JP2003170173A - 貯炭場排水の処理方法 - Google Patents

貯炭場排水の処理方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】石炭火力発電所の貯炭場排水を処理するに際し
て、懸濁物質の沈降速度を高め、処理水の濁度を低減す
ることができる貯炭場排水の処理方法を提供する。 【解決手段】貯炭場排水のpHを4以下に調整したのち、
凝集剤を添加して固液分離することを特徴とする貯炭場
排水の処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、貯炭場排水の処理
方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、石炭火力発
電所の貯炭場排水を処理するに際して、懸濁物質の沈降
速度を高め、処理水の濁度を低減することができる貯炭
場排水の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】石炭火力発電所において、岸壁に接岸さ
れた船舶から荷揚げされた石炭は、貯炭場に一時貯留さ
れたのち、ボイラーで燃料として使用される。貯炭場が
屋外に設けられている場合、降雨時に石炭と接触した雨
水がヤード排水として発生する。また、炭塵の飛散防止
のための散水も、少量ではあるが貯炭場排水の発生源と
なる。貯炭場排水は、石炭粉を含有する黒色濁質排水で
あり、懸濁物質濃度として2,000mg/L程度まで増
大する場合がある。貯炭場排水は、側溝や底部の集水パ
イプで集められ、排水ピットに一時貯留して、粒径の大
きな石炭粒子を沈降させる。しかし、微細な石炭粒子は
沈降せずに排水中に含まれるので、貯炭場排水は黒く着
色し、懸濁物質の除去が必要になる。貯炭場排水に含ま
れる懸濁物質の大部分は石炭の微粒子であるが、石炭中
の不純物である鉄、アルミニウムなどの金属分が微量に
含まれる場合もある。貯炭場排水は、通常は中性である
が、石炭の種類により、硫酸分などが多い場合には酸性
になり、カルシウム分やマグネシウム分が多い場合には
アルカリ性になる。貯炭場排水のpHの範囲は、通常は6
〜8程度であるが、炭種により4〜10程度まで変動す
る場合がある。貯炭場排水中の懸濁物質を除去するため
に、さまざまな方法が検討されている。例えば、特開平
9−75949号公報には、貯炭場排水を環境基準を満
たす清浄な処理水として系外へ排出し、許容量を超える
大雨のときでも貯炭場に蓄えられた石炭を濡らさないで
済ませることができる揚運炭設備用水処理施設として、
貯炭場排水を中和するための中和槽を設け、中和槽で中
和された排水に凝集剤を加えて固形浮遊物を凝集分離す
るための凝集設備を設けた水処理施設が提案されてい
る。また、貯炭場排水の処理方法として、第一、第二及
び第三沈殿池を設け、沈降促進剤として、硫酸バンド
を、第一、第二沈殿池出口に注入して清澄水としたの
ち、さらに第三沈殿池出口に設けたフィルターを兼ねる
溜桝を経由して外海へ放流する方法(火力原子力発電、
29巻、1号、53頁、1978年)や、自然沈殿及び
ろ過を行い、処理水を回収再利用する方法(火力原子力
発電、43巻、10号、114頁、1992年)が報告
されている。従来技術では、降雨状態によっては、懸濁
物質を除去しきれないことがあり、処理水を散水や洗浄
などに再利用する場合、散水ノズルに摩耗や閉塞が生じ
たり、ろ過器圧損が急上昇して短時間でろ過不能になる
などの問題があった。このために、より確実に固液分離
できる方法が求められていた。また、敷地スペース上の
制約から、沈殿池の設置面積を変えずに固液分離性能を
向上させたいという要望が出されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、石炭火力発
電所の貯炭場排水を処理するに際して、懸濁物質の沈降
速度を高め、処理水の濁度を低減することができる貯炭
場排水の処理方法を提供することを目的としてなされた
ものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、貯炭場排水のpH
を4以下に調整したのち、凝集剤を添加することによ
り、懸濁物質の凝集により生成したフロックの沈降速度
を高め、処理水の濁度を低減することが可能となること
を見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至
った。すなわち、本発明は、(1)貯炭場排水のpHを4
