JP2003138030A - ポリエステル樹脂成形品 - Google Patents

ポリエステル樹脂成形品

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度化、耐熱性向上が図れると共に、結晶
化速度が促進され、成形加工性に優れたPETブレンド
品を提供する。 【解決手段】 ポリエチレンテレフタレートとポリトリ
メチレンテレフタレートとを、ポリエチレンテレフタレ
ートの融点より35〜100℃高い温度で1〜10分間
溶融混練することにより溶融混合物を調製し、次いで2
50〜300℃で0.1〜5分間かけて成形加工する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエチレンテレ
フタレート(PET)とポリトリメチレンテレフタレー
ト(PTT)とのブレンド成形品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】PET
は、耐熱性、耐衝撃性等の機械的性質、更に透明性、耐
薬品性等に優れていることから、ボトル、フィルム、繊
維等に広く利用されている。ところが、PETは結晶化
速度が極めて遅く成形性に劣るという欠点があり、PE
Tの射出成形品については、現在、結晶核剤や可塑剤の
添加、ガラス繊維の添加により成形性の向上が図られて
いる。
【0003】一方、2種以上の熱可塑性樹脂をブレンド
し、それぞれの樹脂の長所を発現させるポリマーブレン
ドの研究も各種行われており、PETに対しても多種多
様な熱可塑性樹脂のブレンドが提案されており、特に相
溶性の良好な他のポリエステルとのブレンドは、好結果
が期待されている。例えば、更なる高強度化、耐熱性の
向上を図る目的で、PETにポリブチレンテレフタレー
ト(PBT)やポリエチレンナフタレート(PEN)を
ブレンドする技術が行われている。
【0004】しかしながら、これらの手法では、高強度
化、耐熱性の向上はある程度実現できるが、結晶化速度
の促進には結びつかず、成形加工性の点で未だ不十分で
あった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記従来
技術の問題点に鑑み鋭意検討した結果、PETに対しP
TTを特定条件でブレンドして得られる成形品は、結晶
化速度が顕著に増大し、成形加工性に優れたものである
という知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明は、ポリエチレンテレフタレ
ートとポリトリメチレンテレフタレートとを、ポリエチ
レンテレフタレートの融点より35〜100℃高い温度
で1〜10分間溶融混練することにより溶融混合物を調
製し、次いで250〜300℃で0.1〜5分間かけて
成形加工してなるポリエステル樹脂成形品、並びにポリ
エチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレ
ートとを、ポリエチレンテレフタレートの融点より35
〜100℃高い温度で1〜10分間溶融混練することに
より溶融混合物を調製し、次いで250〜300℃で
0.1〜5分間熱処理した前記溶融混合物を成形加工し
てなるポリエステル樹脂成形品である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
まず、本発明に用いられるポリエチレンテレフタレート
(PET)とは、テレフタル酸又はそのエステル形成誘
導体とエチレングリコール又はそのエステル形成誘導体
を重縮合して得られるポリエステルであって、イソフタ
ル酸等の公知のコモノマーを少量導入した共重合体であ
っても良い。
【0008】また、本発明に用いられるポリトリメチレ
ンテレフタレート(PTT)とは、テレフタル酸又はそ
のエステル形成誘導体と1,3−プロパンジオール又は
そのエステル形成誘導体を重縮合して得られるポリエス
テルであって、イソフタル酸等の公知のコモノマーを少
量導入した共重合体であっても良い。
【0009】グリコール鎖のメチレン基数が偶数のエチ
レングリコールや1,4−ブタンジオールから誘導され
るPETやPBTに対し、PTTはメチレン基数が奇数
の1,3−プロパンジオールから誘導されるため、ポリ
マー物性、特に結晶化およびレオロジー的挙動が特異で
あるとされ、PETとPBTの長所を併せ持つポリマー
として注目されている。
【0010】本発明の特徴は、PETにPTTを配合
し、PETの融点より35〜100℃高い温度で1〜1
0分間両者を溶融混練した後、250〜300℃で0.
