JP2002276543A - 球冠状シューおよびそれを含む斜板式圧縮機 - Google Patents

球冠状シューおよびそれを含む斜板式圧縮機

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JP2002276543A
JP2002276543A JP2001077022A JP2001077022A JP2002276543A JP 2002276543 A JP2002276543 A JP 2002276543A JP 2001077022 A JP2001077022 A JP 2001077022A JP 2001077022 A JP2001077022 A JP 2001077022A JP 2002276543 A JP2002276543 A JP 2002276543A
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Manabu Sugiura
学 杉浦
Hiroaki Kayukawa
浩明 粥川
Takahiro Sugioka
隆弘 杉岡
Akira Onoda
晃 小野田
Shinobu Okubo
忍 大久保
Tomohiro Murakami
智洋 村上
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Toyota Industries Corp
Original Assignee
Toyota Industries Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】球冠状シューの軽量化および斜板等との摺動特
性の改善を達成する。 【解決手段】圧縮機のシュー76は、アルミニウムを主
成分とする材料から成る本体146と、本体146の外
表面を覆う2層の硬質層を有するめっき層148と、平
面部138に設けられた鉄系材料層を構成する板状部材
158とを備える。板状部材158は、SUJ2等の鉄
系材料から成る円板状をなし、本体146の凹部160
に締まり嵌合させられる。本体146をアルミニウムを
主成分とする材料で形成することにより、シュー76が
軽量化されるとともに、本体146を本体146より硬
い材料で覆い、かつ 、斜板との摺動面は鉄系材料で形
成することにより、シュー76の耐久性が向上し、この
シュー76が斜板式圧縮機に搭載されれば、圧縮機の耐
久性が向上する。圧縮機内が潤滑油不足の状態となった
場合等の苛酷な条件下でも、シュー76の優れた摺動性
が維持される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は斜板式圧縮機に関す
るものであり、特に、斜板とピストンとの間に配設され
る球冠状シューの改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】斜板式圧縮機は、自動車用空調装置の冷
媒圧縮機等として広く利用されている。この斜板式圧縮
機は、 (1)回転軸と、 (2)その回転軸に傾斜して支持さ
れた斜板と、 (3)前記回転軸を回転可能かつ軸方向に移
動不能に支持するとともに、回転軸から偏心した位置に
回転軸にほぼ平行に形成されたシリンダボアを備えたハ
ウジングと、 (4)前記シリンダボアに摺動可能に嵌合さ
れる頭部と前記斜板の外周部を跨ぐ係合部とを備えたピ
ストンと、 (5)前記斜板の両側面と前記係合部との間に
それぞれ配設されるシューとを含む。そして、近年、シ
ューとして、斜板の側面上を摺動する平面部と、ピスト
ンの凹球面状のシュー保持面に保持される球面部とを備
え、概して球冠状をなす球冠状シューが使用されること
が多くなった。
【0003】この球冠状シューは、ボールと組み合わせ
て使用されるシューに比較して、部品点数を減少させ、
斜板式圧縮機全体を小形化する上で有利であるが、使用
上満たすべき条件が厳しく、耐久性に優れた球冠状シュ
ーを製造することは容易ではない。球冠状シューは斜板
とピストンとの両方に対して優れた摺動特性を示すもの
であることが必要であり、かつ、ピストンと共に往復移
動する部材であるため軽量であることが望ましい。斜板
の傾斜角が固定である固定容量型圧縮機においても軽量
化は望ましいことであるが、斜板の傾斜角を変えること
によって吐出容量を変え得る可変容量型圧縮機において
特に軽量化の要求が強い。
【0004】球冠状シューの耐久性向上と軽量化との少
なくとも一方を達成するため、従来から種々の試みがな
されてきた。例えば、実開昭57−42180号公報に
記載の斜板式圧縮機においては、球冠状シューのシュー
母材を鉄系材料製斜板とのなじみ性が小さく、かつ、比
重の小さいアルミニウム合金等で形成し、そのシュー母
材の表面に、アルミニウム合金製のピストンとのなじみ
性の小さい鉄または合成樹脂のコーティングを施すこと
により、球冠状シューとピストンおよび斜板との同種金
属の焼付きを防止することが提案されている。また、特
開平8−284814号公報に、ボールと組み合わせて
使用されるシューであって、シューの本体をアルミニウ
ム合金により形成するとともに、鉄系金属製のキャップ
をその本体に被せて斜板との接触面を鉄系金属により形
成することによって、摺動面の耐摩耗性を向上させるこ
とが記載されている。さらにまた、特開平5−8648
2号公報には、アルミニウム合金の摺動材料の表面にN
i−Pめっき層を形成し、さらにその上にNi−Bめっ
き層を形成した摺動材料が提案されている。このように
種々の試みがなされているものの、圧縮機の高速運転や
潤滑不足状態にも耐え得る摺動特性を有し、かつ、軽量
化が可能な球冠状シューは未だ開発途上にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効
果】本発明は、以上の事情を背景とし、球冠状シューと
斜板およびピストンとの摺動特性を改善し、かつ、球冠
状シューの軽量化を達成することを課題としてなされた
ものであり、本発明によって、下記各態様の球冠状シュ
ーおよび斜板式圧縮機が得られる。各態様は請求項と同
様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他
の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくま
でも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に
