JP2003183685A - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材

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JP2003183685A
JP2003183685A JP2001387990A JP2001387990A JP2003183685A JP 2003183685 A JP2003183685 A JP 2003183685A JP 2001387990 A JP2001387990 A JP 2001387990A JP 2001387990 A JP2001387990 A JP 2001387990A JP 2003183685 A JP2003183685 A JP 2003183685A
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sliding
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lubricant layer
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Takayuki Kato
崇行 加藤
Tetsuyuki Kamitoku
哲行 神徳
Fumihiro Honda
文洋 本多
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Original Assignee
Toyota Industries Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】無潤滑状態等の過酷な作動条件下で優れた耐焼
付き性を示す摺動部材を得る。 【解決手段】斜板式圧縮機の斜板60は、鉄系材料から
成る基材160と、基材160の側面162,163に
形成された固体潤滑剤層166とを備える。固体潤滑剤
層166は、例えば、MoS2およびグラファイトを含
む固体潤滑剤と、粒径20nmのNiの微粉末164と
が、バインダとしてのポリアミドイミドにより結合され
た摺動材料により形成されたものが好適である。Niの
微粉末164の摺動材料中の含有率は、0.1〜5wt
%であることが望ましく、0.5〜3wt%であること
がさらに望ましい。固体潤滑剤層166の厚さは、3μ
m以上、20μm以下とされることが望ましく、10μ
m以下とされることがさらに望ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、斜板式圧縮機にお
ける斜板,ピストンのように、相手部材と摺動する摺動
部材に関するものであり、特に摩擦係数や耐焼付き性
等、摺動特性の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】上記斜板,ピストン等、斜板式圧縮機に
おける運動変換機構用摺動部材は、もともと過酷な摺動
条件下で摺動させられるものであるが、特殊な斜板式圧
縮機の摺動部材は、実質的に潤滑油がないに等しい無潤
滑状態、あるいは潤滑油は存在するが正規の状態に比較
して著しく少ない貧潤滑状態等、潤滑油不足状態におい
て摺動させられることがある。例えば、車両の空調用冷
媒圧縮機としての斜板式圧縮機においては、潤滑油がミ
スト状とされて冷媒ガスとともに空調装置内を循環させ
られるのであるが、空調装置が長時間停止させられる
と、圧縮機内の冷媒ガスが液化し、ミスト状の潤滑油も
液状に復する。そして、圧縮機が再起動された際に、液
状の潤滑油が同じく液状の冷媒と共に、速やかに圧縮機
内から排出される。やがては、ミスト状の潤滑油が冷媒
ガスと共に圧縮機内へ環流するのであるが、それまでに
はある程度の時間を要し、その間は圧縮機が潤滑不足状
態で作動させられるのである。そのため、潤滑油不足状
態において摺動させられても、焼付きを起こすことな
く、潤滑不足が解消されるまで支障なく摺動し続けるこ
とができる摺動部材が強く求められている。
【0003】この要求を満たす摺動部材の一例として、
従来、例えば特開平8−199327号公報に記載のよ
うに、鋳鉄製の斜板の摺動面に固体潤滑剤層が形成され
たものが使用されていた。MoS2,ポリテトラフルオ
ルエチレン,グラファイト等の固体潤滑剤が合成樹脂に
より固められた固体潤滑剤層が、鋳鉄製の斜板基材の表
裏両面に形成された斜板が使用されていたのである。こ
