JP2003191312A - 多層シームレスベルトの製造方法、及び該方法によって得られる多層シームレスベルト - Google Patents

多層シームレスベルトの製造方法、及び該方法によって得られる多層シームレスベルト

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JP2003191312A JP2001391208A JP2001391208A JP2003191312A JP 2003191312 A JP2003191312 A JP 2003191312A JP 2001391208 A JP2001391208 A JP 2001391208A JP 2001391208 A JP2001391208 A JP 2001391208A JP 2003191312 A JP2003191312 A JP 2003191312A
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武彦 金井
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邦夫 金岡
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Abstract

(57)【要約】 【課題】環状のダイスより押出すことにより得られるに
もかかわらず、周長誤差が少なく、その表面最大高さR
maxが小さいシームレスベルトの製造方法を提供する
こと、ならびにその製造方法によって得られるシームレ
スベルトを提供すること。 【解決手段】最外層を構成する主たる熱可塑性合成樹脂
Aの流出開始温度TA(℃)が、最外層以外の構成層を
構成する各々の主たる熱可塑性合成樹脂のうち、最も流
出開始温度の低い熱可塑性合成樹脂Bの流出開始温度T
B(℃)よりも高く、且つ継ぎ目のない多層チューブ
を、その内径を規制しつつ下記条件を満たす加熱処理温
度T(℃)で加熱処理することを特徴とする多層シーム
レスベルトの製造方法。 TB<T+10<TA

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真方式の複写
機、プリンター、ファックス等に用いられる周長の寸法
精度が良好で、表面粗さの小さい多層シームレスベルト
の製造方法、ならびにその製造方法により得られる多層
シームレスベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、カラー電子写真技術の進歩によ
り、フルカラー複写機、およびカラープリンターが実用
化され、感光体上に形成されたトナー像を複写紙上へ転
写するための中間転写体として、あるいは転写搬送用ベ
ルトとして半導電性シームレスベルトが用いられるよう
になってきている。このようなシームレスベルトには、
様々な使用環境において常に鮮明な画像を得るために、
体積抵抗率の範囲が1×10Ω・cm〜1×1014
Ω・cmで、電気抵抗のバラツキが小さい、使用環境
(温度、湿度)が変わっても電気抵抗の変化が小さい、
電圧を繰返し印加しても電気抵抗の変化が小さい等の電
気的特性の他に、周長の寸法精度が良好で、表面粗さが
小さい等の特性が要求されている。
【0003】すなわち、シームレスベルトの電気抵抗は
画質に密接に関係し、電気抵抗のバラツキが大きければ
部分的な画像の濃淡を生じ、また環境変化(温度、湿
度)による電気抵抗の変動が大きいと使用環境の変化に
より画像全体の濃淡を生じるため、電気抵抗のバラツキ
が小さく、且つ使用環境(温度、湿度)の変化による電
気抵抗の変化が小さいシームレスベルトが望まれてい
る。さらに、複写機による複写やプリンターによる印刷
を行なうと、その都度シームレスベルトに高い電圧が印
加され、その繰返しによりシームレスベルトの電気抵抗
が変化し、画像の濃度が変化するという問題があり、電
圧印加繰返しによる電気抵抗の変化が小さい半導電性シ
ームレスベルトが望まれている。
【0004】熱可塑性合成樹脂へ半導電性を付与するに
は、熱可塑性合成樹脂へカーボンブラックや金属酸化物
等の電子伝導性材料、あるいはポリエチレンオキサイド
鎖を含有するポリマー、側鎖に4級アンモニウム塩を含
有するポリマー、アルカリ金属を含有するアイオノマ
ー、アルカリ金属塩等のイオン伝導性材料を添加する方
法が知られている。
【0005】なお本発明者等は、特開平8−16539
5号公報、特開平9−324133号公報、特開200
0−143918号公報等によって、電気抵抗が均一
で、使用環境の変化により電気抵抗の変化が小さく、電
圧印加繰返しによる電気抵抗の変化が小さい半導電性樹
脂組成物、および半導電性シームレスベルトを提案して
いる。
【0006】一方、シームレスベルトの周長精度や表面
粗さも複写機、プリンター、ファックス等の画質に大き
く影響を及ぼすものであり、鮮明な画像を得るために個
々のシームレスベルトの巾方向における周長のバラツキ
を抑え、表面粗さを小さくすることが求められている。
具体的には、周長精度が悪いシームレスベルトは、プリ
ンター等に搭載して走行させた場合、ベルトの走行不良
(蛇行)による印刷位置のズレや、弛みによる感光体と
中間転写ベルト、あるいは転写搬送ベルトと紙との間に
部分的隙間を生じ、画像に濃淡が発生するという不都合
があった。さらにはベルトの蛇行によりベルトが破損す
るという不都合も生じる。また、表面粗さが大きい場合
も感光体と中間転写ベルト、あるいは転写搬送ベルトと
