JP2003155639A - 偽造防止用テープとその製造法 - Google Patents

偽造防止用テープとその製造法

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JP2003155639A JP2001355556A JP2001355556A JP2003155639A JP 2003155639 A JP2003155639 A JP 2003155639A JP 2001355556 A JP2001355556 A JP 2001355556A JP 2001355556 A JP2001355556 A JP 2001355556A JP 2003155639 A JP2003155639 A JP 2003155639A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 装飾テープおよびラベルについて、検知用微
粉末を添加したフィラメントからなる合成繊維糸を用
い、特定波長の赤外線で照射することにより、真正商品
と酷似した偽造品を検出する。 【構成】 細幅テープまたは広幅織物を織成する際に、
検知用微粉末を樹脂原液に添加して複数本のフィラメン
トを紡糸した、該フィラメントで構成する検知用合成繊
維糸を有機染料によって所定の色に着色し、この検知用
合成繊維糸を縦糸または横糸として織り込んで連続図柄
を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、検知用微粉末を添
加して紡糸したフィラメントからなる検知用合成繊維糸
を織り込んだ偽造防止用テープまたはラベルに関し、特
定波長の赤外線を照射することによって発光またはビー
プ音などを発生させる偽造防止用テープまたはラベルの
製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】衣料品やかばん類などのブランド商品
は、ライセンス品も加わって商品の品質やデザインが多
様化し、これに応じて偽造品が大量に市場に氾濫してい
る。一般の偽造品は、低開発国の安い労働力などを利用
して短期間に大量に製造され、真正商品よりも遥かに安
価で販売されている。この種の偽造品により、その品質
や縫製が劣悪であることで真正商品のブランドイメージ
を損ったり、真正商品と酷似することで同様の販売ルー
トにのって長期間存在し、真正商品の製造・販売業者に
多大の損失を与えている。
【0003】 近年では、繊維製品に関する染色技術と
縫製技術の高度化に伴い、偽造品が真正商品と酷似し、
一般消費者および専門業者でも偽造品を真正商品と簡単
に識別できないケースが多発している。不当な偽造品を
早期に摘発することは、真正商品の製造・販売業者と一
般消費者のために必要であるので種々の摘発方法が提案
されている。その一例として、特殊な生地を使用した
り、特殊な糸で衣料品を縫製すれば、製造コストが非常
に高くなるうえに再模倣の事態に対して迅速に対応でき
ない。
【0004】 他の摘発方法として、商品に縫着するラ
ベルや装飾テープに特殊な処理を施し、例えば、布地全
体を特定の蛍光染料で着色している。この方法では、使
用した蛍光染料と市販品との差異を確認できる資料を全
取引業者に配布することを要し、末端業者では差異の確
認ができずにかえって混乱をきたすことがある。また、
特殊な着色糸をラベルや装飾テープルに織り込んでも、
正確な摘発情報を全取引業者に伝達しにくく、ラベル自
体は目視可能であるので再模倣されやすい。
【0005】 商品に縫着するラベルに関して、実用新
案登録第3001724号や実用新案登録第30017
36号では、蛍光インクで目印表示をラベルに印刷する
ことにより、真正商品を偽造品から区別している。この
蛍光インクによる印刷表示は、太陽光下では無色である
ので肉眼による識別が不可能であり、模倣者による偽造
を効果的に回避できる。この蛍光インクによる印刷表示
は、当該ラベルへ紫外線を照射して発光の有無を調べる
と、紫外線を吸収して青緑色の可視光を放出し、真正商
品と偽造品を容易に識別できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】紫外線照射によるラベ
ル識別法では、既に一般的な鑑別法として汎用されてい
るうえに、作業者が連日紫外線を浴びることになる。波
