JP2003145312A - 被覆超硬合金工具 - Google Patents

被覆超硬合金工具

Info

Publication number
JP2003145312A
JP2003145312A JP2001348049A JP2001348049A JP2003145312A JP 2003145312 A JP2003145312 A JP 2003145312A JP 2001348049 A JP2001348049 A JP 2001348049A JP 2001348049 A JP2001348049 A JP 2001348049A JP 2003145312 A JP2003145312 A JP 2003145312A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
cemented carbide
chip breaker
thickness
average thickness
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001348049A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3984030B2 (ja
Inventor
Minoru Ito
実 伊藤
Akihiko Ikegaya
明彦 池ヶ谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority to JP2001348049A priority Critical patent/JP3984030B2/ja
Publication of JP2003145312A publication Critical patent/JP2003145312A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3984030B2 publication Critical patent/JP3984030B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 靭性と耐摩耗性との双方をバランスよく向上
させ、より長寿命である被覆超硬合金工具を提供する。 【解決手段】 刃先稜線部に繋がるすくい面にチップブ
レーカ部とランド部とを有する超硬合金母材上に硬質被
覆層を具える覆超硬合金工具である。母材の表層部には
WC以外の硬質相が消失した脱β層を具え、この脱β層の
厚さは、工具全体の平均で50μm以下であり、ランド部
における脱β層の平均厚さをxμm、チップブレーカ部に
おける脱β層の平均厚さをyμmとするとき、2≦(x+y)/
2≦40かつ2≦y-x≦20を満たす。チップブレーカ部の脱
β層の平均厚みをランド部よりも厚くし、ランド部で耐
摩耗性をもたせ、チップブレーカ部で耐欠損性をもたせ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車部品などの
切削加工に用いられる被覆超硬合金工具に関するもので
ある。特に、靭性と耐摩耗性との双方をバランスよく向
上させた被覆超硬合金工具に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、切削加工に用いられる被覆超硬合
金工具として、刃先稜線部に繋がるすくい面にチップブ
レーカ部とランド部とを有する超硬合金母材上に硬質被
覆層を具えるものが知られている。また、超硬合金母材
として、WCを含む硬質相の成分材料と結合相の成分材料
とからなる超硬合金材料を一定の条件で焼結し、母材の
表層部にWC以外の硬質相が消失した脱β層を形成させた
ものが知られている。焼結後、母材の刃先部に機械的研
磨処理を施し、その後、硬質被膜層を形成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】母材の表層部に形成さ
れた脱β層は、切削工具として靭性を重視する場合、一
般に厚いことが望ましい。一方、切削工具として耐摩耗
性を重視する場合、脱β層は、一般に薄いことが望まし
い。しかし、従来の被覆超硬合金工具では、すくい面及
び逃げ面の表層部に脱β層がほぼ均一な厚さに形成され
ており、靭性及び耐摩耗性の双方に優れるものについて
十分に検討されていない。
【0004】そこで、本発明は、靭性、特に耐欠損性と
耐摩耗性との双方をバランスよく向上させ、より長寿命
である被覆超硬合金工具を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、刃先稜線部に
繋がるすくい面にチップブレーカ部とランド部とを有す
