JP2003176455A - 金属コロイド液及び導電性被膜 - Google Patents

金属コロイド液及び導電性被膜

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温で加熱して高導電性でありかつ強靱な被
膜を得ることができる金属コロイド液及びそれを用いて
なる導電性被膜を提供する。 【解決手段】 金属粒子を主成分とする固形分と分散媒
とからなる金属コロイド液であって、前記固形分は、昇
温速度10℃/minの条件で示差熱分析を行った場合
に、300℃以下に発熱ピークを有するものである金属
コロイド液。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低温で加熱して高
導電性でありかつ強靱な被膜を得ることができる金属コ
ロイド液及びそれを用いてなる導電性被膜に関する。
【0002】
【従来の技術】導電性被膜は、ブラウン管の電磁波遮
蔽、建材又は自動車の赤外線遮蔽、電子機器や携帯電話
の静電気帯電防止剤、曇りガラスの熱線、回線基板やI
Cカードの配線、樹脂に導電性を付与するためのコーテ
ィング、スルーホール、回路自体等の広い範囲に用途を
有する。
【0003】導電性被膜の製造方法としては従来から、
例えば、金属の真空蒸着、化学蒸着、イオンスパッタリ
ング等が行われていた。しかしながら、これらの方法は
真空系又は密閉系での作業を必要とするため、操作が煩
雑な上、高価で量産性に乏しいという問題があった。
【0004】これに対して、金属粒子を分散媒に分散さ
せた金属コロイド液を塗布し、加熱焼成することにより
導電性被膜を得る方法が提案されている。この方法によ
れば、真空系又は密閉系での作業を必要とせず、簡便な
操作で、安価に導電性被膜を得ることができる。しかし
ながら、実用上充分な導電性を有する被膜を得るために
は200℃程度以上の高い温度で加熱する必要があり、
耐熱性に乏しい基材の上に導電性被膜を形成することが
できないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑み、低温で加熱して高導電性でありかつ強靱な被膜を
得ることができる金属コロイド液及びそれを用いてなる
導電性被膜を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、金属粒子を主
成分とする固形分と分散媒とからなる金属コロイド液で
あって、前記固形分は、昇温速度10℃/minの条件
で示差熱分析を行った場合に、300℃以下に発熱ピー
クを有するものである金属コロイド液である。以下に本
発明を詳述する。
【0007】本発明の金属コロイド液は、金属粒子を主
成分とする固形分と分散媒とからなる。上記金属粒子と
しては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、パ
ラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミ
ウム等からなるものを挙げることができる。なかでも、
金、銀、白金又はパラジウムが好ましく、より好ましく
は金又は銀である。これらの金属は単独で用いられても
よく、2種以上が併用されてもよい。特に銀を用いる場
合には、銀とその他の金属とを併用することが好まし
い。銀を用いると、その金属コロイド液を用いて形成さ
れる導電性被膜の導電率が良好となるが、マイグレーシ
ョンの問題を考慮する必要がある。銀とその他の金属と
を併用することにより、上記マイグレーションが起こり
にくくなる。上記その他の金属としては、金、銅、白
金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、
オスミウム等を挙げることができる。なかでも、金、白
金又はパラジウムが好適である。
【0008】上記のように銀とその他の金属とを併用す
る場合、銀の比率としては、金属全体に対して30〜9
9重量%であることが好ましい。30重量%未満である
と、得られる金属コロイド液の導電性が低下することが
あり、99重量%を超えると、マイグレーション性を解
決することが困難となる。より好ましくは、40〜95
重量%であり、更に好ましくは60〜90重量%であ
る。
【0009】本発明の金属コロイド液中の金属の含有量
としては、1〜500g/Lであることが好ましい。1
g/L未満であると、薄すぎて所望の膜厚を得るために
塗り重ねる回数が増え、500g/Lを超えると、粘度