長320〜400nmの紫外線は、波長が比較的長くて
真皮まで到達し、連日浴び続けると肌の弾力や張りが失
われ、メラノサイトを活性化してシミ・ソバカスを濃く
し、肌の老化を促進するとともに皮膚がんの原因にもな
りやすい。波長290〜320nmの紫外線は、中波長
の紫外線で皮膚に炎症を起こし、いずれにしても作業環
境を悪化させる。また、太陽光が大量の紫外線を含むこ
とにより、前記の目印表示は太陽光の下で青紫色に光る
ことがあり、偽造者によって目印表示が簡単に識別され
てしまうという問題がある。
【0007】 本発明は、衣料用ラベルまたは装飾テー
プの偽造品の摘発に関する前記の問題点を改善するため
に提案されたものであり、紡糸の際に検知用微粉末を練
り込むことにより、赤外線を照射するだけで真正商品と
酷似した偽造品を摘発できる偽造防止用テープおよびそ
の製造法を提供することを目的としている。本発明の他
の目的は、赤外線を照射するだけで真正商品と酷似した
偽造品を摘発できる偽造防止用ラベルおよびその製造法
を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る偽造防止用テープまたはラベルでは、
無機質の検知用微粉末を2〜10重量%添加して紡糸し
た5〜10デニールのフィラメントを10〜30本有
し、該フィラメント単独または通常のフィラメントを加
えて撚糸した検知用合成繊維糸を用いると好ましい。本
発明の偽造防止用テープは、所定の色に着色した検知用
合成繊維糸を縦糸または横糸として織り込んで連続図柄
を形成することにより、特定波長の赤外線を照射すると
検知用合成繊維糸が特定の可視光を放出することで真正
商品を識別できる。また、本発明のラベルは、所定の色
に着色した検知用合成繊維糸を縦糸または横糸としてテ
ープ素材に織り込み、テープ素材の織成後にラベル1枚
ごとに横方向に裁断することにより、特定波長の赤外線
を照射すると検知用合成繊維糸が特定の可視光を放出す
ることで真正商品を識別できる。
【0009】 一方、本発明方法で製造する偽造防止用
テープまたはラベルは、特定波長の赤外線を照射するこ
とにより、織り込んだ検知用合成繊維糸が特定の色に発
光したり、ビープ音を発したりまたは特定赤外線を放出
する。本発明方法で得る偽造防止用テープは、市販のフ
ァスナ用テープおよびその関連物を包含せず、一般に、
スポーツウェアの肩口や袖口などに縫着する装飾テープ
または包装用テープなどを意味する。
【0010】 本発明方法では、検知用微粉末を樹脂原
液に添加して複数本のフィラメントを紡糸する。本発明
方法で偽造防止用テープを製造するには、紡糸フィラメ
ントで構成する検知用合成繊維糸を有機染料によって所
定の色に着色し、この検知用合成繊維糸を縦糸または横
糸として織り込んで連続図柄を形成しても、該フィラメ
ントで構成する検知用合成繊維糸を縦糸または横糸とし
て織り込み、さらに有機染料によって全体を所定の色に
着色してもよい。好ましくは、検知用合成繊維糸は検知
用ポリエステル糸であり、検知用ポリエステル糸を分散
染料によって着色する。
【0011】 また、本発明方法で偽造防止用ラベルを
製造するには、検知用微粉末を樹脂原液に添加して複数
本のフィラメントを紡糸し、該フィラメントで構成する
検知用合成繊維糸を有機染料によって所定の色に着色
し、この検知用合成繊維糸を縦糸または横糸としてテー
プ素材に織り込み、テープ素材の織成後にラベル1枚ご
とに横方向に裁断する。好ましくは、偽造防止用ラベル
のテープ素材は、レピア織機やニードル織機などの高速
織機で織成する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に係る偽造防止用テープま
たはラベルにおいて、これらに織り込む検知用合成繊維
糸3は、図2に例示するように、検知用微粉末1を樹脂
原液に添加して紡糸した複数本の糸状つまりフィラメン
ト2で構成する。好ましくは、この偽造防止用テープま
たはラベルは、無機質の検知用微粉末1を添加して紡糸
した5〜10デニールのフィラメント2を10〜30本
有し、図3(1)のようにフィラメント2単独の合成繊
維糸3を、または図3(2)のように通常の補強用フィ
ラメント4を加えて撚糸した合成繊維糸3'を用いる。
【0013】 好適な検知用合成繊維糸3,3'では、
フィラメント2は繊度が5〜10デニールであり、5デ
