JP2003145619A - 熱収縮性ポリエステル系フィルムロールおよびその製造方法 - Google Patents

熱収縮性ポリエステル系フィルムロールおよびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温から高温までの幅広い温度域で優れた収
縮特性を有すると共に、フィルムロール内での熱収縮特
性の変動を抑制し、熱収縮工程における収縮白化、収縮
斑、シワ、歪み、タテヒケなどの不良の発生を低減し得
た熱収縮性フィルムロールおよびその製造方法を提供す
る。 【解決手段】 熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻き
取ってなるフィルムロールであって、この熱収縮性ポリ
エステル系フィルムは、特定の組成を有し、かつ、所定
の試料切り出し部から切り取った所定形状の各試験片に
ついて、(A):75℃の温水中、(B):85℃の温
水中、および(C):95℃の温水中の各熱収縮率の平
均値が、(A):30〜40%、(B):50〜60
%、(C):65〜77%であり、全ての試料の熱収縮
率(A)〜(C)の測定値が、いずれも上記夫々の平均
値の±3%以内の範囲に収まっている熱収縮性ポリエス
テル系フィルムロールである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱収縮性ポリエステ
ル系フィルムを巻き取ってなるフィルムロールに関し、
さらに詳しくは熱収縮性ポリエステル系フィルムロール
内での熱収縮率の変動に起因する収縮不足、収縮斑、シ
ワ、歪み、タテヒケなどの不良の発生が極めて少ない熱
収縮性ポリエステル系フィルムロールおよびその製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱収縮性フィルムは加熱により収縮する
性質を利用して、収縮包装、収縮ラベルなどの用途に広
く用いられている。中でも、塩化ビニル系樹脂やポリス
チレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などからなる延伸フ
ィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容
器、ポリエチレン容器、ガラス容器などの各種容器にお
いて、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的
で使用されている。
【0003】これらの中でも、熱収縮性ポリエステル系
フィルムは、低温域から高温域までの広い温度範囲での
収縮仕上り性が優れており、ラベルにした際も美麗な光
沢感や透明性を有しており、多用されている。
【0004】しかし、そのような従来の熱収縮性ポリエ
ステル系フィルムも、その収縮特性においては更なる改
良が求められていた。特に、収縮時に、収縮斑やシワが
発生して、収縮前のフィルムに印刷した文字や図柄が、
PETボトル、ポリエチレンボトル、ガラス瓶などの容
器に被覆収縮した際に歪むことがある。よって、こうし
た歪みを小さくしたいというユーザーサイドの要望があ
った。
【0005】また、熱収縮性ポリスチレン系フィルムと
比較すると、ポリエステル系フィルムは低温での収縮性
に劣ることがあり、必要とする収縮量を得るためには、
高温で収縮させなければならず、ボトル本体の変形や白
化が生じることがあった。
【0006】これらの熱収縮性フィルムは、製造後、一
旦ロール状に巻き取られ、このフィルムロールの形態
で、各種図柄の印刷工程へ送られる。そして印刷終了後
は、必要に応じて、最終製品に用いられるラベルなどの
サイズに合わせてスリット加工され、さらに溶剤接着な
どの手段によりフィルムの左右端部を重ね合わせてシー
ルしてチューブ状体にされる。これらのチューブ状体が
裁断されて、ラベル、袋などの形態に加工される。
【0007】そして、上記のラベルや袋などを容器に装
着し、スチームを吹き付けて熱収縮させるタイプの収縮
トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹き付けて熱
収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内
部を、ベルトコンベアーなどにのせて通過させ、熱収縮
させて容器に密着させている。
【0008】スチームトンネルは、熱風トンネルよりも
伝熱効率が良く、より均一に加熱収縮させることが可能
であり、熱風トンネルに比べると良好な収縮仕上り外観
を得ることができる。しかし、従来の熱収縮性ポリエス
テル系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィルムやポリス
チレン系フィルムに比べると、スチームトンネルを通過
させた後の収縮仕上り性の面が余り良くないという問題
があった。
【0009】また、熱収縮の際に温度斑が生じ易い熱風
トンネルを使用すると、ポリエステル系フィルムでは、
収縮白化、収縮斑、シワ、歪みなどが発生し易く、特に
収縮白化が製品外観上問題となっていた。そして、この
熱風トンネルを通過させた後の収縮仕上り性において
も、ポリエステル系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィ
ルムやポリスチレン系フィルムよりも劣っているという
問題があった。
【0010】さらに、リサイクルの観点から、有色のP
ETボトルの使用が制限されるに伴い、ボトル自体の着
色に代えて、ボトル側面の大部分を熱収縮性ポリエステ
ル系フィルム製のラベルで覆うといった需要も増大しつ
つある。ところが、PETボトルの側面形状は様々であ
り、任意の高さ位置で外径が変化するため、一つのボト
ルを被覆する一つのラベルでも、要求される収縮の程度
はボトルの高さ位置で異なる。このため、従来品以上に
良好な収縮特性を備え、複雑な側面形状のボトルの被覆
に使用した場合でも、優れた収縮仕上り性を発揮できる
熱収縮性ポリエステル系フィルムが求められている。
【0011】他方、この熱収縮工程において、上記のラ
ベルや袋などの単位において1個1個の熱収縮率の変動
が大きいと、トンネル内の加熱条件は同じであるため、
適正な熱収縮率を示さないラベルや袋などが発生するこ
ととなる。適正な熱収縮率を示さないラベルや袋など
は、収縮不足、収縮斑、シワ、図柄の歪み、タテヒケな
どによる外観不良を起すため、このようなラベルなどが
被覆された容器などでは、最終製品としての品質を大き
く損なってしまう。通常は、1本のフィルムロールか
ら、同一の最終製品用ラベル、袋などを加工する。よっ
て、1本のフィルムロールに巻かれたフィルムの熱収縮
率の変動量が大きい場合には、このような熱収縮工程で
の不良率が、増大する問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの問題点を解
決して、低温から高温までの幅広い温度域で優れた収縮
特性を有すると共に、フィルムロール内での熱収縮特性
の変動を抑制し、熱収縮工程における収縮白化、収縮
斑、シワ、歪み、タテヒケなどの不良の発生を低減し得
た熱収縮性ポリエステル系フィルムロールおよびその製
造方法を提供することを課題とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の熱収縮性ポリエ
ステル系フィルムロールは、熱収縮性ポリエステル系フ
ィルムを巻き取ってなるフィルムロールであって、この
熱収縮性ポリエステル系フィルムは、多価アルコール成
分100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル成分を10〜50モル%含み、且つ、フィルムの長さ
方向にフィルム物性が安定している定常領域におけるフ
ィルムの巻き始め側の端部を第1端部、巻き終わり側の
端部を第2端部とし、前記第2端部の内側2m以内の箇
所に1番目の試料切り出し部を、また、前記第1端部の
内側2m以内の箇所に最終の試料切り出し部を設けると
共に、1番目の試料切り出し部から約100m毎に試料
切り出し部を設け、各試料切り出し部から10cm×1
0cmの正方形状に切り取った複数の熱収縮性フィルム
試験片について、下記の熱収縮率(A)、(B)および
(C)を夫々測定したとき、下記の熱収縮率(A)、
(B)および(C)の各平均値が、(A):30〜40
%、(B):50〜60%、(C):65〜77%であ
り、さらに下記の熱収縮率(A)の全測定値、熱収縮率
(B)の全測定値、熱収縮率(C)の全測定値が、夫々
の熱収縮率の平均値の±3%以内の範囲に収まっている
ものであるところに要旨が存在する。
【0014】ここで、(A):75℃の温水中に10秒
浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬し
て引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率、(B):
85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25
℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方
向の熱収縮率、(C):95℃の温水中に10秒浸漬し
て引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き
上げたときの最大収縮方向の熱収縮率、である。
【0015】上記の収縮特性を有する熱収縮性ポリエス
テル系フィルムロールは、フィルムの定常領域全長に亘
って、低温から高温までの幅広い温度域で優れた収縮特
性を有するので、収縮白化、シワ、歪み、タテヒケなど
の発生を低減でき、熱風トンネルでの熱収縮工程の際に
