JP2003151903A - 半導体薄膜の製造装置およびその製造方法ならびに表示装置 - Google Patents

半導体薄膜の製造装置およびその製造方法ならびに表示装置

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JP2003151903A JP2001344984A JP2001344984A JP2003151903A JP 2003151903 A JP2003151903 A JP 2003151903A JP 2001344984 A JP2001344984 A JP 2001344984A JP 2001344984 A JP2001344984 A JP 2001344984A JP 2003151903 A JP2003151903 A JP 2003151903A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高性能な表示装置を得るために、基板上に良
質な多結晶半導体薄膜を形成することのできる半導体薄
膜の製造装置およびその製造方法ならびに表示装置を提
供する。 【解決手段】 数μm幅のエネルギビームを非晶質半導
体薄膜上に照射することによって、多結晶半導体薄膜を
形成するための半導体薄膜の製造装置およびその製造方
法において、エネルギビームの波長をλ(mm)、エネ
ルギビームを半導体薄膜に結像させるために用いる対物
レンズの開口数をNA、半導体薄膜上に結像されるエネ
ルギビームの幅をw(mm)としたとき、0.55×N
A/λ>1/(2×w)を満たす。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エネルギビーム、
特にレーザ光を利用して半導体薄膜を結晶化する製造装
置およびその製造方法、ならびに多結晶半導体薄膜を活
性層とする薄膜トランジスタを用いた表示装置に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】液晶やエレクトロルミネッセンス(E
L)を応用した表示装置に用いられている薄膜トランジ
スタでは、非晶質もしくは多結晶のシリコンが活性層と
して用いられる。このうち、多結晶シリコンの薄膜トラ
ンジスタにおいては電子の移動度が高いため、多結晶シ
リコンの薄膜トランジスタは非晶質シリコンの薄膜トラ
ンジスタに比較して多くの長所を有している。
【0003】たとえば、多結晶シリコンの薄膜トランジ
スタを用いれば、画素部分にスイッチング素子を形成す
るだけでなく、画素周辺部分に駆動回路と一部の周辺回
路とを1枚の基板上に形成することができる。このた
め、別途ドライバIC(Integrated Circuit)や駆動回
路基板を表示装置に実装する必要がなくなるので、表示
装置を低価格で提供することが可能となる。
【0004】また、その他の長所として、トランジスタ
の寸法を微細化できるので、画素部分に形成するスイッ
チング素子が小さくなり高開口率化を図ることができ
る。このため、高輝度、高精細な表示装置を提供するこ
とが可能となる。
【0005】多結晶シリコン薄膜の製造方法としては、
ガラス基板にCVD(Chemical Vapor Deposition)法
などで非晶質シリコン薄膜を形成した後、別途、非晶質
シリコンを多結晶化する工程が必要である。
【0006】通常、結晶化のアニール工程は、600℃
以上の高温アニール法によって行なわれる。しかし、こ
の場合、高温に耐える高価なガラス基板を使用する必要
があり、表示装置の低価格化の阻害要因となっていた。
近年はレーザを用いて600℃以下の低温で非晶質シリ
コンの結晶化を行なう技術が一般化され、低価格のガラ
ス基板に多結晶シリコントランジスタを形成した表示装
置を低価格で提供できるようになっている。
【0007】レーザによる結晶化技術は、アモルファス
シリコン薄膜を形成したガラス基板を400℃程度に加
熱し、そのガラス基板を走査しながら、長さ200〜4
00mm、幅0.2〜1.0mm程度の線状レーザビー
ムをガラス基板上に連続的に照射する方法が一般的であ
る。この方法によって、粒径0.2〜0.5μm程度の
結晶粒が形成される。このときレーザを照射した部分の
非晶質シリコンは、厚さ方向全域にわたって溶融するの
ではなく、一部の非晶質領域を残して溶融する。これに
よって、レーザ照射領域全面にわたって、至るところに
結晶核が発生し、シリコン薄膜最表層に向かって結晶が
成長し、ランダムな方位の結晶粒が形成される。
【0008】さらに高性能な表示装置を得るためには、
多結晶シリコンの結晶粒径を大きくすること、結晶の方
位を制御することが必要であり、多結晶シリコンに近い
性能を得ることを目的に、近年、数多くの研究開発がな
されている。
