JP2003160594A - 新規なα−ガラクトシル基を含む非還元性二糖及びそれらの製造方法 - Google Patents
新規なα−ガラクトシル基を含む非還元性二糖及びそれらの製造方法Info
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Abstract
ク質が損なわれることがなく、食品素材や医薬素材とし
て期待できる新規なα−ガラクトシル基を含む非還元性
二糖及びその簡便な製造方法を提供すること。 【解決手段】下記式(1)及び(2)で表されるα−ガ
ラクトシル基を含む非還元性二糖。 【化1】 【化2】 また、ガラクトース又はガラクトースを含む物質にα−
ガラクトシダーゼを作用させて得られたα−ガラクトシ
ル基を含むオリゴ糖中の還元糖の分解、分離操作からな
る上記(1)のα−ガラクトシル基を含む非還元性二糖
の製造方法及びガラクトースとグルコースを含む物質に
前記と同様にして得られるα−ガラクトシル基を含むオ
リゴ糖中に混在するGal1α−1βGalの加水分
解、還元糖の分解、分離操作からなる上記(2)のα−
ガラクトシル基を含む非還元性二糖の製造方法。
Description
トシル基を含む非還元性二糖及びそれらの製造方法に関
し、詳細には、非還元性二糖のGalα1−1βGal
とGalα1−1βGlc及びそれらの製造方法に関す
る。
ロース(Glcα1−1αGlc)は非還元性で耐熱・
耐酸性に優れ、アミノ化合物と還元糖との反応に起因す
るメイラード反応によりアミノ酸やタンパク質が損なわ
れることがないなど、食品の加工や保存において他の素
材への悪影響が少ないことが知られている。また、デン
プンの老化、タンパク質の変性、脂質の酸化を抑制する
作用も強い等、食品素材として優れた性質を有してい
る。一方、α−ガラクトシル基を非還元末端に有する糖
質は、天然には三糖のラフィノースやメリビオースが知
られ、強いビフィズス菌選択増殖活性や抗う蝕性の他
に、免疫細胞活性化作用、制がん効果、アトピー性皮膚
炎の改善効果などの様々な生理機能が報告されている。
従って、α−ガラクトシル基を含む非還元性二糖を合成
できれば、叙述のトレハロースの有する諸性質あるいは
ラフィノースやメリビオースなどの有する諸機能を備
え、ひいては優れた食品素材や医薬品素材の提供が期待
できる。
ラクトシル基を含む非還元性二糖は、従来、特開平10
−304881号公報に記載されるGalα1−1αG
lcがあるのみであり、その他の糖質については知られ
ていない。そこで、本発明は、有用な食品素材や医薬品
素材として期待される新規なα−ガラクトシル基を含む
非還元性二糖を提供すること及びその簡便な製造方法を
提供することを課題とする。
を解決するため鋭意検討し、本発明に想到した。すなわ
ち、本発明は、下記式(1)で表される非還元性二糖に
関する。
ラクトースを含む物質に微生物に由来するα−ガラクト
シダーゼを作用させ、脱水縮合反応によりα−ガラクト
シル基を含むオリゴ糖を生成させ、該オリゴ糖中の還元
糖の分解後、分離操作することにより製造できる。この
製造方法において、α−ガラクトシダーゼは、脱水縮合
反応の活性に優れるアスペルギルス・ニガー(Aspe
rgillus niger)APC−9319株(寄
託番号:FERM BP−7680)由来のものを用い
ることができる。
非還元性二糖に関する。
コースを含む物質に微生物に由来するα−ガラクトシダ
ーゼを作用させ、脱水縮合反応によりα−ガラクトシル
基を含むオリゴ糖を生成させ、混在するGalα1−1
βGalの加水分解、さらに前記オリゴ糖中の還元糖の
分解後、分離操作することにより製造できる。この製造
方法において、α−ガラクトシダーゼは、脱水縮合反応
の活性に優れるアスペルギルス・ニガー(Asperg
illus niger)APC−9319株(寄託番
号:FERM BP−7680)由来のものを用いるこ
とができる。
の製造は、まずガラクトース又はガラクトースを含む物
質にα−ガラクトシダーゼを作用させ、脱水縮合反応に
よりα−ガラクトシル基を含むオリゴ糖を製造する。ま
た、式(2)で表される非還元性二糖の製造は、まずガ
ラクトースとグルコースを含む物質にα−ガラクトシダ
