JP2003203577A - プラズマ源装置 - Google Patents

プラズマ源装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 イオン源及びラジカル源に用いることがで
き、とくにラジカル源としての運用時には、成膜種のラ
ジカルのみを選択的に放出して基板に良質の薄膜を形成
し得るようにし、イオン源とラジカル源とに共用してそ
れぞれの良好な薄膜を形成することができる新規な複合
型蒸着装置としてのプラズマ源装置を提供する。 【解決手段】 ガスを電離してプラズマを生成する筺体
1と、筺体1の開口部3に取り付けられ、イオン源運用
時に前記プラズマからイオンを引き出すように電位設定
される引出電極系4と、ラジカル源運用時に、引出電極
系4を全てフローティング電位にし、前記プラズマのラ
ジカルを、前記引出電極系4を通して放出させる手段と
を備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオン源とラジカ
ル源とに共用されるプラズマ源装置に関し、詳しくは、
MPカソード型,バケット型等の従来のイオン源装置を
改良し、基板にイオン或いはラジカルを照射して良質の
薄膜を形成し得るようにしたプラズマ源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、MP(マイクロ波プラズマ)カソ
ード型イオン源装置は、図2に示すような構成になって
いる。同図において、1は非磁性体金属材料の主筐体、
2は主筐体1により形成された主プラズマ室、3は主筐
体1の両側に形成された開口部、4は一方の開口部3に
取り付けられたイオンビーム引出し用の引出電極系であ
り、電位の異なる加速電極5,減速電極6,接地電極7
から構成されている。8は主筐体1のフランジ及び各電
極5,6,7間に介在された絶縁体、9は主筐体1の外
側に設けられたカスプ磁場発生用の永久磁石である。
【0003】10は他方の開口部3に取り付けられた非
磁性金属材料からなる副筐体、11は副筐体10により
形成された副プラズマ室、12,13は副筐体10の両
側の磁性体又は非磁性金属材料の蓋板、14は蓋板13
の中央の電子放出孔、15は副筐体10と主筐体1間の
絶縁体、16は副プラズマ室11へのガスの導入口であ
る。
【0004】17はマイクロ波導入用の同軸ケーブル、
18は同軸ケーブル17の先端のアンテナ、19は副筐
体10の外側に設けられた環状の永久磁石であり、副プ
ラズマ室11に電子サイクロトロン共鳴(ECR)条件
以上の磁場を発生する。20は副筐体10,副プラズマ
室11,蓋板12,13,電子放出孔14,導入口1
6,同軸ケーブル17,アンテナ18,磁石19からな
るMPカソードである。
【0005】21は負極が蓋板12に接続された直流放
電用のアーク電源であり、正極が主筐体1に接続されて
いる。22は正極がアーク電源21の正極に接続された
加速電源であり、負極は接地(アース)されている。2
3は加速電源22の正極と加速電極5との間に設けられ
た高抵抗値の抵抗であり、この抵抗23を介した加速電
源22の印加により、加速電極5が正電位になる。24
は負極が減速電極6に接続された減速電源であり、正極
は接地されて減速電極6を負電位にする。なお、接地電
極7は接地されて接地電位に保たれる。
【0006】そして、このイオン源装置は基板照射用イ
オン源として使用され、その際、副筐体10をカソード
電位に保持し、導入口16からガスを供給し、副プラズ
マ室11に同軸ケーブル17,アンテナ18を介してマ
イクロ波を導入し、マイクロ波放電を発生させ、導入口
16からのガスを電離して副プラズマ25を生成する。
【0007】つぎに、副プラズマ25の生成で電離され
た電子を電子放出孔14を通って主プラズマ室2に放出
し、主プラズマ室2内の希ガス等の成膜種のイオン化ガ
スをアーク電源21の直流放電で電離して主プラズマ2
6を生成し、主プラズマ26から成膜種のイオンを引出
電極系4の引き出し作用により引き出している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】近年、蒸着の多様化等
