JP3984030B2 - 被覆超硬合金工具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車部品などの切削加工に用いられる被覆超硬合金工具に関するものである。特に、靭性と耐摩耗性との双方をバランスよく向上させた被覆超硬合金工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、切削加工に用いられる被覆超硬合金工具として、刃先稜線部に繋がるすくい面にチップブレーカ部とランド部とを有する超硬合金母材上に硬質被覆層を具えるものが知られている。また、超硬合金母材として、WCを含む硬質相の成分材料と結合相の成分材料とからなる超硬合金材料を一定の条件で焼結し、母材の表層部にWC以外の硬質相が消失した脱β層を形成させたものが知られている。焼結後、母材の刃先部に機械的研磨処理を施し、その後、硬質被膜層を形成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
母材の表層部に形成された脱β層は、切削工具として靭性を重視する場合、一般に厚いことが望ましい。一方、切削工具として耐摩耗性を重視する場合、脱β層は、一般に薄いことが望ましい。しかし、従来の被覆超硬合金工具では、すくい面及び逃げ面の表層部に脱β層がほぼ均一な厚さに形成されており、靭性及び耐摩耗性の双方に優れるものについて十分に検討されていない。
【0004】
そこで、本発明は、靭性、特に耐欠損性と耐摩耗性との双方をバランスよく向上させ、より長寿命である被覆超硬合金工具を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、刃先稜線部に繋がるすくい面にチップブレーカ部とランド部とを有する超硬合金母材上に硬質被覆層を具える被覆超硬合金工具において、前記被覆層は、周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、硼窒化物、炭窒酸化物、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムよりなる群から選ばれる1種以上からなり、母材は、周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物(WCを除く)、窒化物及び炭窒化物よりなる群から選ばれる1種以上の化合物とWCとからなる硬質相と、1種以上の鉄族金属からなる結合相とからなり、母材の表層部にはWC以外の硬質相が消失した脱β層を具え、この脱β層の厚さは、工具全体の平均で50μm以下であり、ランド部における脱β層の平均厚さをxμm、チップブレーカ部における脱β層の平均厚さをyμmとするとき、以下の関係式を満たすことを特徴とする。
2≦(x+y)/2≦40
2≦y-x≦20
【0006】
更に、本発明は、刃先処理部に繋がる逃げ面における脱β層の平均厚さをzμmとするとき、2≦y-z≦20を満たす。
【0007】
本発明は、工具母材の各部位、特に、すくい面のランド部、チップブレーカ部、逃げ面の表層部に形成される脱β層の厚さを制御することで靭性と耐摩耗性との双方の向上を図るものである。本発明において脱β層の平均厚さを各部位によって変えたのは、以下の理由による。一般に、脱β層は、厚さが厚くなるにつれて表面硬度が低下するため、耐摩耗性は低下するが、靭性は向上する。逆に、脱β層は、厚さが薄くなるにつれて、靭性は低下するが、耐摩耗性は向上する。即ち、被覆超硬合金工具において靭性と耐摩耗性とは、図2に示すように比例の関係で表される。本発明は、部位毎に脱β層の厚さを変化させることで、この比例のグラフをより右上に引き上げて、耐欠損性及び耐摩耗性の双方を向上させる。
【0008】
具体的には、切削中の負荷を受けて欠損が生じ易いチップブレーカ部は、耐欠損性が必要とされるため脱β層を比較的厚くする。一方、切削の際の塑性変形に起因するクレーター摩耗が生じ易いランド部は、耐摩耗性が必要とされるため脱β層を比較的薄くする。また、耐摩耗性が必要とされる逃げ面も、脱β層を比較的薄くする。この構成により、本発明は、すくい面及び逃げ面の表層部に存在する脱β層の厚さがほぼ均一である従来の工具に比較して、靭性及び耐摩耗性がバランスよく向上される。
【0009】
