JP3436654B2 - ハロゲン化炭化水素分解菌及びその使用 - Google Patents

ハロゲン化炭化水素分解菌及びその使用

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハロゲン化炭化水
素により汚染された水又は土壌の微生物浄化処理法に関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、有機溶媒とくにハロゲン化炭化水
素は先端産業において洗浄剤等として多量に用いられて
おり、これらの物質またはこれらの物質を含む排水によ
る地下水や土壌の汚染が指摘されており、その対策が早
急に望まれている。これまでに物理的方法として、汚染
された土壌を掘削して空気を吹き込み、ハロゲン化炭化
水素を揮発せしめ、活性炭等で吸着させるエアストリッ
ピング法、汚染土壌にパイプを打ち込み、真空吸引する
ことで気化させ除去する真空抽出法などが知られ、さら
にこれらは地下水の除染にも適応できるとされている。
【0003】しかしながら、これらの方法は空気吹き込
み等に多大な動力が必要で、前者の場合は土壌の掘削を
必要とし、後者の場合は汚染物質の濃度が低下すると抽
出効率が低下して浄化が進まないという欠点がある。さ
らに、これらの方法では大気汚染等の2次汚染を防止す
る観点から、活性炭等に吸着させるため別途汚染物質の
無害化処理が必要となる。一方、近年になり、微生物に
よって汚染物を効率よく分解し無害化するいわゆる生物
浄化法に関する研究が進められている。本方法は微生物
の分解機構を用いるため、上記の物理的処理法に比べて
多大なエネルギーを必要とせず、2次汚染もなく汚染物
質を完全に分解・無害化可能と考えられている。さら
に、低濃度の汚染でも浄化可能であり、原位置での広範
囲にわたった処理が可能である等の利点を有し、低コス
トな方法として期待が大きい。
【0004】汚染土壌を微生物により浄化処理するため
の方法としては、掘削した土壌にリン、窒素等の栄養源
と共に微生物を混合して汚染物質の分解を促進する固相
処理法、掘削した土壌に水、栄養源と共に微生物を混合
し、土壌を液体状で処理することにより汚染物質の分解
を促進するスラリー処理法、掘削せずに汚染土壌中に、
空気、栄養源等を注入し、土壌中に存在する微生物によ
る汚染物質の分解を促進する原位置処理法等がある。上
記生物処理技術のうち、固相処理法及びスラリー処理法
の場合は土壌の掘削が必要で適用範囲が狭い上、処理や
設備コストは比較的高い。
【0005】一方、原位置処理法はこれらに比べコスト
が低く、広範囲にわたった処理が可能である。しかし、
土壌微生物の絶対数が少ないため浄化速度が遅い。特に
ハロゲン化炭化水素の様な難分解性の化合物では土壌中
で汚染物質を分解できる微生物が生息していない可能性
があり、その場合は浄化は不可能である。この場合は、
ハロゲン化炭化水素を分解し得る微生物を取得し、土壌
に接種することで浄化速度の向上や、汚染物質を分解で
きる微生物が生息していない土壌の浄化が可能とされて
いる。
【0006】ハロゲン化炭化水素系の汚染物質のうちト
リクロロエチレン(TCE)は、IC産業、ドライクリ
ーニングなどで多量に用いられており、汚染物質として
は特に重要である。TCEを分解する公知の微生物とし
ては、メタン資化性菌であるメチロシナス・トリコスポ
リウム(Methyrosinus tricosporium) OB3(特表平4
−501667、特開平5−212371)や、メチロ
シナス・トリコスポリウム(Methyrosinus tricosporiu
m) TUKUBA(特開平2−92274、特開平3−
292970)、
【0007】シュードモナス属であるシュードモナス・
プチダ (Pseudomonus putida) F1(特開昭64−34
499)、シュードモナス・プチダ (Pseudomonus puti
da)BH(藤田ら;ケミカルエンジニアリング、39,
(6),p494−498,1994)、シュードモナ
ス・プチダ (Pseudomonus putida) UC−R5,UC−
P2(特開昭62−84780)、シュードモナス・プ
チダ (Pseudomonus putida) KWI−9(特開平6−7
0753)、シュードモナス・メンドシナ(Pseudomonus
mendocina) KR−1(特開平2−503866、5−
502593)、シュードモナス・セパシア(Pseudomon
us cepacia) G4(特開平4−502277)、シュー
ドモナス・セパシア(Pseudomonus cepacia) KK01
(特開平6−296711)、
【0008】その他アルカリジーナス・ユートロフス
(Alcaligenes eutropus) JMP134(A.R.Harker A
ppl.Environ.Microbiol., 56, (4), 1179-1181, 1990)
、アルカリジーナス・ユートロフス(Alcaligenes eut
ropus) KS01(特開平7−123976)、アンモ
ニア細菌であるニトロソモナス・ユーロパエア(Nitros
omonus europaea)(D.Arciero et al. Biochem.Biophys.
