JP2003197097A - 電界放射型電子源の製造方法 - Google Patents

電界放射型電子源の製造方法

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JP2003197097A JP2001392701A JP2001392701A JP2003197097A JP 2003197097 A JP2003197097 A JP 2003197097A JP 2001392701 A JP2001392701 A JP 2001392701A JP 2001392701 A JP2001392701 A JP 2001392701A JP 2003197097 A JP2003197097 A JP 2003197097A
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卓哉 菰田
Toru Baba
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来に比べて電子放出特性の経時安定性の向上
および製造コストの低減が可能な電界放射型電子源の製
造方法を提供する。 【解決手段】n形シリコン基板1とオーミック電極2と
からなる下部電極12上の多結晶シリコン層3を陽極酸
化処理にて多孔質化することにより多結晶シリコンのグ
レイン間に多数のシリコン微結晶が介在する多孔質多結
晶シリコン層4を形成する。その後、絶縁膜形成工程に
て各グレインおよび各シリコン微結晶それぞれの表面に
絶縁膜を形成することで強電界ドリフト層6を形成し、
次に、強電界ドリフト層6上に表面電極7を形成する。
絶縁膜形成工程では、急速熱酸化法にて各グレインおよ
び各シリコン微結晶の表面に酸化膜を形成し、急速熱窒
化法にて酸化膜の膜質を改善する。急速熱酸化法および
急速熱窒化法では、シリコン微結晶へのダメージの発生
を抑制可能な程度に熱処理時間を短縮化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電界放射により電
子線を放射するようにした電界放射型電子源の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、導電性基板の一表面側に酸化
した多孔質半導体層よりなる強電界ドリフト層を形成
し、強電界ドリフト層上に表面電極を形成した電界放射
型電子源が提案されている。
【0003】この種の電界放射型電子源10’は、例え
ば、図14に示すように導電性基板としてのn形シリコ
ン基板1の主表面側に酸化した多孔質多結晶シリコン層
(多孔質化された多結晶シリコン層)よりなる強電界ド
リフト層6が形成され、強電界ドリフト層6上に金属薄
膜(例えば、金薄膜)よりなる表面電極7が形成されて
いる。また、n形シリコン基板1の裏面にはオーミック
電極2が形成されており、n形シリコン基板1とオーミ
ック電極2とで下部電極12を構成している。なお、図
14に示す例では、下部電極12と強電界ドリフト層6
との間にノンドープの多結晶シリコン層3を介在させて
あるが、多結晶シリコン層3を介在させずに下部電極1
2上に強電界ドリフト層6を形成した構成も提案されて
いる。
【0004】図14に示す構成の電界放射型電子源1
0’から電子を放出させるには、表面電極7に対向配置
された例えば透明導電膜(例えば、ITO膜)よりなる
コレクタ電極21を設け、表面電極7とコレクタ電極2
1との間を真空とした状態で、表面電極7が下部電極1
2に対して高電位側となるように表面電極7と下部電極
12との間に直流電圧Vpsを印加するとともに、コレク
タ電極21が表面電極7に対して高電位側となるように
コレクタ電極21と表面電極7との間に直流電圧Vcを
印加する。各直流電圧Vps,Vcを適宜に設定すれば、
下部電極12から注入された電子が強電界ドリフト層6
をドリフトし表面電極7を通して放出される(図14中
の一点鎖線は表面電極7を通して放出された電子e-
流れを示す)。なお、表面電極7の厚さは10〜15n
m程度に設定されている。
【0005】上述の強電界ドリフト層6は、下部電極1
2上にノンドープの多結晶シリコン層を形成した後に、
該多結晶シリコン層を陽極酸化処理にて多孔質化するこ
とで多孔質多結晶シリコン層を形成し、この多孔質多結
晶シリコン層を急速熱酸化法によって例えば900℃の
熱処理温度で急速熱酸化することにより形成されてお
り、図15に示すように、少なくとも、n形シリコン基
板1の主表面側(つまり、下部電極12における表面電
極7側)に列設された柱状の多結晶シリコンのグレイン
51と、グレイン51の表面に形成された薄い絶縁膜5
2と、グレイン51間に介在する多数のナノメータオー
ダのシリコン微結晶63と、各シリコン微結晶63の表
面に形成され当該シリコン微結晶63の結晶粒径よりも
小さな膜厚の多数の絶縁膜64とから構成されると考え
られる。要するに、強電界ドリフト層6は、多結晶シリ
コン層の各グレインの表面が多孔質化し各グレインの中
心部分では結晶状態が維持されている。なお、各グレイ
ン51は、下部電極12の厚み方向に延びている。ま
た、各絶縁膜52,64はシリコン酸化膜により構成さ
れている。
【0006】上述の電界放射型電子源10’では、次の
ようなモデルで電子放出が起こると考えられる。すなわ
ち、表面電極7と下部電極12との間に表面電極7を高
電位側として直流電圧Vpsを印加するとともに、コレク
タ電極21と表面電極7との間にコレクタ電極21を高
電位側として直流電圧Vcを印加することにより、直流
電圧Vpsが所定値(臨界値)に達すると、下部電極12
から強電界ドリフト層6へ熱的励起により電子e-が注
入される。一方、強電界ドリフト層6に印加された電界
の大部分は絶縁膜64にかかるから、注入された電子e
-は絶縁膜64にかかっている強電界により加速され、
強電界ドリフト層6におけるグレイン51の間の領域を
表面に向かって図15中の矢印の向き(図15における
上向き)へドリフトし、表面電極7をトンネルし真空中
に放出される。
【0007】しかして、強電界ドリフト層6では下部電
極12から注入された電子がシリコン微結晶63でほと
んど散乱されることなく絶縁膜64にかかっている電界
で加速されてドリフトし、表面電極7を通して放出され
(弾道型電子放出現象)、強電界ドリフト層6で発生し
た熱がグレイン51を通して放熱されるから、電子放出
時にポッピング現象が発生せず、安定して電子を放出す
ることができる。なお、強電界ドリフト層6の表面に到
達した電子はホットエレクトロンであると考えられ、表
面電極7を容易にトンネルし真空中に放出される。
【0008】ところで、上述の電界放射型電子源10’
では、n形シリコン基板1とオーミック電極2とで下部
電極12を構成しているが、図16に示すように、例え
ばガラス基板よりなる絶縁性基板11の一表面上に金属
材料よりなる下部電極12を形成した電界放射型電子源
10”も提案されている。ここに、上述の図14に示し
た電界放射型電子源10’と同様の構成要素には同一の
符号を付して説明を省略する。
【0009】図16に示す構成の電界放射型電子源1
0”から電子を放出させるには、表面電極7に対向配置
された例えば透明導電膜(例えば、ITO膜)よりなる
コレクタ電極21を設け、表面電極7とコレクタ電極2
1との間を真空とした状態で、表面電極7が下部電極1
2に対して高電位側となるように表面電極7と下部電極
12との間に直流電圧Vpsを印加するとともに、コレク
タ電極21が表面電極7に対して高電位側となるように
コレクタ電極21と表面電極7との間に直流電圧Vcを
印加する。各直流電圧Vps,Vcを適宜に設定すれば、
下部電極12から注入された電子が強電界ドリフト層6
をドリフトし表面電極7を通して放出される(図16中
の一点鎖線は表面電極7を通して放出された電子e-
流れを示す)。なお、強電界ドリフト層6の表面に到達
した電子はホットエレクトロンであると考えられ、表面
電極7を容易にトンネルし真空中に放出される。
【0010】上述の各電界放射型電子源10’,10”
では、表面電極7と下部電極12との間に流れる電流を
ダイオード電流Ipsと呼び、コレクタ電極21と表面電
極7との間に流れる電流をエミッション電流(放出電子
電流)Ieと呼ぶことにすれば(図14および図16参
照)、ダイオード電流Ipsに対するエミッション電流I
eの比率(=Ie/Ips)が大きいほど電子放出効率
(=(Ie/Ips)×100〔%〕)が高くなる。な
お、上述の電界放射型電子源10’,10”では、表面
電極7と下部電極12との間に印加する直流電圧Vpsを
10〜20V程度の低電圧としても電子を放出させるこ
とができ、直流電圧Vpsが大きいほどエミッション電流
Ieが大きくなる。
【0011】ところで、上述の電界放射型電子源1
0’,10”の製造プロセスにおいて強電界ドリフト層
6を形成するにあたっては、下部電極12の一表面側に
半導体層としてノンドープの多結晶シリコン層を形成す
る成膜工程と、多結晶シリコン層を陽極酸化処理にて多
孔質化することにより多結晶シリコンのグレイン51お
よびシリコン微結晶63を含む多孔質多結晶シリコン層
を形成する陽極酸化処理工程と、多孔質多結晶シリコン
層を高温プロセスである急速熱酸化法によって急速熱酸
化してグレイン51およびシリコン微結晶63の表面に
それぞれ薄い絶縁膜(シリコン酸化膜)52,64を形
成する酸化工程とを有している。
【0012】陽極酸化処理工程では、陽極酸化に用いる
電解液としてフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:
1で混合した混合液を用いている。また、酸化工程で
は、例えば、ランプアニール装置を用い、基板温度を乾
燥酸素中で室温から所定の熱処理温度(例えば、900
℃)まで短時間で上昇させた後、基板温度を上記熱処理
温度である900℃で所定の熱処理時間(例えば、1時
間)だけ維持することにより酸化し、その後、基板温度
を室温まで下降させている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
電界放射型電子源10’,10”では、長時間連続して
駆動した場合にダイオード電流Ipsが経時的に減少し、
それに伴ってエミッション電流Ieも減少してしまうと
いう不具合があった。この種の不具合が発生する原因と
しては、絶縁膜64中のトラップに電子が捕獲されて絶
縁膜64にかかる電界が緩和され、電子のトンネル確率
が低下してしまうことが考えられる。
【0014】そこで、上述の製造方法で形成された電界
放射型電子源10’,10”の強電界ドリフト層6に関
して種々の分析評価(例えば、フォトルミネッセンス測
定、断面TEM観察、XPSによる組成分析など)を行
った結果、強電界ドリフト層6の表面に近づくほど絶縁
膜64の膜厚が大きくなってシリコン微結晶63が破壊
され(つまり、シリコン微結晶63にダメージが発生
し)、強電界ドリフト層6の表面近傍ではシリコン微結