紙との間に部分的隙間を生じ、画像が部分的に薄くなる
という不都合が生じる。
【0007】通常、継ぎ目のないシームレスベルトを得
るには、円筒状の金型内部、あるいは外部へディッピン
グ、あるいは塗布により導電性材料を含有する合成樹脂
溶液層を形成し、乾燥後金型より剥す方法と、環状のダ
イスより押出したチューブを所定長さに切断して得る方
法とがある。これらのうち、ディッピング、あるいは塗
布により導電性材料を含有する溶液層を金型上へ形成さ
せる方法は、寸法精度に優れたシームレスベルトが得ら
れるものの、所定厚みのベルトを得るのに何回もディッ
ピング、あるいは塗布と乾燥を繰返す必要があり、製造
にコストがかかるという欠点があった。
【0008】一方、環状のダイスより押出したチューブ
を所定の長さに切断して得られたシームレスベルトは、
安価に製造できる反面、周長のバラツキが大きく、また
ピンチロールにより挟持されることによって折目がつい
た原反の場合、折目に基づくベルトの表面最大高さRm
axが大きくなるという問題があった。
【0009】そこで環状のダイスより押出したチューブ
を所定の長さに切断して得られたシームレスベルトの周
長精度を上げたり表面粗さを小さくするために、熱ロー
ル、熱風等を用いて加熱処理を行う方法が数多く提案さ
れている。しかしながらベルトの融点以上の温度で加熱
処理を行う場合はシームレスベルトに伸びを生じたり、
加熱処理の冶具として用いるロールやベルト等にシーム
レスベルトが融着したりするため条件の設定が難しく、
またシームレスベルトの融点以下での加熱処理では周長
精度を向上させるには限界があり、さらに熱による歪が
生じ易い合成樹脂の場合、二次加工によってかえって弛
みが生じて周長精度が低下するという問題がある。ま
た、シームレスベルトの融点以下での加熱処理では折目
によるベルトの表面最大高さRmaxは若干小さくなる
ものの満足ゆくものではなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような状
況に鑑みなされたもので、環状のダイスより押出すこと
により得られるにもかかわらず、周長誤差が少なく、そ
の表面最大高さRmaxが小さいシームレスベルトの製
造方法を提供すること、ならびにその製造方法によって
得られるシームレスベルトを提供することを課題とす
る。
【0011】
【課題を解決する手段】本発明者らは鋭意研究を行っ
た。この結果、外層を構成する主たる熱可塑性合成樹脂
Aの流出開始温度TA(℃)が、最外層以外の各構成層
を構成する各々の主たる熱可塑性合成樹脂のうち、最も
流出開始温度の低い熱可塑性合成樹脂Bの流出開始温度
B(℃)よりも高い多層構成のチューブを、その内径
を規制しつつ特定の温度条件で加熱処理して得られるシ
ームレスベルトが前記課題を解決したものであることを
見いだし本発明に到った。すなわち本発明は、 最外層を構成する主たる熱可塑性合成樹脂Aの流出開
始温度TA(℃)が、最外層以外の各構成層を構成する
各々の主たる熱可塑性合成樹脂のうち、最も流出開始温
度の低い熱可塑性合成樹脂Bの流出開始温度TB(℃)
よりも高く、且つ継ぎ目のない多層チューブを、その内
径を規制しつつ下記条件を満たす加熱処理温度T(℃)
で加熱処理することを特徴とする多層シームレスベルト
の製造方法に関するものである。 TB<T+10<TA
【0012】に記載の方法により製造されるシーム
レスベルトであって、周長誤差が0.5mm以内であ
り、しかも、ベルトの表面最大高さRmaxが10μm
以下であることを特徴とする多層シームレスベルトに関
するものである。
【0013】フッ素系樹脂から主として構成される層
を含むことを特徴とするに記載の多層シームレスベル
トに関するものである。
【0014】フッ素系樹脂がフッ化ビニリデンの単独
重合体、およびその共重合体の中から選ばれた一種以上
であることを特徴とするに記載の多層シームレスベル
トに関するものである。
【0015】熱可塑性ポリウレタンから主として構成
される層を含むことを特徴とする〜のいずれかに記
載の多層シームレスベルトに関するものである。
【0016】その少なくとも一層が半導電層であり、
該半導電層の体積抵抗率が1×10 5Ω・cm〜1×1
14Ω・cmであることを特徴とする〜のいずれか
に記載の多層シームレスベルトに関するものである。
【0017】半導電層がカーボンブラックを含有する
ことを特徴とする請求項5に記載の多層シームレスベル
トに関するものである。
【0018】半導電層がポリエチレンオキシド鎖を有
する高分子、および/または、その共重合体、およびア
ルカリ金属塩を含有することを特徴とする請求項6また
は7に記載の多層シームレスベルトに関するものであ
る。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明は、所定の流出開始温度差
を有する複数種の層からなる継ぎ目のない積層チューブ
を加熱処理し、周長誤差が少なく、ベルトの表面最大高
さRmaxが低い多層シームレスベルトの製造方法に関
するものである。さらに該方法によって得られる多層シ
ームレスベルトに関するものである。なお本発明でいう
流出開始温度とは、毛細管型レオメーター(例えば
(株)島津製作所製高化式フローテスターCFT−50
0型)を用いて、4℃/分の昇温速度で加熱された樹脂
を、荷重100kgf/cm2のもとでピストンによ
り、内径1mm、長さ10mmのノズルから押し出すと
きに、ノズルから樹脂が流れ始める温度(℃)をいう。
より詳細に説明すると、前記条件により測定を開始する