る超硬合金母材上に硬質被覆層を具える覆超硬合金工具
において、前記被覆層は、周期律表4a、5a、6a族金属の
炭化物、窒化物、炭窒化物、硼窒化物、炭窒酸化物、酸
化アルミニウム及び酸化ジルコニウムよりなる群から選
ばれる1種以上からなり、母材は、周期律表4a、5a、6a
族金属の炭化物(WCを除く)、窒化物及び炭窒化物よりな
る群から選ばれる1種以上の化合物とWCとからなる硬質
相と、1種以上の鉄族金属からなる結合相とからなり、
母材の表層部にはWC以外の硬質相が消失した脱β層を具
え、この脱β層の厚さは、工具全体の平均で50μm以下
であり、ランド部における脱β層の平均厚さをxμm、チ
ップブレーカ部における脱β層の平均厚さをyμmとする
とき、以下の関係式を満たすことを特徴とする。 2≦(x+y)/2≦40 2≦y-x≦20
【0006】更に、本発明は、刃先処理部に繋がる逃げ
面における脱β層の平均厚さをzμmとするとき、2≦y-z
≦20を満たす。
【0007】本発明は、工具母材の各部位、特に、すく
い面のランド部、チップブレーカ部、逃げ面の表層部に
形成される脱β層の厚さを制御することで靭性と耐摩耗
性との双方の向上を図るものである。本発明において脱
β層の平均厚さを各部位によって変えたのは、以下の理
由による。一般に、脱β層は、厚さが厚くなるにつれて
表面硬度が低下するため、耐摩耗性は低下するが、靭性
は向上する。逆に、脱β層は、厚さが薄くなるにつれ
て、靭性は低下するが、耐摩耗性は向上する。即ち、被
覆超硬合金工具において靭性と耐摩耗性とは、図2に示
すように比例の関係で表される。本発明は、部位毎に脱
β層の厚さを変化させることで、この比例のグラフをよ
り右上に引き上げて、耐欠損性性及び耐摩耗性の双方を
向上させる。
【0008】具体的には、切削中の負荷を受けて欠損が
生じ易いチップブレーカ部は、耐欠損性が必要とされる
ため脱β層を比較的厚くする。一方、切削の際の塑性変
形に起因するクレーター摩耗が生じ易いランド部は、耐
摩耗性が必要とされるため脱β層を比較的薄くする。ま
た、耐摩耗性が必要とされる逃げ面も、脱β層を比較的
薄くする。この構成により、本発明は、すくい面及び逃
げ面の表層部に存在する脱β層の厚さがほぼ均一である
従来の工具に比較して、靭性及び耐摩耗性がバランスよ
く向上される。
【0009】また、本発明は、脱β層の平均厚さを部位
毎に変えることで、母材上に設ける硬質被覆層の剥離を
抑制することも可能である。脱β層が厚いと、母材に弾
性変形が生じ易く、この弾性変形に被覆層が追従でき
ず、膜に亀裂が入って膜が剥離する恐れがある。また、
溶着が生じることで、より膜が剥離し易い。しかし、本
発明は、ランド部や逃げ面の脱β層の平均厚さを薄くす
ることで、膜の剥離を抑制することができる。
【0010】以下、本発明をより詳しく説明する。本発
明において、脱β層の厚さを工具全体の平均で50μm以
下としたのは、50μmを超えると、耐摩耗性が低下する
ためである。脱β層の平均厚さを50μm以下にするに
は、焼結条件を調整することにより行うとよい。具体的
には、焼結後に雰囲気を脱炭雰囲気に切り替えて保持し
たり、焼結後に除冷する時間を調節したりすればよい。
前者の場合、雰囲気を切り替えてから、3〜6時間保持す
るとよい。後者の場合、1250℃までを冷却速度1〜5℃/s
ecで0.5〜3時間冷却するとよい。また、予め超硬合金母
材に添加する窒素の量を調整することでも可能である。
【0011】ランド部における脱β層の平均厚さをxμ
m、チップブレーカ部における脱β層の平均厚さをyμm
とするとき、不等式2≦(x+y)/2≦40を満たすとしたの
は、以下の理由による。(x+y)/2、即ち、ランド部にお
ける脱β層の厚さとチップブレーカ部における脱β層の
厚さの平均が2μm未満であると、脱β層が薄過ぎて靭性
が低下するためである。一方、(x+y)/2は、全体平均50
μmより薄いことが好ましく、上限を40μmとしている。
40μmを超えると、脱β層が厚過ぎて耐摩耗性が低下す
るためである。
【0012】不等式2≦y-x≦20は、ランド部及びチップ
ブレーカ部のそれぞれの役割分担を示す式である。2+x
≦y≦20+xで表されるように、チップブレーカ部におけ
る脱β層の平均厚さをランド部における脱β層の平均厚
さよりも厚くすることで、チップブレーカ部で靭性をも
たせ、ランド部で耐摩耗性をもたせる。2≦y-xとするの
は、y-xが2μm未満であると、各部における脱β層の厚
さの差が小さすぎて、耐欠損性と耐摩耗性とがバランス
よく向上しないからである。y-x≦20とするのは、y-xが
20μmを超えると、ランド部の脱β層の厚さが薄すぎ
て、チッピングなどの欠損を生じ易く靭性が低下するか
