JP2003182014A - 多層シート - Google Patents

多層シート

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JP2003182014A
JP2003182014A JP2001386105A JP2001386105A JP2003182014A JP 2003182014 A JP2003182014 A JP 2003182014A JP 2001386105 A JP2001386105 A JP 2001386105A JP 2001386105 A JP2001386105 A JP 2001386105A JP 2003182014 A JP2003182014 A JP 2003182014A
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剛志 池田
Takashi Hirokane
岳志 広兼
Shojiro Kuwabara
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱性、透明性、耐衝撃性に優れた多層シー
トを提供する。 【解決手段】 ジカルボン酸構成単位とジオー構成単位
とを有するポリエステル樹脂であって、少なくとも、
(1)前記ジカルボン酸構成単位の10〜50モル%が
環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位である
か、又は(2)前記ジオール構成単位の10〜50モル
%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポ
リエステル樹脂(A)から成る層の少なくとも1層と、
ポリエステル樹脂(A)以外の他のポリエステル樹脂、
アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びメチルメタクリレ
ート−スチレン共重合体からなる群から選ばれた少なく
とも1種の樹脂から成る透明樹脂層の少なくとも1層と
を含む多層シート。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はジカルボン酸構成単
位とジオール構成単位とを有するポリエステル樹脂であ
って、ジカルボン酸構成単位及び/又はジオール構成単
位が環状アセタール骨格を有する化合物に由来する単位
を含むことを特徴とするポリエステル樹脂(A)から成
る層と、ポリエステル樹脂(A)を除くポリエステル樹
脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、およびメチルメ
タクリレート−スチレン共重合体からなる群から選ばれ
た少なくとも1種の樹脂から成る透明樹脂層を含む、耐
熱性、耐衝撃性及び透明性に優れ、且つ経済性に優れた
多層シートに関する。
【0002】
【従来の技術】透明樹脂によるシートはショーケース、
屋外看板、カーポート等のエクステリア用途や透明容
器、耐熱透明飲料用カップ、惣菜トレー、再加熱を要す
る容器、蓋材等の食品用途等の用途を有しており、基材
としてポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメ
タクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合
体等の樹脂が用いられてきた。しかし、ポリカーボネー
トは耐候性に劣ることや剛性が低いこと、またポリスチ
レン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレー
ト−スチレン共重合体は耐衝撃性に劣るなどの欠点を有
するため、それぞれ用途への利用には制限があった。
【0003】一方で、ポリエチレンテレフタレート(以
下「PET」ということがある)は透明性、機械的性
能、耐溶剤性、保香性、耐候性、リサイクル性等にバラ
ンスのとれた樹脂であり、近年、ポリエステル系の透明
シートの需要が拡大している。しかしながらPETは耐
熱性が必ずしも良好でないため、高い耐熱性が要求され
る分野には利用できない。
【0004】このため、耐熱性の要求される分野に対し
ては、ポリエチレンナフタレートやポリアリレート、ナ
フタレンジカルボン酸変性PET等が用いられてきた
が、これらの樹脂は非常に高価であるため、用途は限ら
れたものであった。
【0005】また耐熱性のポリエステルとして、米国特
許2,945,008号の実施例9,10には、エチレ
ングリコールとPETの変性成分として下記構造式
(5):
【化5】 で表される3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒド
ロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピ
ロ〔5.5〕ウンデカンとを含むジオール成分とジカル
ボン酸成分としてのジメチルテレフタレートとをチタン
化合物触媒の存在下で重合せしめて180〜220℃で
溶融するポリエステルが得られたことが記載されてい
る。また同公報中には、開示されている変性PETは、
ガラス転移点が高く耐熱性に優れるとの記載がなされて
いる。
【0006】本発明者らが、該米国特許で開示されてい
る変性PETから単層シートを製造したところ、耐熱