記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項
に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。
また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、そ
れら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわ
けではない。一部の事項のみを選択して採用することも
可能なのである。
【0006】なお、以下の各項のうち、 (1)項が請求項
1に相当し、(2)項および(3)項を合わせたものが請求項
2に、(4)項が請求項3に、(6)項および(7)項を合わせ
たものが請求項4に、(8)項が請求項5に、(9)項が請求
項6に、(10)項および(12)項が請求項7に、(13)項が請
求項8に、(18)項が請求項9にそれぞれ相当する。
【0007】(1)表面が、ほぼ凸球面をなす球面部と
ほぼ平面をなす平面部とを備え、概して球冠状をなすシ
ューであって、アルミニウム,マグネシウム等の軽金属
を主体とする材料から成る本体の少なくとも前記球面部
にめっきが施されるとともに、前記平面部に鉄系材料か
ら成る鉄系材料層が設けられたことを特徴とする球冠状
シュー。
【0008】球冠状シューは概して球冠状をなすもので
あればよい。例えば、球面部は、完全な凸球面とするこ
とも、摺動特性改善等の目的で凸球面から僅かに外れた
形状とすることも可能であり、また、それら凸球面や僅
かに外れた形状の部分内に凹部,切欠等を形成すること
も可能である。例えば、凸球面の中央に平面取りを施し
てもよいのである。また、平面部も完全な平面とするこ
とも、平面から僅かに外れた形状とすることも可能であ
る。例えば、きわめて大きな曲率半径の凸球面等、僅か
に中高の曲面ではあるがほぼ平面と見なし得る面とする
ことが可能なのである。さらに、完全な平面や中高面の
外周部に面取りと丸味付けとの少なくとも一方を施して
もよく、あるいは中央部に凹部を形成してもよい。さら
に、球面部と平面部との間に円筒面部やテーパ外周面部
を設けることも可能である。
【0009】本体はアルミニウム,マグネシウム等の軽
金属を主体とする材料から成るものとすればよいが、シ
リコンを含有したアルミニウム合金が好適であり、シリ
コンを10〜12.5重量%含有するアルミニウム合金
が特に好適である。めっきは、Ni−P,Ni−B,N
i−P−B−W,Co−P,硬質クロムめっき等の硬質
めっき層、またはTiN,CrN等の蒸着層が好適であ
り、また、これら硬質めっき層がMoS2 ,BN,WS
2 ,グラファイト,ポリテトラフルオルエチレン等の固
体潤滑剤を含むものとし、あるいは固体潤滑剤を含まな
いめっき層の上に固体潤滑剤を含むめっき層を形成する
などの多層めっきを施してもよい。また、鉄系材料層
は、焼き入れにより硬化させ得る材料で形成することが
望ましく、例えば、SUJ2等の軸受鋼やSCM415
等のクロムモリブデン鋼等が好適である。球冠状シュー
の本体をアルミニウム,マグネシウム等の軽金属を主体
とする材料から成るものとすれば、球冠状シューの軽量
化を図ることができ、また、シュー本体の球面部にめっ
きが施されるとともに、平面部に鉄系材料から成る鉄系
材料層を設ければ、優れた摺動特性を示す球冠状シュー
が得られる。 (2)前記平面部の中央に嵌合凹部が形成され、その嵌
合凹部に鉄系材料から成る板状部材が嵌合され、その板
状部材により前記鉄系材料層が形成された (1)項に記載
の球冠状シュー。
【0010】板状部材と嵌合凹部とをすきま嵌合されて
もよいが、締まり嵌合されることが望ましい。板状部材
と嵌合凹部との間に接着剤を介在させることが望まし
く、両者がすきま嵌合される場合に特に望ましい。 (3)前記板状部材が前記嵌合凹部と締まり嵌合された
(2)項に記載の球冠状シュー。
【0011】板状部材の外側面全体を嵌合凹部の内側面
に締まり嵌合させてもよいし、板状部材の外側面の一部
を他の部分より外側へ突出させ、その突出部と嵌合凹部
とを締まり嵌合させてもよい。逆に嵌合凹部の内側面の
一部を内側へ突出させてもよい。 (4)当該球冠状シューの前記平面部側の部分の外側
に、平板部とその平板部の外周縁からほぼ直角に立ち上
がった嵌合部とを備え、鉄系材料から成る外嵌部材が嵌
合され、前記平板部により前記鉄系材料層が形成された
(1)項に記載の球冠状シュー。
【0012】球冠状シューの本体を外嵌部材に嵌合され
れば、両部材を互いに精度良く位置決めすることができ
る。本体と外嵌部材とは、すきま嵌合されてもよいし、
締まり嵌合されてもよい。前者の場合、板状部材と嵌合
凹部との間に接着剤を介在させることが望ましい。嵌合
部は概して円筒状をなすものとすることが望ましいが、
板状部の外周縁からほぼ直角に立ち上がった複数の耳片
の集合により嵌合部を構成することも可能である。 (5)前記嵌合部が前記平面部側の部分と締まり嵌合さ
れた (4)項に記載の球冠状シュー。 (6)前記嵌合部が概して円筒状をなし、それの内周面
から複数の内向き突部が半径方向内側へ突出させられ、
それら内向き突部が前記本体の前記平面部側の部分の外
周面と相対回転不能に係合させられた (4)項に記載の球
冠状シュー。内向き突部が本体の外周面と相対回転不能
に係合させられることにより、本体と外嵌部材との相対
回転が防止される。円筒状嵌合部の内向き突部以外の部
分と本体の外周面との間に隙間が存在するようにすれ
ば、本体と外嵌部材との締まり嵌合が容易となるが、こ
れらの部分も締まり嵌合してもよい。この場合には、内
向き突部と本体との係合は、本体と外嵌部材との相対回
転防止をより確実にするためのものと考えることができ
る。 (7)前記本体の前記平面部側の部分の外周面に複数の
係合凹部が形成され、それら係合凹部の各々と前記内向
き突部の各々とが互いに係合させられた (6)項に記載の
球冠状シュー。
【0013】本体と外嵌部材とを確実に相対回転不能に
結合することができる。本体の係合凹部は外嵌部材の嵌
合時に内向き突部により形成されるようにしても、当初
から形成されており、その係合凹部に内向き突部が嵌入
させられるようにしてもよい。係合凹部は、平面部側か
ら球面部側に向かって延びる溝状とされてもよく、円錐
面等により画定されるくぼみとされてもよい。後者の場
合には、内向き突部も円錐状等のスポット状の突部とさ
