JP2003164252A - パン酵母及びその製造方法 - Google Patents

パン酵母及びその製造方法

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JP2003164252A
JP2003164252A JP2001366145A JP2001366145A JP2003164252A JP 2003164252 A JP2003164252 A JP 2003164252A JP 2001366145 A JP2001366145 A JP 2001366145A JP 2001366145 A JP2001366145 A JP 2001366145A JP 2003164252 A JP2003164252 A JP 2003164252A
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baker
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strains
bread
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JP2001366145A
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Inventor
Masashi Ono
昌志 小野
Kozo Oya
甲三 大宅
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 パン酵母の開発に際し、従来の方法、すなわ
ち天然物からの分離法、従来菌株の変異処理法、従来菌
株同士の交雑育種法などが多大な人手と時間とを要する
という問題の解決、即ち、容易にかつ単純な方法によ
り、安定的に取得できるパン酵母とその製造方法を提供
すること。 【解決手段】 2種類以上の酵母菌株を含有するパン酵
母。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製パンに用いられ
るパン酵母及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】製パン業界では常に新しいパン及び製パ
ン法が開発され、これに合わせてパン酵母についても、
低温感受性や冷凍耐性、耐糖性などの新しい機能を持っ
たパン酵母が常に要求され続けている。
【0003】従来、パン酵母の製造は1種類の酵母菌株
を培養して一つのパン酵母製品とするのが常識であっ
た。このような新しいパン酵母を開発するには、果物や
花などの植物や鳥類、昆虫などの動物、土壌や岩石など
の鉱物から新規な酵母菌株を単独分離する方法、従来の
酵母菌株を変異処理して性質を変えることによって新規
な酵母菌株を取得する方法、従来の酵母菌株に胞子を形
成させて胞子株同士を交雑することで新規な酵母菌株を
取得する方法などがとられていた。つまり、新規なパン
酵母を取得するためには、このような酵母菌株の取得法
を用いて新しい酵母菌株を取得することが必要であっ
た。
【0004】しかし、このような新しい酵母菌株の取得
法には大きな問題がそれぞれあった。たとえば動植物や
鉱物などの天然物からの分離には、他の微生物の汚染を
防ぐために特殊な抗生物質や抗カビ剤などを用いる必要
があり、かつ天然物の収集にも多大の経費と時間がかか
るし、こうして取得した酵母菌株も発酵力が低かったり
培養時の増殖速度が遅かったりするというケースがほと
んどでそのままパン酵母として使用できる菌株を取得で
きる頻度が非常に低く、例えば数百株から数万株を取得
してようやく実用可能な菌株を1株得られるようなケー
スが多いという問題があった。
【0005】従来の酵母菌株に変異処理を加えて新しい
酵母菌株を取得する方法については、一般のパン酵母は
2倍体が多いため、2倍体のままでは変異の頻度が低い
