JP2003192353A - ナトリウムコバルト酸化物の合成法及び合成装置 - Google Patents

ナトリウムコバルト酸化物の合成法及び合成装置

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JP2003192353A JP2001387552A JP2001387552A JP2003192353A JP 2003192353 A JP2003192353 A JP 2003192353A JP 2001387552 A JP2001387552 A JP 2001387552A JP 2001387552 A JP2001387552 A JP 2001387552A JP 2003192353 A JP2003192353 A JP 2003192353A
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Shusaku Hamada
周作 濱田
Hiroshi Yokota
洋 横田
Hitoshi Ito
仁士 伊藤
Takashi Usui
高史 臼井
Robelt Masahiro Serikawa
芹川ロベルト正浩
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 結晶性がよく、成形性・焼結性に優れた均一
な微結晶の形態のナトリウムコバルト複合酸化物を合成
する方法を提供する。 【解決手段】 本発明は、ナトリウム媒体及びコバルト
媒体を水熱反応又は超臨界水反応に暴露することを特徴
とする、結晶性ナトリウムコバルト酸化物の合成方法に
関する。また、本発明は、水熱反応又は超臨界水反応の
反応器、並びに、ナトリウム媒体及びコバルト媒体を反
応器に供給する手段を具備することを特徴とする、結晶
性ナトリウムコバルト酸化物を合成するための装置にも
関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱電変換材料であ
る結晶性ナトリウムコバルト酸化物の合成方法及び合成
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】熱電変換発電は、ゼーベック効果と呼ば
れる、二種の金属やp型半導体とn型半導体を交互に配
置して電気的に直列に接続し、接合部の両端に温度差を
与えることによって熱起電力が発生する熱電効果を利用
して、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する技
術である。熱電変換発電は、モーターやタービン等のよ
うな従来の発電方法で必要な機械的可動部分が必要ない
ので、摩擦熱でエネルギーロスを起こす部分がなく、直
接熱エネルギーを高い効率で電気エネルギーに変換する
ことが期待できる。例えば、燃焼器を用いたマイクロガ
スタービンでは現状での発電効率は30%程度である
が、このエネルギーロスの大部分は熱エネルギーを回転
エネルギーに変換する部分の摩擦熱で失われるものであ
る。熱電変換発電では、これらのエネルギーロスがない
ため発電効率をより効率的にすることが期待できるのに
加えて、発電設備もシンプルにすることができ、設備コ
ストを安くすることができる。更に、燃焼等により発生
するガスの排出もなく、熱電変換材料が劣化するまで継
続して発電を行うことができる。
【0003】従来、産業用に用いられている代表的な熱
電変換材料は、Bi2Te3系であるが、高温での安定性
が悪いため利用は300℃以下に限られていた。また、
これらの素子において添加物として加えられるSeやS
bは毒性が大きく、またBi 2Te3を構成する元素Te
の価格が高価であるという問題があるため、素子の使用
範囲が制限されていた。最近の研究により、コバルト系
複合酸化物の一つであるナトリウムコバルト酸化物のゼ
ーベック係数が非常に大きいことが分かり、Bi2Te3
系に代わる新たな熱電変換材料として期待されている(J
ournal of Japanese Applied Physics, vol.40 (2001),
p.4644-4647)。この文献中で提案されているナトリウ
ムコバルト酸化物の合成法は、炭酸ナトリウム、酸化コ
バルト、塩化ナトリウムをアルミナるつぼ中で溶融する
というものであり、この方法(溶融法)によれば、ナト
リウムコバルト複合酸化物が単結晶の形態で製造され