れ、嵌合部の弾性変形を伴ってスナップアクションによ
り係合凹部と係合させられることが望ましい。このよう
にすれば、外嵌部材の本体からの離脱が特に良好に防止
される。嵌合部の内周面に係合凹部を形成し、本体の平
面部側の外周面に半径方向外側へ突出させられた外向き
突部を設けてもよい。 (8)前記平面部のほぼ全面に平板状部材が固着され、
その平板状部材により前記鉄系材料層が形成された (1)
項に記載の球冠状シュー。平板状部材は例えば溶着や接
着により固着することができる。(10)項以下の手段を併
用すれば、一層確実に固着することができる。 (9)前記平板状部材が溶接によって前記平面部に固着
された (8)項に記載の球冠状シュー。電子ビーム溶接や
レーザ溶接等の溶接によって平板状部材の外周部が本体
の平面部に固着されれば、温度変化等に対しても安定し
た強度を維持し得る球冠状シューが簡単に得られる。 (10)前記本体の前記平面部に少なくとも1個の嵌合
突部が設けられる一方、前記平板状部材に前記嵌合突部
と対応する貫通穴が形成され、それら嵌合突部と貫通穴
とが互いに嵌合された (8)項または(9)項に記載の球冠
状シュー。
【0014】本体と平板状部材とを精度良く位置決めし
た状態で両部材を結合することができる。嵌合突部と貫
通穴とはすきま嵌合でも、締まり嵌合でもよい。本体に
貫通穴あるいは行き止まりの嵌合凹部を形成し、平板状
部材に嵌合突部を設けることも可能である。 (11)前記嵌合突部が前記平面部の中央に1個設けら
れ、対応する前記貫通穴に締まり嵌合された (10)項に
記載の球冠状シュー。
【0015】嵌合突部が貫通穴に締まり嵌合され、本体
と平板状部材とが結合された状態で、貫通穴の本体側と
は反対側の開口が開放させられる場合もある。この構成
の球冠状シューが斜板式圧縮機に搭載されれば、この開
口部が潤滑油保持穴として機能する。 (12)前記嵌合突部と前記貫通穴とが互いに締まり嵌
合された (10)項または(11)項に記載の球冠状シュー。 (13)前記平板状部材の前記平面部と密着する側の面
に突起が設けられ、その突起が前記本体の前記平面部側
の部分に没入させられた (8)項ないし(12)項のいずれか
に記載の球冠状シュー。例えば、平板状部材に鋭利な突
起を形成し、平板状部材と本体とを強く押し付けて突起
を本体内に突入させることができる。この場合、本体に
は突起用のくぼみが予め形成されていても、いなくても
よい。 (14)前記突起が複数個設けられた(13)項に記載の球
冠状シュー。複数の突起を本体に没入させれば、平板状
部材と本体との結合力が増すとともに、両者の相対回転
を防止する能力が増す。 (15)前記突起が前記平板状部材の中央に1個設けら
れた(13)項に記載の球冠状シュー。この場合には、突起
を横断面形状が非円形のものとし、平板状部材と本体と
の相対回転防止力を向上させることが望ましい。 (16)前記鉄系材料層と前記本体とが接着剤により接
着された (1)項ないし(15)項のいずれかに記載の球冠状
シュー。 (17)前記鉄系材料層に、外方に向かって開いた凹部
が形成された (1)項ないし(16)項のいずれかに記載の球
冠状シュー。この構成の球冠状シューが斜板式圧縮機に
搭載されれば、上記凹部が潤滑油保持穴として機能す
る。 (18)回転軸と、その回転軸に傾斜して支持された斜
板と、前記回転軸を回転可能かつ軸方向に移動不能に支
持するとともに、回転軸から偏心した位置に回転軸にほ
ぼ平行に形成されたシリンダボアを備えたハウジング
と、前記シリンダボアに摺動可能に嵌合される頭部と前
記斜板の外周部を跨ぐ係合部とを備えたピストンと、前
記斜板の両側面と前記係合部との間にそれぞれ配設され
るシューとを含む斜板式圧縮機であって、前記斜板が、
鉄系材料または銅系材料から成り、前記側面に合成樹脂
コーティングが施されたものであり、前記ピストンがア
ルミニウムを主体とする材料により形成された凹球面状
のシュー保持面を有し、かつ、前記シューが (1)項ない
し(17)項のいずれかに記載の球冠状シューであることを
特徴とする斜板式圧縮機。
【0016】本項の発明によれば、球冠状シューの軽量
化が可能になるとともに、球冠状シューの球面部にめっ
きを施すことによりピストンの凹球面状のシュー保持面
との同種金属による焼付きを防止することができ、摺動
性が向上する。また、球冠状シューの斜板側の摺動面の
方がピストン側の摺動面よりも摺動条件が厳しいのが一
般的であり、球冠状シューの斜板側の摺動面を鉄系材料
で形成することにより、優れた摺動特性が得られる。斜
板の側面(シューとの摺動面)には合成樹脂コーティン
グが施されており、シューとの焼付きがより良好に防止
される。このような球冠状シューを備える斜板式圧縮機
は、高速運転時やドライ状態(摺動面に殆ど潤滑油が存
在しない状態)等厳しい運転条件下でも安定した運転を
行うことができる。斜板の合成樹脂コーティング層は、
固体潤滑剤を含むものとすることが望ましい。シューの
鉄系材料層の上にも斜板と同様のコーティングを施すこ
とも可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態である
自動車用空調装置に用いられる斜板式圧縮機用の球冠状
シューを例に取り、図面に基づいて詳細に説明する。図
1に本実施形態における斜板式圧縮機を示す。図1にお
いて、10はシリンダブロックであり、シリンダブロッ
ク10の中心軸線周りの一円周上には、軸方向に延びる
複数のシリンダボア12が形成されている。シリンダボ
ア12の各々には、片頭ピストン14(以下、ピストン
14と略称する)が往復運動可能に配設されている。シ
リンダブロック10の軸方向の一端面(図1の左側の端
面であり、前端面と称する)には、フロントハウジング
16が取り付けられ、他方の端面(図1の右側の端面で
あり、後端面と称する)には、リヤハウジング18がバ
ルブプレート20を介して取り付けられている。フロン
トハウジング16,リヤハウジング18,シリンダブロ
ック10等により斜板式圧縮機のハウジングが構成され
ている。リヤハウジング18とバルブプレート20との
間には、吸入室22,吐出室24が形成され、それぞ
れ、吸入ポート26,供給ポート28を経て、図示しな
い冷凍回路に接続される。バルブプレート20には、吸
入孔32,吸入バルブ34,吐出孔36,吐出バルブ3
8等が設けられている。
【0018】上記ハウジング内には、回転軸50が、シ
リンダブロック10の中心軸線を回転軸線として回転可