という問題があり、この問題の解決のためには胞子であ
る1倍体を取得してから変異処理を加えるという手段を
講じる必要があった。しかし、実験室で一般に用いられ
る酵母菌株に比べてパン酵母の実用菌株は胞子形成培地
での胞子形成率が低かったり、せっかく胞子を形成させ
ても胞子からの出芽率が低かったりして1倍体を取得す
るにも多大の困難を克服する必要があった。また中には
4倍体の酵母菌株も存在しており、4倍体の場合は胞子
を形成させて2倍体を取得し、これら2倍体から胞子を
形成させて1倍体を取得する必要があり、さらに難易度
が高かった。
【0006】変異処理を行うにも、UV照射や放射線照
射などの方法、エチルメタンスルフォネート、ニトロソ
グアニジンなどの薬剤処理を行う方法などがあるが、照
射には特殊な装置が必要であり、薬剤処理の場合も処理
後の薬剤の処理など困難な作業が必要であった。また、
照射法の場合、予め死滅率を酵母菌株毎に測定して、照
射時間やその時の菌濃度、UV管からの距離などを決め
る必要があったし、薬剤処理法の場合も、前培養条件の
検討や、薬剤の濃度、処理時間の検討など非常に複雑な
操作が必要であった。
【0007】従来の酵母菌株に胞子を形成させて胞子株
同士を交雑することで新規な酵母菌株を取得する方法に
ついても、胞子形成培地での胞子形成率が低かったり、
せっかく胞子を形成させても胞子からの出芽率が低かっ
たりするという問題は変異処理法と同様であったし、交
雑の段数も1段交雑だけでは目的機能を得られずに、何
回も交雑を繰り返し行う必要があったなど、複雑で時間
のかかる方法であった。
【0008】このように、新たにパン酵母を開発するに
は、人手と時間がかかり、早くでも半年、長ければ数年
かかるケースがほとんどで、多大なエネルギーを要して
いた。
【0009】特開2001−258466には複数種の
乳酸菌を有する乳酸菌群と、複数種の酵母を有する酵母
群とを有するパン種が例示されているが、「発酵食品で
あるパンは、古来より、複数種の乳酸菌を有する乳酸菌
群、および複数種の酵母(イースト)を有する酵母群を
いずれも有するパン種と、パン用原料である小麦粉と、
水とを十分に混捏することによってパン生地とし」とあ
るように、パン種には複数種の酵母を有する酵母群が含
有されていることは常識であるが、自然に発酵して得ら
れるものであるため、製パン工程に至るまでに時間と手
間がかかり、且つ、一定品質のパン種を得るには熟練を
要していた。また、パン酵母には、複数の酵母菌株を有
するというものは、今まで、まったくなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明においては、新
たな性質を有するパン酵母の開発に際し、従来の方法、
すなわち天然物からの分離法、従来菌株の変異処理法、
従来菌株同士の交雑育種法などが多大な人手と時間とを
要するという問題の解決を目的とする。すなわち、容易
にかつ単純な方法により、安定的に取得できるパン酵母
とその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明らは鋭意検討の結
果、従来の手法とは全く異なり、パン酵母中に2種類以
上の酵母菌株を含有せしめることで容易に上記の課題が
解決できることを発見し本発明の完成に至った。
【0012】即ち、本発明の第1は、2種類以上の酵母
菌株を含有するパン酵母に関する。好ましい実施態様と
しては、(1)パン酵母に含有される酵母菌株が、一つ
または二つ以上の品質項目において機能が異なる、
(2)品質項目が、インベルターゼ活性、マルトース発
酵能、低温感受性、低温非感受性、冷凍耐性、冷凍感受
性、パンの風味からなる群のうちの一つまたは二つ以上
である、(3)2種類以上の酵母菌株のうち1種類の酵
母菌株が少なくともパン酵母中で10重量%以上であ
る、を特徴とする上記記載のパン酵母に関する。