Res.Commun., 159, (2), 640-643, 1989) 等が知られて
いる。
【0009】これらのうち、シュードモナス・セパシア
(Pseudomonus cepacia) KK01は初期濃度30ppm の
TCEを液体培養液中で15ppm まで分解し、初期濃度
が5ppm の土壌を1ppm まで分解するとの報告がある
(特開平6−296711)。また、アルカリジーナス
・ユートロフス(Alcaligenes eutropus) KS01は液
体培養液中で50ppm のTCEを検出限界以下に、1pp
m の土壌を検出限界以下に分解する能力を持つとされて
いる(特開平7−123976)。
【0010】しかしながら、これらの分解菌の分解能を
試験する際には、いずれも非常に高濃度の菌体密度(1
×108 /ml)で行っており、実際の土壌環境中では非
現実的な密度であることを考えるとこれらの分解菌の分
解能は必ずしも高くないと考えられる。従って、微生物
を土壌浄化に用いる場合にはその条件として、十分な分
解能を持ち、土壌中という特殊な環境中において土着菌
のなかにおいても分解能を発揮できるものであることが
必要である。また、分解対象であるTCEに対して分解
菌の耐性はできるだけ高いことが好ましく、さらにTC
Eだけでなく部分分解物であるジクロロエチレン(DC
E)に対しても分解能を有していることが好ましい。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ハロ
ゲン化炭化水素化合物、特に高濃度のTCE,DCE等
を効率よく分解する微生物およびそれを用いた水または
土壌の浄化方法に関する。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明はハロゲン化炭化
水素を分解する能力を有し、バークホルデリア(Burkho
lderia)属に属する微生物、およびバークホルデリア・
セパシア(Burkholderia cepacia) 種に属する微生物を
提供する。このような菌株の例としてバークホルデリア
N16−1(FERM BP−5504)、バークホル
デリア・セパシアN15−1(FERM BP−550
2)、バークホルデリア・セパシアN15−2(FER
M BP−5503)が挙げられる。本発明はさらに、
ハロゲン化炭化水素を含有する水または土壌に、上記の
微生物を添加する方法を提供する。
【0013】この本発明においては、上記微生物と共
に、微生物活性化剤を添加することを特徴としている。
これらの微生物は、30ppm のトリクロロエチレンを1
8時間で100%、または100ppm のトリクロロエチ
レンを2日間で50%分解する能力を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の微生物としては、バーク
ホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物またはバ
ークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia) 種
に属する微生物であればよいが、具体例としてバークホ
ルデリアN16−1、バークホルデリア・セパシアN1
5−1、バークホルデリア・セパシアN15−2を挙げ
ることができる。これらの菌株は河川水、土壌など自然
界から分離される新規な菌株であり、その単離方法及び
分類学的特性は実施例に具体的に記載する。これらの菌
株は、 Burkholderia N16−1, Burkholderia cepa
cia N15−1, Burkholderia cepacia N15−2と
して各々工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM
BP−5504、FERM BP−5502及びFE
RM BP−5503として平成8年4月12日に寄託
された。
【0015】本発明の微生物は、常用の炭素源及び窒素
源の存在下、必要によりさらに無機塩やビタミン類等の
微量要素を含有する培地中で培養することができる。炭
素源としては、本発明の微生物が好んで資化する炭化水
素であればいずれでも使用できる。培地中の炭素源の濃
度は、炭素源の種類により異なるが、好ましくはたとえ
ば0.1〜0.5g/Lである。窒素源としては、有機
窒素源、たとえば酵母エキス、ペプトン、肉エキス等を