の斜板は優れた摺動特性、特に、潤滑不足状態における
耐焼付き性を示すのであるが、近年は車両空調用斜板式
圧縮機の小形,軽量化に対する要求がますます厳しくな
っており、斜板等摺動部材の摺動特性の一層の改善が強
く望まれている。
【0004】以上は、斜板式圧縮機を例として説明した
が、ベーン圧縮機やスクロール圧縮機等、他の形式の車
両空調用冷媒圧縮は勿論、他の用途の圧縮機の中にも、
過酷な作動条件下で作動させられるものがあり、同様に
優れた摺動部材が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効
果】本発明は、以上の事情を背景とし、低摩擦性、耐焼
付き性等摺動特性の優れた摺動材料,摺動部材等を得る
ことを課題としてなされたものであり、本発明によっ
て、下記各態様の摺動材料,摺動部材あるいは圧縮機等
が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各
項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する
形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容
易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およ
びそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定さ
れると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数
の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に
一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事
項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0006】なお、以下の各項において、(2)項が請求
項1に相当し、(3)項が請求項2に、(4)項が請求項3
に、(5)項が請求項4に、(9)項が請求項5にそれぞれ相
当する。
【0007】(1)MoS2,ポリテトラフルオルエチ
レン,グラファイト等の固体潤滑剤と、Ni,Fe,M
n,Cr,Co,それらの化合物のうちの少なくとも1
つの微粉末とが、合成樹脂により結合されたことを特徴
とする摺動材料。本摺動材料を使用すれば、摺動部材の
摺動特性を改善することができる。例えば、斜板式圧縮
機の斜板,ピストン等の摩擦係数を低下させ、耐焼付き
性を向上させることができるのである。この事実は実験
により確認されているが、何故改善されるのかは未だ解
明されてはいない。また、現在のところ、上記Ni,F
e,Mn,Cr,Co,それらの化合物の微粉末の中
で、Niの微粉末が特に優れていることが判っている
が、その理由も明らかではない。例えば、固体潤滑剤と
してMoS2およびグラファイトを含み、かつ、粒径2
0〜100nmのNiの微粉末を2wt%含む固体潤滑
剤層が、固体潤滑剤の含有量は同じでNiの微粉末を含
まない固体潤滑剤層の3倍程度の耐焼付き性を示すので
あるが、それが何故であるのかは未だ解明されてはいな
いのである。ただ、前者の摺動時の摩擦係数が後者のそ
れに比較して小さくなり、また、摺動後の相手材の摺動
面を観察するとMoS2やグラファイトが付着している
ことから、Niの微粉末がMoS2やグラファイトの相
手材摺動面への付着を助長する作用を有しており、それ
が摺動特性改善の一因となっているのではないかと推測
されている。 (2) (1)項に記載の摺動材料が基材の少なくとも1面
に固着された固体潤滑剤層を形成している摺動部材。固
体潤滑剤は多くの場合、例えばポリアミドイミドをバイ
ンダとしてアルミニウム合金製等の基材の表面に固着さ
せられた固体潤滑剤層として使用されるが、この固体潤
滑剤層にNiの微粉末を混入するとそれの摺動特性を改
善し得る。 (3)前記微粉末の粒径が3μm以下である (1)項に記
載の摺動材料、あるいは(2)項に記載の摺動部材。Ni
等の微粉末は粒径が小さい方が効果が大きく、また、粒
径の大きいNi等の粉末が脱落すれば、摺動面間に侵入
した異物と同様に固体潤滑剤層を損傷させる恐れがある
ため、微粉末の粒径は小さいことが望ましく、1μm以
下、500nm以下であることがさらに望ましい。ただ
し、一般に、粒径が小さいほど微粉末の価格が高くなる