【0009】その中でも特に、特表2000−5052
41号公報にはスーパーラテラル成長と称する技術が開
示されている。この公表公報に記載の方法は、図13
(a)および(b)に示すように、パルスレーザをシリ
コン薄膜に照射し、シリコン薄膜をレーザ照射領域11
の厚さ方向全域にわたって溶融させ、溶融部分と未溶融
部分との境界から横方向、すなわちガラス基板に水平な
方向14に結晶粒の成長を制御し、針状の結晶を得るも
のである。このときの結晶成長距離12は、各種のプロ
セス条件によって異なり、基板温度300℃において、
波長308nmのエキシマレーザを照射した場合には、
1μm程度となることが知られている(参考文献:応用
物理学会結晶工学分科会第112回研究会テキストp
p.19〜25)。
【0010】したがって、レーザ照射領域11の幅が結
晶成長距離の2倍より大きい、たとえば3μm程度であ
ると、図13(a)に示すように、薄膜の未溶融部と溶
融部の境界から1μm程度は針状の結晶12が得られる
が、レーザ照射領域11の中央部には微結晶領域13が
形成される。一方、図13(b)に示すようにレーザ照
射領域11の幅が結晶成長距離の2倍以下、たとえば2
μm程度あるいはそれ以下であると、レーザ照射領域1
1の中央部で両端から成長した結晶が衝突し、微結晶領
域のない良好な結晶が得られる。
【0011】図14は、複数のパルスレーザ照射による
シリコン薄膜結晶化の形態を説明する図である。スーパ
ーラテラル成長は、図13(a)および(b)に示した
とおり、レーザパルスを1回照射することで完了する
が、図14(a)〜(c)に示すように1回前のレーザ
照射で形成された針状結晶の一部に重複させて、順次レ
ーザパルスを照射していくと、既に成長した結晶を引継
いで、さらに長い針状の結晶が成長し、結晶の成長方向
に方位の揃った大結晶が得られるといった特徴を有して
いる。
【0012】つまり、図14(a)に示すように1回目
のレーザパルスの照射領域15から少しずらした領域1
6に2回目のレーザパルスが照射される。これにより、
図14(b)に示すように針状結晶が若干延びる。さら
に、2回目の照射領域16から少しずらした領域17に
3回目のレーザパルスを照射するというようにして、順
次レーザパルスを照射していくと、図14(c)に示す
ように最終的には非常に長い針状の結晶を成長させるこ
とが可能となる。
【0013】なお、図14(c)の領域19はN−1回
目の照射領域を示しており、領域20はN回目の照射領
域を示している。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記の公表公報には、
エキシマレーザでマスク面を照射し、マスク像を基板上
に縮小投影するための装置が開示されている。このよう
なシステム構成のレーザ装置は汎用的に用いられるが、
前述のとおり投影像の最小寸法は0.2mm程度であ
る。
【0015】一方、上記の公表公報に開示された技術で
は、数μm幅の極めて微細なパターンを基板面に高精度
に縮小投影することが必須の要件であり、これを実現す
るためには極めて高精度に製作し、組立・調整を行なっ
た光学システム、特に高性能な対物レンズが必要であ
る。
【0016】微細パターンを縮小投影する従来装置の代
表例としては、フォトレジストの露光装置が挙げられる
が、レジストの露光に必要な光のエネルギ密度に対し、
シリコンの結晶化に必要なエネルギ密度は少なくとも1
0倍以上であり、光学システムに要求される要件が全く
異なっている。
【0017】ところが、上記の公表公報には、このよう
な光学システムの満たすべき要件については記載されて
おらず、本願発明者らが行なった実験によると、前記ス
ーパーラテラル成長技術を応用した表示装置を実現する
ためには、特別な光学システムを有する結晶化装置が必
要になることが判明した。
【0018】図15は、従来の半導体薄膜の製造装置を
用いて製作したスーパーラテラル成長による多結晶シリ
コンを説明する図である。図15(a)に示すように、
従来の光学システムでは、たかだか0.2mm幅にレー
ザビームを結像するために製作されたシステムであるた
め、照射幅が数μmのレーザを1パルス照射すると、ス
ーパーラテラル成長は発現するが、レーザ照射部と未照
射部との境界付近にはわずかに微結晶領域12が形成さ
れる。
【0019】レーザを繰返し照射した場合、図15
(b)に示すように、微結晶領域も繰返し形成されるた
め、針状組織が短くなる。このため、従来の光学システ
ムによって形成された多結晶シリコン薄膜を用いて表示
装置を作製しても、高性能な表示装置を得ることは困難
であった。
【0020】本発明は上記の課題を鑑みてなされたもの
であり、高性能で低価格の表示装置を製造するために必