る。単結晶を熱電変換材料などの素子として用いる場合
には、より大きな結晶サイズのものが求められるが、現
在のところ、この溶融法では大きなサイズの単結晶を形
成することができないため、実用的に素子として用いる
ことは極めて困難である。また、単結晶の育成には高温
での長時間処理が必要であり、結晶の収率は低いため、
製造コストが高く、工業的に利用可能なプロセスには至
っていない。また、ナトリウムコバルト複合酸化物の他
の製造法として、ナトリウム化合物とコバルト化合物と
を均一に混合し、焼成することによって熱電変換材料を
得るという方法が提案されている。しかしながら、この
焼結法によって製造されるナトリウムコバルト酸化物の
熱電特性は、単結晶の数分の一と低いため、より熱電特
性の良好なナトリウムコバルト酸化物を得る製造プロセ
スが求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】熱電半導体では、ゼー
ベック係数(熱起電力)及び電気伝導率が大きいことが
要求されるため、結晶性がよく、バルク体となった時の
結晶粒界の結合性がよいことが求められる。ナトリウム
コバルト酸化物を合成するためには、通常、固相反応法
が用いられるが、複合酸化物を得るためには、炭酸ナト
リウムを分解する850℃以上の温度に加熱することが
必要となる。また、大気中950℃以上の温度に保つ
と、ナトリウムの揮発が生じ、構造が壊れてしまうため
に、熱処理は950℃以下とする必要がある。かかる理
由により、ナトリウムコバルト酸化物の合成のために
は、通常は850〜950℃の温度で固相反応及び焼結
が行われるが、固相反応では混合・焼結・粉砕を数回繰
り返しても、均一な組成・結晶性の粉末を得ることが難
しい。また、このような固相反応で得られる多結晶につ
いては、結晶を得た後に更に焼結を行う必要があるた
め、均一で粒子径の小さな多結晶を得ることが必要であ
るが、上記の方法では850℃以上の温度で反応させる
ため、形成される多結晶の結晶サイズが大きくなり、成
形性・焼結性とも不十分であった。
【0005】本発明は、結晶性が良く、成形性・焼結性
の優れた均一なナトリウムコバルト酸化物の微結晶を製
造する方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、本発明は、ナトリウム媒体及びコバルト媒体を水熱
反応又は超臨界水反応に暴露することを特徴とする、結
晶性ナトリウムコバルト酸化物の合成方法を提供する。
ここで、「水熱反応」とは、反応対象物を、水媒体中に
おいて、亜臨界状態の高温高圧下、具体的には、100
℃以上で水媒体の臨界点以下の温度及び水媒体が液相を
維持できる圧力に暴露することによって反応させる方法
であり、「超臨界水反応」とは、反応対象物を、水媒体
中において、水の臨界点以上の温度・圧力条件下、即ち
超臨界状態で反応させる方法である。
【0007】本発明においては、結晶性ナトリウムコバ
ルト酸化物を合成するためにナトリウム媒体及びコバル
ト媒体を暴露する水熱反応又は超臨界水反応の温度は、
250〜600℃が好ましく、380〜600℃がより
好ましく、490〜600℃が最も好ましい。また、水
熱反応又は超臨界水反応の圧力としては、7〜40MPa
が好ましく、7〜35MPaがより好ましく、25〜35M
Paが最も好ましい。
【0008】本発明においてナトリウムコバルト酸化物
を合成するためのナトリウム源として用いることのでき
るナトリウム媒体の具体例としては、例えば、水酸化ナ
トリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸
ナトリウム、硝酸ナトリウムなどを好ましく挙げること
ができ、常温常圧で水溶液を形成することのできるナト
リウム化合物を用いることが好ましい。また、ナトリウ
ムコバルト酸化物を合成するためのコバルト源として用
いることのできるコバルト化合物の具体例としては、例
えば、硝酸コバルト、ハロゲン化コバルト、炭酸コバル
ト、水酸化コバルトなど、或いはこれらの組み合わせを
好ましく挙げることができ、ナトリウム化合物と同様
に、常温常圧で水溶液を形成することのできるコバルト
化合物を用いることが好ましい。本発明方法では、これ
らのナトリウム化合物及びコバルト化合物の水溶液を、
ナトリウム媒体及びコバルト媒体として水熱反応又は超
臨界水反応の反応場に供給することが好ましい。この場