また、本発明は、脱β層の平均厚さを部位毎に変えることで、母材上に設ける硬質被覆層の剥離を抑制することも可能である。脱β層が厚いと、母材に弾性変形が生じ易く、この弾性変形に被覆層が追従できず、膜に亀裂が入って膜が剥離する恐れがある。また、溶着が生じることで、より膜が剥離し易い。しかし、本発明は、ランド部や逃げ面の脱β層の平均厚さを薄くすることで、膜の剥離を抑制することができる。
【0010】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明において、脱β層の厚さを工具全体の平均で50μm以下としたのは、50μmを超えると、耐摩耗性が低下するためである。脱β層の平均厚さを50μm以下にするには、焼結条件を調整することにより行うとよい。具体的には、焼結後に雰囲気を脱炭雰囲気に切り替えて保持したり、焼結後に徐冷する時間を調節したりすればよい。前者の場合、雰囲気を切り替えてから、3〜6時間保持するとよい。後者の場合、1250℃までを冷却速度1〜5℃/secで0.5〜3時間冷却するとよい。また、予め超硬合金母材に添加する窒素の量を調整することでも可能である。
【0011】
ランド部における脱β層の平均厚さをxμm、チップブレーカ部における脱β層の平均厚さをyμmとするとき、不等式2≦(x+y)/2≦40を満たすとしたのは、以下の理由による。(x+y)/2、即ち、ランド部における脱β層の厚さとチップブレーカ部における脱β層の厚さの平均が2μm未満であると、脱β層が薄過ぎて靭性が低下するためである。一方、(x+y)/2は、全体平均50μmより薄いことが好ましく、上限を40μmとしている。40μmを超えると、脱β層が厚過ぎて耐摩耗性が低下するためである。
【0012】
不等式2≦y-x≦20は、ランド部及びチップブレーカ部のそれぞれの役割分担を示す式である。2+x≦y≦20+xで表されるように、チップブレーカ部における脱β層の平均厚さをランド部における脱β層の平均厚さよりも厚くすることで、チップブレーカ部で靭性をもたせ、ランド部で耐摩耗性をもたせる。2≦y-xとするのは、y-xが2μm未満であると、各部における脱β層の厚さの差が小さすぎて、耐欠損性と耐摩耗性とがバランスよく向上しないからである。y-x≦20とするのは、y-xが20μmを超えると、ランド部の脱β層の厚さが薄すぎて、チッピングなどの欠損を生じ易く靭性が低下するからである。従って、本発明では、靭性と耐摩耗性とをバランスよく具える条件として、上記二つの不等式を規定する。
【0013】
上記二つの不等式に加えて、刃先稜線部に繋がる逃げ面における脱β層の厚みを規定することで、本発明は、より優れた特性を得る。具体的には、チップブレーカ部における脱β層の平均厚さをyμm、逃げ面における脱β層の平均厚さをzμmとするとき、不等式2≦y-z≦20を満たす。この不等式も、チップブレーカ部及び逃げ面のそれぞれの役割分担を示す式である。2+z≦y≦20+zで表されるように、チップブレーカ部における脱β層の厚さを逃げ面における脱β層の厚さよりも厚くすることで、チップブレーカ部で耐欠損性をもたせ、逃げ面で耐摩耗性をもたせる。2≦y-zとするのは、y-zが2μm未満であると、各部における脱β層の厚さの差が小さすぎて、耐欠損性と耐摩耗性とがバランスよく向上しないからである。y-z≦20とするのは、y-zが20μmを超えると、逃げ面の脱β層の厚さが薄すぎて、靭性が低下するからである。
【0014】
なお、脱β層の形成は、従来行われている真空焼結などにより行うとよい。脱β層の厚さを変化させるには、ハンドラップなどの研磨処理により行うとよい。このとき、砥粒の大きさや研磨時間を変化させるなど、処理条件を変えることで厚さを変化させることができる。本発明においてランド部は、脱β層の厚さをより薄くするために強く削っている。脱β層の平均厚みは、例えば、刃先部付近の断面を光学顕微鏡により観察し、一定の間隔内で数点の厚みを計り、その複数点の平均により求めるとよい。
【0015】
このような各部位によって脱β層の厚さが異なる母材に具える硬質被覆層は、従来行われているCVD法により形成するとよいが、MT-CVD(medium temperature CVD)法により形成した膜を具えることが好ましい。また、MT-CVD法により形成した膜は、母材付近に具えることがより好ましい。従来のCVD法は、約1020〜1030℃で成膜を行うのに対して、MT-CVD法は、約850〜900℃と比較的低温で行うため、成膜の際、加熱による母材のダメージが低減できる。更に、使用するガスは、ニトリル系のガス、特に、アセトニトリル(CH3CN)を用いると、量産性に優れて好ましい。MT-CVD法により形成する膜としては、耐摩耗性に特に優れるTiCN膜が最適である。