要不可欠である結晶化装置、特に良好な特性を有する多
結晶半導体薄膜を形成するための光学システムを備えた
製造装置およびその光学システムを用いた製造方法なら
びに表示装置を提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明の半導体薄膜の製
造装置は、エネルギビームを発するエネルギビーム源と
対物レンズとを有し、対物レンズによってエネルギビー
ムを半導体薄膜上に結像するように構成した半導体薄膜
の製造装置において、対物レンズの開口数をNA、エネ
ルギビームの波長をλ(mm)、半導体薄膜上に結像さ
れるエネルギビームの幅をw(mm)とすると、NA、
λ、wの関係は、次式を満たしている。
【0022】0.55×NA/λ>1/(2×w) 本発明の半導体薄膜の製造装置では、上式を満たす条件
でエネルギビームが半導体薄膜上に結像されるため、微
結晶の発生を抑えることができ、スーパーラテラル成長
を良好に発現させることができる。これにより、良好な
多結晶半導体薄膜を容易に得ることができるため、高性
能で低価格な表示装置を製造することが可能となる。
【0023】上記の半導体薄膜の製造装置において好ま
しくは、エネルギビーム源と対物レンズとの間に予め所
定のパターンを形成したマスクが配置され、エネルギビ
ームによってそのマスクが照明され、マスクパターンの
像が半導体薄膜上に結像させる。
【0024】これにより、マスクパターンに応じてスー
パーラテラル成長を発現させることができる。
【0025】上記の半導体薄膜の製造装置において好ま
しくは、照明系の開口数NALと対物レンズの開口数N
Aとは次式を満たしている。
【0026】0.3<NAL/NA<0.7 これにより、エネルギビームを半導体薄膜上に良好に結
像することができる。
【0027】本発明の半導体薄膜の製造方法は、波長λ
のエネルギビームを、開口数NAの対物レンズによっ
て、エネルギビームの幅wが0.55×NA/λ>1/
(2×w)の関係を満たすように半導体薄膜上に結像さ
せ、半導体薄膜を溶融・凝固させることによって多結晶
半導体薄膜を得ることを特徴とするものである。
【0028】本発明の半導体薄膜の製造方法では、上式
を満たす条件でエネルギビームが半導体薄膜上に形成さ
れるため、微結晶の発生を抑えることができ、スーパー
ラテラル成長を良好に発現させることができる。これに
より、良好な多結晶半導体薄膜を容易に得ることができ
るため、高性能で低価格な表示装置を製造することが可
能となる。
【0029】上記の半導体薄膜の製造方法において好ま
しくは、波長λのエネルギビームでマスクパターンを照
明し、対物レンズでマスクパターンの像が半導体薄膜上
に結像される。
【0030】これにより、マスクパターンに応じてスー
パーラテラル成長を発現させることができる。
【0031】上記の半導体薄膜の製造方法において好ま
しくは、照明系の開口数NALと対物レンズの開口数N
Aとは次式を満たしている。
【0032】0.3<NAL/NA<0.7 これにより、エネルギビームを半導体薄膜上に良好に結
像することができる。
【0033】上記の半導体薄膜の製造方法において好ま
しくは、基板上に耐熱性薄膜とシリコン薄膜とを順に形
成し、シリコン薄膜にエネルギビームを照射することに
より、シリコン薄膜が多結晶化される。
【0034】このようにシリコン薄膜下に耐熱性薄膜を
用いているため、シリコンがエネルギビームの照射によ
り高温となっても、その高温に耐えることができる。
【0035】本発明の表示装置は、上記のいずれかに記
載の方法によって形成した半導体薄膜を活性層とする薄
膜トランジスタを有している。
【0036】本発明の表示装置によれば、良質な多結晶
半導体薄膜を活性層とする薄膜トランジスタを形成する
ことができるため、高性能な表示装置を提供することが
可能となる。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図に基づいて説明する。
【0038】図1は、本発明の一実施の形態における半
導体薄膜の製造装置の第1の構成を説明する図である。
図1を参照して、この半導体薄膜の製造装置は、レーザ
発振器1と、可変減衰器2と、ビーム整形素子3と、マ
スク面均一素子4と、フィールドレンズ5と、マスク6
と、対物レンズ7と、ミラー9とを備えている。
【0039】レーザ光源1は、パルス状のエネルギビー
ムを放出し、シリコンを溶融することが可能であれば、
特に限定されるものではないが、たとえばエキシマレー
ザ、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザに代表
される各種固体レーザなど、紫外線の波長を有する光源
であることが望ましい。本実施の形態では、波長308
nmのエキシマレーザを用いた。