合、水溶液を形成する水が、反応場での水媒体を構成す
る。
【0009】本発明方法によれば、水熱条件又は超臨界
条件下の水媒体、特に超臨界状態の水媒体は、水自体が
酸化能力を有しているため、ナトリウム化合物及びコバ
ルト化合物を水媒体中でこの条件に暴露すれば、複合酸
化物を合成することができるが、更に、酸素、空気、酸
素富化空気、過酸化水素、オゾン、次亜塩素酸塩、次亜
臭素酸塩などの酸化剤を反応系に加えて水熱反応又は超
臨界水反応を行えば、より短時間で結晶性ナトリウムコ
バルト酸化物を合成することができる。
【0010】また、本発明方法においては、水熱反応又
は超臨界水反応に必要な温度・圧力の条件は、可燃性物
質を上述の酸化剤と共に水熱反応場に添加することで得
ることができる。即ち、可燃性物質を酸化剤によって酸
化させ、その酸化反応熱で高温高圧反応場を形成して、
水熱反応又は超臨界水反応を進行させて、ナトリウムコ
バルト酸化物を合成することができる。このような目的
で用いることのできる可燃性物質としては、1気圧での
沸点が200℃以下の有機溶媒が好ましく、1気圧での
沸点が100℃以下の有機溶媒が更に好ましく、また、
1気圧、0℃で液体である有機溶媒がより好ましい。こ
れは、可燃性物質が1気圧、0℃において気体状のもの
である場合には、高温下で高圧を維持するのが困難であ
るからである。具体的には、低級アルコール、アセト
ン、ヘキサンなどを挙げることができ、イソプロピルア
ルコール又はヘキサンなどが好ましい。なお、可燃性物
質を酸化剤を共に反応場に添加する際には、可燃性物質
と酸化剤とは別々のラインで反応器に供給することが好
ましい。これは、可燃性物質と酸化剤とを混合した後に
ラインを通して反応器に供給すると、反応器に達する前
のラインの中で燃焼を起こす危険性があるからである。
【0011】また、本発明は、ナトリウムコバルト酸化
物を合成するための装置も提供する。即ち、本発明は、
水熱反応又は超臨界水反応の反応器、並びに、ナトリウ
ム媒体及びコバルト媒体を反応器に供給する手段を具備
することを特徴とする、ナトリウムコバルト酸化物を合
成するための装置に関する。更に、本発明にかかる装置
は、酸化剤、及び必要な場合には可燃性物質を反応器に
供給する手段を更に具備することが好ましい。
【0012】なお、本発明に係る装置においては、ナト
リウム媒体及びコバルト媒体を反応器に個別に供給する
ラインを有することが好ましい。これは、ナトリウム媒
体とコバルト媒体とを予め混合すると、良質な熱電変換
材料であるナトリウムコバルト複合酸化物が形成される
前に、コバルト酸化物が形成され、沈殿することにより
ラインの閉塞が起こってしまうからである。常温常圧の
条件下では、ナトリウム化合物とコバルト化合物とが反
応して、コバルトの水酸化物や酸化物の沈殿が形成され
るだけで、ナトリウムコバルト複合酸化物を形成するこ
とはできない。従って、本発明においては、ナトリウム
媒体及びコバルト媒体を水熱反応又は超臨界水反応の反
応器に個別に供給し、反応器内で混合水溶液として高温
高圧の水熱反応又は超臨界水反応にかけることによっ
て、ナトリウムコバルト複合酸化物の結晶を合成するこ
とができる。従って、本発明に係る装置においては、ナ
トリウム媒体、コバルト媒体、及び必要な場合には酸化
剤を、反応器上部で直接混合するノズルを具備すること
が好ましい。
【0013】更に、本発明に係る装置においては、反応
器の直ぐ下流に冷却機構を配置することが好ましい。こ
れにより、生成したナトリウムコバルト複合酸化物を急
冷することによって、微細且つ均一な結晶性ナトリウム
コバルト酸化物を短時間で得ることができる。
【0014】本発明によって合成することのできるナト
リウムコバルト複合酸化物結晶は、均一であり、そのサ
イズは、各供給物質の濃度、反応温度、反応場における
保持時間等を変動させることによって調整することがで
きる。また、形成されたナトリウムコバルト複合酸化物
結晶は、殆どが単一粒子からできており、分散性もよ
く、成形性に優れる。また、従来法とは異なり、600
℃以下の比較的低温で合成された微結晶のため、焼結性
にも優れる。
【0015】また、本発明方法は、例えば、高温高圧の
超臨界状態又は亜臨界状態に維持された反応器に、ナト
リウム媒体、コバルト媒体、及び必要な場合には高温高
圧水並びに酸化剤を個別に供給するノズルを設置し、連
続的に原料を供給して速やかに高温高圧条件にして水熱