と、まず樹脂ペレット間の間隙の閉塞によりピストンが
降下する。その後樹脂の膨張によりピストンの降下が見
られなくなる。そしてさらに昇温が進むと遂にはノズル
より樹脂が流れ始めると同時に、ピストンの降下が観測
されるようになる。この時の温度を本発明では流出開始
温度と定義する。以下本発明を詳細に説明する。
【0020】本発明の多層シームレスベルトの製造方法
は、最外層を構成する主たる熱可塑性合成樹脂Aの流出
開始温度TA(℃)が、最外層以外の構成層を構成する
各々の主たる熱可塑性合成樹脂のうち、最も流出開始温
度の低い熱可塑性合成樹脂Bの流出開始温度TB(℃)
よりも高く、且つ継ぎ目のない多層チューブを、その内
径を規制しつつ、TB<T+10<TAを満たす加熱処理
温度T(℃)で加熱処理することを骨子とするものであ
る。すなわち、この条件を満たす加熱処理温度で多層チ
ューブを加熱処理することにより、加熱処理温度T+1
0(℃)よりも低い流出開始温度を有する熱可塑性合成
樹脂が溶融、あるいは加熱処理の前後において形態の変
化を生じる程度にまで軟化する。この結果、溶融、軟化
した熱可塑性合成樹脂から主として構成される層の周長
精度が向上する。また加熱処理温度T+10(℃)より
も高い流出開始温度を有する熱可塑性合成樹脂から主と
して構成される層もこれに追従し、シームレスベルト全
体としての周長精度が大幅に向上する。さらに、例えば
インフレーション成形時チューブが折りたたまれること
によって形成される折り目に起因するベルト表面の最大
高さRmaxも、同様な作用により小さくすることがで
きる。なお、本発明においてはしばしば、多層チューブ
の各構成層を構成する主たる熱可塑性合成樹脂の流出開
始温度を問題とするが、この流出開始温度は次のような
温度を意味するものである。すなわち、ある層において
用いられる熱可塑性合成樹脂が一種である場合にはこの
熱可塑性合成樹脂の流出開始温度を意味する。一方、あ
る層において用いられる熱可塑性合成樹脂が複数種であ
る場合、これら熱可塑性合成樹脂はお互いに非相溶系を
形成するか、あるいは相溶系を形成するが、いずれの系
を形成した場合にあってもマトリクス相(海相)を形成
する熱可塑性合成樹脂、あるいはマトリクス相を形成す
る相溶した熱可塑性合成樹脂組成物の流出開始温度を意
味する。
【0021】以下、より具体的に本発明の多層シームレ
スベルトの製造方法について説明する。まず本発明にお
いては、熱可塑性合成樹脂、あるいは熱可塑性合成樹脂
組成物により多層チューブを製造する。具体的には、熱
可塑性合成樹脂、あるいは熱可塑性合成樹脂に各種添加
剤が配合された熱可塑性合成樹脂組成物を、環状のダイ
スを付けた押出し機を用い多層チューブを得る。この
際、環状多層ダイスを取り付けた共押出機を用いてもよ
い。また環状単層ダイスを取り付けた単層押出機を用
い、各層を単独に所定厚みに押し出して得られるチュー
ブを所定の構成に重ね合せるようにしてもよい。そし
て、この多層チューブは前述したように、最外層を構成
する主たる熱可塑性合成樹脂Aの流出開始温度T
A(℃)は、最外層以外の各構成層を構成する各々の主
たる熱可塑性合成樹脂のうち、最も流出開始温度の低い
熱可塑性合成樹脂Bの流出開始温度TB(℃)よりも高
く設定されていなければならない。なお、多層チューブ
の最外層の厚みは5μm以上が好ましく、さらには8μ
m以上が好ましい。最外層の厚みが5μm未満では加熱
処理時に最外層が破れたり、溶融した層が染み出したり
する恐れがある。
【0022】次いで、上記した条件を満たす多層チュー
ブを加熱処置する。加熱処理温度T(℃)は、その温度
よりも10℃高い温度であるT+10(℃)が、前記し
たT B(℃)よりも高く、しかもTA(℃)よりも低い温
度に設定される。さらに好ましくは、T+10(℃)
が、前記したTB(℃)よりも10℃高い温度であるTB
+10(℃)よりもさらに高く、しかもTA(℃)より
も低い温度で行う。すなわち、TB<T+10<TAの条
件、より好ましくはTB+10<T+10<TAの条件を
満たす加熱処理温度T(℃)で多層チューブを加熱処理
する。T+10(℃)がTA以上の場合は、多層チュー
ブの表面が溶融してしまい本発明の目的を達成できな
い。一方、加熱処理温度T+10(℃)がTB(℃)以
下の場合は、加熱処理による周長精度の向上が小さく、
さらに多層チューブが折り目を有するものである場合、
折目部に基づくベルトの表面最大高さRmaxもさほど
低くならない。なお、熱可塑性合成樹脂Aの流出開始温
度TA(℃)と熱可塑性合成樹脂Bの流出開始温度T
B(℃)の差は5℃以上に設定されることが好ましく、
さらには10℃以上に設定されることが加熱処理温度の
制御の容易性という観点からより好ましい。
【0023】また、加熱処理温度をT(℃)とした場
合、流出開始温度が、T+10(℃)よりも低い熱可塑
性合成樹脂により主として構成される層の厚みの合計
が、多層チューブの全体厚みの20〜90%、より好ま
しくは30〜90%、さらに好ましくは50〜90%と
なるようにすることが、周長精度の向上、また表面最大
高さRmaxの低減化という観点から望ましい。このた
めには、各層に用いる熱可塑性合成樹脂を、その流出開
始温度を考慮して適宜選定するほか、各層の厚み構成を
前記条件が満たされるように設定する。また、各層に用
いる熱可塑性合成樹脂の流出開始温度を考慮して加熱処
理温度T(℃)を調整する。
【0024】次に具体的な加熱処理の操作を説明する。
本発明の多層シームレスベルトの製造方法における加熱