性、機械物性、透明性に優れるものの、シート表面に傷
が付くことにより耐衝撃性が著しく低下するという欠点
を有することが分かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は前記の
如き状況に鑑み、耐熱性、透明性、耐衝撃性に優れた多
層シートを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
した結果、ジカルボン酸成分とジオール成分の少なくと
も一方が環状アセタール骨格を有する化合物を含む原料
モノマーを重合して得られたポリエステル樹脂(A)か
ら成る層の少なく1層と、ポリエステル樹脂(A)を除
くポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹
脂、及びメチルメタクリレート−スチレン共重合体から
なる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂から成る透明
樹脂層の少なくとも1層を含む多層シートが耐熱性、透
明性、及び耐衝撃性に優れ、且つ経済性に優れることを
見出し、本発明に到達した。
【0009】すなわち、本発明は、ジカルボン酸構成単
位とジオール構成単位とを有するポリエステル樹脂であ
って、少なくとも、(1)前記ジカルボン酸構成単位の
10〜50モル%が環状アセタール骨格を有するジカル
ボン酸単位であるか、又は(2)前記ジオール構成単位
の10〜50モル%が環状アセタール骨格を有するジオ
ール単位であるポリエステル樹脂(A)から成る層の少
なくとも1層と、ポリエステル樹脂(A)以外の他のポ
リエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及び
メチルメタクリレート−スチレン共重合体からなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の樹脂から成る透明樹脂層の
少なくとも1層とを含む多層シート。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明のポリエステル樹脂(A)は、(1)環状
アセタール骨格を有するジカルボン酸単位(環状アセタ
ール骨格を有するジカルボン酸に由来する構成単位)を
10〜50モル%含むジカルボン酸構成単位と環状アセ
タール骨格を有さないジオール構成単位、(2)環状ア
セタール骨格を有さないジカルボン酸構成単位と環状ア
セタール骨格を有するジオール単位(環状アセタール骨
格を有するジオールに由来する構成単位)を10〜50
モル%含むジオール構成単位、又は、(3)環状アセタ
ール骨格を有するジカルボン酸単位を10〜50モル%
含むジカルボン酸構成単位と環状アセタール骨格を有す
るジオール単位を10〜50モル%含むジオール構成単
位とからなるポリエステル樹脂である。本発明に用いる
ポリエステル樹脂(A)に用いられる環状アセタール骨
格を有するジオールとしては一般式(1):
【化6】 または一般式(2):
【化7】 で表される化合物が好ましい。一般式(1)と(2)に
おいて、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数が1
〜10の脂肪族基、炭素数が3〜10の脂環式基、及び
炭素数が6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる有
機基、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレ
ン基、ブチレン基又はこれらの構造異性体、例えば、イ
ソプロピレン基、イソブチレン基を表す。R3は炭素数
が1〜10の脂肪族基、炭素数が3〜10の脂環式基、
及び炭素数が6〜10の芳香族基からなる群から選ばれ
る有機基、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル
基、ブチル基、又はこれらの構造異性体、例えば、イソ
プロピル基、イソブチル基を表す。一般式(1)及び
(2)の化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメ
チル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テ
トラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−メチロー
ル−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロ
キシエチル)−1,3−ジオキサン等が特に好ましい。
【0011】本発明に用いるポリエステル樹脂(A)の
環状アセタール骨格を有するジオール以外のジオールと
しては、特に制限はされないが、エチレングリコール、
トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、
1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオー
ル、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネ
オペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;ポリエチ
レングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチ
レングリコール等のポリエーテル化合物類;1,3−シ
クロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジ
メタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノー
ル、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,
4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカ
ヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナ
フタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレン
ジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルネン
ジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタ
シクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;
4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、
メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,
4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノ
ールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビス
フェノールS)等のビスフェノール類;前記ビスフェノ
ール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レ
ゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,
4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジ
ヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒド
ロキシ化合物;及び前記芳香族ジヒドロキシ化合物のア
ルキレンオキシド付加物等が例示できる。
【0012】環状エーテル骨格を有するジカルボン酸と
しては、一般式(3):
【化8】 又は一般式(4):
【化9】 で表される化合物が好ましい。一般式(3)及び(4)
において、R3は前記と同様であり、R4及びR5はそれ
ぞれ独立して炭素数が1〜10の脂肪族基、炭素数が3
〜10の脂環式基、及び炭素数が6〜10の芳香族基か
らなる群から選ばれる有機基、好ましくは、メチレン
基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基又はこれら
の構造異性体、例えば、イソプロピレン基、イソブチレ
ン基を表す。R6およびR7はそれぞれ独立して水素原
子、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基、好まし
くは水素原子あるいはメチル基を表す。一般式(3)及
び(4)の化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジ
メチル−2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−
テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−カルボ
キシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カル
ボキシエチル)−1,3−ジオキサン等が特に好まし
い。
【0013】本発明に用いるポリエステル樹脂(A)の
環状アセタール骨格を有するジカルボン酸以外のジカル
ボン酸としては、特に制限はされないが、コハク酸、グ
ルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼ
ライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロ
ヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ノルボル
ナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペ
ンタシクロドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン
酸及びこれらのエステル形成性誘導体;テレフタル酸、
イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナ
フタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テト
ラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれら
のエステル形成性誘導体が例示できる。
【0014】本発明に用いるポリエステル樹脂(A)
は、少なくとも、(1)環状アセタール骨格を有するジ
カルボン酸単位を10〜50モル%、好ましくは15〜
45モル%含むジカルボン酸構成単位、又は(2)環状
アセタール骨格を有するジオール単位を10〜50モル
%、好ましくは15〜45モル%含むジオール構成単位
を有する。環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単
位及び/又は環状アセタール骨格を有するジオール単位
の含有量が上記より小さい場合には、本発明に用いるポ
リエステル樹脂(A)が十分な耐熱性を示さない場合が
あり好ましくない。また上記範囲より大きい場合には耐
衝撃性がかえって低下する場合があり、好ましくない。
【0015】本発明に用いるポリエステル樹脂(A)の
ジカルボン酸成分としては機械的性能の面から芳香族ジ
カルボン酸及びこのエステル形成性誘導体が好ましく、
特にテレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体が好ま
しい。ジカルボン酸構成単位中に占める芳香族ジカルボ
ン酸単位の割合は、好ましくは70モル%以上、より好
ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以
上である。上記割合とすることにより、本発明の多層シ
ートは耐熱性、機械的性能に優れたものとなる。
【0016】より好ましいポリエステル樹脂(A)は、
芳香族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボ
ン酸構成単位と、環状アセタール骨格を有するジオール
単位を10〜50モル%及びエチレングリコール単位を
50〜90モル%(但し、前記モル%はジオール類の合
計量に基づく)を含むジオール構成単位を有するポリエ
ステル樹脂である。上記組成割合のジオール構成単位と
ジカルボン酸構成単位を有することにより、本発明のポ
リエステル樹脂(A)は特に機械的性能、耐熱性を優る
という特長が得られる。
【0017】特に、耐熱性を考慮した場合、3,9−ビ
ス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,
4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカ
ンを使用することが好ましい。更に、経済性、耐熱性、
機械的性能のバランスを考慮すると、ジカルボン酸成分
及びジオール成分の組み合わせとしてジカルボン酸成分
にテレフタル酸、ジオール成分に3,9−ビス(1,1
−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)2,4,8,10
−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン及びエチレ
ングリコールを用いるのが好ましい。
【0018】本発明に用いるポリエステル樹脂(A)を
製造する方法は特に制限はなく、従来公知の方法を適用
することができる。例えばエステル交換法、直接エステ
ル化法等の溶融重合法、又は溶液重合法等を挙げること
ができる。エステル交換触媒、エステル化触媒、エーテ
ル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合
調整剤等も従来既知のものを用いることが出来る。
【0019】本発明の多層シートは、上述の環状アセタ
ール骨格を有するジカルボン酸を含むジカルボン酸成分
及び/又は環状アセタール骨格を有するジオールを含む
ジオール成分を用いて得られたポリエステル樹脂(A)
と、ポリエステル樹脂(A)を除くポリエステル樹脂、
アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メチルメタクリレー
ト−スチレン共重合体から選ばれた1種以上の透明樹脂
とを、少なくとも2以上の層を有する多層シートに成形
することにより得られる。
【0020】ポリエステル樹脂(A)と多層化可能な透
明樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエ
チレンナフタレート、イソフタル酸変性ポリエチレンテ
レフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール変
性ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポ
リエステル樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリル樹脂;ポ
リカーボネート樹脂;メチルメタクリレート−スチレン
共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共
重合体;塩化ビニル樹脂;脂環式ポリオレフィン樹脂が
挙げられるが、技術的に容易に多層化のできる樹脂とし
てポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹
脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合体が特に好
