JP2003185275A - エジェクタ方式の減圧装置 - Google Patents

エジェクタ方式の減圧装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ニードル弁にてノズルの絞り開度を調節する
エジェクタにおいて、エジェクタ効率ηeが悪化してし
まうことを抑制する。 【解決手段】 「冷媒通路断面積の増減が繰り返されな
い」ように、ニードル弁440の先端側を釣り鐘状とす
るとともに、ノズル410側を円錐テーパ状の穴とす
る。これにより、冷媒を沸騰させて加速させるという末
広型のノズル410の機能を効果的に発揮させることが
できるので、エジェクタ効率ηeが悪化してしまうこと
を防止できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧縮機にて圧縮さ
れた高温・高圧の冷媒を放冷する放熱器、及び減圧され
た低温・低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器を有し、低温側
の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍機に適用され
るエジェクタ方式の減圧装置、いわゆるエジェクタサイ
クル用のエジェクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】エジェ
クタサイクルは、周知のごとく、エジェクタ内のノズル
にて膨張エネルギーを圧力エネルギーに変換して圧縮機
の吸入圧を上昇させて圧縮機の消費動力を低減するもの
であるが、エジェクタにおけるエネルギ変換効率(以
下、エジェクタ効率ηeと呼ぶ。)が低下すると、エジ
ェクタにて吸入圧を十分に上昇させることができなくな
るので、圧縮機の消費動力を十分に低減するできない。
【0003】一方、エジェクタ内のノズルは一種の固定
絞りであるので、ノズルに流入する冷媒流量が変動する
と、これに呼応してエジェクタ効率ηeも変動してしま
う。このため、理想的には、冷媒流量に応じてノズルの
絞り開度を可変制御することが望ましい。
【0004】そこで、発明者等は、図10に示すよう
に、ニードル弁440をノズル410内でノズル410
の軸線方向に変位させることによりノズル410の絞り
開度を調節するエジェクタを検討したが、この検討品で
は、以下のような問題が発生してしまうことが解った。
【0005】図10の下方側示すグラフは、ノズル41
0の軸線方向位置Xにおける実質的な冷媒通路断面積S
の変化を示すもので、このグラフから明らかなように、
ニードル弁440の外壁面とノズル410の内壁面とが
最も近接する絞り部Bを越えてニードル弁440の先端
位置に対応する位置Cまでは、冷媒流れ下流側に向かう
ほど冷媒通路断面積Sが増大していくが、ニードル弁4
40の先端位置に対応する位置Cから喉部の終端部に対
応する位置Dまでは、それ以前とは逆に、冷媒通路断面
積Sが縮小している。そして、喉部411の終端部D以
降はノズル410の末広部412であるので、末広形状
に沿って冷媒通路断面積が増大していく。
【0006】ところで、通路途中に通路面積が最も縮小
した喉部411を有する末広型のノズル(diverg
ent Nozzle、de Laval Nozzl
e)は、周知のごとく、喉部411以前の先細部413
で流体流れを絞って流体を加速し、喉部411以降の末
広部412で流体を沸騰させることにより音速以上まで
流体を加速するものであるので、図10のグラフに示さ
れるように、末広部412以前、つまり喉部411の終
端部D以前において、冷媒通路断面積Sの増減が繰り返
されると、冷媒を沸騰させて加速させるという末広型ノ
ズルの機能が阻害されてしまい、エジェクタ効率ηeが
悪化してしまう。
【0007】本発明は、上記点に鑑み、ニードル弁にて
ノズルの絞り開度を調節するエジェクタにおいて、エジ
ェクタ効率ηeが悪化してしまうことを抑制することを
目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、請求項1に記載の発明では、圧縮機にて
圧縮された高温高圧の冷媒を放冷する放熱器(20
0)、及び減圧された低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発
器(300)を有し、低温側の熱を高温側に移動させる
蒸気圧縮式冷凍機に適用されるエジェクタ方式の減圧装
置であって、放熱器(200)から流出した冷媒の圧力
エネルギーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張
させるとともに、通路途中に通路面積が最も縮小した喉
部(411)を有する末広型のノズル(410)と、ノ