ーゼを作用させ、脱水縮合反応によりα−ガラクトシル
基を含むオリゴ糖を製造する。
しては、例えばアスペルギルス(Aspergillu
s)属、ペニシリウム(Penicillium)属、
トリコデルマ(Trichoderma)属などのカビ
類、サッカロマイセス(Saccharomyces)
属などの酵母類、あるいはバチルス(Bacillu
s)属に属する細菌類等が挙げられるが、アスペルギル
ス(Aspergillus)属に属する微生物由来の
α−ガラクトシダーゼが好ましい。
としては、アスペルギルス・ニガー(Aspergil
lus niger)、アスペルギルス・オリゼ(As
pergillus oryzae)、アスペルギルス
・プルベルレンタス(Aspergillus pul
verulentus)、ペニシリウム属カビ類として
は、ペニシリウム・シトリナム(Penicilliu
m citrinum)、ペニシリウム・マルチカラー
(Penicillium multicolor)、
トリコデルマ属カビ類としては、トリコデルマ・ビリデ
(Trichoderma viride)が好まし
く、これらの中でもアスペルギルス・ニガー(Aspe
rgillus niger)がより好ましい。
llus niger)の中でも、本出願人らにより寄
託されたアスペルギルス・ニガー(Aspergill
usniger)APC−9319株(寄託番号:FE
RM BP−7680)が特に好ましい。この菌株が生
産するα−ガラクトシダーゼは、脱水縮合反応の活性が
極めて高く、従来α−ガラクトシダーゼの中でも脱水縮
合反応の触媒活性が最も高いことで知られるカンジダ・
ギリエルモンディー(Candida guillie
rmondii)H−404株(寄託番号:FERM
P−11062)の生産するα−ガラクトシダーゼより
α−ガラクトシル基を含むオリゴ糖が高収量で製造でき
(PCT/JP01/06848参照)、これに対応し
て式(1)又は式(2)の非還元性二糖を高収量で製造
できる。
サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomy
ces cervisiae)、バチルス属細菌として
は、バチルス・メガテリウム(Bacillus me
gaterium)が好ましい。
を生産する方法は、通常、固体培養又は液体培養が用い
られる。固体培養の培地としては、小麦ふすま単独ある
いは小麦ふすまに種々の添加物、例えば、きな粉、大豆
粉、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、グルタミン酸、ア
スパラギン酸、ポリペプトン、コーンスティープリカ
ー、肉エキス、酵母エキス、タンパク質加水分解物など
の有機及び無機の窒素化合物などを適宜添加して用いる
ことができる。さらに、適当な無機塩類を加えることも
できる。また、液体培養の培地としては、当該微生物が
良好に成育し、酵素を順調に生産するために必要な炭素
源、窒素源、無機塩、必要な栄養源等を含有する合成培
地又は天然培地が挙げられる。例えば、炭素源として
は、澱粉又はその組成画分、焙焼デキストリン、加工澱
粉、澱粉誘導体、物理処理澱粉及びα−澱粉あるいはガ
ラクトースを含む物質等の炭水化物が使用できる。具体
例としては、可溶性澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱
粉、甘藷澱粉、デキストリン、アミロペクチン、アミロ
ース、ガラクトース、ラクトース、ラフィノース等が挙
げられ、これらを単独で、もしくは2種以上を組み合わ
せて用いることができる。窒素源としては、ポリペプト
ン、カゼイン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティー
プリカーあるいは大豆又は大豆粕などの抽出物等の有機
窒素源物質、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等
の無機塩窒素化合物、グルタミン酸等のアミノ酸類が挙
げられ、これらを単独で、もしくは2種以上を組み合わ
せて使用できる。無機塩類としては、リン酸1カリウ
ム、リン酸2カリウム等のリン酸塩、硫酸マグネシウム
等のマグネシウム塩、塩化カルシウム等のカルシウム