も、収縮白化を防ぐことができる。さらに、フィルムの
定常領域全長に亘って収縮特性の変動が少ないことか
ら、該フィルムから得られるラベルなどの個々の製品に
おいて良好な収縮仕上り外観が安定して得られ、該ラベ
ルなどが被覆収縮された製品の不良率を低減することが
できる。また、上記特定の組成のポリエステルを用いる
ことにより、溶剤での接着性に優れたフィルムとなる。
【0016】本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルム
ロールでは、該ロールを構成する熱収縮性ポリエステル
系フィルムが、2種以上の組成の異なるポリマーの混合
物から形成されているものであることが好ましい。この
ような場合には、フィルムの長さ方向において、熱収縮
特性の変動が起こり易く、本発明を適用する意義がある
からである。
【0017】熱収縮性ポリエステル系フィルムが、幅
0.2m以上、長さ300m以上である場合も、本発明
を適用しないと熱収縮特性の変動が生じ易いので、本発
明を適用する意義がある。しかも、上記幅および長さを
有するフィルムは、加工性およびハンドリング性に優れ
ているため、本発明の好ましい実施態様である。
【0018】このような本発明の熱収縮性ポリエステル
系フィルムロールを得るための好ましい製造方法は、ポ
リエステル系フィルムを少なくとも一方向に延伸する工
程を含むが、その際の条件として、該延伸を2段階以上
に分けて行い、且つ、最終的な延伸倍率を、未延伸フィ
ルムに対し、3〜6倍とする必要がある。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の熱収縮性ポリエステル系
フィルムロール(以下、単に「フィルムロール」という
場合がある)は、公知の多価カルボン酸成分と、多価ア
ルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる
構成ユニットとする単一の、あるいは2以上のポリエス
テルから得られる熱収縮性ポリエステル系フィルム(以
下、単に「フィルム」という場合がある)を巻き取って
なるものである。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル
系フィルムロールを詳細に説明する。
【0020】[熱収縮率]本発明のフィルムロールに巻
回されているフィルムは、以下の要件を満足するもので
なければならない。すなわち、フィルムの長さ方向にフ
ィルム物性が安定している定常領域におけるフィルムの
巻き始め側の端部を第1端部、巻き終わり側の端部を第
2端部とし、前記第2端部の内側2m以内の箇所に1番
目の試料切り出し部を、また、前記第1端部の内側2m
以内の箇所に最終の試料切り出し部を設けると共に、1
番目の試料切り出し部から約100m毎に試料切り出し
部を設け、各試料切り出し部から複数の10cm×10
cmの正方形状に切り取った試験片について、上述の熱
収縮率(A)、(B)および(C)を夫々測定したと
き、上述の熱収縮率(A)、(B)および(C)の各平
均値が、(A):30%以上40%以下、(B):50
%以上60%以下、(C):65%以上77%以下であ
り、上述の熱収縮率(A)の全測定値、熱収縮率(B)
の全測定値、熱収縮率(C)の全測定値が、夫々の熱収
縮率の平均値の±3%以内の範囲に収まっている、とい
うものである。
【0021】まず、上記の「フィルムの長さ方向にフィ
ルム物性が安定している定常領域」の意味について説明
する。「フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定して
いる定常領域」とは、フィルム製造時に製膜工程や延伸
工程が安定して行われており、フィルム物性がほぼ均一
状態を示す領域である。本発明では、製膜工程や延伸工
程が安定した定常領域で運転されているときに得られた
長尺フィルムにおいて、上記各熱収縮率を従来レベルよ
りも高度に均一化することを技術思想としている。実操
業上は、フィルム製造における原料供給方法や製膜条
件、延伸条件によって、フィルムの熱収縮率が変動する
場合があるが、本発明では、原料供給量や製膜条件、延
伸条件が不安定なときに得られたフィルムにまで均一化
を要求するものではない。このため、均一化を要求する
特性を評価するときのサンプリングは、製膜工程や延伸
工程が安定した定常状態で運転されている領域、すなわ
ち「定常領域」においてのみ、行うことを前提条件とし
た。
【0022】従って、例えば、フィルムロールの巻き始
めから10m程度が定常運転されていないときのフィル
ムであれば、この部分からはサンプリングせず、巻き始
めから10m目をフィルムの第1端部としてサンプリン
グする。
【0023】上記定常領域(定常運転領域)の数は、通
常、1本のフィルムロール当たり1箇所(フィルムロー
ル全体に亘って1箇所)である。ただし、製造状況によ
っては、複数箇所に定常領域が存在することもあり得る
ので、この場合は、定常領域のみからサンプリングす
る。上記定常領域は、例えば、上記熱収縮率(A)を測
定することによって評価できる。すなわち、熱収縮率
(A)が20%程度以内の幅[複数のサンプルの熱収縮
率(A)の最大値と最小値との差が20%程度以内]と
なっているところを定常領域であると見ればよい。
【0024】次に、サンプリング方法を説明する。1本
のフィルムロールに巻回されていたフィルムについて、
上記定常領域におけるフィルムの巻き始め側の端部を第
1端部、巻き終わり側の端部を第2端部としたとき、前
記第2端部からその内側2m以内に1番目の試料切り出
し部を、また、前記第1端部からその内側2m以内に最
終の試料切り出し部を設けると共に、1番目の試料切り
出し部から約100m毎に試料切り出し部を設けること
により、フィルムの定常領域の全長に亘って略等間隔に
試料を選択する。なお、「約100m毎」とは、100
m±1m程度のところで試料を切り出しても構わないと
いう意味である。
【0025】上記サンプリング方法をより詳細に説明す
る。例えば、全長が定常領域で、長さが498mのフィ
ルムがロールに巻回されている場合、フィルムの巻き終
わり(第2端部)から2m以内までの間で、最初の試料
(i)を切り取る。切り取る面積は、測定する物性値に
応じて適宜設定される。続いて、最初の試料(i)を切
り取ったところから約100m離れたところで、2番目
の試料(ii)を切り取る。同様にして、約200m目で
3番目の試料(iii)を、約300m目で4番目の(i
v)を、約400m目で5番目の試料(v)を切り取る。
ここで、残りは100mよりも短くなるため、6番目
(最終)の試料(vi)は、フィルムの巻き始め(第1端
部)から2m以内のいずれかの部分を切り取る。
【0026】本発明のフィルムロールに巻回されたフィ
ルムでは、上記の各試料切り出し部より切り出された試
料から作製された複数の試験片について測定される上記
熱収縮率(A)、(B)および(C)の各平均値が、
(A):30%以上40%以下、(B):50%以上6
0%以下、(C):65%以上77%以下である。
【0027】通常、熱収縮性フィルム製のラベルを容器
などへ被覆収縮させる工程において、上述の熱風トンネ
ルでは、120〜200℃程度、風速5〜20m/秒程
度の熱風中を2〜20秒程度で通過させて、また、スチ
ームトンネルでは、75〜95℃程度、圧力0.5〜2
0MPa程度のスチーム中を2〜20秒程度で通過させ
て行う。(A)、(B)および(C)の全ての熱収縮率
の平均値が、上記範囲を満足するフィルムは、例えば、
複雑な側面形状を有するPETボトルなどの容器に対し
て、該側面の大部分を覆うためのラベルとして使用した
り、側面を覆うラベルに部分的に非常に高い収縮率を要
求するような側面形状を有する容器用のラベルとして使
用しても(例えば、PETボトル用のフルラベルやガラ
ス瓶用のフルラベルなどとして使用しても)、こうした
通常行われる収縮条件下で、極めて美麗な収縮仕上り外
観を達成できる。
【0028】上記熱収縮率(A)、(B)、(C)の平
均値の1種以上が上記範囲を下回るフィルムでは、該フ
ィルムから得たラベルなどを容器などに被覆収縮させる
工程において、特に熱風を熱源とした場合に、収縮が不
十分で、フィルム端部(ラベル端部)がギザギザ形状に
なりやすい傾向にある。他方、上記熱収縮率(A)、
(B)、(C)の平均値の1種以上が上記範囲を超える
フィルムでは、上記の被覆収縮させる工程において、特
に熱風を熱源とした場合に、フィルムが急激に収縮する
ことにより上方にずれたり、フィルムの上端または下端
が斜めに収縮したり、折れ込んだりするなどの欠陥が生
じる。また、上記熱収縮率(A)および(B)の平均値
が上記範囲内であって、熱収縮率(C)の平均値が上記
範囲を下回るフィルムでは、上記の被覆収縮させる工程
において、特に熱風を熱源とした場合に、収縮白化が発
生し易い傾向にある。
【0029】上記熱収縮率(A)の平均値の好ましい範
囲としては、31%以上、より好ましくは32%であっ
て、39%以下、より好ましくは38%以下である。ま
た、上記熱収縮率(B)の平均値の好ましい範囲として
は、51%以上、より好ましくは52%以上であって、
59%以下、より好ましくは58%以下である。さら
に、上記熱収縮率(C)の平均値の好ましい範囲として
は、66%以上、より好ましくは67%以上であって、
76%以下、より好ましくは75%以下である。
【0030】なお、上記の「最大収縮方向の熱収縮率」
とは、試料の最も多く収縮した方向での熱収縮率の意味
であり、最大収縮方向は、正方形の縦方向または横方向
の長さで決められる。また、熱収縮率(%)は、10c
m×10cmの試験片を、熱収縮率(A)では75℃±
0.5℃の温水中に、熱収縮率(B)では85℃±0.