ズル(410)から噴射する冷媒と蒸発器(300)か
ら吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧
力エネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧させる昇圧部
(420、430)と、ノズル(410)内でノズル
(410)の軸線方向に変位し、ノズル(410)の絞
り開度を調節するニードル弁(440)とを備え、喉部
(411)の終端部(D)より冷媒流れ上流側におい
て、ニードル弁(440)とノズル(410)とによっ
て決定される冷媒の通路断面積の軸線方向位置に関する
2階微分値が0以上となるように、ニードル弁(44
0)の先端側形状及びノズル(410)の内壁形状が設
定されていることを特徴とする。
【0009】これにより、後述する図4に示されるよう
に、「冷媒通路断面積の増減が繰り返されない」ように
なるので、冷媒を沸騰させて加速させるという末広型の
ノズル(410)の機能を効果的に発揮させることがで
き、エジェクタ効率ηeが悪化してしまうことを防止で
きる。
【0010】請求項2に記載の発明では、圧縮機にて圧
縮された高温高圧の冷媒を放冷する放熱器(200)、
及び減圧された低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器(3
00)を有し、低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧
縮式冷凍機に適用されるエジェクタ方式の減圧装置であ
って、放熱器(200)から流出した冷媒の圧力エネル
ギーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させる
とともに、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部(4
11)を有する末広型のノズル(410)と、ノズル
(410)から噴射する冷媒と蒸発器(300)から吸
引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エ
ネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧させる昇圧部(4
20、430)と、ノズル(410)内でノズル(41
0)の軸線方向に変位し、ノズル(410)の絞り開度
を調節するニードル弁(440)とを備え、ノズル(4
10)のうち喉部(411)より冷媒流れ上流側の冷媒
通路は、喉部(411)に近づくほど通路断面積が縮小
する円錐テーパ状に形成されており、さらに、ニードル
弁(440)は、その先端側における直径寸法(r)の
軸線方向位置に関する2階微分値が0未満なるように釣
り鐘状に形成されていることを特徴とする。
【0011】これにより、「冷媒通路断面積の増減が繰
り返されない」ようになるので、冷媒を沸騰させて加速
させるという末広型のノズル(410)の機能を効果的
に発揮させることができ、エジェクタ効率ηeが悪化し
てしまうことを防止できる。
【0012】請求項3に記載の発明では、圧縮機にて圧
縮された高温高圧の冷媒を放冷する放熱器(200)、
及び減圧された低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器(3
00)を有し、低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧
縮式冷凍機に適用されるエジェクタ方式の減圧装置であ
って、放熱器(200)から流出した冷媒の圧力エネル
ギーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させる
とともに、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部(4
11)を有する末広型のノズル(410)と、ノズル
(410)から噴射する冷媒と蒸発器(300)から吸
引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エ
ネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧させる昇圧部(4
20、430)と、ノズル(410)内でノズル(41
0)の軸線方向に変位し、ノズル(410)の絞り開度
を調節するニードル弁(440)とを備え、ノズル(4
10)のうち喉部(411)より冷媒流れ上流側の冷媒
通路は、喉部(411)に近づくほど通路断面積が縮小
する円錐テーパ状に形成されており、さらに、ニードル
弁(440)は、先端側における直径寸法(r)の軸線
方向位置に関する1階微分値が0未満となり、かつ、先
端側における直径寸法(r)の軸線方向位置に関する3
