JP2003147491A - 耐反り性を改善したディスクブレーキ用鋼板およびディスク - Google Patents

耐反り性を改善したディスクブレーキ用鋼板およびディスク

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JP2003147491A
JP2003147491A JP2001341537A JP2001341537A JP2003147491A JP 2003147491 A JP2003147491 A JP 2003147491A JP 2001341537 A JP2001341537 A JP 2001341537A JP 2001341537 A JP2001341537 A JP 2001341537A JP 2003147491 A JP2003147491 A JP 2003147491A
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Naoto Hiramatsu
直人 平松
Hiroki Tomimura
宏紀 冨村
Naohito Kumano
尚仁 熊野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐反り性に優れたディスクブレーキ用鋼板お
よびディスクを提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.05〜0.15%,Si:1.0
%以下,Mn:2.0%以下,Ni:1.0%以下,Cr:9.0〜15.
0%,Cu:0.5〜4.0%,Mo:0.10〜2.0%,N:0.10%以
下,Nb:0.05〜1.0%以下で、必要に応じてTi:0.50%
以下,Al:0.2%以下,B:0.015%以下,REM:0.2%以
下,Y:0.2%以下,Ca:0.1%以下,Mg:0.1%以下の
うち1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物
からなり、γmax=420C+470N+23Ni+7Mn+9Cu−11.
5Cr−11.5Si−12Mo−3.5Nb+189と定義されるγmax値が
80以下となる化学組成のディスクブレーキ用鋼板。当該
鋼板から得られた「昇温速度5〜20℃/secでの昇温→600
℃×均熱10secの保持→水冷」を500サイクル付与した後
のディスク外周の反り高さが0.3mm以内に収まるブレー
キディスク。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディスクブレーキ
用マルテンサイト系ステンレス鋼材であって、特に、反
りに対する抵抗性(耐反り性)を改善した鋼板、および
その鋼板からなるディスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、二輪車等のディスクブレーキを構
成するディスクには、SUS420J1(C:0.16〜0.25%レベ
ル)やSUS420J2(同0.26〜0.40%レベル)等のマルテン
サイト系ステンレス鋼が使用されてきた。これらの鋼種
は、高温のオーステナイト単相領域である1000℃前後の
温度から焼入れてほぼマルテンサイト単相とし、さらに
焼戻しによって靱性を確保するものである。
【0003】これらの鋼種はC含有量が高いために、焼
入れのままではディスクブレーキに要求される十分な靱
性が得られない。このため、焼入れおよび焼戻しの2つ
の熱処理を行うことが必須となる。また、Cが高いため
に、焼入れ途中の鋭敏化による耐食性低下や、大型炭化
物の存在による靱性低下の問題が生じやすく、熱処理に
細心の注意を要する。
【0004】そこで、このような高C系の鋼に代わり、
C含有量を低減したディスクブレーキ用マルテンサイト
系ステンレス鋼が特開平10−152760号公報に紹介されて
いる。それによると、Cを0.10%以下に低減したことで
焼戻し工程を省くことが可能になり、またオーステナイ
トバランスを高めることで焼入れ後のマルテンサイト量
が十分に確保され、低C化による強度低下は回避され
た。さらに、Cuを添加することによって制動発熱に対す
る軟化抵抗も向上したという。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平10−152760
号公報の鋼によって、高C系マルテンサイト系ステンレ
ス鋼に付随する種々の問題が解消され、ディスクブレー
キの性能面においても信頼性が向上した。しかしなが
ら、昨今、車両の高性能化等に伴いディスクブレーキに
かかる負荷も一層増大し、これまであまり重要視されて
いなかった問題が新たに顕在化するようになってきた。
すなわち、材料温度が600℃付近に達するような高負荷
での使用を長期間繰り返しているうちに、ディスクブレ
ーキのディスクに「反り」が生じることがあり、特に大
型二輪車において問題となるケースが増えている。そこ
で、本発明は、低C化したマルテンサイト系ステンレス
鋼において、反りの発生を抑止する性能を備えたディス
クブレーキ用鋼板、およびそれを用いたブレーキディス
クを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者らは、反りの発生
を抑止する性能を付与する手段について鋭意研究を重ね
てきた。その結果、次のようなことが明らかになった。 .低C系のマルテンサイト系ステンレス鋼におけるCu
の添加は、600℃付近での軟化抵抗の向上に有効ではあ
るが、それだけでは反りの発生を十分防止することは困
難であること。 .Cuに加え、MoとNbを複合添加したとき、反りに対す
る抵抗力は顕著に向上すること。 本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0007】すなわち、上記目的は、質量%で、C:0.