能に設けられている。回転軸50は、その両端部におい
てそれぞれフロントハウジング16,シリンダブロック
10にベアリングを介して回転可能に支持されている。
シリンダブロック10の中心部には、支持穴56が形成
されており、その支持穴56において上記ベアリングを
介して支持されているのである。回転軸50のフロント
ハウジング16側の端部は、図示しない駆動源としての
車両エンジンに、電磁クラッチ等のクラッチ装置を介し
て連結されている。したがって、車両エンジンの作動時
に、クラッチ装置によって回転軸50が車両エンジンに
接続されれば、回転軸50が自身の軸線まわりに回転さ
せられる。
【0019】回転軸50には、斜板60が軸方向に相対
移動可能かつ傾動可能に取り付けられている。斜板60
には、中心線を通る貫通穴61が形成され、この貫通穴
61を回転軸50が貫通している。貫通穴61は、両端
開口側ほど図1における上下方向に内のり寸法が漸増さ
せられ、それら両端部の横断面形状が長穴をなしてい
る。回転軸50にはまた、回転板62が固定され、スラ
ストベアリング64を介してフロントハウジング16に
受けられている。斜板60は、ヒンジ機構66により、
回転軸50と一体的に回転させられるとともに、軸方向
の移動を伴う傾動を許される。ヒンジ機構66は、回転
板62に固定的に設けられた支持アーム67と、斜板6
0に固定的に設けられ、支持アーム67のガイド穴68
にスライド可能に嵌合されたガイドピン69と、斜板6
0の貫通穴61と、回転軸50の外周面とを含むもので
ある。
【0020】前記ピストン14は、斜板60の外周部を
跨ぐ状態で係合させられる係合部70と、係合部70と
一体に設けられ、シリンダボア12に嵌合される頭部7
2とを備えている。本実施形態における頭部72は、中
空頭部とされて軽量化が図られている。頭部72,シリ
ンダボア12およびバルブプレート20が共同して圧縮
室を形成している。また、係合部70は一対の球冠状の
シュー76を介して斜板60の外周部と係合させられて
いる。シュー76については後に詳しく説明する。
【0021】斜板60の回転運動は、シュー76を介し
てピストン14の往復直線運動に変換される。ピストン
14が上死点から下死点へ移動する吸入行程において、
吸入室22内の冷媒ガスが吸入孔32,吸入バルブ34
を経てシリンダボア12内の圧縮室に吸入される。ピス
トン14が下死点から上死点へ移動する圧縮行程におい
て、シリンダボア12内の圧縮室の冷媒ガスが圧縮さ
れ、吐出穴36,吐出バルブ38を経て吐出室24に吐
出される。冷媒ガスの圧縮に伴ってピストン14には、
軸方向の圧縮反力が作用する。圧縮反力は、ピストン1
4,斜板60,回転板62およびスラストベアリング6
4を介してフロントハウジング16に受けられる。
【0022】シリンダブロック10を貫通して給気通路
80が設けられている。この給気通路80により、吐出
室24と、フロントハウジング16とシリンダブロック
10との間に形成された斜板室86とが接続されてい
る。給気通路80の途中には、電磁制御弁90が設けら
れている。この電磁制御弁90のソレノイド92への電
流供給が、コンピュータを主体とする制御装置(図示省
略)により、冷房負荷等の情報に応じて制御される。
【0023】回転軸50の内部には、排出通路100が
設けられている。排出通路100は、一端において前記
支持穴56に開口させられるとともに、他端において斜
板室86に開口させられている。支持穴56は排出ポー
ト104を経て吸入室22に連通させられている。
【0024】本斜板式圧縮機は可変容量型であり、高圧
側である吐出室24と低圧側である吸入室22との圧力
差を利用して斜板室86内の圧力が制御されることによ
り、ピストン14の前後に作用するシリンダボア12内
の圧縮室の圧力と斜板室86の圧力との差が調節され、
斜板60の傾斜角度が変更されてピストン14のストロ
ークが変更され、圧縮機の吐出容量が調節される。具体
的には、電磁制御弁90の励磁,消磁の制御により、斜
板室86が吐出室24に連通させられたり、遮断された
りすることによって、斜板室86の圧力が制御される。
【0025】シリンダブロック10およびピストン14
は、金属の一種であるアルミニウム合金製のものとさ
れ、ピストン14の外周面には、フッ素樹脂のコーティ
ングが施されている。フッ素樹脂でコーティングすれ
ば、同種金属との直接接触を回避して焼付きを防止しつ
つシリンダボア12との嵌合隙間を可及的に小さくする
ことができる。ただし、シリンダブロック10やピスト
ン14の材料、コーティング層の材料等は、上述の材料
に限らず、他の材料であってもよい。
【0026】ピストン14の係合部70は、概してU字
形をなし、頭部72の中心軸線と直交する方向に互いに
平行に延びる一対のアーム部120,122と、これら
アーム部120,122の基端同士を連結する連結部1
24とを備えている。アーム部120,122の互いに
対向する側面には、それぞれ凹球面状のシュー保持面1
28が形成されている。これら2つのシュー保持面12
8は同一球面上に位置している。
【0027】前記一対のシュー76は、図2に示すよう
に、外表面の一方が概して凸球面をなす球面部132
と、他方が概して平面をなす平面部138とを有する球
冠状である。平面部138は、厳密には僅かに中高の曲
面(例えば、曲率半径がきわめて大きい凸球面)とされ
るとともに、外周部がテーパ値のきわめて大きいテーパ
面とされている。また、球面部132の平面部138に
近い側の部分が円筒面とされている。これら、中高の曲
面,テーパ面,円筒面および凸球面等の境界には比較的
曲率半径の小さい丸みが付けられている。一対のシュー
76は、球面部132においてピストン14のシュー保
持面128に摺動可能に保持され、平面部138におい
て斜板60の外周部の両側面である両摺動面140,1
42に接触し、斜板60の外周部を両側から挟持する。
一対のシュー76はその状態で球面部132の凸球面が
同一球面上に位置するように設計されている。つまり、
本実施形態におけるシュー76は、斜板60の厚さのほ
ぼ半分だけ小さい球冠状をなしているのである。
【0028】シュー76の本体146は、軽金属の一種
であるアルミニウムを主成分とし、シリコンを10〜1
8重量%含有するアルジル合金から成る。本実施形態に
おいては、シリコン含有量が11.5重量%とされてい
る。また、斜板60は、鉄系材料の一種である球状黒鉛
鋳鉄(JISのFCD700)から成り、シュー76の