ニール未満では引張り強度の点で問題になりやすく、1
0デニールを超えると、他の縦糸や横糸との比較におい
て外観や触感などの点で好ましくない。この検知用合成
繊維糸3,3'において、フィラメント2の数は10〜
30本であり、これは補強用フィラメント4を加えて撚
糸した際でもほぼ同様である。フィラメント数が10本
未満であると、可視性および引張り強度の点で問題にな
りやすく、30本を超えると、他の縦糸や横糸との比較
において外観や触感などの点で違和感を生じやすい。
【0014】 この偽造防止用テープまたはラベルにお
いて、その布本体は、織り込む検知用合成繊維糸3,
3'と一致または類似する合成繊維糸から織成または編
成すればよい。また、1本または複数本の合成繊維糸
3,3'で布地に文字や図柄を織り出す際には、該合成
繊維糸と異なる合成繊維、天然繊維または混紡糸で織成
してもよい。
【0015】 本発明で用いる検知用微粉末1は、特定
波長の赤外線を照射することにより、特定の色に発光し
たり、公知の感知装置(図示しない)に微電流が流れて
ビープ音を発したりまたは特定赤外線を放出する特性を
有する。好ましくは、検知用微粉末は、平均粒径が2〜
3μm、95%が粒径7μm以下である無機質物質であ
り、波長780nm〜1.5μmである近赤外線を吸収
してで可視光を放出する。
【0016】 検知用微粉末1は、通常、特定波長の赤
外線で一時的に励起され、可視光または特定波長の赤外
線などを発光し、光源なしでは発光しない無機質の蛍光
体である。この蛍光体は、容易に判別できる緑色、赤
色、黄色などの可視光や赤外線を放出する特性を有し、
残光性を殆ど持たないうえに、長期間に亘って発光性を
保持できるものであると好ましい。無機質の蛍光体は、
一般に、有機化合物の蛍光物質に比べて有毒性が少な
く、耐候性および他の加工性が良好である。結晶無機質
の蛍光体では、特定の不純物を加えることにより明るい
発光が生じる場合があり、このような不純物として無機
質の賦活剤または増感剤を添加する場合がある。この増
感発光とは、ルミネセンスの増感効果によって生じる発
光を意味し、ルミネセンスの増感は、固体の蛍光体にお
いて、局在した発光中心(分子または不純物)から生じ
る光ルミネセンスの量子収量が発光中心以外の局在中心
つまり増感中心からの励起エネルギー移動によって増大
する現象である。増感中心がまず刺激光を吸収し、その
励起エネルギーが共鳴的に発光中心に伝えられると、か
なり高い量子収量で増感蛍光が生じる場合がある。
【0017】 検知用微粉末1に関して、赤外線を照射
すると発光する無機質の蛍光体として、ユウロピウム
(Eu)、ネオジウム(Nd)、イツテルビウム(Y
b)、ツリウム(Tm)、プラセオジウム(Pr)、ジ
スプロシウム(Dy)などの希土類元素が例示できる。
また、これらの混合物を発光中心として、その発光中心
がフッ化物やリン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン
酸塩などの酸化物が母体に含まれている無機化合物でも
よく、具体的には、NdP514、LiNdP4 12
NaY0.69Yb0.3 Er0.014 などの無機化合物が例
示でき、これらをさらに混合して使用してもよい。
【0018】 他の無機化合物として、Nd0.8Yb0.2
Na5 (WO4 )4、Nd0.9Yb0.1Na5(Mo4)4、Y
0.1Nd0.75Yb0.15(WO4)4、Nd0.8Yb0.2Na
5(Mo0.50.54)4、Bi0.1Nd0.75Yb0.155(M
oO4)4、La 0.1Nd0.8Yb0.1(Na0.90.1)5(WO
4)4、Nd0.9Yb0.1Al3(BO3)4、LiNd0.90.1
412、LiBi0.2Nd0.70.1412、NaNd
0.90. 1412を使用してもよい。さらに、Y,L
a,GdまたはBiから選択された少なくとも1種の元
素とYbとを含むリン酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸
塩、タングステン酸塩などの含酸素酸塩であってもよ
い。
【0019】 好適な検知用微粉末1として、特定波長
の赤外線を照射すると、より短波長の緑、赤、黄、青、
紫色などの可視光を放出する特性を有する無機質粉末が
存在する。この無機質粉末は、例えば、硫化カルシウム