ましく用いられる。
【0021】本発明のポリエステル樹脂(A)はシート
の表面に傷が付くことで、耐衝撃性が低下するという欠
点を有する。耐衝撃性の低下は、傷が付いた面の裏面か
ら力が加わった場合のみ観察され、力が加わる面に傷が
付いても耐衝撃性の低下は観察されない。このため、力
の加わる面が限定された用途であれば、多層化によりポ
リエステル樹脂(A)層の少なくとも片面を保護する、
すなわち最低2層の多層シート(ポリエステル樹脂
(A)層/透明樹脂層)とすることでポリエステル樹脂
(A)の表面に傷が付いても、耐衝撃性が低下するとい
う欠点は改善される。ポリエステル樹脂(A)をコア層
にした3層以上の層構成(例えば、透明樹脂層/ポリエ
ステル樹脂(A)層/透明樹脂層、透明樹脂層/ポリエ
ステル樹脂(A)層/透明樹脂層/透明樹脂層、透明樹
脂層/ポリエステル樹脂(A)層/透明樹脂層/ポリエ
ステル樹脂(A)層/透明樹脂層)としてポリエステル
樹脂(A)層の両面を保護すれば、一層の改善効果が得
られる。更に、ポリエステル樹脂(A)をスキン層とし
て用いた3層以上の層構成(例えば、ポリエステル樹脂
(A)層/透明樹脂層/ポリエステル樹脂(A)層、ポ
リエステル樹脂(A)層/透明樹脂層/透明樹脂層/ポ
リエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(A)層/透
明樹脂層/ポリエステル樹脂(A)層/透明樹脂層/ポ
リエステル樹脂(A))とした場合にも同様の改善効果
が得られることが分かった。
【0022】ポリエステル樹脂(A)と多層化する透明
樹脂の種類および層構成(積層順、層の数)は用途によ
り選択すれば良い。例えば、PETのシートにさらに耐
熱性を付与するために、PETをスキン層、ポリエステ
ル樹脂(A)をコア層、あるいはポリエステル樹脂
(A)をスキン層、PETをコア層に用いた2種3層の
層構成(PET層/ポリエステル樹脂(A)/PET
層、ポリエステル樹脂(A)層/PET層/ポリエステ
ル樹脂(A)層)とすることで、耐熱性、透明性、耐衝
撃性に優れた多層シートが得られる。また、耐候性や表
面硬度を特に必要とする用途ではアクリル樹脂をスキン
層に、ポリエステル樹脂(A)をコア層に用いることで
(アクリル樹脂層/ポリエステル樹脂(A)/アクリル
樹脂層)、耐候性、表面硬度、耐熱性、透明性、耐衝撃
性に優れた多層シートが得られる。
【0023】更に、本発明は耐衝撃性に劣るポリメチル
メタクリレート、ポリスチレン、メチルメタクリレート
−スチレン共重合体の耐衝撃性をポリエステル樹脂
(A)によって改善した多層シートをも内包する。ポリ
メチルメタクリレート、ポリスチレン、メチルメタクリ
レート−スチレン共重合体をコア層に、ポリエステル樹
脂(A)をスキン層に用いることで、ポリメチルメタク
リレート、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチ
レン共重合体単層のシートに比べて飛躍的に耐衝撃性が
向上する。なお、特に傷が付きやすい用途ではスキン層
のポリエステル樹脂(A)を塗膜などで保護しても良
い。
【0024】本発明の多層シートの製造方法としては共
押出法、共押出ラミネート法、押出ラミネート法、ドラ
イラミネート法等の公知の積層化技術を用いることがで
きる。またこれらの積層化のために樹脂間に適した接着
剤、あるいは接着性樹脂を用いても良い。
【0025】本発明の多層シートの全光線透過率は、厚
さ0.8mmの多層シートをASTM D1003に基
づき測定される値で好ましくは87%以上である。87
%未満の場合、厚さが1mmを越える多層シートでは透
明性が不十分となり好ましくない。
【0026】また、本発明の多層シートの耐熱性は、
0.8mm厚の多層シートから、押出方向を縦、幅方向
を横として、縦、横100mmの正方形試験片を切り出
し、この試験片を5℃刻みのオーブン内で30分加熱
し、加熱後の縦及び横方向の収縮率が10%を越えない
最高温度が好ましくは85℃以上、より好ましくは90
℃以上である。該最高温度が85℃未満の場合、熱水等
に触れた場合に多層シートが変形しやすくなり、好まし
くない。
【0027】更に、本発明の多層シートの耐衝撃性は
0.8mm厚の多層シートに、JISR6010で粒度
P80の研磨紙で試験片を片面に均一に傷を付け、傷の
ない他方の面に直径2cmの半球の錘を落下させて47
0Jの衝撃エネルギーを垂直に与えた際の落錘衝撃破断
強度が好ましくは30kJ/m以上、より好ましくは3
5kJ/m以上である。落錘衝撃破断強度が30kJ/
m未満の場合、シートを薄型化すると、十分な耐衝撃性
が得られず好ましくない。
【0028】本発明の多層シートの各層の厚さは、用
途、層を形成する樹脂の種類、層の数などに応じて決め
られるが、通常は、500μm〜10mmである。ま
た、多層シートの総厚さは用途により異なり、例えば、
食品向けシート等では0.1〜0.9mm、建材、商品
ディスプレイ用等の厚物シートでは1〜40mmの厚み
で使用される。ポリエステル樹脂(A)層と透明樹脂層
の層数の合計は通常6層までである。
【0029】本発明の多層シートは、建材用途では例え
ば、自動販売機電照板、ショーケース、屋外看板、カー
ポート等のエクステリア用途、各種産業機械カバー、風
防、間仕切り板等に使用することができる。また、食品