らである。従って、本発明では、靭性と耐摩耗性とをバ
ランスよく具える条件として、上記二つの不等式を規定
する。
【0013】上記二つの不等式に加えて、刃先稜線部に
繋がる逃げ面における脱β層の厚みを規定することで、
本発明は、より優れた特性を得る。具体的には、チップ
ブレーカ部における脱β層の平均厚さをyμm、逃げ面に
おける脱β層の平均厚さをzμmとするとき、不等式2≦y
-z≦20を満たす。この不等式も、チップブレーカ部及び
逃げ面のそれぞれの役割分担を示す式である。2+z≦y≦
20+zで表されるように、チップブレーカ部における脱β
層の厚さを逃げ面における脱β層の厚さよりも厚くする
ことで、チップブレーカ部で耐欠損性をもたせ、逃げ面
で耐摩耗性をもたせる。2≦y-zとするのは、y-zが2μm
未満であると、各部における脱β層の厚さの差が小さす
ぎて、耐欠損性と耐摩耗性とがバランスよく向上しない
からである。y-z≦20とするのは、y-zが20μmを超える
と、逃げ面の脱β層の厚さが薄すぎて、靭性が低下する
からである。
【0014】なお、脱β層の形成は、従来行われている
真空焼結などにより行うとよい。脱β層の厚さを変化さ
せるには、ハンドラップなどの研磨処理により行うとよ
い。このとき、砥粒の大きさや研磨時間を変化させるな
ど、処理条件を変えることで厚さを変化させることがで
きる。本発明においてランド部は、脱β層の厚さをより
薄くするために強く削っている。脱β層の平均厚みは、
例えば、刃先部付近の断面を光学顕微鏡により観察し、
一定の間隔内で数点の厚みを計り、その複数点の平均に
より求めるとよい。
【0015】このような各部位によって脱β層の厚さが
異なる母材に具える硬質被覆層は、従来行われているCV
D法により形成するとよいが、MT-CVD(medium temperat
ureCVD)法により形成した膜を具えることが好ましい。
また、MT-CVD法により形成した膜は、母材付近に具える
ことがより好ましい。従来のCVD法は、約1020〜1030℃
で成膜を行うのに対して、MT-CVD法は、約850〜900℃と
比較的低温で行うため、成膜の際、加熱による母材のダ
メージが低減できる。更に、使用するガスは、ニトリル
系のガス、特に、アセトニトリル(CH3CN)を用いると、
量産性に優れて好ましい。MT-CVD法により形成する膜と
しては、耐摩耗性に特に優れるTiCN膜が最適である。
【0016】また、硬質被膜層には、耐酸化性に優れる
酸化アルミニウム(A12O3)膜を具えることが好ましい。
酸化アルミニウムは、被削材に多く用いられている鉄と
反応しにくく、溶着や凝着を生じにくいからである。更
に、硬質被膜層には、切削加工現場において、工具の使
用済みの箇所(コーナー)の識別を容易にするために、着
色層を外層、特に最外層に具えることが好ましい。この
ような着色層は、TiN膜が好適である。
【0017】本発明被覆超硬合金工具は、回転する被削
材を切削する旋削加工に用いることが最適である。被削
材は、特に、自動車部品などが適する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。図1は、本発明被覆超硬合金工具の刃先付近の断
面図である。工具1は、超硬合金母材2上に硬質被覆層3
を具える。
【0019】母材2は、刃先部である刃先稜線部4と、刃
先稜線部4を挟んで水平方向に繋がるすくい面5、垂直方
向に繋がる逃げ面6とを具える。刃先稜線部4は、切削の
際における刃先のチッピングなどを防止するためにエッ
ジホーニングを施している。すくい面5には、チップブ
レーカ部8と、刃先稜線部4とチップブレーカ部8との間
にランド部7とを有する。本発明工具1は、母材2の表層
部に脱β層9を具え、ランド部7における脱β層9の平均
厚さをチップブレーカ部8における脱β層9の平均厚さよ
りも薄くしている。また、逃げ面6における脱β層9の平
均厚さをチップブレーカ部8における脱β層9の平均厚さ
よりも薄くしている。
【0020】母材2は、硬質相の成分材料と結合相の成
分材料とからなる超硬合金材料を真空焼結することで、
表層部に脱β層9が形成される。このとき、脱β層9は、
ほぼ均一な厚さに形成される。この母材2に対し、刃先
部にブラシなどでホーニング処理を施し、刃先部の脱β
層を殆ど除去する。本発明は、更に、すくい面5や逃げ
面6に研磨処理を施して脱β層の厚さを変化させる。
【0021】本発明は、ランド部7の脱β層9をチップブ
レーカ部8の脱β層9の平均厚さよりも薄くすることで、
ランド部7で耐摩耗性をもたせ、チップブレーカ部8で靭
性をもたせる。この構成により本発明工具1は、従来の