使用することができ、無機窒素源としては、アンモニウ
ム塩、硝酸塩等を使用することができる。
【0016】窒素源の濃度はその種類により異なるが、
好ましくは0.1〜1.4g/Lである。無機塩類とし
てはカリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウム
イオン、鉄(II)イオン、マンガンイオン、コバルトイ
オン、ニッケルイオン等の金属イオンと、塩酸イオン、
硫酸イオン、リン酸イオン等の陰イオンとから成る塩類
が好ましい。培養は好ましくは好気的に行われ、振とう
培養あるいは大規模の培養においては、通気・攪拌培養
が好ましい。培養温度は20〜37℃、特に30℃付近
が好ましい。
【0017】本発明はまた、前記の微生物をハロゲン化
炭化水素を含有する水又は土壌に添加することを特徴と
する、水又は土壌の浄化処理方法に関する。この方法に
おいては、処理すべき水又は土壌に、前記のように培養
した本発明の微生物菌体を添加すれば良い。この菌体は
培養液の形で加えてもよく、培養液から分離して菌体と
して加えても良い。さらに微生物を別の担体に吸着させ
て添加することも可能である。菌体の添加量は、微生物
のハロゲン化水素分解能、処理すべき水又は土壌中のハ
ロゲン化炭化水素の量等により異なるが、105 〜10
9 細胞/gである。処理に必要な時間は、使用する微生
物のハロゲン化炭化水素分解能、処理すべき水又は土壌
中のハロゲン化炭化水素量、菌体の添加量により異なる
が1〜10日間程度である。
【0018】また、本発明に係る水又は土壌の浄化方法
は、請求項1〜7に記載の微生物をハロゲン化炭化水素
に汚染された水又は土壌に接種、混合してこれら水又は
土壌に含まれたハロゲン化炭化水素を分解処理する水又
は土壌の浄化方法に係り、前記水又は土壌に前記微生物
を接種、混合するに際して、少なくとも1種以上の微生
物活性化剤を添加混合することを特徴としている。この
場合、微生物活性化剤は微生物の有するハロゲン化炭化
水素分解能を活性化する役割を持ち、インデューサーと
呼ばれる。インデューサーとしては前記微生物が資化、
分解することのできる化合物、好ましくはベンゼン、ト
ルエン、フェノール、クレゾール、3−ヒドロキシ−ベ
ンジルアルコール等が使用できる。また、N16−1に
ついてはこれらに加えて、シクロペンタノール、ヘキサ
ン酸、トランス−3−ヘキセン酸、スベリン酸等を使用
できる。
【0019】本発明の方法により分解し得るハロゲン化
炭化水素としては、特に塩素化炭化水素、例えば、TC
E,DCE、モノクロロエチレン等が挙げられる。本発
明の方法は、前に記述した固相処理法やスラリー処理法
にも適用することができるが、必ずしも土壌の掘削を必
要とするこれらの方法を用いる必要はなく、本発明の微
生物を土壌又は水に添加、接種するだけでそれらの浄化
を行うことができる。
【0020】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明する。実施例1.微生物の単離及び同定 本発明に係る微生物は、化学工場敷地内の土壌より以下
の方法でスクリーニングし、単離した。採取した土壌
0.1gを、25ml容積のねじ口試験管に入れた5mlの
NMS培地もしくはM9培地に接種した。さらに500
ppm のフェノールとビタミンカクテルを添加し、キャッ
プをして30℃にて所定期間振盪培養した。微生物の増
殖による濁りが観察された培養液については、同培地に
植え継ぎ培養を継続した。10回目の培養終了後、培養
液を適宜希釈して同培地に1.5%の寒天を加えた平板
培地に塗沫し、出現した微生物コロニーを単離し、この
操作を繰り返すことにより微生物を単離した。
【0021】
【表1】
【0022】単離した菌株を同液体培地で2日間培養し
た後、フェノール、0.02%酵母エキス及び1ミリモ
ルグルコースを添加したNMS培地4mlが入った30ml
のバイアル瓶に1/100量を植菌し、TCE 10pp
m を加えた。素早くテフロンコートセプタムキャップと
アルミキャップで密封し、30℃で5日間振盪培養した
後、バイアル瓶中の気相をガスクロマトグラフィーで分
析した。こうして選抜したTCE分解能力の高い3種の
菌株について形態学的及び生理学的な性質を調べた。そ
の結果を次の表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】以上の結果から、文献 (N.R.Krieg and J.