平面部138との摺動面140,142となる両側面に
アルミニウムを主成分とする材料が溶射されるととも
に、合成樹脂コーティングが施されている。この合成樹
脂コーティングとしては、固体潤滑剤を含む合成樹脂の
減摩層が望ましく、その場合、固体潤滑剤としては、M
oS2 (二硫化モリブデン),BN(窒化ホウ素),W
2 (二硫化タングステン),グラファイト,ポリテト
ラフルオルエチレン等の少なくとも1つを含有するもの
とするものを採用でき、合成樹脂としては、ポリアミド
イミド,エポキシ樹脂,ポリエーテルエーテルケトン,
フェノール樹脂等を採用することができる。これらポリ
アミドイミド,エポキシ樹脂,ポリエーテルエーテルケ
トン,フェノール樹脂等は、耐熱性に優れたものであ
り、かつ、上記固体潤滑剤を含むことにより、耐摩耗性
が向上するとともに、摩擦係数が低減する。両摺動面1
40,142に焼き入れが施されて、アルミニウムを主
成分とする材料の溶射が省略されることもある。あるい
は、斜板60がアルミニウムを主成分とする材料からな
り、両摺動面140,142に鉄系材料が溶射されたも
のとされる場合もある。斜板60の材料は上述の材料に
限らず、鉛青銅,黄銅等の銅系材料でもよい。また、斜
板60は、鉄系材料の表面に、アルミ系材料または銅系
材料が溶射あるいは焼結によって接合されたものでもよ
く、上記以外の材料の組み合わせであってもよい。
【0029】シュー76の本体146には、めっきが施
され、本体146の外表面全体を覆うめっき層148が
形成されている。本実施形態におけるめっき層148
は、図3に概念的に示すように、本体146の外表面を
覆う硬質層150と、その硬質層150の外表面全体を
覆う別の硬質層152とを備えるものである。なお、図
2には、めっき層148の厚みが、理解を容易にするた
めに誇大に示されている。硬質層150,152はそれ
ぞれ、金属を主体とする層である。「金属を主体」とす
る層としては、金属含有量が70重量%以上の層とする
ことが望ましい。硬質層150は、例えば、Ni−P,
Ni−B,Ni−P−B−W,Co−P,硬質クロムめ
っき等の硬質めっき層、またはTiN,CrN等の蒸着
層とすることができる。本実施形態においては、Ni−
Pのめっき層が形成されている。
【0030】硬質層152は、Ni−B,Ni−P−B
−W,Co−P,硬質クロムめっき等の硬質めっき層、
またはTiN,CrN等の蒸着層とすることができる。
本実施形態においては、Ni−P−B−Wめっき層とさ
れている。Ni−Pめっき層およびNi−P−B−Wめ
っき層は、無電解めっき層(化学めっき層)であり、公
知の化学めっき法により形成される。この方法によれ
ば、本体146に厚さが均一の2層のめっき層を容易か
つ簡単な装置で形成することができる。硬質層152は
また、固体潤滑剤を含有した層である。固体潤滑剤とし
ては、MoS2 ,BN,WS2 ,グラファイト,ポリテ
トラフルオルエチレン等の少なくとも1つを含有するも
のを採用できる。
【0031】めっき層148は、上述の例以外のものと
することも可能である。例えば、金属を主体とするめっ
き層を2層形成し、その上に固体潤滑剤を含有する合成
樹脂製コーティング層を形成してもよいし、固体潤滑剤
を含む金属製めっき層の上に、固体潤滑剤を含む合成樹
脂製コーティング層を形成することもできる。また、必
要に応じて、シュー76の球面部132にのみめっきを
施してもよい。
【0032】シュー76の本体146の平面部138に
は、図2に示すように、鉄系材料から成る板状部材15
8が固定され、本体146と板状部材158とで一体的
なシュー76として機能する。板状部材158により、
シュー76の鉄系材料層が形成されている。板状部材1
58は、本体146の平面部138の直径より小さい直
径を有する円板状をなす。板状部材158の材料として
は、SUJ2等の軸受鋼やSCM415等のクロムモリ
ブデン鋼等、焼き入れにより硬化させられた鉄系材料が
好適である。本体146の平面部138の中央には、板
状部材158の直径よりやや小さい円形断面の嵌合凹部
160が形成されている。板状部材158がこの嵌合凹
部160に圧入されることにより、本体146と板状部
材158とが結合される。板状部材158の厚さは、嵌
合凹部160の深さより大きくされ、板状部材158の
外周面と嵌合凹部160の内周面とが締まり嵌合させら
れた状態で、板状部材158の一方の端面が平面部13
8の面より外側に突出することになり、この端面が斜板
60の摺動面140,142と摺動する摺動面164を
構成する。
【0033】本実施形態によれば、球冠状シュー76の
本体146をアルミニウム合金を主体とする材料により
形成するとともに、斜板60を鉄系材料製とすることに
より、安定した高速運転が可能な可変容量型斜板式圧縮
機が得られる。その上、球冠状シュー76の斜板60と
の接触部を鉄系材料層とすることにより、運転時の摺動
条件が特に厳しい部分において優れた耐久性を確保でき
る。そして、本実施形態のように斜板60の摺動面14
0,142にコーティング層(減摩層)を形成すれば、
斜板60と板状部材158との同種金属の摺動による焼
付きが良好に防止される。さらに、シュー76の球面部
132のピストン14のシュー保持面128と摺動する
摺動面が硬質層150,152によって形成されること
によっても、シュー76の摺動抵抗が低減させられると
ともに、球面部132とシュー保持面128との同種金
属の摺動による焼付きが良好に防止され、摺動性が向上
する。また、アルミニウムを主成分とする材料から成る
シュー76の本体146が本体146より硬度の高い硬
質層150,152によって覆われるとともに、鉄系材
料層によって一部が覆われることにより、シュー76の
強度が増し、シュー76の耐久性、ひいてはピストン1
4を含む斜板式圧縮機の耐久性が向上する。
【0034】本体146と硬質層152(本実施形態で
はNi−P−B−Wめっき層)との間に形成される硬質
層150(本実施形態ではNi−Pめっき層)は、本体
146との固着力も硬質層152との固着力も共に大き
く、下地層として機能して本体146とNi−P−B−
Wめっき層との固着性を高める機能を果たす。硬質層1
52の本体146からの剥離を良好に防止することがで
きるのである。Ni−P−B−Wは、一般的にNi−P
より硬度が高く、耐摩耗性に優れるが、Ni−Pめっき
層に比較して形成コストが高い。したがって、Ni−P