が上がりすぎて取り扱いにくくなる。
【0010】本発明の金属コロイド液において、金属粒
子の平均粒径は400nm以下であることが好ましい。
400nmを超えると、金属粒子の分散安定性が経時的
に変化しやすい。より好ましくは、70nm以下であ
る。
【0011】上記固形分とは、金属コロイド液を常温で
恒量になるまで乾燥させたときに残存する固形分を意味
し、通常、金属粒子、残留分散剤及び残留還元剤等から
なる。上記固形分は、昇温速度10℃/minの条件で
示差熱分析を行った場合に、300℃以下に発熱ピーク
を有する。本発明者らは、昇温速度10℃/minの条
件で示差熱分析を行った場合に、300℃以下に発熱ピ
ークを有する固形分を含有する金属コロイド液を用いれ
ば、100℃程度の低温で加熱しても実用上充分な導電
性被膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至
った。上記発熱ピークは複数あってもよく、そのうち最
も低温の発熱ピークが300℃以下であれば、他のピー
クが300℃を超えてもかまわない。
【0012】上記分散媒としては、水及び/又は水溶性
溶剤が好ましい。分散媒として水及び/又は水溶性溶剤
を用いることにより、金属コロイド液を加熱焼成して導
電性被膜を製造する際、溶剤臭が強くならず、環境にも
悪影響が少ない。より好ましくは水である。
【0013】本発明の金属コロイド液を製造する際には
分散剤を用いる。上記分散剤としては、分散媒に溶解し
分散効果を示すものであれば特に限定されず、例えば、
クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸
三リチウム、リンゴ酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウ
ム、グリコール酸ナトリウム等のイオン性化合物;ドデ
シルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリ
ウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、パーフル
オロアルキルエチレンオキシド付加物等の界面活性剤;
ゼラチン、アラビアゴム、アルブミン、ポリエチレンイ
ミン、ポリビニルセルロース類、アルカンチオール類等
の高分子物質等を挙げることができる。これらの分散剤
は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよ
い。
【0014】本発明の金属コロイド液を製造する方法と
しては特に限定されず、例えば、まず金属粒子を含む溶
液を作製し、次いで、その溶液の洗浄を行う方法等を挙
げることができる。上記金属粒子を含む溶液を作製する
方法としては化学還元法による方法であれば特に限定さ
れず、例えば、分散剤を用いて溶液中に分散させた金属
塩又は金属イオンを、何らかの方法により還元させれば
よい。
【0015】上記金属塩としては、分散媒中に溶解でき
何らかの手段で還元できるものであれば特に限定され
ず、例えば、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酸化銀、酢酸
銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀等の銀塩;塩化金酸、
塩化金カリウム、塩化金ナトリウム等の金塩;塩化白金
酸、塩化白金、酸化白金、塩化白金酸カリウム等の白金
塩;硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウ
ム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム等のパラジウム塩
等を挙げることができる。これらの金属塩は単独で用い
てもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】上記金属塩を還元させる方法としては特に
限定されず、還元剤を用いて還元させてもよく、紫外線
等の光、電子線、熱エネルギー等を用いて還元させても
よい。上記還元剤としては分散媒に溶解し、上記金属塩
を還元させることができるものであれば特に限定され
ず、例えば、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタ
ノールアミン、トリエタノールアミン、フェニドン、ヒ
ドラジン等のアミン化合物;水酸化ホウ素ナトリウム、