1〜5分間かけて成形加工するか、或いは250〜30
0℃で0.1〜5分間熱処理した溶融混合物を成形加工
する点にある。
【0011】ここで、一般的なポリマーブレンドにおい
ては、ブレンドする2種のポリマーの内の融点が高いほ
うのポリマーの融点付近もしくはそれより若干高い温度
で溶融混練するのが通常であるが、本発明の如きPET
(融点約250℃近辺)とPTT(融点約225℃近
辺)のブレンド系に上記手法を適用し、PETの融点付
近もしくはそれより若干高い温度で溶融混練したのでは
本発明所期の効果は発現せず、PETの融点より35〜
100℃、好ましくは50〜80℃高い温度で溶融混練
しないと結晶化速度の増大効果は得られない。ここで、
溶融混練時間は、1〜10分間程度が好ましい。
【0012】また、本発明では、PETとPTTを溶融
混練した後、250〜300℃の温度範囲で0.1〜5
分間、好ましくは0.5〜3分間かけて成形加工する
か、或いは0.1〜5分間熱処理し、相分離構造を発現
させることが必要である。熱処理する目的温度は、PE
TとPTTのブレンド物の融点温度(Tm)である25
0℃以上、且つPETとPTTの相分離温度付近である
300℃以下の範囲である。このような温度で、0.1
〜5分間かけて成形加工するか、或いは0.1〜5分間
熱処理後に成形加工すると、球晶サイズが微細化し、結
晶化速度が顕著に増大する。
【0013】即ち、PETとPTTのブレンド物の場
合、前記高温の溶融温度で相溶し、その温度以下では液
々相分離を生じることから、UCST(upper critical
solution temperature ;上限臨界共溶温度)型の相図
を有すると考えられる。また、上記の如く、ブレンド物
を降温させ、等温結晶化させると、2μm 程度の微細な
球晶が得られる。その結果、後記する実施例1及び比較
例1〜2のデータである図1の等温結晶化中の積分強度
Qの経時変化の結果から明らかなように、PET単体及
びPTT単体の場合、結晶化が終了するまで、それぞれ
約27秒及び28秒かかるのに対し、50/50ブレン
ド物の場合、わずか5秒で結晶化が終了する。
【0014】ここで、結晶化速度は、線成長速度と結晶
核生成頻度との積で表されるが、ブレンド物の線成長速
度はPTT単体のそれに比べ速くならなかったことか
ら、ブレンド物における結晶化速度の増大は主に結晶核
生成頻度の増加によるものと考えられる。本発明では、
上記高温での溶融混練から相分離温度近辺への降温によ
り、スピノーダル分解が進行して濃度揺らぎが増大し、
それに伴うup−hill−diffusionにより
結晶核の形成が誘発され、結晶化が加速されたものと推
測できる。
【0015】本発明では、PETとPTTのブレンド比
率は、一般に両者の合計中、PTTが20〜80重量%
程度が好ましい。この範囲を外れると、各々ホモポリマ
ーに近い組成物となるため、十分な結晶化速度加速効果
を得られない。
【0016】本発明の溶融混合物の混練方法は、押出
機、押出成形機、ミキサー等により行えばよく特に限定
されないが、一軸または二軸の押出機により行うのが好
ましい。また、溶融混練後の熱処理の方法も特に限定さ
れないが、混合物を直ちに250〜300℃の温度に冷
却し、0.1〜5分間保持して行う方法、或いは溶融混
練後、熱処理を経ることなく冷却し、通常の溶融混合物
を得て、次に成形を行うまでの間に250〜300℃に
0.1〜5分間保持して行う等の方法が考えられる。
【0017】また、本発明では、上記の如く成形と同時
に相分離させた、或いは相分離化された溶融混合物をP
ETの一般的な成形温度である260〜320℃で成形
加工して、ボトル、フィルム、繊維等の各種成形品とす
ることができる。また、本発明の樹脂成形品には、成形
加工や成形品の用途に応じて、ガラス繊維や各種ミネラ
ル等のフィラー充填剤、各種ポリマー改質剤、酸化防止
剤や難燃剤等の各種添加剤を用いることができる。
【0018】本発明の組成物の成形方法は射出成形、押
出成形、ブロー成形等、特に限定されるものではない
が、特に好ましくは射出成形が望ましい。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳しく説明
するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 実施例1 ポリエチレンテレフタレート(PET;ウィンテックポ
リマー社製、融点250℃、重量平均分子量60000 )50重
量部とポリトリメチレンテレフタレート(PTT;融点
225 ℃、メルトフローインデックス60g/10分・250
℃)50重量部を、小型混練成形機(CSI社製、Min
imaxミキシングエクスツルーダー)を用い、300 ℃
で5分間混練し、透明で均一な混合溶融物を得た。この
混合溶融物を、270 ℃に保持した銅製のプレートを有す
る熱プレス機(井元製作所製)で1分間かけて圧延し
た。その後、室温まで冷却し、薄いフィルム状となった
混練物を取り出した。
【0020】このフィルムについて、縦型光散乱測定装
置(プリンストン社製、TE/CCD−512−TMK
/1)により、180 ℃での等温結晶化過程を、フィルム