(CaS)に極微量のユウロピウムとサマリウム(S
m)とを添加した物質からなり、ユウロピウムが光を吸
収して電子をサマリウムへ移すことによって内部にエネ
ルギーをため込んでいる。この状態の蛍光体に赤外線を
照射すると、サマリウムに貯めておいた電子がユウロピ
ウムに戻されて可視光を放出する。この無機質粉末は、
常に周囲の光を吸収して内部にエネルギーをため込み、
赤外線が照射されるとその刺激によって貯め込んだエネ
ルギーを再び可視光として放出することにより、赤外線
を効率良く可視光に変換することができる。
【0020】 無機質の蛍光体には、赤外線の照射で可
視光を発光する液状の有機化合物を付着させたり、その
有機化合物を添加した樹脂粉末を混入したり、特定波長
の赤外線を吸収する無機質粉末を追加することも可能で
ある。この有機化合物として、DTTCI(CAS登録
番号3071−70−3),HDITCI(CAS登録
番号23178−67−8),IR−125(CAS登
録番号3599−32−4),IR−132(CAS登
録番号62669−62−9),IR−140(CAS
登録番号53655−17−7)などが例示できる。
【0021】 検知用微粉末1は、紡糸原液に対して2
〜10重量%添加すると好ましい。この際に、2重量%
未満では発光が弱くなって感知しにくくなり、10重量
%を超えると不経済であるうえに紡糸作業に悪影響を与
えやすい。一般に、検知用微粉末1は、合成繊維糸3が
淡色染色であれば2〜4重量%程度添加し、濃色染色で
あると4〜10重量%添加すればよい。
【0022】 検知用微粉末1は、粒径が微細であるほ
ど好ましく、平均粒径が2〜3μm、95%が粒径7μ
m以下であると十分に紡糸可能であり、糸切れなども発
生しない。検知用微粉末1は、樹脂原液に添加の際に安
定性を良くするために、クロムやマンガンなどの酸化物
や塩によって表面処理を行ってもよい。検知用微粉末1
を紡糸原液に加える手段は、溶融・溶解時に単に添加し
たり、該微粉末を数%含有させた樹脂液のチップとして
添加したり、紡糸機直前に該微粉末ドープをブライトド
ープに混入したりする。
【0023】 検知用微粉末1を添加する繊維原液に
は、紡糸可能な樹脂であれば使用でき、ポリエステル、
ビニロン、ナイロン、アクリル、アセテート、レーヨン
などが例示できる。特に、ポリエステルおよびナイロン
は、比較的容易な溶融紡糸が可能であり、繊維として製
造コストと耐久性などの点で好ましく、下記の実施例で
は検知用合成繊維糸3としてポリエステル糸10を用い
る。
【0024】 検知用微粉末1を添加した紡糸原液は、
ポリエステルやナイロンなどでは溶融紡糸を行い、アク
リル繊維では乾式紡糸や湿式紡糸を行い、ビニロンやレ
ーヨンの場合には湿式紡糸、アセテートの場合には乾式
紡糸を行う。図1に例示するように、検知用微粉末1を
添加した紡糸原液は、濾過層と紡糸口金5を一体とした
ノズルブロック7へ導き、ノズルから吐出された糸状で
あるフィラメント2は、紡糸筒8で層流の空気流によっ
て冷却されて固化し、微粉末1は繊維樹脂9の中に埋め
込まれてカバーされた態様になる(図2参照)。例え
ば、用いる紡糸口金5のノズル数は24または12個で
あり、1本のフィラメント2は5〜10デニール、好ま
しくは6デニールであるから、検知用合成繊維糸3は通
常50〜200デニールである。
【0025】 フィラメント2単独または通常のフィラ
メントを加えて撚糸した検知用合成繊維糸3は、次に、
有機染料を用いる浸染法によって白、赤、緑、青、黒な
どの所定の色に染色する。例えば、ポリエステル糸で
は、分散染料によってキャリアなしで淡色に染色し、分
散染料によって高温で中色に染色し、分散染料やナフト
ール染料によって高温で濃色に染色する。ナイロン糸で
は、連続的に染色処理し、淡色染色に分散染料、中色か
ら濃色染色に酸性染料や金属錯塩染料を用いる。アクリ
ル繊維糸では、カチオン染料や分散染料を用いる。分散
染料には、分散性と水溶性とがあり、一般に染色法が簡
単で均染性に富み、赤外線照射による発光に与える影響
が比較的少ない。
【0026】 染色した検知用合成繊維糸3は、市販の
織機または編機において織地または編地の中に組み入
れ、その織地または編地の地色と一致させると外観上の
違和感は全くなく、模様と対応させるとデザイン的にも
調和する。この組み入れは、織地については縦糸または