に伴い、イオン源装置をラジカル源としても使用するこ
とが望まれ、この場合、例えば図2の従来のイオン源装
置において、加速電源22,減速電源24を出力停止,
即ちボリューム等によりその出力を0Vに降下させて接
地電位とし、圧力差により、主プラズマ26の電荷を持
たない成膜種のラジカルを、引出電極系を介して筐体外
に放出することが試みられている。しかし、加速電源2
2,減速電源24の出力を接地電位にして図2のイオン
源装置をラジカル源として運用し、成膜種のラジカルを
放出しようとすると、このとき、減速電極6,接地電極
7は接地電位であり、これに対して主プラズマ26が正
電位であるため、引出電極系4により、成膜種のイオン
が積極的に多量に引き出されて基板に照射される。した
がって、ラジカル照射の良好な成膜を形成することが困
難であり、薄膜にダメージが生じたり、絶縁物基板が正
に帯電するという問題点もある。
【0009】本発明は、前記の点に留意してなされたも
のであり、イオン源及びラジカル源に用いることがで
き、とくにラジカル源としての運用時には、成膜種のラ
ジカルのみを選択的に放出して基板に良質の薄膜を形成
し得るようにし、イオン源とラジカル源とに共用してそ
れぞれの良好な薄膜を形成することができる新規な複合
型蒸着装置としてのプラズマ源装置を提供することを目
的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明のプラズ源装置は、請求項1の場合、ガスを
電離してプラズマを生成する筺体と、前記筺体の開口部
に取り付けられ、イオン源運用時に前記プラズマからイ
オンを引き出すように電位設定される引出電極系と、ラ
ジカル源運用時に、前記引出電極系を全てフローティン
グ電位にし、前記プラズマのラジカルを、前記引出電極
系を通して放出させる手段とを備える。したがって、イ
オン源運用時は、引出電極系の電位設定に基づいてプラ
ズマからイオンが良好に引き出され、基板にイオンの良
質の薄膜が形成される。また、ラジカル源運用時は、引
出電極系を全てフローティング電位にしたため、プラズ
マからのイオンの引き出しが抑制され、プラズマのラジ
カルのみが引出電極系を通して放出され、基板にラジカ
ルの良質の薄膜が形成される。そのため、イオン源とラ
ジカル源とに共用してイオン,ラジカルそれぞれの良質
の薄膜を形成することができる新規なプラズマ源装置を
提供できる。
【0011】そして、実用的には、請求項2のように、
引出電極系を筺体内側から順の加速電極,減速電極,接
地電極により形成し、前記加速電極を、抵抗を介して前
記筺体に接続し、正極が前記筺体に接続された加速電源
と、負極が前記減速電極に接続された減速電源とを備
え、イオン源運用時に、前記加速電源の負極を接地して
前記加速電極を正電位に設定し、前記減速電源の正極を
接地して前記減速電極を負電位に設定し、前記接地電極
を接地して接地電位に設定し、ラジカル源運用時に、前
記加速電源の負極,前記減速電源の正極及び前記接地電
極を非接地状態にして前記各電極をフローティング電位
にすればよい。
【0012】また、請求項3のように、イオン源運用時
に、加速電源の負極を接地して加速電極を正電位に設定
し、減速電源の正極を接地して減速電極を負電位に設定
し、接地電極を接地して接地電位に設定し、ラジカル源
運用時に、前記加速電源の負極を接地して前記加速電源
の出力を接地電位にし、前記減速電源の正極及び前記接
地電極を非接地状態にし、前記筺体を接地電位にして前
記各電極をフローティング電位にしてもよい。さらに、
請求項2又は請求項3において、加速電源,減速電源及
び接地電極をそれぞれ各スイッチを介して接地し、ラジ
カル源運用時に、全ての前記スイッチの開放、又は前記
加速電源の出力を接地電位にした状態での前記減速電源
と前記接地電極のそれぞれの前記スイッチの開放によ
り、前記各電極をフローティング電位にすることが、一
層実用的で好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について図1