晶63が存在していないこという知見が得られた。した
がって、従来の電界放射型電子源10’,10”では強
電界ドリフト層6へ注入された電子の一部が電子の平均
自由行程よりも厚い絶縁膜64で散乱されたり捕獲され
たりするために電子放出効率が低下してしまったり、絶
縁耐圧および寿命が低下してしまうことが考えられる。
【0015】さらに、上述の製造方法では、酸化工程に
おいて比較的高温の熱処理温度(例えば、900℃)で
比較的長い熱処理時間(例えば、1時間)を必要とする
プロセスを採用しているので、プロセス時間が長くなっ
てしまうという不具合や、上述の絶縁性基板11として
比較的高価な石英ガラス基板に比べて比較的安価である
が耐熱温度の低い無アルカリガラス基板や低アルカリガ
ラス基板を用いることができないという不具合があっ
た。
【0016】本発明は上記事由に鑑みて為されたもので
あり、その目的は、従来に比べて電子放出特性の経時安
定性の向上および製造コストの低減が可能な電界放射型
電子源の製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記
目的を達成するために、下部電極と、下部電極の一表面
側に形成された強電界ドリフト層と、強電界ドリフト層
上に形成された表面電極とを備え、強電界ドリフト層が
ナノメータオーダの多数の半導体微結晶と各半導体微結
晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よ
りも小さな膜厚の多数の絶縁膜とを有し、表面電極と下
部電極との間に表面電極を高電位側として電圧を印加す
ることにより下部電極から注入された電子が強電界ドリ
フト層をドリフトし表面電極を通して放出される電界放
射型電子源の製造方法であって、強電界ドリフト層にお
ける各絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程では、各半導体
微結晶へのダメージの発生を抑制可能な処理で各半導体
微結晶それぞれの表面に前記膜厚程度の酸化膜を形成す
る酸化処理と、各半導体微結晶へのダメージの発生を抑
制可能な処理で各酸化膜の膜質を改善する窒化処理とを
有することを特徴とし、各半導体微結晶へのダメージの
発生を抑制可能な処理で各半導体微結晶それぞれの表面
に前記膜厚程度の酸化膜を形成し、各半導体微結晶への
ダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜の膜質を改
善するので、従来のように急速熱酸化法により比較的長
い熱処理時間で各絶縁膜を形成する場合に比べて、電子
放出特性の経時安定性が向上し、しかも、各絶縁膜の形
成に伴う高温での熱処理時間を短縮化できるから下部電
極をガラス基板に形成するような場合にガラス基板とし
て石英ガラス基板に比べて比較的安価な無アルカリガラ
ス基板や低アルカリガラス基板などの耐熱温度が比較的
低いガラス基板を採用することが可能となり、低コスト
化を図れる。
【0018】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、急速熱酸化法により前記各半導体
微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時間で前
記各半導体微結晶それぞれの表面に前記膜厚程度の酸化
膜を形成する酸化工程からなり、前記窒化処理が、急速
熱窒化法により前記各半導体微結晶へのダメージの発生
を抑制可能な熱処理時間で各酸化膜を窒化する窒化工程
からなるので、前記酸化処理と前記窒化処理とを同一装
置内で行うことができ、前記酸化処理と前記窒化処理と
の間で不純物が付着するのを防止することができる。
【0019】請求項3の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、電気化学的な方法により前記各半
導体微結晶の表面に酸化膜を形成する酸化工程と、酸化
工程の後で各酸化膜をアニールするアニール工程とから
なり、前記窒化処理が、急速熱窒化法により前記各半導
体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時間で
各酸化膜を窒化する窒化工程からなるので、請求項2の
発明に比べて各絶縁膜の形成に伴う高温での熱処理時間
をさらに短縮化できる。また、前記各半導体微結晶を湿
式の陽極酸化処理を利用して形成する場合に、陽極酸化
処理の後に大気中に曝すことなく酸化工程にて前記各半
導体微結晶の表面に酸化膜を形成することが可能になる
ので、前記各半導体微結晶それぞれの表面に自然酸化膜
が形成されるのを防止することができ、酸化工程にて前
記各半導体微結晶それぞれの表面に良質な酸化膜を形成
することが可能になる。
【0020】請求項4の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、電気化学的な方法で前記各半導体
微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成する第1の酸化工
程と、第1の酸化工程の後で各酸化膜をアニールするア
ニール工程と、アニール工程の後で急速熱酸化法により
前記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱
処理時間で各酸化膜をさらに酸化する第2の酸化工程と
からなり、前記窒化処理が、急速熱窒化法により前記各
半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時
間で前記各酸化膜を窒化する窒化工程からなるので、請
求項3の発明に比べて各絶縁膜中の欠陥を低減でき、電
子放出特性を向上させることが可能になる。
【0021】請求項5の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、電気化学的な方法により前記各半
導体微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成する酸化工程
からなり、前記窒化処理が、各酸化膜を窒化性ガス雰囲
気中でアニールするアニール工程からなるので、請求項
2の発明に比べて各絶縁膜の形成に伴う高温での熱処理
時間をさらに短縮化できる。また、前記各半導体微結晶
を湿式の陽極酸化処理を利用して形成する場合に、陽極
酸化処理の後に大気中に曝すことなく前記酸化工程にて
前記各半導体微結晶の表面に酸化膜を形成することが可
能になるので、前記各半導体微結晶それぞれの表面に自
然酸化膜が形成されるのを防止することができ、酸化工
程にて前記各半導体微結晶それぞれの表面に良質な酸化
膜を形成することが可能になる。
【0022】請求項6の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、電気化学的な方法により前記各半
導体微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成する第1の酸
化工程からなり、前記窒化処理が、各酸化膜を窒化性ガ
ス雰囲気中でアニールするアニール工程からなり、前記
絶縁膜形成工程は、前記窒化処理の後で急速熱酸化法に
より前記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能
な熱処理時間で各酸化膜をさらに酸化する第2の酸化工
程と、第2の酸化工程の後で急速熱窒化法により前記各
半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時
間で各酸化膜を窒化する窒化工程とを有するので、各絶
縁膜中の欠陥を低減でき、電子放出特性を向上させるこ
とが可能になる。また、前記各半導体微結晶を湿式の陽
極酸化処理を利用して形成する場合に、陽極酸化処理の
後に大気中に曝すことなく第1の酸化工程にて前記各半
導体微結晶の表面に酸化膜を形成することが可能になる
ので、前記各半導体微結晶それぞれの表面に自然酸化膜
が形成されるのを防止することができ、第1の酸化工程
にて前記各半導体微結晶それぞれの表面に良質な酸化膜
を形成することが可能になる。
【0023】請求項7の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、電気化学的な方法により前記各半
導体微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成する酸化工程
からなり、前記窒化処理が、各酸化膜を窒化性ガス雰囲
気中でアニールするアニール工程と、アニール工程の後
で急速熱窒化法により前記各半導体微結晶へのダメージ
の発生を抑制可能な熱処理時間で各酸化膜を窒化する窒
化工程とからなるので、各絶縁膜中の欠陥を低減でき、
電子放出特性を向上させることが可能になる。また、前
記各半導体微結晶を湿式の陽極酸化処理を利用して形成
する場合に、陽極酸化処理の後に大気中に曝すことなく
酸化工程にて前記各半導体微結晶の表面に酸化膜を形成
することが可能になるので、前記各半導体微結晶それぞ
れの表面に自然酸化膜が形成されるのを防止することが
でき、酸化工程にて前記各半導体微結晶それぞれの表面
に良質な酸化膜を形成することが可能になる。
【0024】請求項8の発明は、下部電極と、下部電極
の一表面側に形成された強電界ドリフト層と、強電界ド
リフト層上に形成された表面電極とを備え、強電界ドリ
フト層がナノメータオーダの多数の半導体微結晶と各半
導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の結
晶粒径よりも小さな膜厚の多数の絶縁膜とを有し、表面
電極と下部電極との間に表面電極を高電位側として電圧
を印加することにより下部電極から注入された電子が強
電界ドリフト層をドリフトし表面電極を通して放出され
る電界放射型電子源の製造方法であって、強電界ドリフ
ト層における各絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程では、
各半導体微結晶を形成した後に、急速熱酸化法による前
記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処
理時間での酸化処理と酸化処理後の急速熱窒化法による
前記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱
処理時間での窒化処理とからなる基本工程を複数回繰り
返すことで各絶縁膜を形成することを特徴とし、従来の
ように急速熱酸化法により比較的長い熱処理時間で各絶
縁膜を形成する場合に比べて、電子放出特性の経時安定
性が向上し、しかも、各絶縁膜の形成に伴う高温での熱
処理時間を短縮化できるから下部電極をガラス基板に形
成するような場合にガラス基板として石英ガラス基板に
比べて比較的安価な無アルカリガラス基板や低アルカリ
ガラス基板などの耐熱温度が比較的低いガラス基板を採
用することが可能となり、低コスト化を図れる。
【0025】請求項9の発明は、請求項2ないし請求項