【0040】可変減衰器2は、基板8面に到達するレー
ザ光のエネルギ密度を調整する機能を有する。
【0041】ビーム整形素子3およびマスク面均一照明
素子4は、レーザ光源1から出射したレーザ光をマスク
面に均一照明する機能を有する。これは、たとえばシリ
ンドリカルレンズアレイとコンデンサレンズとを用いる
ことにより、ガウシアン型強度分布のレーザ光を分割し
てマスク面に重ね合わせて照明することによって、均一
な強度分布のマスク照明とするものである。
【0042】フィールドレンズ5は、マスク6を透過し
た主光線を投影面に垂直に入射させる機能を有する。
【0043】マスク6の像は、対物レンズ7によって基
板8上に縮小投影される。また、ミラー9はレーザ光を
折返すために用いられるが、配置箇所、数量に制限はな
く、装置の光学設計、機構設計に応じて適切に配置する
ことが可能である。
【0044】この半導体薄膜の製造装置において、対物
レンズ7の開口数をNAとし、エネルギビームの波長を
λ(mm)とし、基板8上に結像されるエネルギビーム
の幅をw(mm)とすると、これらの関係は次式を満た
している。
【0045】0.55×NA/λ>1/(2×w) 上述したように、スーパーラテラル成長技術を表示装置
の薄膜トランジスタ製造工程に応用し、高性能な表示装
置を製造するためには、2μm程度の極めて微細なレー
ザビームをシリコン薄膜に照射する必要がある。
【0046】このような微細なレーザビームを図1に示
す装置において実現するためには、光学系に特別の要件
が必要になる。次に、この要件について説明する。
【0047】図2および図3は、レーザビームプロファ
イルと結晶化との相関関係を説明する図である。図2
(a)は解像度特性の悪いレーザビームの強度プロファ
イルを示す図であり、図2(b)および(c)はその解
像特性の悪いレーザビームで照射されたシリコン薄膜の
結晶化の様子を示す断面図および平面図である。また図
3(a)は解像特性の良好なレーザビームの強度プロフ
ァイルを示す図であり、図3(b)および(c)はその
解像特性の良好なレーザビームで照射されたシリコン薄
膜の結晶化の様子を示す断面図および平面図である。
【0048】まず図3に示すように、解像特性の良好な
レーザビームでは、レーザビームの強度プロファイル3
1の傾きが急峻であり、像のコントラストも高い。この
ため、強度プロファイル31がシリコン薄膜33の底部
が溶融する強度(一点鎖線38)と交差する点と、シリ
コン薄膜33の上部が溶融する強度(点線39)と交差
する点との間隔37が極めて小さくなる。よって、レー
ザビームの照射幅全域で、シリコン薄膜33の厚み方向
全体にわたってレーザ照射によるシリコン薄膜33の溶
融領域34が形成され、シリコン薄膜33の凝固に伴う
結晶成長はスーパーラテラル成長が支配する。なお、シ
リコン薄膜33は、たとえばガラス基板もしくは耐熱膜
32上に形成されている。
【0049】一方、図2に示すように、解像度の低いレ
ーザ光では、レーザビームの強度プロファイル31の傾
きが緩やかで、像のコントラストも低い。このため、強
度プロファイル31がシリコン薄膜33の底部が溶融す
る強度(一点鎖線38)と交差する点と、シリコン薄膜
33の上部が溶融する強度(点線39)と交差する点と
の間隔37が大きくなる。よって、レーザビームの照射
領域の端部においては、シリコン薄膜33の厚み方向の
全体が溶融することなく、一部に未溶融領域が存在す
る。このため、レーザ照射領域には、スーパーラテラル
成長領域35と微結晶領域36とが混在することにな
る。したがって、解像特性の悪いレーザビームにより形
成された結晶の特性は、純粋なスーパーラテラル成長と
比較して低下する。
【0050】次に、上記のように結晶が成長する理由を
説明する。結晶は温度勾配の方向に成長する。すなわ
ち、金属を溶融したときに、温度の低い冷えた部分に結
晶核ができて、溶融部が少しずつ凝固する方向に結晶が
成長する。したがって、図4(a)に示すように薄膜3
3の上側領域34のみが溶融し、厚み方向全体が溶融し
ないと、薄膜33の底の部分に無数の結晶核が生成し、
薄膜33の厚み方向に温度勾配ができて、図4(b)に
示すように凝固の方向は垂直方向になる。結晶の大きさ
は薄膜33の厚さに依存し、膜厚と同程度の結晶しか形
成されない。
【0051】一方、ラテラル成長が支配的となる場合に
は、図5(a)に示すように薄膜33の溶融領域34が
膜厚の厚み方向全体に分布するように、かつ溶融部分3
4と未溶融部分33とを明確に区別するようにレーザが
照射(高解像度のレーザパターンを照射)されるため、
レーザの照射部分と非照射部分とは明確に溶融部34と
非溶融部33とに区別される。したがって、図5(b)
に示すように溶融部34と非溶融部33との境界部分に