5℃の温水中に、熱収縮率(C)では95℃±0.5℃
の温水中に、夫々無荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮
させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に無荷重状態
で10秒間浸漬し、その後、フィルムの縦および横方向
の長さを測定し、下式 熱収縮率=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷
(収縮前の長さ) に従って求めた値である。なお、上記熱収縮率(A)〜
(C)は、夫々別々の試験片を用いて測定するものであ
る。
【0031】また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フ
ィルムロールに巻回されたフィルムは、上記熱収縮率
(A)〜(C)の変動が、フィルムの定常領域全長に亘
って小さいものでなければならない。すなわち、熱収縮
率(A)の全測定値、熱収縮率(B)の全測定値、熱収
縮率(C)の全測定値が、夫々の熱収縮率の平均値の±
3%の範囲に収まっていなければならない。
【0032】すなわち、いずれの熱収縮率においても、
上記切り出し部から切り出した各試験片の熱収縮率Yn
(%)(nは、試料切り出し部の番号を意味する)と全
試験片(当該熱収縮率を測定した試験片の全て)の熱収
縮率の平均値Xとの差の絶対値(|X−Yn|)が3
(%)以下でなければならない。例えば、熱収縮率
(A)の平均値がX(A)(%)で、試料(i)の熱収
縮率(A)をY(A)1(%)とすると、|X(A)−
Y(A)1|(X(A)−Y(A)1の絶対値)が3
(%)以下であり、試料(ii)〜(vi)についての熱収
縮率Y(A)2〜Y(A)6(%)においても同様に、
|X(A)−Y(A)n|がいずれも3(%)以下であ
る必要がある。熱収縮率(B)および(C)についても
同様である。換言すれば、Ynの最大値YmaxとXと
の差と、最小値YminとXとの差のいずれもが±3%
以内であれば、本発明の要件を満足する。
【0033】このように1本の熱収縮性フィルムロール
の定常領域における、熱収縮率(A)〜(C)の変動を
小さくすることで、1個、1個のラベル、袋などの熱収
縮変動が小さくなるため、被覆収縮させる工程での不良
が低減し、最終製品(ラベルなどを被覆した容器など)
の不良率を激減させることができる。夫々の熱収縮率の
変動度合いは、各熱収縮率の平均値の±2%以内である
ことがより好ましい。
【0034】次に、本発明のフィルムロールに巻回され
たフィルムの好適な物性について説明する。
【0035】[保管安定性]本発明のフィルムロールに
巻回されたフィルムは、30℃,250時間の条件での
保管前後において、下式(1)で示される上記熱収縮率
(A)の平均値の変化量Z(%)が、10%以下である
ことが好ましい。なお、下式(1)において、Hs1:
保管前の熱収縮率(A)の平均値(%)、Hs2:保管
後の熱収縮率(A)の平均値(%)である。 Z = Hs1 − Hs2 (1)。
【0036】フィルムロールに係るフィルムにおいて、
上記Zが大きいということは、該フィルムロールを30
℃,250時間の条件で保管すると、低温域での熱収縮
率が低下し易い傾向にあることを意味する。通常、熱収
縮性ポリエステル系フィルムロールは、20〜25℃程
度の環境下で保管されるが、上記Zが10%以下のもの
であれば、このような環境下で長期間保管した後に容器
などの被覆に用いても、保管前のものとほとんど変わら
ない収縮仕上り外観を呈することができる。他方、上記
Zが10%を超えるようなフィルムは、常温程度の環境
下で長期間保管した後に、容器などに被覆収縮させる
と、特に熱風を熱源とした場合に、収縮斑が生じ易く、
その結果収縮白化が発生し易い傾向にある。上記Zは7
%以下であることがより好ましく、5%以下であること
がさらに好ましい。
【0037】[極限粘度]本発明のフィルムロールに巻
回されるフィルムは、極限粘度が0.66dl/g以上
であることが好ましい。この極限粘度は、フィルムを構
成するポリエステルの分子量の指標となるものである。
【0038】フィルムを容器などに被覆収縮させる際
に、該フィルムには収縮応力が発生するが、収縮時間に
対する収縮応力の低下がほとんどないか、非常に少ない
ものであれば、収縮初期に発生した収縮斑などの収縮欠
陥が、該収縮応力によって改善され、美麗な収縮仕上り
外観を呈するようになる。しかしながら、極限粘度が
0.66dl/gを下回るフィルムでは、フィルムを構
成するポリエステルの分子量が低く、収縮応力が時間と
共に急激に低下するため、収縮初期の欠陥が改善され
ず、収縮斑や収縮白化などが残り易く、収縮仕上り外観
が劣るものとなる傾向にある。また、極限粘度が0.6
6dl/gを下回る場合は、フィルムを構成しているポ
リエステルの分子量が低く、フィルムの機械的強度も劣
るため、例えば、後述する「破断率」が10%を超える
場合がある。極限粘度は0.68dl/g以上であるこ
とがより好ましく、0.70dl/g以上であることが
さらに好ましい。
【0039】なお、極限粘度があまり高いものでは、フ
ィルム製造工程での製膜性が低下する傾向にあることか
ら、極限粘度の上限は1.5dl/g、好ましくは1.
3dl/gであることが望ましい。
【0040】[耐破れ性]本発明のフィルムロールに巻
回されているフィルムは、良好な機械的強度を有してい
ることが好ましく、その目安として、フィルムの最大収
縮方向と直交する方向についての引張試験を、複数の熱
収縮性ポリエステル系フィルム試験片について、チャッ
ク間距離100mm、試験片幅15mm、温度23℃、
引張速度200mm/分の条件で行ったとき、上記破断
率が10%以下であることが好ましい条件として挙げら
れる。なお、この試験条件は、JIS K 7127に
準じたものである。
【0041】上記条件は、換言すれば、5%も伸びない
うちに破断してしまうフィルムが、全試験片数の10%
(1割)以下である、という意味である。本発明に用い
られる熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、主に最大
収縮方向にポリエステル分子が配向しているが、こうし
たフィルムでは一般に、分子の配向方向に沿って最も裂
けやすい。よって、上記条件を満足し得ないフィルムで
は、印刷やスリット、溶剤接着などの工程において、フ
ィルムにかかる張力の変動に基づく破断のトラブルが発
生し易くなるのである。破断伸度5%以下の試験片数は
少なければ少ないほど好ましく、0%であれば最も好ま
しい。上記破断率を10%以下とするためには、例え
ば、フィルムの極限粘度を上記範囲内とすることが好ま
しい。
【0042】[最大熱収縮応力値]本発明のフィルムロ
ールに係るフィルムでは、フィルムの最大収縮方向の熱
収縮試験を、90℃の熱空気中、試験片幅20mm、チ
ャック間距離100mmの条件で行ったとき、測定され
る最大熱収縮応力値が3.0MPa以上であることが好
ましい。最大熱収縮応力値が3.0MPa未満である
と、収縮応力の不足により容器などに被覆収縮させたフ
ィルムが緩んだり、フィルムの機械的強度不足により耐
破れ性に劣るといった問題が生じ易い傾向にある。より
好ましくは、4.0MPa以上、さらに好ましくは6.
0MPa以上である。
【0043】なお、上記最大熱収縮応力値は、以下のよ
うにして測定する。 (I)熱収縮性フィルムから、最大収縮方向を長さ方向
とし、長さ200mm、幅20mmの試験片を切り出
す。 (II)熱風式加熱炉を備えた引張試験機(例えば、東洋
精機製「テンシロン」)の加熱炉内温度を90℃にす
る。 (III)送風を止め、加熱炉内に上記試験片をセットす
る。チャック間距離は100mm(一定)とする。 (IV)加熱炉の扉を静かに閉め、送風(温度90℃、吹
き出し速度5m/秒の熱風を、奥、左および右の三方向
から供給)を再開し、熱収縮応力を検出・測定する。 (V)測定チャートから最大値を読み取り、これを最大
熱収縮応力値(MPa)とする。
【0044】次に、本発明のフィルムロールに巻回され
たフィルムの組成について説明する。
【0045】[フィルム組成]従来の熱収縮性ポリエス
テル系フィルムにおいては、熱収縮工程でフィルムが加
熱されてある温度まで到達した場合、フィルムを構成す
るポリエステルの組成によっては熱収縮率が飽和してし
まい、それ以上高温に加熱しても、それ以上の収縮が得
られないことがある。このようなフィルムは、比較的低
温で熱収縮することができる利点がある。しかし、上述
の熱風トンネルで熱収縮させた場合や、熱収縮前に常温
程度以上の雰囲気下で長期間保管した後で熱収縮させた
場合に、上述した収縮白化現象が起こり易い。この収縮
白化現象は、ポリエステルの分子鎖が部分的に結晶化し
て、結晶部分の光の屈折率が非晶部分と異なるため、起
こるのではないかと考えられる。
【0046】しかし本発明者等は、多価アルコール成分
100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール
成分を10モル%以上とすることで、上記収縮白化を抑
制し得ることを見出した。
【0047】他方、1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル成分量が50モル%を超えると、フィルムの収縮率が
必要以上に高くなり過ぎて、熱収縮工程でラベルの位置
ずれや図柄の歪みが発生する恐れがある。また、フィル
ムの耐溶剤性が低下するため、印刷工程でインキの溶媒
(酢酸エチルなど)によってフィルムの白化が起きた
り、フィルムの耐破れ性が低下するため好ましくない。
【0048】また、詳細は後述するが、本発明の熱収縮
性ポリエステル系フィルムでは、耐破れ性、強度、耐熱