処理操作では、多層チューブの内径を所望とする寸法に
規制する。そして、多層チューブを、該チューブを構成
する合成樹脂の温度が加熱処理温度T(℃)あるいは加
熱処理温度T(℃)の極近傍の温度となるまで加熱処理
する。より具体的には例えば、多層チューブの内径よ
り外径が若干大きい円筒状の金型へ多層チューブを伸ば
しつつ被せるとことにより多層チューブに張力をかけ、
加熱する方法、円筒状の金型へ多層チューブを被せ、
加熱したローラで外周面を処理しつつ平滑化させる方
法、円筒状金型に被せた多層チューブへ熱風を吹付け
て加熱した後、コールドロールでチューブ表面の平滑化
と冷却を行う方法、複数の支持ロールで保持した多層
チューブを加熱する方法、複数の支持ロールで保持し
た多層チューブを回転させながら加熱したロールを当
て、ベルトを加熱し平滑化する方法等がある。また周長
精度をさらに向上させるにはベルトに張力をかけた状態
で加熱した後、引き続き張力をかけた状態で冷却するの
が好ましい。さらに、、、のように加熱処理時、
多層チューブの表面をロール等を用いて加圧する方法
が、表面最大高さRmaxを小さくできるので好まし
い。なお、加熱処理する時間は、多層チューブの厚み、
加熱処理方法により異なるが、多層チューブを構成する
熱可塑性合成樹脂全体の温度が加熱処理温度あるいはそ
の極近傍の温度に達してからおよそ0.5〜10分間で
十分である。
【0025】以上説明した本発明の多層シームレスベル
トの製造方法により得られる多層シームレスベルトは、
周長精度が良好であり、また表面最大高さRmaxが小
さいという特長を有している。
【0026】次いで、本発明の多層シームレスベルトに
ついて説明する。本発明の多層シームレスベルトは上記
した方法により得られるものであり、周長誤差が0.5
mm以内であり、しかも、ベルトの表面最大高さRma
xが10μm以下に抑えられているものである。本発明
の多層シームレスベルトの各層を構成する熱可塑性合成
樹脂は特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン
等のポリオレフィン系樹脂:ポリフッ化ビニル、エチレ
ン−テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等
のフッ素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブ
チレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリア
ミド系樹脂;塩化ビニル系樹脂;ABS系樹脂;ポリメ
チルメタクリレート;ポリカーボネート;さらには熱可
塑性エラストマーと呼ばれている水添スチレン−ブタジ
エン共重合体、ポリエーテルエステル、熱可塑性ポリウ
レタン等も用いることが出来る。これらの熱可塑性合成
樹脂は単独で用いても良く、二種以上混合して各層に用
いてもよい。
【0027】上記した熱可塑性合成樹脂の中でも、フッ
素系樹脂は、誘電率が高く、非粘着性、非汚染性、低摩
擦性、耐薬品性、耐オゾン性等が優れているため、コピ
ー機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真用部材と
して使用するのに特に適している。フッ素系樹脂として
は、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、三フッ
化塩化エチレン−フッ化ビニリデン共重合体、フッ化ビ
ニリデン−四フッ化エチレン共重合体、三フッ化塩化エ
チレン−フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合
体、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プ
ロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピ
レン共重合体、フッ化ビニリデン−三フッ化塩化エチレ
ン共重合体とポリフッ化ビニリデンとのグラフト共重合
体、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体と
ポリフッ化ビニリデンとのグラフト共重合体、四フッ化
エチレン−エチレン共重合体、四フッ化エチレン−六フ
ッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン−パーフル
オロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリ三フッ化塩
化エチレン等が挙げられる。これらのうち、特にフッ化
ビニリデン単独重合体、およびその共重合体が成形加工
性の点で特に好ましい。
【0028】一方、近年、カラーコピー機やカラープリ
ンターの分野において印刷速度の高速化が追求されるよ
うになっている。中間転写方式の場合、感光体から中間
転写ベルトへ、中間転写ベルトから被印刷物へトナーの
授受が行われる。またタンデム方式の場合、転写ロール
から被印刷物へトナーの授受が行われる。ここにおい
て、硬度の小さいベルトあるいはベルトが被覆された転
写ロールを用いるとニップ幅が大きくなり、相手材との
接触面積を大きくでき、トナー授受の時間を長くするこ
とができ高速化に対応しやすくなる。さらに、硬度の小
さいベルトは表面に凹凸のある被印刷物へも鮮明な画像
を形成することが可能となる。
【0029】カラーコピー機やカラープリンターの分野