塩、炭酸ナトリウム等のナトリウム塩等を単独で、ある
いは2種以上を組み合わせて用いられる。
地のpHを3〜7、好ましくは4〜7に調整したものに
本菌を接種し、10〜40℃、好ましくは20〜37℃
で1〜10日間培養を行う。培養後、その培養抽出物か
らα−ガラクトシダーゼをエタノール沈降などの手段に
より、粗酵素沈殿物として得ることができる。また、液
体培養の場合、培養は振盪培養もしくは通気撹拌培養等
の好気的条件下に行い、培地をpH4〜10の範囲、好
ましくはpH5〜8の範囲に調整し、温度10〜40℃
の範囲、好ましくは、25〜37℃で、24〜96時間
培養する。培養後、遠心分離、その他の適当な固−液分
離手段で菌体を除去し、培養上清液を得ることができ
る。また、菌体を物理的あるいは酵素的に処理し、菌体
内抽出液を得ることができる。
理法、ゲル濾過処理、疎水クロマトグラフィー処理など
を適宜組み合わせることにより、高純度のα−ガラクト
シダーゼが得られる。
に用いる酵素としては、上記のようにして得た酵素標品
の他に、固体培養の場合は、その抽出液を、液体培養の
場合は、培養上清液又は菌体内抽出液を、そのまま酵素
剤として用いることができる。また、必要に応じて、既
知の方法で精製した酵素も使用できる。また、菌体をそ
のまま酵素剤として利用することも可能である。あるい
は市販酵素剤、例えばセルラーゼ剤やプロテアーゼ剤等
に混在したα−ガラクトシダーゼも使用でき、その場
合、酵素剤をそのまま使用するか、あるいは酵素剤の中
からα−ガラクトシダーゼを種々の既知方法で精製して
使用することもできる。また、これら酵素あるいは酵素
を生産する菌体は、固定化して連続式で、あるいはバッ
チ式で繰り返し反応に利用することも可能である。
α−ガラクトシダーゼの反応に供する原料は、ガラクト
ース又はガラクトースを含む物質である。具体的には、
ガラクトース、ガラクトースと他の乳糖などのガラクト
ースを含む化合物の加水分解物などを挙げることがで
き、これらを単独で、もしくは組み合わせて使用でき
る。ガラクトースとしては市販のガラクトースはもちろ
ん、メリビオース、マンニノトリオース、ラフィノー
ス、スタキオース、プランテオース、ベルバスコース、
ガラクタン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、
ラムノガラクタン、ガラクトリピド、フェルラ酸化ガラ
クトース、ガラクトピニトール、ガラクトシルグリセロ
ール、ガラクチノール、乳糖、ラクチトール、ラクチュ
ロース、ガラクトオリゴ糖などのα−ガラクトシル基あ
るいはβ−ガラクトシル基を含む天然あるいは合成オリ
ゴ糖、配糖体あるいは多糖を酵素(β−ガラクタナー
ゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼな
ど)あるいは酸を使用して加水分解したものから調製し
たガラクトースを使用できる。
しては、メリビオース、マンニノトリオース、ラフィノ
ース、スタキオース、プランテオース、ベルバスコー
ス、ガラクタン、ガラクトマンナン、アラビノガラクタ
ン、ラムノガラクタン、ガラクトリピド、フェルラ酸化
ガラクトース、ガラクトピニトール、ガラクトシルグリ
セロール、ガラクチノール、乳糖、ラクチトール、ラク
チュロース、ガラクトオリゴ糖などのα−ガラクトシル
基あるいはβ−ガラクトシル基を含む天然あるいは合成
オリゴ糖、配糖体あるいは多糖を酵素(β−ガラクタナ
ーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼな
ど)あるいは酸を使用して加水分解したものをそのまま
使用できる。
α−ガラクトシダーゼの反応に供する原料は、ガラクト
ースとグルコースを含む物質が挙げられ、具体的にはガ
ラクトースとグルコースの混合物を適当な比率に混合し
たものや乳糖などのガラクトースとグルコースを含む化
合物を挙げられ、安価な乳糖をβ−ガラクトシダーゼあ
るいは酸によって加水分解した乳糖加水分解物をそのま
ま利用することが好ましい。ガラクトースとグルコース
の比率は特に制限されない。
ースは、市販のグルコースはもちろん、澱粉、マルトオ
リゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、コージ
オリゴ糖、シクロデキストリン、トレハロース、マルチ
トール、セルロース、セロオリゴ糖、ソホロオリゴ糖、
ラミナリオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖などのα−グルコ
シル基あるいはβ−グルコシル基を含む天然あるいは合
成オリゴ糖、配糖体あるいは多糖を酵素(アミラーゼ、
グルコアミラーゼ、セルラーゼ、α−グルコシダーゼ、
β−グルコシダーゼなど)あるいは酸を使用して加水分
解したものから調製したグルコースを使用できる。
であるが、基質たる原料のガラクトース濃度を高めれ
ば、加水分解反応の逆反応の脱水縮合反応も触媒するよ
うになる。従って、高濃度のガラクトースにα−ガラク
トシダーゼを作用させた場合、α−(Gal)n(nは
通常2〜10の整数、Galはガラクトース)の構造式
を有する2糖、3糖、4糖等の多数のオリゴ糖が混在し
た組成物のα−ガラクトシル基を含むオリゴ糖を生成す
る。
α1−1βGalは、上記で得られたオリゴ糖中の還元
糖の分解及び分離操作を行うことにより製造できる。オ
リゴ糖中の還元糖の分解は、アルカリ分解により行うこ
とができ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムな
どのアルカリをオリゴ糖に添加して行うことができ、こ
の分解操作により、Galα1−1βGal以外のオリ
ゴ糖が分解される。アルカリの添加量は、終濃度0.1
〜6.0Nが好ましい。また、分離操作は、イオン交換
クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、活性炭
カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過カラムクロマトグ
ラフィーなど既知の分離手段を用いて行うことができる
が、活性炭クロマトグラフィーが好ましい。
存在すれば、ガラクトースとグルコースが結合したα−
(Gal)n−Glc(nは通常1〜9の整数、Glc
はグルコース)の構造式を有するα−ガラクトシル基を
含むオリゴ糖が生成し、またGalα1−1βGalも
混在する。
のGalα1−1βGlcは、混在するGalα1−1
βGalを加水分解し、さらに上記で得られたα−(G
al)n−Glcのオリゴ糖中の還元糖の分解及び分離
操作を行うことにより製造できる。Galα1−1βG
alの加水分解は、酵素を用いて行うことができ、酵素
はβ−ガラクトシダーゼが好ましい。β−ガラクトシダ
ーゼの添加量は、酵素の起源、活性などそれぞれの酵素
に応じた条件を考慮して適宜決定する。また、オリゴ糖
中の還元糖の分解は、アルカリ分解により行うことがで
き、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのア
ルカリをオリゴ糖に添加して行うことができ、この分解
操作により、Galα1−1βGlc以外のオリゴ糖が
分解される。アルカリの添加量は、終濃度0.1〜6.
0Nが好ましい。分離操作は、イオン交換クロマトグラ
フィー、逆相クロマトグラフィー、活性炭カラムクロマ
トグラフィー、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーなど
既知の分離手段を用いて行うことができるが、活性炭ク
ロマトグラフィーが好ましい。
二糖の製造において、酵素反応が進むにつれ、脱水縮合
反応によって合成されたα−ガラクトシル基を含むオリ
ゴ糖が再度α−ガラクトシダーゼによって分解され、糖
転移反応も並行して起こるため、糖転移反応もα−ガラ
クトシル基を含むオリゴ糖の合成に寄与している。ま
た、生成した化合物のガラクトースの結合位置、結合
数、あるいはこれらの化合物の比率は原料のガラクトー
スとグルコースの組成、用いた酵素の由来や反応条件に
より影響を受ける。α−ガラクトシダーゼの反応条件
は、用いる酵素により異なるが、反応pHは3.0〜1
0.0、好ましくは4.0〜9.0の範囲である。反応
温度は、溶解度や反応速度の点から高い方が望ましく、
通常20〜90℃、好ましくは40〜80℃の範囲であ
る。反応時間は、酵素の使用量によって異なるが、通常
