏光膜も、一般にポリビニルアルコール系
フイルムを用いて製造する。偏光板保護膜の上に、表面
処理膜を設けてもよい。表面処理膜の機能には、ハード
コート、防曇処理、防眩処理および反射防止処理が含ま
れる。
【0030】一方、好ましい脱メチレンクロライド型セ
ルロースアセテートは、2位、3位および6位のアセチ
ル置換度の合計が2.67以上であり、かつ2位および
3位のアセチル置換度の合計が1.97以下である。セ
ルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース
単位(下記)は、2位、3位および6位に遊離の水酸基
を有している。
【0031】
【化1】
【0032】脱メチレンクロライド型セルロースアセテ
ートは、これらの水酸基の一部または全部を酢酸により
エステル化したポリマーである。アセチル置換度は、2
位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースが
エステル化している割合(100%のエステル化は、
1.00)を意味する。2位および3位のアセチル置換
度の合計が1.97以下と規定されているため、2位、
3位および6位のアセチル置換度の合計は、2.67以
上かつ2.97以下となる。2位、3位および6位のア
セチル置換度の合計は、2.72以上であることが好ま
しく、2.77以上であることがさらに好ましい。2
位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67
であることは、平均酢化度58.5%に相当する。酢化
度は、セルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味し、
ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等
の試験方法)に従い、測定および計算できる。同様に、
2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.6
7以上と規定されているため、2位および3位のアセチ
ル置換度の合計は、1.67以上かつ1.97以下にな
る。2位および3位のアセチル置換度の合計は、1.9
6以下であることが好ましい。さらに、6位のアセチル
置換度は、0.70以上かつ1.00以下になる。6位
のアセチル置換度は、0.80以上かつ0.99以下で
あることが好ましく、0.85以上かつ0.98以下で
あることがさらに好ましい。
【0033】脱メチレンクロライド型セルロースアセテ
ートの製造に使用する有機溶媒の例には、ケトン、エス
テル、エーテル、炭化水素およびアルコールが含まれ
る。なお、技術的には、メチレンクロリドのようなハロ
ゲン化炭化水素は問題なく使用できるが、地球環境や作
業環境の観点では、有機溶媒はハロゲン化炭化水素を実
質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」
とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量
%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味す
る。また、製造したセルロースアセテートフイルムか
ら、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素が全
く検出されないことが好ましい。
【0034】有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエ
ーテル、炭素原子数が3乃至12のケトンおよび炭素原
子数が3乃至12のエステルから選ばれる溶媒を含むこ
とが好ましい。エーテル、ケトンおよびエステルは、環
状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエ
ステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−
COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機
溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコー
ル性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二
種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原
子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内
であればよい。
【0035】炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例
には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジ
メトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキ
ソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネ
トールが含まれる。炭素原子数が3乃至12のケトン類
の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケ
トン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメ
チルシクロヘキサノンが含まれる。炭素原子数が3乃至
12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピ
ルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテー
ト、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含ま
れる。メチルアセテート(酢酸メチル)を50質量%以
上含む酢酸メチル系有機溶媒が特に好ましく用いられ
る。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2
−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール
および2−ブトキシエタノールが含まれる。
【0036】特に好ましい有機溶媒は、互いに異なる三
種類の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が炭素原子
数が3乃至12のケトンおよび炭素原子数が3乃至12
のエステルから選ばれ、第2の溶媒が炭素原子数が1乃
至5の直鎖状一価アルコールから選ばれ、そして第3の
溶媒が沸点が30乃至170℃のアルコールおよび沸点
が30乃至170℃の炭化水素から選ばれる。第1の溶
媒のケトンおよびエステルについては、前述した通りで
ある。第2の溶媒は、炭素原子数が1乃至5の直鎖状一
価アルコールから選ばれる。アルコールの水酸基は、炭
化水素直鎖の末端に結合してもよいし(第一級アルコー
ル)、中間に結合してもよい(第二級アルコール)。第
2の溶媒は、具体的には、メタノール、エタノール、1
−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、
2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール
および3−ペンタノールから選ばれる。直鎖状一価アル
コールの炭素原子数は、1乃至4であることが好まし
く、1乃至3であることがさらに好ましく、1または2
であることが最も好ましい。エタノールが特に好ましく
用いられる。
【0037】第3の溶媒は、沸点が30乃至170℃の
アルコールおよび沸点が30乃至170℃の炭化水素か
ら選ばれる。アルコールは一価であることが好ましい。
アルコールの炭化水素部分は、直鎖であっても、分岐を
有していても、環状であってもよい。炭化水素部分は、
飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコール
の水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。
アルコールの例には、メタノール(沸点:64.65
℃)、エタノール(78.325℃)、1−プロパノー
ル(97.15℃)、2−プロパノール(82.4
℃)、1−ブタノール(117.9℃)、2−ブタノー
ル(99.5℃)、t−ブタノール(82.45℃)、
1−ペンタノール(137.5℃)、2−メチル−2−
ブタノール(101.9℃)およびシクロヘキサノール
(161℃)が含まれる。
【0038】アルコールについては、前記第2の溶媒の
定義と重複するが、第2の溶媒として使用するアルコー
ルとは異なる種類のアルコールであれば、第3の溶媒と
して使用できる。例えば、第2の溶媒として、エタノー
ルを使用する場合は、第2の溶媒の定義に含まれる他の
アルコール(メタノール、1−プロパノール、2−プロ
パノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペン
タノール、2−ペンタノールまたは3−ペンタノール)
を第3の溶媒として使用していもよい。炭化水素は、直
鎖であっても、分岐を有していても、環状であってもよ
い。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いる
ことができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽
和であってもよい。であることがさらに好ましい。炭化
水素の例には、シクロヘキサン(沸点:80.7℃)、
ヘキサン(69℃)、ベンゼン(80.1℃)、トルエ
ン(110.6℃)およびキシレン(138.4〜14
4.4℃)が含まれる。
【0039】三種混合溶媒中には、第1の溶媒が50乃
至95質量%含まれることが好ましく、60乃至92質
量%含まれることがより好ましく、65乃至90質量%
含まれることが更に好ましく、70乃至88質量%含ま
れることが最も好ましい。第2の溶媒は、1乃至30質
量%含まれることが好ましく、2乃至27質量%含まれ
ることがより好ましく、3乃至24質量%含まれること
がさらに好ましく、4乃至22質量%含まれることが最
も好ましい。第3の溶媒は、1乃至30質量%含まれる
ことが好ましく、2乃至27質量%含まれることがより
好ましく、3乃至24質量%含まれることがさらに好ま
しく、4乃至22質量%含まれることが最も好ましい。
さらに他の有機溶媒を併用して、四種以上の混合溶媒と
してもよい。四種以上の混合溶媒を用いる場合の4番目
以降の溶媒も、前述した三種類の溶媒から選択すること
が好ましい。前述した三種類の溶媒以外の溶媒して、炭
素原子数が3乃至12のエーテル類(例、ジイソプロピ
ルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、
1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒ
ドロフラン、アニソール、フェネトール)やニトロメタ
ンを併用してもよい。
【0040】有機溶媒の沸点は、20乃至300℃であ
ることが好ましく、30乃至200℃であることがより
好ましく、40乃至100℃であることがさらに好まし
く、50乃至80℃であることが最も好ましい。本発明
では、冷却溶解法により、以上のような有機溶媒中にセ
ルロースアセテートを溶解して、溶液を形成することが
好ましい。冷却溶解法は、膨潤工程、冷却工程および加
温工程からなる。なお、室温でセルロースアセテートを
溶解できる有機溶媒であっても、冷却溶解法によると迅
速に均一な溶液が得られるとの効果がある。以下、冷却
溶解法による溶液の調製から、フイルムの製造までの各
工程を順次説明する。
【0041】以下、メチレンクロライド型、及び脱メチ
レンクロライド型を含めたセルロースアセテートフィル
ムについて説明する。一般にセルロースアセテートの合
成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜1
90頁(共立出版、1968年)に記載されている。代
表的な合成方法は、無水酢酸−酢酸−硫酸触媒による液
相酢化法である。具体的には、木材パルプ等のセルロー
ス原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却した酢
化混液に投入して酢酸エステル化し、完全セルロースア
セテート(2位、3位および6位のアセチル置換度の合
計が、ほぼ3.00)を合成する。上記酢化混液は、一
般に、溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水酢
酸および触媒としての硫酸を含む。無水酢酸は、これと