ため、実際には、摺動材料あるいは摺動部材の製造コス
トと性能との両方を勘案して粒径を決定すべきである。 (4)前記微粉末がNiとNi化合物との少なくとも一
方の微粉末を含む (1)項に記載の摺動材料、あるいは
(2)項または (3)項に記載の摺動部材。前述のように、
Fe,Mn,Cr,Co,それらの化合物を混入して
も、それぞれ効果が得られるが、NiおよびNiO等の
Ni化合物の微粉末の方が優れており、Niの微粉末が
特に優れている。 (5)前記微粉末の含有率が0.1〜5wt%である
(1)項に記載の摺動材料、あるいは (2)項ないし (4)項
のいずれかに記載の摺動部材。微粉末の含有率は少な過
ぎれば十分は効果が得られず、一定値以上に含有率を大
きくしても効果に殆ど違いがなくなる。また、微粉末、
特に粒径の小さい微粉末は高価であり、製造コストを増
大させ、かつ、微粉末の含有率の増大分だけ固体潤滑剤
の含有率が小さくなるため、これらのことを勘案して微
粉末の含有率を決定すべきである。結局、微粉末の含有
率は0.1〜5wt%が望ましく、0.5〜3wt%で
あることが特に望ましい。 (6)前記基材がFeを主体とする鉄系合金製である
(2)項ないし (5)項のいずれかに記載の摺動部材。摺動
部材の基材は、例えば、アルミニウム合金,銅合金等、
非鉄金属製とされてもよいが、鉄系合金とされることが
多い。 (7)前記固体潤滑剤層の厚さが3μm以上、20μm
以下である (2)項ないし(6)項のいずれかに記載の摺動
部材。固体潤滑剤層の厚さは、薄過ぎれば十分な寿命が
得られず、かといって一定以上厚くすることは無駄であ
って、3μm以上、20μm以下とされることが望まし
く、10μm以下とされることがさらに望ましい。な
お、固体潤滑剤層の厚さが薄いほど、Ni等の微粉末の
粒径を小さくすることが望ましくなるのであるが、前述
のように、粒径が小さいほど微粉末の価格が高くなるた
め、この点も考慮して固体潤滑剤層の厚さと微粉末の粒
径とを決定すべきである。 (8)前記合成樹脂が、ポリアミドイミド,エポキシ樹
脂,ポリエーテルエーテルケトン(PEEK樹脂),フ
ェノール樹脂,フラン樹脂,ユリヤ樹脂,不飽和ポリエ
ステル等の熱硬化樹脂を含む (1)項ないし (5)項のいず
れかに記載の摺動材料、あるいは (2)項ないし (7)項の
いずれかに記載の摺動部材。 (9)斜板式圧縮機用の斜板である (2)項ないし (8)項
のいずれかに記載の摺動部材。斜板式圧縮機の斜板は、
シューと摺動させられるのであるが、シューは軸受鋼S
UJ2等の鉄系合金製やアルミニウム合金製の母材にN
i系等のめっきが施されたものが使用されることが多
い。したがって、斜板が鋳鉄等鉄系材料製とされると焼
付きが生じ易くなるのであるが、斜板の摺動面にNi等
の微粉末を含有する固体潤滑剤層を形成すれば焼付きを
良好に防止し得る。 (10)斜板式圧縮機用のピストンである (2)項ないし
(8)項のいずれかに記載の摺動部材。斜板式圧縮機のピ
ストンはアルミニウム合金製とされることが多いが、こ
のピストンのシューとの摺動面を形成する凹球面に本発
明に従う固体潤滑剤層を形成すれば、シューとの摺動特
性を改善することができる。 (11)一軸線を中心とする一円周とそれぞれ直交する
中心線を有する複数のシリンダボアが前記一軸線に平行
に形成されたハウジングと、前記一軸線のまわりに回転
可能な回転軸と、その回転軸に対して傾斜した状態で設
けられ、回転軸と共に回転する斜板と、前記シリンダボ
アにそれぞれ摺動可能に嵌合された嵌合頭部と係合部と
を備えた複数のピストンと、それらピストンの係合部の
各々と前記斜板との間にそれぞれ配設された複数対のシ
ューとを含み、かつ、前記斜板の前記シューとの摺動面
と、前記ピストンの前記シューとの摺動面との少なくと
も一方に、MoS2,ポリテトラフルオルエチレン,グ
ラファイト等の固体潤滑剤と、Ni,Fe,Mn,C
r,Co,それらの化合物のうちの少なくとも1つの微
粉末とが、合成樹脂により結合された固体潤滑剤層が形
成されたことを特徴とする斜板式圧縮機。前記 (2)項な
いし (8)項の各々に記載の特徴は、本項の斜板式圧縮機
にも適用可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態である
摺動部材を、車両用エアコンディショナの冷媒圧縮機と
して用いられる斜板式圧縮機の斜板として使用した場合
を例に取り、図面に基づいて詳細に説明する。図1に本
実施形態における斜板式圧縮機を示す。図1において、