工具と比べて靭性が同様であれば、耐摩耗性に優れ、従
来の工具と比べて耐摩耗性が同様であれば、靭性に優れ
る。即ち、本発明工具1は、靭性と耐摩耗性とをバラン
スよく向上させたものである。また、逃げ面6の脱β層9
をチップブレーカ部8の平均厚さよりも薄くし、逃げ面6
に耐摩耗性をもたせ、チップブレーカ部8に靭性をもた
せることで、上記の特性により優れる。そのため、被覆
超硬合金工具1は、工具寿命をより長くすることができ
る。
【0022】(試験例1) <耐摩耗性>母材の材料粉末を配合し、ボールミルによ
り15H湿式混合し、乾燥した後、特定の形状の圧粉体に
プレス成形した。本例において圧粉体は、全周型チップ
ブレーカのISO・CNMG120408に定める形状のものを用い
た。この圧粉体を焼結炉内に挿入し1426.85℃(1700K)の
温度で0.5H真空焼結(13Pa)を行い、母材表面の硬質粒子
の脱窒作用により脱β層が析出した焼結体を作製した。
作製した焼結体のランド部の幅は、0.25mmである。その
後、刃先稜線部のみにSiCブラシでホーニング処理を行
った。このとき、刃先稜線部の脱β層は、ほぼ完全に除
去した。更に、ランド部、チップブレーカ部、逃げ面に
は、脱β層が所定の厚さになるようにダイヤモンド砥粒
を用いてハンドラップを施した。本例では、砥粒の大き
さを変えることで脱β層の厚さを変化させた。この母材
上に、CVD炉内において所定の温度、ガス、圧力条件で
硬質被覆層を形成した。
【0023】上記により得られた各試料を以下の条件で
乾式連続切削試験を行い、逃げ面摩耗幅、及びすくい面
の摩耗深さを測定した。表1に試験に用いた各試料、表2
に試験の結果を示す。
【0024】(母材の原料粉末) 重量% A TaC:2.3、NbC:1.2、TiC:2、TiN:2、ZrC:0.2 C
o:6 残りWC B TaC:2.3、NbC:1.2、TiC:2、TiN:2、TiCN:0.2
Co:7 残りWC C TaC:2.3、NbC:1.2、TiC:2、ZrN:4 Co:6 残り
WC
【0025】(被覆層) 母材に近い順(厚さ:μm) a TiN:0.5、TiCN:7、Al2O3:2、TiN:0.5 b TiC:0.5、TiCN:6.5、TiBN:0.5、Al2O3:2、TiN:
0.5 c TiN:0.5、ZrCN:7、Al2O3:2、TiN:0.5 d TiCN:10 e TiC:10 f ZrCN:10
【0026】 (被覆層の成膜条件) MT-CVD 温度:850〜900℃ 圧力:9333Pa(70Torr) TiCN:ガス;CH3CN、TiCl4、H2、N2 ZrCN:ガス;CH3CN、ZrCl4、H2、N2 CVD 温度:1020〜1030℃ 圧力:6666Pa(50Torr) Al2O3:ガス;AlCl3、H2、CO2 TiN:ガス;TiCl4、H2、N2 TiCN:ガス;CH4、TiCl4、H2、N2 TiC:ガス;CH4、TiCl4、H2 TiBN:TiCl4、H2、N2、BCl3
【0027】(切削試験条件) 被削材:JIS・SCM435の丸棒 切削速度:300m/min 送り:0.4mm/rev 切り込み:2.5mm 切削時間:10分
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】表2に示すように、本発明例No.1〜17は、
逃げ面摩耗幅0.24mm以下、すくい面摩耗深さ0.025mm以
下であり、耐摩耗性に優れていることが分かる。これに
対し、脱β層の全体平均厚さが本発明例と同様であり、
ランド部、チップブレーカ部、逃げ面にハンドラップに
よる研磨処理を施していない比較例No.1、チップブレー
カ部における脱β層の厚さとランド部における脱β層の
厚さとの平均(x+y)/2が40μmを超える比較例No.2、y-x
が2μm未満である比較例No.3は、逃げ面摩耗幅、すくい
面摩耗深さ共に本発明例よりも悪く、耐摩耗性が劣るこ
とが分かる。y-xが20μmを超える比較例No.4は、本発明
例とほぼ同等の耐摩耗性を有していた。このことから、
(x+y)/2≦40かつ2≦y-xのとき、耐摩耗性に優れること
が確認された。
【0031】また、焼結条件を変えて(1526.85℃(1800
K)の温度で2.0H真空焼結(13Pa))脱β層の全体平均厚さ
を50μmを超えるものとした比較例No.5は、耐摩耗性が
より悪いことが確認された。このことから、脱β層の全
体平均厚さは、50μm以下であるとき耐摩耗性に優れる
ことが分かった。
【0032】逃げ面における脱β層の平均厚さとチップ
ブレーカ部における脱β層の平均厚さの差y-zに着目す
ると、y-zが2〜20μmである試料No.2、5、6は、y=zで
