JP2003204781A - 有機塩素化合物分解性微生物及び同微生物を用いる有機塩素化合物の分解方法 - Google Patents

有機塩素化合物分解性微生物及び同微生物を用いる有機塩素化合物の分解方法

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JP2003204781A
JP2003204781A JP2002328928A JP2002328928A JP2003204781A JP 2003204781 A JP2003204781 A JP 2003204781A JP 2002328928 A JP2002328928 A JP 2002328928A JP 2002328928 A JP2002328928 A JP 2002328928A JP 2003204781 A JP2003204781 A JP 2003204781A
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organochlorine compound
organochlorine
tce
degrading
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Chizuko Kageyama
智津子 影山
Morimasa Suzuki
守正 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】有機塩素化合物を共代謝基質無しで、環境基準
値以下まで、短時間に分解することができる微生物及び
それを用いた水又は土壌中の有機塩素化合物の分解方法
を提供する。 【解決手段】該微生物は、ラルストニア属のラルストニ
アsp.TE26(FERM P−18353)からな
る有機塩素化合物分解性微生物である。該有機塩素化合
物分解性微生物は、フェノール、トルエン等の共代謝基
質無しで有機塩素化合物を分解する酸化酵素を発現す
る。有機塩素化合物としては、汚染環境中の塩素化脂肪
族炭化水素化合物、特にトリクロロエチレン(TCE)
又は/及びジクロロエチレン(DCE)が好適に採択さ
れ、それらに上記微生物(FERM P−18353)
を接触させて分解することにより汚染環境が浄化され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、有機塩素化合物
分解性新規微生物及び同新規微生物を用いる有機塩素化
合物の分解方法に係り、特にフェノール、トルエン等の
共代謝基質無しで有機塩素化合物を分解する有機塩素化
合物分解性新規微生物及び同新規微生物を用いる有機塩
素化合物の分解方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】 従
来、機械、金属系の工場等で脱脂洗浄剤として利用され
ているトリクロロエチレン(TCE)及びテトラクロロ
エチレン(PCE)は、ほ乳類における試験で発ガン性
を有することが複数の報告で明らかになっており、我が
国では平成5年3月、水質汚濁防止法において環境基準
が設定された。ところが、TCE・PCEはこれ以前に
土壌・地下水中に蓄積され、環境庁が実施した全国の地
下水質調査においても、環境基準値を越えた事例が多数
報告されており、最近においても、土壌・地下水の高濃
度汚染が見つかった事例が新聞等で報道されている。従
来、TCEやPCEで汚染された土壌・地下水の物理的
浄化法としては、主に土壌ガス吸引法と揚水ばっ気法が
ある。これらの方法は多大な動力が必要で、TCEやP
CEの含有量が低濃度のものでは処理効率が悪く、完全
な浄化は困難である。近年、欧米では、TCEやPCE
を分解する微生物などを用いた有害化学物質の生物的環
境修復(バイオレメディエーション)が一部実用化され
ており、我が国においてもこのようなTCEを分解する
微生物による土壌修復に関する報告が多数なされてい
る。
【0003】従来、TCE分解菌の例としてはMeth
ylosinus trichosporium OB
3b(特開平4−501667、特開平5−21237
1、)、Methylosinus trichosp
orium TUKUBA(特開平2−92274、特
開平3−292970、特開平6−226230)、P
seudomonas putida F1(特開昭6
4−34499)、Pseudomonas puti
da BH(ケミカルエンジニアリング、39,
(6)、494−498,1994)、Pseudom
onas putida UC−R5,UC−P2(特
開昭62−84780)、Pseudomonas p
utida KWI−9(特開平6−70753)、P
seudomonas mendocina KR−1
(特開平2−503866、5−502593)、Ps
eudomonas cepacia G4(特開平4
−502277)Pseudomonas cepac
ia KK01(特開平6−296711)、Burk
holderia sp.N16−1(特開平10−5
2259)、Ralstonia eutropha
KS01(特開2000−102377)、Alcal
igenes eutropus JMP134(Ap
pl.Environ.Microbio1.,56,
(4),1179−1181,1990)、Alcal
igenes eutropus KS01(特開平7
−123976)、Nitrosomonas eur
opaea(Biochem.Biophys.Re
s.Commun.,159,(2),640−64
3,1989)などが知られている。
【0004】また最近、千葉県君津市においてトルエン
資化性菌であるRalstoniaeutropha
KT−1を用いて野外実証テストが行われた。しかしな
がら、既に知られているTCE分解菌は、誘導物質とし
てメタン、トルエン、フェノールなど環境や人体に悪影
響を及ぼす物質を必要とする。このような場合、有害な
物質は地下水・土壌に添加できないことから、分解酵素
をこのような物質で誘導した後、遠心分離して、培地成
分を除いて菌体を地下水や土壌に添加しなければならな
いため、操作が非常に煩雑となる。そこで、このような
有害な誘導物質を必要としない菌として、人為的な突然
変異によって酵素を構成的に発現する菌の取得方法及び
その菌を用いた環境修復法が報告されている。(特開平
8−294387) また、トリクロロエチレンなどによって、酸化酵素が誘
導された例として、Pseudomonas mend
ocina KR−1、Pseudomonas s
p.Strain ENVPC5において、トリクロロ
エチレンの存在下でトルエン酸化活性を示し、TCEが
分解された例(Appl.Environ.Micro
biol, 61,(9).3479−3481.199
5)があり、Burkholdeia cepacia
G4、Burkholdeiapickettii
PK 01、Pseudomonas mendoci
na KR−1において、トルエンの分解やトリクロロ
エチレンの分解を誘導することが示された(Appl.