8の発明において、前記熱処理時間が5分を超えないこ
とを特徴とし、実施態様である。
【0026】
【発明の実施の形態】(実施形態1)本実施形態で説明
する図2に示す構成の電界放射型電子源10では、導電
性基板として抵抗率が導体の抵抗率に比較的近い単結晶
のn形シリコン基板(例えば、抵抗率が略0.01Ωc
m〜0.02Ωcmの(100)基板)1を用いてい
る。
【0027】本実施形態の電界放射型電子源10は、図
2に示すように、n形シリコン基板1の主表面側に酸化
した多孔質多結晶シリコン層よりなる強電界ドリフト層
6が形成され、強電界ドリフト層6上に表面電極7が形
成され、n形シリコン基板1の裏面にオーミック電極2
が形成されている。なお、本実施形態では、n形シリコ
ン基板1とオーミック電極2とで下部電極12を構成し
ている。したがって、表面電極7は下部電極12に対向
しており、下部電極12と表面電極7との間に強電界ド
リフト層6が介在している。
【0028】表面電極7は、例えば、Au,Pt,Cr
などの仕事関数が小さく耐酸化性が高くて化学的に安定
な金属からなる金属膜あるいはこれらの金属膜の積層膜
により形成すればよい。なお、表面電極7の厚さは10
〜15nm程度の範囲内で設定すればよい。
【0029】図2に示す構成の電界放射型電子源10か
ら電子を放出させるには、図3に示すように、表面電極
7に対向配置された例えば透明導電膜(例えば、ITO
膜)よりなるコレクタ電極21を設け、表面電極7とコ
レクタ電極21との間を真空とした状態で、表面電極7
が下部電極12に対して高電位側となるように表面電極
7と下部電極12との間に直流電圧Vpsを印加するとと
もに、コレクタ電極21が表面電極7に対して高電位側
となるようにコレクタ電極21と表面電極7との間に直
流電圧Vcを印加する。各直流電圧Vps,Vcを適宜に
設定すれば、下部電極12から注入された電子が強電界
ドリフト層6をドリフトし表面電極7を通して放出され
る(図3中の一点鎖線は表面電極7を通して放出された
電子e-の流れを示す)。
【0030】本実施形態における電界放射型電子源10
では、表面電極7と下部電極12との間に流れる電流を
ダイオード電流Ipsと呼び、コレクタ電極21と表面電
極7との間に流れる電流をエミッション電流(放出電子
電流)Ieと呼ぶことにすれば(図3参照)、ダイオー
ド電流Ipsに対するエミッション電流Ieの比率(=I
e/Ips)が大きいほど電子放出効率(=(Ie/Ip
s)×100〔%〕)が高くなる。なお、本実施形態の
電界放射型電子源10では、表面電極7と下部電極12
との間に印加する直流電圧Vpsを10〜20V程度の低
電圧としても電子を放出させることができ、直流電圧V
psが大きいほどエミッション電流Ieが大きくなる。
【0031】ところで、本実施形態における強電界ドリ
フト層6は、従来例と同様、図15に示すように、少な
くとも、n形シリコン基板1の主表面側(つまり、下部
電極12における表面電極7側)に列設された柱状の多
結晶シリコンのグレイン(半導体結晶)51と、グレイ
ン51の表面に形成された薄い絶縁膜52と、グレイン
51間に介在する多数のナノメータオーダのシリコン微
結晶(半導体微結晶)63と、各シリコン微結晶63の
表面に形成され当該シリコン微結晶63の結晶粒径より
も小さな膜厚の多数の絶縁膜64とから構成されると考
えられる。要するに、強電界ドリフト層6は、多結晶シ
リコン層の各グレインの表面が多孔質化し各グレインの
中心部分では結晶状態が維持されている。なお、各グレ
イン51は、下部電極12の厚み方向に延びている。ま
た、絶縁膜52,64については後述する製造方法の説
明の際に詳述する。
【0032】本実施形態の電界放射型電子源10では、
次のようなモデルで電子放出が起こると考えられる。す
なわち、表面電極7を真空中に配置し表面電極7と下部
電極12との間に表面電極7を高電位側として直流電圧
Vpsを印加するとともに、コレクタ電極21と表面電極
7との間にコレクタ電極21を高電位側として直流電圧
Vcを印加することにより、直流電圧Vpsが所定値(臨
界値)に達すると、下部電極12(n形シリコン基板
1)から強電界ドリフト層6へ熱的励起により電子e-
が注入される。一方、強電界ドリフト層6に印加された
電界の大部分は絶縁膜64にかかるから、注入された電
子e-は絶縁膜64にかかっている強電界により加速さ
れ、強電界ドリフト層6におけるグレイン51の間の領
域を表面に向かって図15中の矢印の向き(図15中の
上向き)へドリフトし、表面電極7をトンネルして真空
中に放出される。
【0033】しかして、強電界ドリフト層6では下部電
極12から注入された電子がシリコン微結晶63でほと
んど散乱されることなく、絶縁膜64にかかっている強
電界で加速されてドリフトし表面電極7を通して放出さ
れ(弾道型電子放出現象)、強電界ドリフト層6で発生
した熱がグレイン51を通して放熱されるから、電子放
出時にポッピング現象が発生せず、安定して電子を放出
することができるものと考えられる。なお、強電界ドリ
フト層6の表面に到達した電子はホットエレクトロンで
あると考えられ、表面電極7を容易にトンネルし真空中
に放出される。
【0034】以下、本実施形態の電界放射型電子源10
の製造方法について図1を参照しながら説明する。
【0035】まず、n形シリコン基板1の裏面にオーミ
ック電極2を形成した後、n形シリコン基板1の主表面
(一表面)上に半導体層としてノンドープの多結晶シリ
コン層3を形成する成膜工程を行うことにより、図1
(a)に示すような構造が得られる。なお、多結晶シリ
コン層3の成膜方法としては、例えば、CVD法(例え
ば、LPCVD法、プラズマCVD法、触媒CVD法な
ど)やスパッタ法やCGS(Continuous Grain Silic
on)法などを採用すればよい。
【0036】ノンドープの多結晶シリコン層3を形成し
た後、電解液を用いた陽極酸化処理にて陽極酸化の対象
となる半導体層である多結晶シリコン層3を多孔質化す
る陽極酸化処理工程を行うことにより、多孔質半導体層
である多孔質多結晶シリコン層4が形成され、図1
(b)に示すような構造が得られる。ここにおいて、陽
極酸化処理工程により形成された多孔質多結晶シリコン
層4は、多数の多結晶シリコンのグレイン51(図15
参照)および多数のシリコン微結晶63(図15参照)
を含んでいる。また、陽極酸化処理工程では、55wt
%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合
した混合液からなる電解液の入った処理槽を利用してお
り、500Wのタングステンランプからなる光源により
多結晶シリコン層3の表面に光照射を行いながら下部電
極12と白金電極よりなる陰極との間に電流を流すこと
で多結晶シリコン層3を主表面から所定深さ(本実施形
態では、下部電極12に達しない深さに設定してある
が、下部電極12に達する深さに設定してもよい)まで
多孔質化している。
【0037】上述の陽極酸化処理工程の終了した後に、
エタノールによるリンスを行ってから、多孔質多結晶シ
リコン層4に含まれている各グレイン51および各シリ
コン微結晶63の表面に上述の絶縁膜52,64を形成
する絶縁膜形成工程を行うことによって、上述のグレイ
ン51、シリコン微結晶63、各絶縁膜52,64を含
む強電界ドリフト層6が形成され、図1(c)に示すよ
うな構造が得られる。なお、絶縁膜形成工程については
後述する。
【0038】強電界ドリフト層6を形成した後は、金属
材料(例えば、金)からなる表面電極7を蒸着法などに
よって形成することにより、図1(d)に示す構造の電
界放射型電子源10が得られる。なお、本実施形態で
は、表面電極7を蒸着法により形成しているが、表面電
極7の形成方法は蒸着法に限定されるものではなく、例
えばスパッタ法を用いてもよい。
【0039】ところで、上述の絶縁膜形成工程では、各
シリコン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能な処
理で各シリコン微結晶63それぞれの表面に上記膜厚
(シリコン微結晶63の結晶粒径よりも小さな膜厚)程
度の酸化膜(シリコン酸化膜)を形成する酸化処理と、
各シリコン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能な
処理で各酸化膜(シリコン酸化膜)の膜質を改善する窒
化処理とを有している。
【0040】酸化処理は、急速熱酸化法により各シリコ
ン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時
間(以下、第1の規定の熱処理時間と称す)で各シリコ
ン微結晶63それぞれの表面に上記膜厚程度の酸化膜を
形成する酸化工程からなる。この酸化工程では、ランプ
アニール装置を用い、例えば酸素ガス雰囲気中において
第1の規定の熱処理温度(例えば、900℃)で上記第
1の規定の熱処理時間(例えば、5分)だけ酸化を行
う。すなわち、第1の規定の熱処理時間は従来の急速熱
酸化法による酸化工程での所定の熱処理時間(1時間)
に比べて大幅に短縮してある。ここに、第1の規定の熱
処理時間は、製造した電界放射型電子源10の電子放出
特性の測定結果から5分以内に設定することでが望まし
いことを確認している。ただし、第1の規定の熱処理温
度まで基板温度を上昇させる昇温期間の昇温速度は20
℃/sec以上、望ましくは150℃/sec以上に設
定する。
【0041】また、窒化処理は、急速熱窒化法により各
シリコン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能な熱
処理時間(以下、第2の規定の熱処理時間と称す)で各
酸化膜を窒化する窒化工程からなる。この窒化工程で
は、ランプアニール装置を用い、例えばN2Oガス雰囲
気中において第2の規定の熱処理温度(例えば、900
℃)で上記第2の規定の熱処理時間(例えば、5分)だ
け窒化を行う。ここに、第2の規定の熱処理時間は、製
造した電界放射型電子源10の電子放出特性の測定結果
から5分以内に設定することでが望ましいことを確認し
ている。ただし、第2の規定の熱処理温度まで基板温度
を上昇させる昇温期間の昇温速度は20℃/sec以
上、望ましくは150℃/sec以上に設定する。ま
た、本実施形態では、窒化工程においてN2Oガスを利
用しているので、各酸化膜の窒化と同時に酸化も進むか
ら、結果的に各絶縁膜52,64は酸窒化膜(シリコン
酸窒化膜)になる。なお、窒化工程で用いるガスはN2
Oガスに限らず、例えばNOガス,NH3ガスなどを用
いてもよい。
【0042】しかして、上述の製造方法によれば、絶縁
膜52,64を形成する絶縁膜形成工程において、各シ
リコン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能な処理
で各シリコン微結晶63それぞれの表面に上記膜厚程度
の酸化膜を形成するとともにグレイン51の表面に酸化