の光学異方性に起因する散乱光成分(Hv散乱)を用い
て観察したところ、図1に示す光散乱積分強度時間発展
曲線を得た。光散乱積分強度が飽和した時点で定義され
る結晶化時間を評価したところ、5秒であった。
【0021】結晶化したフィルムを、偏光顕微鏡(オリ
ンパス社製、BX50F4)により直交ニコル下で観察
したところ、図2に示すように微細な結晶が緻密に充填
している様子が観察された。 比較例1 実施例1のPETとPTTの混合物の代わりに、PET
100 重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてフィ
ルムを得て、結晶化の観察を行った。180 ℃結晶化にお
いて、光散乱積分強度で示される結晶化時間は、図1に
示すように27秒と非常に長かった。また、直交ニコル下
の偏光顕微鏡観察によると、図2に示すように球晶と呼
ばれる大きな結晶構造が比較的粗に見られ、均一で緻密
な結晶構造が得られていないことがわかった。 比較例2 比較例1のPETの代わりにPTT100 重量部を用いて
同様にしてフィルムを得て、結晶化の観察を行った。18
0 ℃結晶化において、光散乱積分強度で示される結晶化
時間は、図1に示すように28秒と非常に長く、また、直
交ニコル下の偏光顕微鏡観察による結晶構造は、図2に
示すように不均一で粗であった。 実施例2〜3 実施例1のPETとPTTの比率を、それぞれ30重量部
/70重量部、および70重量部/30重量部に変更した以外
は、同様にしてフィルムを得て、結晶化時間の測定を行
った。図3に、PETとPTTの比率が0/100 、30/
70、50/50、70/30、100 /0の場合の結晶化時間を示
す。30/70、70/30の何れの組成でも、PET単独、P
TT単独の場合に比べ、結晶化時間短縮の顕著な効果が
認められた。 比較例3 PET50重量部とPTT50重量部を、実施例1の小型混
練成形機を用い、300℃で5分間混練し、透明で均一な
混合溶融物を得た。この混合溶融物を、320 ℃に保持し
た銅製のプレートを有する熱プレス機(井元製作所製)
で1分間かけて圧延した。その後、室温まで冷却し、薄
いフィルム状となった混練物を取り出した。
【0022】このフィルムについて、実施例1と同様の
方法により、縦型光散乱装置を用いて180 ℃での等温結
晶化過程を観察したところ、図4に示す光散乱積分強度
時間発展曲線を得た。図4から結晶化時間を評価したと
ころ、38秒であった。即ち、270 ℃で圧延を行った場合
の5秒に比べ、著しく遅い結晶化時間であることが確認
された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 PET単体、PTT単体及びPET/PTT
(50/50)ブレンド物から得たフィルムについて
の、等温結晶化中の積分強度Qの経時変化の結果を示す
グラフである。
【図2】 実施例1、比較例1〜2で得た結晶化したフ
ィルムを偏光顕微鏡で観察した図であり、(a) はPET
単体、(c) はPTT単体、(b) はPET/PTT(50
/50)のものである。
【図3】 PET/PTTの結晶化時間の組成依存性を
示すグラフである。
【図4】 PET/PTT(50/50)ブレンド物の
熱処理温度(Ta)の違いによる光散乱積分強度Qの経
時変化の結果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B29K 67:00 B65D 1/00 A Fターム(参考) 3E033 AA01 BA18 BA30 BB02 CA03 CA17 CA20 FA02 4F070 AA47 AB09 AC88 BA02 BB06 FA03 FB06 FC03 FC06 4F071 AA45 AA46 AA81 AA84 AA88 AA89 AF02 AF13 AF30 AF45 AH04 AH05 BA01 BB04 BB05 BB06 BB08 BC01 4F201 AA24 AR06 AR11 BA01 BC01 BC03 BC15 BC37 BD02 BD04 BD05 BK01 BK02 BK13 BK16 BK26 4J002 CF051 CF061 GG01 GG02 GK00

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエチレンテレフタレートとポリトリ
    メチレンテレフタレートとを、ポリエチレンテレフタレ
    ートの融点より35〜100℃高い温度で1〜10分間
    溶融混練することにより溶融混合物を調製し、次いで2
    50〜300℃で0.1〜5分間かけて成形加工してな
    るポリエステル樹脂成形品。
  2. 【請求項2】 ポリエチレンテレフタレートとポリトリ
    メチレンテレフタレートとを、ポリエチレンテレフタレ
    ートの融点より35〜100℃高い温度で1〜10分間
    溶融混練することにより溶融混合物を調製し、次いで2
    50〜300℃で0.1〜5分間熱処理した前記溶融混
    合物を成形加工してなるポリエステル樹脂成形品。
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