10はシリンダブロックであり、シリンダブロック10
には、その中心軸線を中心とする一円周とそれぞれ直交
する中心線を有する複数のシリンダボア12が、上記中
心軸線に平行に形成されている。シリンダボア12の各
々には、片頭ピストン14(以下、ピストン14と略称
する)が往復運動可能に配設されている。シリンダブロ
ック10の軸方向の一端面には、フロントハウジング1
6が取り付けられ、他方の端面には、リヤハウジング1
8がバルブプレート20を介して取り付けられている。
フロントハウジング16,リヤハウジング18,シリン
ダブロック10等により斜板式圧縮機のハウジング21
が構成されている。リヤハウジング18とバルブプレー
ト20との間には、吸入室22,吐出室24が形成さ
れ、それぞれ、吸入ポート26,供給ポート28を経
て、図示しない冷凍回路に接続される。バルブプレート
20には、吸入孔32,吸入バルブ34,吐出孔36,
吐出バルブ38等が設けられている。
【0009】上記ハウジング21内には、回転軸50
が、シリンダブロック10の中心軸線を回転軸線として
回転可能に保持されている。回転軸50の一端部は、図
示しない駆動源に連結されている。回転軸50には、斜
板60が軸方向に相対移動可能かつ傾動可能に取り付け
られている。斜板60には、中心線を通る貫通穴61が
形成され、この貫通穴61を回転軸50が貫通してい
る。貫通穴61は、両端開口側ほど図1における上下方
向に内のり寸法が漸増させられ、それら両端部の横断面
形状が長穴をなしている。回転軸50にはまた、回転板
62が固定され、スラストベアリング64を介してフロ
ントハウジング16に受けられている。斜板60は、ヒ
ンジ機構66により、回転軸50と一体的に回転させら
れるとともに、軸方向の移動を伴う傾動を許される。ヒ
ンジ機構66は、回転板62に固定的に設けられた支持
アーム67と、斜板60に固定的に設けられ、支持アー
ム67のガイド穴68にスライド可能に嵌合されたガイ
ドピン69と、斜板60の貫通穴61と、回転軸50の
外周面とを含むものである。
【0010】前記ピストン14は、斜板60にそれの外
周部を跨ぐ状態で係合させられる係合部70と、係合部
70と一体に設けられ、シリンダボア12にそれぞれ摺
動可能に嵌合される頭部72とを備えている。本実施形
態における頭部72は、中空頭部とされて軽量化が図ら
れている。頭部72,シリンダボア12およびバルブプ
レート20が共同して圧縮室を形成している。また、係
合部70は一対の球冠状のシュー76を介して斜板60
の外周部と係合させられている。なお、本実施形態にお
けるピストン14は、係合部70の片側のみに頭部72
を備えることから片頭ピストンと称される。
【0011】ピストン14は斜板60の回転により往復
運動させられる。詳しくは、斜板60の回転運動が、シ
ュー76を介してピストン14の往復直線運動に変換さ
れる。ピストン14が上死点から下死点へ移動する吸入
行程において、吸入室22内の冷媒ガスが吸入孔32,
吸入バルブ34を経てシリンダボア12内の圧縮室に吸
入される。ピストン14が下死点から上死点へ移動する
圧縮行程において、シリンダボア12内の圧縮室の冷媒
ガスが圧縮され、吐出穴36,吐出バルブ38を経て吐
出室24に吐出される。冷媒ガスの圧縮に伴ってピスト
ン14には、軸方向の圧縮反力が作用する。圧縮反力
は、ピストン14,斜板60,回転板62およびスラス
トベアリング64を介してフロントハウジング16に受
けられる。
【0012】シリンダブロック10を貫通して給気通路
80が設けられている。この給気通路80により、吐出
室24と、フロントハウジング16とシリンダブロック
10との間に形成された斜板室86とが接続されてい
る。給気通路80の途中には、電磁制御弁90が設けら
れている。この電磁制御弁90のソレノイド92への電
流供給が、コンピュータを主体とする制御装置(図示省
略)により、冷房負荷等の情報に応じて制御される。
【0013】回転軸50の内部には、排出通路100が
設けられている。排出通路100は、一端においてシリ
ンダブロック10の中心部に設けられた支持穴102に
開口させられるとともに、他端において斜板室86に開
口させられている。支持穴102は排出ポート104を
経て吸入室22に連通させられている。
【0014】本斜板式圧縮機は可変容量型であり、高圧
側である吐出室24と低圧側である吸入室22との圧力
差を利用して斜板室86内の圧力が制御されることによ