用途として、例えば、殺菌、滅菌が必要とされる透明容
器、耐熱透明飲料用カップ、惣菜トレー、再加熱を要す
る容器、蓋材等が挙げられる。その他の分野では、クリ
アケース/クリアボックス(折り曲げ加工成形品)、電
灯カバー、ブリスター、赤道直下を越えるような輸出製
品等が挙げられる。
【0030】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく
説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を
限定されるものではない。なお、実施例の評価に用い
た、原料は次の通りである。
【0031】〔ポリエステル樹脂(A)の合成〕表1〜
4に記載の原料モノマー(ジカルボン酸成分とジオール
成分)の所定量を、ジカルボン酸成分100モルに対し
酢酸マンガン四水和物0.03モルの存在下、窒素雰囲
気下で200℃迄昇温してエステル交換反応を行った。
メタノールの留出量が理論量に対して90%以上に達し
た後、ジカルボン酸成分100モルに対し、酸化アンチ
モン(III)0.01モルとトリフェニルホスフェート
0.06モルを加え、昇温と減圧を徐々に行い、最終的
に280℃、0.1kPa以下で重合を行った。適度な
溶融粘度になった時点で反応を終了し、ポリエステル樹
脂(A)を得た。
【0032】本実施例及び比較例中で使用した他の樹脂
を以下に記す。 (1)ポリエチレンテレフタレート(PET):日本ユ
ニペット(株)製、商品名:UNIPET RT553
C (2)メチルメタクリレート−スチレン共重合体(PM
S):新日鉄化学(株)製、商品名:エスチレンMS6
00 (3)ポリメチルメタクリレート(PMMA):(株)
クラレ製、商品名:パラペット HR−L
【0033】〔評価方法〕次に本実施例及び比較例中の
多層シートの評価方法は以下の通りである。 (1)耐熱性 0.8mm厚の多層シートから、押出方向を縦、幅方向
を横として、縦、横100mmの正方形試験片を切り出
し、この試験片を5℃刻みのオーブン内で30分加熱
し、加熱後の縦及び横方向の収縮率が10%を越えない
最高温度とした。
【0034】(2)全光線透過率 全光線透過率は、JIS−K−7105、ASTM D
1003に準じて0.8mm厚の多層シートを用いて測
定した。使用した測定装置は、日本電色工業社製の曇価
測定装置(型式:COH−300A)である。
【0035】(3)曇価(ヘイズ) 曇価は、JIS−K−7105、ASTM D1003
に準じて測定した。0.8mm厚の多層シートを48時
間調湿後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で測定し
た。使用した測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定
装置(型式:COH−300A)である。
【0036】(4)耐衝撃性 0.8mm厚の多層シートから、押出方向を縦、幅方向
を横として、縦、横100mmの正方形試験片を切り出し
測定試料とした(表中傷無しと表記)。また、JIS
R6010で粒度P80の研磨紙で試験片の片面に均一
に傷を付け、同様に測定試料とした(表中傷有りと表
記)。測定装置は、パーカーコーポレーション社製、落
錘衝撃測定試験機を用い、錘の形状は直径2cmの半
球、衝撃エネルギーは470Jで落錘衝撃破断強度の測
定を行った。紙ヤスリで傷を付けた測定試料を測定する
場合は傷の付いていない面に錘が落下するようにして測
定を行った。
【0037】実施例1〜9、比較例1〜5 実施例1〜9及び比較例5はコア層原料を65mm押出
機を用い押出し、一方、スキン層原料は30mm押出機
を用いて押出し、マルチマニホールドタイプのダイを用
いて2種3層の多層シート(多層シート厚み:約0.8
mm、スキン層厚み:約100μm)を作成した。比較
例1〜4は樹脂を65mm押出機を用い押出し、単層ダ
イスを用いて、シート厚み約0.8mmの単層シートを
製造した。結果を表1〜5に示す。尚、表中の略記の意
味は下記の通りである。 DMT:ジメチルテレフタレート SPD:3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボ
キシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ
〔5.5〕ウンデカン DOD:5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−
ジメチル−2−カルボキシキシエチル)−1,3−ジオ
キサン EG:エチレングリコール SPG:3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロ
キシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ
〔5.5〕ウンデカン DOG:5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−
ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサ
ン PET:ポリエチレンテレフタレート PMS:メチルメタクリレート−スチレン共重合体 PMMA:ポリメチルメタクリレート