【0013】本発明の第2は、上記記載のパン酵母の製
造方法に関する。好ましい実施態様としては、(1)各
酵母菌株を単独で純粋培養を行った後に、酵母懸濁液の
状態で2種類以上の酵母菌株を混合し、濾過する、
(2)各酵母菌株を単独で純粋培養を行い、酵母懸濁液
にした後にそれぞれ単独で濾過を行った後、2種類以上
の酵母菌株を混合する、ことを特徴とする上記記載のパ
ン酵母の製造方法に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明のパン酵母においては、2
種以上の酵母菌株を含有することが必要である。使用で
きる酵母菌株としては、一般にパンの製造に供されるも
のであれば得に限定はなく、多用されている、サッカロ
ミセス・セルビシエや、他にも、サッカロミセス・ウバ
ウム、サッカロミセス・エクシギューズやトルラスポラ
属等が挙げられる。異なる属種を含有することは勿論、
同属種間でも1つまたは2つ以上の品質項目が異なる酵
母菌株を含有することが好ましい。
【0015】酵母菌株の品質項目としては、特に限定は
なく、パン酵母として要求されるすべての品質項目が、
2種類以上の酵母菌株の組み合わせの対象となりうる。
具体的には、インベルターゼ活性、マルトース発酵能、
低温感受性、低温非感受性、冷凍耐性、冷凍感受性、耐
食塩性、高温発酵性、キラー性、フラクトオリゴ糖非発
酵性、糖資化性、グルタチオン含量、耐酸性、高温耐
性、耐浸透圧性、アルコール耐性、乳酸生成能、パンの
風味、耐久性、生育速度、白色度、ろ過性、溶解性、製
パンでの生地まとまり速度、製パンでの生地の機械耐
性、乾燥耐性などがあげられるが、中でも、インベルタ
ーゼ活性、マルトース発酵能、低温感受性、低温非感受
性、冷凍耐性、冷凍感受性、パンの風味が、要求される
品質項目として多いため、好ましい。2種類以上の酵母
菌株の組み合わせは下記のような例が例示される。
【0016】一つの品質項目について、機能が異なる2
種類以上の酵母菌株の組み合わせとしては、マルトース
発酵能が高い酵母菌株(以降、高マルトース発酵菌株)
とマルトース発酵能が低い酵母菌株(以降、低マルトー
ス発酵菌株)、低温感受性の酵母菌株と低温非感受性の
酵母菌株、インベルターゼ活性が高い酵母菌株(以降高
インベルターゼ酵母菌株)とインベルターゼ活性が低い
酵母菌株(以降低インベルターゼ酵母菌株)、冷凍感受
性酵母菌株と冷凍耐性酵母菌株、等の組み合わせが例示
できる。
【0017】二つの品質項目について、機能が異なる2
種類以上の酵母菌株の組み合わせとしては、低温感受性
かつ非冷凍耐性を有する酵母菌株と低温非感受性かつ冷
凍耐性を有する酵母菌株、低温感受性かつ低マルトース
発酵菌株と低温非感受性かつ高マルトース発酵菌株、等
の組み合わせが例示できる。
【0018】三つ以上の品質項目について、機能が異な
る2種類以上の酵母菌株の組み合わせとしては、低温感
受性かつ冷凍感受性かつ低風味菌株と低温非感受性かつ
冷凍耐性かつ低風味菌株と低温非感受性かつ冷凍感受性
かつ高風味菌株、等があり、例挙にいとまがない。
【0019】2種類以上の酵母菌株のパン酵母中での比
率は、特に限定はないが、2種類以上の酵母菌株のうち
1種類が少なくともパン酵母中で10重量%以上の比率
となることが好ましく、より好ましくは20重量%以
上、最も好ましくは30重量%以上である。10重量%
に満たない場合、目的とする機能の改良に対して効果が
ない場合がある。
【0020】本発明のパン酵母の製造方法としては、2
種類以上の酵母菌株を均一に分散させることができれば
特に限定はなく、例えば、異なる2種類以上の酵母菌株
を同一の培地で一緒に培養する、いわゆる混合培養を行
った後濾過する方法、それぞれの酵母菌株を単独で純粋
培養を行った後に、酵母懸濁液の状態で2種類以上の酵
母菌株を混合した後濾過する方法、各酵母菌株を単独で
純粋培養を行い、酵母懸濁液にした後にそれぞれ単独で