1〜150時間である。しかしながら、以上の条件、あ
るいは反応形態のみに限定されるものではない。さら
に、α−ガラクトシル基を含むオリゴ糖を製造するに
は、原料のガラクトースの濃度は高い程良く、ガラクト
ースやグルコースは反応系に析出しても、また、ガラク
トースやグルコースが過飽和状態でも良く、通常5〜1
10%(w/v)の濃度で用い、好ましくは50〜11
0%(w/v)の濃度である。
が、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
トシドを基質とするα−ガラクトシダーゼの活性測定
法) 10mMパラニトロフェニルα−ガラクトシド0.2m
lと40mMの緩衝液(pHは酵素の至適pHに準じ
る)0.2mlにα−ガラクトシダーゼ溶液0.05m
lを添加して、40℃にて10分間反応させた。反応
後、0.2M炭酸ナトリウム0.5mlを加えて反応を
停止し、遊離したパラニトロフェノール量を分光光度計
にて400nmの吸光度を計ることにより測定した。酵
素活性1単位(U)は、この条件で1分間に1マイクロ
モルのパラニトロフェノールを遊離する酵素量とした。
ガラクトシダーゼの活性測定法) 10mMメリビオース0.2mlと40mMの緩衝液
(pHは酵素の至適pHに準じる)0.2mlにα−ガ
ラクトシダーゼ溶液0.05mlを添加して、40℃に
て10分間反応させた。次いで、100℃で10分間加
熱して反応を停止させ、生じたグルコース量をロシュ・
ダイアグノスティックス(株)製のF−キット(グルコ
ース/フルクトース)あるいは高速液体クロマトグラフ
ィー(HPLC)により定量した。酵素活性1単位(U
M)は、この条件下で1分間に1マイクロモルのグルコ
ースを生成する酵素量とした。
lを500ml容坂口フラスコに入れ、常法によりオー
トクレーブで殺菌後、アスペルギルス・ニガーAPC−
9319株(寄託番号:FERM BP−7680)を
接種して、25℃で3日間、前培養(種培養)を行っ
た。ふすま500gに水400mlを添加して殺菌後、
前培養液10mlを接種して良く撹拌した後、25℃に
て4日間、本培養を行った。培養後、ふすま麹を細かく
砕き、水を8L添加して4℃で一夜抽出した後、濾紙に
て濾過して抽出濾過液を得た。得られた抽出濾過液のα
−ガラクトシダーゼ活性を測定したところ、抽出濾過液
1ml当たり3単位(U)であった。抽出濾過液6Lを
限外濾過膜(旭化成(株)製SIP)で1Lまで濃縮
し、70%飽和となるように硫酸アンモニウムを添加し
て塩析を行った。続いて、沈殿を遠心分離にて集め、5
00mlの水に溶解し、限外濾過膜で100mlまで濃
縮し、更に500mlの水を加えて100mlまで濃縮
し、この操作を3回繰り返し、脱塩を行った。脱塩後、
凍結乾燥を行い、凍結乾燥粉末(250U/g)を得
た。
なるように硫酸アンモニウムを添加して撹拌した後、4
℃にて一晩放置した。その沈殿を遠心分離にて集め、1
0mMのリン酸緩衝液(pH6.0)に溶解した後、限
外濾過膜(旭化成(株)製SIP)で濃縮し、再度同緩
衝液を添加して濃縮した。この操作を3回繰り返し、脱
塩を行った。
うために、同緩衝液にて平衡化したDEAE−トヨパー
ル650M(東ソー(株)製)カラムに供した。続い
て、疎水クロマトグラフィーを行うために、50%飽和
硫酸アンモニウム中で、ブチル−トヨパール650M
(東ソー(株)製)カラムに供した。活性画分を集め
て、ゲル濾過クロマトグラフィーを行うために、0.3
Mの塩化ナトリウムを含む50mM酢酸緩衝液(pH
5.5)にて平 衡化したトヨパールHW−55S(東
ソー(株)製)カラムに供した。これらのカラムクロマ
トによりタンパク質的に均一なα−ガラクトシダーゼを
得た。
以下の理化学的性質を有する。 作用 α−ガラクトシド結合を加水分解してD−ガラクトース
を遊離する反応を触媒する。 Galα1−OR+H2O→Gal−OH+R−OH (式中、Galα1−ORはα−ガラクトシル基を含む
糖質を、Gal−OHは遊離のガラクトースを、R−O
Hは種々の糖、アルコール及びフェノール類などのヒド
ロキシル基を有する化合物を示す。) 基質特異性 非還元末端にα−ガラクトシル基を有するメリビオー