階微分値が0より大きくなるように、先端側に鋭利な突
起部(441)が設けられていることを特徴とする。
【0013】これにより、「冷媒通路断面積の増減が繰
り返されない」ようになるので、冷媒を沸騰させて加速
させるという末広型のノズル(410)の機能を効果的
に発揮させることができ、エジェクタ効率ηeが悪化し
てしまうことを防止できる。
【0014】ところで、請求項2に記載の発明では、釣
り鐘状に形成していたので、ニードル弁(440)の表
面及びその近傍を流れる冷媒の流線が、ニードル弁(4
40)の先端以降において衝突するので、ニードル弁
(440)以降において、冷媒流れに乱れが発生するお
それが高い。
【0015】これに対して、本発明では、ニードル弁
(440)の先端側を、先端側における直径寸法(r)
の軸線方向位置に関する1階微分値が0未満となり、か
つ、先端側における直径寸法rの軸線方向位置Xに関す
る3階微分値が0より大きくなるように、ニードル弁
(440)の先端側に鋭利な突起部(441)を形成し
ているので、ニードル弁(440)の表面及びその近傍
を流れる冷媒の流線が、ニードル弁(440)の先端以
降で滑らかに合流する。
【0016】したがって、ニードル弁(440)以降に
おいて、冷媒流れに乱れが発生することを抑制できるの
で、エジェクタ効率ηeが悪化してしまうことを確実に
防止できる。
【0017】請求項4に記載の発明では、圧縮機にて圧
縮された高温高圧の冷媒を放冷する放熱器(200)、
及び減圧された低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器(3
00)を有し、低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧
縮式冷凍機に適用されるエジェクタ方式の減圧装置であ
って、放熱器(200)から流出した冷媒の圧力エネル
ギーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させる
とともに、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部(4
11)を有する末広型のノズル(410)と、ノズル
(410)から噴射する冷媒と蒸発器(300)から吸
引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エ
ネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧させる昇圧部(4
20、430)と、ノズル(410)内でノズル(41
0)の軸線方向に変位し、ノズル(410)の絞り開度
を調節するニードル弁(440)とを備え、ノズル(4
10)のうち喉部(411)より冷媒流れ上流側におけ
る冷媒通路は、直径寸法(R)の軸線方向位置に関する
1階微分値が0未満となり、かつ、直径寸法(R)の軸
線方向位置に関する2階微分値が0より大きくなって、
喉部(411)に向かうほど縮小するように鼓状に形成
されており、さらに、ニードル弁(440)は、先端側
に向かうほど断面積が縮小するように円錐テーパ状に形
成されていることを特徴とする。
【0018】これにより、「冷媒通路断面積の増減が繰
り返されない」ようになるので、冷媒を沸騰させて加速
させるという末広型のノズル(410)の機能を効果的
に発揮させることができ、エジェクタ効率ηeが悪化し
てしまうことを防止できる。
【0019】請求項5に記載の発明では、ノズル(41
0)の絞り開度を最小としたときに、ニードル弁(44
0)の先端が、冷媒流れにおいて、喉部(411)の終
端部(D)以前に位置するように構成されていることを
特徴とする。
【0020】これにより、喉部411以降で冷媒流れが
ニードル弁(440)にて乱されることを防止できるの
で、エジェクタ効率ηeが悪化してしまうことを確実に
防止できる。
【0021】請求項6に記載の発明では、圧縮機にて圧
縮された高温高圧の冷媒を放冷する放熱器(200)、
及び減圧された低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器(3
00)を有し、低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧
縮式冷凍機に適用されるエジェクタ方式の減圧装置であ
って、放熱器(200)から流出した冷媒の圧力エネル
ギーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させる
とともに、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部(4
11)を有する末広型のノズル(410)と、ノズル