めっき層を比較的厚く形成し、その上にNi−P−B−
Wめっき層を比較的薄く形成することが望ましい。ま
た、Ni−Pめっき層は、Ni−P−B−Wめっき層に
衝撃が加えられた時の緩衝層としても機能する。それに
よって、硬質層152の本体146からの剥離および欠
けが良好に防止され、シュー76の摺動性および耐久性
が一層長期にわたって維持される。上述の効果は、Ni
−P−B−Wめっき層をNi−Bめっき層に代えた場合
でも言える。
【0035】また、万一硬質層152が摩滅した場合で
も、硬質層150が露出するのみで本体146が露出す
ることはない。長期間にわたって圧縮機の運転を継続し
ていると、シュー76の硬質層152の耐摩耗性が低下
し、シュー76への潤滑油不足や面圧が増加した場合に
局部的に摩滅することもある。この場合には、硬質層1
52が除去された部分から硬質層150が露出すること
になる。上述のように、硬質層150は、本体146と
の密着性が高く、かつ、耐摩耗性にも優れているため、
硬質層150が除去されて本体146が露出することは
なく、シュー76とピストン14および斜板60との焼
付きが防止される。また、シュー76との間の面圧は斜
板60の回転に伴い周期的に変化し、面圧が減少してい
る間に硬質層152が周囲から補給されて修復される。
修復は以下のように行われると推測される。摩擦力と摩
擦熱とにより周囲の固体潤滑剤を含む硬質層152が硬
質層152の摩滅あるいは剥離した部分に流れてくる。
これにより、硬質層152の摩滅あるいは剥離により硬
質層150が露出した部分が、再び硬質層152により
覆われて修復される。このようにシュー76との間の面
圧が減少する時に硬質層152が修復されるため、長期
にわたって高い摺動性が維持されると推測される。
【0036】本実施形態のシュー76を備えた圧縮機に
おいては、冷媒ガスが圧縮機外部に漏れるなどして、圧
縮機内が潤滑油不足の状態(その究極の状態は無潤滑状
態)となった場合等の苛酷な条件下でも、シュー76の
優れた摺動性が維持され、シュー76と斜板60との焼
付きまたはシュー76とピストン14との焼付きが防止
され、シュー76、ひいては圧縮機の寿命低下が良好に
回避される。
【0037】嵌合凹部160と板状部材158とを締ま
り嵌合させることに加えて、本体146と板状部材15
8とを接着により固定することも可能である。この場
合、接着剤は嵌合凹部160に保持された状態で板状部
材158を嵌合凹部160に嵌合する方が作業が容易と
なるが、板状部材158側に接着剤を保持させることも
可能である。また、嵌合凹部160と板状部材158と
をすきま嵌合してもよく、その場合には両部材を接着剤
により接着することが特に望ましい。
【0038】球冠状シュー76の形状は、上記実施形態
以外にも種々のものとすることができる。以下、それら
実施形態についてそれぞれ図面に基づいて説明する。図
4に示す球冠状シュー200(以下、シュー200と略
称する)の本体202は、アルミニウムを主成分とし、
シリコンを含有するアルジル合金から成る。また、本体
202の上には、前記実施形態と同様、硬質層150,
硬質層152を含むめっき層148が形成されている。
本実施形態における本体202は、前記実施形態におけ
るシュー76の本体146とは嵌合凹部160が形成さ
れていない点以外は同様の構成を有するものであるた
め、同じ構成を有する部分については同一符号を付して
詳細な説明は省略する。
【0039】本体202の平面部138側の外側には、
外嵌部材210が嵌合されている。外嵌部材210は、
鉄系材料の一種であるSUJ2等の軸受鋼またはSCM
415等のクロムモリブデン鋼から成り、円板状の平板
部212と、その平板部212の外周縁からほぼ直角に
立ち上がった円筒状の嵌合部214とを備える。平板部
212により鉄系材料層が形成され、平板部212の本
体202側の内側面とは反対側の外側面が斜板60の摺
動面140,142と接触する摺動面216を構成して
いる。嵌合部214の内周面の直径は、本体202の平
面部138側の部分の外周面の直径よりやや小さくさ
れ、圧入代が設定されている。本体202の平面部13
8側の部分の外周面と外嵌部材210の嵌合部214の
内周面とが締まり嵌合されることにより両部材が結合さ
れ、一体的な球冠状シュー200として機能する。な
お、外嵌部材210の嵌合部214は、平板部212の
外周縁の一部からほぼ直角に立ち上がった複数の部分円
筒部からなるものとすることも可能である。
【0040】図5ないし図7に示す球冠状シュー250
においては、本体252の平面部138側の部分の外周
面の、周方向に等角度間隔で隔たった複数個所(図示の
例では4個所)に、それぞれ凹球面あるいは凹円錐面に
より画定される係合凹部260(図6参照)が形成され
ている。また、本体252の平面部138側の部分の外
側には、外嵌部材264が嵌合されている。外嵌部材2
64は、円板状を成す平板部266と、平板部266の
外周縁からほぼ直角に立ち上がった概して円筒状を成す
嵌合部268とを備えている。嵌合部268には、図7
に示すように、周方向に隔たった複数個所(本実施形態
の場合周方向に等角度間隔に隔たった4個所)に切欠2
70が形成されることにより、嵌合部268の自由端部
側が弾性変形により拡径可能である。嵌合部268に
は、嵌合部268の自由端部の内周面において周方向に
等角度間隔で隔たった複数個所(図示の例では4個所)
から半径方向内向きに突出する内向き突部276が一体
に設けられている。内向き突部276は、半球状,円錐
状等スポット状の突部を成している。なお、図5ないし
図7においては、それら係合凹部260および内向き突
部276が、理解を容易にするために誇大に示されてい
る。本実施形態における球冠状シュー250を製造する
際には、上記本体252の係合凹部260と外嵌部材2
64の内向き突部276との位相が合わせられた状態で
両者が嵌合され、嵌合部268の弾性変形を伴うスナッ
プアクションにより内向き突部276と係合凹部260
とが係合させられる。したがって、本体252と外嵌部
材264とが確実に相対回転不能かつ離脱不能に結合さ
れる。本体252および外嵌部材264の形成材料は、
前記実施形態と同様であるため、ここでは説明は省略す
る。
【0041】図8および図9に示す球冠状シュー280
のように、外嵌部材282の内向き突部284が本体2
86の円筒面をなす平面部138側の外周面に締まり嵌
合され、この嵌合時に内向き突部284により平面部1