ある試料No.4と比較して逃げ面摩耗幅がより小さく、す
くい面摩耗深さがより浅く、耐摩耗性により優れている
ことが分かる。このことから、2≦y-zのとき、耐摩耗性
に優れることが確認された。
【0033】次に、硬質被覆層に着目すると、TiCN膜を
MT-CVD法で成膜した試料No.1〜3は、TiCN膜をCVD法で成
膜した試料No.8〜10と比較して、耐摩耗性により優れて
いることが分かる。このことから、硬質被覆層は、特
に、MT-CVD法による成膜を具えることが好ましいことが
確認された。
【0034】(試験例2) <靭性>試験例1で用いた各試料と同様のものを上記と
同様の条件で作製し、得られた試料を以下の条件で乾式
断続切削試験を行い、刃先が欠損するまでの10コーナー
平均時間を測定した。各試料1個は、4コーナー具えてお
り、各試料を3個(うち1個は、2コーナーのみ使用)用い
て試験を行った。その結果を表3に示す。
【0035】(試験条件) 被削材:JIS・SCM435の四つ溝棒 切削速度:200m/min 送り:0.2mm/rev 切り込み:1.5mm 切削時間:最大10分
【0036】
【表3】
【0037】表3に示すように、本発明例No.1〜17は、
刃先が欠損するまでの10コーナー平均時間が8.0〜9.5分
であり、欠損が生じにくく耐欠損性に優れていることが
分かる。これに対し、上記試験例1において本発明例と
比較して耐摩耗性が劣っていた比較例No.1〜3及び5も、
平均時間が8.0〜9.5分であり、本発明例とほぼ同等の靭
性を有していた。
【0038】上記試験例1において本発明例と同等程度
の耐摩耗性を有していた比較例No.4(y-xが20μmを超え
る例)は、本発明例と比較して靭性が悪い。このことか
ら、y-x≦20のとき、靭性と耐摩耗性とのバランスに優
れることが確認された。より詳しく調べてみると、(x+
y)/2は、2μm以上であるとき、靭性と耐摩耗性とのバラ
ンスに優れることが分かった。
【0039】逃げ面における脱β層の平均厚さとチップ
ブレーカ部における脱β層の平均厚さの差y-zに着目す
ると、y-zが2〜20μmである試料No.2、5、6は、y-zが20
μmを超える試料7と比較して靭性に優れていることが分
かる。このことから、y-z≦20のとき、靭性により優れ
ることが確認された。
【0040】図3は、試験例1及び試験例2の結果に基づ
いた耐摩耗性と耐欠損性の相関を表すグラフである。グ
ラフにおいて耐摩耗性(縦軸)は、逃げ面摩耗幅の逆数で
表しており、摩耗幅が少ないほど大きな値をとり、耐摩
耗性に優れることを示す。このグラフから明らかなよう
に、比較例は、耐欠損性と耐摩耗性とのバランスの面で
本発明例よりも劣っていることが分かる。以上のことか
ら、脱β層の全体平均厚さは、50μm以下で、2≦(x+y)
/2≦40かつ2≦y-x≦20を満たすとき、更に、2≦y-z≦20
を満たすとき、靭性及び耐摩耗性に優れることが確認で
きた。従って、本発明は、工具寿命が従来に比べてより
長いと言える。
【0041】
【発明の効果】以上、説明したように本発明被覆超硬合
金工具によれば、すくい面に具えるランド部の脱β層の
平均厚さとチップブレーカ部の脱β層の平均厚さとを変
化させ、各部に役割を分担させることで、従来に比して
靭性及び耐摩耗性をバランスよく向上させるという優れ
た効果を奏し得る。また、逃げ面の脱β層の平均厚さを
変化させることで、耐摩耗性により優れる。一方、母材
上に設ける硬質被覆層において、MT-CVD法による成膜を
具えることで、母材の強度の低下を低減することができ
る。従って、本発明被覆超硬合金工具は、工具寿命をよ
り長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明被覆超硬合金工具の刃先付近の断面図で
ある。
【図2】被覆超硬合金工具における靭性と耐摩耗性との
相関関係を示すグラフである。
【図3】試験例1及び試験例2の結果に基づいた耐摩耗性
と耐欠損性の相関を表すグラフである。
【符号の説明】
1 工具 2 超硬合金母材 3 硬質被覆層 4 刃先稜
線部 5 すくい面 6 逃げ面 7 ランド部 8 チップブレーカ部 9 脱
β層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C23C 16/36 C23C 16/36 16/40 16/40 Fターム(参考) 3C046 FF03 FF11 FF13 FF22 FF32 4K030 AA03 AA09 AA17 AA18 BA18 BA26 BA35 BA36 BA38 BA41 BA42 BA43 BA53 BA56 BA57 CA03 DA02 FA10 LA22