における、このような印刷速度の高速化への要求に答え
るためには、引張り弾性率が3000kg/cm以下
で硬度の低い熱可塑性合成樹脂から主として構成される
層を有する多層構造のシームレスベルトが好ましい。こ
のような構成のシームレスベルトは、ニップ幅が大きく
取れ、相手材との接触面積を大きくするという効果を発
揮し、以て、印刷速度の高速化に応えるものである。引
張り弾性率が3000kg/cm以下で硬度の低い熱
可塑性合成樹脂としては、熱可塑性エラストマーと呼ば
れる前述の熱可塑性合成樹脂が好ましく、その中でも耐
摩耗性にも優れる熱可塑性ポリウレタンが好ましい。熱
可塑性ポリウレタンとしては、通常市販されている熱可
塑性ポリウレタンを用いることができる。具体的には、
ジイソシアナートとしてヘキサメチレンジイソシアナー
ト、ジフェニルメタンジイソシアナート、水添ジフェニ
ルメタンジイソシアナート、トルイレンジイソシアナー
ト等を、長鎖ジオールとしては、ポリブチレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、両末端に水酸基を有する
脂肪族ポリエステル等を、短鎖ジオールとして、1,4
−ブタンジオール、シクロヘキサンジオール、エチレン
グリコール等を用いた熱可塑性ポリウレタンを挙げるこ
とができる。そして、その硬度は相手材との接触時にニ
ップ幅を大きく取れるということから、ショアD硬度8
0以下のものが好ましい。
【0030】さらに本発明の多層シームレスベルトは、
上記した引張り弾性率が3000kg/cm以下で硬
度の低い熱可塑性合成樹脂から主として構成される層に
加えて、引張り弾性率が7000kg/cm以上の熱
可塑性合成樹脂から主として構成される層を有すること
が好ましい。すなわち、引張り弾性率7000kg/c
以上の熱可塑性合成樹脂から主として構成される層
は、シームレスベルトをロール間に架張する際等、それ
が伸びるのを抑える効果を示す。引張り弾性率が700
0kg/cm以上の熱可塑性合成樹脂としては特に限
定されるものではないが、前述したフッ素系樹脂が前述
した理由により最適である。
【0031】また本発明の積層シームレスベルトは、そ
の少なくとも一層を、1×105Ω・cm〜1×1014
Ω・cmの範囲の体積固有抵抗を有する半導電層とする
こともできる。このような半導電層を付与することによ
り、本発明の積層シームレスベルトは中間転写ベルト、
転写搬送ベルトとして、あるいは転写ロール用の表面資
材として有用に使用できるようになる。熱可塑性ポリウ
レタンエラストマーのようにそれ自体で半導電性を示す
ような熱可塑性合成樹脂もあるが、このような性質を示
さない熱可塑性合成樹脂からなる層に半導電性を付与す
るためには該層に導電剤を配合する。導電剤としてカー
ボンブラック、グラフト化カーボンブラック、金属酸化
物、金属粉末等の電子伝導性材料、ポリエチレンオキシ
ド鎖を含有する高分子、側鎖にアンモニウム塩を有する
ポリマー、アルカリ金属含有アイオノマー、アルカリ金
属塩、アルキル四級アンモニウムのフルオロほう酸塩、
アルキル四級アンモニウム塩等のイオン伝導性材料を挙
げることができ、これらを一種以上添加することによっ
て上記熱可塑性合成樹脂へ半導電性を付与することがで
きる。なお、電子伝導性材料の中では、少量の添加で抵
抗が低下するためカーボンブラックが好ましい。また、
イオン伝導性材料の中では、使用環境(温度、湿度)に
よる電気抵抗への影響が小さいためポリエチレンオキシ
ド鎖を含有する高分子が好ましい。
【0032】上記したカーボンブラックとしては、アセ
チレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラ
ック等があげられるが、中でも少ない添加量で半導電性
を付与できるという観点からアセチレンブラック、およ
びファーネスブラックの一種であるケッチェンブラック
が好ましい。カーボンブラックの添加量は、カーボンブ
ラックの種類によって異なるが、アセチレンブラックの
場合、当該半導電層の全重量中の3〜25重量%を占め
ることが好ましく、ケッチェンブラックの場合には1〜
10重量%を占めることが好ましい。上記範囲未満では
該層へ半導電性を付与することができず、上記範囲を超
えると押出し成形時加工性が悪いばかりでなく、製品の
強度が低下するので好ましくない。
【0033】また多層シームレスベルトの抵抗のバラツ
キを小さくするために、特開平7−113029号公報
に記載のように、導電剤としてカーボンブラックとポリ
エチレンオキシド鎖を有する高分子とを併用することが
好ましい。なお、カーボンブラックの添加量は、上記し
たと同様の範囲が好ましい。
【0034】また同様の目的で、表面処理したカーボン
ブラック、例えば特開平11−29678号公報に記載
のグラフト化カーボンブラックを用いることができる。
なお、グラフト化カーボンブラックの場合もカーボンブ
ラック重量換算で、上記範囲の添加量が好ましい。
【0035】さらに同様の目的で、特開平8−1653
95号公報に記載のように、導電剤としてポリエチレン
オキシド鎖を有する高分子(また、その共重合体も含
む)と、過塩素酸リチウム等のアルカリ金属塩に代表さ
れるイオン電解質を併用することも好ましい。ポリエチ
レンオキシド鎖を有する高分子の添加量は、当該半導電
層の全重量中の0.1〜30重量%、さらには0.3〜
25重量%を占めることが好ましい。一方イオン電解質
がアルカリ金属塩である場合には、その添加量は、当該
半導電層の全重量中の0.01〜5重量%、さらに0.
