JP2003166041A - 架空送電線用超厚亜鉛めっき鋼線とその製造方法 - Google Patents
架空送電線用超厚亜鉛めっき鋼線とその製造方法Info
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Abstract
優れた信頼性の高い架空送電線用亜鉛めっき鋼線とその
製造方法を提供する。 【解決手段】 溶融亜鉛めっき層の付着量が520g/m2 以
上、Fe−Zn合金層厚さが20〜30μm で、外層部が純亜鉛
層で構成され、めっき表面層粗さがRmax50μm以下とす
る。製造に際しては、溶融亜鉛めっき槽に鋼線を連続的
に浸漬し、所定速度で引き上げて溶融めっき層が凝固し
てから、これを1回または複数回繰り返す。
Description
亜鉛めっき鋼線とその製造方法、特に表面性状ならびに
加工性良好な架空送電線用亜鉛めっき鋼線とその製造方
法に関する。
れた電力搬送用の電線と雷遮蔽用の架空地線から構成さ
れている。電線は、通常10本程度の鋼線を撚った抗張力
用芯線の周りにアルミニウム等の導線を巻き付けて構成
される。また、架空地線には鋼より線が使用されること
が多い。
があり、亜鉛めっき鋼線と呼ばれている。例えば、ASTM
B498 には、Class Aとして亜鉛付着量260g/m2 以上、
Class Bとして亜鉛付着量520g/m2 以上、Class Cとし
て亜鉛付着量780g/m2 以上の亜鉛めっき鋼線が規定され
ている。
は、架空送電線に使用する鋼芯アルミニウムより線の鋼
芯線として、例えば線径3.2mm の場合、鋼線の溶融亜鉛
めっきあるいは電気亜鉛めっきによる亜鉛付着量は245g
/m2 以上であることが規定されている。
電線用亜鉛めっき鋼線としては実際に各種のものが使用
されていることが判る。また、JIS G3548 では、亜鉛め
っき鋼線としては、例えば線径3.2 〜4.Omm の場合、用
途によって250g/m2 以上、230g/m2 以上あるいは50g/m2
以上というように規定されている。同じく、JIS G3537
においては、亜鉛付着量を薄めっき、厚めっき、特厚め
っきに区分し、例えば線径3.2mm の場合、薄めっきを亜
鉛付着量160g/m2 以上、厚めっきを亜鉛付着量230g/m2
以上とし、特厚めっきについては規定していない。
は、大気中で使用されることから、所定の耐食性が必要
とされるからである。また、架空送電線用の鋼線は、複
数の細い線を撚り合わせて太い撚り線として用いること
から、めっき層も含めて加工性に優れていることが求め
られる。そのため、上述のJIS C3110 の規格によれば、
巻き付け性として、溶融亜鉛めっきによるめっき鋼線で
は鋼線の径の15倍、電気亜鉛めっきによるめっき鋼線で
は鋼線の径の5倍の直径を有する円筒に緊密に6回以上
巻き付けた時にめっき層に著しい亀裂が生じないことが
求められている。
れは、より線としたときの線同士の密着性や電気的な性
能を高めるためであり、また、機械的外力によるめっき
層の剥離の危険性を避けるためである。
に対するめっき層は、通常、その効果とコストを考慮し
て、溶融亜鉛めっきによって形成されている。ここに、
鋼線に施される溶融亜鉛めっき層の構造を説明すると、
図1に模式的に示すように、基体である鋼素地10の上に
Fe−Zn合金層12が形成され、その上にZn層、例えば純Zn
層14が設けられた構造となっている。電気亜鉛めっきの
場合、この合金層12は生成しない。合金層12およびその
外層部である純Zn層を含めた被覆層をめっき層と称す
る。
なって、酸性雨等に代表されるように、大気中における
各種腐食要因の増加が見られ、それに対して架空送電線
にあっても、更なる耐食性の改善が求められるようにな
ってきている。
工性についても更なる改善が求められるとともに、送電
線の工事時に受ける機械的ダメージを極力小さくするこ
とが求められる。
れるようになり、めっき鋼線にも一層優れた経済性とそ
の信頼性の更なる改善が求められるようになってきてい
る。ここに、本発明の課題は、より安価な手段で製造さ
れる、耐食性および加工性、耐剥離性に優れた信頼性の
高い架空送電線用亜鉛めっき鋼線とその製造方法を提供
することである。
電を行う条件下での耐食性に優れ、高速撚り線加工に際
して求められる加工性を満足し、さらに安価な手段によ
り製造可能な信頼性の高い架空送電線用亜鉛めっき鋼線