ヨウ化水素、水素ガス等の水素化合物;一酸化炭素、亜
硫酸等の酸化物;硫酸第一鉄、酸化鉄、フマル酸鉄、乳
酸鉄、シュウ酸鉄、硫化鉄、酢酸錫、塩化錫、二リン酸
錫、シュウ酸錫、酸化錫、硫酸錫等の低原子価金属塩;
ホルムアルデヒド、ハイドロキノン、ピロガロール、タ
ンニン、タンニン酸、サリチル酸、D−グルコース等の
糖等の有機化合物等を挙げることができる。上記の各種
還元剤を使用する際には、更に、光や熱を加えて還元反
応を促進させてもよい。
【0017】上記金属塩、分散剤及び還元剤を用いて金
属粒子を含む溶液を製造する方法としては、例えば、上
記金属塩を純水等に溶かして金属塩溶液を調製し、その
金属塩溶液を徐々に分散剤と還元剤とが溶解した水溶液
中に滴下する方法等を挙げることができる。
【0018】このようにして得られた金属粒子を含む溶
液中には、金属粒子の他に、還元剤の残留物や分散剤が
存在しており、液全体の電解質濃度が高くなっている。
このような状態の液は、金属粒子の凝析が起こり、沈殿
しやすい。上記金属粒子を含む溶液を洗浄して余分な電
解質を取り除くことで沈殿を抑制することができる。
【0019】上記洗浄の方法としては、例えば、得られ
た金属粒子を含む液を一定期間静置し、生じた上澄み液
を取り除いた上で、純水を加えて再度攪拌し、更に一定
期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度か繰
り返す方法、上記の静置の代わりに遠心分離を行う方
法、限外濾過装置やイオン交換装置等により脱塩する方
法等を挙げることができる。なかでも、脱塩する方法が
好ましい。また、脱塩等した液は、適宜濃縮してもよ
い。
【0020】複数の金属からなる混合金属コロイド液を
作製する方法としては特に限定されず、例えば、銀とそ
の他の金属とからなる混合金属コロイド液を作製する場
合には、上記の方法にて、銀コロイド液とその他の金属
の金属コロイド液とを別々に作製し、その後混合して混
合金属コロイド液としてもよく、銀イオン溶液とその他
の金属イオン溶液とを混合し、その後に還元してもよ
い。
【0021】本発明の金属コロイド液を適当な基材上に
塗布し、乾燥させ、加熱することにより導電性被膜を製
造することができる。本発明の金属コロイド液を加熱焼
成することにより、得られる導電性被膜の導電性は一層
高まる。上記加熱方法としては特に限定されず、例え
ば、オーブン中で加熱する方法の他、誘電加熱法、高周
波加熱法等を挙げることができる。
【0022】本発明の金属コロイド液を塗布し、100
℃程度の低温で加熱して得た導電性被膜は、従来の金属
コロイド液を100℃程度で加熱して得た導電性被膜に
比べて導電性が高く、ブラウン管の電磁波遮蔽、建材又
は自動車の赤外線遮蔽、電子機器や携帯電話の静電気帯
電防止剤、曇りガラスの熱線、回線基板やICカードの
配線、樹脂に導電性を付与するためのコーティング、ス
ルーホール、回路自体等に用いることができる。本発明
の金属コロイド液からなる導電性被膜もまた、本発明の
1つである。
【0023】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるもの
ではない。
【0024】(実施例1) <銀コロイド液の作製>分散剤としてクエン酸三ナトリ
ウム二水和物(和光純薬工業社製)17.1gと、還元
剤としてタンニン酸(和光純薬工業社製)0.70gと
を水280gに溶解させた水溶液に、10Nの水酸化ナ
トリウム水溶液3mLを加え、次いで室温雰囲気中でマ
グネティックスターラーにより攪拌しながら硝酸銀(和
光純薬工業社製)1.97gを含む水溶液3mLを滴下
して銀粒子を含む溶液を得た。得られた銀粒子を含む溶
液を限外濾過器(ADVANTEC社製、UHP−62
K)とフィルター(ADVANTEC社製、ウルトラフ
ィルターQ0500)とを用いて脱塩した。CM−20
S(東亜電波工業社製)で測定した濾液の電気導度が1
00μS/cm以下になるまで脱塩を繰り返した後20
mLまで濃縮し、この濃縮液を3000rpmで10分
間遠心分離した。このとき、下層の沈殿と上層の分散液
に分離するが、この上層の分散液を銀コロイド液として
採取した。
【0025】<導電性被膜の作製>コロナ処理を行った
ポリイミドフィルム表面に得られた銀コロイド液を刷毛
で塗布し、乾燥した。所望の厚さの導電性被膜を得るた
めに、塗布と乾燥とを繰り返し行った。その後、200
℃で20分間又は100℃で20分間の加熱焼成を行