反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よ
りも、化学量論的に過剰量で使用することが普通であ
る。酢化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水
酢酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のた
めに、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、
鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸
化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロ
ースアセテートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存
する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによ
り、ケン化熟成し、所望のアセチル置換度および重合度
を有するセルロースアセテートまで変化させる。所望の
セルロースアセテートが得られた時点で、系内に残存し
ている触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和す
るか、あるいは、中和することなく、水または希硫酸中
にセルロースアセテート溶液を投入(あるいは、セルロ
ースアセテート溶液中に、水または希硫酸を投入)して
セルロースアセテートを分離し、洗浄および安定化処理
によりセルロースアセテートを得る。
【0042】セルロースアセテートの合成方法では、2
位または3位のアセチル置換度の方が、6位のアセチル
置換度よりも高い値になる。そのため、2位および3位
のアセチル置換度の合計を2.97以下としながら、2
位、3位および6位のアセチル置換度の合計を2.67
以上とするためには、前記の反応条件を特別に調節する
必要がある。具体的な反応条件としては、硫酸触媒の量
を減らし、酢化反応の時間を長くすることが好ましい。
硫酸触媒が多いと、酢化反応の進行が速くなるが、触媒
量に応じてセルロースとの間に硫酸エステルが生成し、
反応終了時に遊離して残存水酸基を生じる。硫酸エステ
ルは、反応性が高い6位により多く生成する。そのた
め、硫酸触媒が多いと6位のアセチル置換度が小さくな
る。従って、セルロースアセテートを合成するために
は、可能な限り硫酸触媒の量を削減し、それにより低下
した反応速度を補うため、反応時間を延長することが好
ましい。セルロースアセテートの2位、3位および6位
のアセチル置換度は、セルロースアセテートをプロピオ
ニル化処理した後、13C−NMRによる測定によって求
めることができる。測定方法の詳細については、手塚他
(Carbohydr. Res. 273(1995)83-91)に記載がある。
【0043】好ましいセルロースアセテートフイルム
は、フイルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の
定義を有するセルロースアセテートからなることが好ま
しい。『実質的に』とは、ポリマー成分の90質量%以
上(好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98
質量%以上、最も好ましくは99質量%以上)を意味す
る。フイルムの製造の原料としては、セルロースアセテ
ート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の9
0質量%以上は、1乃至4mmの粒子径を有することが
好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が2乃
至3mmの粒子径を有することが好ましい。セルロース
アセテート粒子は、なるべく球形に近い形状を有するこ
とが好ましい。
【0044】[フイルム添加用微粒子]本発明のセルロ
ースアセテートフイルムは、1.0μm以下の平均粒子
径を有する微粒子を含むことが好ましい。微粒子は滑り
剤として機能して、フイルムの動摩擦係数を改善する。
微粒子としては、無機化合物を用いることが好ましい。
無機化合物の例には、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸
化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、
炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成
ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アル
ミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウム
が含まれる。二酸化ケイ素、二酸化チタンおよび酸化ジ
ルコニウムが好ましく、二酸化ケイ素が特に好ましい。
無機化合物の微粒子は、表面処理により粒子表面にメチ
ル基を導入することができる。例えば、酸化ケイ素の微
粒子をジクロロジメチルシランやビス(トリメチルシリ
ル)アミンで処理すればよい。
【0045】二酸化ケイ素の微粒子は、既に市販されて
いる(例、アエロジルR972TM、R972DTM、R9
74TM、R812TM、日本アエロジル(株)製)。ま
た、酸化ジルコニウムの微粒子にも市販品がある(例、
アエロジルR976TM、R811TM、日本アエロジル
(株)製)。微粒子の平均粒径は、1.0μm以下であ
ることが好ましい。平均粒径は0.1乃至1.0μmで
あることがさらに好ましく、0.1乃至0.5μmであ
ることが最も好ましい。微粒子は、セルロースアセテー
トに対して、0.005乃至0.3質量%の量で使用す
ることが好ましく、0.01乃至0.1質量%の量で使
用することがさらに好ましい。微粒子は、後述するフイ
ルムの製造工程のいずれの段階で添加してもよい。好ま
しくは、セルロースアセテートの有機溶剤溶液と類似の
組成の希釈溶液を作成し、希釈溶液中に微粒子を分散さ
せる。そして、有機溶剤溶液と微粒子を含む希釈溶液を
混合して、その混合液からフイルムを形成すると、微粒
子が均一に分散しているフイルムを製造することができ
る。
【0046】[可塑剤]セルロースアセテートフイルム
には、一般に可塑剤を添加する。可塑剤としては、リン
酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リ
ン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート、
トリクレジルホスフェート、オクチルジフェニルホスフ
ェート、トリエチルホスフェートおよびトリブチルホス
フェートが含まれる。カルボン酸エステルとしては、フ
タル酸エステル、クエン酸エステル、オレイン酸エステ
ルおよびリノール酸エステルが代表的である。フタル酸
エステルの例には、ジメチルフタレート、ジエチルフタ
レート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレ
ート、ジオクチルフタレートおよびジエチルヘキシルフ
タレートが含まれる。クエン酸エステルの例には、クエ
ン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸アセチルトリブ
チルが含まれる。オレイン酸エステルの例には、オレイ
ン酸ブチルが含まれる。その他のカルボン酸エステルの
例には、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフ
タリルブチルグリコレート、トリアセチン、リシノール
酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチルおよび種々のト
リメリット酸エステルが含まれる。可塑剤の添加量は、
一般にセルロースアセテートの量の0.1乃至40質量
%の範囲であり、1乃至20質量%の範囲であることが
さらに好ましい。
【0047】[劣化防止剤]劣化防止剤をセルロースア
セテートフイルムに添加してもよい。劣化防止剤の例に
は、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤
および酸捕獲剤が含まれる。劣化防止剤については、特
開平3−199201号、同5−1907073号、同
5−194789号、同5−271471号、同6−1
07854号の各公報に記載がある。特に好ましい劣化
防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(B
HT)を挙げることができる。劣化防止剤の添加量は、
セルロースアセテートフイルムの0.01乃至0.5質
量%であることが好ましく、0.05乃至0.2質量%
であることがさらに好ましい。
【0048】[紫外線吸収剤]セルロースアセテートフ
イルム中に、紫外線吸収剤を練り込んでもよい。紫外線
吸収剤は、セルロースアセテートフイルムの経時安定性
を向上させる。紫外線吸収剤は、可視領域に吸収を持た
ないことが望ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾフ
ェノン系化合物(例、2,4−ジヒドロキシベンゾフェ
ノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、
4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、
2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノ
ン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベ
ンゾフェノン)、ベントトリアゾール系化合物(例、2
−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾト
リアゾール、2−(2’−ヒドロキシ3’,5’−ジ−
t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−
ヒドロキシ−3’−ジ−t−ブチル−5’−メチルフェ
ニル)ベンゾトリアゾール)およびサリチル酸系化合物
(例、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチル)が用い
られる。紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアセテー
トフイルムに対して0.5乃至20質量%の範囲である
ことが好ましく、1乃至10質量%の範囲であることが
さらに好ましい。
【0049】[染料]セルロースアセテートフイルムに
染料を添加して、ライトパイピング現象を防止してもよ
い。染色の色相はグレーが好ましい。セルロースアセテ
ートフイルムの製造温度域での耐熱性に優れ、かつセル
ロースアセテートとの相溶性に優れた化合物を、染料と
して用いることが好ましい。二種類以上の染料を混合し
て用いてもよい。
【0050】[膨潤工程]膨潤工程においては、セルロ
ースアセテートと有機溶媒とを混合し、セルロースアセ
テートを溶媒により膨潤させる。膨潤工程の温度は、−
10乃至55℃であることが好ましい。通常は室温で実
施する。セルロースアセテートと有機溶媒との比率は、
最終的に得られる溶液の濃度に応じて決定する。一般
に、混合物中のセルロースアセテートの量は、5乃至3
0質量%であることが好ましく、8乃至20質量%であ
ることがさらに好ましく、10乃至15質量%であるこ
とが最も好ましい。溶媒とセルロースアセテートとの混
合物は、セルロースアセテートが充分に膨潤するまで攪
拌することが好ましい。攪拌時間は、10乃至150分
であることが好ましく、20乃至120分であることが
さらに好ましい。膨潤工程において、溶媒とセルロース
アセテート以外の成分、例えば、可塑剤、劣化防止剤、
染料や紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0051】[冷却工程]冷却工程においては、膨潤混
合物を−100乃至−10℃に冷却する。冷却温度は、
膨潤混合物が固化する温度であることが好ましい。冷却
速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分
以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であ
ることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましい
が、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000
℃秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用
的な上限である。冷却速度は、冷却を開始する時の温度