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 刃先稜線部に繋がるすくい面にチップブ
    レーカ部とランド部とを有する超硬合金母材上に硬質被
    覆層を具える被覆超硬合金工具において、 前記被覆層は、周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒
    化物、炭窒化物、硼窒化物、炭窒酸化物、酸化アルミニ
    ウム及び酸化ジルコニウムよりなる群から選ばれる1種
    以上からなり、 前記母材は、周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物(WCを
    除く)、窒化物及び炭窒化物よりなる群から選ばれる1種
    以上の化合物とWCとからなる硬質相と、1種以上の鉄族
    金属からなる結合相とからなり、 母材の表層部にはWC以外の硬質相が消失した脱β層を具
    え、 前記脱β層の厚さは、工具全体の平均で50μm以下であ
    り、 ランド部における脱β層の平均厚さをxμm、チップブレ
    ーカ部における脱β層の平均厚さをyμmとするとき、以
    下の関係式を満たすことを特徴とする被覆超硬合金工
    具。 2≦(x+y)/2≦40 2≦y-x≦20
  2. 【請求項2】 刃先稜線部に繋がる逃げ面における脱β
    層の平均厚さをzμmとするとき、2≦y-z≦20を満たすこ
    とを特徴とする請求項1に記載の被覆超硬合金工具。
  3. 【請求項3】 被覆層には、MT-CVD法によるTiCN膜を具
    えることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆超硬合
    金工具。
JP2001348049A 2001-11-13 2001-11-13 被覆超硬合金工具 Expired - Lifetime JP3984030B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001348049A JP3984030B2 (ja) 2001-11-13 2001-11-13 被覆超硬合金工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001348049A JP3984030B2 (ja) 2001-11-13 2001-11-13 被覆超硬合金工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003145312A true JP2003145312A (ja) 2003-05-20
JP3984030B2 JP3984030B2 (ja) 2007-09-26