結晶核が生成し、水平(横)方向に温度勾配ができるた
め、凝固の方向は水平方向になる。これがラテラル成長
の原理である。
【0052】なお、図13(a)において針状結晶の成
長しきれなかった領域(正確には針状結晶が発現しない
領域)に微結晶領域が発生する理由および図15(a)
においてレーザ照射部と未照射部の境界付近に微結晶領
域が発生する理由も同様である。
【0053】以上説明した理由によって、微結晶組織の
発生が抑えられたスーパーラテラル成長を発現させるた
めには、解像特性の良好なエネルギビームをシリコン薄
膜に照射することが必要になる。
【0054】次に、解像特性について説明する。図6
は、光学系の空間周波数とOTF(Optical Transfer F
unction;光学伝達関数)との関係を説明する図であ
る。また図6は、定められた空間周波数の正弦格子を結
合させた場合のコントラストで分解能を表現したもので
あり、横軸は結像レンズの開口数NA/使用波長λで規
格化した値であり、すなわち空間周波数μ=(横軸の数
値)×(NA/λ)となっている。また、コヒーレンス
ファクタσは、σ=照明系の開口数/結像レンズの開口
数で定義される。OTFは光学系の有効光源と瞳関数か
ら計算できる(たとえば、光技術コンタクトvol.2
8 No.3(1990)p.165〜175、光技術
コンタクトvol.34,No.9(1996)p.4
68〜475など)。
【0055】本願発明者らは、シリコン薄膜にレーザ光
を照射し、スーパーラテラル成長を安定的に行なう検討
を行なった結果、結晶化に最適な光学系の条件を見出し
た。本願発明者らの実験結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】実験に用いた基板は、ガラス板上に、バッ
ファ層として酸化シリコン薄膜を100nm、アモルフ
ァスシリコン薄膜を100nmの順で成膜したものであ
る。このアモルファスシリコン上に、開口数の異なる種
々の対物レンズを用いて、マスクの像を結像した。マス
クには、予め等ピッチのスリットが形成されており、基
板上に結像したスリットの像を1〜5μmまで変化する
ようにした。
【0058】なお、表1においてスリットの空間周波数
は、基板上に結像したスリットの幅をw(mm)とし
て、(1/2w)/(NA/λ)で計算される値であ
る。
【0059】また、照明系はいずれの条件でも同一のも
のとした。ここで、コヒーレンスファクタσは、1に近
いと可干渉性が弱められ、像面のノイズが低減できる
が、得られる像コントラストが低下する。一方、σが0
に近いと、得られる像のコントラストは高いが干渉によ
る像面のノイズが生じるため、経験的に0.3<σ<
0.7とすることが望ましい。
【0060】以上説明した条件で半導体薄膜にレーザを
照射し、結晶の状態を電子顕微鏡によって観察し、スー
パーラテラル成長が生じているかどうかを次のように判
定した。
【0061】まず表1に示す結果において、「良」と記
載したものは、図14(c)に示すような針状の結晶が
基板面全面にわたって形成されたものであり、「不可」
と記載したものは図15(b)に示すような断続的な結
晶が基板面全面にわたって形成されたものであり、
「可」と示したものは基板面のごく一部に図15(b)
に示すような断続的な結晶が形成されたものである。
【0062】図7は、表1に示す実験結果を図6に示す
グラフ状にプロットしたものである。図7中の“〇”は
良好な結晶特性が得られたものであり、“△”はレーザ
光の照射領域と未照射領域との境界付近にわずかに微細
な結晶が残留しているものであり、“×”は微結晶領域
が明確に観察されたものである。
【0063】図7より、空間周波数μ0=0.55×N
A/λがスーパーラテラル成長を発現するかどうかの境
界周波数(遮断周波数)であり、μ0>μであれば、結
晶化のために良好な結像特性が得られる。このときのス
リット幅をwとすると、μ=1/(2w)であるから、
結晶化に必要な条件は次式で定められる。
【0064】0.55×NA/λ>1/(2×w) また、レーザ発振器1からマスク6までの照明光学系
(以下、照明系と称する)の開口数NALと対物レンズ
7の開口数NAとは、次式を満たすことが好ましい。
【0065】0.3<NAL/NA<0.7 上述したようにコヒーレンスファクタσ(=NAL/N
A)は、光の干渉性を評価するファクタであり、σが小
さいほど干渉性が高くなる.光が干渉するということ
は、像面に干渉縞(ノイズ)ができて像特性が悪くなる
ことを意味する。
【0066】また、空間周波数とOTFとの関係から、
σが0に近い場合、空間周波数が1以下のとき、おおよ
そOTF=1となり、空間周波数が1以上ではOTF=
0となる。これは、OTFとは、元の物体の明暗が光学