05〜0.15%,Si:1.0%以下,Mn:2.0%以下,Ni:1.0
%以下,Cr:9.0〜15.0%,Cu:0.5〜4.0%,Mo:0.10
〜2.0%,N:0.10%以下,Nb:0.05〜1.0%以下で、残
部がFeおよび不可避的不純物からなり、 γmax=420C+470N+23Ni+7Mn+9Cu−11.5Cr−11.5S
i−12Mo−3.5Nb+189 と定義されるγmax値が80以下となる化学組成を有する
耐反り性を改善したディスクブレーキ用鋼板によって達
成される。ここで、γmaxを規定する上式の右辺の元素
記号のところには、それぞれの元素の含有量(質量%)
の値が代入される。ディスクブレーキ用鋼板とは、ディ
スクブレーキのディスクを打ち抜き等の手段により採取
するための鋼板であり、鋼帯の状態であるか切り板であ
るかを問わない。
【0008】また、上記鋼板において、さらにTi:0.50
%以下を含有するもの、Al:0.2%以下を含有するも
の、B:0.015%以下を含有するもの、あるいはさらにR
EM:0.2%以下,Y:0.2%以下,Ca:0.1%以下,Mg:
0.1%以下のうち1種または2種以上を含有するものを
提供する。これらの添加元素の組み合わせは任意に選択
することができる。
【0009】また、これらの鋼板が、特に二輪車のディ
スクブレーキ用であるものを提供する。
【0010】さらに本発明では、これらの鋼板から採取
された焼入れ処理後のブレーキディスクであって、当該
ディスクに「昇温速度5〜20℃/secでの昇温→600℃×均
熱10secの保持→水冷」の加熱・冷却を繰り返し500サイ
クル付与したとき、この加熱・冷却試験後のディスク外
周の反り高さが0.3mm以内に収まる耐反り性に優れたブ
レーキディスクを提供する。
【0011】ここで、鋼板からブレーキディスクを採取
する一般的な手段としては、打ち抜きが挙げられる。焼
入れ処理後のブレーキディスクとは、焼入れ後に焼戻し
等の熱処理を行っていないものをいう。ディスク外周の
反り高さは以下のように定義する。すなわち、ディスク
を水平盤上に置いた状態で、水平盤面を基準としたディ
スク外周部の高さを外周部全体にわたって等間隔で少な
くとも12箇所以上測定し、その各測定値と、初期状態の
設計寸法から定まる外周部高さの値との差を求め、その
差の値のうち最大値をディスク外周の反り高さとする。
ただし、当該反り高さは、ディスク両面について上記測
定を行ったときに、より大きい値となる方を採用する。
これは、通常、ディスクの反りは外周部が全体にわたっ
て一方の面の側に湾曲するように反るため、その面を下
にして測定してしまえば、湾曲の程度を正しく検出する
ことが不可能だからである。
【0012】初期状態(使用前)のブレーキディスク製
品は極めて平坦度の高いものである。本発明に係るブレ
ーキディスクは、そのような平坦度の高いブレーキディ
スクであって、上記加熱・冷却試験を施した場合にも反
り高さが0.3mm以内に収まるような材料性能を有するデ
ィスクを特定したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、ディスクブレーキの過
酷な使用を繰り返しても長期安定的に初期の平坦な形状
を保つ性能、すなわち耐反り性を改善するものである
が、同時に、高温での軟化抵抗,靱性,耐食性等の諸特
性においても従来材と同等以上の性能を確保する必要が
ある。また、焼戻し処理を行わない「省工程化」に対応
できるものでなくてはならない。以下、本発明を特定す
る事項について説明する。なお、各元素の含有量を表す
「%」は特に示さない限り「質量%」を意味する。
【0014】Cは、オーステナイト形成元素であり、高
温で生成するδフェライトの抑制、および焼入れ時の冷