ス、ラフィノース、スタキオースなどや、パラニトロフ
ェニルα−ガラクトシドに作用する。パラニトロフェニ
ルα−ガラクトシドを基質とした場合の分解速度を10
0とした場合、メリビオースを分解する相対速度は約9
である 。 至適pH及びpH安定性 至適pHは2.5〜6.0である。また、40℃で1時
間放置した場合、pH3.5〜8.0の範囲で安定であ
る。 至適温度及び温度安定性 pH4.5(酢酸緩衝液)における至適温度は60℃で
ある。また、pH4.5(酢酸緩衝液)で15分間放置
した場合、60℃まで安定である。 分子量及び等電点 YMC−Pack Diol−200カラム((株)ワ
イエムシィ製)を用いたゲル濾過法で測定した分子量は
217,000で、SDS−PAGEで測定した分子量
は117,000である(図1及び図2)。また、等電
点電気泳動法により測定した等電点は4.2である。本
酵素は、これまでに報告されているアスペルギルス・ニ
ガー(Aspergillus niger)の生産す
るα−ガラクトシダーゼの72,000及び69,00
0(いずれもSDS−PAGE)に比べ、分子量が大き
いことに特徴を有する。
alの製造) ガラクトース(和光純薬工業(株)製)60gと製造例
で得られたα−ガラクトシダーゼ2,100UMを含む
pH4.5の酢酸緩衝液100ml(ガラクトース濃度
60%(w/v)、酵素濃度35UM−ガラクトース)
を調製し、50℃にて30時間反応させた。反応の経時
変化を図3に示す。反応液を活性炭カラムに負荷し、水
にてガラクトース、エチルアルコール0〜30%の濃度
勾配にてオリゴ糖を溶出した。オリゴ糖溶出画分を濃縮
乾燥してα−ガラクトシル基を含むオリゴ糖を24g得
た。このオリゴ糖は、α−ガラクトシダーゼあるいは酸
で加水分解すると、ガラクトースのみ生成した。なお、
α−ガラクトシダーゼの中でも脱水縮合反応の触媒活性
が最も高いことで知られるカンジダ・ギリエルモンディ
ー(Candida guilliermondii)
H−404株の生産するα−ガラクトシダーゼを用いて
上記と同様の条件でオリゴ糖を製造したところ、収量は
14gで製造例で得られたα−ガラクトシダーゼの収量
が優れていた。
脱塩水90mlに溶解後、2.0N水酸化ナトリウムを
10ml添加し、100℃で30分処理し還元糖のみを
分解させた。塩酸で中和後、その処理液を活性炭カラム
に供し、ピークaを検出・分取した。得られたピークa
画分を1H−NMR、13C−NMRで構造解析を行っ
たところ、ピークaは非還元性二糖のGalα1−1β
Galであることが確認された。帰属データを表1に示
す。なお、数値はTPSを内部標準とした時の化学シフ
ト値(δ)を、括弧内の数値は結合定数を記した。
lcの製造) 乳糖(和光純薬(株)製)100gを市販のβ−ガラク
トシダーゼ(ノボザイム(株)製ラクトザイム)によっ
て加水分解し、ガラクトースとグルコースの等量混合物
を得た。このガラクトースとグルコースの等量混合物8
5gと上記の製造例で得られたα−ガラクトシダーゼ
1,500UMを含むpH4.5の酢酸緩衝液100m
l(糖度85%(w/v)、酵素濃度35UM/g−ガ
ラクトース)を調製し、50℃にて87時間反応させ
た。反応液から活性炭カラムクロマトグラフィーにより
α−ガラクトシル基を含むオリゴ糖27gを得た(カン
ジダ・ギリエルモンディー(Candida guil
liermondii)H−404由来のα−ガラクト
シダーゼの場合は16g)。このα−ガラクトシル基を
含むオリゴ糖は、酸やα−ガラクトシダーゼにより加水
分解すると、ガラクトースとグルコースのみ生成した。
α1−1βGalが混在していることから、精製を容易
にするため本オリゴ20gを100mlの20mMリン
酸緩衝液(pH6.5)に溶解し、45,000LAU
(ノボザイム(株)ラクターゼ単位)となるようにβ−
ガラクトシダーゼ(ノボザイム(株)製ラクトザイム)
を添加し、さらに液量が180mlとなるように20m
Mリン酸緩衝液(pH6.5)を添加した。この溶液を
40℃で24時間処理し、Galα1−1βGalをD
−ガラクトースに加水分解した。さらに、β−ガラクト
シダーゼ処理液に2.0N水酸化ナトリウムを20ml
添加し、100℃で30分し還元糖のみを分解させた。