系を通してどれだけ忠実に再現できるかを表す。すなわ
ち、物体の細かさ(解像線幅)と像のコントラストの関
係を表しているため、低い空間周波数(分解能)であれ
ば、物体と像のコントラストとが1対1で対応すること
になる。
【0067】一方、σが1に近ければ、OTFは空間周
波数が0から2までの間で少しずつ低下していく。した
がって、像のコントラストは低下していくが、分解能は
向上することになる。すなわち、物体が細かくなっても
判別することができる。
【0068】このように像のコントラストおよび分解能
と、光の干渉性とを、像面での光の干渉性の度合いによ
って判断した結果、0.3<NAL/NA<0.7を満
たすことが好ましいことを本願発明者らは見出した。
【0069】次に本実施の形態における半導体薄膜の製
造方法について説明する。本実施の形態では、上記のス
ーパーラテラルを発現する条件(0.55×NA/λ>
1/(2×w))で、シリコン薄膜にエネルギビームを
結像させて、シリコン薄膜を溶融・凝固させることによ
って、多結晶シリコン薄膜が形成される。このシリコン
薄膜は、アモルファスシリコン薄膜であっても良く、ま
た多結晶シリコン薄膜であっても良い。
【0070】アモルファスシリコン薄膜を多結晶化した
場合には、図14(a)に示すようになる。また、図1
4(a)〜(c)に示すように1回前のレーザ照射で形
成された針状結晶の一部に重複させて順次レーザパルス
を照射することにより、既に成長した結晶を引継いで、
さらに長い針状の結晶が成長し、結晶の成長方向に方位
の揃った大結晶を形成することができる。
【0071】また、多結晶シリコン薄膜を多結晶化した
場合には、図8(a)に示すように元々ある多結晶シリ
コン粒13内のレーザ照射領域に針状化した多結晶シリ
コン粒12が形成される。また、図8(b)に示すよう
に1回前のレーザ照射で形成された針状結晶12の一部
に重複させて2回目のレーザ照射領域16にレーザを照
射することにより、その針状結晶12を長くすることが
できる。さらに、図8(c)に示すように順次レーザパ
ルスを照射することにより、既に成長した結晶を引継い
で、N回目のレーザ照射領域20へとさらに長い針状の
結晶が成長し、結晶の成長方向に方位の揃った大結晶1
2を形成することができる。
【0072】なお、シリコン薄膜は、基板上に直接形成
されても良いが、基板上に耐熱性薄膜を形成した上に形
成されることがより好ましい。
【0073】なお上記の図1に示した半導体薄膜の製造
装置以外に、図9に示す構成の半導体薄膜の製造装置が
用いられてもよい。
【0074】図9は、本発明の一実施の形態における半
導体薄膜の製造装置の第2の構成例を説明する図であ
る。図9を参照して、この半導体薄膜の製造装置におい
ては、図1に示す半導体薄膜の製造装置の構成からフィ
ールドレンズ5およびマスク6が省略されている。
【0075】なお、これ以外の構成については、上述し
た図1の構成とほぼ同じであるため、同一の部材につい
ては同一の符号を付し、その説明を省略する。また、こ
の製造装置を用いた半導体薄膜の製造方法も上述した方
法とほぼ同じであるため、その説明を省略する。
【0076】図9の構成では、マスクなどを省略するこ
とによって、マスク像を基板8面に投影するのではな
く、レーザビームを基板8面上に直接結像させるもので
ある。レーザビームを直接結像させる方式であっても、
マスク像投影方式と同様に、本発明による光学システム
を用いることによって、高性能な多結晶シリコン薄膜を
形成することが可能である。
【0077】なお、上述した実施の形態においては、光
源に波長308nmのエキシマレーザを用いたが、これ
は紫外波長域の光はシリコン薄膜に対する吸収特性が優
れており、効率に優れた多結晶シリコン薄膜が得られる
ためである。ただし、光源はこれに限定されることはな
く、シリコン薄膜を溶融できるパルスエネルギを照射で
きるものであればよい。
【0078】次に、本実施の形態における半導体薄膜の
製造方法および製造装置を用いて製造された表示装置に
ついて説明する。
【0079】図10は、本発明の一実施の形態における
半導体薄膜の製造方法および製造装置を用いて製造され
た多結晶シリコン薄膜を用いて薄膜トランジスタを説明
するための平面図である。また、図11は、図10のX
I−XI線に沿う概略断面図である。また図12は、図
10に示す薄膜トランジスタを有する液晶表示装置の構
成を示す概略斜視図である。
【0080】図12を参照して、この液晶表示装置は、
対向する一対の基板の間に液晶材料(図示せず)が封入
された構成である。一方の基板(図中下側の基板)は、
ガラス基板131a上に複数の透明な画素電極132と
薄膜トランジスタ133とがマトリクス状に配置される