(410)から噴射する冷媒と蒸発器(300)から吸
引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エ
ネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧させる昇圧部(4
20、430)と、ノズル(410)内でノズル(41
0)の軸線方向に変位し、ノズル(410)の絞り開度
を調節するニードル弁(440)とを備え、ニードル弁
(440)とノズル(410)との間の通路断面積が最
小となる位置から下流側に向かって所定長さに渡って、
前記通路断面積が略一定となるように、ニードル弁(4
40)の先端側形状及びノズル(410)の内壁形状が
設定されていることを特徴とする。
【0022】これにより、「冷媒通路断面積の増減が繰
り返す」エジェクタに比べて、エジェクタ効率ηeが悪
化してしまうことを確実に防止できる。
【0023】請求項7に記載の発明では、放熱器(20
0)内の圧力が冷媒の臨界圧力以上となる蒸気圧縮式冷
凍機に、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のエジ
ェクタ方式の減圧装置(400)を用いたことを特徴と
する。
【0024】これにより、蒸気圧縮式冷凍機の成績係数
を向上させることができる。
【0025】なお、請求項8に記載の発明のごとく、冷
媒として二酸化炭素を用いてもよい。
【0026】因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後
述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す
一例である。
【0027】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)本実施形態は、
本発明に係るエジェクタ方式の減圧装置、すなわちエジ
ェクタサイクル用のエジェクタを給湯器用のヒートポン
プサイクルに適用したもので、図1は本実施形態に係る
給湯器用のヒートポンプサイクルの模式図である。
【0028】圧縮機100は冷媒を吸入圧縮するもので
あり、放熱器200は圧縮機100から吐出した冷媒と
給湯水とを熱交換して給湯水を加熱することにより冷媒
を冷却する高圧側熱交換器である。
【0029】なお、圧縮機100は電動モータ(図示せ
ず。)により駆動されており、放熱器200の加熱能力
を大きくするときには、圧縮機100の回転数を増大さ
せて圧縮機100から吐出する冷媒の流量を増大させ、
一方、加熱能力を小さくするときには、圧縮機100の
回転数を低下させて圧縮機100から吐出する冷媒の流
量を減少させる。
【0030】因みに、本実施形態では、冷媒としてフロ
ンを用いているので、放熱器200内の冷媒圧力は冷媒
の臨界圧力以下であり、放熱器200にて冷媒が凝縮す
るが、勿論、冷媒として二酸化炭素を用いてもよい。な
お、冷媒として二酸化炭素を用いた場合は、放熱器20
0内の冷媒圧力は冷媒の臨界圧力以上となり、かつ、放
熱器200内で冷媒が凝縮することなく、冷媒入口側か
ら冷媒出口側に向かうほど冷媒温度が低下するような温
度分布を有する。
【0031】蒸発器300は室外空気と液相冷媒とを熱
交換させて液相冷媒を蒸発させることにより冷媒を蒸発
させて室外空気から吸熱する低圧側熱交換器であり、エ
ジェクタ400は冷媒を減圧膨張させて蒸発器300に
て蒸発した気相冷媒を吸引するとともに、膨張エネルギ
ーを圧力エネルギーに変換して圧縮機100の吸入圧を
上昇させるものである。なお、エジェクタ400の詳細
は、後述する。
【0032】また、気液分離器500はエジェクタ40
0から流出した冷媒が流入するとともに、その流入した
冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して冷媒を蓄える気
液分離手段であり、気液分離器500のうち気相冷媒流
出口は圧縮機100の吸引側に接続され、液相流出口は
蒸発器300側の流入側に接続される。
【0033】なお、エジェクタサイクル全体のマクロ的
作動は、周知のエジェクタサイクルと同じであるので、
本実施形態では、エジェクタサイクル全体のマクロ的作
動の説明は省略する。
【0034】次に、図2に基づいてエジェクタ400の
構造について述べる。
【0035】エジェクタ400は、流入する高圧冷媒の
圧力エネルギーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧
膨張させるノズル410、ノズル410から噴射する高
い速度の冷媒流により蒸発器300にて蒸発した気相冷
媒を吸引しながら、ノズル410から噴射する冷媒流と
を混合する混合部420、及びノズル410から噴射す