い、導電性被膜を形成した。得られた導電性被膜の厚さ
は、導電性被膜の重量を金属の比重で除し、更に導電性
被膜の幅及び長さで除して求めた。
【0026】<固形分の調製>銀コロイド液を適当な容
器に入れ、デシケーター中で恒量になるまで常温で乾燥
させ、銀コロイド液の固形分を得た。
【0027】(実施例2)タンニン酸0.70gの代り
に硫酸第一鉄七水和物(和光純薬工業社製)6.46g
を用い、水酸化ナトリウム水溶液を加えなかったこと以
外は実施例1と同様に銀コロイド液、導電性被膜及び固
形分を得た。
【0028】(比較例1)クエン酸三ナトリウム二水和
物17.1gの代りにグリシン(和光純薬工業社製)
1.75gを用い、タンニン酸(和光純薬工業社製)の
使用量を1.12gとしたこと以外は実施例1と同様に
金属コロイド液、導電性被膜及び固形分を得た。
【0029】(比較例2)クエン酸三ナトリウム二水和
物17.1gの代わりにグリシン1.75gを用い、タ
ンニン酸の使用量を1.49gとし、10Nの水酸化ナ
トリウム水溶液の使用量を1mLとしたこと以外は実施
例1と同様にして銀コロイド液、導電性被膜及び固形分
を得た。
【0030】<評価>実施例1、2及び比較例1、2で
得た導電性被膜及び固形分を用いて以下の評価を行っ
た。結果を表1及び表2に示した。 (1)固形分の示差熱分析 得られた固形分について、エアー雰囲気下150mL/
minの流量、昇温速度10℃/minの測定条件で示
差熱分析(DTA)を行い、発熱ピークがみられた最も
低い温度(以下、最低DTA発熱ピーク温度ともいう)
を求めた。測定装置はセイコー電子工業社製TG/DT
A300を用いた。実施例1で得られた固形分のDTA
チャートを図1に、実施例2で得られた固形分のDTA
チャートを図2に、比較例1で得られた固形分のDTA
チャートを図3に示した。
【0031】(2)被膜の導電性 導電性被膜の電気抵抗をダブルブリッジ2769(横河
M&C社製)により測定し、体積抵抗率を下記式を用い
て算出した。
【0032】ρ=Rwt/l ρ:体積抵抗率(Ω・cm) R:測定端子間の被膜の電気抵抗(Ω) w:測定端子間の被膜の幅(cm) t:測定端子間の被膜の厚さ(cm) l:測定端子間の被膜の長さ(cm)
【0033】(3)被膜の強靱性 導電性被膜が塗布されたフィルムを90°折り曲げて戻
した後のフィルム状態を目視で観察し以下の基準で評価
した。 〇:導電性被膜に割れや剥がれは認められなかった ×:導電性被膜に割れや剥がれが認められた
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】表1、表2より、実施例1、2で作製した
銀コロイド液は、いずれもその固形分の最低DTA発熱
ピーク温度が300℃以下であり、100℃で加熱した
被膜は高い導電性を示した。一方、比較例1、2で作製
した銀コロイド液は、その固形分の最低DTA発熱ピー
ク温度が認められず、または300℃を越えており10
0℃で加熱した被膜の導電性は低かった。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、低温で加熱して高導電
性でありかつ強靱な被膜を得ることができる金属コロイ
ド液及びそれを用いてなる導電性被膜を提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた固形分のDTAチャートで
ある。
【図2】実施例2で得られた固形分のDTAチャートで
ある。
【図3】比較例1で得られた固形分のDTAチャートで
ある。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属粒子を主成分とする固形分と分散媒
    とからなる金属コロイド液であって、前記固形分は、昇
    温速度10℃/minの条件で示差熱分析を行った場合
    に、300℃以下に発熱ピークを有するものであること
    を特徴とする金属コロイド液。
  2. 【請求項2】 分散媒は水であることを特徴とする請求
    項1記載の金属コロイド液。
  3. 【請求項3】 金属粒子は金又は銀からなることを特徴
    とする請求項1又は2記載の金属コロイド液。
  4. 【請求項4】 請求項1、2又は3記載の金属コロイド
    液からなることを特徴とする導電性被膜。
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