JP2003130872A - 主要組織適合性抗原クラスii蛋白質を用いてスーパー抗原を検出、定量する方法および該方法を用いたキット - Google Patents

主要組織適合性抗原クラスii蛋白質を用いてスーパー抗原を検出、定量する方法および該方法を用いたキット

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JP2003130872A JP2002229843A JP2002229843A JP2003130872A JP 2003130872 A JP2003130872 A JP 2003130872A JP 2002229843 A JP2002229843 A JP 2002229843A JP 2002229843 A JP2002229843 A JP 2002229843A JP 2003130872 A JP2003130872 A JP 2003130872A
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敬史 三和
Mayumi Fukuyama
真弓 福山
Takehiko Uchiyama
竹彦 内山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、抗原提示細胞表面などに見られる主
要組織適合性抗原クラスII蛋白質(以下MHCクラスII
と略す)をあるいはスーパー抗原に親和性を有する該M
HCクラスIIの一部分を用いたスーパー抗原を検出ある
いは定量する方法およびそれらの方法を利用した測定キ
ットを提供する。 【解決手段】主要組織適合性抗原クラスII蛋白質、また
はスーパー抗原との親和性を有する該主要組織適合性抗
原クラスII蛋白質の40アミノ酸残基以上の長さを有す
る部分を用いることを特徴とする、スーパー抗原を検出
する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗原提示細胞表面
などに見られる主要組織適合性抗原クラスII蛋白質(以
下MHCクラスIIと略す)あるいはMHCクラスIIのα
および/またはβサブユニットを用いたスーパー抗原を
検出あるいは定量する方法およびそれらを利用した測定
キットに関する
【0002】
【従来の技術】MHCクラスIIは、B細胞やマクロファ
ージ、血管内皮細胞などの細胞表面に存在し、抗原提示
の際に自己非自己を識別するために用いられる糖タンパ
ク質である。近年になり、MHCクラスIIが細菌毒素等
のスーパー抗原と称する一群の蛋白質に対する結合蛋白
質であることが判明し、且つ自己免疫疾患においてMH
CクラスIIのサブクラスに偏りがみられることなどか
ら、医学・免疫学的に重要視され始めている。
【0003】スーパー抗原とは、従来の抗原と異なり抗
原提示細胞内におけるプロセッシング過程を経ることな
く、抗原提示細胞上のMHCクラスIIに結合し、さらに
はこのMHCクラスIIとの複合体を形成することにより
特定のV領域を有するT細胞を刺激し免疫系を異常に活
性化させる一群の蛋白質である。
【0004】これまでに、黄色ブドウ球菌毒素や連鎖球
菌毒素、エルシニア菌毒素、あるいはある種のウイルス
蛋白質やヒートショック蛋白質が確認されているが、以
後も特定化されていく可能性がある。
【0005】現在、MHCクラスIIを単離し入手するに
は、哺乳類細胞や昆虫細胞にMHCクラスIIの遺伝子を
導入し発現させるか、あるいは天然に存在するMHCク
ラスIIをB細胞やマクロファージ、血管内皮細胞などの
細胞膜中から精製してくる必要がある。
【0006】しかし、天然型MHCクラスIIを細胞膜中
より大量に得る場合、膜表面の発現量が少ないために、
大量の細胞を必要とし、培養細胞を用いたとしても多く
の時間と費用を要する。
【0007】また、哺乳類細胞や昆虫細胞に遺伝子技術
を用いて組換え型MHCクラスIIを産生させる場合に
も、細胞の培養に費用と時間が多く必要である。
【0008】これまでに、主要組織適合性抗原クラスI
に関しては大腸菌を用いた発現系による大量発系が報告
されている(K.C.パーカーら、モレキュラー イミ
ュノロジー、29巻、371頁(1992))が、MHC
クラスIIについては知られていなかった。
【0009】これまで、MHCクラスII固定化材料とし
ては、MHCクラスIIを細胞表面上に発現させ、細胞ご
とプレート上に吸着したものや、MHCクラスIIのサブ
ユニットの部分アミノ酸配列を合成し、材料上に吸着固
定した材料は報告されている(J.K.ラッセルら、バ
イオケミカル アンド バイオフィジカル リサーチコ
ミュニケーションズ、168巻、696頁(1990)。
【0010】また、スーパー抗原を吸着する材料として
は、スーパー抗原に対する抗体を固定化した材料が既に
報告されており、スーパー抗原の免疫学的測定等に用い
られている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、細菌類を用
いることにより生産性・操作性を容易にしたことを特徴
とするMHCクラスIIの製造方法を提供するものであ
る。
【0012】細菌類は昆虫や哺乳類由来の細胞と異な
り、増殖速度も速く、かつ培地組成も牛胎児血清や増殖
因子等の高価な組成を必要とせず、植え継ぎや培地交換
などの操作を必要としない。
【0013】しかし、大腸菌などの細菌類中において哺
乳類由来の蛋白質は細菌毒性等の問題により発現しない
場合が多い。
【0014】本発明者らは、種々の発現ベクターを改良