性などを発揮させるために、エチレンテレフタレートユ
ニットを主たる構成ユニットとすることが望ましい。こ
れに対し、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分
は、フィルムの結晶性を下げて非晶化度合いを高め,よ
り高い熱収縮性を発現するものである。
【0049】従って、多価アルコール成分100モル%
中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量が10
モル%未満では、エチレンテレフタレートユニットが多
くなってフィルムの結晶性が高くなるため、収縮不足や
部分的な結晶化による白化現象が発生する恐れがある。
また、耐溶剤性が高くなり過ぎて、テトラヒドロフラン
や1,3−ジオキソランなどの溶剤を用いてフィルムを
チューブ状体に接着加工する際に、接着不良が発生する
ことがあり、好ましくない。多価アルコール成分100
モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量
は12モル%以上、好ましくは14モル%以上であっ
て、45モル%以下、好ましくは40モル%以下である
ことが推奨される。
【0050】多価アルコール成分を形成するための他の
多価アルコール類としては、後述するように、エチレン
テレフタレートユニットを形成するため、エチレングリ
コールが用いられる。その他、プロピレングリコール、
トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、
1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペン
タンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−
1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3
−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,1
0−デカンジオールなどのアルキレングリコール、トリ
メチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトー
ル、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオ
キシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコー
ル、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレ
ンオキサイド付加物、なども併用可能である。
【0051】また、多価アルコール類ではないが、ε−
カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用して
もよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を
有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由
来のユニットが、カルボン酸成分であり、かつ、アルコ
ール成分であると考えることができる。よって、ラクト
ン類を用いる場合、1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル成分量は、多価アルコール成分量に、ラクトン類由来
のユニット量を加えた量を100モル%として計算す
る。また、多価カルボン酸成分の量を計算する際も、多
価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を
加えた量を100モル%として計算する。
【0052】フィルムの耐破れ性、強度、耐熱性などを
考慮すれば、熱収縮性ポリエステル系フィルムの構成ユ
ニット100モル%中、エチレンテレフタレートユニッ
トが50モル%以上となるように組成を選択することが
好ましい。従って、多価カルボン酸成分100モル%
中、テレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステ
ルからなる成分)を50モル%以上、多価アルコール成
分100モル%中、エチレングリコール成分を50モル
%以上、とすることが好ましい。エチレンテレフタレー
トユニットは、55モル%以上がより好ましく、60モ
ル%以上がさらに好ましい。
【0053】ただし、本発明では、多価アルコール成分
100モル%中、1,4−シクロヘキサンジメタノール
成分を10モル%以上とするので、エチレングリコール
成分は90モル%以下である。
【0054】多価カルボン酸成分を形成するための多価
カルボン酸類としては、上記のテレフタル酸(およびそ
のエステル)の他、芳香族ジカルボン酸、それらのエス
テル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸などが利用可能で
ある。芳香族ジカルボン酸としては、例えばイソフタル
酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボ
ン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げら
れる。またこれらの芳香族ジカルボン酸やイソフタル
酸、テレフタル酸のエステル誘導体としてはジアルキル
エステル、ジアリールエステルなどの誘導体が挙げられ
る。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピ
ン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸
などや、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸
が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸などのオキ
シカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット
酸などの多価カルボン酸を、必要に応じて併用してもよ
い。
【0055】上記熱収縮率(A)、(B)および(C)
の制御を容易にするためには、フィルムを、エチレンテ
レフタレートユニットを主体とし、1,4−シクロヘキ
サンジメタノール成分といずれかの多価カルボン酸成分
から形成されるエステルユニット以外に、ガラス転移温
度(Tg)を低下させるユニットを、フィルムの全構成
ユニット100モル%中、0.5〜30モル%程度導入
することが好ましい。なお、上記のTgを低下させるユ
ニットとしては、多価アルコール成分として、1,3−
プロパンジオール成分、1,4−ブタンジオール成分、
ダイマージオール成分、またはポリオキシテトラメチレ
ングリコール成分を有するエステルユニットや、多価カ
ルボン酸成分として、ダイマー酸、アジピン酸、セバシ
ン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分を有
するエステルユニット、およびε−カプロラクトン由来
のユニットが好ましいものとして挙げられ、これらの1
種または2種以上を導入すればよい。なお、Tgを低下
させるエステルユニットは、上記した多価アルコール成
分のいずれかと多価カルボン酸成分のいずれか同士から
形成されるものであってもよい。
【0056】さらに、上式(1)で規定する熱収縮率
(A)の熱収縮率の変化量Zの制御を容易にする点から
も、上記のTgを低下させるユニットを、フィルムの全
構成ユニット100モル%中、0.5〜30モル%程度
導入することが好ましい。Tgを低下させるユニットと
しては、熱収縮率(A)、(B)および(C)の制御の
点から好ましいエステルユニットのうち、多価アルコー
ル成分として1,4−ブタンジオール成分、ダイマージ
オール成分、またはポリオキシテトラメチレングリコー
ル成分を有するエステルユニット、および多価カルボン
酸成分としてダイマー酸成分を有するエステルユニット
が特に推奨される。
【0057】熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成す
るポリエステルは常法により溶融重合することによって
製造できるが、ジカルボン酸類とグリコール類とを直接
反応させ得られたオリゴマーを重縮合する、いわゆる直
接重合法、ジカルボン酸のジメチルエステル体とグリコ
ール類とをエステル交換反応させたのちに重縮合する、
いわゆるエステル交換法などが挙げられ、任意の製造法
を適用することができる。また、その他の重合方法によ
って得られるポリエステルであってもよい。なお、ラク
トン類由来のユニットの導入は、例えば、上記の重縮合
前にラクトン類を添加して重縮合を行う方法や、上記の
重縮合により得られたポリマーとラクトン類を共重合す
る方法などにより達成できる。
【0058】また、必要に応じて、シリカ、二酸化チタ
ン、カオリン、炭酸カルシウムなどの微粒子をフィルム
原料に添加してもよく、さらに酸化防止剤、紫外線吸収
剤、帯電防止剤、着色剤、抗菌剤などを添加することも
できる。
【0059】次に、本発明の熱収縮性ポリエステル系フ
ィルムロールを得るための好ましい製造方法について説
明する。
【0060】本発明のフィルムロールを製造するに当た
っては、[I]フィルム組成の変動を抑制すること、[I
I]フィルムの延伸工程においてフィルム表面の温度変
動を抑制すること、および[III]フィルムの延伸工程
において、段階的に延伸を行うこと、が重要となる。こ
のような製造方法を採用することで、熱収縮率(A)〜
(C)の平均値を上記の範囲内にすると共に、これらの
熱収縮率の変動を上記範囲内に制御することが可能とな