38側から球面部132に向かって軸方向に延びる係合
溝288が形成されるようにしてもよい。外嵌部材28
2は、外嵌部材264と同様、円板状を成す平板部29
0と、平板部290の外周縁からほぼ直角に立ち上がっ
た概して円筒状を成す嵌合部292とを備えており、嵌
合部292の周方向に等角度間隔に隔たった複数個所
(図示の例では4個所)が半径方向内向きに湾曲させら
れることにより、上記内向き突部284が形成されてい
る。外嵌部材282の嵌合部292の内向き突部284
が形成されていない部分の内周面は、本体286の外周
面にすきま嵌合されている。本実施形態における係合溝
288は、本発明に係る係合凹部の一例である。内向き
突部284を、半球状,円錐状等スポット状の突部とし
てもよい。
【0042】内向き突部284と係合溝288との係合
とともに、接着によって本体286と外嵌部材282と
を結合してもよい。例えば、外嵌部材282の斜板60
と摺動させられる摺動面たる外側面とは反対側の内側面
と、本体286の平面部側の端面との間に接着剤を介在
させるのである。図5〜図7に示す実施形態においても
同様に、本体252と外嵌部材264とを接着によって
結合してもよい。係合凹部および内向き突部の配設個
数,配設間隔等は、本実施形態に限らず種々のものとす
ることができる。また、係合凹部を周方向に延びる円環
状溝とすることも可能であるし、内向き突部を嵌合部の
内周面の全周にわたって設けることも可能である。ある
いはまた、本体側に係合突部(外向き突部)を、外嵌部
材側に係合凹部を設けることも可能である。
【0043】図10にさらに別の実施形態を示す。本実
施形態における球冠状シュー300の本体302は、本
体202と同様、球面部132と平面部138とを備え
る。本体302の平面部138の平面には、平面部13
8の直径とほぼ等しい直径を有する円板状を成す平板状
部材306が溶接により固着されている。平板状部材3
06により鉄系材料層が形成され、平板状部材306の
平面部138に密着される側の面とは反対側の面が、斜
板60の摺動面140,142と接触する摺動面310
として機能する。溶接手段としては、電子ビーム溶接や
レーザ溶接が好適である。これらの溶接は、平面部13
8と平板状部材306との互いに接合される面の外周部
に向かって電子ビーム等のビームを照射するのみで両部
材を溶接できるため、作業が簡単である。また、シュー
の球面部側および平面部側の両面は、圧縮機の運転中1
80℃〜200℃程度の高温にさらされるのであるが、
平面部138と平板状部材306とが溶接によって固着
されれば、そのような運転中の高温においても強度を維
持できる。さらに、接着剤による接着の場合冷媒ガスに
対応可能な材料を配慮する必要があるが、溶接の場合は
必要なく、この点でも溶接による固着が望ましい。ただ
し、平面部138と平板状部材306とを接着により結
合することも可能であるし、あるいは、上記溶接と接着
とを併用することも可能である。
【0044】平板状部材は、単純な円板状を成す以外に
も、以下の形態のものとすることができる。図11に示
す球冠状シュー330のように、平板状部材332の、
本体336の平面部138に密着させられる側の面に、
複数の鋭利な突起340(本実施形態の場合円錐状を成
す)を一体的に形成する。平面部138と平板状部材3
32との互いに対向する側の面の少なくとも一方に接着
剤を塗布した後、平板状部材332と本体336とを強
く押し付けて、突起340を平面部138に没入させ
る。これら接着と突起340の没入との併用により、本
体336と平板状部材332とがより強固に結合され
る。本体336の突起340が嵌入させられる部分に突
起340の形状に対応した凹部を予め形成してもよい。
突起を本体336の平面部138に設けることも可能で
ある。上記接着に代えて、あるいは接着とともに、溶接
によって平板状部材332と本体336とを結合するこ
とも可能である。
【0045】平板状部材のさらに別の形態としては、図
12に示す球冠状シュー400のように、円板状を成す
平板状部材402の中央に円形断面の貫通穴404を形
成する一方、本体406の平面部138の平面の中央
に、上記貫通穴404よりやや直径の大きい円形断面の
嵌合突部408を形成する。貫通穴404の内周面と嵌
合突部408の外周面とを締まり嵌合するとともに、平
面部138の平面と平板状部材402の一端面とを接着
剤により接着、または溶接により固着することによっ
て、両部材を精度良く位置決めした状態で結合すること
ができる。あるいは、接着と溶接との併用も可能であ
る。なお、図示の例では、嵌合突部408の軸方向長さ
は貫通穴404の深さよりやや小さくされており、本体
406と平板状部材402とが結合された状態では、平
板状部材402の斜板60に接触させられる側の面に開
口する凹部410が形成されることになる。この凹部4
10は、外方に向かって開いた凹部の一例であり、球冠
状シュー400が斜板式圧縮機に搭載された場合に潤滑
油保持穴として機能する。嵌合突部408と貫通穴40
4とはすきま嵌合させてもよい。嵌合突部408および
貫通穴404の配設個数および配置等は種々のものを採
用可能である。
【0046】図1〜図3および図4に基づいて説明した
各実施形態においても、図12に示す実施形態のよう
に、潤滑油保持穴として機能する外方に向かって開いた
凹部を鉄系材料層に形成することができる。例えば、図
13に示すように、板状部材158の中央に凹部440
(図示の例では円錐状のくぼみ)を形成してもよい。ま
た、この凹部440に代えて、貫通穴としてもよい。さ
らにまた、図14に示すように、外嵌部材210の平板
部212の中央に貫通穴450を形成してもよい。貫通
穴450に代えて、平板部266の斜板60に接触する
側の面に開口する行き止まりの凹部を形成してもよい。
このような凹部440および貫通穴450は、複数個設
けることも可能である。
【0047】前述の内向き突部276,内向き突部28
4,突起340および嵌合突部408等の形状は、各実
施形態において説明した形状に限らず、状況に応じて種
々のものを採用可能である。
【0048】本発明に係るシューを、斜板との係合部の
両側に頭部を有する両頭ピストンを備える斜板式圧縮機
等、固定容量型斜板式圧縮機に使用することも可能であ
り、その他、本発明は、前記〔発明が解決しようとする
課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様