り、ピストン14の前後に作用するシリンダボア12内
の圧縮室の圧力と斜板室86の圧力との差が調節され、
斜板60の傾斜角度が変更されてピストン14のストロ
ークが変更され、圧縮機の吐出容量が調節される。具体
的には、電磁制御弁90の励磁,消磁の制御により、斜
板室86が吐出室24に連通させられたり、遮断された
りすることによって、斜板室86の圧力が制御される。
なお、本実施形態の斜板式圧縮機において斜板の傾斜角
を変更する斜板傾斜角変更装置は、前述のヒンジ機構6
6を始めとして、シリンダボア12,ピストン14,吸
入室22,吐出室24,支持穴56,給気通路80,斜
板室86,電磁制御弁90,排出通路100,排出ポー
ト104および図示しない制御装置等から構成されるこ
とになる。
【0015】シリンダブロック10およびピストン14
は、金属の一種であるアルミニウム合金製のものとさ
れ、ピストン14の外周面には、フッ素樹脂のコーティ
ングが施されている。フッ素樹脂でコーティングすれ
ば、同種金属との直接接触を回避して焼付きを防止しつ
つシリンダボア12との嵌合隙間を可及的に小さくする
ことができる。ただし、シリンダブロック10やピスト
ン14の材料、コーティング層の材料等は、上述の材料
に限らず、他の材料であってもよい。
【0016】ピストン14の係合部70は、概してU字
形をなし、頭部72の中心軸線と直交する方向に互いに
平行に延びる一対のアーム部120,122と、これら
アーム部120,122の基端同士を連結する連結部1
24とを備えている。アーム部120,122の互いに
対向する側面には、それぞれシュー保持面となる凹球面
128が形成されている。これら2つの凹球面128は
同一球面上に位置している。
【0017】本実施形態における一対のシュー76は、
鉄系材料の一種であるSUJ2(高炭素クロム軸受鋼)
から成るものである。これらシュー76は、図2に示す
ように、外表面の一方が概して凸球面をなす球面部13
2と、他方が概して平面をなす平面部138とを有する
球冠状である。一対のシュー76は、球面部132にお
いてピストン14の凹球面128に摺動可能に保持さ
れ、平面部138において斜板60の外周部の両側面で
ある両摺動面140,142に接触し、斜板60の外周
部を両側から挟持する。一対のシュー76はその状態で
球面部132の凸球面が同一球面上に位置するように設
計されている。つまり、本実施形態におけるシュー76
は、半球より斜板60の厚さのほぼ半分だけ小さい球冠
状を成しているのである。なお、シューの形状は上記形
状に限定されるものではない。
【0018】斜板60は、その基材160がFeを主体
とする鉄系材料の一種であるダクタイル鋳鉄(FCD7
00,FCD600,FCD500等)や、機械構造用
炭素鋼(S45C,S55C等)や、各種クロムモリブ
デン鋼(SCM)等から選ばれる。基材160の両側面
162,163には、MoS2(二硫化モリブデン),
ポリテトラフルオルエチレン,グラファイト等の少なく
とも1つを含む固体潤滑剤と、Ni,Fe,Mn,C
r,Co,それらの化合物のうちの少なくとも1つの微
粉末164(図3参照)とが、合成樹脂により結合され
た摺動材料が固着され、固体潤滑剤層166が形成され
ている。合成樹脂としては、ポリアミドイミド,エポキ
シ樹脂,ポリエーテルエーテルケトン,フェノール樹
脂,フラン樹脂,ユリヤ樹脂,不飽和ポリエステル等の
熱硬化樹脂を少なくとも1つ含むものが使用される。上
記微粉末164としては、NiとNi化合物との少なく
とも一方の微粉末とすることが望ましい。Ni化合物
は、NiO,NiNO3,NiCl2等を少なくとも1つ
を含むものとすることができる。微粉末164の粒径
は、3μm以下であることが望ましく、1μm以下、5
00nm以下であることがさらに望ましい。固体潤滑剤
層166の微粉末164の含有率は、0.1〜5wt%
であることが望ましく、0.5〜3wt%であることが
さらに望ましい。固体潤滑剤層166の厚さは、3μm
以上、20μm以下とされることが望ましく、10μm
以下とされることがさらに望ましい。なお、図2および
図3には、理解を容易にするために、固体潤滑剤層16
6の厚さが誇張して示されている。
【0019】固体潤滑剤層166は、以下のようにして
形成される。上述の摺動材料により構成される液状の塗
布材料を、タンブラー処理またはスプレー処理で基材1
60の外表面に均一に付着させるのである。タンブラー