る。また、上述の他の物性を確保することもできる。
【0061】[フィルム組成の変動抑制]一般に熱収縮
性ポリエステル系フィルムは、熱収縮特性と強度などを
両立させる観点から、2種以上の種類・組成の異なるポ
リマーをブレンドしたり、共重合モノマー成分を複数に
するなどして、主たる構成ユニット以外に他の構成ユニ
ットを原料ポリマー中に導入して、得られるフィルムの
特性を変化させる手法が採用されている。ここで、他の
構成ユニットをフィルム中に含有させる手法としては、
共重合を行ってこの共重合ポリマーを単独使用する方式
と、異なる種類のホモポリポリマーあるいは共重合ポリ
マーをブレンドする方式とがある。
【0062】共重合ポリマーを単独使用する方式では、
フィルムロールに巻回された長尺フィルムにおいて、組
成の変動はほとんど起こらない。
【0063】一方、ブレンド方式では、ブレンド比率を
変更するだけでフィルムの物性を容易に変更でき、多品
種のフィルムの工業生産にも対応できるため、工業的に
は広く行われている。そして、このようなポリマーブレ
ンドの場合に、1本のロールに巻回されるフィルムの組
成変動や物性変動が大きくなり易いことが見出されてい
る。よって、ブレンド方式の場合には、下記の手法を用
いることが好ましい。
【0064】(a)チップ形状の均一化 ブレンド方式では、通常、組成の異なる複数の原料ポリ
エステルチップをホッパ内でブレンドした後、溶融混練
して押出機から押出して、フィルム化する。例えば、原
料となるポリエステルが3種類ある場合、3個のホッパ
に夫々のポリエステルチップを連続式あるいは間欠式に
供給し、必要に応じて緩衝ホッパを介して、最終的に
は、押出機直前あるいは直上のホッパ(便宜上「最終ホ
ッパ」という)で3種類のポリエステルチップを混ぜな
がら、押出機の押出量に合わせて原料チップを定量的に
押出機に供給してフィルムを形成する。
【0065】ところが、最終ホッパの容量あるいは形状
によっては、最終ホッパ内のチップ量が多い場合と残量
が少なくなった場合に、最終ホッパから押出機へと供給
されるチップの組成が異なってくるという原料偏析の現
象が発生していることが本発明者等によって見出され
た。この問題は、各種ポリエステルチップの形状あるい
は比重が異なっている場合、特に、顕著に現れる。その
結果、長尺フィルムの1,4−シクロヘキサンジメタノ
ール成分などの含有率が変動してしまうのである。
【0066】1,4−シクロヘキサンジメタノール成分
などの含有率の変動の少ないフィルムを得るためには、
フィルムを構成するポリエステルの組成変動を低減する
手段として、使用する複数種のポリエステルチップの形
状を合わせて、最終ホッパ内での原料偏析の現象を抑止
することが好ましい。
【0067】ポリエステルの原料チップは、通常、重合
後に溶融状態で重合装置よりストランド状で取り出さ
れ、直ちに水冷された後、ストランドカッターでカット
されて形成される。このため、ポリエステルのチップ
は、通常、断面が楕円形の楕円柱状となる。このとき、
使用量の最も多いポリエステルチップに混合される他の
ポリエステルチップとして、使用量の最も多いポリエス
テルの原料チップの断面楕円の平均長径(mm)、平均
短径(mm)および平均チップ長さ(mm)に対して、
夫々±20%以内の範囲であるものを用いれば、上記原
料偏析を低減させ得ることを突き止めた。これらの平均
値が夫々±15%以内の範囲のものを用いることがより
好ましい。
【0068】チップの大きさに違いがある場合、最終ホ
ッパ内をチップの混合物が落下していくときに、小さい
チップは先に落下し易い。このため、最終ホッパ内のチ
ップ残量が少なくなると、大きいチップの比率が多くな
り、これが原料偏析の原因になるのである。しかし、上
記範囲内のチップを用いることで、これらの原料偏析を
低減させることができ、組成の均一な長尺フィルムを得
ることができる。
【0069】なお、異なる組成のホモポリエステル同
士、あるいはホモポリエステルと共重合ポリエステルを
ブレンドして用いても、例えば、相溶性が悪いことに起
因するフィルムの白化などの問題は起こらない。これ
は、後述する押出機内での溶融混練工程で、原料ポリエ
ステルがかなり加熱されるため、夫々のポリエステルの
間でエステル交換反応が起こり、押出機から押出される
ときには、同じような組成の共重合ポリエステルの混合
物に変性する傾向があるからである。このことは、フィ
ルムのTgを示すピークが一つしか観察されないことか
らも確認できる。
【0070】(b)ホッパ形状の適正化 上述の最終ホッパ形状の適正化も、組成が均一な長尺フ
ィルムを得るための好ましい手段である。すなわち、最
終ホッパとして漏斗状ホッパを用い、その傾斜角を65
゜以上にすることで、大きいチップも小さいチップと同
様に落とし易くすることができ、内容物の上端部が水平
面を保ちつつ下降していくため、原料偏析の低減に効果
的である。より好ましい傾斜角は70゜以上である。な
お、ホッパの傾斜角とは、漏斗状の斜辺と、水平な線分
との間の角度である。最終ホッパの上流に複数のホッパ
を使用してもよく、この場合、いずれのホッパにおいて
も、傾斜角を65゜以上、より好ましくは70゜以上と
するとよい。
【0071】(c)ホッパ容量の適正化 ホッパ内での原料偏析を低減する手段として、使用する
ホッパの容量を適正化することも好ましい手段である。
ここで、ホッパの適正な容量としては、押出機の1時間
当たりの吐出量の15〜120質量%の範囲内である。
この吐出量の15質量%程度以上の容量がホッパにない
と、原料の安定供給が難しいこと、また、大きすぎるホ
ッパでは、原料チップ混合物が長時間に亘ってホッパ内
に留まることとなり、その間にチップの偏析が生じる恐
れがあること、などがホッパ容量を上記範囲内とする理
由である。ホッパ容量は、押出機の1時間当たりの吐出
量の20〜100質量%の範囲内であることがより好ま
しい。
【0072】(d)微粉体の低減 使用する原料チップの削れなどにより発生する微粉体の
比率を低減することも、1,4−シクロヘキサンジメタ
ノール成分などの含有率の変動を抑制するために好まし
い手段である。微粉体が原料偏析の発生を助長するの
で、工程内で発生する微粉体を除去して、ホッパ内に含
まれる微粉体の比率を低減することが好ましい。含まれ
る微粉体の比率は、原料チップが押出機に入るまでの全
工程を通じて、1質量%以内に制御することが好まし
く、0.5質量%以内に制御することがさらに好まし
い。具体的には、ストランドカッターでチップ形成時に
篩を通す方法、原料チップを空送などする場合にサイク
ロン式エアフィルタを通す方法などにより、微粉体を除
去すればよい。
【0073】長尺フィルムの組成の均一化を図るために
は、上記(a)〜(d)のいずれかを採用すればよい。
これらの4つの手段のうち、2つ以上を採用することが
より好ましく、(a)〜(d)のすべてを採用すること
がさらに好ましい。
【0074】[延伸工程におけるフィルム表面温度の均
一化]長尺フィルムの物性(特に熱収縮特性)を変動さ
せる要因には、上述のポリマー成分の組成変動の他に、
フィルムを延伸する際の工程変動も挙げられる。すなわ
ち、長尺フィルムの熱収縮特性変動を低減するには、フ
ィルムを延伸する工程での温度変動を抑制して、フィル
ムの表面温度の変動幅をできるだけ低減することが好ま
しい。
【0075】ポリエステル系フィルムの場合、テンター
を用いて横方向に一軸延伸する際には、延伸前の予備加
熱工程、延伸工程、延伸後の熱処理工程、緩和処理、再
延伸処理工程などがある。特に、予備加熱工程、延伸工
程の各段階および延伸後の熱処理工程において、任意ポ
イントにおいて測定されるフィルムの表面温度の変動幅
が、平均温度±1℃以内であることが好ましく、平均温
度±0.5℃以内であればさらに好ましい。
【0076】特に予備加熱工程、延伸工程、および延伸
後の熱処理工程での温度変動は、熱収縮率の変動に大き
く影響を及ぼす。従って、これらの工程でのフィルムの
表面温度の変動幅が小さいと、フィルム全長に亘って同
一温度で延伸や熱処理されることになって、熱収縮挙動
が均一化する。勿論、緩和処理や再延伸処理工程におい
ても、フィルムの表面温度の変動幅が小さいことが好ま
しい。
【0077】フィルム表面温度の変動を小さくするに
は、例えば、フィルムを加熱する熱風の風速を制御でき
るようにインバーターを取り付けた風速変動抑制設備を
用いたり、熱源に500kPa以下(5kgf/cm2
以下)の低圧蒸気を使用して、熱風の温度変動を抑制で
きる設備などを用いるとよい。
【0078】任意ポイントにおいて測定されるフィルム
の表面温度の変動幅とは、例えば、延伸工程に入ってか
ら2m経過したところで、フィルム製造中、連続的にフ
ィルム表面温度を、例えば赤外式の非接触表面温度計で
測定した場合の変動幅をいう。1ロール分のフィルム製
造が終了した時点で、平均温度が算出できるので、フィ
ルム表面温度の変動幅が、平均温度±1℃以内であれ
ば、フィルムの定常領域の全長に亘って同条件で延伸さ
れていることとなり、熱収縮挙動の変動も小さくなる。
【0079】[段階的な延伸]本発明に係るフィルムに
おいては、最大収縮方向がフィルム横(幅)方向である
ことが、生産効率上、実用的であるので、以下、最大収
縮方向を横方向とする場合の延伸法の例を示す。なお、
最大収縮方向をフィルム縦(長手)方向とする場合も、
下記方法における延伸方向を90゜変えるなど、通常の
操作に準じて延伸することができる。
【0080】フィルムの横方向の延伸は、Tg−20℃
〜Tg+40℃の範囲内の所定温度で行う。なお、延伸
は2段階以上、好ましくは3段階以上に分け、最終延伸
倍率が未延伸フィルムに対して3〜6倍、好ましくは
3.5〜5.5倍となるようにする。例えば、延伸を3
段階に分けて行う場合、第1段階の延伸を1.1〜1.