【0038】 表1実施例番号 実施例1 実施例2 実施例3 スキン層 ホ゜リエステル(A) ホ゜リエステル(A) ホ゜リエステル(A) コア層 PET PET PET ポリエステル(A)組成 ジカルボン酸成分(モル%) DMT 100 100 − DMT/SPD − − 80/20 ジオール成分(モル%) SPG/EG 30/70 − − DOG/EG − 20/80 − EG − − 100 評価結果 耐熱温度(℃) 95 90 90 全光線透過率(%) 90 90 88 曇価(%) 2.8 3.5 4.1 耐 衝撃性(kJ/m) 傷無し 44 39 42 傷有り 41 36 41
【0039】 表2実施例番号 実施例4 実施例5 実施例6 スキン層 ホ゜リエステル(A) ホ゜リエステル(A) PET コア層 PET PMS ホ゜リエステル(A) ポリエステル(A)組成 ジカルボン酸成分(モル%) DMT/DOD 80/20 − − DMT − 100 100 ジオール成分(モル%) EG 100 − − SPG/EG − 30/70 30/70 評価結果 耐熱温度(℃) 90 90 95 全光線透過率(%) 90 89 90 曇価(%) 3.3 5.1 3.0 耐衝撃性(kJ/m) 傷無し 40 35 44 傷有り 38 35 44
【0040】 表3実施例番号 実施例7 実施例8 実施例9 スキン層 PMMA ホ゜リエステル(A) ホ゜リエステル(A) コア層 ホ゜リエステル(A) PET PET ポリエステル(A)組成 ジカルボン酸成分(モル%) DMT 100 100 100 ジオール成分(モル%) SPG/EG 30/70 45/55 15/85 評価結果 耐熱温度(℃) 100 105 90 全光線透過率(%) 89 90 90 曇価(%) 2.2 2.9 4.0 耐衝撃性(kJ/m) 傷無し 45 38 49 傷有り 44 34 47
【0041】 表4比較例番号 比較例1 比較例2 比較例3 スキン層 − − − コア層 PET ホ゜リエステル(A) PMS ポリエステル(A)組成 ジカルボン酸成分(モル%) DMT − 100 100 ジオール成分(モル%) SPG/EG − 30/70 − 評価結果 耐熱温度(℃) 70 95 85 全光線透過率(%) 88 88 89 曇価(%) 3.7 4.1 4.2 耐衝撃性(kJ/m) 傷無し 40 42 0.3 傷有り 38 4 0.3
【0042】 表5比較例番号 比較例4 比較例5 スキン層 − PMMAコア層 PMMA PET 評価結果 耐熱温度(℃) 100 75 全光線透過率(%) 92 88 曇価(%) 2.0 4.8 耐衝撃性(kJ/m) 傷無し 1 38 傷有り 1 35
【0043】実施例9、10、比較例7 実施例1、3及び比較例1で製造した0.8mm厚の多
層シートを圧縮成形(熱成形)してフランジ部を有する
容器を作成した。各種評価は以下に示す方法により行っ
た。結果を表6に示す。
【0044】(1)成形性 成形した容器の形状及び透明性について外観により判断
した。成形性に関する評価は以下に示す基準で行った。 ○:金型形状通りに成形されており、透明性も有してい
る △:金型通りに成形されているが、屈曲部分に白化が生
じた。 ×:金型通りに成形されなかった。
【0045】(2)耐熱水性 成形した容器中に熱水(80、90℃)を充填し、容器
のフランジ部に蓋材をヒートシールし、充填時の熱水温
度で20分間保持後、容器の容量を測定し、容量保持率
を計算した。計算式を以下に示す。 容量保持率(%)=[(熱水処理後の容量)/(熱水充
填前の容量]×100
【0046】 表6実施例、比較例番号 実施例9 実施例10 比較例7 シート 実施例1 実施例3 比較例1 評価結果 成形性 ○ ○ △ 耐熱水性 80℃ 99% 98% 75% 90℃ 98% 92% 41%
【0047】
【発明の効果】本発明の多層シートは、耐熱性、透明
性、耐衝撃性に優れており、エクステリア用途や食品用
途などの有用な素材として用いることができ、本発明の
工業的意義は大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 桑原 章二郎 神奈川県平塚市東八幡5丁目6番2号 三 菱瓦斯化学株式会社平塚研究所内 Fターム(参考) 4F100 AK12B AK12J AK25B AK25J AK41A AK41B AK41K AK42 AK43A AL01B BA02 BA07 GB08 GB16 JJ03 JK10 JN01A JN01B YY00A 4J029 AA03 AC01 AC02 AE03 BA02 BA03 BA04 BA05 BA08 BA10 BB04A BB05A BB12A BB13A BC04A BC05A BD00 BD07A BD09A BD10 BE05A BF09 BF24 BF25 BF30 BH02 CA02 CA04 CA05 CB06A CB06B CB10A CC03A CC05A CD03 CD07 CF19 DB13 HA01 HB01 JB171 JC581 JE181 JF471 JF541

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジカルボン酸構成単位とジオール構成単