Environ.Microbiol.62.(3).
825−833.1996)。しかし、それらはトリク
ロロエチレンなどの有機塩素化合物の分解試験例が少な
く、詳細な分解力については明らかでなく実用化には至
っていない。一方、安全な基質を誘導物質として用いる
方法としてトリプトファンを用いる方法が報告されてい
るが、地下水等に用いるには高価な物質である。
【0005】本発明の目的は環境に対して問題のあるフ
ェノール、トルエン等の共代謝基質を必要とせずに、有
機塩素化合物、特にTCE又はDCEを効率よく分解す
る微生物を提供すること及びそれを用いた有機塩素化合
物の分解方法、さらには有機塩素化合物で汚染された地
下水・土壌等環境の浄化法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】 すなわち本発明は、フ
ェノール、トルエン等の共代謝基質無しで有機塩素化合
物を分解するラルストニア属に属する有機塩素化合物分
解性新規微生物及び同微生物を用いた有機塩素化合物の
分解方法、あるいは有機塩素化合物で汚染された環境の
浄化法を提供するものであり、下記構成の有機塩素化合
物分解性微生物及び同微生物を用いる有機塩素化合物の
分解方法である。 (1) ラルストニア属のラルストニアsp.TE26
(FERM P−18353)からなる有機塩素化合物
分解性微生物。 (2) 有機塩素化合物分解性微生物が、フェノール、
トルエン等の共代謝基質無しで有機塩素化合物を分解す
るものであることを特徴とする前記(1)に記載の有機
塩素化合物分解性微生物。 (3) 有機塩素化合物分解性微生物が、フェノール、
トルエン等の共代謝基質無しで有機塩素化合物を分解す
る酸化酵素が発現されるものであることを特徴とする
(1)又は(2)のいずれか1項に記載の有機塩素化合
物分解性微生物。 (4) 有機塩素化合物が、塩素化脂肪族炭化水素化合
物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1
項に記載の有機塩素化合物分解性微生物。
【0007】(5) 有機塩素化合物が、トリクロロエ
チレン(TCE)又はジクロロエチレン(DCE)のい
ずれかあるいはトリクロロエチレン(TCE)及びジク
ロロエチレン(DCE)であることを特徴とする(1)
〜(3)のいずれか1項に記載の有機塩素化合物分解性
微生物。 (6) 有機塩素化合物が、塩素化芳香族化合物である
ことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載
の有機塩素化合物分解性微生物。 (7) 有機塩素化合物に、前記(1)〜(6)のいず
れか1項に記載のラルストニア属のラルストニアsp.