を参照して説明する。同図において、図2と同一符号は
同一もしくは相当するものを示し、図2と異なる点は、
加速電源22と接地間,減速電源24と接地間,接地電
極7と接地間にそれぞれスイッチ27,28,29を設
けた点である。
【0014】(形態1)そして、形態1の場合、通常の
イオン源運用時は、各スイッチ27,28,29が閉じ
た状態で使用され、この場合、図2の従来のイオン源装
置と全く同様に動作してイオン源を形成する。つぎに、
この形態1の場合、ラジカル源運用時は、各スイッチ2
7,28,29が全て開放され、加速電極5,減速電極
6,接地電極7の引出電極系4が全てフローティング電
位となり、いずれも負電位や接地電位にならないため、
イオンの引き出しが抑制され、主プラズマ26のラジカ
ルのみを圧力差で引出電極系4を通して選択的に放出す
る。
【0015】(形態2)この形態2の場合は、ラジカル
源運用時に、加速電源22の出力を、ボリュームにより
0Vに降下させてスイッチ27は閉状態に保ち、スイッ
チ28,29は開放する。したがって、主筐体1は接地
電位となり、加速電極5は高抵抗値の抵抗23を介する
ことによりフローティング電位となり、減速電極6,接
地電極7もフローティング電位となる。そのため、形態
1と同様、ラジカルのみが選択的に放出され、このと
き、主筐体1が接地電位になるため、イオン引き出しの
抑制等が一層効果的である。
【0016】(実験結果)つぎに、実験結果について説
明する。引出電極系4から300mm離れた位置に径が1
00mmの基板を接地して配設し、従来のイオン源装置の
場合と、形態1,形態2の構成の場合とにつき、基板に
ラジカルを照射し、それぞれの基板電流をマイクロアン
ペア計で測定し、不要なイオン流入量を測定した。その
結果、形態1,形態2の装置では基板電流、即ちイオン
流入量は検出できなかったが、従来装置では約100μ
Aもの基板電流が検出された。
【0017】以上のように、ラジカル源運用時、引出電
極系4を全てフローティング電位にしたため、主プラズ
マ26からのイオンの引き出しが抑制され、ラジカルの
み放出されて基板に良質の薄膜が形成される。また、引
出電極系4を全てフローティング電位とし、かつ、主筐
体1を接地電位とすると、より一層の効果を奏する。さ
らに、引出電極系4の電位を各スイッチ27,28,2
9により切換えるようにしたため、それらの電位の切換
えが容易であり、極めて実用的である。なお、スイッチ
27,28,29を用いる代わりにボリュームを用いて
高抵抗を挿入するようにしてもよく、また、スイッチ2
7,28,29の開閉は手動であっても自動であっても
よい。
【0018】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているため、つぎに記載する効果を奏する。本発明のプ
ラズマ源装置は、とくにラジカル源運用時に、引出電極
系4を全てフローティング電位にしたため、プラズマ
(主プラズマ26)からの成膜種のイオンの引き出しを
抑制し、ラジカルのみを引出電極系4を通じて選択的に
放出することができ、基板にラジカルの良質の薄膜を形
成することができる。そのため、イオン源とラジカル源
とに共用してイオン,ラジカルそれぞれの良質の薄膜を
形成することができる、新規で優れたプラズマ源装置を
提供することができる。
【0019】そして、請求項2のように、引出電極系4
を筺体(主筺体)1内側から順の加速電極5,減速電極
6,接地電極7により形成し、加速電極5を、抵抗23
を介して筺体1に接続し、正極を筺体1に接続した加速
電源22と、負極が減速電極6に接続された減速電源2
3とを備え、イオン源運用時は、加速電極5を正電位、
減速電極6を負電位、接地電極7を接地電位に設定し、
ラジカル源運用時は、加速電源5の負極,減速電源6の
正極及び接地電極7を非接地状態にして各電極5,6,
7をフローティング電位にすることが実用的である。
【0020】また、請求項3のように、ラジカル源運用
時に、加速電源22の負極を接地して加速電源22の出