横糸として直線状に織り込む。縦糸として織り込む場
合、合成繊維糸3の織り込み本数は、装飾テープ(図示
しない)またはテープ素材26(図7)について通常1
本であるが、複数本にすることも可能であり、その織り
込み位置で生産地や製造日時などを特定できる。横糸の
場合には、地色と異なる色彩の合成繊維糸3によって適
宜の図柄や文字を織り出してもよく、これは編地の場合
でもほぼ同様である。
【0027】 別の装飾テープ(図示しない)では、フ
ィラメント2単独または通常のフィラメントを加えて撚
糸した検知用合成繊維糸を縦糸または横糸として織り込
んだ後に、さらに有機染料によって全体を所定の色に着
色することも可能である。この場合には、この装飾テー
プは一般に無地であるから、所望に応じて後でプリント
模様を印刷してもよい。同様の方法によってプリントラ
ベルを製造することもできる。
【0028】 装飾テープ14(図5)またはラベル用
テープ素材26(図7)は、細幅ニードル織機(図示し
ない)を用いて細幅テープを1本ずつ製造しても、また
はレピア織機などの高速織機(図示しない)を用いてま
ず広幅織物16(図6)を織成し、次に該広幅織物をヒ
ートカットなどで多数本に切断してもよい。これらの高
速織機の上方にはジャカード機を配置し、例えば、検知
用合成繊維糸3を縦糸として織り込む場合には、1本ず
つジャカード機の1かま分ごとに同時に送り込み、合成
繊維糸3は通常の縦糸と同様に一定の横間隔をおいてジ
ャカード機の竜頭より下方のヘルドに通す。また、合成
繊維糸3を横糸として配列するには、高速織機におい
て、ラベルまたはテープの横幅分ごとに横方向に通して
直線状に織り込んでも、より多数本通して文字や図柄を
織り出してもよい。この場合には、検知用合成繊維糸3
は、通常の横糸と同様に高速織機の横糸供給装置によっ
て挿入する。
【0029】 本発明方法で得た偽造防止用テープまた
はラベルにおいて、検知用合成繊維糸3は太陽光や蛍光
灯光の下では発光せず、他の繊維糸と同一でその存在を
全く認識できない。一方、取引者や消費者が、市販の赤
外レーザーペンなどによって、通常、波長780nm〜
1.5μmである近赤外線を偽造防止用テープに照射す
れば、検知用合成繊維糸3中の微粉末1である蛍光体を
励起し、緑、赤、黄、青、紫、白などの可視光を放出し
て発光する。この赤外レーザーペンは、比較的安価な汎
用品でよく、偽造防止用テープやラベルを視覚によって
識別できる。この赤外レーザーペンは、可視領域で発光
する合成繊維糸3に対して有効であり、裸眼による識別
が困難な場合には凸レンズや拡大鏡と組み合わせて使用
してもよい。
【0030】 より精確な証明器具として、検知用微粉
末1などの蛍光体が存在するか否かをデジタル値で示す
公知の励起検出対(試金)が存在する。例えば、この検
出対のモジュールは、光学濃度および波長が特定の用途
に依存する赤色または赤外レーザーダイオードである。
この検出対は、感光固定増幅領域で作用し、目標から4
インチまでの距離において信頼できる検出値を算出す
る。この装置は、可視光または赤外線のいずれかを放出
する蛍光体に用いることができる。この検出対は、小型
であってその応答はYesまたはNoの二値デジタルで
あるので、種々のスキャナおよびリーダに組み込み、視
覚機器、ビープ音発生の警報機器などを提供することが
できる。
【0031】 また、赤外レーザーダイオードを備える
機器を用いて、例えば波長785nmのレーザー光線を
検知用合成繊維糸3に照射し、放出した特定赤外線をC
CDカメラなどで読み取ってもよい。この機器は、レー
ザー光線を狭い波長範囲で出力するため、波長785n
mの赤外線以外のノイズの出力は少ない。例えば、この
レーザー光線は、直径7mmで30mWの強さで発光
し、これを凹レンズおよび凸レンズを通して70mmの
光束に拡大して照射する。この照射で放出される赤外線
は、微弱であるので光増幅器に通して数万倍に増幅した
後にCCDカメラで捉え、該カメラの画面に表示するこ
とによって読み取ることができる。撮像素子としてのC
CDは、波長400〜750nmの可視領域より広範囲
の波長380〜950nmを有する光線を捕捉できるた
め、増幅した反射光中に含まれる波長833nmの赤外
線をCCDで捉え、CCDカメラの画面上に表示でき
る。好ましくは、反射光から833nm以外の波長を有