TE26(FERM P−18353)からなる有機塩
素化合物分解性微生物を接触させることを特徴とする有
機塩素化合物の分解方法。 (8) 有機塩素化合物が、トリクロロエチレン(TC
E)又はジクロロエチレン(DCE)のいずれかあるい
はトリクロロエチレン(TCE)及びジクロロエチレン
(DCE)であることを特徴とする(7)に記載の有機
塩素化合物の分解方法。 (9) 汚染環境中に含まれる有機塩素化合物に、
(1)〜(6)のいずれか1項に記載のラルストニア属
のラルストニアsp.TE26(FERM P−183
53)からなる有機塩素化合物分解性微生物を接触させ
て汚染環境を浄化することを特徴とする有機塩素化合物
を含む汚染環境を浄化する方法。
【0008】(10) 有機塩素化合物が、トリクロロ
エチレン(TCE)又はジクロロエチレン(DCE)の
いずれかあるいはトリクロロエチレン(TCE)及びジ
クロロエチレン(DCE)であることを特徴とする
(9)に記載の有機塩素化合物を含む汚染環境を浄化す
る方法。 (11)有機塩素化合物を分解させる際に、鉄以外の成
分を含まない溶液中か、又は鉄以外の成分を40mM以
下にした溶液中で、ラルストニア属のラルストニアs
p.TE26(FERM P−18353)からなる有
機塩素化合物分解性微生物を接触させて、分解させるこ
とを特徴とする(7)〜(10)のいずれか1項に記載
の有機塩素化合物の分解方法。 (12)無機塩培地と、炭素源としての炭酸ガス又は炭
酸イオン、及び無機の電子供与体よりなる培地を用いて
増殖させて得られた有機塩素化合物分解性微生物(菌
体)を用いることを特徴とする(7)〜(11)のいず
れか1項に記載の有機塩素化合物の分解方法。 (13)有機塩素化合物によって酸化酵素を誘導する菌
株を得るための選抜方法として、リン酸塩、無機態窒
素、塩化ナトリウム、カルシウム塩、微量金属塩の合計
が40mMを越えない低濃度の無機塩培地に有機塩素化
合物を添加した培地を用いて、添加した有機塩素化合物
の濃度の減少によって選抜する集積培養法。 (14)有機塩素化合物によって(1)〜(6)のいず
れか1項に記載のラルストニア属のラルストニアsp.
TE26(FERM P−18353)からなる有機塩
素化合物によって酸化酵素を誘導する有機塩素化合物分
解性微生物を得るための選抜方法として、リン酸塩、無
機態窒素、塩化ナトリウム、カルシウム塩、微量金属塩
の合計が40mMを越えない低濃度の無機塩培地に有機
塩素化合物を添加した培地を用いて、添加した有機塩素
化合物の濃度の減少によって選抜する集積培養法。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態につい
て説明する。本発明において提供される菌株としては、
ラルストニアsp.TE26が挙げられ、本菌株は5p
pmのトリクロロエチレンを24時間で100%分解す
る能力を有する。
【0010】本発明の微生物としてはラルストニア属の
ラルストニアsp.TE26が挙げられる。この菌株は
地下水・土壌などから分離される新規な菌株で、その単
離方法は後記実施例に具体的に記載するが、以下に単離
したTE26株の菌学的性質について記載する。
【0011】 形態 形 桿菌 大きさ 0.8×1.0〜1.5μm 胞子 無 運動性 有 グラム染色 陰性 生理的性質 酸素に対する態度 好気性 OFテスト − カタラーゼ 陽性 オキシダーゼ 陽性 硝酸還元 陽性 VPテスト 陰性 インドールの生成 陰性 硫化水素生成 陰性 デンプンの分解 陰性 クエン酸利用 陽性 アルギニンヒドラーゼ 陰性 ウレアーゼ 陽性 β一グルコシダーゼ 陰性 プロテアーゼ 陰性 β一ガラクトシダーゼ 陰性 資化性 グルコース 陰性 アラビノース 陰性 マンノース 陰性 マンニトール 陰性 グルコサミン 陰性 マルトース 陰性 グルコン酸 陽性 カプロン酸 陽性 アジピン酸 陽性 リンゴ酸 陽性 クエン酸 陽性 酢酸フェニル 陰性
【0012】以上の菌学的性質を有する菌株をBerg
ey’s Manual ofSystematic
Bacteriology第1巻1986年に従って同
定した結果、この菌株はシュードモナス(Pseudo
monas)属に属する菌株と同定し、シュードモナス
sp.TE26と命名した。そして同菌株は平成13年
6月4日付けで独立行政法人産業技術総合研究所生物寄
託センターへFERM P−18353として寄託し
た。しかし、その後同菌株は、16S rRNAの塩基