    位とを有するポリエステル樹脂であって、少なくとも、
    (1)前記ジカルボン酸構成単位の10〜50モル%が
    環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位である
    か、又は(2)前記ジオール構成単位の10〜50モル
    %が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポ
    リエステル樹脂(A)から成る層の少なくとも1層と、
    ポリエステル樹脂(A)以外の他のポリエステル樹脂、
    アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びメチルメタクリレ
    ート−スチレン共重合体からなる群から選ばれた少なく
    とも1種の樹脂から成る透明樹脂層の少なくとも1層と
    を含む多層シート。
  2. 【請求項2】 環状アセタール骨格を有するジオールが
    下記一般式(1)または一般式(2)で表される請求項
    1に記載の多層シート。 【化1】 (式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数が1
    〜10の脂肪族基、炭素数が3〜10の脂環式基、及び
    炭素数が6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる有
    機基を表す。) 【化2】 (式中、R1は前記と同様であり、R3は炭素数が1〜1
    0の脂肪族基、炭素数が3〜10の脂環式基、及び炭素
    数が6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる有機基
    を表す。)
  3. 【請求項3】 環状アセタール骨格を有するジカルボン
    酸が下記一般式(3)または一般式(4)で表される請
    求項1又は2に記載の多層シート。 【化3】 (式中、R4およびR5はそれぞれ独立して炭素数が1〜
    10の脂肪族基、炭素数が3〜10の脂環式基、及び炭
    素数が6〜10の芳香族基からなる群から選ばれる有機
    基を表し、R6およびR7はそれぞれ独立して水素原子、
    メチル基、エチル基、又はイソプロピル基を表す。) 【化4】 (式中、R3、R4、R6及びR7は前記と同様である。)
  4. 【請求項4】 環状アセタール骨格を有するジオールが
    3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチ
    ル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.
    5〕ウンデカン、または5−メチロール−5−エチル−
    2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−
    1,3−ジオキサンである請求項1ないし3のいずれか
    に記載の多層シート。
  5. 【請求項5】 環状アセタール骨格を有するジカルボン
    酸が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシ
    エチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ
    〔5.5〕ウンデカン、または5−カルボキシ−5−エ
    チル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチ
    ル)−1,3−ジオキサンである請求項1ないし4のい
    ずれかに記載の多層シート。
  6. 【請求項6】 ポリエステル樹脂(A)のジカルボン酸
    構成単位の70モル%以上が芳香族ジカルボン酸単位で
    あり、ジオール構成単位の10〜50モル%が環状アセ
    タール骨格を有するジオール単位、及び50〜90モル
    %がエチレングリコール単位であるポリエステル樹脂で
    ある請求項1ないし5のいずれかに記載の多層シート。
  7. 【請求項7】 芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸及び
    /又はそのエステル形成性誘導体である請求項6記載の
    多層シート。
  8. 【請求項8】 下記の(1)ないし(3)の物性を有す
    る請求項1ないし6のいずれかに記載の多層シート。 (1)厚さ0.8mmの多層シートの全光線透過率が8
    7%以上である。 (2)0.8mm厚の多層シートから、押出方向を縦、
    幅方向を横として、縦、横100mmの正方形試験片を
    切り出し、この試験片を5℃刻みのオーブン内で30分
    加熱したとき、加熱後の縦及び横方向の収縮率が10%
    を越えない最高温度が85℃以上である。 (3)0.8mm厚の多層シートに、JIS R601
    0で粒度P80の研磨紙で試験片の片面に均一に傷を付
    け、傷のない面に直径2cmの半球錘を落下して470
    Jの衝撃エネルギーを垂直に与えた際の落錘衝撃破断強
    度が30kJ/m以上である。
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