G.Holt, "Bergey's Manual of Systematic Bacteriolog
y" Vol.1 (1984) Williams & Wilkins, J.G.Holt, N.R.
Krieg, P.H.A.Sneath, J.T.Staley and S.T.Williams,
"Bergy's Manual of Determination Bacteriology" Ni
nth Edition (1994) Williams & Wilkins, N.Zhao, C.Q
u, E.Wang and W.Chen Int.J.Syst.Bacteriol., 45, 60
0 (1995), E.Yabuuti,Y.Kosako, H.Oyaizu, I.Yano, H.
Hotta, Y.Hashimoto, T.Ezaki and M.ArakawaMicrobio
l.Immunol., 36, 1251 (1992))を参考に同定を行った結
果、1株はバークホルデリア属(Burkholderia sp.) 、
他の2株はバークホルデリア・セパシア(Burkholderia
cepacia)と同定し、各々N16−1,N15−1,N
15−2株と命名した。
【0025】バークホルデリア・セパシアに属するTC
E分解菌株としては、前述のようにG4(特開平4−5
02277)及びKK01(特開平6−296711)
が知られている。N15−1及びN15−2は表4のよ
うにいずれも運動性を持つことから、運動性がないG4
とは明らかに異なる。またG4及びKK01はトルエン
がインデューサーとなるが、N15−1,N15−2は
ならないことからも両者は異なることが明らかである。
一方、N16−1については菌体内のDNAのGC含量
が62モル%であり、TCE分解菌として知られるバー
クホルデリア属(1992年以前はシュードモナス属に
分類されていた。)のプチダ、メンドシナ、セパシアの
いずれにも該当しないことから、新規微生物と認定し
た。
【0026】実施例2.液体培地中でのTCEの分解 N15−1,N15−2及びN16−1菌株を、NMS
培地に500ppm のフェノール及びビタミンカクテルを
加えた液体培地中で各々1日培養し、遠心分離操作によ
り菌体を集菌後、4mlのフェノールをのぞいた同培地に
懸濁した。これを30mlのバイアル瓶に移し、TCE
100ppm を加え、すばやくテフロンコートシリコンセ
プタムとアルミキャップ密封した(菌体密度108 個/
ml)。このバイアル瓶を30℃にて静置培養し、定期的
に気相をガスクロマトグラフィー分析した。この結果を
図1に示す。培養液中のTCEはいずれの菌においても
5日間で70%以上が分解された。
【0027】実施例3.液体培地中でのTCEの分解 N15−1,N15−2及びN16−1菌株を、NMS
培地に0.2%酵母エキス及び5ミリモルのグルコース
を添加した液体培地中で各々1日培養した。バイアル瓶
中にNMS培地と0.02%酵母エキス、500ppm フ
ェノール及び1ミリモルのグルコースを添加した液4ml
に入れ、この中に上記培養液を各々40μlずつ植菌し
た(菌体数にして約106 個/ml)。ここにTCE 1
00ppmを加え、すばやくテフロンコートシリコンセプ
タムとアルミキャップ密封した。このバイアル瓶を30
℃にて振盪培養し、定期的に気相をガスクロマトグラフ
ィー分析した。この結果を図2に示す。
【0028】培養液中のTCEはいずれの菌においても
10日間で60%以上が分解された。この分解能を公知
のTCE分解菌と比較すると、30ppm を超えるTCE
についての報告は2例のみ知られている。うちシュード
モナス・セパシアKK01(特開平6−296711)
は30ppm TCEを2日間で15ppm 程度(50%)ま
で分解する能力を持ち、アルカリジェネスエウトロフス
KS01は108 個/mlの菌体密度において、50ppm
のTCEを4日間でガスクロマトグラフの検出限界以下
に分解できると報告されている。これらに比べて、N1
5−1,N15−2及びN16−1菌株は100ppm と
いう高濃度のTCEを分解できること及び菌体当たりの
分解能が高いことから、実際に使用する際により幅広い