と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終
的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。な
お、特開平9−95544号、同9−95557号およ
び同9−95538号の各公報に記載の実施例は、3℃
/分程度の冷却速度である。冷却工程においては、冷却
時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用い
ることが望ましい。また、冷却時に減圧すると、冷却時
間を短縮することができる。減圧を実施するためには、
耐圧性容器を用いることが望ましい。具体的な冷却手段
としては、様々な方法または装置が採用できる。
【0052】例えば、膨潤混合物を攪拌しながら筒状の
容器内を搬送し、その容器の周囲から膨潤混合物を冷却
すると、迅速に且つ均一に膨潤混合物を冷却することが
できる。そのためには、筒状の容器、膨潤混合物を攪拌
しながら筒状の容器内を搬送するため容器内に設けられ
ている螺旋状の搬送機構、および容器内の膨潤混合物を
冷却するため容器の周囲に設けられている冷却機構から
なる冷却装置が好ましく用いられる。また、−105乃
至−15℃に冷却した溶媒を膨潤混合物に添加して、よ
り迅速に冷却することもできる。
【0053】さらに、−100乃至−10℃に冷却され
た液体中へ、膨潤混合物を直径が0.1乃至20.0m
mの糸状に押し出すことにより膨潤混合物することで、
さらに迅速に膨潤混合物を冷却することも可能である。
冷却に使用する液体については、特に制限はない。冷却
された液体中へ膨潤混合物を糸状に押し出すことにより
膨潤混合物を冷却する方法を用いる場合、冷却工程と加
温工程の間で、糸状の膨潤混合物と冷却用の液体とを分
離する工程を行なうことが好ましい。冷却工程におい
て、膨潤混合物が糸状にゲル化しているため、膨潤混合
物と冷却用の液体とを分離は簡単に実施できる。例え
ば、網を用いて、糸状の膨潤混合物を液体から取り出す
ことが可能である。網の代わりに、スリットまたは穴の
開いた板状物を用いてもよい。網や板状物の材料は、液
体に溶解しない材質であれば、特に制限はない。網や板
状物は、各種金属や各種プラスチック材料から製造する
ことができる。網の目の大きさ、スリットの巾や穴の大
きさは、糸状物の直径に応じて、糸状物が通過しないよ
うに調整する。また、糸状の膨潤混合物を冷却装置から
加温装置へ搬送するためのベルトを網状にして、分離と
搬送を同時に実施することもできる。
【0054】[加温工程]加温工程においては、冷却し
た膨潤混合物を0至200℃に加温する。加温工程の最
終温度は、通常は室温である。加温速度は、4℃/分以
上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさ
らに好ましく、12℃/分以上であることが最も好まし
い。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/
秒が理論的な上限であり、1000℃秒が技術的な上限
であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。加
温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度
との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達す
るまでの時間で割った値である。なお、特開平9−95
544号、同9−95557号および同9−95538
号の各公報に記載の実施例は、3℃/分程度の加温速度
である。加圧しながら加温すると、加温時間を短縮する
ことができる。加圧を実施するためには、耐圧性容器を
用いることが望ましい。なお、溶解が不充分である場合
は、冷却工程から加温工程までを繰り返して実施しても
よい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の
外観を観察するだけで判断することができる。具体的な
加温手段としては、様々な方法または装置が採用でき
る。
【0055】例えば、膨潤混合物を攪拌しながら筒状の
容器内を搬送し、その容器の周囲から膨潤混合物を加温
すると、迅速に且つ均一に膨潤混合物を加温することが
できる。そのためには、筒状の容器、膨潤混合物を攪拌
しながら筒状の容器内を搬送するため容器内に設けられ
ている螺旋状の搬送機構、および容器内の膨潤混合物を
加温するため容器の周囲に設けられている加温機構から
なる加温装置が好ましく用いられる。
【0056】また、加温された液体中へ、直径が0.1
乃至20.0mmの糸状の膨潤混合物を入れることによ
り膨潤混合物を加温することで、さらに迅速に膨潤混合
物を加温することも可能である。冷却工程において、膨
潤混合物を糸状に押し出す方法を採用した場合は、その
糸状の膨潤混合物を加温用の液体に投入すればよい。冷
却工程を糸状押し出し以外の方法で実施した場合は、加
温工程において冷却した膨潤混合物を加温用液体中へ糸
状に押し出す。なお、糸状押し出しを連続して実施する
場合は、製造したセルロースアセテート溶液を次の膨潤
混合物の加温用の液体として順次利用することができ
る。すなわち、製造し加温された状態のセルロースアセ
テート溶液中に、糸状の膨潤混合物を投入し、混合物を
迅速に加温してセルロースアセテート溶液を得る。
【0057】さらに、冷却した膨潤混合物を筒状の容器
内に導入し、容器内で膨潤混合物の流れを複数に分割
し、分割された混合物の流れの向きを容器内で回転さ
せ、この分割と回転とを繰り返しながら、容器の周囲か
ら膨潤混合物を加温することもできる。上記のように、
物質の流れを分割および回転させる仕切りが設けられた
容器は、一般に静止型の混合器として知られている。代
表的な静止型混合器であるスタチックミキサーTM(ケニ
ックス社)では、物質の流れを二つに分割して右回りに
180度回転させる右回りエレメントと、物質の流れを
二つに分割して左回りに180度回転させる左回りエレ
メントとが、容器内で交互に90度ずらして配列されて
いる。さらにまた、溶媒が沸騰しないように調整された
圧力下で、溶媒の沸点以上の温度まで膨潤混合物を加温
してもよい。温度は、溶媒の種類に応じて決定するが一
般に60乃至200℃である。圧力は、温度と溶媒の沸
点との関係で決定するが、一般に1.2乃至20kgw
/cm2 である。
【0058】[溶液製造後の処理]製造した溶液は、必
要に応じて濃度の調整(濃縮または希釈)、濾過、温度
調整、成分添加などの処理を実施することができる。添
加する成分は、セルロースアセテートフイルムの用途に
応じて決定する。代表的な添加剤は、可塑剤、劣化防止
剤(例、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性
化剤、酸捕獲剤)、染料および紫外線吸収剤である。さ
らに、この段階で前述した微粒子(好ましくは、微粒子
を分散したセルロースアセテートの希釈溶液)を添加す
ることが好ましい。
【0059】[フイルム製膜]以上の冷却溶解法による
セルロースアセテートの有機溶媒溶液(ドープ)の調製
は、通常のソルベントキャスト法における溶液調製(常
温または高温での攪拌)と全く異なるが、得られた溶液
からフイルムを製膜する工程は、通常のソルベントキャ
クト法と同様に実施できる。セルロースアセテート溶液
は、支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形
成する。流延前の溶液は、固形分量が18乃至35%と
なるように濃度を調整することが好ましい。支持体表面
は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。支持体と
しては、ドラムまたはバンドが用いられる。通常のソル
ベントキャスト法における流延および乾燥方法について
は、米国特許2336310号、同2367603号、
同2492078号、同2492977号、同2492
978号、同2607704号、同2739069号、
同2739070号、英国特許640731号、同73
6892号の各明細書、特公昭45−4554号、同4
9−5614号、特開昭60−176834号、同60
−203430号、同62−115035号の各公報に
記載がある。
【0060】支持体上に形成したセルロースアセテート
フイルムは、乾燥が終了する前(有機溶媒がフイルムの
30質量%以上)に支持体から剥離して、さらに乾燥す
ることが好ましい。そのためには、支持体上での溶液の
ゲル化が迅速に進行する必要がある。溶液のゲル化を促
進するためには、アルコール(前述した第3の溶媒)の
ような貧溶媒の使用が有効である。また、流延方法の改
良によりゲル化を促進することもできる。10℃以下に
冷却した支持体に溶液を流延すると、溶液のゲル化が促
進される(特公平5−17844号公報記載)。支持体
の冷却は、冷媒または冷風の使用により実施できる。支
持体を冷却する方法では、2秒以上乾燥風を用いて支持
体上のフイルムを乾燥してもよい。得られたフイルムを
支持体から剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐
次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させる
こともできる。30℃以上に加熱した支持体に溶液を流
延してから、支持体を20℃以下に冷却しても、溶液の
ゲル化が促進される(特開昭61−148013号、同
61−158413号の各公報記載)。支持体の加熱
は、支持体表面へのヒーター取り付け、熱風吹きつけや
ドラムへの温水通水ににより実施できる。溶液の流延直
後に速やかに温度を上昇させることが好ましい。そし
て、加熱の初期段階においては、溶媒の蒸発による多量
の潜熱を必要とする。そのため、加熱の初期段階では、
上記のような加熱手段に加えて、裏面からの熱風やヒー
ター(蒸気ヒーター、赤外線ヒーター)のような補助加
熱手段を併用することが好ましい。支持体の冷却は、放
冷の他、冷風吹きつけやドラムへの冷水通水のような強
制冷却により実施できる。
【0061】以上のように製造したセルロースアセテー
トフイルムには、AG(アンチグレアー)処理またはA
R(反射防止処理)を実施してもよい。特にAR処理を
用いると、フイルムの光透過率を3%程度改善すること
ができる。AR処理では、具体的にはフイルム上に反射
防止膜(単層、2層膜、あるいは3層以上の多層膜)を
設けて、反射損失を減少させる。反射防止膜の具体的な
素材については、薄膜ハンドブック(オーム社、昭和5
8年12月10日)の818〜821頁に記載がある。
【0062】[厚み方向のレターデーション]セルロー
スアセテートフイルムには、冷却溶解法により製造して
も厚み方向のレターデーション値が低く、本発明の偏光
板の保護膜として特に有効である。フイルムの厚み方向
のレターデーション値は、エリプソメーターを用いて測
定できる。具体的には、波長632.8nmにおけるレ
ターデーション値をエリプソメーター(例えば、偏光解
析計AEP−10:島津製作所(株)製)を用いてフイ
ルム面に垂直な方向に測定した結果およびフイルム面を
傾けながら同様に測定したレターデーション値の外挿値
から、下記式(4)により算出する。
【0063】式(4) 厚み方向のレターデーション値=[(nx+ny)/2−
z]×d(nm) 式中、nxはフイルム平面内のx方向の屈折率であり、
yはフイルム平面内のy方向の屈折率であり、nzはフ
イルム面に垂直な方向の屈折率であり、そしてdはフイ
ルムの厚みである。
【0064】本発明における保護膜の膜厚は特に限定さ
れないが、本発明の耐久性向上の観点からすれば、従来
のものよりも薄手の保護膜を用いることが可能である。
この場合、耐久性を維持しつつ、紫外線照射に対する偏
光性能の低下を有効に抑えることができる。本発明に用
いる保護膜の膜厚として、具体的には1μm〜350μ
mが好ましく、より好ましくは10μm〜100μmで
ある。
【0065】<偏光膜>次いで、本発明に用いられる偏
光膜について詳述する。本発明において、延伸される偏
光膜に用いられるポリマーフィルムに関しては特に制限
はなく、揮発性溶剤に可溶の適宜なポリマーからなるフ
ィルムを用いることができる。ポリマーの例としては、
PVA、ポリカーボネート、セルロースアシレート、ポ
リスルホンなどを挙げることができる。延伸前のフィル
ムの厚味も特に限定されないが、フィルム保持の安定
性、延伸の均質性の観点から、1μm〜1mmが好まし
く、20〜200μmが特に好ましい。
【0066】特に偏光膜に用いられるポリマーとしては
PVAが好ましく用いられる。PVAは通常、ポリ酢酸
ビニルをケン化したものであるが、例えば不飽和カルボ
ン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテ
ル類のように酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有して
も構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、
カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性
PVAも用いることができる。
【0067】PVAのケン化度は特に限定されないが、
溶解性等の観点から80〜100mol%が好ましく、
90〜100mol%が特に好ましい。またPVAの重
合度は特に限定されないが、1000〜10000が好
ましく、1500〜5000が特に好ましい。
【0068】PVAを染色して偏光膜が得られるが、染
色工程は気相または液相吸着により行われる。液相で行
う場合の例として、ヨウ素を用いる場合には、ヨウ素−
ヨウ化カリウム水溶液にPVAフィルムを浸漬させて行
われる。ヨウ素は0.1〜20g/l、ヨウ化カリウム
は1〜100g/l、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比
は1〜100が好ましい。染色時間は30〜5000秒
が好ましく、液温度は5〜50℃が好ましい。染色方法
としては浸漬だけでなく、ヨウ素あるいは染料溶液の塗
布あるいは噴霧等、任意の手段が可能である。染色工程
は、本発明の延伸工程の前後いずれに置いても良いが、
適度に膜が膨潤され延伸が容易になることから、延伸工
程前に液相で染色することが特に好ましい。
【0069】ヨウ素の他に二色性色素で染色することも
好ましい。二色性色素の具体例としては、例えばアゾ系
色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェ
ニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色
素、チアジン系色素、アントラキノン系色素等の色素系
化合物をあげることができる。水溶性のものが好ましい
が、この限りではない。又、これらの二色性分子にスル
ホン酸基、アミノ基、水酸基などの親水性置換基が導入
されていることが好ましい。二色性分子の具体例として
は、例えばシー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シ
ー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダ
イレクト.オレンジ72、シー.アイ.ダイレクト.レ
ッド 39、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シ
ー.アイ.ダイレクト.レッド 81、シー.アイ.ダ
イレクト.レッド 83、シー.アイ.ダイレクト.レ
ッド 89 、シー.アイ.ダイレクト.バイオレット
48、シー.アイ.ダイレクト.ブルー 67、シ
ー.アイ.ダイレクト.ブルー90、シー.アイ.ダイ
レクト.グリーン 59、シー.アイ.アシッド.レッ
ド 37等が挙げられ、さらに特開平1−161202
号、特開平1−172906号、特開平1−17290
7号、特開平1−183602号、特開平1−2481
05号、特開平1−265205号、特開平7−261
024号、の各公報記載の色素等が挙げられる。これら
の二色性分子は遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アン
モニウム塩、アミン類の塩として用いられる。これらの
二色性分子は2種以上を配合することにより、各種の色
相を有する偏光子を製造することができる。偏光素子ま
たは偏光板として偏光軸を直交させた時に黒色を呈する
化合物(色素)や黒色を呈するように各種の二色性分子
を配合したものが単板透過率、偏光率とも優れており好
ましい。
【0070】PVAを延伸して偏光膜を製造する過程で
は、PVAに架橋させる添加物を用いることが好まし
い。特に本発明の斜め延伸法を用いる場合、延伸工程出
口でPVAが十分に硬膜されていないと、工程のテンシ
ョンでPVAの配向方向がずれてしまうことがあるた
め、延伸前工程あるいは延伸工程で架橋剤溶液に浸漬、
または溶液を塗布して架橋剤を含ませるのが好ましい。
架橋剤としては、米国再発行特許第232897号に記
載のものが使用できるが、ホウ酸類が最も好ましく用い
られる。
【0071】また、PVA、ポリ塩化ビニルを脱水、脱
塩素することによりポリエン構造をつくり、共役二重結
合により偏光を得るいわゆるポリビニレン系偏光膜の製
造にも、本発明の延伸法は好ましく用いることができ
る。
【0072】本発明の偏光板は、偏光膜の少なくとも片
面に貼り合わされた保護膜(保護フィルム)が、保護膜
の遅相軸と偏光膜の吸収軸との傾斜角度が10°以上9
0°未満となるように貼り合わされているものであり、
該条件を満たせば、その貼り合わせ方法は特に限定され
ない。
【0073】<接着剤層>本発明において、偏光膜と保
護膜とを貼り合わせる接着剤層は、紫外線吸収剤と水溶
性接着剤を含有する。水溶性接着剤としては、PVA系
樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル
基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ
素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好
ましい。PVA系樹脂にホウ素化合物、ヨウ化カリウム
水溶液等を添加して用いてもよい。接着剤層の厚みは乾
燥後に0.01乃至10μmであることが好ましく、
0.05乃至5μmが特に好ましい。ここで、水溶性と
は、その化合物を水に添加したときに、温度などより容
易に溶解するもののことを意味する。因みに、親水性と
は単独では水中に溶解させることはできないが、少量の
溶剤などにより水中に分散することが可能な化合物を意
味することとする。
【0074】本発明に用いることが出来る紫外線吸収剤
としては、有機化合物であっても、無機化合物であって
も良い。有機の紫外線吸収剤にはポリマーも含まれる。
有機の紫外線吸収剤の場合、下記一般式(1)〜(8)
で表されるものが好ましい。
【0075】
【化2】
【0076】式(1)中、R11、R12、R13、R14及び
15はそれぞれ同じであっても異なっていてもよく水素
原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリ
ール基、アリールオキシ基、アルケニル基、ニトロ基、
アミノ基、カルボキシ基およびその塩、スルホ基および
その塩、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、
オキシカルボニル基、シアノ基、ヘテロ環基、スルホニ
ル基、スルフィニル基、アシルオキシ基、カルバモイル
基、スルファモイル基またはヒドロキシ基を表す。
【0077】
【化3】
【0078】式(2)中、R21及びR22はそれぞれ同じ
であっても異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原
子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキ
シ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチ
オ基、アミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、
カルバモイル基、スルファモイル基、カルボキシル基お
よびその塩、スルホ基およびその塩、スルホニル基、ア
シルオキシ基、アシル基またはオキシカルボニル基を表
す。Tはアリール基、ヘテロ環、アリールオキシ基を表
す。好ましくはTはアリール基である。
【0079】
【化4】
【0080】式(3)中、X31、Y31及びZ31は各々独
立に置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基、ア
ルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリ
ールチオ基、もしくはヘテロ環基を表す。但し、X31
31及びZ31のうち少なくとも一つは下記一般式(a)
を表す。
【0081】
【化5】
【0082】式(a)中、R31及びR32はおのおの独立
に水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアル
キル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ア
リールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、ア
リールチオ基、アミノ基、アシル基、ヒドロキシ基、オ
キシカルボニル基、カルバモイル基又はスルファモイル
基を表す。また、隣り合うR31及びR32が連結して環を
形成しても良い。
【0083】
【化6】
【0084】式(4)中、R41〜R44は同じでも異なっ
ていても良く、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、アル
キル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ
基、アルケニル基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基
およびその塩、スルホ基およびその塩、アルキルチオ
基、アリールチオ基、アシル基、オキシカルボニル基、
シアノ基、ヘテロ環基、スルホニル基、スルフィニル
基、アシルオキシ基、カルバモイル基、スルファモイル
基またはヒドロキシ基を表す。
【0085】
【化7】
【0086】式(5)中、Qはアリール基又は5若しく
は6員のヘテロ環を表し、R51は水素原子またはアルキ
ル基を表し、X51およびY51は各々シアノ基、−COO
52、−CONR5253、−COR52、−SO252
は−SO25253であり、R 52及びR53はそれぞれ水
素原子、アルキル基又はアリール基を表す。R52及びR
53のうちどちらか一方は水素原子であることが好まし
い。また、X51とY51は連結して5または6員環を形成
してもよい。X51、Y51がカルボキシル基の時、それら
は塩の形であっても良い。
【0087】
【化8】
【0088】式(6)中、R61及びR62は同じでも異な
っていても良く、それぞれ水素原子、アルキル基、アリ
ール基、または互いに連結して5または6員環を形成す
るのに必要な非金属原子群を表す。また、R61及びR62
のいずれかが窒素原子の隣のメチン基と結合して、5又
は6員環を形成しても良い。X61及びY61は同じでも異
なっていても良く、それぞれ一般式(5)におけるX51
及びY51と同義である。
【0089】
【化9】
【0090】式(7)中、R71〜R74はそれぞれ同じで
あっても異なっていても良く、水素原子、アルキル基、
アリール基を表し、R71とR74は一緒になって二重結合
を形成しても良く、R71とR74が一緒になって二重結合
を形成するときは、R72とR 73は連結してベンゼン環ま
たはナフタレン環を形成しても良い。R75はアルキル基
またはアリール基を表し、Z71は酸素原子、イオウ原
子、メチレン基、エチレン基、>N−R76または>C
(R77)(R78) を表し、R76はアルキル基またはアリー
ル基を表し、R77及びR78は同じでも異なっていても良
く、それぞれ水素原子またはアルキル基を表す。X71
びY71は同じでも異なっていても良く、それぞれ一般式
(5)におけるX51及びY51と同義である。nは0また
は1を表す。
【0091】
【化10】
【0092】式(8)中、R81〜R86はそれぞれ同じでも
異なっていても良く、水素原子、ハロゲン原子、アルキ
ル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、
アルケニル基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基およ
びその塩、スルホ基およびその塩、アルキルチオ基、ア
リールチオ基、アシル基、オキシカルボニル基、シアノ
基、ヘテロ環基、スルホニル基、スルフィニル基、アシ
ルオキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基または
ヒドロキシ基を表し、R87及びR88は同じでも異なって
いても良く、それぞれ水素原子、アルキル基またはアリ
ール基を表し、R87とR88で連結して5または6員環を
形成しても良い。
【0093】一般式(1)〜(8)および一般式(a)
において、R11〜R15、R21、R22、X31、Y31
31、R31、R32、R41〜R44、R51、R52、R53、R
61、R62、R71〜R78およびR81〜R88で表されるアル
キル基は、それぞれ炭素敷1〜20が好ましく、置換基