するノイズを低減化するため、反射光を前記CCDカメ
ラに導く前にノッチフィルタを通過させると好ましい。
【0032】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいて説明する
が、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0033】 織ラベル12(図4)に関して、検知用
合成繊維糸3であるポリエステル糸10は、平均粒径が
2〜3μmである検知用微粉末1をポリエステル紡糸原
液に約3重量%添加して溶融紡糸する(図1参照)。検
知用微粉末1は、硫化カルシウムに極微量のユウロピウ
ムとサマリウムとを添加した物質からなる。検知用微粉
末1は、水および希酸に溶解せず、空気中での耐熱性が
700℃であって、特定波長の赤外線を照射すると緑色
に発色する。この溶融紡糸において、紡糸口金5のノズ
ル数は24個、1本のフィラメント2は約6デニールで
あることにより、得た検知用ポリエステル糸10は24
本のフィラメントで150デニールである。
【0034】 検知用ポリエステル糸10は、次に、分
散染料(例えば、商品名:パラニール、BASF製)を
用いる浸染法によって淡黄色に染色する。ポリエステル
糸10には、水または有機溶媒を媒体として分散染料を
パッドし、乾燥後に180〜270℃の乾熱高温で1〜
1.5分間処理する。
【0035】 検知用ポリエステル糸10は、レピア織
機によって広幅織物16(図6)を織成する際に、1本
ずつジャカード機の1かま分ごとに同時に送り込む。こ
のジャカード機において、ポリエステル糸10は通常の
縦糸と同様に、一定の横間隔をおいて該ジャカード機の
竜頭より下方のヘルドに通す。用いる他の縦糸は、検知
用ポリエステル糸10と同様の淡黄色のポリエステル糸
である。このジャカード機では、各竜頭が縦針と接続さ
れており、この縦針と連結した横針が紋紙パターンに応
じて移動して紋様を形成する。広幅織物16の紋様は、
帯状に並列する織テープに応じて、縦方向に直線状に並
んだABCなどの文字24(図7参照)である。一方、
このレピア織機には、多数本のホットナイフをブレスト
ビームの前方に配置し、広幅織物16を織成した直後に
テープ状に裁断し、リールに巻取っていく。
【0036】 図7に示すテープ素材26は、広幅織物
16を帯状にヒートカットして同時に多数本製造され、
その両側縁にヒートカットによる繊維溶融部28が発生
する。テープ素材26は、公知の縁縫い装置を通すこと
により、その両側縁において、単環縫い部をそれぞれ形
成する1本の縫い糸30が繊維溶融部28と交差し、且
つその縫い目が重合せずに連続的に存在し、細い縫い糸
30で繊維溶融部28を密に被覆する。テープ素材26
には、1本の縦糸である検知用ポリエステル糸10が織
り込まれ、実際にはポリエステル糸10はテープ素材2
6の地色と全く同一である。
【0037】 縁縫いしたテープ素材26には、さらに
樹脂加工を施こすと好ましい。テープ素材26は、文字
24単位ごとに横方向にヒートカットし、後続の折り曲
げ工程で図4の一点鎖線においてエンドホールドし、所
望の織ラベル12(図4)を作製する。織ラベル12
は、折り曲げ工程でエンドホールドまたはセンターホー
ルドしてからヒートプレスする。得た織ラベル12は、
例えば、ブルゾンのような衣服の衿裏側や服裏側などに
縫着する。
【0038】 織ラベル12において、検知用ポリエス
テル糸10は太陽光や蛍光灯光の下では発光せず、他の
縦糸と色彩が同一でその存在を全く認識できない。一
方、取引者や消費者が、市販の赤外レーザーペンによっ
て特定波長の赤外線を織ラベル12に照射すれば、検知
用ポリエステル糸10中の蛍光体を励起し、緑色の可視
光を放出して発光する。この結果、織ラベル12を縫着
した衣類が真正商品であることを視覚によって容易に判
別できる。
【0039】 また、装飾テープ14(図5)に関し
て、検知用ポリエステル糸10は、検知用微粉末1をポ
リエステル紡糸原液に約6重量%添加して溶融紡糸す
る。検知用微粉末1は、硫化カルシウムに極微量のユウ
ロピウムとサマリウムとを添加した物質からなる。15
0デニールである検知用ポリエステル糸10は、適宜の
分散染料を用いる浸染法によって赤色に染色する。
【0040】 検知用ポリエステル糸10は、上方にジ
ャカード機を設置した細幅ニードル織機によってテープ