る冷媒と蒸発器300から吸引した冷媒とを混合させな
がら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒の
圧力を昇圧させるディフューザ430等からなるもので
ある。
【0036】なお、混合部420においては、ノズル4
10から噴射する冷媒流の運動量と、蒸発器300から
エジェクタ400に吸引される冷媒流の運動量との和が
保存されるように混合するので、混合部420において
も冷媒の静圧が上昇する。一方、ディフューザ430に
おいては、通路断面積を徐々に拡大することにより、冷
媒の動圧を静圧に変換するので、エジェクタ400にお
いては、混合部420及びディフューザ430の両者に
て冷媒圧力を昇圧する。そこで、混合部420とディフ
ューザ430とを総称して昇圧部と呼ぶ。
【0037】つまり、理想的なエジェクタ400におい
ては、混合部420で2種類の冷媒流の運動量の和が保
存されるように冷媒圧力が増大し、ディフューザ430
でエネルギーが保存されるように冷媒圧力が増大するこ
とがのぞましい。
【0038】また、ノズル410は、通路途中に通路面
積が最も縮小した喉部411を有する末広型のノズルで
あり、ノズル410の絞り開度は、ノズル410内でニ
ードル弁440をアクチュエータ450によりノズル4
10の軸線方向に変位させることによって行う。
【0039】そして、本実施形態では、図3に示すよう
に、喉部411の終端部Dより冷媒流れ上流側におい
て、ニードル弁440とノズル410とによって決定さ
れる冷媒の通路断面積の軸線方向位置に関する2階微分
値が0以上となるように、ニードル弁440の先端側形
状及びノズル410の内壁形状を設定することにより、
ニードル弁440の外壁面とノズル410の内壁面とが
最も近接する絞り部B以降において、冷媒通路断面積の
増減が繰り返されないようにしている。
【0040】ここで、「通路断面積の軸線方向位置に関
する2階微分値が0以上とする」ことが、「絞り部B以
降において、冷媒通路断面積の増減が繰り返されない」
ことを意味することを説明しておく。なお、軸線方向
は、冷媒流れ下流側、つまりノズル410の出口側に向
かう向きを正の向きとし、絞り部Bを基準として正の向
きの軸線方向位置をXと表す。
【0041】図4(a)のグラフを、「冷媒通路断面積
Sの増減が繰り返されない」理想的な冷媒通路断面積S
と軸方向位置Xとの関係を示す関数f(X)としたと
き、これを1階微分すると、図4(b)に示すグラフと
なる。したがって、図4(b)から明らかなように、関
数f(X)の2階微分値が0以上であれば、関数f
(X)は「冷媒通路断面積Sの増減が繰り返されない」
理想的な冷媒通路断面積Sと軸方向位置Xとの関係を示
すこととなる。
【0042】なお、実際の関数f(X)は、図3から明
らかなように、1階微分関数df(X)/dXが不連続
となる点Cが存在するが、この不連続になる点Cは無視
する。
【0043】そして、本実施形態では、「冷媒通路断面
積Sの増減が繰り返されない」ように具体的な構成とし
て、図5に示すような、ニードル弁440の先端側形状
及びノズル410の内壁形状を設定している。
【0044】すなわち、ノズル410のうち喉部411
より冷媒流れ上流側の冷媒通路を、喉部411に近づく
ほど通路断面積が縮小する円錐テーパ状に形成するとと
もにニードル弁440の先端側形状を、その先端側にお
ける直径寸法rの軸線方向位置Xに関する2階微分値が
0未満なるように、つまり先端側に向かうほど直径寸法
rの変化率が小さくなってニードル弁440の外形接線
が軸線に対して直角に近づくような釣り鐘状に形成して
いる。
【0045】因みに、本実施形態では、直径寸法rは、
以下の数式となる。
【0046】
【数1】 r=[{A+(B−A)×(L−X)/L}2−A2]1/2 また、本実施形態では、図6に示すように、ノズル41
0の絞り開度を最小としたときに、ニードル弁440の
先端が、冷媒流れにおいて喉部411の終端部D以前に
位置するように、喉部411の軸方向寸法が設定されて
いる。
【0047】次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0048】本実施形態は、前述のごとく、「冷媒通路
断面積Sの増減が繰り返されない」ようにニードル弁4
40の先端側形状及びノズル410の内壁形状を設定し
ているので、冷媒を沸騰させて加速させるという末広型
ノズル410の機能を効果的に発揮させることができ、
エジェクタ効率ηeが悪化してしまうことを防止でき
る。
【0049】また、ノズル410の絞り開度を最小とし
たときに、ニードル弁440の先端が、冷媒流れにおい
て喉部411の終端部D以前に位置するように、喉部4
11の軸方向寸法が設定されているので、喉部411以