配列の相同性から、ラルストニアに最も近い菌と判明し
たことから、ラルストニアsp.TE26と微生物の識
別のための表示を変更し、平成13年8月10日付けで
独立行政法人産業技術総合研究所生物寄託センターへ記
載事項変更届を提出した。
【0013】本発明の微生物のラルストニア属のラルス
トニアsp.TE26菌株の培養に用いる培地として
は、通常使用されるものであればいずれでもよい。炭素
源としてはクエン酸、エタノール等が好ましい。窒素源
としてはペプトン、肉エキス、酵母エキス等の有機窒素
源のほか、無機窒素源としてはアンモニウム塩、硝酸塩
等が使用できる。無機塩類としては、カリウムイオン、
カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄(II)イ
オン、銅(II)イオン、マンガンイオン、コバルトイ
オン、モリブデンイオン、亜鉛イオン等の金属イオンと
硫酸イオン、リン酸イオン等の陰イオンとからなる塩類
を組み合わせて用いることができる。また、無機栄養に
よる培地としては、上記無機窒素源、無機塩類に加え
て、炭素源として、二酸化炭素、炭酸ナトリウム、重炭
酸ナトリウムなどの炭酸ガス又は炭酸イオンを含むもの
であればよい。無機の電子供与体としては、水素、チオ
硫酸ナトリウム、還元鉄など通常使用されるものならい
ずれでもよい。
【0014】培養は好気的に行われ、振とう培養又はジ
ャーファメンターを用いて通気条件下で行うことができ
る。培地のpHは5〜8の範囲が好ましく、培養温度は
20〜35℃の範囲内が好ましく、培養時間は1〜3日
間が好ましい。本発明の前記微生物を有機塩素化合物に
汚染された地下水・土壌に添加することにより有機塩素
化合物を分解・除去して、浄化することができる。該微
生物の菌体を添加する方法としては、培養液を添加す
る、菌体を添加する、菌体を担体に吸着させて添加
する、のいずれの方法でもよい。添加する菌体量は10
5〜109 個/mlが好ましい。本発明により分解でき
る好ましい有機塩素化合物としては、特にトリクロロエ
チレン及びジクロロエチレンが挙げられる。
【0015】
【実施例】 以下、実施例により本発明を具体的に説明
する。 実施例1:「微生物の単離」 「微生物の単離方法」沼津市の雑木林内の土壌を採取
し、同土壌1gを10mlの蒸留水とともに1時間振と
うした後、上澄1mlを取り出して容量125mlのね
じ口ガラス瓶に投入し、さらに表1記載の無機塩培地
(液体培地)と、炭素源としてのエタノール及びTCE
を加え合わせて総量で20mlになるようにして混合
し、テフロン(登録商標)コートセプタムとキャップで
密栓し、25℃、130rpm(レシプロ)で1週間振
とう培養した。なお、エタノールの濃度は200mg/
L、TCEの濃度は10mg/Lとした。
【0016】
【表1】
【0017】上記の振とう培養を開始してから1週間後
に、菌液200μlを取り出してGC/ヘッドスペース
測定用の容量27mlのバイアルに投入し、さらに上記
振とう培養と同様に表1記載の無機塩培地(液体培地)
とエタノール、TCEを加えて総量で合わせて4mlに
なるように混合し、テフロンコートシリコンセプタムと
穴あきキャップで密栓し、25℃130rpm(レシプ
ロ)で振とうし、5日間振とう培養した後、そのままオ
ートサンプラーに設置し、GC/ヘッドスペースにより
TCE濃度を測定した。さらに、イオンクロマトグラフ
により塩素濃度を測定し、分解の見られた集積培養は、
一週間毎に植え継ぎ、TCE分解を継続調査した。微生
物の単離方法は、まず、集積培養を6週間継続した後、
表1の基本培地に酵母エキス400mg/Lと寒天16
g/Lを加えて調製した寒天培地に、上記分解の見られ
た集積培養液を10,000倍に希釈し、塗沫した。そ
れを、30℃で2〜3日培養し形成された各コロニーを
取り出し、それらを表1記載の基本培地に酵母エキス2
00mg/Lを加えて調製した液体培地に投入して、2
5℃130rpm(レシプロ)で、24時間振とう培養
した後、形成されたコロニーをさらに前述と同じ組成の
寒天培地に、10,000倍に希釈した菌液を塗沫し
た。このような純粋分離操作を複数回行い、コロニーが
純粋になるまで繰り返した。単離した各菌株を、NaC
lを除いたLB培地(表2:以下「LB(−NaCl)
培地」という)10mlで30℃、230rpmで17
時間振とう培養した。
【0018】
【表2】
【0019】次に前記培養物を、15,000gで5分