05〜4重量%を占めることが好ましい。
【0036】本発明の多層シームレスベルトは、上記し
た組成の他に多層シームレスベルトに悪影響を及ぼさな
い範囲で合成樹脂の加工の際通常用いられる酸化防止
剤、アンチブロッキング剤、滑剤、加工助剤、顔料等を
添加することができる。また、必要に応じて、シームレ
スベルトの表面エネルギーを低下させる目的でその表面
にフッ素系、あるいはシリコーン系の塗料を塗布しても
よい。さらに帯電特性を変更する目的でポリアミド、ア
クリル樹脂を添加したり、シームレスベルトの特性を改
良するために他の合成樹脂を少量添加することもでき
る。
【0037】一方、本発明の多層シームレスベルトの全
体厚みは、30〜2000μmが好ましく、さらには5
0〜1000μmがより好ましい。多層シームレスベル
トの全体厚みが30μm未満では、多層シームレスベル
トをロール間へ架張し、張力をかけ駆動した場合、多層
シームレスベルトが伸びて色ずれを起こしたり、しわが
発生しやすくなるので好ましくない。また、2000μ
mを超えると多層シームレスベルトが硬くなり柔軟性を
失うので好ましくない。
【0038】本発明の多層シームレスベルトは、そのま
まで中間転写ベルトや転写搬送ベルトとして使用するこ
とができる。また、ドラムへ被せ中間転写ドラムとして
紙搬送転写ドラムとして使用することができる。ドラム
の芯材としては、ドラムとしての形態を保持するのに必
要な強度を有するものであればどのような材質のもので
も良く、具体的にはステンレス鋼製、アルミニウム合金
製、銅合金製等の金属の棒状体や筒状体が挙げられ、径
や長さも大小様々なものが用途に応じて用いられる。
【0039】
【実施例】以下、実施例により、本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】多層シームレスベルトの各性能は以下のよ
うにして評価した。 <周長誤差>ベルトを巾方向に切り開き、23℃、50
%RHの条件下で、ベルト1本当たり5ヶ所の周長を1
級鋼尺とルーペを用いて測定し、その最大値と最小値と
の差を求めた。 <ベルトの表面最大高さRmax>表面粗さ形状測定機
サーフコム570A((株)東京精密製)を用い、ベル
トの表面最大高さRmaxを測定した。 <電気抵抗の測定>23℃、50%RH条件下で、三菱
化学(株)製ハイレスタを用い、HRSプローブ、印加
電圧500Vで体積抵抗率を測定した。
【0041】多層シームレスベルト製造のための合成樹
脂として以下のものを用いた。なお、各樹脂の流出開始
温度は、毛細管型レオメーター((株)島津製作所製高
化式フローテスターCFT−500型)を用いて、4℃
/分の昇温速度で加熱された樹脂を、荷重100kgf
/cm2のもとでピストンにより、内径1mm、長さ1
0mmのノズルから押し出し、ノズルから樹脂が流れ始
める温度(℃)を測定することにより求めた。 ・PVDF−1:ポリフッ化ビニリデンの単独重合体、
Solef1008(ソルベイ社製)、流出開始温度1
87℃ ・PVDF−2:ポリフッ化ビニリデンの共重合体、K
YNAR2820(アトフィナ社製)、流出開始温度1
54℃ ・PVDF−3:ポリフッ化ビニリデンの単独重合体、
KYNAR710(アトフィナ社製)、流出開始温度1
79℃ ・TPU:熱可塑性ポリウレタン:E660MZAA
(日本ミラクトラン(株)製)、流出開始温度143
℃、ショア硬度A60 ・EO−PO:エチレンオキシドとプロピレンオキシド
との共重合体、CP−2000(住友精化(株)製)、
融点35〜43℃、 ・PEEA:ポリエーテルエステルアミド、トヨラック
PAS−40T(東レ(株)製)
【0042】<チューブの作成>
【0043】[製造例1〜7]リップ径120mmの環
状ダイスを装着した50mm押出し機を用いて、折径2
61mm、厚み25μm、40μm、60μm、100
μmのポリフッ化ビニリデン単独重合体PVDF−1の
チューブを、また、折径261mm、厚み40μm、6
0μm、100μmのポリフッ化ビニリデン共重合体P
VDF−2のチューブを製造した。なお、チューブの引
き取りにはピンチロールを用いた。得られたチューブの
周長誤差、折目を伸ばして測定したベルトの表面最大高
さRmaxを表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】<各種コンパウンドの作成>
【0046】[製造例8]PVDF−3:EO−PO:
過塩素酸リチウム=90:9:1(重量比)の混合物を
35mm二軸混錬機で混錬、ペレット化し、コンパウン
ドI−1を得た。
【0047】[製造例9]PVDF−1:EO−PO:
過塩素酸リチウム=95:4.5:0.5(重量比)の
混合物を35mm二軸混錬機で混錬、ペレット化し、コ
ンパウンドI−2を得た。
【0048】[製造例10]PVDF−2:EO−P
O:過塩素酸リチウム=80:18:2の混合物(重量
比)を35mm二軸混錬機で混錬、ペレット化し、コン
パウンドI−3を得た。
【0049】[製造例11]PVDF−1:EO−P
O:過塩素酸リチウム=98:1.8:0.2(重量
比)の混合物を35mm二軸混錬機で混錬、ペレット化
し、コンパウンドI−4を得た。
【0050】[製造例12]5重量%のカーボンブラッ
ク(ケッチェンブラックEC:ケッツエンブラックイン
ターナショナル製)を含有するPVDF−3へ、エチル
メタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合
体(3:1)を5重量%添加し、二軸混錬機を用いてグ