14を織成する際に、図柄31の繰り返しごとに横方向
に通す。このジャカード機では、各竜頭が縦針と接続さ
れており、この縦針と連結した横針が紋紙パターンに応
じて移動して図柄31を形成する。このニードル織機に
おいて、赤色のポリエステル糸10は、通常の横糸と同
様に織機の横糸供給装置(図示しない)によって挿入さ
れ、図柄31の一部または全部を形成する。このニード
ル織機では、テープ14を織成してヒートセットしてか
ら、リールに巻取っていく。装飾テープ14は、トレー
ニングウェアの肩回りや袖口などに縫着したり、または
包装用品として使用する。
【0041】 装飾テープ14において、検知用ポリエ
ステル糸10は太陽光や蛍光灯光の下では発光せず、図
柄31においてその存在を全く認識できない。一方、取
引者や消費者が、市販の赤外レーザーペンによって特定
波長の赤外線を装飾テープ14に照射すれば、図柄31
中のポリエステル糸10中の蛍光体を励起し、緑色の可
視光を放出して発光する。この結果、装飾テープ14を
縫着した衣類が真正商品であることを視覚によって容易
に判別できる。
【0042】 別の装飾テープ(図示しない)に関し
て、検知用ポリエステル糸10は、無機質であるユウロ
ピウム系化合物の検知用微粉末1をポリエステル紡糸原
液に約2重量%添加して溶融紡糸する。150デニール
である検知用ポリエステル糸10は、細幅ニードル織機
によって織成する際に縦糸として織り込む。
【0043】 得た装飾テープは、適宜の分散染料を用
いる浸染法によって淡水色に染色する。この装飾テープ
は、スクリーン印刷機によってさらに所望のプリント模
様を印刷する。この装飾テープの縦糸に関して、検知用
ポリエステル糸10の織り込み位置を生産年度や生産工
場ごとに設定すれば、該テープから有用な情報を得るこ
とができる。
【0044】 この装飾テープにおいて、検知用ポリエ
ステル糸10は太陽光や蛍光灯光の下では発光せず、そ
の存在を全く認識できない。一方、取引者や消費者が、
市販の赤外レーザーペンによって特定波長の赤外線を装
飾テープに照射すれば、ポリエステル糸10中の蛍光体
を励起し、緑色の可視光を放出して発光する。この結
果、この装飾テープを縫着した衣類が真正商品であるこ
とを視覚によって容易に判別できる。
【0045】
【発明の効果】本発明に係る偽造防止用テープおよびラ
ベルは、織成または編成の際に検知用合成繊維糸を組み
込むだけであり、この組み込みに際して特殊な工程や装
置を何ら必要とせず、従来と同様の装置および同様の生
産能率で安価に製造できる。この検知用合成繊維糸に含
まれる微粉末は、フィラメントの中に分散しており、繊
維樹脂でカバーされた態様であるので耐候性および耐磨
耗性に優れ、長期間発光能力を維持できる。しかも、こ
の検知用微粉末は、主として可視光発光の無機質物質で
あり、有機化合物の蛍光粉末に比べて有毒性が少なく、
耐候性および他の加工性が良好である。
【0046】 本発明の偽造防止用テープおよびラベル
は、特定波長の赤外線を照射することによって部分的に
発光したり警報を発し、赤外線の照射は比較的簡便であ
って技術的に陳腐化していない。この偽造防止用テープ
およびラベルは、太陽光や蛍光灯光の下では布地の地色
などと同一であり、商品の真贋に疑問が生じれば、取引
者,小売業者や消費者が赤外線ランプなどで特定波長の
赤外線を偽造防止用テープに照射し、発光の有無などに
よって真正商品であるか否かを容易且つ確実に確認でき
る。
【0047】 本発明の偽造防止用テープおよびラベル
は、通常の太陽光や蛍光灯光では布地の地色と同一であ
るので、これらを目視しただけでは特殊な合成繊維糸を
織り込んでいることが判らず、偽造業者が同一の製品を
製造することは殆ど不可能である。この偽造防止用テー
プやラベルにより、専門の取引業者でも外観から識別で
きないほど偽造品が酷似していても、偽造品を早期且つ
確実に検出でき、真正商品の製造者および一般消費者は
偽造品から受ける被害を速やかに免れ、仮に商品が模倣
された場合でも検知用合成繊維糸の発色と織り込み位置
を変更すれば、偽造業者に再模倣されることが速やかに
回避でき、損害を軽微に押えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で用いる検知用合成繊維糸の紡糸装置
を例示する概略側面図である。