反応又は超臨界水反応を進行させ、その後急冷して短時
間で結晶化させることにより、結晶性の優れたナトリウ
ムコバルト複合酸化物結晶を連続的に且つ多量に合成す
ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら、本発
明を具体的に説明する。以下の説明は、本発明の好まし
い一実施態様を示すものであり、本発明はこの記載によ
って限定されるものではない。
【0017】図1は、本発明の一態様に係る結晶性ナト
リウムコバルト酸化物の合成装置の構成を示す概念図で
ある。原料タンク1には、水酸化ナトリウム、炭酸ナト
リウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナ
トリウムなど、或いはこれらの組み合わせからなるナト
リウム媒体が収容される。原料タンク2には、硝酸コバ
ルト、ハロゲン化コバルト、炭酸コバルト、水酸化コバ
ルトなど、或いはこれらの組み合わせからなるコバルト
媒体が収容される。これらは、それぞれが水溶液の状態
で供給源として準備され、高圧ポンプ6及び7によって
所定圧力に加圧され、ノズル12によって水熱反応又は
超臨界水反応の反応器13に供給される。ここで、可燃
性物質を反応器13に供給しない場合には、原料液を供
給する高圧ポンプ6、7の流量を、供給水と混合時の温
度低下を考慮して、供給水量に対して少量とすることが
好ましい。この範囲としては、供給水量に対して5分の
1以下が好ましく、10分の1以下がより好ましい。可
燃性物質を反応器13に供給する場合には、反応器13
内での酸化反応による温度上昇が起こるため、ナトリウ
ム媒体及びコバルト媒体をより高い割合で供給してもよ
い。この場合、可燃性物質は、ナトリウム媒体又はコバ
ルト媒体と混合して、反応器13に供給してもよいし、
或いは別のライン(図示せず)から可燃性物質を供給し
てもよい。但し、可燃性物質は、酸化剤が含まれるライ
ンとは別に供給する必要がある。これは、酸化剤と可燃
性物質とが同じラインに含まれると、ライン内で酸化反
応が起こり得るためである。なお、可燃性物質をナトリ
ウム媒体又はコバルト媒体と混合して供給する場合に
は、ナトリウム媒体又はコバルト媒体を水溶液中から沈
殿させないような濃度に調整することが好ましい。
【0018】一方、純水タンク3からは、純水を高圧ポ
ンプ8によって導入することができる。これは、ナトリ
ウム/コバルトの水溶液を反応器の前に加熱すると、塩
又は酸化物の沈殿によってラインが閉塞する危険性があ
るため、まず純水によって亜臨界水又は超臨界水を形成
し、これにナトリウム/コバルト水溶液を反応器内で加
えることによって、本発明に係る水熱反応又は超臨界水
反応を進行させることが好ましいからである。なお、こ
の際に水道水を用いると、長時間の使用によって含有塩
素による装置腐食が起こることが考えられるため、純水
を用いることが好ましい。更に、過酸化水素などの液体
酸化剤を用いる場合には、液体酸化剤タンク4から高圧
ポンプ9を介して反応系に導入し、圧縮空気、酸素富化
空気、酸素、PSA酸素などの気体状酸化剤を用いる場
合には、気体酸化剤ボンベ5からコンプレッサー10を
介して反応系に導入することができる。供給する酸化剤
の量は特に限定されないが、ナトリウムとコバルトの複
合酸化物を形成するのに必要なモル当量の1.1倍以上
を供給することが好ましい。また、可燃性物質を合わせ
て供給する場合には、酸化剤の供給量は、上記の量に更
に可燃性物質を酸化するのに必要な当量の1.1倍〜3
倍当量を追加した流量とすることが好ましい。純水及び
酸化剤は、ヒーター11によって予め300〜600℃
の温度に昇温した後に、ノズル12を通して反応器13
に供給することが好ましい。
【0019】また、反応器13にはヒーター14を設置
することができる。ヒーター11及び14としては、電
気ヒーター、高周波加熱ヒーター、熱媒ヒーター、或い
はその他の形式の工業的に用いることのできる一般的な
加熱手段を用いることができる。
【0020】反応器13、及び反応器13に原料を供給
するためのノズル12は、高温高圧に耐えうる材料によ
って構成することが好ましい。具体的な材料としては、
SUS、2相ステンレス、インコネル、ハステロイ、ク
レバロイ、HA230、MCアロイなどを用いることが
でき、この中でもインコネルが好ましく、インコネル6
25が最も好ましい材料である。
【0021】反応器13内の温度は、好ましくは250