とその製造方法を提供することである。
亜鉛めっきを行う場合、その厚さは高々300g/m2 であ
り、耐食性を改善するには十分ではない。しかしなが
ら、単に耐食性を改善するのであれば、めっき層の厚さ
を厚くすればよいが、めっき層を厚くすると今度は加工
性が十分でなくなるという二律背反的な問題がある。
めっき層を厚くできるが、溶融亜鉛めっきの場合、溶融
めっき浴からの引上げ速度を大きくしても厚膜化には限
度があるからである。
/m2 を超える溶融亜鉛めっきについては何ら規定してい
ない。これは実際の問題としてそのような特厚めっきは
製造できないのが実情であるためである。現在、溶融亜
鉛めっき法による架空送電線用亜鉛めっき鋼線として
は、通常200 〜300g/m2 のめっき付着量の鋼線が使用さ
れているが、本発明者らの実験によれば、そのような溶
融亜鉛めっき層を単純に厚膜化したときには、めっき浴
からの引き上げ速度を単純に増加させることで厚膜化を
図っていることから、その厚膜化、つまり引き上げ速度
がある限界を越えると急激にその表面粗さが増大して、
それに伴いめっき未着、コブ状の付着などの表面欠陥発
生率も急激に増大して実用化できないことが判明した。
鉛めっき層厚さとそのときに表面粗さとの関係を示すグ
ラフである。溶融亜鉛めっき層厚さが440g/m2 を越える
と表面粗さが急速に増大しているのが分かる。このよう
に表面粗さが大きくなると、実用的とは言えない。通
常、表面粗さは、Rmaxで50μm 以下とするのが好まし
い。
鉛めっき層厚さが440g/m2 を越えると、表面欠陥の発生
が多くなることが分かる。このように、従来にあってFe
−Zn合金層厚さを20μm 未満として、例えば付着量600g
/m2 を得るには、純亜鉛部の付着量を450g/m2 以上確保
することが必要となり、めっき表面粗さRmax50μm 超と
なる。
と、架空電線の撚り工程でめっきの割れや剥離が発生す
るようになる。ここに、本発明者らは、かかる課題を解
決するために、種々検討を重ね、その経済性を考えた場
合、所要の耐食性を改善するためには、溶融亜鉛めっき
が有効であることに着目し、溶融亜鉛めっきを厚膜化す
ること、およびそのように厚膜化したときの加工性の劣
化 (表面粗さの増加) を如何に改善するかについてさら
に種々検討を重ねた。
う場合の冶金学的構造を解析すべく、その生成機構を検
討した。すなわち、溶融亜鉛めっき法では、こうした厚
亜鉛めっき鋼線を安定して製造するのは、使用するめっ
きラインの構成 (亜鉛めっき槽の浸漬距離等) に制約さ
れて一般に非常に困難とされている。
のめっき層は、図1に示すごとく、Fe−Zn合金層とZn
層、例えば純Zn層の2層から構成される。以下、純亜鉛
層として説明する。
鋼線と溶融亜鉛との間での合金化反応で形成され、均一
に被膜形成される。なお、合金層厚さは亜鉛めっき槽内
の浸漬時間と溶融亜鉛浴温度で決定される。
上げる過程で鋼線に付着して引き揚げられ、合金層の上
に層状に固まり、外層としての純亜鉛層を形成する。純
亜鉛層は、層厚さが薄い場合は比較的に均一に形成され
るが、厚くなるに従って不均一化する傾向にある。ま
た、ドロス等の不純物をめっき層に巻き込む危険性があ
る。
め、硬度(HV:140)で非常に硬いが、純亜鉛層は硬度(HV:
55) で延性に富む。従って、Fe−Zn合金層が厚くなりす
ぎると架空線の撚り工程で合金層の割れが発生する危険
性がある。
めに、溶融亜鉛めっき層に生じるFe−Zn合金層の厚さを
厚くしためっき層を形成して、そのときの溶融亜鉛めっ
き層厚さと表面性状との関係を求めたところ、図2およ
び図3の点線で示す結果が得られた。すなわち、Fe-Zn
合金層厚さを17μm から25μm へと増加させて溶融亜鉛
めっきを行ったところ、合計亜鉛めっき層厚さを600g/m
2 にまて増大させても表面粗さは増加しないことを見い
だした。
規格の特厚めっき厚さを超えており、本明細書では、
「超厚」めっき層と言う。かかる知見は、Fe-Zn 合金層
厚さを従来のような17μm 程度から25μm 程度にまで増
加させることで、亜鉛めっき層を飛躍的に増加できるこ
とを意味するのである。
鉛めっき鋼線を溶融亜鉛めっき法で製造するためには、
Fe−Zn合金層と純亜鉛層に適切な比率があり、めっき付
着量≧520g/m2 の溶融亜鉛めっき鋼線の場合、Fe−Zn合
金層厚さが20〜30μm であることが重要であることを知