膜を形成し、各シリコン微結晶63へのダメージの発生
を抑制可能な処理で各酸化膜を窒化して膜質を改善する
ので、従来のように急速熱酸化法により比較的長い熱処
理時間(例えば、1時間)で各絶縁膜52,64を形成
する場合に比べて、電子放出特性の経時安定性が向上す
る。しかも、各絶縁膜52,64の形成に伴う高温での
熱処理時間を短縮化できるから、図16に示した従来構
成のように下部電極12をガラス基板のような絶縁性基
板11上に形成するような場合にガラス基板として石英
ガラス基板に比べて比較的安価な無アルカリガラス基板
や低アルカリガラス基板などの耐熱温度が比較的低いガ
ラス基板を採用することが可能となり、低コスト化を図
れる。また、本実施形態では、上記酸化処理と上記窒化
処理とを同一装置内で行うことができるので、上記酸化
処理と上記窒化処理との間で不純物が付着するのを防止
することができる。
【0043】上述の製造方法にて製造した電界放射型電
子源10の電子放出特性を図4に、電子放出特性の経時
変化を測定した結果を図5にそれぞれ示し、また、絶縁
膜形成工程において急速熱窒化法のみを採用し熱処理温
度を900℃、熱処理時間を5分とした比較例1の電界
放射型電子源の電子放出特性を図6に、比較例1の電子
放出特性の経時変化を測定した結果を図7にそれぞれ示
し、また、絶縁膜形成工程において急速熱窒化法のみを
採用し熱処理温度を900℃、熱処理時間を60分とし
た比較例2の電界放射型電子源の電子放出特性を図8
に、比較例2の電子放出特性の経時変化を測定した結果
を図9にそれぞれ示す。
【0044】電界放射型電子源10および各比較例1,
2の電界放射型電子源の電子放出特性の測定は、真空チ
ャンバ(図示せず)内に電界放射型電子源10ないし比
較例1,2の電界放射型電子源を導入して、上述の図1
4のように、表面電極7に対向してコレクタ電極21を
配置し、表面電極7を下部電極12に対して高電位側と
して直流電圧Vpsを印加するとともに、コレクタ電極2
1を表面電極7に対して高電位側として直流電圧Vcを
印加することによって行った。
【0045】図4,6,8は直流電圧Vcを100V一
定、真空チャンバ内の真空度を5×10-5Paとしたと
きの電子放出特性の測定結果を示したものであって、横
軸が直流電圧Vps、縦軸が電流密度であり、「イ」がダ
イオード電流Ipsの電流密度、「ロ」がエミッション電
流Ieの電流密度を示している。また、図5,7,9は
は直流電圧Vcを100V一定、真空チャンバ内の真空
度を5×10-5Paとしたときの電子放出特性の経時変
化の測定結果を示したものであって、横軸が駆動開始か
らの経過時間、左側の縦軸が電流密度、右側の縦軸が電
子放出効率であり、「イ」がダイオード電流Ipsの電流
密度、「ロ」がエミッション電流Ieの電流密度、
「ハ」が電子放出効率を示している。ただし、図5は直
流電圧Vpsを15V一定とした場合、図7は直流電圧V
psを11V一定とした場合、図9は直流電圧Vpsを15
V一定とした場合の測定結果である。図4〜9から、本
実施形態の電界放射型電子源10では比較例1,2の電
界放射型電子源に比べて電子放出特性の経時安定性が向
上していることが分かる。
【0046】ところで、本実施形態では、n形シリコン
基板1とオーミック電極2とで下部電極12を構成して
いるが、絶縁性基板(例えば、ガラス基板、セラミック
基板など)の一表面側に金属材料や高濃度ドープされた
多結晶シリコン層からなる下部電極12を形成した構成
を採用するようにしてもよい。また、n形シリコン基板
1の表面側の一部を上述の陽極酸化処理工程にて多孔質
化することで多孔質半導体層たる多結晶シリコン層を形
成し、この多孔質シリコン層に対して上述の絶縁膜形成
工程を行うようにしてもよい。
【0047】(実施形態2)本実施形態では、実施形態
1で説明した製造方法において絶縁膜形成工程が相違す
るだけなので、絶縁膜形成工程についてのみ説明する。
【0048】ただし、本実施形態においても、絶縁膜形
成工程では、各シリコン微結晶(半導体微結晶)63へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各シリコン微結晶
63それぞれの表面に上記膜厚(シリコン微結晶63の
結晶粒径よりも小さな膜厚)程度の酸化膜(シリコン酸
化膜)を形成する酸化処理と、各シリコン微結晶63へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜(シリコ
ン酸化膜)の膜質を改善する窒化処理とを有している。
【0049】ここにおいて、本実施形態における酸化処
理は、電気化学的な方法により各シリコン微結晶63の
表面に酸化膜を形成する酸化工程と、酸化工程の後で各
酸化膜をアニールするアニール工程とからなる。酸化工
程では、上述の陽極酸化処理工程の終了後にエタノール
によるリンスを行ってから、所定濃度(例えば1mol
/l=1M)の硫酸水溶液の入った処理槽を利用し、下
部電極12と白金電極よりなる陰極との間に定電圧を印
加する電気化学的な方法により各グレイン51および各
シリコン微結晶63それぞれの表面に上記膜厚程度の酸
化膜を形成する。ここに、酸化工程で用いる電解液は硫
酸水溶液に限らず、例えば、硝酸水溶液、王水などを用
いてもよいし、あるいは有機溶媒中に溶質を溶かした電
解液を用いてもよい。酸化工程の後のアニール工程で
は、ランプアニール装置を用い、例えばN2Oガス雰囲
気中において所定のアニール温度(例えば、450℃)
で所定のアニール時間(例えば、1時間)だけアニール
を行う。なお、アニール温度は、500℃以下に設定す
ることが好ましい。電気化学的な方法による酸化膜は室
温で形成することができるので、アニール温度を500
℃以下に設定することで、実施形態1に比べて酸化工程
における高温(例えば、900℃)での熱処理をなくす
ことができる。また、アニール温度を500℃以下に設
定することで、図16に示した従来構成のように下部電
極12をガラス基板のような絶縁性基板11上に形成す
るような場合に酸化工程がガラス基板に与える影響をな
くすことができる。
【0050】また、窒化処理は、急速熱窒化法により各
シリコン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能な熱
処理時間(以下、実施形態1と同様に第2の規定の熱処
理時間と称す)で各酸化膜を窒化する窒化工程からな
る。この窒化工程では、ランプアニール装置を用い、例
えばN2Oガス雰囲気中において第2の規定の熱処理温
度(例えば、900℃)で上記第2の規定の熱処理時間
(例えば、5分)だけ窒化を行う。ここに、第2の規定
の熱処理時間は、製造した電界放射型電子源10の電子
放出特性の測定結果から5分以内に設定することでが望
ましいことを確認している。ただし、第2の規定の熱処
理温度まで基板温度を上昇させる昇温期間の昇温速度は
20℃/sec以上、望ましくは150℃/sec以上
に設定する。また、本実施形態では、窒化工程において
2Oガスを利用しているので、各酸化膜の窒化と同時
に酸化も進むから、結果的に各絶縁膜52,64は酸窒
化膜(シリコン酸窒化膜)になる。なお、窒化工程で用
いるガスはN2Oガスに限らず、例えばNOガス,NH3
ガスなどを用いてもよい。
【0051】本実施形態の製造方法によれば、実施形態
1と同様、絶縁膜52,64を形成する絶縁膜形成工程
において、各シリコン微結晶63へのダメージの発生を
抑制可能な処理で各シリコン微結晶63それぞれの表面
に上記膜厚程度の酸化膜を形成するとともにグレイン5
1の表面に酸化膜を形成し、各シリコン微結晶63への
ダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜を窒化して
膜質を改善するので、従来のように急速熱酸化法により
比較的長い熱処理時間(例えば、1時間)で各絶縁膜5
2,64を形成する場合に比べて、電子放出特性の経時
安定性が向上する。しかも、各絶縁膜52,64の形成
に伴う高温での熱処理時間を短縮化できるから、図16
に示した従来構成のように下部電極12をガラス基板の
ような絶縁性基板11上に形成するような場合にガラス
基板として石英ガラス基板に比べて比較的安価な無アル
カリガラス基板や低アルカリガラス基板などの耐熱温度
が比較的低いガラス基板を採用することが可能となり、
低コスト化を図れる。また、実施形態1に比べて、絶縁
膜形成工程における高温(例えば、900℃)での熱処
理時間をさらに短縮化できる。また、各シリコン微結晶
63を湿式の陽極酸化処理を利用して形成しているの
で、陽極酸化処理の後に大気中に曝すことなく酸化工程
にて各シリコン微結晶63および各グレイン51それぞ
れの表面に酸化膜を形成することが可能になるから、各
シリコン微結晶63およびグレイン51それぞれの表面
に自然酸化膜が形成されるのを防止することができ、酸
化工程にて各シリコン微結晶63および各グレイン51
それぞれの表面に良質な酸化膜を形成することが可能に
なる。
【0052】本実施形態の製造方法にて製造した電界放
射型電子源10の電子放出特性を図10に、電子放出特
性の経時変化を測定した結果を図11にそれぞれ示す。
【0053】本実施形態の電界放射型電子源10の電子
放出特性の測定は、真空チャンバ(図示せず)内に電界
放射型電子源10を導入して、上述の図14のように、
表面電極7に対向してコレクタ電極21を配置し、表面
電極7を下部電極12に対して高電位側として直流電圧
Vpsを印加するとともに、コレクタ電極21を表面電極
7に対して高電位側として直流電圧Vcを印加すること
によって行った。
【0054】図10は直流電圧Vcを100V一定、真
空チャンバ内の真空度を5×10-5Paとしたときの電
子放出特性の測定結果を示したものであって、横軸が直
流電圧Vps、縦軸が電流密度であり、「イ」がダイオー
ド電流Ipsの電流密度、「ロ」がエミッション電流Ie
の電流密度を示している。また、図11は直流電圧Vc
を100V一定、直流電圧Vpsを16V一定、真空チャ
ンバ内の真空度を5×10-5Paとしたときの電子放出
特性の経時変化の測定結果を示したものであって、横軸
が駆動開始からの経過時間、左側の縦軸が電流密度、右
側の縦軸が電子放出効率であり、「イ」がダイオード電
流Ipsの電流密度、「ロ」がエミッション電流Ieの電
流密度、「ハ」が電子放出効率を示している。図10,
11および実施形態1で説明した比較例1,2に関する
測定結果を示した図6〜9から、本実施形態の電界放射
型電子源10では比較例1,2の電界放射型電子源に比
べて電子放出特性の経時安定性が向上していることが分
かる。
【0055】(実施形態3)本実施形態では、実施形態
1で説明した製造方法において絶縁膜形成工程が相違す
るだけなので、絶縁膜形成工程についてのみ説明する。
【0056】ただし、本実施形態においても、絶縁膜形
成工程では、各シリコン微結晶(半導体微結晶)63へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各シリコン微結晶