処理は、基材160をタンブラー内に収容し、そのタン
ブラーを回転させつつ、塗布材料をタンブラーの外側か
らスプレーして均一に付着させる方法であり、スプレー
処理は、基材160を移動不能に配置した状態で、塗布
材料を基材160にスプレーして均一に付着させる方法
である。上記タンブラー処理またはスプレー処理の後、
塗布された材料が焼成により硬化させられた後、表面が
研磨されて固体潤滑剤層166の形成された斜板60が
完成する。
【0020】本実施形態によれば、圧縮機内の無潤滑状
態あるいは貧潤滑状態での使用に十分耐え得る低摩擦性
および耐焼付き性等の摺動特性を備えた斜板60が得ら
れる。本実施形態における斜板60が組み込まれた斜板
式圧縮機が、潤滑油が殆ど存在しない無潤滑の状態、あ
るいは潤滑油が著しく不足する貧潤滑の状態で運転さ
れ、斜板60とシュー76とが互いに摺動させられて
も、固体潤滑剤層166によって斜板60とシュー76
との摺動部分における焼付きが回避され、斜板60およ
びそれと摺動するシュー76の耐久性、ひいては斜板式
圧縮機の耐久性が向上する。
【0021】固体潤滑剤層166を、ピストン14のア
ルミニウム合金製の基材の表面に形成しても上述と同様
の効果が得られる。例えば、ピストン14のシュー76
との摺動面である凹球面128や、ピストン14のシリ
ンダボア12の内周面との摺動面である頭部72の外周
面に固体潤滑剤層166を形成するのである。
【0022】シュー76の形成材料は前記鉄系材料に限
定されるものではない。例えば、アルミニウムを主成分
とし、シリコンを含有するA4032相当のAl−Si
系合金等のアルミニウム合金から成る母材にNi−P,
Ni−B,Ni−P−B,Ni−P−B−W等Ni系め
っきの被膜が形成されたシューも使用可能である。被膜
は、単一の被膜から成るものでもよく、複数の異なるあ
るいは同種の被膜によって形成されるものでもよい。ま
た、被膜は、母材の全表面を被覆するものでもよく、そ
の一部を被覆するものでもよい。
【0023】以上、本発明の実施形態について説明した
が、これは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決
しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記
載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種
々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【0024】
【実施例】前記〔発明の実施の形態〕の項で説明した斜
板式圧縮機の摺動部材を構成する斜板60の耐焼付き性
試験を行った。斜板60と同様に、後述する基材170
の表面に上記実施形態における固体潤滑剤層166を含
む種々の固体潤滑剤層を形成した複数のテストピース1
72を使用して耐焼付き性試験を行ったのである。本耐
焼付き性試験に使用した試験機174は、図4に概略的
に示すように、円板状のテストピース172を保持して
テストピース172の中心軸線まわりに回転させる回転
装置176と、球状の相手部材180を保持してテスト
ピース172の表面に所望の荷重で接触させ得る相手部
材保持具(図示省略)とを含むものである。相手部材1
80は回転不能な状態で固体潤滑剤層166に接触させ
られる。
【0025】本耐焼付き性試験では、Feを主体とする
鉄系材料の一種として、ダクタイル鋳鉄FCD700か
ら成る円板状の基材170に、MoS2およびグラファ
イトを含む固体潤滑剤と、粒径20nmのNiの微粉末
とを、バインダとしてのポリアミドイミドにより結合し
た固体潤滑剤層166を15μmの厚さで形成したテス
トピース172を使用した。また、相手部材180とし
ては、Feを主体とする鉄系材料の一種として、軸受鋼
SUJ2から成る直径20mmの鋼球を使用した。そし
て、固体潤滑剤層166のNiの微粉末の含有率を種々
に変えた各テストピース172について、それぞれ相手
部材180との間に焼付きが生じるまでの摺動距離を調
べた。また、同様に基材170に、MoS2およびグラ
ファイトを含む固体潤滑剤と、NiO,Fe,Cr,C
oの各微粉末とを、バインダとしてのポリアミドイミド
によりそれぞれ結合した固体潤滑剤層166を形成した
ものもテストピース172として使用し、それぞれにつ
いて相手部材180との間に焼付きが生じるまでの摺動
距離を調べた。ただし、これら各微粉末の含有率は2.