却中に生成するマルテンサイト相の強化に極めて有効で
ある。また、ディスクブレーキの制動発熱による温度上
昇によって炭化物の析出を生じ、これが高温強度維持に
寄与する。発明者らの研究によれば、この炭化物は耐反
り性の向上にも有効に作用すると考えられる。種々検討
の結果、これらの作用を十分得るには0.05%以上のC含
有量が必要である。ただし、本発明では焼戻し処理を省
略する工程で十分な靱性を確保し、かつ炭化物起因の耐
食性低下を防止する必要があるために、C含有量の上限
は0.15%に制限される。
【0015】Siは、脱酸目的で使用するが、フェライト
形成元素であるため、過度の添加は高温でのδフェライ
トの生成を招き、硬度低下の原因となる。このため、Si
含有量は1.0%以下に制限される。特に好ましいSi含有
量の上限は0.8%、下限は0.2%である。
【0016】Mnは、オーステナイト安定化元素であり、
焼入れ時の加熱温度領域でオーステナイト相組織とし、
その後に硬度に寄与するマルテンサイト相の生成を促
す。しかし、過度の添加は高温での耐酸化性を低下させ
たり、残留オーステナイト相を生成させるので、Mn含有
量の上限は2.0%に制限される。特に好ましいMn含有量
の上限は1.5%、下限は0.2%である。
【0017】Niは、Mnと同様にオーステナイト安定化元
素であり、硬度に寄与するマルテンサイト相の生成を促
す。しかし、Niは高価であり、また過度の添加は残留オ
ーステナイト相を生成させるため、Ni含有量の上限は1.
0%に制限される。
【0018】Crは、耐食性を付与する上で必須の元素で
ある。ディスクブレーキに要求される耐食性を確保する
には少なくとも9.0%以上のCrを必要とする。しかし、C
rはフェライト形成元素でもあるので、多すぎるとδフ
ェライト相が多量に生成してしまい、δフェライト量の
調整には相当量のオーステナイト形成元素(C,N,N
i,Mn,Cu等)の添加が必要となる。これらオーステナ
イト形成元素の過度の添加は焼入れ後の残留オーステナ
イト相の残存を促し、高強度の達成を困難にする。この
ため、Cr含有量の上限は15.0%に制限される。
【0019】Cuは、オーステナイト安定化元素であり、
焼入れ時の加熱温度領域でオーステナイト相組織とし、
その後に硬度に寄与するマルテンサイト相の生成を促
す。また、ディスクブレーキ使用時に材料温度が上昇し
た際、Cu系析出物により高温強度を維持するとともに、
耐反り性にも有効に作用する。しかし、過剰の添加は熱
間加工性を劣化させ割れ発生の原因となる。そこで、デ
ィスクブレーキの使用環境を考慮して種々検討した結
果、Cu含有量は0.5〜4.0%の範囲とした。
【0020】Moは、Cr含有鋼の耐食性向上に有効な元素
であるが、本発明ではさらに、ブレーキディスクの耐反
り性を向上させるうえで非常に重要である。すなわち、
Moはディスクブレーキの使用環境において、ディスクの
温度上昇時に炭窒化物を微細に分散させる作用を示すこ
とがわかった。また、高温での急激な歪の解放を抑制す
る作用をも示すのである。発明者らの研究の結果、Moの
これらの作用は、後述のNbと相乗効果を発揮して、ブレ
ーキディスクに優れた耐反り性を付与するものと考えら
れる。ただし、Moの過剰添加は高温でのδフェライト相
の生成を促すので好ましくない。そこで種々検討した結
果、高負荷での使用を前提としたディスクブレーキ用鋼
板としてはMo含有量を0.10〜2.0%の範囲とするのが良
いとの結論を得た。一層好ましいMo含有量の下限は0.3
%である。
【0021】Nは、オーステナイト形成元素であるとと
もに、マルテンサイト相を硬化させるのに極めて有効な
元素であるが、多量の添加は鋳造時のブローホールの原
因となるので、0.10%以下に制限される。