【0016】
また、硬質被膜層には、耐酸化性に優れる酸化アルミニウム(A12O3)膜を具えることが好ましい。酸化アルミニウムは、被削材に多く用いられている鉄と反応しにくく、溶着や凝着を生じにくいからである。更に、硬質被膜層には、切削加工現場において、工具の使用済みの箇所(コーナー)の識別を容易にするために、着色層を外層、特に最外層に具えることが好ましい。このような着色層は、TiN膜が好適である。
【0017】
本発明被覆超硬合金工具は、回転する被削材を切削する旋削加工に用いることが最適である。被削材は、特に、自動車部品などが適する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明被覆超硬合金工具の刃先付近の断面図である。工具1は、超硬合金母材2上に硬質被覆層3を具える。
【0019】
母材2は、刃先部である刃先稜線部4と、刃先稜線部4を挟んで水平方向に繋がるすくい面5、垂直方向に繋がる逃げ面6とを具える。刃先稜線部4は、切削の際における刃先のチッピングなどを防止するためにエッジホーニングを施している。すくい面5には、チップブレーカ部8と、刃先稜線部4とチップブレーカ部8との間にランド部7とを有する。本発明工具1は、母材2の表層部に脱β層9を具え、ランド部7における脱β層9の平均厚さをチップブレーカ部8における脱β層9の平均厚さよりも薄くしている。また、逃げ面6における脱β層9の平均厚さをチップブレーカ部8における脱β層9の平均厚さよりも薄くしている。
【0020】
母材2は、硬質相の成分材料と結合相の成分材料とからなる超硬合金材料を真空焼結することで、表層部に脱β層9が形成される。このとき、脱β層9は、ほぼ均一な厚さに形成される。この母材2に対し、刃先部にブラシなどでホーニング処理を施し、刃先部の脱β層を殆ど除去する。本発明は、更に、すくい面5や逃げ面6に研磨処理を施して脱β層の厚さを変化させる。
【0021】
本発明は、ランド部7の脱β層9をチップブレーカ部8の脱β層9の平均厚さよりも薄くすることで、ランド部7で耐摩耗性をもたせ、チップブレーカ部8で靭性をもたせる。この構成により本発明工具1は、従来の工具と比べて靭性が同様であれば、耐摩耗性に優れ、従来の工具と比べて耐摩耗性が同様であれば、靭性に優れる。即ち、本発明工具1は、靭性と耐摩耗性とをバランスよく向上させたものである。また、逃げ面6の脱β層9をチップブレーカ部8の平均厚さよりも薄くし、逃げ面6に耐摩耗性をもたせ、チップブレーカ部8に靭性をもたせることで、上記の特性により優れる。そのため、被覆超硬合金工具1は、工具寿命をより長くすることができる。
【0022】
(試験例1)
<耐摩耗性>
母材の材料粉末を配合し、ボールミルにより15H湿式混合し、乾燥した後、特定の形状の圧粉体にプレス成形した。本例において圧粉体は、全周型チップブレーカのISO・CNMG120408に定める形状のものを用いた。この圧粉体を焼結炉内に挿入し1426.85℃(1700K)の温度で0.5H真空焼結(13Pa)を行い、母材表面の硬質粒子の脱窒作用により脱β層が析出した焼結体を作製した。作製した焼結体のランド部の幅は、0.25mmである。その後、刃先稜線部のみにSiCブラシでホーニング処理を行った。このとき、刃先稜線部の脱β層は、ほぼ完全に除去した。更に、ランド部、チップブレーカ部、逃げ面には、脱β層が所定の厚さになるようにダイヤモンド砥粒を用いてハンドラップを施した。本例では、砥粒の大きさを変えることで脱β層の厚さを変化させた。この母材上に、CVD炉内において所定の温度、ガス、圧力条件で硬質被覆層を形成した。
【0023】
上記により得られた各試料を以下の条件で乾式連続切削試験を行い、逃げ面摩耗幅、及びすくい面の摩耗深さを測定した。表1に試験に用いた各試料、表2に試験の結果を示す。
【0024】
(母材の原料粉末)
重量%
A TaC:2.3、NbC:1.2、TiC:2、TiN:2、ZrC:0.2 Co:6 残りWC