汚染濃度に対応できると共に、必要とする菌体量を大幅
に減量できるため、コストを低減できる等の利点があ
る。
【0029】実施例4.液体培地中でのDCEの分解 N15−1,N15−2及びN16−1菌株を、各々N
MS培地と0.02%酵母エキス、500ppm フェノー
ル及び1ミリモルのグルコースを添加した培養液5ml中
に植菌し、30℃2日間培養後その1/100量を、3
0ppm のcis−1,2−DCEを添加した同培養液4
mlを入れたバイアル瓶中に加え、30℃にて5日間培養
した。結果を図3に示す。いずれの菌においても99%
以上の分解が認められた。
【0030】実施例5.分解時における温度の影響 N15−1,N15−2及びN16−1菌株を、各々N
MS培地と0.02%酵母エキス、500ppm フェノー
ル及び1ミリモルのグルコースを添加した培養液5ml中
に植菌し、30℃2日間培養後、その1/100量を3
0ppm のTCEを添加した同培養液4mlを入れたバイア
ル瓶中に加え、16〜30℃にて8日間培養した。N1
6−1及びN15−1の場合は、いずれの温度において
もTCEは検出限界以下にまで分解された。一方、N1
5−2は16℃においては約30%のTCEが残存した
が、20℃以上では検出限界以下となった。よって、こ
れらの菌は土壌中温度(15〜20℃)においてもTC
Eを分解できることが示された。
【0031】実施例6.分解時におけるpHの影響 N15−1,N15−2及びN16−1菌株を、各々M
9培地と0.02%酵母エキス、500ppm フェノール
及び1ミリモルのグルコースを添加した培養液(pH7.
0)5ml中に植菌し、30℃2日間培養後その1/10
0量を、フェノールの代わりに30ppm のTCEを添加
し、pHを5〜10に調整した培養液4mlを入れたバイア
ル瓶中に加え、30℃にて5日間培養した。N15−
1,N15−2はいずれのpHにおいても、30ppm TC
Eを検出限界以下まで分解した。また、N16−1はpH
が7.4以上で増殖阻害がおきるが、pH5〜7の範囲で
はTCEを検出限界以下まで分解した。
【0032】実施例7.土壌中TCEの分解試験 容積30mlのバイアル瓶に黒ボク土(愛知県内にて採取
し、風乾処理したもの)10gを入れ、TCEを20pp
m となるように添加した。N15−1,N15−2及び
N16−1菌株を、各々NMS培地と0.02%酵母エ
キス、500ppm フェノール及び1ミリモルのグルコー
スを添加した培養液20ml中に植菌し、30℃3日間振
盪培養した液を遠心分離により集菌後、フェノールを含
まないNMS培地に再懸濁して、前記のバイアル瓶中に
接種菌体量が108 〜109 個/g、培地添加後の含水
率が25%になるように加え、テフロンコートパッキン
を挟みこんだネジ式のキャップをしてから攪拌した後、
30℃て7日間培養した。
【0033】10gの土壌を共栓付き三角フラスコに秤
りとり、活性炭を通過させた空気でばっ気した90mlの
イオン交換水、5mlのリン酸、10mlのn−ヘキサンを
加え密栓した。超音波洗浄器中で20分間超音波処理を
してから、振とう機で5分間振とうした。ついで、水相
及びn−ヘキサン相を共栓付き比色管に移した。比色管
を密封して超音波処理した後、分離したn−ヘキサンを
ガスクロマトグラフィー分析した。結果を図4に示す。
【0034】初期濃度10ppm のTCEは7日間で30
〜50%が分解された。従って、本発明の微生物は自然
環境下でもその分解能が発揮された。よって、汚染され
た土壌に本微生物と水を接触させることにより、浄化す
ることが可能となる。またこの手法により、活性化剤で
あるフェノール等の化合物を直接土壌に加える事無く、
土壌浄化が可能になる。
【0035】実施例8.土壌中TCEの分解試験 容積30mlのバイアル瓶に黒ボク土(愛知県内にて採取
し、風乾処理したもの)10gを入れ、TCEを20pp
m となるように添加した。N15−1,N15−2及び
N16−1菌株を、各々NMS培地と0.02%酵母エ
キス、500ppm フェノール及び1ミリモルのグルコー
スを添加した培養液20ml中に植菌し、30℃1日間振
盪培養した。
【0036】この液を0.2mlとり、前記のバイアル瓶