63それぞれの表面に上記膜厚(シリコン微結晶63の
結晶粒径よりも小さな膜厚)程度の酸化膜(シリコン酸
化膜)を形成する酸化処理と、各シリコン微結晶63へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜(シリコ
ン酸化膜)の膜質を改善する窒化処理とを有している。
【0057】ここにおいて、本実施形態における酸化処
理は、電気化学的な方法により各シリコン微結晶63の
表面に酸化膜を形成する第1の酸化工程と、第1の酸化
工程の後で各酸化膜をアニールするアニール工程と、ア
ニール工程の後で急速熱酸化法により各シリコン微結晶
63へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時間で各酸
化膜をさらに酸化する第2の酸化工程とからなる。第1
の酸化工程では、上述の陽極処理工程の終了後にエタノ
ールによるリンスを行ってから、所定濃度(例えば1m
ol/l=1M)の硫酸水溶液の入った処理槽を利用
し、下部電極12と白金電極よりなる陰極との間に定電
圧を印加する電気化学的な方法により各グレイン51お
よび各シリコン微結晶63それぞれの表面に上記膜厚程
度の酸化膜を形成する。ここに、第1の酸化工程で用い
る電解液は硫酸水溶液に限らず、例えば、硝酸水溶液、
王水などを用いてもよいし、あるいは有機溶媒中に溶質
を溶かした電解液を用いてもよい。第1の酸化工程の後
のアニール工程では、ランプアニール装置を用い、例え
ばN2Oガス雰囲気中において所定のアニール温度(例
えば、450℃)で所定のアニール時間(例えば、1時
間)だけアニールを行う。アニール温度は、500℃以
下に設定することが好ましい。アニール温度を500℃
以下に設定することで、図16に示した従来構成のよう
に下部電極12をガラス基板のような絶縁性基板11上
に形成するような場合にアニール工程がガラス基板に与
える影響をなくすことができる。第2の酸化工程では、
ランプアニール装置を用い、例えば酸素ガス雰囲気中に
おいて第1の規定の熱処理温度(例えば、900℃)で
第1の規定の熱処理時間(例えば、5分)だけ酸化を行
う。すなわち、第1の規定の熱処理時間は従来の急速熱
酸化法による酸化工程での所定の熱処理時間(1時間)
に比べて大幅に短縮してある。ここに、第1の規定の熱
処理時間は、製造した電界放射型電子源10の電子放出
特性の測定結果から5分以内に設定することでが望まし
いことを確認している。ただし、第1の規定の熱処理温
度まで基板温度を上昇させる昇温期間の昇温速度は20
℃/sec以上、望ましくは150℃/sec以上に設
定する。
【0058】また、窒化処理は、急速熱窒化法により各
シリコン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能な熱
処理時間(以下、第2の規定の熱処理時間と称す)で各
酸化膜を窒化する窒化工程からなる。この窒化工程で
は、ランプアニール装置を用い、例えばN2Oガス雰囲
気中において第2の規定の熱処理温度(例えば、900
℃)で上記第2の規定の熱処理時間(例えば、5分)だ
け窒化を行う。ここに、第2の規定の熱処理時間は、製
造した電界放射型電子源10の電子放出特性の測定結果
から5分以内に設定することでが望ましいことを確認し
ている。ただし、第2の規定の熱処理温度まで基板温度
を上昇させる昇温期間の昇温速度は20℃/sec以
上、望ましくは150℃/sec以上に設定する。ま
た、本実施形態では、窒化工程においてN2Oガスを利
用しているので、各酸化膜の窒化と同時に酸化も進むか
ら、結果的に各絶縁膜52,64は酸窒化膜(シリコン
酸窒化膜)になる。なお、窒化工程で用いるガスはN2
Oガスに限らず、例えばNOガス,NH3ガスなどを用
いてもよい。
【0059】本実施形態の製造方法によれば、実施形態
1と同様、絶縁膜52,64を形成する絶縁膜形成工程
において、各シリコン微結晶63へのダメージの発生を
抑制可能な処理で各シリコン微結晶63それぞれの表面
に上記膜厚程度の酸化膜を形成するとともにグレイン5
1の表面に酸化膜を形成し、各シリコン微結晶63への
ダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜を窒化して
膜質を改善するので、従来のように急速熱酸化法により
比較的長い熱処理時間(例えば、1時間)で各絶縁膜5
2,64を形成する場合に比べて、電子放出特性の経時
安定性が向上する。しかも、各絶縁膜52,64の形成
に伴う高温での熱処理時間を短縮化できるから、図16
に示した従来構成のように下部電極12をガラス基板の
ような絶縁性基板11上に形成するような場合にガラス
基板として石英ガラス基板に比べて比較的安価な無アル
カリガラス基板や低アルカリガラス基板などの耐熱温度
が比較的低いガラス基板を採用することが可能となり、
低コスト化を図れる。また、実施形態2の製造方法に比
べて、各絶縁膜52,64中の欠陥を低減でき、電子放
出特性を向上できる。また、各シリコン微結晶63を湿
式の陽極酸化処理を利用して形成しているので、陽極酸
化処理の後に大気中に曝すことなく第1の酸化工程にて
各シリコン微結晶63および各グレイン51それぞれの
表面に酸化膜を形成することが可能になるから、各シリ
コン微結晶63およびグレイン51それぞれの表面に自
然酸化膜が形成されるのを防止することができ、第1の
酸化工程にて各シリコン微結晶63および各グレイン5
1それぞれの表面に良質な酸化膜を形成することが可能
になる。
【0060】(実施形態4)本実施形態では、実施形態
1で説明した製造方法において絶縁膜形成工程が相違す
るだけなので、絶縁膜形成工程についてのみ説明する。
【0061】ただし、本実施形態においても、絶縁膜形
成工程では、各シリコン微結晶(半導体微結晶)63へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各シリコン微結晶
63それぞれの表面に上記膜厚(シリコン微結晶63の
結晶粒径よりも小さな膜厚)程度の酸化膜(シリコン酸
化膜)を形成する酸化処理と、各シリコン微結晶63へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜(シリコ
ン酸化膜)の膜質を改善する窒化処理とを有している。
【0062】ここにおいて、本実施形態における酸化処
理は、電気化学的な方法により各シリコン微結晶63の
表面に酸化膜を形成する酸化工程からなる。酸化工程で
は、上述の陽極処理工程の終了後にエタノールによるリ
ンスを行ってから、所定濃度(例えば1mol/l=1
M)の硫酸水溶液の入った処理槽を利用し、下部電極1
2と白金電極よりなる陰極との間に定電圧を印加する電
気化学的な方法により各グレイン51および各シリコン
微結晶63それぞれの表面に上記膜厚程度の酸化膜を形
成する。ここに、酸化工程で用いる電解液は硫酸水溶液
に限らず、例えば、硝酸水溶液、王水などを用いてもよ
いし、あるいは有機溶媒中に溶質を溶かした電解液を用
いてもよい。
【0063】また、窒化処理は、窒化ガス雰囲気中で各
酸化膜をアニールするアニール工程からなる。アニール
工程では、ランプアニール装置を用い、例えばN2Oガ
ス雰囲気中において所定のアニール温度(例えば、45
0℃)で所定のアニール時間(例えば、1時間)だけア
ニールを行う。アニール温度は、500℃以下に設定す
ることが好ましい。アニール温度を500℃以下に設定
することで、図16に示した従来構成のように下部電極
12をガラス基板のような絶縁性基板11上に形成する
ような場合にアニール工程がガラス基板に与える影響を
なくすことができる。
【0064】本実施形態の製造方法によれば、実施形態
1と同様、絶縁膜52,64を形成する絶縁膜形成工程
において、各シリコン微結晶63へのダメージの発生を
抑制可能な処理で各シリコン微結晶63それぞれの表面
に上記膜厚程度の酸化膜を形成するとともにグレイン5
1の表面に酸化膜を形成し、各シリコン微結晶63への
ダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜を窒化して
膜質を改善するので、従来のように急速熱酸化法により
比較的長い熱処理時間(例えば、1時間)で各絶縁膜5
2,64を形成する場合に比べて、電子放出特性の経時
安定性が向上する。しかも、各絶縁膜52,64の形成
に伴う高温での熱処理時間を短縮化できるから、図16
に示した従来構成のように下部電極12をガラス基板の
ような絶縁性基板11上に形成するような場合にガラス
基板として石英ガラス基板に比べて比較的安価な無アル
カリガラス基板や低アルカリガラス基板などの耐熱温度
が比較的低いガラス基板を採用することが可能となり、
低コスト化を図れる。また、実施形態2の製造方法に比
べて、各絶縁膜52,64中の欠陥を低減でき、電子放
出特性を向上できる。また、各シリコン微結晶63を湿
式の陽極酸化処理を利用して形成しているので、陽極酸
化処理の後に大気中に曝すことなく酸化工程にて各シリ
コン微結晶63および各グレイン51それぞれの表面に
酸化膜を形成することが可能になるから、各シリコン微
結晶63およびグレイン51それぞれの表面に自然酸化
膜が形成されるのを防止することができ、酸化工程にて
各シリコン微結晶63および各グレイン51それぞれの
表面に良質な酸化膜を形成することが可能になる。
【0065】(実施形態5)本実施形態では、実施形態
1で説明した製造方法において絶縁膜形成工程が相違す
るだけなので、絶縁膜形成工程についてのみ説明する。
【0066】ただし、本実施形態においても、絶縁膜形
成工程では、各シリコン微結晶(半導体微結晶)63へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各シリコン微結晶
63それぞれの表面に上記膜厚(シリコン微結晶63の
結晶粒径よりも小さな膜厚)程度の酸化膜(シリコン酸
化膜)を形成する酸化処理と、各シリコン微結晶63へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜(シリコ
ン酸化膜)の膜質を改善する窒化処理とを有している。
【0067】ここにおいて、本実施形態における酸化処
理は、電気化学的な方法により各シリコン微結晶63の
表面に酸化膜を形成する第1の酸化工程からなる。第1
の酸化工程では、上述の陽極処理工程の終了後にエタノ
ールによるリンスを行ってから、所定濃度(例えば1m
ol/l=1M)の硫酸水溶液の入った処理槽を利用
し、下部電極12と白金電極よりなる陰極との間に定電
圧を印加する電気化学的な方法により各グレイン51お
よび各シリコン微結晶63それぞれの表面に上記膜厚程
度の酸化膜を形成する。ここに、第1の酸化工程で用い
る電解液は硫酸水溶液に限らず、例えば、硝酸水溶液、
王水などを用いてもよいし、あるいは有機溶媒中に溶質
を溶かした電解液を用いてもよい。
【0068】また、窒化処理は、窒化ガス雰囲気中で各