力を接地電位にするとともに、減速電源23の正極及び
接地電極7を非接地状態にし、筺体1を接地電位にして
各電極5,6,7をフローティング電位にしてもよく、
この場合は、筺体1が接地電位になることから、ラジカ
ル源運用時のイオンの引き出しの抑制等に一層効果的で
ある。
【0021】さらに、請求項4のように、加速電源2
2,減速電源23及び接地電極7をそれぞれスイッチ2
7,28,29を介して接地し、ラジカル源運用時に、
全てのスイッチ27,28,29の開放、又は加速電源
22の出力を接地電位にした状態での減速電源23と接
地電極7のそれぞれのスイッチ28,29の開放によ
り、各電極5,6,7をフローティング電位にすれば、
それらの電位の切換えが容易に行える利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の切断正面図である。
【図2】従来のイオン源装置の切断正面図である。
【符号の説明】
1 筐体 4 引出電極系 5 加速電極 6 減速電極 7 接地電極 22 加速電源 23 抵抗 24 減速電源 26 プラズマ 27,28,29 スイッチ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田原 英明 京都市右京区梅津高畝町47番地 日新電機 株式会社内 Fターム(参考) 5C030 DD02 DE04 DE09 DG09

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガスを電離してプラズマを生成する筺体
    と、 前記筺体の開口部に取り付けられ、イオン源運用時に前
    記プラズマからイオンを引き出すように電位設定される
    引出電極系と、 ラジカル源運用時に、前記引出電極系を全てフローティ
    ング電位にし、前記プラズマのラジカルを、前記引出電
    極系を通して放出させる手段とを備えたことを特徴とす
    るプラズマ源装置。
  2. 【請求項2】 引出電極系を筺体内側から順の加速電
    極,減速電極,接地電極により形成し、 前記加速電極を、抵抗を介して前記筺体に接続し、 正極が前記筺体に接続された加速電源と、 負極が前記減速電極に接続された減速電源とを備え、 イオン源運用時に、 前記加速電源の負極を接地して前記加速電極を正電位に
    設定し、 前記減速電源の正極を接地して前記減速電極を負電位に
    設定し、 前記接地電極を接地して接地電位に設定し、 ラジカル源運用時に、 前記加速電源の負極,前記減速電源の正極及び前記接地
    電極を非接地状態にして前記各電極をフローティング電
    位にすることを特徴とする請求項1記載のプラズマ源装
    置。
  3. 【請求項3】 引出電極系を筺体内側から順の加速電
    極,減速電極,接地電極により形成し、 前記加速電極を、抵抗を介して前記筺体に接続し、 正極を前記筺体に接続された加速電源と、 負極が前記減速電極に接続された減速電源とを備え、 イオン源運用時に、 前記加速電源の負極を接地して前記加速電極を正電位に
    設定し、 前記減速電源の正極を接地して前記減速電極を負電位に
    設定し、 前記接地電極を接地して接地電位に設定し、 ラジカル源運用時に、 前記加速電源の負極を接地して前記加速電源の出力を接
    地電位にし、 前記減速電源の正極及び前記接地電極を非接地状態に
    し、 前記筺体を接地電位にして前記各電極をフローティング
    電位にすることを特徴とする請求項1記載のプラズマ源
    装置。
  4. 【請求項4】 加速電源,減速電源及び接地電極をそれ
    ぞれスイッチを介して接地し、 ラジカル源運用時に、全ての前記スイッチの開放、又は
    前記加速電源の出力を接地電位にした状態での前記減速
    電源と前記接地電極のそれぞれの前記スイッチの開放に
    より、前記各電極をフローティング電位にすることを特
    徴とする請求項2又は請求項3記載のプラズマ源装置。
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