【0022】Nbは、Moとともにブレーキディスクの耐反
り性を向上させるうえで極めて重要な添加元素である。
すなわち、Nbはディスクブレーキの使用環境において、
ディスクの温度上昇時に強度に寄与する析出物を形成す
ることがわかった。また、マルテンサイト相中の回復を
抑制する作用を示すことがわかった。研究の結果、これ
らの作用は単に硬度上昇に寄与するだけではなく、前述
のMoとの相乗効果によりブレーキディスクの耐反り性を
顕著に向上させるものと考えられる。この効果を十分に
えるために、Nbは0.05%以上含有させるのが良い。ただ
し、過剰の添加は高温強度の過度の上昇を招き、熱間加
工性を低下させるので、Nbの上限は1.0%とする必要が
ある。一層好ましいNb含有量の上限は0.8%である。
【0023】Tiは、高温で析出物を形成し、硬度上昇や
耐反り性の向上に有効であるが、過度の添加は製品の表
面疵の原因となる。このため、Tiを添加する場合は0.50
%以下の含有量範囲とすることが望ましい。
【0024】Alは、製鋼時の脱酸に有効な元素であり、
ブレーキディスクへの打ち抜き時に悪影響を及ぼすA2
系介在物を激減させる効果がある。しかし、0.2%を超
えて含有させてもその効果は飽和するばかりか、表面欠
陥の増加を招くなどの弊害が生じるようになる。このた
め、Alを添加する場合は0.2%以下の含有量範囲とする
ことが望ましい。
【0025】Bは、熱間圧延温度域でのδフェライト相
とオーステナイト相の変形抵抗の差によって生じる、熱
延鋼帯でのエッジクラックの発生防止に有効な元素であ
る。しかし、過度の添加は低融点ほう化物の形成を招
き、却って熱間加工性を劣化させるので、Bを添加する
場合は0.015%以下の含有量範囲とすることが望まし
い。
【0026】REM(希土類元素),Y,CaおよびMgは、
熱間加工性の向上に有効な元素である。また、耐酸化性
の向上にも有効である。しかし、その効果が飽和する含
有量を超えて添加してもメリットはない。そこで、これ
らの元素を添加する場合は、REM(例えば、La,Ce,Nd
等)は合計で0.2%以下,Yは0.2%以下,Caは0.1%以
下,Mgは0.1%以下の範囲で含有させるのが良い。これ
らの元素は1種のみを含有させても良いし、2種以上を
複合で含有させても良い。なお、Ti,Al,B,REM,
Y,CaおよびMgのいずれかを添加する場合は、添加する
元素の組み合わせを任意に選択することができる。
【0027】γmaxは、高温での最大オーステナイト量
に対応する、良く知られたオーステナイト安定度の指数
である。種々検討の結果、ブレーキディスクの強度や耐
反り性には、焼入れ後のマルテンサイト量が大きな影響
を及ぼすことがわかった。そして、優れた耐反り性を得
るには、焼入れによってほぼマルテンサイト単相組織と
した材料を使用することが望ましいことがわかった。こ
のため、本発明では焼入れ後にほぼマルテンサイト単相
組織となるようにγmaxの下限を80に規定した。
【0028】本発明のディスクブレーキ用鋼板は、以上
のような化学組成の鋼からなるものであり、特に、ディ
スクにかかる負荷が大きく、かつ長期間にわたって美麗
な外観が要求される二輪車のディスクブレーキにも十分
対応できるものである。
【0029】ディスクブレーキ用のブレーキディスク
は、一般的には焼鈍鋼板から打ち抜かれた円盤に必要な
加工を施し、その後焼入れ等の熱処理を施して高強度化
することによって作られる。そして、最終的な製品段階
で、ディスク表面は高い平坦度を有していることが必要
となる。しかし、従来の材料では初期状態(使用前)に
高い平坦度を有していても、長期間の使用によって多く
の場合、多少なりとも反りの発生が認められ、ディスク