5倍とし、第2段階の延伸を、第1段階の延伸で得られ
たフィルム幅に対して1.3〜1.7倍とし、さらに第
3段階の延伸を、第2段階の延伸で得られたフィルム幅
に対して1.5〜2.5倍とし、且つ、最終延伸倍率が
上記範囲内となるようにする。
【0081】なお、第2段階以降の各段階での延伸温度
は、上記の温度範囲内で、1つ前の段階の延伸温度と同
じにするか、1〜10℃程度低くすることが好ましく、
後者の場合、延伸開始時(第1段階)と延伸終了時(最
終段階)の温度差を5〜20℃の範囲とすることが推奨
される。フィルムの熱収縮率制御の観点からは、延伸の
段階数は多い方が好ましいが、あまり段階数が多すぎる
と、工業生産における延伸設備の設計が困難となるた
め、6段階以下、好ましくは4段階以下とすることが望
ましい。
【0082】このように、フィルムの最大収縮方向の延
伸を段階的に行うことで、低温から高温までの幅広い温
度域でのフィルムの熱収縮率をより精密に制御すること
が可能となるため、フィルムの熱収縮率(A)〜(C)
を、夫々上記範囲内とすることができる。すなわち、上
記の延伸を1段階で行ったフィルムでは、例えば、熱収
縮率(B)の平均値が上記範囲となるように、延伸倍率
を調整するなどして製造した場合であっても、熱収縮率
(A)や熱収縮率(C)までも上記範囲内とすることは
極めて困難である。
【0083】次に具体的なポリエステル系フィルムの製
造例を説明する。
【0084】[ポリエステル系フィルムの製造例]上記
手段(a)を満足する大きさに制御した原料ポリエステ
ルチップを、ホッパドライヤー、パドルドライヤーなど
の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥し、押出機を
用いて200〜300℃の温度でフィルム状に押出す。
あるいは、未乾燥のポリエステル原料チップをベント式
押出機内で水分を除去しながら同様にフィルム状に押出
す。押出しに際してはTダイ法、チューブラ法など、既
存のどの方法を採用しても構わない。上記押出し後は、
キャスティングロールで冷却(急冷)して未延伸フィル
ムを得る。なお、この「未延伸フィルム」には、フィル
ム送りのために必要な張力が作用したフィルムも含まれ
るものとする。
【0085】次いで、上記未延伸フィルムに対して延伸
処理を行う。上述の通り、最大収縮方向がフィルム横
(幅)方向であることが、生産効率上、実用的であるの
で、ここでも、最大収縮方向を横方向とする場合の延伸
法の例を示す。なお、最大収縮方向をフィルム縦(長
手)方向とする場合も、下記方法における延伸方向を9
0゜変えるなど、通常の操作に準じて延伸することがで
きる。
【0086】熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚み分
布を均一化させることに着目すれば、テンターなどを用
いて横方向に延伸する際、延伸工程に先立って予備加熱
工程を行うことが好ましい。この予備加熱工程では、熱
伝導係数が0.00544J/cm2・sec・℃
(0.0013カロリー/cm2・sec・℃)以下と
なるように、低風速で、フィルム表面温度がTg+0℃
〜Tg+60℃の範囲内のある温度になるまで加熱を行
うことが好ましい。
【0087】横方向の延伸は、上記「段階的な延伸」で
述べた手法に従って行う。その後、50℃〜110℃の
範囲内の所定温度で、0〜15%の伸張あるいは0〜1
5%の緩和をさせながら熱処理し、必要に応じて40℃
〜100℃の範囲内の所定温度でさらに熱処理をして、
熱収縮性ポリエステル系フィルムを得る。なお、本熱処
理工程において、フィルムを伸張させながら行う場合
は、フィルムの最終延伸倍率は、かかる伸張率も含めて
計算し、算出される最終延伸倍率が未延伸フィルムに対
して上記範囲を満たすようにすればよい。また、この横
延伸工程においては、上述のように、フィルム表面温度
の変動を小さくできる設備を使用することが推奨され
る。
【0088】延伸の方法としては、テンターでの横1軸
延伸ばかりでなく、縦方向に1.0倍〜4.0倍、好ま
しくは1.1倍〜2.0倍の延伸を施してもよい。この
ようい2軸延伸を行う場合は、逐次2軸延伸、同時2軸
延伸のいずれでもよく、必要に応じて、再延伸を行って
もよい。また、逐次2軸延伸においては、延伸の順序と
して、縦横、横縦、縦横縦、横縦横などのいずれの方式
でもよい。これらの縦延伸工程あるいは2軸延伸工程を
採用する場合においても、横延伸と同様に、予備加熱工
程、延伸工程等において、フィルム表面温度の変動をで
きるだけ小さくすることが好ましい。
【0089】延伸に伴うフィルムの内部発熱を抑制し、
幅方向のフィルム温度斑を小さくする点に着目すれば、
延伸工程の熱伝達係数は、0.00377J/cm2
sec・℃(0.0009カロリー/cm2・sec・
℃)以上とすることが好ましい。0.00544〜0.
00837J/cm2・sec・℃(0.0013〜
0.0020カロリー/cm2・sec・℃)がより好
ましい。
【0090】[その他]本発明における熱収縮性ポリエ
ステル系フィルムロールは、幅0.2m以上の熱収縮性
フィルムを巻き取りコア(芯)に長さ300m以上巻取
ったものであることが好ましい。幅が0.2mに満たな
いフィルムのロールは、工業的に利用価値の低いもので
あり、また、長さ300mに満たないフィルムロール
は、フィルムの巻長が少ないために、フィルムの全長に
亘る熱収縮率変動が小さくなるので、本発明の効果が発
現し難くなる。フィルムロールの幅は0.3m以上がよ
り好ましく、0.4m以上がさらに好ましい。また、ロ
ールに巻回されるフィルムの長さは400m以上がより
好ましく、500m以上がさらに好ましい。
【0091】フィルムロールの幅および巻長の上限は特
に制限されるものではないが、取扱いのしやすさから、
一般的には幅1.5m以下、巻長はフィルム厚み45μ
mの場合に6000m以下が好ましい。また、巻き取り
コアとしては、通常、3インチ、6インチ、8インチな
どのプラスチックコア、金属製コア、あるいは紙管を使
用することができる。
【0092】本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルム
ロールを構成するフィルムの厚みは特に限定するもので
はないが、例えばラベル用熱収縮性ポリエステル系フィ
ルムとしては、10〜200μmが好ましく、20〜1
00μmがさらに好ましい。
【0093】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳述す
るが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本
発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する場合は、本
発明に含まれる。なお、合成例で得られたチップ、およ
び実施例や比較例で得られたフィルムの物性の測定方法
は、以下の通りである。
【0094】(1)定常領域の確認と試料切り出し部の
設定 後述する実施例および比較例で得られた長さ1000m
のフィルムが巻回されたフィルムロールについて、フィ
ルムの第2端部(巻き終り部)から20m間隔で5点試
料を切出し、フィルムの第1端部(巻き始め部)から2
00m内側の部分から前記第1端部に向けて20m間隔
で5点の試料を切り出し、これら試料の最大収縮方向の
熱収縮率(A)(後述する)を測定した。各試料の熱収
縮率(A)は、20%以内の幅に収まっていた。しかも
フィルムの製造中、製造・延伸工程は安定していた。従
って各フィルムロールは、フィルムの全長に亘って定常
領域に該当していることが確認された。
【0095】また、各物性測定においては、1番目の試
料切り出し部をフィルムの第2端部(巻き終わりから0
m)とし、最終の試料切り出し部は、フィルムの第1端
部(巻き始めから0m)とし、全部で11箇所の試料切
り出し部から試料を採取した。各物性測定においては、
特に断らない限り、各試料切り出し部から10個の試料
(試験片)を切り出し、各試料切り出し部における10
個の試料(試験片)の物性の平均値を、その切り出し部
における試料の物性値とした。
【0096】(2)組成 試料(原料チップまたはフィルム)を、クロロホルムD
(ユーリソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーリ
ソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶
解させて、試料溶液を調製し、NMR(「GEMINI
−200」;Varian社製)を用いて、温度23
℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンの
NMRを測定する。NMR測定では、プロトンのピーク
強度に基づいて、フィルムを構成する成分の構成比率を
算出する。
【0097】(3)極限粘度 試料(チップまたはフィルム)0.05gを精秤し、2
5mlのフェノール/テトラクロロエタン=3/2(質
量比)の混合溶媒に溶解した後、オストワルド粘度計を
用いて30±0.1℃で測定する。極限粘度[η]は、
下式(Huggins式)によって求められる。
【0098】
【数1】
【0099】ここで、ηsp :比粘度、t0:オストワル
ド粘度計を用いた溶媒の落下時間、t:オスワルド粘度
計を用いたフィルム溶液の落下時間、C:フィルム溶液
の濃度である。
【0100】なお、実際の測定では、Huggins式
においてk=0.375とした下記近似式で極限粘度を
算出する。
【0101】
【数2】
【0102】ここで、ηr:相対粘度である。
【0103】(4)熱収縮率 フイルムを10cm×10cmの正方形に切り出し、下
記(A)、(B)あるいは(C)の温度の温水中に、無
荷重状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±
0.5℃の水中に10秒浸漬した後、試料の縦および横
方向の長さを測定し、下記式に従って求める。 熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長
さ)÷(収縮前の長さ) ここで、(A):75℃±0.5℃,(B):85℃±
0.5℃,(C):95±0.5℃である。最も収縮率
の大きい方向を最大収縮方向とする。また、(A)の温
度の温水を用いる熱収縮率測定は、30℃の環境下で2
50時間保管したフィルムについても行う。
【0104】後述する表5において、平均値(X)は測
定した11試料の全ての熱収縮率の平均値を、最大値
(Ymax)は11試料のうちの熱収縮率の最大値を、
最小値(Ymin)は11試料のうち最小の熱収縮率を
夫々示し、平均値との差も示した。また、保管前後の変
化量(Z)は、上式(1)に示すように、所定条件での
保管前後のフィルムの熱収縮率(A)の平均値の差
(%)である。
【0105】(5)最大熱収縮応力値 加熱炉付き引張試験機(東洋精機株式会社製「テンシロ
ン」)を用いて測定する。熱収縮前のフィルムから、最
大収縮方向の長さが200mmで、幅が20mmの試料
を切り出し、予め90℃に加熱しておいた引張試験機の
送風を止め、試料をチャック間距離100mmとして取
り付けた後、速やかに加熱炉の扉を閉め、送風(温度9
0℃、吹き出し速度5m/秒の熱風を、奥、左および右
の三方向から供給)を開始した時に検出される収縮応力
を測定し、測定チャートから得られる最大値を最大熱収
縮応力値(MPa)とする。
【0106】(6)収縮仕上り性不良率 フィルムをヒートシールにより接着させてチューブを作
製し、これを裁断して熱収縮性ポリエステル系フィルム
ラベルを得る。次いで、容量300mlのガラス瓶にラ
ベルを装着した後、170℃、風速12m/秒の熱風式
熱収縮トンネルの中を15秒で通過させて、ラベルを収
縮させる。収縮白化、収縮斑、ラベル端部の欠陥(折れ
込み、ギザギザ形状)の程度を目視で判断し、収縮仕上
り性を5段階で評価する。基準は、5:仕上り性最良、
4:仕上り性良、3:収縮白化、収縮斑またはラベル端
部の欠陥少し有り(2ヶ所以内)、2:収縮白化、収縮