り、本発明を完成した。
融亜鉛めっき鋼線であって、当該めっき層におけるFe−
Zn合金層厚さが20〜30μm で、外層部が亜鉛層で構成さ
れ、同じく当該めっき層のめっき表面層粗さがRmax50μ
m 以下であることを特徴とする架空送電線用亜鉛めっき
鋼線。
漬し、所定速度で引き上げて第1溶融めっき層を形成
し、該溶融めっき層が凝固してから、得られためっき鋼
線を溶融亜鉛めっき槽に浸漬し、所定速度で引き上げる
操作を1回または2回以上繰り返すことを特徴とする、
上記(1) 記載の架空送電線用亜鉛めっき鋼線の製造方
法。
き付着量が520g/m2 以上、680g/m2以下である。なお、
上記Fe−Zn合金層厚さ20〜30μm は、めっき付着量換算
で150 〜215g/m2 である。同じく、外層部を構成する亜
鉛層、例えば純亜鉛層は、その残部でめっき付着量換算
で450 〜385g/m2 である。
に具体的に説明する。本発明の特徴とするところは、架
空送電線用亜鉛めっき鋼線において、合金層の厚さを20
〜30μm とすることで、めっき付着量520g/m2 以上を確
保することにある。
さを20〜30μm とするが、これは、繰り返し溶融亜鉛め
っきを行うことで溶融亜鉛めっき層の厚膜化と同時に実
現するのである。
き鋼線を製造する方法について簡単に説明する。まず、
所定線径の鋼線を用意し、これに溶融亜鉛めっきを行う
が、そのときの浴通過速度 (引き上げ速度) とめっき厚
さとの関係を予め求めておき、目的厚さのめっきが何回
の浸漬で実現されるか予測し、そのときの温度条件と合
計浸漬時間との関係から、合金層の形成厚さを予測す
る。簡単に云えば、浸漬( めっき)回数に応じて合金層
の厚さは増大するから、所定厚さの合金層が確保できる
最少回数で目標とするめっき層厚さが達成できる浴通過
速度を求めることで、所定の通過速度、および浸漬回数
が決定される。なお、めっき処理自体はすでに慣用の操
作を繰り返せばよい。本発明において特にその点におい
て制限されることはない。
さらに具体的に説明する。
架空送電線用鋼線(直径3.15mm)を用意し、これに通常
の溶融亜鉛めっき槽を使用して、溶融亜鉛めっきを行っ
た。めっき槽の通過速度は29.5m/min.であり、そのとき
のめっき浴の温度は445 ℃であった。
線の直径の5倍径の円筒」を用いて巻付け試験を行っ
た。そのときのめっき層の割れの有無により加工性を評
価した。また、合金層厚さは光学顕微鏡により測定し、
表面粗さは表面粗さ計により測定した。
線の巻付け試験は「鋼線の直径の15倍径の円筒」を用い
て行うが、本発明の場合には、より過酷な試験条件とな
る「鋼線の直径の5倍径の円筒」を用いて行った。
まり引き上げ速度を36.5m/min.に上げて590g/m2 の付着
量を確保した場合、および本発明に準じて複数回数の浸
潰を行うことで600g/m2 の付着量を確保した場合を示
す。
明によれば、亜鉛付着量590g/m2 以上であって、めっき
層の割れが見られず、表面粗さRmaxも35μm 以下に抑え
ることができた。
厚さが17.5μm と小さいため、表面粗さがRmax60μm を
越えている。また比較めっき鋼線2は、Fe-Zn 合金層厚
さが30μm を越えているため、撚り線加工に際してめっ
き層の割れが見られ、加工性が十分とは言えない。
線用厚めっき鋼板に要求される諸特性を有するのであっ
て、本発明の実際上の意義が明らかである。
明図である。
ラフである。
示すグラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】 めっき付着量が520g/m2 以上のめっき層
を備えた溶融亜鉛めっき鋼線であって、当該めっき層に
おけるFe−Zn合金層厚さが20〜30μm で、外層部が亜鉛
層で構成され、同じく当該めっき層のめっき表面層粗さ
がRmax50μm以下であることを特徴とする架空送電線用
亜鉛めっき鋼線。 - 【請求項2】溶融亜鉛めっき槽に鋼線を連続的に浸漬
し、所定速度で引き上げて第1溶融めっき層を形成し、
該溶融めっき層が凝固してから、得られためっき鋼線を
溶融亜鉛めっき槽に浸漬し、所定速度で引き上げる操作
を1回または2回以上繰り返すことを特徴とする、請求
項1記載の架空送電線用亜鉛めっき鋼線の製造方法。
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