0wt%とした。なお、図4においては、理解を容易に
するために固体潤滑剤層166の厚さが誇張して示され
ている。
【0026】本耐焼付き性試験の条件は、潤滑油の存在
しない無潤滑(ドライ)状態で、テストピース172を
前記回転装置に保持させるとともに、相手部材180を
テストピース172の固体潤滑剤層166の表面に対し
て0.196MPa(2kgf/cm2)の荷重で接触
させ、相手部材180とテストピース172との摺動速
度(滑り速度)が0.7m/sとなるようにテストピー
ス172を回転させて、焼付きが発生するまでの摺動距
離を調べた。その結果を図5のグラフに示す。
【0027】図5のグラフは、横軸に微粉末の含有率
を、縦軸に焼付きが発生するまでの摺動距離をとったグ
ラフである。なお、図5のグラフにおいて、Crの微粉
末の場合とCoの微粉末の場合との各試験結果は実際は
ほぼ重なるのであるが、理解を容易にするために、Co
の微粉末の試験結果をやや横にずらして図示する。図5
に示す試験結果から明らかなように、Ni微粉末の含有
率が2〜3wt%である場合に、焼付きまでの摺動距離
が最も長くなって、微粉末を含まない場合の3〜4倍と
なり、優れた耐焼付き性を示した。また、Niの含有率
が2〜3wt%の前後である0.1〜5wt%の範囲内
にある場合に、使用に耐え得る耐焼付き性を示すことが
判った。その理由は未だ明らかではないが、Niの微粉
末がMoS 2やグラファイトの相手部材180の摺動面
への付着を助長する作用を有しており、それが摩擦係数
低下および耐焼付き性向上を含む摺動特性改善の一因と
なっているのではないかと推測される。なお、Ni微粉
末の含有率が0.1wt%未満あるいは5wt%より多
い場合には、焼付きが発生し易い結果となった。この理
由もまだ明らかではないが、Ni微粉末の含有率が0.
1wt%未満であると、Ni微粉末の耐焼付き性向上の
効果が十分得られず、Ni微粉末の含有率が5wt%よ
り多いと、その分固体潤滑剤層166中の固体潤滑剤の
含有率が減少し、固体潤滑剤層166の潤滑性能が十分
発揮されないためと推測される。また、Ni微粉末は高
価なものであるため、Ni微粉末の含有率を5wt%よ
り多くすることは、製造コストの点からも得策ではな
い。
【0028】さらに、Ni以外の微粉末(NiO,F
e,Cr,Co)を含有率2.0wt%で含む固体潤滑
剤層166においても、微粉末を含まない固体潤滑剤層
よりは耐焼付き性が向上することが判った。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である摺動部材としての斜
板を備えた斜板式圧縮機を示す正面断面図である。
【図2】上記斜板式圧縮機の斜板およびシューを示す正
面断面図である。
【図3】上記斜板式圧縮機の斜板を拡大して示す正面断
面図である。
【図4】本発明に係る固体潤滑剤層の耐焼付き性試験に
使用した試験機を概略的に示す正面断面図である。
【図5】上記耐焼付き性試験の結果を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
10:シリンダブロック 12:シリンダボア 1
4:片頭ピストン 16:フロントハウジング 1
8:リヤハウジング 20:バルブプレート21:ハ
ウジング 70:係合部 72:頭部 76:シ
ュー 140,142:摺動面 160:基材
162,163:側面 164:微粉末 166:
固体潤滑剤層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10M 145/18 C10M 145/18 145/20 145/20 145/22 145/22 145/24 145/24 149/18 149/18 149/20 149/20 F04B 27/08 C10N 10:12 27/10 10:14 // C10N 10:12 10:16 10:14 20:06 Z 10:16 30:06 20:06 40:02 30:06 50:08 40:02 F04B 27/08 L 50:08 A K H (72)発明者 本多 文洋 愛知県名古屋市緑区神沢3丁目620番地 Fターム(参考) 3H076 AA06 BB17 BB50 CC20 CC31 CC33 4H104 AA04A AA08C AA13C AA19A CB08Z CB12Z CB14Z CD02A CE13Z FA06 FA07 FA08 LA03 PA01 QA12 QA22

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 MoS2,ポリテトラフルオルエチレ
    ン,グラファイト等の固体潤滑剤と、Ni,Fe,M
    n,Cr,Co,それらの化合物のうちの少なくとも1
    つの微粉末とが、合成樹脂により結合された固体潤滑剤
    層が、基材の少なくとも1面に固着されたことを特徴と
    する摺動部材。
  2. 【請求項2】 前記微粉末の粒径が3μm以下である請
    求項1に記載の摺動部材。
  3. 【請求項3】 前記微粉末がNiとNi化合物との少な
    くとも一方の微粉末を含む 請求項1または2に記載の
    摺動部材。
  4. 【請求項4】 前記微粉末の含有率が0.1〜5wt%
    である 請求項1ないし3のいずれかに記載の摺動部
    材。
  5. 【請求項5】 斜板式圧縮機用の斜板である請求項1な
    いし4のいずれかに記載の摺動部材。
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