Family

ID=19160938

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001348049A Expired - Lifetime JP3984030B2 (ja) 2001-11-13 2001-11-13 被覆超硬合金工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3984030B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007054923A (ja) * 2005-08-25 2007-03-08 Kyocera Corp スローアウェイチップ
JP2009515713A (ja) * 2005-11-17 2009-04-16 ベーレリト ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー. 被覆超硬合金体
JP2020514090A (ja) * 2017-03-09 2020-05-21 サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ コーティングされた切削工具
WO2023189127A1 (ja) * 2022-03-28 2023-10-05 京セラ株式会社 超硬合金およびこれを用いた被覆工具、切削工具

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007054923A (ja) * 2005-08-25 2007-03-08 Kyocera Corp スローアウェイチップ
JP2009515713A (ja) * 2005-11-17 2009-04-16 ベーレリト ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー. 被覆超硬合金体
JP2020514090A (ja) * 2017-03-09 2020-05-21 サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ コーティングされた切削工具
JP7114619B2 (ja) 2017-03-09 2022-08-08 サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ コーティングされた切削工具
WO2023189127A1 (ja) * 2022-03-28 2023-10-05 京セラ株式会社 超硬合金およびこれを用いた被覆工具、切削工具

Also Published As

Publication number Publication date
JP3984030B2 (ja) 2007-09-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1818124B1 (en) Coated cutting insert
EP1736262A1 (en) Surface-coated cutting tool
EP3311939B1 (en) Surface-coated cutting tool
CN108778584B (zh) 表面包覆切削工具
JP3658949B2 (ja) 被覆超硬合金
JP4022865B2 (ja) 被覆切削工具
JPH11124672A (ja) 被覆超硬合金
JP4142955B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP2005297141A (ja) 表面被覆スローアウェイチップ
JP3963810B2 (ja) 非晶質カーボン被覆工具およびその製造方法
JP3984030B2 (ja) 被覆超硬合金工具
JP2001328005A (ja) 硬質被覆層がすぐれた層間密着性を有する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製スローアウエイ切削チップ
JP2008137129A (ja) 表面被覆切削工具
JPH10237650A (ja) Wc基超硬合金およびその製造方法
JP3360565B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP3859658B2 (ja) 表面被覆スローアウェイチップ
JP3235259B2 (ja) 被覆超硬合金部材およびその製造方法
JPH0818163B2 (ja) アルミナコ−テイング工具およびその製造方法
JP2008149390A (ja) 表面被覆切削工具
JPH1158104A (ja) 耐欠損性のすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具
JPH08257808A (ja) 表面被覆切削工具
EP3195960B1 (en) Coated tool
JP2000246511A (ja) 硬質被覆層がすぐれた初期なじみ性を発揮する表面被覆超硬合金製スローアウエイ切削チップ
JP3358530B2 (ja) 耐欠損性のすぐれた表面被覆超硬合金製スローアウエイ切削チップ
JP2001150206A (ja) 断続重切削ですぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20041112

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20060308

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20061117

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20061122

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070118

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070425

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070528

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070622

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070705

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100713

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 3984030

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100713

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110713

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110713

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120713

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120713

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130713

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term