を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改
良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である球冠状シューを備え
た斜板式圧縮機を示す正面断面図である。
【図2】上記球冠状シューの正面断面図である。
【図3】上記球冠状シューの一部を拡大して示す正面断
面図である。
【図4】本発明の別の実施形態である球冠状シューの正
面断面図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態である球冠状シュ
ーの正面断面図である。
【図6】上記球冠状シューの構成要素である本体の平面
断面図である。
【図7】上記球冠状シューの構成要素である外嵌部材の
平面図である。
【図8】本発明のさらに別の実施形態である球冠状シュ
ーの正面断面図である。
【図9】上記球冠状シューの平面断面図である。
【図10】本発明のさらに別の実施形態である球冠状シ
ューの正面断面図である。
【図11】本発明のさらに別の実施形態である球冠状シ
ューの正面断面図である。
【図12】本発明のさらに別の実施形態である球冠状シ
ューの正面断面図である。
【図13】本発明のさらに別の実施形態である球冠状シ
ューの正面断面図である。
【図14】本発明のさらに別の実施形態である球冠状シ
ューの正面断面図である。
【符号の説明】
14:片頭ピストン 60:斜板 76:球冠状シ
ュー 132:球面部138:平面部 146:本
体 148:めっき層 150,152:硬質層
158:板状部材 160:嵌合凹部 200:
球冠状シュー202:本体 210:外嵌部材 2
12:平板部 214:嵌合部250:球冠状シュー
252:本体 260:係合凹部 264:外
嵌部材 266:平板部 268:嵌合部 27
6:内向き突部 280:球冠状シュー 282:
外嵌部材 284:内向き突部 286:本体
288:係合溝 290:平板部 292:嵌合部
300:球冠状シュー 302:本体 3
06:平板状部材 330:球冠状シュー 33
2:平板状部材 336:本体 340:突起
400:球冠状シュー 402:平板状部材 40
4:貫通穴 406:本体 408:嵌合突部
410:凹部 440:凹部 450:貫通穴
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉岡 隆弘 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 小野田 晃 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 大久保 忍 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 村上 智洋 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 Fターム(参考) 3H076 AA06 BB26 BB38 CC33 CC34

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面が、ほぼ凸球面をなす球面部とほぼ
    平面をなす平面部とを備え、概して球冠状をなすシュー
    であって、 アルミニウム,マグネシウム等の軽金属を主体とする材
    料から成る本体の少なくとも前記球面部にめっきが施さ
    れるとともに、前記平面部に鉄系材料から成る鉄系材料
    層が設けられたことを特徴とする球冠状シュー。
  2. 【請求項2】 前記平面部の中央に嵌合凹部が形成さ
    れ、その嵌合凹部に鉄系材料から成る板状部材が締まり
    嵌合され、その板状部材により前記鉄系材料層が形成さ
    れた請求項1に記載の球冠状シュー。
  3. 【請求項3】 当該球冠状シューの前記平面部側の部分
    の外側に、平板部とその平板部の外周縁からほぼ直角に
    立ち上がった嵌合部とを備え、鉄系材料から成る外嵌部
    材が嵌合され、前記平板部により前記鉄系材料層が形成
    された請求項1に記載の球冠状シュー。
  4. 【請求項4】 前記嵌合部が概して円筒状をなし、それ
    の内周面から複数の内向き突部が半径方向内側へ突出さ
    せられ、それら内向き突部の各々が、前記本体の前記平
    面部側の部分の外周面に形成された複数の係合凹部の各
    々と互いに係合させられた請求項3に記載の球冠状シュ
    ー。
  5. 【請求項5】 前記平面部のほぼ全面に平板状部材が固
    着され、その平板状部材により前記鉄系材料層が形成さ
    れた請求項1に記載の球冠状シュー。
  6. 【請求項6】 前記平板状部材が溶接によって前記平面
    部に固着された請求項5に記載の球冠状シュー。
  7. 【請求項7】 前記本体の前記平面部に少なくとも1個
    の嵌合突部が設けられる一方、前記平板状部材に前記嵌
    合突部と対応する貫通穴が形成され、それら嵌合突部と
    貫通穴とが互いに締まり嵌合された請求項5または6に
    記載の球冠状シュー。
  8. 【請求項8】 前記平板状部材の前記平面部と密着する
    側の面に突起が設けられ、その突起が前記本体の前記平
    面部側の部分に没入させられた請求項5ないし7のいず
    れかに記載の球冠状シュー。
  9. 【請求項9】 回転軸と、 その回転軸に傾斜して支持された斜板と、 前記回転軸を回転可能かつ軸方向に移動不能に支持する
    とともに、回転軸から偏心した位置に回転軸にほぼ平行
    に形成されたシリンダボアを備えたハウジングと、 前記シリンダボアに摺動可能に嵌合される頭部と前記斜
    板の外周部を跨ぐ係合部とを備えたピストンと、 前記斜板の両側面と前記係合部との間にそれぞれ配設さ
    れるシューとを含む斜板式圧縮機であって、 前記斜板が、鉄系材料または銅系材料から成り、前記側
    面に合成樹脂コーティングが施されたものであり、前記
    ピストンがアルミニウムを主体とする材料により形成さ
    れた凹球面状のシュー保持面を有し、かつ、前記シュー
    が 請求項1ないし8のいずれかに記載の球冠状シュー
    であることを特徴とする斜板式圧縮機。
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