B TaC:2.3、NbC:1.2、TiC:2、TiN:2、TiCN:0.2 Co:7 残りWC
C TaC:2.3、NbC:1.2、TiC:2、ZrN:4 Co:6 残りWC
【0025】
(被覆層)
母材に近い順(厚さ:μm)
a TiN:0.5、TiCN:7、Al2O3:2、TiN:0.5
b TiC:0.5、TiCN:6.5、TiBN:0.5、Al2O3:2、TiN:0.5
c TiN:0.5、ZrCN:7、Al2O3:2、TiN:0.5
d TiCN:10
e TiC:10
f ZrCN:10
【0026】
(被覆層の成膜条件)
MT-CVD 温度:850〜900℃ 圧力:9333Pa(70Torr)
TiCN:ガス;CH3CN、TiCl4、H2、N2
ZrCN:ガス;CH3CN、ZrCl4、H2、N2
CVD 温度:1020〜1030℃ 圧力:6666Pa(50Torr)
Al2O3:ガス;AlCl3、H2、CO2
TiN:ガス;TiCl4、H2、N2
TiCN:ガス;CH4、TiCl4、H2、N2
TiC:ガス;CH4、TiCl4、H2
TiBN:TiCl4、H2、N2、BCl3
【0027】
(切削試験条件)
被削材:JIS・SCM435の丸棒
切削速度:300m/min
送り:0.4mm/rev
切り込み:2.5mm
切削時間:10分
【0028】
【表1】
Figure 0003984030
【0029】
【表2】
Figure 0003984030
【0030】
表2に示すように、本発明例No.1〜17は、逃げ面摩耗幅0.24mm以下、すくい面摩耗深さ0.025mm以下であり、耐摩耗性に優れていることが分かる。これに対し、脱β層の全体平均厚さが本発明例と同様であり、ランド部、チップブレーカ部、逃げ面にハンドラップによる研磨処理を施していない比較例No.1、チップブレーカ部における脱β層の厚さとランド部における脱β層の厚さとの平均(x+y)/2が40μmを超える比較例No.2、y-xが2μm未満である比較例No.3は、逃げ面摩耗幅、すくい面摩耗深さ共に本発明例よりも悪く、耐摩耗性が劣ることが分かる。y-xが20μmを超える比較例No.4は、本発明例とほぼ同等の耐摩耗性を有していた。このことから、(x+y)/2≦40かつ2≦y-xのとき、耐摩耗性に優れることが確認された。
【0031】
また、焼結条件を変えて(1526.85℃(1800K)の温度で2.0H真空焼結(13Pa))脱β層の全体平均厚さを50μmを超えるものとした比較例No.5は、耐摩耗性がより悪いことが確認された。このことから、脱β層の全体平均厚さは、50μm以下であるとき耐摩耗性に優れることが分かった。
【0032】
逃げ面における脱β層の平均厚さとチップブレーカ部における脱β層の平均厚さの差y-zに着目すると、y-zが2〜20μmである試料No.2、5、6は、y=zである試料No.4と比較して逃げ面摩耗幅がより小さく、すくい面摩耗深さがより浅く、耐摩耗性により優れていることが分かる。このことから、2≦y-zのとき、耐摩耗性に優れることが確認された。
【0033】
次に、硬質被覆層に着目すると、TiCN膜をMT-CVD法で成膜した試料No.1〜3は、TiCN膜をCVD法で成膜した試料No.8〜10と比較して、耐摩耗性により優れていることが分かる。このことから、硬質被覆層は、特に、MT-CVD法による成膜を具えることが好ましいことが確認された。
【0034】
(試験例2)
<靭性>
試験例1で用いた各試料と同様のものを上記と同様の条件で作製し、得られた試料を以下の条件で乾式断続切削試験を行い、刃先が欠損するまでの10コーナー平均時間を測定した。各試料1個は、4コーナー具えており、各試料を3個(うち1個は、2コーナーのみ使用)用いて試験を行った。その結果を表3に示す。
【0035】
(試験条件)
被削材:JIS・SCM435の四つ溝棒
切削速度:200m/min
送り:0.2mm/rev
切り込み:1.5mm
切削時間:最大10分
【0036】
【表3】
Figure 0003984030
【0037】
表3に示すように、本発明例No.1〜17は、刃先が欠損するまでの10コーナー平均時間が8.0〜9.5分であり、欠損が生じにくく耐欠損性に優れていることが分かる。これに対し、上記試験例1において本発明例と比較して耐摩耗性が劣っていた比較例No.1〜3及び5も、平均時間が8.0〜9.5分であり、本発明例とほぼ同等の靭性を有していた。