〔例えば、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲ
ン原子(例えば塩素、臭素、フッ素)、アルコキシ基
(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、オクチルオ
キシ、フエノキシエトキシ)、アリーロキシ基(例えば
フエノキシ)、エステル基(例えば、メトキシカルボニ
ル、エトキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、
ドデシルオキシカルボニル)、カルボニルオキシ基(例
えば、エチルカルボニルオキシ、ヘプチルカルボニルオ
キシ、フェニルカルボニルオキシ)、アミノ基(例え
ば、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミ
ノ)、アリール基(例えば、フェニル、トリル、4−メ
トキシフェニル)、カルボンアミド基(例えば、メチル
カルボニルアミド、フェニルカルボニルアミド)、カル
バモイル基(例えば、エチルカルバモイル、フェニルカ
ルバモイル)、スルホンアミド基(例えば、メタンスル
ホンアミド、ベンゼンスルホンアミド)、スルファモイ
ル基(例えば、ブチルスルファモイル、フェニルスルフ
ァモイル、メチルオクチルアミノスルホニル)、カルボ
キシル基、スルホン酸基〕を有していてもよい。具体的
には、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、n−
ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、t−ペン
チル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、t−オ
クチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル,オクタデシ
ル、ベンジル、フェネチル、シクロプロピル、シクロぺ
ンチル、シクロヘキシル、ビシクロ〔2,2,2]オクチル
等の基及び上述の置換基を有する基を挙げることができ
る。
【0094】R11〜R15、R21、R22、T、X31
31、Z31、R31、R32、R41〜R44、Q、R52
53、R61、R62、R71〜R78およびR81〜R88で表さ
れるアリール基は、それぞれ炭素数6〜10が好ましく、
置換基〔例えば アルキル基(メチル、エチル、プロピ
ル、iso−プロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチ
ル、ぺンチル、t−ペンチル、オクチル、デシル、ドデ
シル、テトラデシル、ヘキサデシル)及び前記のアルキ
ル基が有してもよい置換基として挙げた基〕を有してい
てもよい。アリール基として具体的には、フェニル、ナ
フチルを挙げることができる。R11〜R15、R21
22、R31、R32、R41〜R44およびR81〜R86で表さ
れるアルケニル基は、それぞれ炭素数3〜20が好まし
く、アリル、2−ブテニル、3−ブテニル、オレイルを挙
げることができ、これらは前記アルキル基が有してもよ
い置換基として挙げた基で置換されていてもよい。
【0095】R11〜R15、R21、R22、X31、Y31、Z
31、R31、R32、R41〜R44およびR81〜R86で表され
るアルコキシ基は、それぞれ炭素数1〜20が好ましく、
例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、イソブトキシ、
n−オクトキシ、イソオクトキシ、ドデシルオキシ、ベ
ンジルオキシ、オクタデシルオキシ等を挙げることがで
き、これらは前記したアルキル基が有してもよい置換基
として挙げた基で置換されていてもよい。R11〜R15
21、R22、T、X31、Y31、Z31、R31、R32、R41
〜R44およびR81〜R86で表されるアリールオキシ基
は、それぞれ炭素数6〜10が好ましく、例えばフェノキ
シ、ナフトキシを挙げることができ、これらは前記した
アリール基が有してもよい置換基として挙げた基で置換
されていてもよい。
【0096】R11〜R15、R21、R22、X31、Y31、Z
31、R31、R32、R41〜R44およびR81〜R86で表され
るアルキルチオ基は、それぞれ炭素数1〜20が好まし
く、例えば、メチルチオ、ヘキシルチオ、オクチルチ
オ、ヘキサデシルチオ等を挙げることができる。R11
15、R21、R22、X31、Y31、Z31、R31、R32、R
41〜R44およびR81〜R86で表されるアリールチオ基
は、それぞれ炭素数6〜10が好ましく、例えば、フェニ
ルチオ、ナフチルチオを挙げることができる。これらの
アルキルチオ基及びアリールチオ基は前記したアルキル
基又はアリール基が有してもよい置換基として挙げた基
で置換されていてもよい。
【0097】R11〜R15、R21、R22、X31、Y31、Z
31、R31、R32、R41〜R44およびR81〜R86で表され
るアミノ基は、それぞれ炭素数0〜40の置換または無置
換のアミノ基が好ましく、例えば無置換のアミノ、メチ
ルアミノ、ジメシルアミノ、ジエチルアミノ、オクチル
アミノ、ジヘキシルアミノ、ジステアリルアミノ、ジイ
ソブチルアミノ、アニリノ、ジフェニルアミノ、メチル
フエニルアミノ、ホルムアミド、アセチルアミノ、ヘキ
サノイルアミノ、デカノイルアミル、ステアロイルアミ
ノ、ベンゾイルアミノ、メタンスルホンアミド、エタン
スルホンアミド、ノナンスルホンアミド、ブタンスルホ
ンアミド、ドデカンスルホンアミド、オクタデカンスル
ホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、メトキシカルボ
ニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、カルバモイ
ルアミノ、シクロヘキシルカルバモイルアミノ、ジエチ
ルカルバモイルアミノ等を挙げることができ、前記した
アリール基が有してもよい置換基として挙げた基で置換
されていてもよい。
【0098】R11〜R15、R21、R22、R31、R32、R
41〜R44およびR81〜R86で表されるカルバモイル基
は、それぞれ炭素数1〜20が好ましく、例えば無置換の
カルバモイル、メチルカルバモイル、プロピルカルバモ
イル、ジエチルカルバモイル、オクチルカルバモイル、
ドデシルカルバモイル、ヘキサデシルカルバモイル、オ
クタデシルカルバモイル、フエニルカルバモイル等を挙
げることができ、前記したアリール基が有してもよい置
換基として挙げた基で置換されていてもよい。R11〜R
15、R21、R22、R31、R32、R41〜R44およびR81
86で表されるスルファモイル基は、それぞれ炭素数0
〜20が好ましく、無置換のスルファモイル、エチルスル
ファモイル、ブチルスルフアモイル、ヘプチルスルフア
モイル、テトラデシルスルフアモイル、ジブチルスルフ
アモイル、オクタデシルスルフアモイル、フエニルスル
フアモイル等を挙げることができ、前記したアリール基
が有してもよい置換基として挙げた基で置換されていて
もよい。
【0099】R11〜R15、R21、R22、R31、R32、R
41〜R44およびR81〜R86で表されるアシルオキシ基
は、それぞれ炭素数2〜20が好ましく、アセチルオキ
シ、ヘキサノイルオキシ、デカノイルオキシ、ステアロ
イルオキシ、ベンゾイルオキシ等を挙げることができ、
前記したアリール基が有してもよい置換基として挙げた
基で置換されていてもよい。R11〜R15、R21、R22
31、R32、R41〜R44およびR81〜R86で表されるオ
キシカルボニル基は、それぞれ炭素数2〜20が好まし
く、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキ
シカルボニル、イソブトキシカルボニル、ヘプチルオキ
シカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、オクタ
デシルオキシカルボニル、フエノキシカルボニル等を挙
げることができ、前記したアリール基が有してもよい置
換基として挙げた基で置換されていてもよい。R11〜R
15、R21、R22、R41〜R44およびR81〜R86で表され
るスルホニル基は、それぞれ炭素数1〜20が好ましく、
メタンスルホニル、ペンタンスルホニル、デカンスルホ
ニル、オクタデカンスルホニル、ベンゼンスルホニル等
を挙げることができ、前記したアリール基が有してもよ
い置換基として挙げた基で置換されていてもよい。
【0100】R11〜R15、R41〜R44およびR81〜R86
で表されるスルフィニル基は、それぞれ炭素数1〜20が
好ましく、メタンスルフィニル、ペンタンスルフィニ
ル、デカンスルフィニル、ヘキサデカンスルフィニル、
ベンゼンスルフィニル等を挙げることができ、前記した
アリール基が有してもよい置換基として挙げた基で置換
されていてもよい。R11〜R15、R21、R22、R31、R
32、R41〜R44およびR81〜R86で表されるアシル基
は、それぞれ炭素数1〜20が好ましく、アセチル、ブタ
ノイル、ピバロイル、オクタノイル、ヘキサデカノイ
ル、ベンゾイル等を挙げることができ、前記したアリー
ル基が有してもよい置換基として挙げた基で置換されて
いてもよい。
【0101】R11〜R15、R21、R22、R31、R32、R
41〜R44およびR81〜R86で表されるハロゲン原子とし
ては、フッ素、塩素、臭素等を挙げることができる。R
11〜R15、T、X31、Y31、Z31、R41〜R44、Qおよ
びR81〜R86で表されるヘテロ環としては、フラン、チ
オフェン、インドール、ピロール、ピラゾール、イミダ
ゾール、ピリジン等を挙げることができ、前記したアリ
ール基が有してもよい置換基として挙げた基で置換され
ていてもよい。
【0102】X51とY51、X61とY61、X71とY71が連
結して形成される5または6員環は、酸性核として知ら
れる環が好ましく、例えば2−ピラゾリン−5−オン、ピ
ラゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、ヒダントイ
ン、2−チオヒダントイン、4−チオヒダントイン、2,4
−オキサゾリジンジオン、イソオキサゾロン、バルビツ
ール酸、チオバルビツール酸、インダンジオン、ヒドロ
キシピリドン、フラノン、1,3−シクロヘキサンジオ
ン、メルドラム酸等を挙げることができ、前記アリール
基が有してもよい置換基として挙げた基で置換されてい
てもよい。R61とR62が連結して形成される5または6
員環としては、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンな
どを挙げることが出来る。
【0103】上記一般式一般式(1)〜(8)および一
般式(a)で表される紫外線吸収剤が水溶性である場合
には、イオン性親水性基を有することが好ましい。イオ
ン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホ
ノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオ
ン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、
およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スル
ホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基およびス
ルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオ
ンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン
(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイ
オン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニ
ウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラ
メチルホスホニウム)が含まれる。
【0104】上記一般式(1)〜(8)で表される紫外
線吸収剤のうち、紫外線吸収剤自身の光堅牢性が高いと
いう点から一般式(1)〜(4)で表されるものが好ま
しく、さらに吸収特性から(1)〜(3)で表されるも
のが好ましく、中でも(1)と(3)が特に好ましい。
一方、塩基性条件下で用いられる場合には、解離による
着色が生じない点から一般式(4)〜(8)の化合物が
好ましい。以下に一般式(1)〜(8)で表される紫外
線吸収剤の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定
されるものではない。
【0105】
【化11】
【0106】
【化12】
【0107】
【化13】