中に接種菌体量が106 個/g、培地添加後の含水率が
40%及びフェノール濃度が500ppm になるように加
え、テフロンコートパッキンを挟みこんだネジ式のキャ
ップをしてから攪拌した後、30℃で3週間培養した。
図5にその結果を示す。TCEは40〜50%が分解さ
れており、これにより本微生物が106 /gという低濃
度においても自然環境下で土壌中のTCE分解し得るこ
とが示された。
【0037】実施例9.活性化剤による分解活性の誘導 N15−1,N15−2及びN16−1菌株を、NMS
培地に0.2%酵母エキス及び5ミリモルのグルコース
を添加した液体培地5ml中で各々30℃2日間培養し
た。バイアル瓶中にNMS培地と0.02%酵母エキ
ス、1ミリモルのグルコース及び活性化剤として表4に
示す化合物をいずれも100ppm 添加した液4mlを入
れ、この中に上記培養液を各々40μlずつ植菌した
(菌体数にして約106 個/ml)。ここでTCE 30
ppm を加え、すばやくテフロンコートシリコンセプタム
とアルミキャップで密封した。このバイアル瓶を30℃
にて5日間振とう培養し、気相をガスクロマトグラフィ
ー分析した。この結果を表5に示す。数値はいずれも無
菌添加時のTCE濃度を100%としたときの、菌添加
時の残存TCE濃度を%で表示する。結果を次の表3に
示す。
【0038】
【表3】
【0039】N15−1及びN15−2は、従来活性化
能誘導剤として知られていたフェノール、トルエン、ベ
ンゼン等の芳香族化合物以外にも、非芳香族化合物であ
るシクロヘキサノールによって活性化された。また、コ
ハク酸も活性化能を示した。さらに、N16−1におい
ては、シクロペンタノール、アントラニル酸、p−ヒド
ロキシ安息香酸、スベリン酸、トランス−3−ヘキセン
酸、ヘキサン酸等の直鎖カルボン酸によっても活性化さ
れた。なお、従来技術におけるバークホルデリア・セパ
シアの株KK01及びG4と、本発明の株N15−1,
N15−2及びN16−1との性質の比較を次の表4に
示す。
【0040】
【表4】
【0041】実施例10.液体培地中でのTCEの分解 N15−1、N15−2及びN16−1菌株を、NMS
培地に0.2%酵母エキス及び5ミリモルのグルコース
を添加した液体培地中で各々1日培養した。バイアル瓶
中にNMS培地と0.02%酵母エキス、100ppm フ
ェノール及び1ミリモルのグルコースを添加した液4ml
に入れ、この中に上記培養液を各々40μlずつ植菌し
た(菌体数にして約106 個/ml)。ここにTCE 3
0ppm を加え、すばやくテフロンコートシリコンセプタ
ムとアルミキャップ密封した。このバイアル瓶を30℃
にて振盪培養し、定期的に気相をガスクロマトグラフィ
ー分析した。この結果、TCEは18時間後に100%
分解された。
【0042】
【発明の効果】本発明に係る微生物によれば、好ましく
は少なくとも1種類の活性化剤ならびに糖などの栄養素
の存在下において、水又は土壌に含まれる高濃度のTC
E,DCEのごときハロゲン化炭化水素を分解すること
ができる。本発明に係る水又は土壌の浄化方法によれ
ば、多大なエネルギーを必要とせず、また2次汚染の発
生が抑えられる等のバイオ技術の利点が得られる他、自
然環境下でハロゲン化炭化水素に汚染された水又は土壌
を工業的規模で効率よく浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2でのTCEの残存率の経時的
変化を示す図である。
【図2】図2は、実施例3でのTCEの残存率の経時的
変化を示す図である。
【図3】図3は、実施例4でのcis−1,2−DCE
の残存率の経時的変化を示す図である。
【図4】図4は、実施例6でのTCEの残存率を示す図
である。