の平坦度は劣化していくのが通常であった。一例とし
て、走行距離約3000kmの二輪車から取り外したブレーキ
ディスク(放熱用の孔を設けたタイプで、外径260mm,
板厚4.4mm,質量約1kg)について反りの程度を調べたと
ころ、本明細書で先に定義したディスク外周の反り高さ
は0.8mmとなっていた。このような反りの発生は、ブレ
ーキ性能の経時劣化や外観不良を引き起こす原因とな
り、好ましくない。
【0030】そこで本発明では、上で説明した化学組成
のディスクブレーキ用鋼板を提供した。上記鋼板は製品
ディスクにおいて優れた耐反り性を発揮し得る性質を潜
在的に有するものである。ただし、その鋼板を使用して
も、熱処理や加工の仕方によっては、必ずしも十分な耐
反り性を呈するブレーキディスクが得られるとは限らな
い。このため、製品の品質管理面からも、製造されたブ
レーキディスクが将来的な実際の使用で優れた耐反り性
を発揮するディスクであるか否かを特定する手法の確立
が望まれていた。
【0031】発明者らは、実際の使用における反りの発
生(平坦度の経時劣化)と、実験室的な促進試験との関
係を鋭意研究した。その結果、上記鋼板から採取された
焼入れ処理後のブレーキディスクであって、当該ディス
クに「昇温速度5〜20℃/secでの昇温→600℃×均熱10se
cの保持→水冷」の加熱・冷却を繰り返し500サイクル付
与したとき、この加熱・冷却試験後のディスク外周の反
り高さが0.3mm以内に収まるものは、実際に使用しても
反りの発生を十分抑止し得るものであることを知るに至
った。すなわち、例えば同一溶製チャージの同一鋼帯か
ら同一製造条件で製造された、同一ロットの製品ディス
クから1つのサンプルを抜き出し、これについて上記加
熱・冷却試験後のディスク外周の反り高さを調べ、これ
が0.3mm以内に収まっていれば、そのロットのディスク
は優れた耐反り性を有するものであると判断することが
でき、品質管理の信頼性を高めることが可能となる。
【0032】
【実施例】表1に示す化学組成の鋼を真空溶解炉で溶製
し、鍛造,熱延にて板厚4.4mmの鋼帯とし、780℃×10時
間のバッチ焼鈍(冷却方法は空冷)を施した。その後、
外径180mm,内径100mmのドーナツ状の円盤に打ち抜き、
これに「1100℃×10分間保持の溶体化→水冷」の焼入れ
処理を施した後、板厚4mmまで切削して試験用ディスク
を得た。その際、平坦度(ディスクを水平盤上に置いた
ときの表面全体における水平盤面を基準とした高さの
差)が0.1mm未満になるように調整した。
【0033】
【表1】
【0034】各試験用ディスクについて、「昇温速度10
℃/secでの昇温→600℃×均熱10secの保持→水冷」の加
熱・冷却を繰り返し500サイクル付与する加熱・冷却試
験を行った。加熱方法は高周波誘導加熱であり、試料表
面に取り付けた熱電対を用いて試料の温度を測定し、昇
温速度および均熱温度を制御した。加熱・冷却試験後の
各試料について、本明細書で定義した反り高さ(前述)
を測定した。また、加熱・冷却試験後の試料について、
炭化物起因の発銹の有無および表面硬さを調査した。結
果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】上で規定した化学組成を有する発明鋼板
(鋼No.1〜7)を用いた発明例では、いずれも加熱・冷
却試験後のディスク外周の反り高さは0.1mm未満であ
り、実質的に反りの発生は認められないレベルで非常に
良好であった。炭化物起源の発銹も認められず、加熱・
冷却試験後の表面硬さもHv280以上をキープしており、
耐食性および強度面でもディスクブレーキ用途として十
分な性能を有することが確認された。
【0037】これに対し、C含有量が高い鋼No.7を用い