降の末広部412(図5参照)にて冷媒流れがニードル
弁440にて乱されることを防止できる。したがって、
末広部412にて冷媒を確実に沸騰させて音速以上まで
加速することができるので、エジェクタ効率ηeが悪化
してしまうことを確実に防止できる。
【0050】(第2実施形態)本実施形態は、図7に示
すように、ノズル410のうち喉部411より冷媒流れ
上流側の冷媒通路を、喉部411に近づくほど通路断面
積が縮小する円錐テーパ状に形成するとともに、ニード
ル弁440の先端側を、先端側における直径寸法rの軸
線方向位置Xに関する1階微分値が0未満となり、か
つ、先端側における直径寸法rの軸線方向位置Xに関す
る3階微分値が0より大きくなるように、ニードル弁4
40の先端側に鋭利な針状の突起部441を形成するこ
とにより、「冷媒通路断面積Sの増減が繰り返されな
い」ようにしたものである。
【0051】次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0052】第1実施形態では、ニードル弁440の先
端側を、先端側に向かうほど直径寸法rの変化率が小さ
くなってニードル弁440の外形接線が軸線に対して直
角に近づくような釣り鐘状に形成していたので、ニード
ル弁440の表面及びその近傍を流れる冷媒の流線が、
ニードル弁440の先端以降において衝突するので、ニ
ードル弁440以降において、冷媒流れに乱れが発生す
るおそれが高い。
【0053】これに対して、本実施形態では、ニードル
弁440の先端側を、先端側における直径寸法rの軸線
方向位置Xに関する1階微分値が0未満となり、かつ、
先端側における直径寸法rの軸線方向位置Xに関する3
階微分値が0より大きくなるように、ニードル弁440
の先端側に鋭利な針状の突起部441を形成したので、
ニードル弁440の表面及びその近傍を流れる冷媒の流
線が、ニードル弁440の先端以降で滑らかに合流す
る。
【0054】したがって、ニードル弁440以降におい
て、冷媒流れに乱れが発生することを抑制できるので、
エジェクタ効率ηeが悪化してしまうことを確実に防止
できる。
【0055】因みに、図8(a)は直径寸法rの軸線方
向位置Xと関係を示す関数f(X)であり、図8(b)
は関数f(X)の1階微分関数を示し、図(8)(c)
は関数f(X)の2階微分関数を示す。これらからも明
らかなようように、ニードル弁440の先端側を、先端
側における直径寸法rの軸線方向位置Xに関する1階微
分値が0未満となり、かつ、先端側における直径寸法r
の軸線方向位置Xに関する3階微分値が0より大きくな
るようにすれば、図7に示すようなニードル弁440を
得ることができる。
【0056】(第3実施形態)本実施形態は、図9に示
すように、ノズル410のうち喉部411より冷媒流れ
上流側における冷媒通路を、直径寸法Rの軸線方向位置
Xに関する1階微分値が0未満となり、かつ、直径寸法
Rの軸線方向位置Xに関する2階微分値が0より大きく
なって、喉部441に向かうほど縮小するように鼓状に
形成するとともに、ニードル弁440の先端側を、先端
側に向かうほど断面積が縮小するように円錐テーパ状と
することにより、「冷媒通路断面積Sの増減が繰り返さ
れない」ようにしたものである。
【0057】(その他の実施形態)上述の実施形態で
は、給湯器に本発明を適用したが、本発明はこれに限定
されるものではなく、冷蔵庫、冷凍庫及び空調装置等の
その他のエジェクタサイクルにも適用することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエジェクタサイクルの
模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るエジェクタの模式図で
ある。
【図3】本発明の第1実施形態に係るノズルの説明図で
ある。
【図4】本発明の第1実施形態に係るノズルの形状を説
明するためのグラフである。
【図5】本発明の第1実施形態に係るノズルの拡大図で
ある。
【図6】本発明の第1実施形態に係るノズルの説明図で
ある。
【図7】本発明の第2実施形態に係るノズルの説明図で
ある。
【図8】本発明の第1実施形態に係るノズルの形状を説
明するためのグラフである。
【図9】本発明の第3実施形態に係るノズルの模式図で
ある。
【図10】試作検討に係るノズルの説明図である。
【符号の説明】
410…ノズル、411…喉部、412…末広部、41
3…、先細部、440…ニードル弁。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧縮機にて圧縮された高温高圧の冷媒を
    放冷する放熱器(200)、及び減圧された低温低圧の
    冷媒を蒸発させる蒸発器(300)を有し、低温側の熱