塩酸で中和後、その処理液を活性炭カラムに供し、ピー
クaを検出・分取した。得られたピークa画分を1H−
NMR、13C−NMRで構造解析を行ったところ、ピ
ークaは非還元性二糖のGalα1−1βGlcである
ことが確認された。帰属データを表2に示した。なお、
数値はTPSを内部標準とした時の化学シフト値(δ)
を、括弧内の数値は結合定数を記した。
る新規な非還元性二糖は、アミノ化合物と還元糖との反
応に起因するメイラード反応によりアミノ酸やタンパク
質が損なわれることがないので、食品の加工や保存にお
いて他の素材への悪影響が少ない食品素材として期待さ
れ、また、医薬素材として期待される。また、本発明の
新規な非還元性二糖の製造方法は、アスペルギルス・ニ
ガー(Aspergillus niger)APC−
9319株(FERM BP−7680)に由来するα
−ガラクトシダーゼを用いることにより、上記の各非還
元性二糖を高収量で製造でき、しかもこの酵素は有機発
酵や種々の食品用酵素剤の給源として利用されており安
全性にも優れる。
量をHPLCで測定した際の検量線を示す図である。
量をSDS−PAGEで測定した結果を示す図である。
変化を示す図である。
Claims (13)
- 【請求項1】下記式(1)で表されるα−ガラクトシル
基を含む非還元性二糖。 【化1】 - 【請求項2】ガラクトース又はガラクトースを含む物質
に微生物に由来するα−ガラクトシダーゼを作用させ、
脱水縮合反応によりα−ガラクトシル基を含むオリゴ糖
を生成させ、該オリゴ糖中の還元糖の分解後、分離操作
することを特徴とする請求項1記載のα−ガラクトシル
基を含む非還元性二糖の製造方法。 - 【請求項3】α−ガラクトシダーゼが、アスペルギルス
・ニガー(Aspergillus niger)に由
来のものである請求項2記載のα−ガラクトシル基を含
む非還元性二糖の製造方法。 - 【請求項4】α−ガラクトシダーゼが、アスペルギルス
・ニガー(Aspergillus niger)AP
C−9319株(寄託番号:FERM BP−768
0)由来のものである請求項3記載のα−ガラクトシル
基を含む非還元性二糖の製造方法。 - 【請求項5】オリゴ糖中の還元糖の分解が、アルカリを
用いることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか
記載のα−ガラクトシル基を含む非還元性二糖の製造方
法。 - 【請求項6】アルカリが、水酸化ナトリウムである請求
項5記載のα−ガラクトシル基を含む非還元性二糖の製
造方法。 - 【請求項7】下記式(2)で表されるα−ガラクトシル
基を含む非還元性二糖。 【化2】 - 【請求項8】ガラクトースとグルコースを含む物質に微
生物に由来するα−ガラクトシダーゼを作用させ、脱水
縮合反応によりα−ガラクトシル基を含むオリゴ糖を生
成させ、混在するGalα1−1βGalの加水分解、
さらに前記オリゴ糖中の還元糖の分解後、分離操作する
ことを特徴とする請求項7記載のα−ガラクトシル基を
含む非還元性二糖の製造方法。 - 【請求項9】α−ガラクトシダーゼが、アスペルギルス
・ニガー(Aspergillus niger)に由
来のものである請求項8記載のα−ガラクトシル基を含
む非還元性二糖の製造方法。 - 【請求項10】α−ガラクトシダーゼが、アスペルギル
ス・ニガー(Aspergillus niger)A
PC−9319株(寄託番号:FERM BP−768
0)由来のものである請求項9記載のα−ガラクトシル
基を含む非還元性二糖の製造方法。 - 【請求項11】混在するGalα1−1βGalの加水
分解が、β−ガラクトシダーゼにより行うことを特徴と
する請求項8〜請求項10のいずれか記載のα−ガラク
トシル基を含む非還元性二糖の製造方法。 - 【請求項12】オリゴ糖中の還元糖の分解が、アルカリ
を用いることを特徴とする請求項8〜請求項11のいず
れかに記載のα−ガラクトシル基を含む非還元性二糖の
製造方法。 - 【請求項13】アルカリが、水酸化ナトリウムである請
求項12記載のα−ガラクトシル基を含む非還元性二糖
の製造方法。
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