濾過を行い、その後の圧搾酵母や乾燥酵母のような固形
物の状態で2種類以上の酵母菌株を混合する方法、各酵
母菌株を単独で純粋培養を行い得た酵母懸濁液に、別途
純粋培養して濾過・乾燥させて得られた乾燥酵母を添加
する方法、などが挙げられるが、好ましくは、各酵母菌
株を単独で純粋培養を行った後に、酵母懸濁液の状態で
2種類以上の酵母菌株を混合した後濾過する方法、又
は、各酵母菌株を単独で純粋培養を行い、酵母懸濁液に
した後にそれぞれ単独で濾過を行い、その後の圧搾酵母
や乾燥酵母のような固形物の状態で2種類以上の酵母菌
株を混合する方法が、得られるパン酵母の機能を調整す
ることが容易であるため好ましい。
【0021】本発明でいう各種の品質項目はそれぞれ下
記の通り定義され、測定方法が開示される。これらの測
定に供される酵母菌株は、通常のパン酵母の製造条件で
培養されたものを用いればよい。一般的には糖蜜を主原
料とし、副原料として硫酸アンモニウムなどの窒素源、
リン酸アンモニウムやリン酸などのリン源が用いられる
が、YPD培地と称されるグルコースを主原料とし、ポ
リペプトン、酵母エキスを副原料とする培地でもよい。
通常は培養後に、遠心分離されて水洗、ろ過されて生酵
母を得る。乾燥酵母とする場合は、生酵母をさらに一般
の乾燥手段によって乾燥を行えばよい。乾燥手段として
は、流動層乾燥法やスプレードライ法、凍結乾燥法など
が用いられる。 (1)マルトース発酵能 マルトース発酵能とは、マルトースを発酵する能力を意
味し、下記の方法で測定される。マルトース(和光純薬
(株)製、特級)4%、リン酸2水素カリウム0.25
%、リン酸1水素2アンモニウム0.25%の溶液50
mlを100ml三角フラスコにとり、イースト2gを
この発酵液に懸濁して、発酵液入り三角フラスコの重量
を測定する。30℃5時間静置で発酵後、発酵液入り三
角フラスコの重量を測定し、発酵前の発酵液入り三角フ
ラスコの重量から発酵後の発酵液入り三角フラスコの重
量を減じて差(mg)をマルトース発酵能とする。
【0022】すなわち、マルトース溶液を30℃5時間
発酵させた時に生成、揮散する炭酸ガス量をもってマル
トース発酵能という。100mg以上の酵母菌株を高マ
ルトース発酵酵母菌株とし、100mg未満の酵母菌株
を低マルトース発酵酵母菌株とする。
【0023】高マルトース発酵酵母菌株は特に砂糖を添
加しないフランスパンなどの無糖生地で小麦粉由来のマ
ルトースを発酵できる能力が高いため、このような糖が
ないか、または糖が少ない生地において有用である。し
かし、一般的には高マルトース発酵酵母菌株はインベル
ターゼ活性も高い傾向があるため、前述の様に砂糖を大
量に添加する菓子パンのような生地においては発酵が遅
れるという欠点も有する。 (2)インベルターゼ活性 インベルターゼ活性とはシュクロースをグルコースとフ
ルクトースとに分解する酵素活性を意味し、以下の方法
によって測定されるグルコース濃度から次式に従って算
出する。イースト2gを50ml純水で懸濁し、15%
シュクロース液5mlを試験管にとりイースト懸濁液1
mlを加える。ウォーターバス中で30℃30分保温し
た後、あらかじめ準備しておいた熱湯に8分浸漬し反応
を停止する。別の試験管に4mlずつ純水を分注し、こ
れに反応停止液を1mlずつ分注する。グルコースBテ
ストワコー(和光純薬(株)製)の緩衝液3mlを分注
しておいた試験管に希釈液を20μl分注後、37℃ウ
ォーターバス中で20分保温する。505nmの吸光度
を測定し、希釈液中のグルコース濃度A(mg/100
ml)を求める。 −計算式− インベルターゼ活性(mgグルコース/分/gイース
ト) =A(mg/100ml)÷100(mlに換算)×5
(希釈倍率)×6(イースト糖液)×2(グルコース+
フルクトースに換算)×(50/2)(イースト量)÷
30(分換算) =A(mg/100ml)×0.5 300mgグルコース/分/gイースト以上の酵母菌株