    を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍機に適用されるエ
    ジェクタ方式の減圧装置であって、 前記放熱器(200)から流出した冷媒の圧力エネルギ
    ーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させると
    ともに、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部(41
    1)を有する末広型のノズル(410)と、 前記ノズル(410)から噴射する冷媒と前記蒸発器
    (300)から吸引した冷媒とを混合させながら速度エ
    ネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧
    させる昇圧部(420、430)と、 前記ノズル(410)内で前記ノズル(410)の軸線
    方向に変位し、前記ノズル(410)の絞り開度を調節
    するニードル弁(440)とを備え、 前記喉部(411)の終端部(D)より冷媒流れ上流側
    において、前記ニードル弁(440)と前記ノズル(4
    10)とによって決定される冷媒の通路断面積の前記軸
    線方向位置に関する2階微分値が0以上となるように、
    前記ニードル弁(440)の先端側形状及び前記ノズル
    (410)の内壁形状が設定されていることを特徴とす
    るエジェクタ方式の減圧装置。
  2. 【請求項2】 圧縮機にて圧縮された高温高圧の冷媒を
    放冷する放熱器(200)、及び減圧された低温低圧の
    冷媒を蒸発させる蒸発器(300)を有し、低温側の熱
    を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍機に適用されるエ
    ジェクタ方式の減圧装置であって、 前記放熱器(200)から流出した冷媒の圧力エネルギ
    ーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させると
    ともに、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部(41
    1)を有する末広型のノズル(410)と、 前記ノズル(410)から噴射する冷媒と前記蒸発器
    (300)から吸引した冷媒とを混合させながら速度エ
    ネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧
    させる昇圧部(420、430)と、 前記ノズル(410)内で前記ノズル(410)の軸線
    方向に変位し、前記ノズル(410)の絞り開度を調節
    するニードル弁(440)とを備え、 前記ノズル(410)のうち前記喉部(411)より冷
    媒流れ上流側の冷媒通路は、前記喉部(411)に近づ
    くほど通路断面積が縮小する円錐テーパ状に形成されて
    おり、 さらに、前記ニードル弁(440)は、その先端側にお
    ける直径寸法(r)の前記軸線方向位置に関する2階微
    分値が0未満なるように釣り鐘状に形成されていること
    を特徴とするエジェクタ方式の減圧装置。
  3. 【請求項3】 圧縮機にて圧縮された高温高圧の冷媒を
    放冷する放熱器(200)、及び減圧された低温低圧の
    冷媒を蒸発させる蒸発器(300)を有し、低温側の熱
    を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍機に適用されるエ
    ジェクタ方式の減圧装置であって、 前記放熱器(200)から流出した冷媒の圧力エネルギ
    ーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させると
    ともに、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部(41
    1)を有する末広型のノズル(410)と、 前記ノズル(410)から噴射する冷媒と前記蒸発器
    (300)から吸引した冷媒とを混合させながら速度エ
    ネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧
    させる昇圧部(420、430)と、 前記ノズル(410)内で前記ノズル(410)の軸線
    方向に変位し、前記ノズル(410)の絞り開度を調節
    するニードル弁(440)とを備え、 前記ノズル(410)のうち前記喉部(411)より冷
    媒流れ上流側の冷媒通路は、前記喉部(411)に近づ
    くほど通路断面積が縮小する円錐テーパ状に形成されて