斑またはラベル端部の欠陥有り(3〜5ヶ所)、1:収
縮白化、収縮斑またはラベル端部の欠陥多い(6ヶ所以
上)とする。この基準で4以上を合格レベル、3以下の
ものを不良とし、下式に従って、収縮仕上り性における
不良率(%)を求める。 収縮仕上り性不良率=100×不良サンプル数÷全サン
プル数。
【0107】合成例1 エステル化反応釜に、57036質量部のテレフタル
酸、35801質量部のエチレングリコール、および1
5843質量部の1,4−シクロヘキサンジメタノール
を仕込み、圧力:0.25MPa,温度:220〜24
0℃の条件で120分間エステル化反応を行った。次い
で、反応釜内を常圧とし、酢酸コバルト・4水塩(重合
触媒)6.34質量部、チタニウムテトラブトキシド
(重合触媒)8質量部を加え、10分間撹拌後、反応系
内を徐々に減圧し、75分間で0.5hPaとすると共
に、温度を280℃に昇温した。温度280℃で溶融粘
度が7000ポイズとなるまで撹拌を続けて重合反応を
行い(約40分間)、その後水中にストランド状に吐出
して冷却し、得られたストランドをストランドカッター
で切断してポリエステルAのチップを得た。
【0108】合成例2〜8 合成例1と同様の方法により、表1および表2に示すポ
リエステルB〜Hのチップを得た。
【0109】合成例9 撹拌機、温度計および部分還流式冷却器を備えたステン
レススチール製オートクレーブに、多価カルボン酸成分
としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%
と、多価アルコール成分として、エチレングリコール
(EG)68モル%と1,4−シクロヘキサンジメタノ
ール(CHDM)32モル%を、多価アルコールがモル
比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エ
ステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成
分に対して)と、重縮合触媒として三酸化アンチモン
0.025モル%(酸成分に対して)添加し、生成する
メタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行
った。その後、280℃で26.7Paの減圧条件下で
重縮合反応を行った。得られたポリエステルを溶融状態
で重合装置からストランド状で取り出し、直ちに水冷
し、その後、ストランドカッターでカットして、ポリエ
ステルチップIを得た。
【0110】合成例10,11 合成例9と同様の方法により、表1および表2に示すポ
リエステルJ,Kのチップを得た。
【0111】
【表1】
【0112】なお、表1中、TPAはテレフタル酸成分
を、DiAはダイマー酸成分を、EGはエチレングリコ
ール成分を、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタ
ノール成分を、NPGはネオペンチルグリコール成分
を、BDは1,4−ブタンジオール成分を、DEGはジ
エチレングリコール成分を、ε−CLユニットは、ε−
カプロラクトン由来のユニットを夫々意味する。
【0113】この他、表1中の「多価カルボン酸成分」
量は、チップ中の多価カルボン酸成分量とε−カプロラ
クトン由来のユニット量の合計量100モル%中の量
を、「多価アルコール成分」量は、チップ中の多価アル
コール成分量とε−カプロラクトン由来のユニットの合
計量100モル%中の量を表し、「ε−CLユニット」
量は、チップ中のエステルユニットとε−カプロラクト
ン由来のユニットの合計量100モル%中の量を表す。
【0114】
【表2】
【0115】実施例1 上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表
3に示したように、チップAを49質量%、チップEを
31質量%、および20質量%のチップGを、押出機直
上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別
々に供給しながら、このホッパ内で混合し、280℃で
単軸式押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ1
80μmの未延伸フィルムを得た。ホッパは、原料チッ
プが100kg入る容量を有しており、押出機の吐出量
は、1時間あたり430kgである。また、ホッパの傾
斜角は70゜であった。
【0116】この未延伸フィルムを100℃で10秒間
予熱した後、テンターで横方向に延伸した。延伸は、ま
ず、85℃で1.3倍に延伸し(第1段階)、次いで8
0℃で、第1段階終了時のフィルム幅の1.5倍に延伸
し(第2段階)、さらに75℃で、第2段階終了時のフ
ィルム幅の2.0倍に延伸(第3段階)して行った。次
いで、75℃で、第3段階終了時のフィルム幅の2%伸
張しながら10秒間熱処理を行って、最終延伸倍率(未
延伸フィルムに対して)4.0倍、厚さ45μmの熱収
縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って
連続的に製膜した。フィルムを1000m連続製造した
ときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温
度±0.5℃、延伸工程で平均温度±0.5℃、熱処理
工程で平均温度±0.5℃の範囲内に制御した。なお、
フィルムの表面温度は、赤外式の非接触表面温度計を用
いて測定した(以下の実施例、比較例でも同じ)。
【0117】得られたフィルムを幅0.4m、長さ10
00mにスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収
縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。すなわち、
実施例1の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールで
は、原料チップの適正化、ホッパ形状の適正化、および
ホッパ容量の適正化といった手法を採用しており、長尺
フィルムの全長に亘って組成の変動を小さくしている。
また、フィルム延伸の際に、予熱、延伸、熱処理の各工
程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、平均温度±
1.0℃の範囲内に制御して、フィルムの全長に亘って
熱収縮挙動の変動を小さくしている。さらに、段階的に
延伸を行って、精密な熱収縮率の制御を行っている。得
られたフィルムロールのフィルムの組成を表4に、物性
を表5に示す。
【0118】実施例2 表3に示したように、チップAを50質量%、チップE
を5質量%、45質量%のチップHを、押出機直上のホ
ッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に別々に供
給しながら、このホッパ内で混合し、280℃で単軸式
押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μ
mの未延伸フィルムを得た。ホッパは、原料チップが1
00kg入る容量を有しており、押出機の吐出量は、1
時間あたり450kgである。また、ホッパの傾斜角は
70゜であった。
【0119】この未延伸フィルムを100℃で10秒間
予熱した後、テンターで横方向に延伸した。延伸は、ま
ず、85℃で1.3倍に延伸し(第1段階)、次いで8
0℃で、第1段階終了時のフィルム幅の1.5倍に延伸
し(第2段階)、さらに75℃で、第2段階終了時のフ
ィルム幅の2.0倍に延伸(第3段階)して行った。次
いで、70℃で、第3段階終了時のフィルム幅の2%伸
張しながら10秒間熱処理を行って、最終延伸倍率(未
延伸フィルムに対して)4.0倍、厚さ45μmの熱収
縮性ポリエステル系フィルムを1000m以上に亘って
連続的に製膜した。フィルムを1000m連続製造した
ときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱工程で平均温
度±0.5℃、延伸工程で平均温度±0.6℃、熱処理
工程で平均温度±0.5℃の範囲内に制御した。得られ
たフィルムを幅0.4m、長さ1000mにスリットし
て、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポリエステル系
フィルムロールを得た。
【0120】すなわち、実施例2の熱収縮性ポリエステ
ル系フィルムロールは、原料チップの適正化、ホッパ形
状の適正化、およびホッパ容量の適正化といった手法を
採用しており、長尺フィルムの全長に亘って組成の変動
を小さくしている。また、フィルム延伸の際に、予熱、
延伸、熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動
幅を、平均温度±1.0℃の範囲内に制御して、フィル
ムの全長に亘って熱収縮挙動の変動を小さくしている。
さらに、段階的に延伸を行って、精密な熱収縮率の制御
を行っている。得られたフィルムロールのフィルムの組
成を表4に、物性を表5に示す。
【0121】比較例1 表3に示したように、チップB75質量%、チップE1
5質量%、チップF10質量%を事前に混合し、その後
予備乾燥した。原料チップが400kg入り、ホッパの
傾斜角が60゜である同一の形状のホッパを3個直列に
並べて一番上流のホッパにチップ混合物を入れ、2個
目、3個目(最終ホッパ)へと移動させた。その後、押
出機直上のホッパに供給し、280℃で単軸式押出機で
溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延
伸フィルムを得た。
【0122】この未延伸フィルムを88℃で10秒間予
熱した後、テンターで横方向に75℃で4.0倍延伸し
た。次いで、79℃で10秒間熱処理を行って、厚さ4
5μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m
以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m
連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱
工程で平均温度±0.5℃、延伸工程で平均温度±0.
6℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の範囲内に制御
した。得られたフィルムを幅0.4m、長さ1000m
にスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポ
リエステル系フィルムロールを得た。
【0123】すなわち、比較例1の熱収縮性ポリエステ
ル系フィルムロールは、原料偏析の発生を抑制する手法
を積極的に採用しておらず、長尺フィルムの全長に亘っ
て組成の変動が大きくなっている例である。得られたフ
ィルムロールのフィルムの組成を表4に、物性を表5に
示す。
【0124】比較例2 表3に示したように、チップC25質量%、チップE4
9質量%、チップF26質量%を事前に混合し、その後
予備乾燥した。原料チップが400kg入り、ホッパの
傾斜角が60゜である同一の形状のホッパを3個直列に
並べて一番上流のホッパにチップ混合物を入れ、2個
目、3個目(最終ホッパ)へと移動させた。その後、押
出機直上のホッパに供給し、280℃で単軸式押出機で
溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延
伸フィルムを得た。
【0125】この未延伸フィルムを88℃で10秒間予
熱した後、テンターで横方向に73℃で4.0倍延伸し
た。次いで、72℃で10秒間熱処理を行って、厚さ4
5μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m
以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m
連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱
工程で平均温度±0.6℃、延伸工程で平均温度±0.
6℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の範囲内に制御
した。得られたフィルムを幅0.4m、長さ1000m
にスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポ
リエステル系フィルムロールを得た。
【0126】すなわち、比較例2の熱収縮性ポリエステ
ル系フィルムロールは、原料偏析の発生を抑制する手法
を積極的に採用しておらず、長尺フィルムの全長に亘っ
て組成の変動が大きくなっている例である。得られたフ
ィルムロールのフィルムの組成を表4に、物性を表5に
示す。
【0127】比較例3 表3に示したように、チップD49質量%、チップE3
1質量%、チップH20質量%を事前に混合し、その後
予備乾燥した。原料チップが400kg入り、ホッパの
傾斜角が60゜である同一の形状のホッパを3個直列に
並べて一番上流のホッパにチップ混合物を入れ、2個
目、3個目(最終ホッパ)へと移動させた。その後、押
出機直上のホッパに供給し、280℃で単軸式押出機で
溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180μmの未延
伸フィルムを得た。
【0128】この未延伸フィルムを88℃で10秒間予
熱した後、テンターで横方向に73℃で4.0倍延伸し
た。次いで、72℃で10秒間熱処理を行って、厚さ4
5μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを1000m
以上に亘って連続的に製膜した。フィルムを1000m
連続製造したときのフィルム表面温度の変動幅は、予熱
工程で平均温度±0.6℃、延伸工程で平均温度±0.
6℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の範囲内に制御
した。得られたフィルムを幅0.4m、長さ1000m
にスリットして、3インチ紙管に巻き取り、熱収縮性ポ
リエステル系フィルムロールを得た。
【0129】すなわち、比較例3の熱収縮性ポリエステ
ル系フィルムロールは、原料偏析の発生を抑制する手法
を積極的に採用しておらず、長尺フィルムの全長に亘っ
て組成の変動が大きくなっている例である。得られたフ
ィルムロールのフィルムの組成を表4に、物性を表5に
示す。
【0130】比較例4および5 上記合成例で得られた各チップを別個に予備乾燥し、表
3に示したように、チップIを75質量%、チップJを
10質量%および15質量%のチップKを、押出機直上
のホッパに定量スクリューフィーダーで連続的に別々に
供給しながら、このホッパ内で混合し、280℃で単軸
式押出機で溶融押出しし、その後急冷して、厚さ180
μmの未延伸フィルムを得た。ホッパは、原料チップが
100kg入る容量を有しており、押出機の吐出量は、
1時間あたり450kgである。また、ホッパの傾斜角
は70゜であった。
【0131】上記未延伸フィルムを長さ方向に2等分
し、2本の未延伸フィルムロールを得た。各未延伸フィ
ルムについて、100℃で10秒間予熱した後、テンタ
ーで横方向に82℃で4.0倍延伸し、続いて80℃で
10秒間熱処理を行って、厚さ45μmの熱収縮性ポリ
エステル系フィルムを1000m以上に亘って連続的に
製膜した。フィルムを連続製造したときのフィルム表面
温度の変動幅は、比較例4では、予熱工程で平均温度±
1.0℃、延伸工程で平均温度±2.5℃、熱処理工程
で平均温度±2.0℃の範囲内であった。また、比較例
5では、予熱工程で平均温度±0.6℃、延伸工程で平
均温度±0.5℃、熱処理工程で平均温度±0.5℃の
範囲内に制御した。得られた各フィルムを幅0.4m、
長さ1000mにスリットして、3インチ紙管に巻き取
り、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
【0132】すなわち、比較例4の熱収縮性ポリエステ
ル系フィルムロールは、原料チップ形状の均一化、ホッ
パ形状の適正化、およびホッパ容量の適正化といった手
法を採用しており、長尺フィルムの全長に亘って組成の
変動を小さくした例である。また、比較例5の熱収縮性
ポリエステル系フィルムロールは、上記の手法の採用に
より、長尺フィルムの全長に亘って組成の変動を小さく
することに加えて、フィルム延伸の際に、予熱、延伸、
熱処理の各工程で、該フィルムの表面温度の変動幅を、
平均温度±1.0℃の範囲内に制御して、フィルムの全
長に亘って熱収縮挙動の変動を小さくした例である。得
られた各フィルムロールのフィルムの組成を表4に、物
性を表5に示す。
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】なお、表4中、TPAはテレフタル酸成分
を、DiAはダイマー酸成分を、EGはエチレングリコ
ール成分を、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタ
ノール成分を、NPGはネオペンチルグリコール成分
を、BDは1,4−ブタンジオール成分を、DEGはジ
エチレングリコール成分を、ε−CLユニットは、ε−
カプロラクトン由来のユニットを夫々意味する。
【0136】さらに、表4中の「多価カルボン酸成分」
量は、フィルム中の多価カルボン酸成分量とε−カプロ
ラクトン由来のユニット量の合計量100モル%中の量
を、「多価アルコール成分」量は、フィルム中の多価ア
ルコール成分量とε−カプロラクトン由来のユニットの
合計量100モル%中の量を表し、「ε−CLユニッ
ト」量は、フィルム中のエステルユニットとε−カプロ
ラクトン由来のユニットの合計量100モル%中の量を
表す。
【0137】
【表5】
【0138】
【発明の効果】本発明の熱収縮性ポリエステル系フィル
ムロールは、該ロールに巻回された長尺フィルムにおい
て、低温から高温までの幅広い温度域で優れた収縮特性
を有するので、例えば、温度斑が生じ易い熱風トンネル
を用いて熱収縮させた場合であっても、美麗な収縮仕上
り外観を得ることができる。また、部分的に高度な収縮
率が要求されるような用途(例えば、PETボトル用の
フルラベルやガラス瓶用のフルラベルなど)に用いて
も、美麗な収縮仕上り外観を達成できる。さらに、上記
長尺フィルムにおいて、上記の通り、各温度での熱収縮
率の変動が少なく、熱収縮工程における収縮白化、収縮
斑、シワ、歪み、タテヒケなどの不良の発生が抑制され
る。よって、本発明に係るフィルムから得られたラベル
などが装着され、収縮被覆されたボトルなどの最終製品
において、不良率を低減させることができる。
【0139】さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系
フィルムロールの製造方法は、長尺フィルムにおいて、
幅広い温度域で、精密な熱収縮率を確保すると共に、熱
収縮挙動の変動を小さくすることができる。よって、工
業生産上、非常に有用なものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 67:00 C08L 67:00 (72)発明者 武川 善紀 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 伊藤 勝也 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 米田 茂 大阪市北区堂島浜二丁目2番8号 東洋紡 績株式会社本社内 (72)発明者 野瀬 克彦 大阪市北区堂島浜二丁目2番8号 東洋紡 績株式会社本社内 Fターム(参考) 4F071 AA44 AH04 BA01 BB06 BB07 BC01 4F210 AA24 AC01 AE01 AH54 AM34 AR12 QA02 QC03 QG01 QG18 QW12

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻き
    取ってなるフィルムロールであって、この熱収縮性ポリ
    エステル系フィルムは、 多価アルコール成分100モル%中、1,4−シクロヘ
    キサンジメタノール成分を10〜50モル%含み、且
    つ、 フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常
    領域におけるフィルムの巻き始め側の端部を第1端部、
    巻き終わり側の端部を第2端部とし、前記第2端部の内
    側2m以内の箇所に1番目の試料切り出し部を、また、
    前記第1端部の内側2m以内の箇所に最終の試料切り出
    し部を設けると共に、1番目の試料切り出し部から約1
    00m毎に試料切り出し部を設け、各試料切り出し部か
    ら10cm×10cmの正方形状に切り取った複数の熱
    収縮性フィルム試験片について、下記の熱収縮率
    (A)、(B)および(C)を夫々測定したとき、 下記の熱収縮率(A)、(B)および(C)の各平均値
    が、(A):30〜40%、(B):50〜60%、
    (C):65〜77%であり、 下記の熱収縮率(A)の全測定値、熱収縮率(B)の全
    測定値、熱収縮率(C)の全測定値が、夫々の熱収縮率
    の平均値の±3%以内の範囲に収まっているものである
    ことを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムロー
    ル。ここで、 (A):75℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次
    いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最
    大収縮方向の熱収縮率、 (B):85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次
    いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最
    大収縮方向の熱収縮率、 (C):95℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次
    いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最
    大収縮方向の熱収縮率、である。
  2. 【請求項2】 上記熱収縮性ポリエステル系フィルム
    が、2種以上の異なるポリマーの混合物から形成されて
    いるものである請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル
    系フィルムロール。
  3. 【請求項3】 上記熱収縮性ポリエステル系フィルム
    は、幅0.2m以上、長さ300m以上である請求項1
    または2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロー
    ル。
  4. 【請求項4】 ポリエステル系フィルムを少なくとも一
    方向に延伸する工程を含む請求項1〜3のいずれかに記
    載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを製造する
    方法であって、 前記延伸を2段階以上に分けて行い、且つ、 最終的な延伸倍率を、未延伸フィルムに対し、3〜6倍
    とすることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィル
    ムロールの製造方法。
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