を高インベルターゼ酵母菌株とし、300mgグルコー
ス/分/gイースト未満の酵母菌株を低インベルターゼ
酵母菌株とする。
【0024】高インベルターゼ酵母菌株は、高マルトー
ス発酵酵母菌株と同様に、特に砂糖を添加しないフラン
スパンなどの無糖生地で小麦粉由来の少糖類をインベル
ターゼで分解して発酵できるため、糖がないか、または
糖が少ない生地において有用である。しかし、前述の様
に砂糖を大量に添加する菓子パンのような生地において
はインベルターゼによって砂糖から生成したグルコース
とフルクトースのために生地中の浸透圧が高くなるた
め、発酵が遅れるという欠点も有する。 (3)低温感受性・低温非感受性 低温感受性とは、特開平7−79767に例示されてい
るように、低温で発酵が抑制される機能を、低温非感受
性とは低温で発酵が抑制されない機能を意味し、表1の
配合・工程を経た生地を用いて測定する。
【0025】
【表1】 表1で得た生地を目盛り付きの底なしシリンダーに入れ
てあらかじめスタート時の生地量を測定しておき、5
℃、24時間発酵させたときの生地量とスタート時の生
地量との差を5℃低糖生地発酵力とする。
【0026】また、上記と同配合にて生地を捏上温度3
0±1℃にて捏上げ、この生地を目盛り付きの底なしシ
リンダーに入れてあらかじめスタート時の生地量を測定
しておき、30℃、80分発酵させたときの生地量とス
タート時の生地量との差を30℃低糖生地発酵力とす
る。5℃低糖生地発酵力が100ml以下であり、かつ
30℃低糖生地発酵力が240ml以上である酵母を低
温感受性酵母菌株とする。
【0027】低温非感受性酵母菌株とは、5℃低糖生地
発酵力が100ml以上であり、かつ30℃低糖生地発
酵力が240ml以上である酵母菌株を意味する。
【0028】低温感受性酵母菌株は、クロワッサンやデ
ニッシュのようなペストリー類、即ち油脂をロールイン
するパン類において、生地を冷却するリタード工程で発
酵が抑制させるため、パンの内相がきれいになるという
利点がある。ペストリー類以外の一般のパン類でも、生
地を冷蔵保管する冷蔵生地法や、低温長時間中種法のよ
うに低温で生地を熟成させる製法でも生地を過発酵させ
ないという意味で特徴を発揮する。
【0029】しかしパンの場合は必ず生地を冷蔵後に昇
温させて発酵を行って最終的には窯で焼成する必要があ
り、これら低温感受性菌株の場合は昇温の過程や最終発
酵のホイロの段階で低温非感受性菌株に比べて発酵が遅
れるという宿命的な欠点も合わせて有する。 (4)冷凍耐性 冷凍耐性とは冷凍保存後発酵力を有することを言い、表
2の配合・工程を経た生地を用いて測定する。
【0030】
【表2】 解凍後、38℃120分間のガス発生量をファーモグラ
フ((株)アトー社製)にて測定する。
【0031】この解凍後のガス発生量が100ml以上
のものを冷凍耐性菌株とし、100ml未満のものを冷
凍感受性菌株とする。
【0032】冷凍耐性菌株は、生地を冷凍するいわゆる
冷凍生地法においてその特徴を発揮する。 (5)パンの風味
【0033】パンの風味とは、特開2001−2520
71に開示されている通り、下記の配合によって焼成し
たパンにおいて、エチルアルコール量に対するイソアミ
ルアルコール量の割合が0.5重量%以下及び/または
エチルアルコール量に対するイソブチルアルコール量の
割合が0.5重量%以下である菌株を高風味酵母菌株と
し、エチルアルコール量に対するイソアミルアルコール
量の割合が0.5重量%以上かつエチルアルコール量に
対するイソブチルアルコール量の割合が0.5重量%以
上の菌株を低風味酵母菌株と定義する。表3に風味成分
測定のための製パン方法を示す。
【0034】
【表3】 パン焼成後、1日目に以下の方法で風味成分の分析を行
う。パンのクラム部を適量とり、ミキサーにてパン粉状
に粉砕し、20gを200ml容量の三角フラスコに入