ラフト化カーボンブラックのマスターバッチ(g−CB
・MB)を作製した。得られたg−CB・MB 35重
量部、PVDF−2 60重量部、PEEA5重量部の
混合物を35mm二軸混錬機で混錬、ペレット化し、コ
ンパウンドC−1を得た。
【0051】製造例8〜10で製造した各種コンパウン
ドを、リップ径120mmの環状ダイスを装着した50
mm押出し機に供給し、表2に示す厚みで、折径が26
0mmのチューブを得た。なおチューブの引き取りには
ピンチロールを用いた。得られたチューブの体積固有抵
抗を表2に示す。また、製造例11、12で得られたコ
ンパウンドを190℃で3分間プレスし厚み150μm
のシートを得た。得られたシートの体積抵抗率を表2に
示す。
【0052】
【表2】
【0053】<TPUチューブの製造>
【0054】[製造例13]リップ径120mmの環状
ダイスを装着した50mm押出し機を用いて、厚み50
0μm、折径260mmのTPUのチューブを製造し
た。なお、チューブの引き取りにはピンチロールを用い
た。得られたチューブは導電剤を配しないにもかかわら
ず2.3×1011Ω・cmの体積抵抗率を示し、半導電
性を有していた。
【0055】<多層エンドレスベルトの製造>
【0056】[実施例1〜7]製造例1〜10、13で
製造したチューブを、長さ400mmに切断し表3に示
す層構成で重ね合わせた後、直径169mmの円筒状金
型に被せることによりその内径を規制した。そして16
5℃で60分間加熱後、冷却し、金型より取り外した。
得られた多層シームレスベルトの周長誤差、表面最大高
さRmaxを表3に併せて示す。
【0057】[比較例1、2]製造例3、4で製造した
チューブを長さ400mmに切断し、それぞれ直径16
9mmの円筒状金型に被せることによりその内径を規制
した。そして165℃で60分間加熱、冷却後、金型よ
り取り外した。得られたベルトの周長誤差、表面最大高
さRmaxを表3に併せて示す。
【0058】[比較例3]製造例1、3、および7で製
造したチューブを長さ400mmに切断し表3の層構成
で重ね合わせた後、直径169mmの円筒状金型に被せ
ることによりその内径を規制した。そして135℃で6
0分間加熱、冷却後、金型より取り外した。得られたベ
ルトの周長誤差、表面最大高さRmaxを表3に併せて
示す。
【0059】
【表3】
【0060】実施例1〜5は最外層、内層としてPVD
F−1を、中間層として最外層より流出開始温度の低い
PVDF−2を用い、加熱処理温度T+10(℃)がP
VDF−1の流出開始温度とPVDF−2の流出開始温
度との間となる条件で加熱処理を行っているため周長誤
差が小さく、さらにベルトの表面最大高さRmaxが小
さくなっており、寸法精度に優れたベルトが得られるこ
とがわかる。実施例6は最外層としてPVDF−1を、
中間層として最外層より流出開始温度が低く半導電性を
有するTPUを、内層としてPVDF−3をベース樹脂
とする半導電性コンパウンドI−1を配し、加熱処理温
度T+10(℃)がPVDF−1の流出開始温度とTP
Uの流出開始温度との間となる条件で加熱処理したもの
である。また、実施例7は中間層としてPVDF−2を
ベース樹脂とする半導電性コンパウンドI−3を、最外
層および内層としてPVDF−1をベース樹脂とするI
−2を配し、加熱処理温度T+10(℃)がPVDF−
1の流出開始温度とPVDF−2の流出開始温度との間
となる条件で加熱処理したものである。実施例6、7と
もに周長誤差が小さく、さらにベルトの表面最大高さR
maxが小さいことがわかる。また、実施例4、5と実
施例1、6、7を比較すると、加熱処理温度をT(℃)
とした場合、流出開始温度が、T+10(℃)よりも低
い熱可塑性合成樹脂により主として構成される層の厚み
合計の割合が高い方がベルトの表面最大高さRmaxを
より低く抑えられることがわかる。一方、比較例1、2
は単層構成であり、また比較例3は加熱処理温度をT
(℃)とした場合、T+10(℃)が中間層を構成する
PVDF−2の流出開始温度よりも低く本発明の構成要
件を満足していないため、周長精度の向上が不充分で、
ベルトの表面最大高さRmaxも大きい。
【0061】[実施例8〜10]リップ径50mmの環
状ダイスを装着した三層共押出し機を用いて、表4に示
すような層構成の三層チューブを製造した。これを長さ
400mmに切断し、直径80mmの円筒状金型に被せ
ることによりその内径を規制した。そして165℃で6
0分間加熱、冷却後、金型より取り外した。得られた多
層シームレスベルトの周長誤差、表面最大高さRmax
を表4に示す。
【0062】[実施例11]リップ径50mmの環状ダ
イスを装着した20mm三層共押出し機を用いて、最外
層にPVDF−1が、中間層と内層に半導電性コンパウ
ンドC−1が配された、厚みが150μmで折径120
mmの実質的には二層構造のチューブを製造した。これ
を長さ400mmに切断し、直径80mmの円筒状金型
に被せることによりその内径を規制した。そして165
℃で60分間加熱、冷却後、金型より取り外した。得ら
れた多層シームレスベルトの周長誤差、表面最大高さR
maxを表4に示す。
【0063】[比較例4〜6]実施例8〜10で得られ
た三層チューブを長さ400mmに切断し、直径80m
mの円筒状金型に被せることによりその内径を規制し
た。そして130℃で60分間加熱、冷却後、金型より
取り外した。得られた多層シームレスベルトの周長誤
差、表面最大高さRmaxを表4に併せて示す。
【0064】
【表4】
【0065】表4より明らかなように、実施例8〜10