ことで構成されている。薄膜トランジスタ133は、各
画素電極132へ画像信号の供給を制御するスイッチン
グ素子として形成されている。
【0081】また他方の基板(図中上側の基板)は、カ
ラーフィルタ付きのガラス基材131bに、対向電極1
34が形成されている。上下両方の基板は数μmの間隔
を隔てて張り合せられている。
【0082】なお、両基板の内面には(液晶材料と接す
る面)には配向膜135が設けられており、両基板の外
面には(液晶材料と接しない面)には偏光板140が設
けられている。
【0083】次に、図12に示した薄膜トランジスタ部
の詳細について図10と図11とを用いて説明する。
【0084】図10および図11を参照して、薄膜トラ
ンジスタ133は、ソース領域104bと、ドレイン領
域108bと、ゲート絶縁膜106と、ゲート電極10
3aとを有している。ソース領域104bとドレイン領
域108bとは、多結晶シリコン薄膜105に所定の領
域(チャネルが形成される領域)を挟んで対向するよう
に形成されている。この多結晶シリコン薄膜105は耐
熱層101上に形成されている。ゲート電極103a
は、ソース領域104bとドレイン領域108bとに挟
まれる所定の領域上にゲート絶縁膜106を介在して形
成されている。
【0085】この薄膜トランジスタ133を覆うように
層間絶縁膜107が形成されており、この層間絶縁膜1
07とゲート絶縁膜106とにはコンタクトホール12
0が形成されている。このコンタクトホール120はソ
ース領域104bとドレイン領域108bとの各々に達
している。これらのコンタクトホール120を介してソ
ース領域104bにはソース電極104aが、ドレイン
領域108bにはドレイン電極108aが各々電気的に
接続されている。
【0086】ソース電極104aと一体に形成されたデ
ータ信号線(ソース配線)104は、ゲート電極103
aと一体に形成された走査信号線(ゲート配線)103
と互いに交差するように配設されている。この走査信号
線(ゲート配線)103は、画素信号を供給するもので
ある。また、ドレイン電極108aは、その近傍の画素
電極102と電気的に接続されている。
【0087】このような液晶表示装置に用いられる薄膜
トランジスタ133のソース領域104bとドレイン領
域108bとが形成される多結晶シリコン薄膜105
が、本実施の形態におけるスーパラテラル成長法を用い
た半導体薄膜の製造方法および製造装置により製造され
る。
【0088】今回開示された実施の形態はすべての点で
例示であって制限的なものではないと考えられるべきで
ある。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求
の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味お
よび範囲内でのすべての変更が含まれることが意図され
る。
【0089】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の半導体薄
膜の製造装置によれば、半導体薄膜の結晶化に適した特
性のエネルギビームを半導体薄膜上に結像することがで
きるため、良質な多結晶半導体薄膜を形成するための装
置を提供することが可能になる。
【0090】また、本発明の半導体薄膜の製造方法によ
れば、半導体薄膜の結晶化に適した特性のエネルギビー
ムを半導体薄膜上に結像することができるため、電子の
移動度が高く、良質な多結晶半導体薄膜を形成すること
が可能になる。
【0091】さらに本発明の表示装置によれば、良質な
多結晶半導体薄膜を活性層とする薄膜トランジスタを形
成することができるため、高性能な表示装置を提供する
ことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態における半導体薄膜の
製造装置の第1の構成例を説明する図である。
【図2】 解像特性の悪いレーザビームの強度プロファ
イルを示す図(a)と、そのレーザビームによりシリコ
ン薄膜に形成される結晶領域の様子を示す断面図(b)
および平面図(c)である。
【図3】 解像特性の良好なレーザビームの強度プロフ
ァイルを示す図(a)と、そのレーザビームの照射によ
りシリコン薄膜に形成された結晶領域の様子を示す断面
図(b)および平面図(c)である。
【図4】 薄膜の厚み方向全体に溶融しない場合(通常
のレーザアニール法)の凝固の様子を示す図である。
【図5】 薄膜の厚み方向全体に溶融する場合(ラテラ
ル成長法)の凝固の様子を示す図である。
【図6】 光学系の空間周波数とOTFとの関係を説明
する図である。
【図7】 表1に示す実験結果を図6に示すグラフ上に
プロットした図である。
【図8】 多結晶シリコン薄膜を針状化させる様子を示