以下に調整したのち、凝集剤を添加して固液分離するこ
とを特徴とする貯炭場排水の処理方法、及び、(2)pH
を2〜3に調整する第1項記載の貯炭場排水の処理方
法、を提供するものである。さらに、本発明の好ましい
態様として、(3)pHを4以下に調整し、5分以上経過
したのちに、凝集剤を添加する第1項記載の貯炭場排水
の処理方法、及び、(4)凝集剤として、無機凝集剤を
添加し、pHを6〜7.5に調整したのち、さらに高分子
凝集剤を添加する第1項記載の貯炭場排水の処理方法、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の貯炭場排水の処理方法に
おいては、貯炭場排水のpHを4以下に調整したのち、凝
集剤を添加して固液分離する。貯炭場排水のpHは、2〜
3に調整することがより好ましい。貯炭場排水のpHを4
以下に調整して凝集剤を添加することにより、凝集した
フロックの沈降速度を高め、上澄水の濁度を低下させる
ことができる。本発明方法において、貯炭場排水のpH調
整に用いる酸に特に制限はなく、例えば、硫酸、塩酸、
硝酸、リン酸などを挙げることができる。これらの中
で、硫酸及び塩酸は、排水に添加された酸に起因する環
境の富栄養化を生ずるおそれがないので、好適に用いる
ことができる。貯炭場排水のpHを4以下に調整したのち
凝集剤を添加することにより、凝集したフロックの沈降
速度が大となり、上澄水の濁度が低下する機構は明らか
ではないが、式[1]で表される反応により排水中の炭
酸イオンが除去されることと、排水中に鉄やアルミニウ
ムが存在する場合は、式[2]、式[3]で表される反
応により、鉄やアルミニウムがイオン化して水に溶解
し、凝集作用に寄与することによると推定される。 HCO3 - + H+ → CO2 + H2O …[1] Fe + 2H+ → Fe2+ + H2 …[2] 2Al + 6H+ → 2Al3+ + 3H2 …[3] 本発明方法においては、貯炭場排水のpHを2〜3に調整
することがより好ましい。pHを2未満に調整するために
は多量の酸を必要とし、さらに処理水を中和するに必要
なアルカリの量も増えるので、経済性が損なわれるおそ
れがある。貯炭場排水のpHを3以下に調整することによ
り、式[1]〜[3]で表される反応を短時間で確実に
進めることができる。
【0006】本発明方法においては、貯炭場排水のpHを
4以下に調整し、5分以上経過したのちに、凝集剤を添
加することが好ましい。貯炭場排水のpHを4以下に調整
しても、経過時間5分未満で凝集剤を添加すると、式
[1]〜[3]で表される反応が十分に進行していない
ので、凝集フロックの沈降速度を高める効果と、上澄水
の濁度を低下させる効果が、十分に発現しないおそれが
ある。pHを3以下とし、式[1]〜[3]で表される反
応を5分以上進めることによって、pH調整を行わない場
合に比べて、凝集フロックの沈降速度は約2倍となり、
上澄水の濁度を低下させることができる。貯炭場排水の
pH4以下への調整から凝集剤添加までの経過時間の上限
には、本発明方法の効果の発現の面からは特に制限はな
いが、経過時間が長くなると処理設備が大型化するの
で、実用性の面からは2時間以下であることが好まし
い。本発明方法においては、凝集剤として、無機凝集剤
を添加し、pHを6〜7.5に調整したのち、さらに高分
子凝集剤を添加することが好ましい。無機凝集剤を添加
することにより、石炭の微粉末からなる懸濁粒子の表面
荷電を中和して、微小フロックを形成することができ
る。使用する無機凝集剤に特に制限はなく、例えば、硫
酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニ
ウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄などを挙げることができ
る。本発明方法において、無機凝集剤の添加量に特に制
限はないが、10〜500mg/Lであることが好まし
く、30〜250mg/Lであることがより好ましい。無
機凝集剤の添加量が10mg/L未満であると、凝集効果
が不足するおそれがある。無機凝集剤の添加量は500
mg/L以下で通常は十分な凝集効果が得られ、無機凝集
剤の添加量が500mg/Lを超えると、汚泥の発生量が
過大となるおそれがある。
【0007】本発明方法においては、無機凝集剤を添加
するとともにアルカリ剤を添加して、pHを調整すること
が好ましい。pH範囲は、アルミニウム系無機凝集剤を用