【0108】
【化14】
【0109】
【化15】
【0110】
【化16】
【0111】
【化17】
【0112】
【化18】
【0113】
【化19】
【0114】
【化20】
【0115】
【化21】
【0116】
【化22】
【0117】
【化23】
【0118】
【化24】
【0119】
【化25】
【0120】
【化26】
【0121】
【化27】
【0122】
【化28】
【0123】
【化29】
【0124】
【化30】
【0125】
【化31】
【0126】一般式(1)〜(8)で表される化合物
は、特公昭48−30492号、同55−36984号、同55−125875
号、同36−10466号、同48−5496号、特開昭46−3335
号、同58−214152号、同58−221844号、同47−10537
号、同59−19945号、同63−53544号、同51−56620号、
同53−128333号、同58−181040号、特開平6−211813
号、同7−258228号、同8−239368号,同8−53427号,同
10−115898号,同10−147577号,同10−182621号、特表
平8−501291号、米国特許第3,754,919号、同4,220,
711号、同2,719,086号、同3,698,707号、同3,70
7,375号、同5,298,380号、同5,500,332号、同5,5
85,228号、同5,814,438号、英国特許1,198,337
号、ヨーロッパ特許第323408A号、同520938A号、同5218
23A号、同531258A号、同530135A号、同520938A号等に記
載されているか又は記載の方法に準じて合成することが
できる。また、代表的な紫外線吸収剤の構造と、その物
性および作用機構については、Andreas Valet著 ”Ligh
t Stabilizers for Paint " Vincentz 出版 に記載が
有る。
【0127】高分子の紫外線吸収剤としては上記一般式
(1)〜(8)で表される化学構造をその構成単位、あ
るいは構成単位の一部として有する物が好ましい。一般
式(1)で表される化学構造を構成単位にもつ紫外線吸
収剤としては欧州特許747755号、特開平8-179464号、同
6-82962号、同4-193869号、同3-139590号、特開昭63-55
542号、同62-24247号、同47-560号、同58-185677号等
が、一般式(2)で表される化学構造を構成単位にもつ
紫外線吸収剤としては特開昭63-35660号、特開平2-1809
09号が、一般式(3)で表される化学構造を構成単位に
もつ紫外線吸収剤としては欧州特許706083号が、一般式
(5)で表される化学構造を構成単位にもつ紫外線吸収
剤としては、特表平4-500228号、特公昭63-53541号が、
一般式(6)で表される化学構造を構成単位にもつ紫外
線吸収剤としては欧州特許27242号、特公平1-53455号、
特開昭61-189530号が、一般式(7)で表される化学構
造を構成単位にもつ紫外線吸収剤としては特開昭63-535
43号がそれぞれ開示されており、さらに特開昭47-192
号、同61-169831号、同63-53543号、同63-53544号、同6
3-56651号、欧州特許343246号等が知られている。
【0128】無機化合物の紫外線吸収剤としてはドイツ
特許19511316号で開示されている酸化チタン微粒子分散
物や、酸化セリウムや酸化亜鉛等の金属酸化物微粒子分
散物を用いることができる。
【0129】本発明の紫外線吸収剤剤は、媒体中に溶解
もしくは分散して添加することが出来る。媒体に対して
溶解性を有する場合には、本発明の化合物を直接添加す
ることが出来る。一方、溶解性がない場合、例えば本発明
のように水溶性の媒体を用いる場合で油溶性紫外線吸収
剤を使用する場合には、米国特許2,322,027号
に記載の方法などが用いられる。例えば、フタール酸ア
ルキルエステル(ジブチルフタレート、ジオクチルフタ
レートなど)、リン酸エステル(ジフェニルホスフェー
ト、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェ
ート、ジオクチルブチルホスフェートなど)、クエン酸
エステル(アセチルクエン酸トリブチルなど)、安息香
酸エステル(安息香酸オクチルなど)、アルキルアミド
#(ジエチルラウリルアミドなど)、脂肪酸エステル類
(ジブトキシエチルサクシネート、ジエチルアゼレート
など)、トリメシン酸エステル類(トリメシン酸トリブ
チルなど)など、又は沸点約30℃ないし150℃の有
機溶剤、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルのごとき低級ア
ルキルアセテート、プロピオン酸エチル、2級ブチルア
ルコール、メチルイソブチルケトン、β−エトキシエチ
ルアセテート、メチルセロソルブアセテートなどに溶解
した後親水性コロイドに分散される。上記高沸点溶媒と
低沸点溶媒とは混合してもよい。また、特公昭51−3
9853号、特開昭51−59943号に記載されてい
る重合物による分散法も使用することができる。疎水性
化合物をオイル組成物又はポリマー組成物の形で感光材
料に添加する具体的方法については特開平7−9261
3号に記載された方法を適用できる。
【0130】<貼り合わせ方法>偏光膜と保護膜の貼り
合わせ方法としては、例えば、通常の長手方向に延伸し
た偏光膜と保護膜とをそれぞれ打ち抜いた後、偏光膜の
吸収軸と保護膜の遅相軸との角度が上記の通りになるよ
うに貼り合わせる方法が挙げられる。更には、偏光膜又
は保護膜の少なくとも何れか一方として、遅相軸又は吸
収軸が長手方向に対して平行でも垂直でもないものを用
いることにより、予め偏光板と保護膜とを打ち抜くこと
なく、それぞれロール形状のまま保護膜と偏光膜とを貼
り合わるだけで、軸同士がつくる角度が平行でない本発
明の偏光板を得ることができるため好ましい。特に、偏
光膜の吸収軸がが長手方向に対して平行でも垂直でもな
いことが好ましい。更に、延伸軸が長手方向に対して4
0〜50゜、さらに好ましくは44〜46゜である偏光
膜がLCD用偏光板として好ましく用いられる。
【0131】<偏光膜の製造方法>延伸軸が長手方向に
対して平行でも垂直でもない偏光膜は、上記の通り、特
定の斜め延伸法により製造することが好ましい。以下、
この方法を詳述する。図3および図4は、ポリマーフィ
ルムを斜め延伸する方法の典型例を、概略平面図とし
て、示したものである。
【0132】特定の斜め延伸法は、(a)で示される原
反フィルムを矢印(イ)方向に導入する工程、(b)で
示される幅方向延伸工程、及び(c)で示される延伸フ
ィルムを次工程、即ち(ロ)方向に送る工程を含む。以
下「延伸工程」と称するときは、これらの(a)〜
(c)工程を含んで、斜め延伸法を行うための工程全体
を指す。
【0133】フィルムは(イ)の方向から連続的に導入
され、上流側から見て左側の保持手段にB1点で初めて
保持される。この時点ではいま一方のフィルム端は保持
されておらず、幅方向に張力は発生しない。つまり、B
1点は実質的な保持開始点(以下、「実質保持開始点」
という)には相当しない。実質保持開始点は、フィルム
両端が初めて保持される点で定義される。実質保持開始
点は、より下流側の保持開始点A1と、A1から導入側
フィルムの中心線11(図3)または21(図4)に略
垂直に引いた直線が、反対側の保持手段の軌跡13(図
3)または23(図4)と交わる点C1の2点で示され
る。この点を起点とし、両端の保持手段を実質的に等速
度で搬送すると、単位時間ごとにA1はA2,A3…A
nと移動し、C1は同様にC2,C3…Cnに移動す
る。つまり同時点に基準となる保持手段が通過する点A
nとCnを結ぶ直線が、その時点での延伸方向となる。
【0134】特定の斜め延伸法では、図3、図4のよう
にAnはCnに対し次第に遅れてゆくため、延伸方向
は、搬送方向垂直から徐々に傾斜していく。実質的な保
持解除点(以下、「実質保持解除点」という)は、より
上流で保持手段から離脱するCx点と、Cxから次工程
へ送られるフィルムの中心線12(図3)または22
(図4)に略垂直に引いた直線が、反対側の保持手段の
軌跡14(図3)または24(図4)と交わる点Ayの
2点で定義される。最終的なフィルムの延伸方向の角度
は、実質的な延伸工程の終点(実質保持解除点)での左
右保持手段の行程差Ay−Ax(すなわち|L1−L2
|)と、実質保持解除点の距離W(CxとAyの距離)
との比率で決まる。従って、延伸方向が次工程への搬送
方向に対しなす傾斜角θは tanθ=W/( Ay−Ax)、即ち、 tanθ=W/|L1−L2| を満たす角度である。図3及び図4の上側のフィルム端
は、Ay点の後も18(図3)または28(図4)まで
保持されるが、もう一端が保持されていないため新たな
幅方向延伸は発生せず、18および28は実質保持解除
点ではない。
【0135】以上のように、フィルムの両端にある実質
保持開始点は、左右各々の保持手段への単純な噛み込み
点ではない。二つの実質保持開始点は、上記で定義した
ことをより厳密に記述すれば、左右いずれかの保持点と
他の保持点とを結ぶ直線がフィルムを保持する工程に導
入されるフィルムの中心線と略直交している点であり、
かつこれらの二つの保持点が最も上流に位置するものと
して定義される。同様に、二つの実質保持解除点は、左
右いずれかの保持点と他の保持点とを結ぶ直線が、次工
程に送りだされるフィルムの中心線と略直交している点
であり、しかもこれら二つの保持点が最も下流に位置す
るものとして定義される。ここで、略直交とは、フィル
ムの中心線と左右の実質保持開始点、あるいは実質保持
解除点を結ぶ直線が、90±0.5゜であることを意味
する。
【0136】テンター方式の延伸機を用いて左右の行程
差を付けようとする場合、レール長などの機械的制約に
より、しばしば保持手段への噛み込み点と実質保持開始
点に大きなずれが生じたり、保持手段からの離脱点と実
質保持解除点に大きなずれが生ずることがあるが、上に
定義した実質保持開始点と実質保持解除点間の工程が式
(1)の関係を満たしていれば、斜め延伸を有効に行う
ことができる。
【0137】上記において、得られる延伸フィルムにお
ける配向軸の傾斜角度は、(c)工程の出口幅Wと、左
右の二つの実質的保持手段の行程差|L1−L2|の比
率で制御、調整することができる。偏光板、位相差膜で
は、しばしば長手方向に対し45゜配向したフィルムが
求められる。この場合、45゜に近い配向角を得るため
に、下記式(2)を満たすことが好ましく、 式(2) 0.9W<|L1−L2|<1.1W さらに好ましくは、下記式(3)を満たすことが好まし
い。 式(3) 0.97W<|L1−L2|<1.03W
【0138】具体的な延伸工程の構造は、式(1)を満
たしてポリマーフィルムを斜め延伸する図1〜6に例示
されており、これらは、設備コスト、生産性を考慮して
任意に設計できる。
【0139】延伸工程へのフィルム導入方向(イ)と、
次工程へのフィルム搬送方向(ロ)のなす角度は、任意
の数値が可能であるが、延伸前後の工程を含めた設備の
総設置面積を最小にする観点からは、この角度は小さい
方がよく、3゜以内が好ましく、0.5゜以内がさらに
好ましい。例えば図3、図6に例示するような構造で、
この値を達成することができる。このようにフィルム進
行方向が実質的に変わらない方法では、保持手段の幅を
拡大するのみでは、偏光板、位相差膜として好ましい長
手方向に対して45゜の配向角を得るのは困難である。
そこで、図3の如く、一旦延伸した後、収縮させる工程
を設けることで、|L1−L2|を大きくすることがで
きる。延伸率は1.1〜10.0倍が望ましく、より望
ましくは2〜10倍であり、その後の収縮率は10%以
上が望ましい。また、図6に示すように、延伸−収縮を
複数回繰り返すことも、|L1−L2|を大きくできる
ため好ましい。
【0140】また、延伸工程の設備コストを最小に抑え
る観点からは、保持手段の軌跡の屈曲回数、屈曲角度は
小さい程良い。この観点からは、図4、図5、図7に例
示する如くフィルム両端を保持する工程の出口における
フィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす
角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を
フィルム両端を保持させた状態で屈曲させることが好ま
しい。
【0141】両端を保持しつつ張力を付与しフィルムを
延伸する装置としては、いわゆる図3〜図7のようなテ
ンター装置が好ましい。また、従来型の2次元的なテン
ターの他に、図8に示したように螺旋状に両端の把持手
段に行路差を付ける延伸工程を用いることもできる。
【0142】テンター型の延伸機の場合、クリップが固
定されたチェーンがレールに沿って進む構造が多いが、
本発明のように左右不均等な延伸方法をとると、結果的
に図3及び4に例示される如く、工程入口、出口でレー