酸化膜をアニールするアニール工程からなる。アニール
工程では、ランプアニール装置を用い、例えばN2Oガ
ス雰囲気中において所定のアニール温度(例えば、45
0℃)で所定のアニール時間(例えば、1時間)だけア
ニールを行う。アニール温度は、500℃以下に設定す
ることが好ましい。アニール温度を500℃以下に設定
することで、図16に示した従来構成のように下部電極
12をガラス基板のような絶縁性基板11上に形成する
ような場合にアニール工程がガラス基板に与える影響を
なくすことができる。
【0069】また、本実施形態の製造方法における絶縁
膜形成工程では、上記窒化処理の後で急速熱酸化法によ
り各シリコン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能
な熱処理時間で各酸化膜をさらに酸化する第2の酸化工
程と、第2の酸化工程の後で急速熱窒化法により各シリ
コン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能な熱処理
時間で各酸化膜を窒化する窒化工程とを有している。
【0070】第2の酸化工程では、ランプアニール装置
を用い、例えば酸素ガス雰囲気中において第1の規定の
熱処理温度(例えば、900℃)で第1の規定の熱処理
時間(例えば、5分)だけ酸化を行う。すなわち、第1
の規定の熱処理時間は従来の急速熱酸化法による酸化工
程での所定の熱処理時間(1時間)に比べて大幅に短縮
してある。ここに、第1の規定の熱処理時間は、製造し
た電界放射型電子源10の電子放出特性の測定結果から
5分以内に設定することでが望ましいことを確認してい
る。ただし、第1の規定の熱処理温度まで基板温度を上
昇させる昇温期間の昇温速度は20℃/sec以上、望
ましくは150℃/sec以上に設定する。
【0071】また、窒化工程は、急速熱窒化法により各
シリコン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能な熱
処理時間(以下、第2の規定の熱処理時間と称す)で各
酸化膜を窒化する工程からなる。この窒化工程では、ラ
ンプアニール装置を用い、例えばN2Oガス雰囲気中に
おいて第2の規定の熱処理温度(例えば、900℃)で
上記第2の規定の熱処理時間(例えば、5分)だけ窒化
を行う。ここに、第2の規定の熱処理時間は、製造した
電界放射型電子源10の電子放出特性の測定結果から5
分以内に設定することでが望ましいことを確認してい
る。ただし、第2の規定の熱処理温度まで基板温度を上
昇させる昇温期間の昇温速度は20℃/sec以上、望
ましくは150℃/sec以上に設定する。また、本実
施形態では、窒化工程においてN2Oガスを利用してい
るので、各酸化膜の窒化と同時に酸化も進むから、結果
的に各絶縁膜52,64は酸窒化膜(シリコン酸窒化
膜)になる。なお、窒化工程で用いるガスはN2Oガス
に限らず、例えばNOガス,NH3ガスなどを用いても
よい。
【0072】本実施形態の製造方法によれば、実施形態
1と同様、絶縁膜52,64を形成する絶縁膜形成工程
において、各シリコン微結晶63へのダメージの発生を
抑制可能な処理で各シリコン微結晶63それぞれの表面
に上記膜厚程度の酸化膜を形成するとともにグレイン5
1の表面に酸化膜を形成し、各シリコン微結晶63への
ダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜を窒化して
膜質を改善するので、従来のように急速熱酸化法により
比較的長い熱処理時間(例えば、1時間)で各絶縁膜5
2,64を形成する場合に比べて、電子放出特性の経時
安定性が向上する。しかも、各絶縁膜52,64の形成
に伴う高温での熱処理時間を短縮化できるから、図16
に示した従来構成のように下部電極12をガラス基板の
ような絶縁性基板11上に形成するような場合にガラス
基板として石英ガラス基板に比べて比較的安価な無アル
カリガラス基板や低アルカリガラス基板などの耐熱温度
が比較的低いガラス基板を採用することが可能となり、
低コスト化を図れる。また、実施形態2の製造方法に比
べて、各絶縁膜52,64中の欠陥を低減でき、電子放
出特性を向上できる。また、各シリコン微結晶63を湿
式の陽極酸化処理を利用して形成しているので、陽極酸
化処理の後に大気中に曝すことなく第1の酸化工程にて
各シリコン微結晶63および各グレイン51それぞれの
表面に酸化膜を形成することが可能になるから、各シリ
コン微結晶63およびグレイン51それぞれの表面に自
然酸化膜が形成されるのを防止することができ、第1の
酸化工程にて各シリコン微結晶63および各グレイン5
1それぞれの表面に良質な酸化膜を形成することが可能
になる。
【0073】本実施形態の製造方法にて製造した電界放
射型電子源10の電子放出特性を図12に、電子放出特
性の経時変化を測定した結果を図13にそれぞれ示す。
【0074】本実施形態の電界放射型電子源10の電子
放出特性の測定は、真空チャンバ(図示せず)内に電界
放射型電子源10を導入して、上述の図14のように、
表面電極7に対向してコレクタ電極21を配置し、表面
電極7を下部電極12に対して高電位側として直流電圧
Vpsを印加するとともに、コレクタ電極21を表面電極
7に対して高電位側として直流電圧Vcを印加すること
によって行った。
【0075】図12は直流電圧Vcを100V一定、真
空チャンバ内の真空度を5×10-5Paとしたときの電
子放出特性の測定結果を示したものであって、横軸が直
流電圧Vps、縦軸が電流密度であり、「イ」がダイオー
ド電流Ipsの電流密度、「ロ」がエミッション電流Ie
の電流密度を示している。また、図13は直流電圧Vc
を100V一定、直流電圧Vpsを15V一定、真空チャ
ンバ内の真空度を5×10-5Paとしたときの電子放出
特性の経時変化の測定結果を示したものであって、横軸
が駆動開始からの経過時間、左側の縦軸が電流密度、右
側の縦軸が電子放出効率であり、「イ」がダイオード電
流Ipsの電流密度、「ロ」がエミッション電流Ieの電
流密度、「ハ」が電子放出効率を示している。図12,
13および実施形態1で説明した比較例1,2に関する
測定結果を示した図6〜9から、本実施形態の電界放射
型電子源10では比較例1,2の電界放射型電子源に比
べて電子放出特性の経時安定性が向上していることが分
かる。
【0076】(実施形態6)本実施形態では、実施形態
1で説明した製造方法において絶縁膜形成工程が相違す
るだけなので、絶縁膜形成工程についてのみ説明する。
【0077】ただし、本実施形態においても、絶縁膜形
成工程では、各シリコン微結晶(半導体微結晶)63へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各シリコン微結晶
63それぞれの表面に上記膜厚(シリコン微結晶63の
結晶粒径よりも小さな膜厚)程度の酸化膜(シリコン酸
化膜)を形成する酸化処理と、各シリコン微結晶63へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜(シリコ
ン酸化膜)の膜質を改善する窒化処理とを有している。
【0078】ここにおいて、本実施形態における酸化処
理は、電気化学的な方法により各シリコン微結晶63の
表面に酸化膜を形成する第1の酸化工程からなる。第1
の酸化工程では、上述の陽極処理工程の終了後にエタノ
ールによるリンスを行ってから、所定濃度(例えば1m
ol/l=1M)の硫酸水溶液の入った処理槽を利用
し、下部電極12と白金電極よりなる陰極との間に定電
圧を印加する電気化学的な方法により各グレイン51お
よび各シリコン微結晶63それぞれの表面に上記膜厚程
度の酸化膜を形成する。ここに、第1の酸化工程で用い
る電解液は硫酸水溶液に限らず、例えば、硝酸水溶液、
王水などを用いてもよいし、あるいは有機溶媒中に溶質
を溶かした電解液を用いてもよい。
【0079】また、窒化処理は、窒化ガス雰囲気中で各
酸化膜をアニールするアニール工程と、アニール工程の
後で急速熱窒化法により各シリコン微結晶63へのダメ
ージの発生を抑制可能な熱処理時間で各酸化膜を窒化す
る窒化工程とからなる。アニール工程では、ランプアニ
ール装置を用い、例えばN2Oガス雰囲気中において所
定のアニール温度(例えば、450℃)で所定のアニー
ル時間(例えば、1時間)だけアニールを行う。アニー
ル温度は、500℃以下に設定することが好ましい。ア
ニール温度を500℃以下に設定することで、図16に
示した従来構成のように下部電極12をガラス基板のよ
うな絶縁性基板11上に形成するような場合にアニール
工程がガラス基板に与える影響をなくすことができる。
また窒化工程では、ランプアニール装置を用い、例えば
2Oガス雰囲気中において第2の規定の熱処理温度
(例えば、900℃)で上記第2の規定の熱処理時間
(例えば、5分)だけ窒化を行う。ここに、第2の規定
の熱処理時間は、製造した電界放射型電子源10の電子
放出特性の測定結果から5分以内に設定することでが望
ましいことを確認している。ただし、第2の規定の熱処
理温度まで基板温度を上昇させる昇温期間の昇温速度は
20℃/sec以上、望ましくは150℃/sec以上
に設定する。また、本実施形態では、窒化工程において
2Oガスを利用しているので、各酸化膜の窒化と同時
に酸化も進むから、結果的に各絶縁膜52,64は酸窒
化膜(シリコン酸窒化膜)になる。なお、窒化工程で用
いるガスはN2Oガスに限らず、例えばNOガス,NH3
ガスなどを用いてもよい。
【0080】本実施形態の製造方法によれば、実施形態
1と同様、絶縁膜52,64を形成する絶縁膜形成工程
において、各シリコン微結晶63へのダメージの発生を
抑制可能な処理で各シリコン微結晶63それぞれの表面
に上記膜厚程度の酸化膜を形成するとともにグレイン5
1の表面に酸化膜を形成し、各シリコン微結晶63への
ダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化膜を窒化して
膜質を改善するので、従来のように急速熱酸化法により
比較的長い熱処理時間(例えば、1時間)で各絶縁膜5
2,64を形成する場合に比べて、電子放出特性の経時
安定性が向上する。しかも、各絶縁膜52,64の形成
に伴う高温での熱処理時間を短縮化できるから、図16
に示した従来構成のように下部電極12をガラス基板の
ような絶縁性基板11上に形成するような場合にガラス
基板として石英ガラス基板に比べて比較的安価な無アル
カリガラス基板や低アルカリガラス基板などの耐熱温度
が比較的低いガラス基板を採用することが可能となり、
低コスト化を図れる。また、実施形態2の製造方法に比
べて、各絶縁膜52,64中の欠陥を低減でき、電子放
出特性を向上できる。また、各シリコン微結晶63を湿
式の陽極酸化処理を利用して形成しているので、陽極酸
化処理の後に大気中に曝すことなく第1の酸化工程にて
各シリコン微結晶63および各グレイン51それぞれの
表面に酸化膜を形成することが可能になるから、各シリ