〜600℃、より好ましくは380〜600℃に調整す
ることが望ましい。反応器13内の温度が250℃以下
では、ナトリウム媒体及びコバルト媒体を反応させても
ナトリウムコバルトの複合酸化物が殆ど生成しないの
で、好ましくない。また、反応温度が250〜380℃
の間では、複合酸化物は生成するが結晶粒子があまり均
一でなく、温度が高いほどナトリウムコバルトの複合酸
化物の小さくて均一な結晶が得られ、特に超臨界水の領
域ではこの傾向が顕著に見られる。なお、反応器13内
の温度が600℃超、特に650℃を超えると、装置の
耐久性に問題が生じ始める。以上の観点から、反応器1
3内の最も好ましい温度領域は380〜600℃であ
る。
【0022】反応器13において生成した生成物は、次
に冷却水流16及び17による冷却器15によって常温
まで急冷された後、気液分離器18に送られる。気液分
離器18においては、生成したナトリウムコバルト複合
酸化物の結晶が下部に沈殿し、定期的に高圧バルブ1
9、バッファタンク20、高圧バルブ21を通って取り
出される。また、気液分離器18で分離されたガス及び
液体は、分離器18の上部から排出され、フィルター2
2によって固体分をトラップした後、圧力調整弁23を
経て、一部凝集する水蒸気等が廃液タンク24で回収さ
れ、ガス成分は更に活性炭塔25を経て系外に排出され
る。なお、フィルター22で固体分をトラップするの
は、圧力調整弁23をエローションから守るためであ
る。反応器13において形成されたナトリウムコバルト
複合酸化物の結晶は、大部分が高圧バルブを通って取り
出されるが、一部が溶液中に浮遊したまま液体ラインに
流れ出てくる可能性があり、このため、フィルター22
においても、反応器13内で生成したナトリウムコバル
ト複合酸化物の結晶を回収することができるように構成
されている。
【0023】なお、気液分離器18からフィルター22
を経て圧力調整弁23に至るラインは、フィルター22
でトラップした固体分(結晶)を回収することを考慮
し、2系統又はそれ以上の系統であることが望ましい。
【0024】以上の説明から明らかなように、図1に示
す本発明の一態様に係る装置によれば、反応器13内は
高温高圧の超臨界又は亜臨界状態に維持されており、原
料は反応器13内で順次に高温高圧条件になって水熱反
応又は超臨界水反応を進行させた後、冷却器15におい
て急冷されることにより、結晶性のよいナトリウムコバ
ルト複合酸化物の微粒子が短時間で得られ、気液分離器
18又はフィルター22に連続的に蓄積される。
【0025】
【実施例】以下の実施例により本発明を更に具体的に説
明するが、本発明は以下の記載によって限定されるもの
ではない。
【0026】実施例1 図1に示す装置を用いてナトリウムコバルト複合酸化物
の合成を行った。ナトリウム媒体として水酸化ナトリウ
ム水溶液(濃度0.1mol/L)、コバルト媒体として硝
酸コバルト水溶液(濃度0.1mol/L)を用いた。酸化
剤として圧縮空気を用いた。水酸化ナトリウム水溶液と
硝酸コバルト水溶液を供給する高圧ポンプ6,7の流量
は2mL/分とし、圧縮空気の流量は0.3NL/分とした。
また、46mL/分の流量で純水を反応器13に供給し
た。反応器13の容量は1Lであった。純水及び圧縮空
気は、ヒーター11によって予め520℃に加熱した
後、反応器13に供給した。系内の圧力は30MPaと
し、反応器13の温度は500℃とした。反応器13内
において約60秒滞留させた後、生成物を冷却器15で
常温まで急冷し、気液分離器18、高圧バルブ19、バ
ッファタンク20、高圧バルブ21を経て取り出し、純
水(室温)で洗浄した後、乾燥した。乾燥固体のXRD
回折、SEM観察及び粒度分布分析を行った。XRD回
折は、理学製のRINT 2200を用い、SEM観察はJEOL製
のJSM 5800LVを用いた。また、粒度分布分析は、島津SA
LD-2000Aによって行った。図2に示すXRD回折結果に
より、結晶性のナトリウムコバルト複合酸化物が得られ
ていることが分かった。また、SEM観察により、1μ
m以下の均一な微結晶が得られていることが確認され
た。更に、粒度分布分析により、粒径の揃った結晶が得
られていることが分かった。この結晶を、500kg/cm2
の圧力で成形した後、870℃で10時間焼結させたと
ころ、成形性・焼結性共に良好であった。
【0027】