ルの終端がずれ、左右同時に噛み込み、離脱をしなくな
ることがある。この場合、実質工程長L1、L2は、上
に述べたように単純な噛み込み−離脱間の距離ではな
く、既に述べたように、あくまでフィルムの両端を保持
手段が保持している部分の行程長である。
【0143】延伸工程出口でフィルムの左右に進行速度
差があると、延伸工程出口におけるシワ、寄りが発生す
るため、左右のフィルム把持手段の搬送速度差は、実質
的に同速度であることが求められる。速度差は好ましく
は1%以下であり、さらに好ましくは0.5%未満であ
り、最も好ましくは0.05%未満である。ここで述べ
る速度とは、毎分当たりに左右各々の保持手段が進む軌
跡の長さのことである。一般的なテンター延伸機等で
は、チェーンを駆動するスプロケット歯の周期、駆動モ
ータの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速
度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これら
は本発明で述べる速度差には該当しない。
【0144】また、左右の行程差が生じるに従って、フ
ィルムにシワ、寄りが発生する。この問題を解決するた
めに、ポリマーフィルムの支持性を保ち、揮発分率が5
%以上の状態を存在させて延伸した後、収縮させながら
揮発分率を低下させることをが好ましい。ここで、「ポ
リマーフィルムの支持性を保つ」とは、フィルムが膜性
を損なうことなく両側が保持され得ることを意味する。
【0145】また、「揮発分率が5%以上の状態を存在
させて延伸する」とは、延伸工程の全過程を通して揮発
分率が5%以上の状態を維持することを必ずしも意味す
るのではなく、揮発分率が5%以上における延伸が発明
の効果を発現する限り、工程の一部には揮発分が5%以
下である部分が有ってもよいことを意味するものであ
る。このような形で揮発分を含有させる方法としては、
フィルムをキャストし、水や非水溶剤などの揮発分を含
有させる、延伸前に水や非水溶剤などの揮発分に浸漬・
塗布・噴霧する、延伸中に水や非水溶剤などの揮発分を
塗布することなどが上げられる。ポリビニルアルコール
などの親水性ポリマーフィルムは、高温高湿雰囲気下で
水を含有するので、高湿雰囲気下で調湿後延伸、もしく
は高湿条件下で延伸することにより揮発分を含有させる
ことができる。これらの方法以外でも、ポリマーフィル
ムの揮発分を5%以上にさせることができれば、いかな
る手段を用いても良い。
【0146】好ましい揮発分率は、ポリマーフィルムの
種類によって異なる。揮発分率の最大は、ポリマーフィ
ルムの支持性を保つ限り可能である。ポリビニルアルコ
ールでは揮発分率として10%〜100%が好ましい。
セルロースアシレートでは、10%〜200%が好まし
い。
【0147】また、延伸ポリマーフィルムの収縮は、延
伸時・延伸後のいずれの工程でも行って良い。フィルム
を収縮させる手段としては、温度を掛けることにより、
揮発分を除去する方法などが挙げられるが、フィルムを
収縮させればいかなる手段を用いても良い。乾燥後の揮
発分量は、3%以下が好ましく、2%以下がより好まし
く、1.5%以下がさらに好ましい。
【0148】このように、(i)少なくともフィルム幅
方向に1.1〜20.0倍に延伸し、(ii)フィルム両
端の保持装置の長手方向進行速度差を1%以下とし、
(iii)フィルム両端を保持する工程の出口におけるフ
ィルムの進行方向とフィルムの実質的延伸方向のなす角
が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向をフ
ィルム両端を保持させた状態で屈曲させ、(iv)ポリマ
ーフィルムの支持性を保ち、揮発分率が5%以上の状態
を存在させて延伸した後、収縮させながら揮発分率を低
下させる、ことからなる延伸方法は、本発明の好ましい
態様である。
【0149】保持手段の軌跡を規制するレールには、し
ばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲によるフ
ィルム把持手段同士の干渉、あるいは局所的な応力集中
を避ける目的から、屈曲部では把持手段の軌跡が円弧を
描くようにすることが望ましい。
【0150】上記の如くして斜め延伸により製造された
偏光膜に保護膜を貼り付けるには、偏光膜の上記乾燥工
程中に、両端を保持した状態で接着剤を用いてフィルム
に保護膜を貼りつけ、その後、両端を耳切りする方法、
あるいは、乾燥後、両端保持部からフィルムを除去し、
フィルム両端を耳切りした後、保護膜を貼りつける方法
等がある。
【0151】図2に斜め延伸して得られた偏光板を打ち
抜きする例を示す(45°傾斜の例)。図2に示される
ように、偏光の延伸軸81すなわち吸収軸が長手方向8
2に対して45゜傾斜しており、保護膜の吸収軸71が
長手方向に平行であるため、両者の傾斜角は45°とな
る。しかも、偏光の吸収軸81の角度がLCDにおける
液晶セルに貼り合わせる際の偏光板の吸収軸と、液晶セ
ル自身の縦または横方向とのなす角度に一致しているた
め、打ち抜き工程において斜めの打ち抜きは不要とな
る。また図2からわかるように、斜め延伸された偏光板
は切断が長手方向に沿って一直線であるため、打ち抜か
ず長手方向に沿ってスリットすることによっても製造可
能であるため、生産性も格段に優れている。
【0152】本発明の偏光板は、液晶表示装置のコント
ラストを高める観点から、透過率は高い方が好ましく、
偏光度は高い方が好ましい。透過率は好ましくは550
nmで30%以上が好ましく、40%以上がさらに好ま
しい。偏光度は550nmで95.0%以上が好まし
く、99%以上がさらに好ましく、特に好ましくは9
9.9%以上である。
【0153】<粘着層>本発明の粘着層は、光学的に透
明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示
すものである。本発明における粘着層としては、例えば
アクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、
シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹
脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、
合成ゴムなどの接着剤もしくは粘着剤等のポリマーを用
いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬
化法等により膜形成させ、硬化せしめることができる。
就中アクリル系共重合体において最も粘着物性を制御し
やすく、かつ透明性や耐候性や耐久性などに優れて好ま
しく用いうる。
【0154】<液晶表示装置>本発明の偏光板は表示装
置に用いることができる。表示装置とは液晶表示装置、
有機発光素子を用いた表示装置、およびカーボンナノチ
ューブを発光素子に用いた表示装置などが挙げられる。
ただし、ディスプレイ用途の表示装置であれば、前記の
種類に限定されるわけではない。本発明の偏光板は中で
も液晶表示装置に好ましく用いることができる。液晶表
示装置は一般に液晶表示素子と偏光板とを有する。液晶
表示素子は、液晶層、それを保持するための基板および
液晶に電圧を加えるための電極層からなる。基板および
電極層は、いずれも表示のために透明な材料を用いて製
造される。透明基板としては、ガラス薄板または樹脂フ
イルムが使用される。多少の屈曲性が要求される液晶表
示装置の場合は、樹脂フイルムを使用する必要がある。
液晶基板には、高い透明性に加えて、低複屈折率および
耐熱性が要求される。液晶表示装置に位相差板を設ける
場合もある。位相差板は、液晶画面の着色を取り除き、
白黒化を実現するための複屈折フイルムである。位相差
板も、樹脂フイルムを用いて製造する。位相差板には、
高い複屈折率が要求される。偏光板は、保護膜と偏光膜
とからなる。偏光膜は、ヨウ素または二色性染料を偏向
素子として用いた樹脂フイルムである。保護膜は、偏光
膜を保護する目的で、偏光膜の片面または両面に設けら
れる。なお、偏光膜の片面のみに保護膜を設ける場合
は、一般に上記の液晶基板が他の面の保護膜として機能
する。偏光板保護膜には、透明性と低複屈折率(低レタ
ーデーション値)が要求されるため、本発明のセルロー
スアセテートフイルムが特に有利に用いられる。
【0155】偏光板の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二
色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜があ
る。いずれの偏光膜も、一般にポリビニルアルコール系
フイルムを用いて製造する。偏光板保護膜は、1μm〜
350μmの厚さを有することが好ましく、10〜10
0μmの厚さを有することがさらに好ましい。偏光板保
護膜上にさらに表面処理膜を設けてもよい。表面処理膜
の機能には、ハードコート、防曇処理、防眩処理および
反射防止処理が含まれる。偏光板およびその保護膜につ
いては、特開平4−219703号、同5−21282
8号および同6−51117号各公報に記載がある。
【0156】
【実施例】本発明を詳細に説明するために、以下に実施
例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるも
のではない。
【0157】実施例1 <紫外線吸収剤含有接着液の調製>紫外線吸収剤a
{(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−
ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)
−1,3,5−トリアジン}、紫外線吸収剤b{2
(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチ
ルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール}、紫外
線吸収剤c{2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−
tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリア
ゾール}、微粒子{二酸化ケイ素(粒径20nm)、モ
ース硬度 約7}をそれぞれ等質量比で酢酸エチルに溶
解させた。その後、界面活性剤にドデシルベンゼンスル
ホン酸ナトリウムを用いて、該溶液をPVA系接着剤水
溶液(PVA3質量%)にポリビニルアルコールに対し
て0.5質量%濃度で分散した。分散後の接着剤水溶液
は透明性を有しており、使用に適したものであることを
確認した。
【0158】<偏光板の作成>PVAフィルムをヨウ素
5.0g/l、ヨウ化カリウム10.0g/lの水溶液
に25℃にて90秒浸漬し、さらにホウ酸10g/lの
水溶液に25℃にて60秒浸漬後、図1の形態のテンタ
ー延伸機に導入し、7.0倍に一旦延伸した後5.3倍
まで収縮させ、以降幅を一定に保ち、70℃で乾燥した
後テンターより離脱した。延伸開始前の PVAフィル
ムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.1%であ
った。左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.0
5%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程
に送られるフィルムの中心線のなす角は、0゜であっ
た。ここで|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mで
あり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出
口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
【0159】さらに、上記接着剤を用いて、紫外線吸収
剤を含まず、かつケン化処理済みセルローストリアセテ
ート(厚み80μm)と貼り合わせ、さらに80℃で後
加熱して有効幅650mmの偏光板を得た。得られた偏
光板の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜してお
り、タック保護膜の遅相軸とも45°傾斜していた。こ
の偏光板を図8に示す如く310×233mmサイズに
切り出したところ、91.6%の面積効率で、辺に対し
45゜吸収軸が傾斜した偏光板〔1〕を得ることができ
た。この偏光板〔1〕の550nmにおける透過率は4
3.1%、偏光度は99.93%であった。
【0160】実施例2 上記実施例1において、接着剤水溶液中の紫外線吸収剤
a〜cを全て5倍当量加えた以外は実施例1と全く同様
にして偏光板〔2〕を作成した。この偏光板〔2〕の5
50nmにおける透過率は43.0%、偏光度は99.