コン微結晶63およびグレイン51それぞれの表面に自
然酸化膜が形成されるのを防止することができ、第1の
酸化工程にて各シリコン微結晶63および各グレイン5
1それぞれの表面に良質な酸化膜を形成することが可能
になる。
【0081】(実施形態7)本実施形態では、実施形態
1で説明した製造方法において絶縁膜形成工程が相違す
るだけなので、絶縁膜形成工程についてのみ説明する。
【0082】本実施形態における絶縁膜形成工程では、
急速熱酸化法による各シリコン微結晶(半導体微結晶)
63へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時間での酸
化処理と酸化処理後の急速熱窒化法による各シリコン微
結晶(半導体微結晶)63へのダメージの発生を抑制可
能な熱処理時間での窒化処理とからなる基本工程を複数
回繰り返すことで各絶縁膜52,64を形成する。ここ
において、酸化処理では、シリコン微結晶63の表面側
を酸化し、窒化処理では膜質を改善している。
【0083】酸化処理では、ランプアニール装置を用
い、例えば酸素ガス雰囲気中において第1の規定の熱処
理温度(例えば、900℃)で第1の規定の熱処理時間
(例えば、5分)だけ酸化を行う。すなわち、第1の規
定の熱処理時間は従来の急速熱酸化法による酸化工程で
の所定の熱処理時間(1時間)に比べて大幅に短縮して
ある。ただし、第1の規定の熱処理温度まで基板温度を
上昇させる昇温期間の昇温速度は20℃/sec以上、
望ましくは150℃/sec以上に設定する。
【0084】また、窒化処理は、急速熱窒化法により各
シリコン微結晶63へのダメージの発生を抑制可能な熱
処理時間(以下、第2の規定の熱処理時間と称す)で各
酸化膜を窒化する。この窒化処理では、ランプアニール
装置を用い、例えばN2Oガス雰囲気中において第2の
規定の熱処理温度(例えば、900℃)で上記第2の規
定の熱処理時間(例えば、5分)だけ窒化を行う。ただ
し、第2の規定の熱処理温度まで基板温度を上昇させる
昇温期間の昇温速度は20℃/sec以上、望ましくは
150℃/sec以上に設定する。また、本実施形態で
は、窒化処理においてN2Oガスを利用しているので、
各酸化膜の窒化と同時に酸化も進むから、結果的に各絶
縁膜52,64は酸窒化膜(シリコン酸窒化膜)にな
る。なお、窒化処理で用いるガスはN2Oガスに限ら
ず、例えばNOガス,NH3ガスなどを用いてもよい。
【0085】本実施形態の製造方法によれば、実施形態
1と同様、従来のように急速熱酸化法により比較的長い
熱処理時間(例えば、1時間)で各絶縁膜52,64を
形成する場合に比べて、電子放出特性の経時安定性が向
上する。しかも、各絶縁膜52,64の形成に伴う高温
での熱処理時間を短縮化できるから、図16に示した従
来構成のように下部電極12をガラス基板のような絶縁
性基板11上に形成するような場合にガラス基板として
石英ガラス基板に比べて比較的安価な無アルカリガラス
基板や低アルカリガラス基板などの耐熱温度が比較的低
いガラス基板を採用することが可能となり、低コスト化
を図れる。また、実施形態2の製造方法に比べて、各絶
縁膜52,64中の欠陥を低減でき、電子放出特性を向
上できる。
【0086】
【発明の効果】請求項1の発明は、下部電極と、下部電
極の一表面側に形成された強電界ドリフト層と、強電界
ドリフト層上に形成された表面電極とを備え、強電界ド
リフト層がナノメータオーダの多数の半導体微結晶と各
半導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の
結晶粒径よりも小さな膜厚の多数の絶縁膜とを有し、表
面電極と下部電極との間に表面電極を高電位側として電
圧を印加することにより下部電極から注入された電子が
強電界ドリフト層をドリフトし表面電極を通して放出さ
れる電界放射型電子源の製造方法であって、強電界ドリ
フト層における各絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程で
は、各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な処
理で各半導体微結晶それぞれの表面に前記膜厚程度の酸
化膜を形成する酸化処理と、各半導体微結晶へのダメー
ジの発生を抑制可能な処理で各酸化膜の膜質を改善する
窒化処理とを有することを特徴とし、各半導体微結晶へ
のダメージの発生を抑制可能な処理で各半導体微結晶そ
れぞれの表面に前記膜厚程度の酸化膜を形成し、各半導
体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な処理で各酸化
膜の膜質を改善するので、従来のように急速熱酸化法に
より比較的長い熱処理時間で各絶縁膜を形成する場合に
比べて、電子放出特性の経時安定性が向上するという効
果があり、しかも、各絶縁膜の形成に伴う高温での熱処
理時間を短縮化できるから下部電極をガラス基板に形成
するような場合にガラス基板として石英ガラス基板に比
べて比較的安価な無アルカリガラス基板や低アルカリガ
ラス基板などの耐熱温度が比較的低いガラス基板を採用
することが可能となり、低コスト化を図れるという効果
がある。
【0087】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、急速熱酸化法により前記各半導体
微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時間で前
記各半導体微結晶それぞれの表面に前記膜厚程度の酸化
膜を形成する酸化工程からなり、前記窒化処理が、急速
熱窒化法により前記各半導体微結晶へのダメージの発生
を抑制可能な熱処理時間で各酸化膜を窒化する窒化工程
からなるので、前記酸化処理と前記窒化処理とを同一装
置内で行うことができ、前記酸化処理と前記窒化処理と
の間で不純物が付着するのを防止することができるとい
う効果がある。
【0088】請求項3の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、電気化学的な方法により前記各半
導体微結晶の表面に酸化膜を形成する酸化工程と、酸化
工程の後で各酸化膜をアニールするアニール工程とから
なり、前記窒化処理が、急速熱窒化法により前記各半導
体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時間で
各酸化膜を窒化する窒化工程からなるので、請求項2の
発明に比べて各絶縁膜の形成に伴う高温での熱処理時間
をさらに短縮化できるという効果がある。また、前記各
半導体微結晶を湿式の陽極酸化処理を利用して形成する
場合に、陽極酸化処理の後に大気中に曝すことなく酸化
工程にて前記各半導体微結晶の表面に酸化膜を形成する
ことが可能になるので、前記各半導体微結晶それぞれの
表面に自然酸化膜が形成されるのを防止することがで
き、酸化工程にて前記各半導体微結晶それぞれの表面に
良質な酸化膜を形成することが可能になるという利点が
ある。
【0089】請求項4の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、電気化学的な方法で前記各半導体
微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成する第1の酸化工
程と、第1の酸化工程の後で各酸化膜をアニールするア
ニール工程と、アニール工程の後で急速熱酸化法により
前記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱
処理時間で各酸化膜をさらに酸化する第2の酸化工程と
からなり、前記窒化処理が、急速熱窒化法により前記各
半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時
間で前記各酸化膜を窒化する窒化工程からなるので、請
求項3の発明に比べて各絶縁膜中の欠陥を低減でき、電
子放出特性を向上させることが可能になるという効果が
ある。
【0090】請求項5の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、電気化学的な方法により前記各半
導体微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成する酸化工程
からなり、前記窒化処理が、各酸化膜を窒化性ガス雰囲
気中でアニールするアニール工程からなるので、請求項
2の発明に比べて各絶縁膜の形成に伴う高温での熱処理
時間をさらに短縮化できるという効果がある。また、前
記各半導体微結晶を湿式の陽極酸化処理を利用して形成
する場合に、陽極酸化処理の後に大気中に曝すことなく
前記酸化工程にて前記各半導体微結晶の表面に酸化膜を
形成することが可能になるので、前記各半導体微結晶そ
れぞれの表面に自然酸化膜が形成されるのを防止するこ
とができ、酸化工程にて前記各半導体微結晶それぞれの
表面に良質な酸化膜を形成することが可能になるという
利点がある。
【0091】請求項6の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、電気化学的な方法により前記各半
導体微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成する第1の酸
化工程からなり、前記窒化処理が、各酸化膜を窒化性ガ
ス雰囲気中でアニールするアニール工程からなり、前記
絶縁膜形成工程は、前記窒化処理の後で急速熱酸化法に
より前記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能
な熱処理時間で各酸化膜をさらに酸化する第2の酸化工
程と、第2の酸化工程の後で急速熱窒化法により前記各
半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時
間で各酸化膜を窒化する窒化工程とを有するので、各絶
縁膜中の欠陥を低減でき、電子放出特性を向上させるこ
とが可能になるという効果がある。また、前記各半導体
微結晶を湿式の陽極酸化処理を利用して形成する場合
に、陽極酸化処理の後に大気中に曝すことなく第1の酸
化工程にて前記各半導体微結晶の表面に酸化膜を形成す
ることが可能になるので、前記各半導体微結晶それぞれ
の表面に自然酸化膜が形成されるのを防止することがで
き、第1の酸化工程にて前記各半導体微結晶それぞれの
表面に良質な酸化膜を形成することが可能になるという
利点がある。
【0092】請求項7の発明は、請求項1の発明におい
て、前記酸化処理が、電気化学的な方法により前記各半
導体微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成する酸化工程
からなり、前記窒化処理が、各酸化膜を窒化性ガス雰囲
気中でアニールするアニール工程と、アニール工程の後
で急速熱窒化法により前記各半導体微結晶へのダメージ
の発生を抑制可能な熱処理時間で各酸化膜を窒化する窒
化工程とからなるので、各絶縁膜中の欠陥を低減でき、