間高速遠沈しながら、基本培地で3回洗浄して、沈殿物
の菌体を得た。GCヘッドスペース測定用の容量27m
lのバイアルに、表1の基本培地、TCE5mg/L、
前記洗浄により得られた菌体のOD600が1〜1.5
となるように混合し、合わせて4mlになるようにし、
テフロンコートシリコンセプタムと穴あきキャップで密
栓、5日間振とう培養した後、そのままオートサンプラ
ーに設置し、GC/ヘッドスペースによりTCE濃度を
測定した。TCEの減少が見られたサンプルは、さら
に、イオンクロマトグラフにより塩素濃度を測定し、T
CEの分解を確認した。以上のようにしてTCEの分解
が確認された菌株を単離した。得られた該菌は分析の結
果、前述のラルストニア属のラルストニアsp.TE2
6(FERMP−18353)であることが判明した。
【0020】実施例2:ラルストニアsp.TE26株
におけるTCEによる分解酵素の発現 寒天培地に15℃で保存しておいた前記実施例1で得ら
れたラルストニアsp.TE26の1白金耳をLB(−
NaCl)培地10mlに植菌し、30℃、230rp
mで17時間振とう培養した。それを次に15,000
gで5分間高速遠沈しながら、基本培地で3回洗浄し
た。その後、80m1容バイアルにOD600を5に調
整した菌液を20mlとTCEを5mg/Lとなるよう
に入れ、25℃、130rpmで4時間振とうした。対
照として、TCEを入れない菌液を同様に4時間振とう
した。その後、上記と同様に、15,000gで5分間
高速遠沈しながら、基本培地で2回洗浄して、沈殿物の
菌体を得た。27m1容のバイアル(ヘッドスペース測
定用)に表1記載の無機塩培地と、TCE5mg/Lと
上記菌体を濃度がOD600で1.2となるように添加
した。培地の総量は4mlとなるようにした。一定時間
後、GC/ヘッドスペースによりTCE濃度を測定し
た。その結果、TCEであらかじめ4時間振とう培養
(前培養)した区では、無処理区に比較して常に分解が
進んでいた。その結果は図1に示すとおりであり、これ
により、TCEによって分解酵素が誘導されていること
が理解される。
【0021】実施例3:ラルストニアsp.TE26株
におけるTCEの各濃度の分解 寒天培地に15℃で保存しておいた前記実施例1で得ら
れたラルストニアsp.TE26の1白金耳を表2記載
のLB(−NaCl)培地10mlに植菌し、30℃、
230rpmで17時間振とう培養した。次に15,0
00gで5分間高速遠沈しながら、基本培地で3回洗浄
した。27m1容のバイアル(ヘッドスペース測定用)
に表1記載の無機塩培地(液体培地)、TCE各量と菌
液を濃度がOD600で1.8となるように添加した。
培地の総量は4mlとなるようにした。25℃、130
rpmで振とう培養し、一定時間後、GC/ヘッドスペ
ースによりTCE濃度を測定した。その結果の、TCE
の各濃度毎の分解の経時変化を図2に示す。これによ
り、TCE濃度5〜90ml/Lの範囲で分解可能で、
濃度が高いほどTCEの分解量が増加することが解る。
【0022】実施例4:シス−ジクロロエチレン分解 トリクロロエチレンをシス−ジクロロエチレンに変えた
以外は、実施例3と同様の方法で培養24時間後に分解
量を測定した。濃度別分解率を図3に示す。これにより
シス−ジクロロエチレンにおいても酸化酵素が誘導さ
れ、これを分解していることが解る。
【0023】実施例5:土壌中のTCEの分解 菌液の調整は、実施例3と同様に行った。27ml容の
バイアル(ヘッドスペース測定用)に、乾燥させた滅菌
土壌5g、菌液及びTCEを合わせて3ml添加した。
TCE濃度は6.2mg/L(土壌水分)、菌濃度は、
2.6×108個 /土壌1g(乾重)とした。分解の経
時変化を図4に示す。TCE残存率は、菌液を処理しな
い対照区のTCE残存を100としたときの処理区の
割合で示した。これにより土壌処理においてもTCEが
分解されることが解る。
【0024】上記のように、本発明の新規微生物は、T
CEなどの有機塩素化合物により、酸化酵素が生成さ
れ、この酵素が直接有機塩素化合物を分解するため、従
来必要とされた共代謝基質が不要であることが解った。
【0025】実施例6:分解溶液中の成分、濃度とTC
Eの分解 菌液の調製は、実施例3と同様に行った。27ml容の
バイアル(ヘッドスペース測定用)に、(a)10,4
0,80mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.