91%であった。
【0161】実施例3 上記実施例1において、80μmのTAC保護膜を60
μmのTAC保護膜とした以外は実施例1と全く同様に
して偏光板〔3〕を作成した。得られた偏光板の吸収軸
方向は、長手方向に対し45゜傾斜しており、保護膜の
遅相軸とも45°傾斜していた。この偏光板〔3〕の5
50nmにおける透過率は42.7%、偏光度は99.
89%であった。
【0162】比較例1 上記実施例1において、接着剤水溶液中の紫外線吸収剤
a、b及びcを含有させない以外は実施例1と全く同様
にして、偏光板〔C−1〕を作成した。この偏光板〔C
−1〕の550nmにおける透過率は42.2%、偏光
度は99.84%であった。
【0163】比較例2 上記実施例1において、保護膜を貼り合わせずに偏光膜
を打ち抜き、辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光膜を
得た。一方、実施例1において用いた保護膜用のケン化
処理した紫外線吸収剤が未使用のセルローストリアセテ
ートを、辺に対し45°遅相軸が傾斜するように保護膜
を斜めに打ち抜いた。この偏光膜と保護膜とを軸が一致
するように貼り合わせて、偏光板〔C−2〕を得た。す
なわち、保護膜と偏光膜との軸が一致している以外は実
施例1で得た偏光板〔1〕と全く同様の偏光板を得た。
この偏光板〔C−2〕の550nmにおける透過率は4
2.7%、偏光度は99.86%であった。
【0164】比較例3 比較例2と同様の方法により、実施例3で用いた保護膜
を軸を一致するようにして貼り合わせた以外は実施例3
と全く同様にして、偏光板〔C−3〕を得た。この偏光
板〔C−3〕の550nmにおける透過率は43.1
%、偏光度は99.93%であった。
【0165】得られた各偏光板の生産性(面積効率)、
紫外線耐久性及び経時による反り返りについて、下記の
通りに評価した。得られた結果を表1に示す。
【0166】<評価条件> {生産性}偏光板(310×233mm2サイズ)を使
用可能な範囲でできるだけ詰めて6枚打ち抜く際の、面
積効率(使用した偏光板面積に対する打ち抜きサイズの
割合)により生産性を評価した。面積効率:90%以上
…○、80%以上90%未満…△、60%以上80%未
満…×
【0167】{紫外線耐久性}25℃60%調湿条件
下、紫外線(365nm)を500時間、連続して照射
したときに、クロスニコルに配置させた2枚の偏光板透
過率の変動値を初期値に対して割った値(%)で規定し
た。 0〜1%以内…○、 1%以上〜5%未満…△、 5%
以上…×
【0168】{カール性(反り)}偏光板を60℃相対
湿度90%の雰囲気下で500時間放置した後、平滑面
上に静置し、反り返りの有無を目視により判断し、評価
した。 反り返り:殆ど見られない…○、見られる…△、激しく
見られる…×
【0169】
【表1】
【0170】実施例4 図9に示すように、実施例1で作成したヨウ素偏光板9
1、92をLCDの液晶セル93に狭持する2枚の偏光
板として、偏光板93を表示側偏光板として、接着剤を
介して液晶セル93に貼り合わせてLCDを作成した。
こうして得られたLCDは、優れた輝度、視野角特性、
視認性を示し、40℃90%雰囲気下に100時間放置
しても、偏光板が液晶表示装置から剥離することなく、
表示特性上何等の問題ないレベルであることを確認し
た。
【0171】
【発明の効果】本発明の偏光板は、紫外線耐久性及び寸
度安定性に優れると同時に、打ち抜き工程で得率が大き
く簡便に得られるので、安価である。これにより、優れ
た表示品位の液晶表示装置が安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偏光板を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の偏光板を打ち抜く様子を示す概略平面
図である。
【図3】ポリマーフィルムを斜め延伸する本発明の方法
の一例を示す概略平面図である。
【図4】ポリマーフィルムを斜め延伸する本発明の方法
の一例を示す概略平面図である。
【図5】ポリマーフィルムを斜め延伸する本発明の方法
の一例を示す概略平面図である。
【図6】ポリマーフィルムを斜め延伸する本発明の方法
の一例を示す概略平面図である。
【図7】ポリマーフィルムを斜め延伸する本発明の方法
の一例を示す概略平面図である。
【図8】ポリマーフィルムを斜め延伸する本発明の方法
の一例を示す概略平面図である。
【図9】実施例2の液晶表示装置の層構成を示す概略平
面図である。
【符号の説明】
(イ) フィルム導入方向 (ロ) 次工程へのフィルム搬送方向 (a) フィルムを導入する工程 (b) フィルムを延伸する工程 (c) 延伸フィルムを次工程へ送る工程 A1 フィルムの保持手段への噛み込み位置とフィルム
延伸の起点位置(実質保持開始点:右) B1 フィルムの保持手段への噛み込み位置(左) C1 フィルム延伸の起点位置(実質保持開始点:左) Cx フィルム離脱位置とフィルム延伸の終点基準位置
(実質保持解除点:左) Ay フィルム延伸の終点基準位置(実質保持解除点:
右) |L1−L2| 左右のフィルム保持手段の行程差 W フィルムの延伸工程終端における実質幅 θ 延伸方向とフィルム進行方向のなす角 11 導入側フィルムの中央線 12 次工程に送られるフィルムの中央線 13 フィルム保持手段の軌跡(左) 14 フィルム保持手段の軌跡(右) 15 導入側フィルム 16 次工程に送られるフィルム 17、17’ 左右のフィルム保持開始(噛み込み)点 18、18’ 左右のフィルム保持手段からの離脱点 21 導入側フィルムの中央線 22 次工程に送られるフィルムの中央線 23 フィルム保持手段の軌跡(左) 24 フィルム保持手段の軌跡(右) 25 導入側フィルム 26 次工程に送られるフィルム 27、27’ 左右のフィルム保持開始(噛み込み)点 28、28’ 左右のフィルム保持手段からの離脱点 33、43、53、63 フィルム保持手段の軌跡
(左) 34、44、54、64 フィルム保持手段の軌跡
(右) 35、45、55、65 導入側フィルム 36、46、56、66 次工程に送られるフィルム 70 保護膜 71、71’保護膜の遅相軸(延伸軸) 74 接着剤層 80 偏光膜 81 偏光膜の吸収軸(延伸軸) 82 長手方向 83 横手方向 90 偏光板 91、92 ヨウ素系偏光板 93 液晶セル 94 バックライト

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 偏光膜の少なくとも片面に保護膜が被覆
    された偏光板であって、保護膜の遅相軸と偏光膜の吸収
    軸との角度が10°以上90°未満であり、偏光膜と保
    護膜を接着する層が、紫外線吸収剤及び水溶性の接着剤
    を含有することを特徴とする偏光板。
  2. 【請求項2】 ロール状の偏光板であって、延伸軸が長
    手方向に平行でも垂直でもない偏光膜の少なくとも片面
    に、延伸軸が長手方向に平行な保護膜を接着剤層を介し
    て貼り合わせてなることを特徴とする請求項1記載の偏
    光板。
  3. 【請求項3】 該偏光膜を、連続的に供給されるポリマ
    ーフィルムの両端を保持手段により保持し、該保持手段
    をフィルムの長手方向に進行させつつ張力を付与して延
    伸する工程を含み、ポリマーフィルムの一方端の実質的
    な保持開始点から実質的な保持解除点までの保持手段の
    軌跡L1及びポリマーフィルムのもう一端の実質的な保
    持開始点から実質的な保持解除点までの保持手段の軌跡
    L2と、二つの実質的な保持解除点の距離Wが下記式
    (1)を満たし、かつ左右のフィルム把持手段の長手方
    向の搬送速度差が1%未満である延伸方法により製造す
    ることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板の製
    造方法。 式(1) |L2−L1|>0.4W
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板
    を液晶セルの少なくとも片側に貼り合わせたことを特徴
    とする液晶表示装置。
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