【図2】 検知用合成繊維糸を構成するフィラメントを
可視域まで拡大して示す断面図である。
【図3】 (1)および(2)は検知用合成繊維糸をそ
れぞれ示す拡大断面図である。
【図4】 本発明に係る偽造防止用ラベルの平面図であ
る。
【図5】 本発明に係る偽造防止用テープの部分平面図
である。
【図6】 図4のラベルに用いる広幅織物の部分平面図
である。
【図7】 図6の広幅織物から得たテープ素材の部分平
面図である。
【符号の説明】
1 検知用微粉末 2 フィラメント 3 検知用合成繊維糸 10 検知用ポリエステル糸 12 ラベル 14 装飾テープ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ナイジェル ベリー イギリス国 チェシアー ノースウィッチ ウイーバーハム フィールドウエイ 29 (72)発明者 寺嶋 秀樹 福井県丹生郡清水町杉谷45−306 日本ダ ム株式会社清水工場内 Fターム(参考) 4L035 BB31 EE07 JJ02 JJ07 KK01 KK06 4L048 AA20 AA46 AA47 AA56 AB07 AC00 AC07 BA01 BA02 CA00 DA08 EB00

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機質の検知用微粉末を2〜10重量%
    添加して紡糸した5〜10デニールのフィラメントを1
    0〜30本有し、該フィラメント単独または通常のフィ
    ラメントを加えて撚糸した検知用合成繊維糸を用い、所
    定の色に着色した検知用合成繊維糸を縦糸または横糸と
    して織り込んで連続図柄を形成することにより、特定波
    長の赤外線を照射すると検知用合成繊維糸が特定の可視
    光を放出することで真正商品を識別できる偽造防止用テ
    ープ。
  2. 【請求項2】 無機質の検知用微粉末を2〜10重量%
    添加して紡糸した5〜10デニールのフィラメントを1
    0〜30本有し、該フィラメント単独または通常のフィ
    ラメントを加えて撚糸した検知用合成繊維糸を用い、所
    定の色に着色した検知用合成繊維糸を縦糸または横糸と
    してテープ素材に織り込み、テープ素材の織成後にラベ
    ル1枚ごとに横方向に裁断することにより、特定波長の
    赤外線を照射すると検知用合成繊維糸が特定の可視光を
    放出することで真正商品を識別できる偽造防止用ラベ
    ル。
  3. 【請求項3】 特定波長の赤外線を照射することによ
    り、織り込んだ検知用合成繊維糸が特定の色に発光した
    り、ビープ音を発したりまたは特定赤外線を放出する偽
    造防止用テープについて、検知用微粉末を樹脂原液に添
    加して複数本のフィラメントを紡糸し、該フィラメント
    で構成する検知用合成繊維糸を有機染料によって所定の
    色に着色してから、この検知用合成繊維糸を縦糸または
    横糸として織り込んで連続図柄を形成している偽造防止
    用テープの製造法。
  4. 【請求項4】 特定波長の赤外線を照射することによ
    り、織り込んだ検知用合成繊維糸が特定の色に発光した
    り、ビープ音を発したりまたは特定赤外線を放出する偽
    造防止用テープについて、検知用微粉末を樹脂原液に添
    加して複数本のフィラメントを紡糸し、該フィラメント
    で構成する検知用合成繊維糸を縦糸または横糸として織
    り込み、さらに有機染料によって全体を所定の色に着色
    している偽造防止用テープの製造法。
  5. 【請求項5】 特定波長の赤外線を照射することによ
    り、織り込んだ検知用合成繊維糸が特定の色に発光した
    り、ビープ音を発したりまたは特定赤外線を放出する偽
    造防止用ラベルであって、検知用微粉末を樹脂原液に添
    加して複数本のフィラメントを紡糸し、該フィラメント
    で構成する検知用合成繊維糸を有機染料によって所定の
    色に着色し、この検知用合成繊維糸を縦糸または横糸と
    してテープ素材に織り込み、テープ素材の織成後にラベ
    ル1枚ごとに横方向に裁断する偽造防止用ラベルの製造
    法。
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