【発明の効果】本発明にかかる合成方法及び合成装置に
よれば、ナトリウム媒体及びコバルト媒体を、反応器内
で急速に亜臨界状態又は超臨界状態にして反応させるこ
とにより、熱電変換材料として有用なナトリウムコバル
ト複合酸化物の、結晶性がよく、成形性・焼結性に優れ
た均一な微結晶を合成することができる。また、本発明
に係る合成装置は連続運転が可能であり、特に水熱反応
又は超臨界水反応器の直後に急冷装置を配置することに
より、結晶性のよいナトリウムコバルト複合酸化物を短
時間で多量に合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一態様に係るナトリウムコバルト複合
酸化物結晶の合成装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例で得られたナトリウムコバルト
複合酸化物のXRD回折結果を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 伊藤 仁士 神奈川県藤沢市本藤沢4丁目2番1号 株 式会社荏原総合研究所内 (72)発明者 臼井 高史 神奈川県藤沢市本藤沢4丁目2番1号 株 式会社荏原総合研究所内 (72)発明者 芹川ロベルト正浩 神奈川県藤沢市本藤沢4丁目2番1号 株 式会社荏原総合研究所内 Fターム(参考) 4G048 AA04 AB01 AB02 AB06 AC08 AD06 AE05 AE06 AE07

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ナトリウム媒体及びコバルト媒体を水熱
    反応又は超臨界水反応に暴露することを特徴とする、結
    晶性ナトリウムコバルト酸化物の合成方法。
  2. 【請求項2】 ナトリウム媒体が、水酸化ナトリウム、
    炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウ
    ム、硝酸ナトリウム、或いはこれらの組み合わせの水溶
    液である請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 コバルト媒体が、硝酸コバルト、ハロゲ
    ン化コバルト、炭酸コバルト、水酸化コバルト、或いは
    これらの組み合わせの水溶液である請求項1又は2に記
    載の方法。
  4. 【請求項4】 酸素、空気、酸素富化空気、過酸化水
    素、オゾン、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩から選択され
    る少なくとも1種類の酸化剤を反応場に加える請求項1
    〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 可燃性物質を反応場に加える請求項1〜
    4のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 水熱反応又は超臨界水反応の反応器、並
    びに、ナトリウム媒体及びコバルト媒体を反応器に供給
    する手段を具備することを特徴とする、結晶性ナトリウ
    ムコバルト酸化物を合成するための装置。
  7. 【請求項7】 ナトリウム媒体及びコバルト媒体を、そ
    れぞれ個別に反応器に供給するラインを具備する請求項
    6に記載の装置。
  8. 【請求項8】 反応器の直ぐ下流に、反応生成物を急冷
    する冷却装置が配置されている請求項6又は7に記載の
    装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009526735A (ja) * 2006-02-17 2009-07-23 エルジー・ケム・リミテッド リチウム−金属複合酸化物の製造方法
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JP4755988B2 (ja) * 2003-05-21 2011-08-24 ハンファ ケミカル コーポレイション 金属酸化物固溶体、その製造および用途
JP2012146928A (ja) * 2011-01-14 2012-08-02 Toyota Motor Corp ナノコンポジット熱電変換材料の製造方法

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