す図である。
【図9】 本発明の一実施の形態における半導体薄膜の
製造装置の第2の構成例を説明する図である。
【図10】 本発明の一実施の形態における半導体薄膜
の製造方法および製造装置を用いて製造された薄膜トラ
ンジスタの構成を示す平面図である。
【図11】 図10のXI−XI線に沿う概略断面図で
ある。
【図12】 本発明の一実施の形態における半導体薄膜
の製造方法および製造装置を用いて製造された薄膜トラ
ンジスタを有する液晶表示装置の構成を示す斜視図であ
る。
【図13】 レーザ照射領域の凝固後の結晶状態を示す
図である。
【図14】 スーパーラテラル成長の様子を示す図であ
る。
【図15】 針状結晶以外に微結晶が生じる様子を説明
するための図である。
【符号の説明】
1 レーザ発振器、2 可変減衰器、3 ビーム成形素
子、4 マスク面均一照明素子、5 フィールドレン
ズ、6 マスク、7 対物レンズ、8 基板、9ミラ
ー、10 ビームプロファイル均一化素子、11 レー
ザ照射領域、12,35 スーパーラテラル成長領域、
13,36 微結晶領域、14 スーパーラテラル成長
方向、15 第1回目のパルスレーザ照射領域。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5F052 AA02 BA01 BA04 BA07 BA12 BA18 BB02 BB07 CA04 DA01 DA02 FA01 GB11 JA01 5F110 AA01 BB02 CC01 CC02 DD02 DD13 GG02 GG13 NN02 PP03 PP04 PP06 PP23

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エネルギビームを発するエネルギビーム
    源と対物レンズとを有し、前記対物レンズによって前記
    エネルギビームを半導体薄膜上に結像するように構成し
    た半導体薄膜の製造装置において、前記対物レンズの開
    口数をNA、前記エネルギビームの波長をλ(mm)、
    前記半導体薄膜上に結像されるエネルギビームの幅をw
    (mm)とすると、NA、λ、wの関係は、0.55×
    NA/λ>1/(2×w)を満たすことを特徴とする、
    半導体薄膜の製造装置。
  2. 【請求項2】 前記エネルギビーム源と前記対物レンズ
    との間に予め所定のパターンを形成したマスクを配置
    し、前記エネルギビームによって前記マスクを照明し、
    マスクパターンの像を前記半導体薄膜上に結像させるこ
    とを特徴とする、請求項1に記載の半導体薄膜の製造装
    置。
  3. 【請求項3】 照明系の開口数NALと前記対物レンズ
    の開口数NAとは、0.3<NAL/NA<0.7を満
    たすことを特徴とする、請求項2に記載の半導体薄膜の
    製造装置。
  4. 【請求項4】 波長λのエネルギビームを、開口数NA
    の対物レンズによって、エネルギビームの幅wが0.5
    5×NA/λ>1/(2×w)の関係を満たすように半
    導体薄膜上に結像させ、前記半導体薄膜を溶融・凝固さ
    せることによって多結晶半導体薄膜を得ることを特徴と
    する、半導体薄膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 波長λの前記エネルギビームでマスクパ
    ターンを照明し、前記対物レンズで前記マスクパターン
    の像を前記半導体薄膜上に結像させることを特徴とす
    る、請求項4に記載の半導体薄膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 照明系の開口数NALと前記対物レンズ
    の開口数NAとは、0.3<NAL/NA<0.7を満
    たすことを特徴とする、請求項5に記載の半導体薄膜の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 基板上に、耐熱性薄膜と、シリコン薄膜
    とを順に形成し、前記シリコン薄膜に前記エネルギビー
    ムを照射することにより前記シリコン薄膜を多結晶化す
    ることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の
    半導体薄膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項4〜7のいずれかに記載の方法に
    よって形成した半導体薄膜を活性層とする薄膜トランジ
    スタを有することを特徴とする、表示装置。
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