0)、(b)無機塩培地、(c)無機塩培地+100m
g/Lグルタミン酸ナトリウム、(d)蒸留水、(e)
蒸留水+20μM硫酸第一鉄、のいずれかに菌濃度がO
D600=0.5となるように菌体を処理し、25℃、
130rpmで振とう培養した。24時間後のTCE分
解の残存率を図5に示す。その結果からみて、無機塩や
炭素源などが高濃度に含まれる培地では、TCEの分解
が阻害され、蒸留水に硫酸第一鉄を20μM含む培地に
おいて最も分解が進んだことが解った。
【0026】実施例7:無機栄養による増殖菌体のTC
E分解 菌体の培養は、表1の無機塩培地に炭素源として二酸化
炭素又は炭酸ナトリウム、電子供与体として水素又は還
元鉄、チオ硫酸ナトリウムを用いて増殖させた。 増殖
の結果は表3に示した。これらの菌体によるTCE分解
を検討するため、表4の組み合わせで炭素源及び電子供
与体を用いて菌を培養し、この菌体を用いた他は実施例
3と同様に行った。その結果、無機栄養によって増殖さ
せた菌体は、菌体mg当たりのTCE分解量(トータル
キャパシティ:Tc)が高く、通常菌体増殖に用いられ
るトリプトン・酵母エキス培地に比較して、6倍から2
0倍のTcがあり、低濃度の菌体でTCEを効率良く分
解できることが解った。
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】実施例8:土壌中のTCE分解 菌液の調製は、実施例3と同様に行った。27ml容の
バイアル(ヘッドスペース測定用)に、土壌8.7g
(乾燥重で4g)、菌液及びTCEを添加した。菌濃度
は、1×107個/土壌1g(乾重)、TCE濃度は、
5.8mg/L(土壌水分)とした。分解の経時変化を
図6に示す。TCE残存率は、菌液を処理しない対照区
のTCE残存量を100としたときの割合で示した。そ
の結果、本菌体は、土壌に炭素源となるような基質を添
加しなくても、1×107個/土壌1g(乾重)という
低濃度の菌体で56日間の長期に渡ってTCEを徐々に
分解し、5.8mg/L(土壌水分)のうち90%を分
解することが解った。
【0030】
【発明の効果】本発明の新規な微生物によれば、従来法
で必要としたメタン、フェノール、トルエンなどの環境
に問題のある誘導物質(共代謝基質)を不要として、直
接に有機塩素化合物を分解できる。そのため、有機塩素
化合物で汚染された環境を共代謝基質で汚染する危険な
しに環境を浄化することができる。しかも本発明で提案
される微生物は、突然変異や遺伝子組み換え処理によっ
て得られたものでなく、格別な有害性ないし危険性はな
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の微生物による分解酵素の発現が理解さ
れるグラフ図、
【図2】本発明の微生物によるトリクロロエチレンの分
解状態を示すグラフ図、
【図3】本発明の微生物によるシス−ジクロロエチレン
の分解状態を示すグラフ図、
【図4】本発明の微生物による土壌中のトリクロロエチ
レンの分解状態を示すグラフ図、
【図5】本発明の微生物によるTCE分解の残存率に与
える分解溶液の影響を示すグラフ図、
【図6】 本発明の微生物による土壌中のTCE分解の
経時変化を示すグラフ図、
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/00 B09B 3/00 E Fターム(参考) 4B065 AA01X AC12 AC20 BA23 BC11 BC50 CA56 4D004 AA41 AB06 CA15 CA18 CC07 CC08 4D040 DD01 DD11

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ラルストニア属のラルストニアsp.T
    E26(FERMP−18353)からなる有機塩素化
    合物分解性微生物。
  2. 【請求項2】 有機塩素化合物分解性微生物が、フェノ
    ール、トルエン等の共代謝基質無しで有機塩素化合物を
    分解するものであることを特徴とする請求項1に記載の
    有機塩素化合物分解性微生物。
  3. 【請求項3】有機塩素化合物分解性微生物が、フェノー
    ル、トルエン等の共代謝基質無しで有機塩素化合物を分
    解する酸化酵素が発現されるものであることを特徴とす
    る請求項1又は2のいずれか1項に記載の有機塩素化合
    物分解性微生物。
  4. 【請求項4】有機塩素化合物が、塩素化脂肪族炭化水素
    化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか
    1項に記載の有機塩素化合物分解性微生物。