電子放出特性を向上させることが可能になるという効果
がある。また、前記各半導体微結晶を湿式の陽極酸化処
理を利用して形成する場合に、陽極酸化処理の後に大気
中に曝すことなく酸化工程にて前記各半導体微結晶の表
面に酸化膜を形成することが可能になるので、前記各半
導体微結晶それぞれの表面に自然酸化膜が形成されるの
を防止することができ、酸化工程にて前記各半導体微結
晶それぞれの表面に良質な酸化膜を形成することが可能
になるという利点がある。
【0093】請求項8の発明は、下部電極と、下部電極
の一表面側に形成された強電界ドリフト層と、強電界ド
リフト層上に形成された表面電極とを備え、強電界ドリ
フト層がナノメータオーダの多数の半導体微結晶と各半
導体微結晶それぞれの表面に形成され半導体微結晶の結
晶粒径よりも小さな膜厚の多数の絶縁膜とを有し、表面
電極と下部電極との間に表面電極を高電位側として電圧
を印加することにより下部電極から注入された電子が強
電界ドリフト層をドリフトし表面電極を通して放出され
る電界放射型電子源の製造方法であって、強電界ドリフ
ト層における各絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程では、
各半導体微結晶を形成した後に、急速熱酸化法による前
記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処
理時間での酸化処理と酸化処理後の急速熱窒化法による
前記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱
処理時間での窒化処理とからなる基本工程を複数回繰り
返すことで各絶縁膜を形成することを特徴とし、従来の
ように急速熱酸化法により比較的長い熱処理時間で各絶
縁膜を形成する場合に比べて、電子放出特性の経時安定
性が向上するという効果があり、しかも、各絶縁膜の形
成に伴う高温での熱処理時間を短縮化できるから下部電
極をガラス基板に形成するような場合にガラス基板とし
て石英ガラス基板に比べて比較的安価な無アルカリガラ
ス基板や低アルカリガラス基板などの耐熱温度が比較的
低いガラス基板を採用することが可能となり、低コスト
化を図れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の電界放射型電子源の製造方法を説
明するための主要工程断面図である。
【図2】同上の電界放射型電子源の概略断面図である。
【図3】同上の電界放射型電子源の動作説明図である。
【図4】同上の電界放射型電子源の電子放出特性図であ
る。
【図5】同上の電界放射型電子源の電子放出特性図であ
る。
【図6】同上の比較例1の電界放射型電子源の電子放出
特性図である。
【図7】同上の比較例1の電界放射型電子源の電子放出
特性図である。
【図8】同上の比較例2の電界放射型電子源の電子放出
特性図である。
【図9】同上の比較例2の電界放射型電子源の電子放出
特性図である。
【図10】実施形態2の電界放射型電子源の電子放出特
性図である。
【図11】同上の電界放射型電子源の電子放出特性図で
ある。
【図12】実施形態5の電界放射型電子源の電子放出特
性図である。
【図13】同上の電界放射型電子源の電子放出特性図で
ある。
【図14】従来例を示す電界放射型電子源の動作説明図
である。
【図15】同上の動作説明図である。
【図16】他の従来例を示す電界放射型電子源の動作説
明図である。
【符号の説明】
1 n形シリコン基板 2 オーミック電極 3 多結晶シリコン層 4 多孔質多結晶シリコン層 6 強電界ドリフト層 10 電界放射型電子源 12 下部電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 馬場 徹 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下部電極と、下部電極の一表面側に形成
    された強電界ドリフト層と、強電界ドリフト層上に形成
    された表面電極とを備え、強電界ドリフト層がナノメー
    タオーダの多数の半導体微結晶と各半導体微結晶それぞ
    れの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さ
    な膜厚の多数の絶縁膜とを有し、表面電極と下部電極と
    の間に表面電極を高電位側として電圧を印加することに
    より下部電極から注入された電子が強電界ドリフト層を
    ドリフトし表面電極を通して放出される電界放射型電子
    源の製造方法であって、強電界ドリフト層における各絶
    縁膜を形成する絶縁膜形成工程では、各半導体微結晶へ
    のダメージの発生を抑制可能な処理で各半導体微結晶そ
    れぞれの表面に前記膜厚程度の酸化膜を形成する酸化処
    理と、各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な
    処理で各酸化膜の膜質を改善する窒化処理とを有するこ
    とを特徴とする電界放射型電子源の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記酸化処理が、急速熱酸化法により前
    記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処
    理時間で前記各半導体微結晶それぞれの表面に前記膜厚
    程度の酸化膜を形成する酸化工程からなり、前記窒化処
    理が、急速熱窒化法により前記各半導体微結晶へのダメ
    ージの発生を抑制可能な熱処理時間で各酸化膜を窒化す
    る窒化工程からなることを特徴とする請求項1記載の電
    界放射型電子源の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酸化処理が、電気化学的な方法によ
    り前記各半導体微結晶の表面に酸化膜を形成する酸化工
    程と、酸化工程の後で各酸化膜をアニールするアニール
    工程とからなり、前記窒化処理が、急速熱窒化法により
    前記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能な熱
    処理時間で各酸化膜を窒化する窒化工程からなることを
    特徴とする請求項1記載の電界放射型電子源の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記酸化処理が、電気化学的な方法で前
    記各半導体微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成する第
    1の酸化工程と、第1の酸化工程の後で各酸化膜をアニ
    ールするアニール工程と、アニール工程の後で急速熱酸
    化法により前記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑
    制可能な熱処理時間で各酸化膜をさらに酸化する第2の
    酸化工程とからなり、前記窒化処理が、急速熱窒化法に
    より前記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能
    な熱処理時間で前記各酸化膜を窒化する窒化工程からな
    ることを特徴とする請求項1記載の電界放射型電子源の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 前記酸化処理が、電気化学的な方法によ
    り前記各半導体微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成す
    る酸化工程からなり、前記窒化処理が、各酸化膜を窒化
    性ガス雰囲気中でアニールするアニール工程からなるこ
    とを特徴とする請求項1記載の電界放射型電子源の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 前記酸化処理が、電気化学的な方法によ
    り前記各半導体微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成す
    る第1の酸化工程からなり、前記窒化処理が、各酸化膜
    を窒化性ガス雰囲気中でアニールするアニール工程から
    なり、前記絶縁膜形成工程は、前記窒化処理の後で急速
    熱酸化法により前記各半導体微結晶へのダメージの発生
    を抑制可能な熱処理時間で各酸化膜をさらに酸化する第
    2の酸化工程と、第2の酸化工程の後で急速熱窒化法に
    より前記各半導体微結晶へのダメージの発生を抑制可能
    な熱処理時間で各酸化膜を窒化する窒化工程とを有する
    ことを特徴とする請求項1記載の電界放射型電子源の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 前記酸化処理が、電気化学的な方法によ
    り前記各半導体微結晶それぞれの表面に酸化膜を形成す
    る酸化工程からなり、前記窒化処理が、各酸化膜を窒化
    性ガス雰囲気中でアニールするアニール工程と、アニー
    ル工程の後で急速熱窒化法により前記各半導体微結晶へ
    のダメージの発生を抑制可能な熱処理時間で各酸化膜を
    窒化する窒化工程とからなることを特徴とする請求項1
    記載の電界放射型電子源の製造方法。
  8. 【請求項8】 下部電極と、下部電極の一表面側に形成
    された強電界ドリフト層と、強電界ドリフト層上に形成
    された表面電極とを備え、強電界ドリフト層がナノメー
    タオーダの多数の半導体微結晶と各半導体微結晶それぞ
    れの表面に形成され半導体微結晶の結晶粒径よりも小さ
    な膜厚の多数の絶縁膜とを有し、表面電極と下部電極と
    の間に表面電極を高電位側として電圧を印加することに
    より下部電極から注入された電子が強電界ドリフト層を
    ドリフトし表面電極を通して放出される電界放射型電子
    源の製造方法であって、強電界ドリフト層における各絶
    縁膜を形成する絶縁膜形成工程では、各半導体微結晶を
    形成した後に、急速熱酸化法による前記各半導体微結晶
    へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時間での酸化処
    理と酸化処理後の急速熱窒化法による前記各半導体微結
    晶へのダメージの発生を抑制可能な熱処理時間での窒化
    処理とからなる基本工程を複数回繰り返すことで各絶縁
    膜を形成することを特徴とする電界放射型電子源の製造
    方法。
  9. 【請求項9】 前記熱処理時間が5分を超えないことを
    特徴とする請求項2ないし請求項8のいずれかに記載の
    電界放射型電子源の製造方法。
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