は最外層にPVDF−1およびPVDF−1をベース樹
脂とする半導電性コンパウンドI−4、I−2を配し、
中間層にPVDF−2をベース樹脂とする導電性コンパ
ウンドI−3を配し、また、内層としてPVDF−1お
よびPVDF−3をベース樹脂とする導電性コンパウン
ドI−1、I−2を配し、そして加熱処理温度T+10
(℃)がPVDF−1の流出開始温度とPVDF−2の
流出開始温度との間となる条件で加熱処理を行っている
ため、周長精度が良好で、ベルトの表面最大高さRma
xが小さく抑えられている。さらに、実施例11も同様
に、最外層にPVDF−1を配し、内層にPVDF−2
をベース樹脂とした半導電性コンパウンドC−1を配
し、加熱処理温度T+10(℃)がPVDF−1の流出
開始温度とPVDF−2の流出開始温度との間となる条
件で加熱処理を行っているため、周長精度が良好で、ベ
ルトの表面最大高さRmaxも小さい。一方、比較例4
〜6はそれぞれ実施例8〜10と同様の層構成の多層チ
ューブを加熱処理したものであるが、加熱処理温度をT
(℃)とした場合、T+10(℃)が中間層を主として
構成するPVDF−2の流出開始温度よりも低いため周
長精度の改善効果が小さく、ベルトの表面最大高さRm
axも非常に大きく、シームレスベルトとして不適であ
った。
【0066】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の多層シー
ムレスベルトの製造方法により得られる多層シームレス
ベルトは、周長精度が大幅に向上しているとともに、ベ
ルトの表面最大高さRmaxも小さいものである。この
ような特長を有する多層シームレスベルトは、中間転写
ベルトや転写搬送ベルトとして用いると、走行不良がな
く、弛みを生じないため感光体や転写搬送ベルト上の紙
との間に隙間を生じず、色ずれのない均一な濃度の画像
を形成することができる。さらに、本発明の多層シーム
レスベルトは、多層構造であるため表面抵抗率と体積抵
抗率とを任意に設定することが可能であり、トナーのチ
リ(本来印刷すべき箇所以外へトナーが飛散し付着する
現象)を防止でき、常に鮮明な画像を得ることができ
る。このような特長を有する本発明の多層シームレスベ
ルトは、これらの特性が要求される電子写真方式の複写
機、プリンター、ファックス等の部材として好適に使用
されるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G03G 15/16 G03G 15/16 // B29L 9:00 B29L 9:00 23:00 23:00 (72)発明者 丹下 善弘 香川県丸亀市中津町1515番地 大倉工業株 式会社内 Fターム(参考) 2H071 BA42 DA09 2H200 FA01 FA13 JB07 JB43 JB45 JB46 JB47 JC04 JC13 JC15 JC16 JC17 MA04 MA14 MA20 MB02 MB04 MC01 MC03 4F207 AA16 AA31 AB18 AE03 AG03 AG08 AG16 AR06 KA01 KA17 KB26 KM15 KM16 4J002 CH00X CK02W DA036 GQ00 GQ02

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 最外層を構成する主たる熱可塑性合成樹
    脂Aの流出開始温度TA(℃)が、最外層以外の各構成
    層を構成する各々の主たる熱可塑性合成樹脂のうち、最
    も流出開始温度の低い熱可塑性合成樹脂Bの流出開始温
    度TB(℃)よりも高く、且つ継ぎ目のない多層チュー
    ブを、その内径を規制しつつ下記条件を満たす加熱処理
    温度T(℃)で加熱処理することを特徴とする多層シー
    ムレスベルトの製造方法。 TB<T+10<TA
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の方法により製造される
    シームレスベルトであって、周長誤差が0.5mm以内
    であり、しかも、ベルトの表面最大高さRmaxが10
    μm以下であることを特徴とする多層シームレスベル
    ト。
  3. 【請求項3】 フッ素系樹脂から主として構成される層
    を含むことを特徴とする請求項2に記載の多層シームレ
    スベルト。
  4. 【請求項4】 フッ素系樹脂がフッ化ビニリデンの単独
    重合体、およびその共重合体の中から選ばれた一種以上
    であることを特徴とする請求項3に記載の多層シームレ
    スベルト。
  5. 【請求項5】 熱可塑性ポリウレタンから主として構成
    される層を含むことを特徴とする請求項2乃至4のいず
    れかに記載の多層シームレスベルト。
  6. 【請求項6】 その少なくとも一層が半導電層であり、
    該半導電層の体積抵抗率が1×105Ω・cm〜1×1
    14Ω・cmであることを特徴とする請求項2乃至5の
    いずれかに記載の多層シームレスベルト。
  7. 【請求項7】 半導電層がカーボンブラックを含有する
    ことを特徴とする請求項5に記載の多層シームレスベル
    ト。
  8. 【請求項8】 半導電層がポリエチレンオキシド鎖を有
    する高分子、および/または、その共重合体、およびア
    ルカリ金属塩を含有することを特徴とする請求項6また
    は7に記載の多層シームレスベルト。
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