  5. 【請求項5】有機塩素化合物が、トリクロロエチレン
    (TCE)又はジクロロエチレン(DCE)のいずれか
    あるいはトリクロロエチレン(TCE)及びジクロロエ
    チレン(DCE)であることを特徴とする請求項1〜3
    のいずれか1項に記載の有機塩素化合物分解性微生物。
  6. 【請求項6】有機塩素化合物が、塩素化芳香族化合物で
    あることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記
    載の有機塩素化合物分解性微生物。
  7. 【請求項7】有機塩素化合物に、請求項1〜6のいずれ
    か1項に記載のラルストニア属のラルストニアsp.T
    E26(FERM P−18353)からなる有機塩素
    化合物分解性微生物を接触させることを特徴とする有機
    塩素化合物の分解方法。
  8. 【請求項8】有機塩素化合物が、トリクロロエチレン
    (TCE)又はジクロロエチレン(DCE)のいずれか
    あるいはトリクロロエチレン(TCE)及びジクロロエ
    チレン(DCE)であることを特徴とする請求項7に記
    載の有機塩素化合物の分解方法。
  9. 【請求項9】汚染環境中に含まれる有機塩素化合物に、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のラルストニア属の
    ラルストニアsp.TE26(FERM P−1835
    3)からなる有機塩素化合物分解性微生物を接触させて
    汚染環境を浄化することを特徴とする有機塩素化合物を
    含む汚染環境を浄化する方法。
  10. 【請求項10】有機塩素化合物が、トリクロロエチレン
    (TCE)又はジクロロエチレン(DCE)のいずれか
    あるいはトリクロロエチレン(TCE)及びジクロロエ
    チレン(DCE)であることを特徴とする請求項9に記
    載の有機塩素化合物を含む汚染環境を浄化する方法。
  11. 【請求項11】有機塩素化合物を分解させる際に、鉄以
    外の成分を含まない溶液中か、又は鉄以外の成分を40
    mM以下にした溶液中で、ラルストニア属のラルストニ
    アsp.TE26(FERM P−18353)からな
    る有機塩素化合物分解性微生物を接触させて、分解させ
    ることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記
    載の有機塩素化合物の分解方法。
  12. 【請求項12】無機塩培地と、炭素源としての炭酸ガス
    又は炭酸イオン、及び無機の電子供与体よりなる培地を
    用いて増殖させて得られた有機塩素化合物分解性微生物
    (菌体)を用いることを特徴とする請求項7〜11のい
    ずれか1項に記載の有機塩素化合物の分解方法。
  13. 【請求項13】有機塩素化合物によって酸化酵素を誘導
    する菌株を得るための選抜方法として、リン酸塩、無機
    態窒素、塩化ナトリウム、カルシウム塩、微量金属塩の
    合計が40mMを越えない低濃度の無機塩培地に有機塩
    素化合物を添加した培地を用いて、添加した有機塩素化
    合物の濃度の減少によって選抜する集積培養法。
  14. 【請求項14】有機塩素化合物によって請求項1〜6の
    いずれか1項に記載のラルストニア属のラルストニアs
    p.TE26(FERM P−18353)からなる有
    機塩素化合物によって酸化酵素を誘導する有機塩素化合
    物分解性微生物を得るための選抜方法として、リン酸
    塩、無機態窒素、塩化ナトリウム、カルシウム塩、微量
    金属塩の合計が40mMを越えない低濃度の無機塩培地
    に有機塩素化合物を添加した培地を用いて、添加した有
    機塩素化合物の濃度の減少によって選抜する集積培養
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100888273B1 (ko) 2006-05-26 2009-03-10 명지대학교 산학협력단 바이오필터시스템에서 톨루엔의 생물학적 분해를 위한랄스토니아 속 균주 mg1
CN104830725A (zh) * 2015-05-06 2015-08-12 重庆理工大学 可降解氯代烯烃的贪铜菌及其应用
CN106033067A (zh) * 2015-03-09 2016-10-19 中国科学院南京土壤研究所 一种土壤共代谢作用的测定方法

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