    おり、 さらに、前記ニードル弁(440)は、先端側における
    直径寸法(r)の前記軸線方向位置に関する1階微分値
    が0未満となり、かつ、先端側における直径寸法(r)
    の前記軸線方向位置に関する3階微分値が0より大きく
    なるように、先端側に鋭利な突起部(441)が設けら
    れていることを特徴とするエジェクタ方式の減圧装置。
  4. 【請求項4】 圧縮機にて圧縮された高温高圧の冷媒を
    放冷する放熱器(200)、及び減圧された低温低圧の
    冷媒を蒸発させる蒸発器(300)を有し、低温側の熱
    を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍機に適用されるエ
    ジェクタ方式の減圧装置であって、 前記放熱器(200)から流出した冷媒の圧力エネルギ
    ーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させると
    ともに、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部(41
    1)を有する末広型のノズル(410)と、 前記ノズル(410)から噴射する冷媒と前記蒸発器
    (300)から吸引した冷媒とを混合させながら速度エ
    ネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧
    させる昇圧部(420、430)と、 前記ノズル(410)内で前記ノズル(410)の軸線
    方向に変位し、前記ノズル(410)の絞り開度を調節
    するニードル弁(440)とを備え、 前記ノズル(410)のうち前記喉部(411)より冷
    媒流れ上流側における冷媒通路は、直径寸法(R)の前
    記軸線方向位置に関する1階微分値が0未満となり、か
    つ、直径寸法(R)の前記軸線方向位置に関する2階微
    分値が0より大きくなって、前記喉部(411)に向か
    うほど縮小するように鼓状に形成されており、 さらに、前記ニードル弁(440)は、先端側に向かう
    ほど断面積が縮小するように円錐テーパ状に形成されて
    いることを特徴とするエジェクタ方式の減圧装置。
  5. 【請求項5】 前記ノズル(410)の絞り開度を最小
    としたときに、前記ニードル弁(440)の先端が、冷
    媒流れにおいて、前記喉部(411)の終端部(D)以
    前に位置するように構成されていることを特徴とする請
    求項1ないし4のいずれか1つに記載のエジェクタ方式
    の減圧装置。
  6. 【請求項6】 圧縮機にて圧縮された高温高圧の冷媒を
    放冷する放熱器(200)、及び減圧された低温低圧の
    冷媒を蒸発させる蒸発器(300)を有し、低温側の熱
    を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍機に適用されるエ
    ジェクタ方式の減圧装置であって、 前記放熱器(200)から流出した冷媒の圧力エネルギ
    ーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させると
    ともに、通路途中に通路面積が最も縮小した喉部(41
    1)を有する末広型のノズル(410)と、 前記ノズル(410)から噴射する冷媒と前記蒸発器
    (300)から吸引した冷媒とを混合させながら速度エ
    ネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧
    させる昇圧部(420、430)と、 前記ノズル(410)内で前記ノズル(410)の軸線
    方向に変位し、前記ノズル(410)の絞り開度を調節
    するニードル弁(440)とを備え、 前記ニードル弁(440)と前記ノズル(410)との
    間の通路断面積が最小となる位置から下流側に向かって
    所定長さに渡って、前記通路断面積が略一定となるよう
    に、前記ニードル弁(440)の先端側形状及び前記ノ
    ズル(410)の内壁形状が設定されていることを特徴
    とするエジェクタ方式の減圧装置。
  7. 【請求項7】 放熱器(200)内の圧力が冷媒の臨界
    圧力以上となる蒸気圧縮式冷凍機に、請求項1ないし6
    のいずれか1つに記載のエジェクタ方式の減圧装置(4
    00)を用いたことを特徴とする蒸気圧縮式冷凍機。
  8. 【請求項8】 冷媒として二酸化炭素を用いたことを特
    徴とする請求項7に記載の蒸気圧縮式冷凍機。
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