いた場合はpH6〜8であることが好ましく、鉄系無機凝
集剤を用いた場合はpH4〜10であることが好ましく、
いずれの場合もpH6〜7.5であることがより好まし
い。無機凝集剤を添加し、pH調整することにより、荷電
中和による凝集効果と、不溶性水酸化物によるフロック
化効果を、十分に発現することができる。pH調整に用い
るアルカリ剤に特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。本
発明方法に用いる高分子凝集剤は、アニオン性高分子凝
集剤又はノニオン性高分子凝集剤であることが好まし
い。アニオン性高分子凝集剤としては、例えば、ポリア
クリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解
物、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンス
ルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。ノニオ
ン性高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミ
ドなどを挙げることができる。これらの高分子凝集剤
は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以
上を組み合わせて用いることもできる。使用する高分子
凝集剤の種類と添加量に特に制限はないが、それぞれの
系について、ジャーテストによりあらかじめ適切な高分
子凝集剤とその最適添加量を求めることが好ましい。高
分子凝集剤の添加量は、通常は0.1〜10mg/Lであ
ることが好ましく、0.5〜5mg/Lであることがより
好ましい。無機凝集剤の添加量が少ない場合は、懸濁物
質表面の吸着点が少ないので、カルボキシル基を多数有
するアニオン性高分子凝集剤を用いることが好ましい。
無機凝集剤の添加量が多い場合は、吸着点が多く、アニ
オン性高分子凝集剤では吸着が必要以上に起こりやすい
ので、ノニオン性高分子凝集剤を用いることが好まし
い。高分子凝集剤を添加したのち、5分以上ゆるやかに
撹拌して凝集作用により粗大フロックを形成することが
好ましい。
【0008】本発明方法において、貯炭場排水のpHを4
以下とするpH調整、無機凝集剤の添加、アルカリ剤によ
るpH調整、高分子凝集剤の添加を行う装置に特に制限は
なく、例えば、すべての操作を同一の反応槽で行うこと
ができ、あるいは、pH4以下への調整をpH調整槽で行
い、無機凝集剤の添加、アルカリ剤によるpH調整を第1
の凝集槽で行い、高分子凝集剤の添加を第2の凝集槽で
行うこともできる。本発明方法においては、凝集剤の添
加により形成された凝集フロックを固液分離により除去
する。固液分離方法に特に制限はなく、例えば、沈殿処
理、ろ過、膜分離などを挙げることができる。沈殿処理
方法に特に制限はなく、例えば、沈殿槽などを用いる自
然沈殿処理と遠心分離機などを用いる強制沈殿処理のい
ずれをも行うことができる。ろ過方法にも特に制限はな
く、例えば、重力式、圧力式、サイフォン式、上向流
式、ろ材循環式、連続ろ過式などのろ過器と、アンスラ
サイト、砂、けい砂、砂利、活性炭、プラスチックなど
のろ材を用いてろ過することができる。膜分離方法にも
特に制限はなく、例えば、精密ろ過膜、限外ろ過膜など
を用いて膜分離することができる。図1は、本発明方法
の実施の一態様の工程系統図である。本態様において
は、貯炭場排水をpH調整槽1に導入し、酸を添加してpH
を4以下に調整する。pH4以下の状態で5分以上保った
のち、被処理水を第1の凝集槽2に送り、無機凝集剤と
アルカリ剤を添加して急速撹拌下に凝集を行い、次いで
第2の凝集槽3で高分子凝集剤を添加して、緩速撹拌下
に粗大な凝集フロックを形成させる。次に、粗大な凝集
フロックが形成された被処理水を沈殿槽4に送り、懸濁
物質を沈降させ、槽底から沈降した汚泥を引き抜き、上
澄水を処理水として排出する。本発明方法によれば、貯
炭場排水のpHを4以下に調整するという簡単な一工程を
加えることにより、従来の処理方法に比べて、凝集フロ
ックの沈降速度を格段に高め、上澄水の濁度を低下さ
せ、効率的に貯炭場排水を処理し、処理設備を小型化す
ることができる。
【0009】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限
定されるものではない。 実施例1 排水ピットで粒径の大きい石炭粒子を沈降させて除去し