た比較例では強度レベルは高いものの炭化物起因の発銹
が見られた。これは、焼入れ処理の加熱で鋭敏化したも
のと考えられる。Cu含有量が低い鋼No.8,γmaxが低い
鋼No.9,C含有量が低すぎる鋼No.10を用いた比較例で
は、いずれも0.3mmを超える大きな反りが発生した。Cu
は含有するものの規定量のMo,Nbを複合で含有していな
い鋼No.11,12を用いた比較例でも、0.3mmを超える明ら
かな反りが認めら、従来材の抱える反りの問題は解消さ
れていない。つまり、ブレーキディスクの反りの問題を
解消するには、Cu,Mo,Nbの複合添加が非常に有効であ
ることがわかった。
【0038】
【発明の効果】本発明では、車両の高性能化等に伴いデ
ィスクブレーキに対する負担が増大するなか、新たに顕
在化してきたブレーキディスクの「反り」の問題を取り
上げ、これを改善する手段を提供した。また、その手段
によればディスクブレーキ用材料として要求される耐食
性や高強度特性も十分に確保され、焼戻しを行わない省
工程化プロセスにも対応できる。さらに、製品ディスク
において、将来的な使用で反りを抑止し得るものを特定
したので、製品の品質管理も容易になった。したがって
本発明は、車両用ディスクブレーキの高性能化に材料面
から寄与するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 熊野 尚仁 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社内 Fターム(参考) 3J058 AA43 AA48 AA53 AA58 AA62 AA69 BA61 CB11 EA03 EA09 FA02 GA46 GA47

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.05〜0.15%,Si:1.0
    %以下,Mn:2.0%以下,Ni:1.0%以下,Cr:9.0〜15.
    0%,Cu:0.5〜4.0%,Mo:0.10〜2.0%,N:0.10%以
    下,Nb:0.05〜1.0%以下で、残部がFeおよび不可避的
    不純物からなり、 γmax=420C+470N+23Ni+7Mn+9Cu−11.5Cr−11.5S
    i−12Mo−3.5Nb+189 と定義されるγmax値が80以下となる化学組成を有する
    耐反り性を改善したディスクブレーキ用鋼板。
  2. 【請求項2】 さらに、Ti:0.50%以下を含有する請求
    項1に記載の鋼板。
  3. 【請求項3】 さらに、Al:0.2%以下を含有する請求
    項1または2に記載の鋼板。
  4. 【請求項4】 さらに、B:0.015%以下を含有する請
    求項1〜3に記載の鋼板。
  5. 【請求項5】 さらに、REM:0.2%以下,Y:0.2%以
    下,Ca:0.1%以下,Mg:0.1%以下のうち1種または2
    種以上を含有する請求項1〜4に記載の鋼板。
  6. 【請求項6】 二輪車のディスクブレーキ用である請求
    項1〜5に記載の鋼板。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6に記載の鋼板から採取され
    た焼入れ処理後のブレーキディスクであって、当該ディ
    スクに「昇温速度5〜20℃/secでの昇温→600℃×均熱10
    secの保持→水冷」の加熱・冷却を繰り返し500サイクル
    付与したとき、この加熱・冷却試験後のディスク外周の
    反り高さが0.3mm以内に収まる耐反り性に優れたブレー
    キディスク。
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