【0038】
上記試験例1において本発明例と同等程度の耐摩耗性を有していた比較例No.4(y-xが20μmを超える例)は、本発明例と比較して靭性が悪い。このことから、y-x≦20のとき、靭性と耐摩耗性とのバランスに優れることが確認された。より詳しく調べてみると、(x+y)/2は、2μm以上であるとき、靭性と耐摩耗性とのバランスに優れることが分かった。
【0039】
逃げ面における脱β層の平均厚さとチップブレーカ部における脱β層の平均厚さの差y-zに着目すると、y-zが2〜20μmである試料No.2、5、6は、y-zが20μmを超える試料7と比較して靭性に優れていることが分かる。このことから、y-z≦20のとき、靭性により優れることが確認された。
【0040】
図3は、試験例1及び試験例2の結果に基づいた耐摩耗性と耐欠損性の相関を表すグラフである。グラフにおいて耐摩耗性(縦軸)は、逃げ面摩耗幅の逆数で表しており、摩耗幅が少ないほど大きな値をとり、耐摩耗性に優れることを示す。このグラフから明らかなように、比較例は、耐欠損性と耐摩耗性とのバランスの面で本発明例よりも劣っていることが分かる。以上のことから、脱β層の全体平均厚さは、50μm以下で、2≦(x+y)/2≦40かつ2≦y-x≦20を満たすとき、更に、2≦y-z≦20を満たすとき、靭性及び耐摩耗性に優れることが確認できた。従って、本発明は、工具寿命が従来に比べてより長いと言える。
【0041】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明被覆超硬合金工具によれば、すくい面に具えるランド部の脱β層の平均厚さとチップブレーカ部の脱β層の平均厚さとを変化させ、各部に役割を分担させることで、従来に比して靭性及び耐摩耗性をバランスよく向上させるという優れた効果を奏し得る。また、逃げ面の脱β層の平均厚さを変化させることで、耐摩耗性により優れる。一方、母材上に設ける硬質被覆層において、MT-CVD法による成膜を具えることで、母材の強度の低下を低減することができる。従って、本発明被覆超硬合金工具は、工具寿命をより長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明被覆超硬合金工具の刃先付近の断面図である。
【図2】被覆超硬合金工具における靭性と耐摩耗性との相関関係を示すグラフである。
【図3】試験例1及び試験例2の結果に基づいた耐摩耗性と耐欠損性の相関を表すグラフである。
【符号の説明】
1 工具 2 超硬合金母材 3 硬質被覆層 4 刃先稜線部 5 すくい面
6 逃げ面 7 ランド部 8 チップブレーカ部 9 脱β層

Claims (3)

  1. 刃先稜線部に繋がるすくい面にチップブレーカ部とランド部とを有する超硬合金母材上に硬質被覆層を具える被覆超硬合金工具において、
    前記被覆層は、周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、硼窒化物、炭窒酸化物、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムよりなる群から選ばれる1種以上からなり、
    前記母材は、周期律表4a、5a、6a族金属の炭化物(WCを除く)、窒化物及び炭窒化物よりなる群から選ばれる1種以上の化合物とWCとからなる硬質相と、1種以上の鉄族金属からなる結合相とからなり、
    母材の表層部にはWC以外の硬質相が消失した脱β層を具え、
    前記脱β層の厚さは、工具全体の平均で50μm以下であり、
    ランド部における脱β層の平均厚さをxμm( 但し x 0 を除く )、チップブレーカ部における脱β層の平均厚さをyμmとするとき、以下の関係式を満たすことを特徴とする被覆超硬合金工具。
    2≦(x+y)/2≦40
    2≦y-x≦20
  2. 刃先稜線部に繋がる逃げ面における脱β層の平均厚さをzμmとするとき、2≦y-z≦20を満たすことを特徴とする請求項1に記載の被覆超硬合金工具。
  3. 被覆層には、MT-CVD法によるTiCN膜を具えることを特徴とする請求項1又は2に記載の被覆超硬合金工具。
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