たのちの貯炭場排水について、処理を行った。この貯炭
場排水は、pH7.0、懸濁物質300mg/Lであった。
貯炭場排水1Lを1Lビーカー(深さ11cm)にとり、
硫酸を添加してpH3.0に調整し、5分間撹拌したの
ち、液体硫酸バンド(Al238重量%)50mgを添加
し、直ちに水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.9
に調整した。次いで、高分子凝集剤[栗田工業(株)、ク
リフロックPA331、アニオン性]1mgを添加し、5
分間撹拌した。撹拌停止後、直ちに撹拌羽根を引き上げ
静置した。凝集し、粗大化したフロックの大部分がビー
カー底部に沈殿した時間を計測した。沈降長さを10cm
とし、沈殿に要した時間から沈降速度を求めた。沈殿に
要した時間は12秒であり、フロックの沈降速度は30
m/hであった。フロックの沈降開始15分後の上澄水
について、JIS K 0101 9.1にしたがって、濁
度を測定したところ、1.2度であった。液体硫酸バン
ドの添加量を100mg又は150mgとして、同じ操作を
繰り返した。液体硫酸バンド100mgを添加したとき、
フロックの沈降速度は20m/hであり、上澄水の濁度
は1度未満であった。液体硫酸バンド150mgを添加し
たとき、フロックの沈降速度は15m/hであり、上澄
水の濁度は1度未満であった。 実施例2 貯炭場排水に硫酸を添加してpH2.0に調整した以外
は、実施例1と同様に操作して、フロックの沈降速度と
上澄水の濁度を測定した。 実施例3 貯炭場排水に硫酸を添加してpH4.0に調整した以外
は、実施例1と同様に操作して、フロックの沈降速度と
上澄水の濁度を測定した。 比較例1 貯炭場排水に硫酸を添加してpH5.0に調整した以外
は、実施例1と同様に操作して、フロックの沈降速度と
上澄水の濁度を測定した。 比較例2 貯炭場排水に硫酸を添加することなくpH7.0のまま処
理した以外は、実施例1と同様に操作して、フロックの
沈降速度と上澄水の濁度を測定した。実施例1〜3及び
比較例1〜2の結果を、第1表に示す。
【0010】
【表1】
【0011】第1表に見られるように、貯炭場排水のpH
を2.0〜4.0に調整した実施例1〜3と、貯炭場排水
のpHが5.0〜7.0である比較例1〜2を比べると、同
一の液体硫酸バンドの添加量については、実施例1〜3
の方がフロック沈降速度が速く、上澄水の濁度も小さ
い。
【0012】
【発明の効果】本発明方法によれば、凝集処理工程の前
に酸処理工程を付加することにより、凝集剤の添加量が
同一のとき、フロックの沈降速度が約2倍となり、上澄
水の濁度も大幅に低下する。その結果、沈殿処理効率を
高めた貯炭場排水処理施設の運転が可能となり、処理設
備を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明方法の実施の一態様の工程系統
図である。
【符号の説明】
1 pH調整槽 2 第1の凝集槽 3 第2の凝集槽 4 沈殿槽
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菅野 剛 福島県原町市金沢字大船サク54 東北電力 株式会社原町火力発電所内 (72)発明者 佐藤 武 東京都新宿区西新宿三丁目4番7号 栗田 工業株式会社内 Fターム(参考) 4D015 BA19 BA21 BB12 CA20 DA03 DA04 DA05 DA13 DA16 DA39 DB08 DB12 DB30 DC06 DC08 EA13 EA16 EA17 EA32 EA35 EA36 EA37

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】貯炭場排水のpHを4以下に調整したのち、
    凝集剤を添加して固液分離することを特徴とする貯炭場
    排水の処理方法。
  2. 【請求項2】pHを2〜3に調整する請求項1記載の貯炭
    場排水の処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010119977A (ja) * 2008-11-21 2010-06-03 Hyuga Seirensho:Kk 石炭微粒子の分離方法
JP2013220412A (ja) * 2012-04-19 2013-10-28 Jfe Steel Corp ヤード排水処理方法
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