【図5】図5は、実施例7でのTCEの残存率を示す図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C02F 3/34 C12N 1/20 //(C12N 1/20 C12R 1:01 C12R 1:01) B09B 3/00 E (72)発明者 浅見 修 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 山田 幸生 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 沼田 耕一 愛知県名古屋市緑区ほら貝1−98 オリ エンタルビル202 (72)発明者 織田 泰 愛知県名古屋市昭和区戸田町1−14 (56)参考文献 特開 平6−296711(JP,A) 特表 平4−502277(JP,A) 国際公開92/019738(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 1/20 A62D 3/00 B09C 1/10 C02F 3/34 BIOSIS/WPI(DIALOG)

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハロゲン化炭化水素を分解する能力を有
    し、30ppmのトリクロロエチレンを18時間で100%、又は
    100ppmのトリクロロエチレンを2日間で50%以上分解す
    る能力を有する微生物であって、 (1) バークホルデリア(Burkholderia)属 N16-1株(FE
    RM BP-5504)、又は(2) バークホルデリア・セパシア
    (Burkholderia cepacia)種、 に属する微生物。
  2. 【請求項2】 前記ハロゲン化水素がトリクロロエチレ
    ンである請求項1に記載の微生物。
  3. 【請求項3】 バークホルデリア・セパシア N15-1(FE
    RMBP-5502)である、請求項1又は2に記載の微生物。
  4. 【請求項4】 バークホルデリア・セパシア N15-2(FE
    RMBP-5503)である、請求項1又は2に記載の微生物。
  5. 【請求項5】 ハロゲン化炭化水素を含有する水又は土
    壌に、ハロゲン化炭化水素を分解する能力を有し、30pp
    mのトリクロロエチレンを18時間で100%、又は100ppmの
    トリクロロエチレンを2日間で50%以上分解する能力を
    有するバークホルデリア(Burkholderia)属微生物を添
    加することを特徴とする、ハロゲン化炭化水素を含有す
    る水又は土壌の浄化方法。
  6. 【請求項6】 前記微生物が、バークホルデリア(Burk
    holderia)属 N16-1株(FERM BP-5504)である、請求項
    5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記微生物が、バークホルデリア・セパ
    シア(Burkholderiacepacia)種に属する、請求項5に
    記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記微生物が、バークホルデリア・セパ
    シア N15-1(FERMBP-5502)である、請求項5又は7に
    記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記微生物が、バークホルデリア・セパ
    シア N15-2(FERMBP-5503)である、請求項5又は7に
    記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記ハロゲン化炭化水素が、トリクロ
    ロエチレン、ジクロロエチレンまたはモノクロロエチレ
    ンである、請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記微生物の添加と共に水又は土壌に
    微生物活性化剤を添加することを特徴とする請求項5〜
    10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記微生物活性化剤が、ベンゼン、ト
    ルエン、フェノール、クレゾール、3-ヒドロキシ−ベン
    ジルアルコール、シクロペンタノール、ヘキサン酸、ト
    ランス-3-ヘキサン酸又はスベリン酸である、請求項1
    1に記載の方法。
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