れる。n−ブチルアルコールを内部標準として、0.2
%溶液1ml添加する。三角フラスコの口を栓で密封
し、60℃の湯にほとんどフラスコ全体が浸るようにし
て、60分放置する。シリンジにて栓を密封したまま、
フラスコ内の上部気相をサンプリングし、2mlをガス
クロマトグラフィーで分析する。 −ガスクロマトグラフィー測定条件− ・カラムオーブン温度 :100℃ ・インジェクション部温度:140℃ ・検出部温度 :150℃ ・カラム :3.2mmφ×1.1m ・カラム充填剤 :ポリエチレングリコール20M なお、本願のパン酵母の場合、定法により、適宜希釈
後、YPD寒天培地などにまいて30℃48時間後にコ
ロニーを10〜50株程度モノコロニーし、各菌株の性
質を調べることによって容易に確認が可能である。
【0035】
【実施例】次に実施例をあげて説明する。 (実施例1〜4、比較例1,2)砂糖が対粉7〜12%
の食パンや菓子パンを製造するのに適したパン酵母を製
造した。
【0036】高マルトース発酵菌株でかつ高インベルタ
ーゼ菌株である菌株(商品名:カネカイーストNB、鐘
淵化学工業(株)製、以下、NBと称す)がある。NB
は高マルトース発酵菌株でかつ高インベルターゼ菌株で
あるため、砂糖を添加しないフランスパンや対粉2〜3
%の砂糖、グルコースなどを添加するパン粉の製造など
で特徴が発揮されるが、砂糖が対粉7〜12%程度の食
パンや菓子パン類では発酵力が弱くパンにならない酵母
菌株である。
【0037】一方、低マルトース発酵菌株でかつ低イン
ベルターゼ菌株である菌株(商品名:カネカイーストグ
リーン、鐘淵化学工業(株)製、以下、グリーンと称
す)は、砂糖が対粉12%以上の菓子パン類では強い発
酵力を発揮するが、砂糖が対粉12%に満たない食パン
などでは発酵力が弱くパンにならない。
【0038】これらのNBとグリーンについて、パン酵
母製品の状態すなわち培養終了後、ろ過された固形物の
状態で、NB対グリーンの比率を20%きざみでボウル
にそれぞれはかりとり、サジで均一になるようによく混
合してそれぞれのサンプルを得た。表4、表5に示す配
合及び工程で砂糖が対粉7%の食パン及び砂糖が対粉1
2%のバターロールを作成した。NBとグリーンの混合
比率を表4に製パン条件を表5にそれぞれ示す。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】 評価結果を表6に示す。
【0041】
【表6】 対照例として、一般的に砂糖が対粉7〜12%の食パン
や菓子パンを製造するのに汎用されている菌株(商品
名:カネカイーストレッド、鐘淵化学工業(株)製、以
下、レッドと称す)用いて同様に製パンを行った結果を
合わせて示す。
【0042】NG、グリーン、レッドの各パン酵母製品
は、所望の性質を備えた単一の菌株からなっているパン
酵母であり、それぞれ前述のように多大な労苦・時間を
経て得られた既存のパン酵母菌株である。
【0043】表6から明らかなとおり、比較例1及び2
のグリーン単独、NB単独では、食パン、バターロール
どちらかで商品性が低いものであったが、実施例では食
パン、バターロールともに満足できるパンができた。 (実施例5〜7、比較例3,4)次に、低温下で適度な
発酵力を示すパン酵母を製造した。
【0044】低温感受性菌株である商品名カネカイース
トAL(鐘淵化学工業(株)製、以下AL)と、低温非
感受性菌株であるカネカイーストSG(鐘淵化学工業
(株)製、以下SG)とを、培養終了後それぞれ単独で
水洗分離して懸濁液状態で混合した後、ろ過した実験を
行った。混合比率は25%きざみとした。表7に混合比
率を、表8にペストリーの配合及び条件を示す。
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】 結果を表9に示す。
【0047】
【表9】 比較例3及び4のSG単独、AL単独では、比容積、内
相、風味のいずれかに問題があったが、実施例では比容
積、内相、風味のいずれも良好で満足できるパンができ
た。 (実施例8、比較例5〜7)冷凍耐性と適度な低温感受
性を有し、且つ、風味の良好なパン酵母を製造した。低
温感受性かつ冷凍感受性かつ低風味菌株(商品名:カネ
カイーストホワイト、鐘淵化学工業(株)製、以下、W
Yと称す)と、低温非感受性かつ冷凍耐性かつ低風味菌
株(商品名:カネカイーストSG、鐘淵化学工業(株)
製、以下、SGと称す)と、低温非感受性かつ冷凍感受
性かつ高風味菌株であるサッカロミセス・セレビシエF
ERM P−17691(特開2001−252071
記載、以下、P−17691と称す)の3種類を用い、
それぞれ単独で純粋培養を行った後に、酵母懸濁液の状
態で混合したのち、濾過してパン酵母製品を作成した。
混合比率はWY 30重量部、AL 30重量部、P−
17691 40重量部とした。表10に示す配合及び
工程にて冷凍生地法のペストリーを作製した。
【0048】
【表10】 結果を表11に示す。
【0049】
【表11】 WYは低温感受性かつ冷凍感受性かつ低風味菌株である
ため比容積、内相、風味とも好ましくなく、SGは低温
非感受性かつ冷凍耐性かつ低風味菌株であるため、比容
積は良好であるが、内相、風味が不良であり、P−17
691は低温非感受性かつ冷凍感受性かつ高風味菌株で
あるため比容積、内相、風味とも不良であるが、3者を
混合した実施例8では比容積、内相、風味とも良好であ
った。
【0050】
【発明の効果】パン酵母を開発するにあたり、従来の煩
雑で困難な育種法によらずに、既存の酵母菌株を2種類
以上混合するという容易な手段によってパン酵母の製造
が可能となる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2種類以上の酵母菌株を含有するパン酵
    母。
  2. 【請求項2】 パン酵母に含有される酵母菌株が、一つ
    または二つ以上の品質項目において機能が異なることを
    特徴とする請求項1記載のパン酵母。
  3. 【請求項3】 品質項目が、インベルターゼ活性、マル
    トース発酵能、低温感受性、低温非感受性、冷凍耐性、
    冷凍感受性、パンの風味からなる群のうちの一つまたは
    二つ以上であることを特徴とする請求項2記載のパン酵
    母。
  4. 【請求項4】 2種類以上の酵母菌株のうち1種類の酵
    母菌株が少なくともパン酵母中で10重量%以上である
    ことを特徴とする請求項1記載のパン酵母。
  5. 【請求項5】 各酵母菌株を単独で純粋培養を行った後
    に、酵母懸濁液の状態で2種類以上の酵母菌株を混合
    し、濾過することを特徴とする請求項1から4のいずれ
    かに記載のパン酵母の製造方法。
  6. 【請求項6】 各酵母菌株を単独で純粋培養を行い、酵
    母懸濁液にした後にそれぞれ単独で濾過を行った後、2
    種類以上の酵母菌株を混合することを特徴とする請求項
    1から4のいずれかに記載のパン酵母の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN103210969A (zh) * 2012-01-19 2013-07-24 安琪酵母股份有限公司 改善馒头风味的复合酵母、制备方法及由其发酵的馒头
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JP2019033696A (ja) * 2017-08-16 2019-03-07 国立大学法人帯広畜産大学 サッカロマイセス・バヤヌス・バー・ウバルムとサッカロマイセス・セレビシエの交雑により作出した製パン用酵母

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