検討した結果、大腸菌や酵母菌、枯草菌等の細菌内にお
いてMHCクラスIIを発現させることに成功し、効率よ
く大量に蛋白質を製造することを可能とした。
【0015】本発明はまた、医学的にはスーパー抗原を
含むMHCクラスII親和性の、病因物質を対象とした血
液浄化システムの開発を、また、免疫学的にはスーパー
抗原を含むMHCクラスII親和性の病因物質の単離精製
や酵素免疫学的測定に用いる上記済因物質全般を結合で
きる材料を提供するものである。
【0016】ここで、上述したように、細胞ごと固定化
した材料ではMHCクラスII以外の蛋白質等も固定され
てしまい、未知の活性を持つ可能性があり、また、固定
化密度も任意に変えることには限界がある。MHCクラ
スIIのサブユニットの部分アミノ酸配列を合成し、材料
上に吸着固定した材料は、緩衝液中から高濃度のスーパ
ー抗原を検出する目的には使用できるが、血液中からの
スーパー抗原の除去等の目的には吸着固定はリガンドの
遊離が考えられ、使用できない。
【0017】また、部分配列のみではスーパー抗原に対
する結合能が低く、スーパー抗原の検出および定量を行
う場合に十分の性能が得られない。また、抗体固定化材
料では、スーパー抗原1種類毎に異なった抗体を固定化
した材料が各々必要になる。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる従来技
術の問題点を解消しようとするものであり、下記の構成
を有する。
【0019】(1)主要組織適合性抗原クラスII蛋白
質、またはスーパー抗原との親和性を有する該主要組織
適合性抗原クラスII蛋白質の40アミノ酸残基以上の長
さを有する部分を用いることを特徴とする、スーパー抗
原を検出する方法。
【0020】(2)主要組織適合性抗原クラスII蛋白質
αサブユニット、またはスーパー抗原との親和性を有す
る該主要組織適合性抗原クラスII蛋白質αサブユニット
の40アミノ酸残基以上の長さを有する部分を用いるこ
とを特徴とする、スーパー抗原を検出する方法。
【0021】(3)主要組織適合性抗原クラスII蛋白質
βサブユニット、またはスーパー抗原との親和性を有す
る該主要組織適合性抗原クラスII蛋白質βサブユニット
の40アミノ酸残基以上の長さを有する部分を用いるこ
とを特徴とする、スーパー抗原を検出する方法。
【0022】(4)主要組織適合性抗原クラスII蛋白
質、またはスーパー抗原との親和性を有する該主要組織
適合性抗原クラスII蛋白質の40アミノ酸残基以上の長
さを有する部分を用いることを特徴とする、スーパー抗
原を定量する方法。
【0023】(5)主要組織適合性抗原クラスII蛋白質
αサブユニット、またはスーパー抗原との親和性を有す
る該主要組織適合性抗原クラスII蛋白質αサブユニット
の40アミノ酸残基以上の長さを有する部分を用いるこ
とを特徴とする、スーパー抗原を定量する方法。
【0024】(6)主要組織適合性抗原クラスII蛋白質
βサブユニット、またはスーパー抗原との親和性を有す
る該主要組織適合性抗原クラスII蛋白質βサブユニット
の40アミノ酸残基以上の長さを有する部分を用いるこ
とを特徴とする、スーパー抗原を定量する方法。
【0025】(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の
方法を用いるスーパー抗原の検出および/または定量す
るキット。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明に用いたMHCクラスIIを
コードする遺伝子は既に報告されているDNA配列(L.
J.Stern et al.,Cell,vol.68,p465,(1992), D.A.Wettst
ein et al.,J.Exp.Med., vo1.174,P219, (1991))をも
とにPCR用のDNAプライマーを作成しB細胞等の人
細胞中より常法、例えば「遺伝子増幅PCR法(蛋白質
・核酸・酵素臨時増刊) vol.35 No.17(1990)」
に記載の方法、に従いPCR法により複製して得た。こ
のDNAのコードする蛋白質の調製法としては、遺伝子
組換え技術を利用して大腸菌、酵母菌、昆虫細胞や哺乳
類細胞内で発現させる方法が挙げられる。
【0027】このうち、増殖速度の速さなどの生産効率
の高さ・培養条件等の操作性の良さから考えると大腸菌
や酵母菌あるいは枯草菌を用いることがより好ましい。
発現方法としては、本蛋白質をコードするDNAあるい
はその一部に蛋白質合成開始信号と終結信号、また、菌
体外へ分泌させるときは分泌信号を付加した後、種々の
公知の発現ベクターに結合させ、直接本発明の蛋白質あ
るいはその一部を発現させる方法、また、他のペプチ
ド、例えば、インターロイキン2、マルトース結合蛋白
質、βガラクトシダーゼ、trpE蛋白質等)との融合
蛋白質として発現させる方法がある。また、発現後の蛋
白質の精製のしゃすさを考慮して、MHCクラスIIの活
性が保たれるならぱ、ヒスチジンの6量体等を付加して
も良い。
【0028】MHCクラスIIの細菌に対する毒性を考慮
すると、発現の際に融合蛋白質などの形で不溶性の顆粒
体を形成させるか、T7リボヌクレアーゼ・プロモータ
ーやヒートショックプロモーター等の転写開始制御能の
高いプロモーターを用いることが好ましい。ここで、融
合蛋白質とMHCクラスIIの間にプロテアーゼ(例えば
活性化血液凝固第十因子(FactorXa)、IgAプロテア
ーゼ )の認識サイトや化学試薬(例えばシアノゲンブ
ロマイド)による切断部位を導入することにより、発現
後にプロテアーゼや化学試薬を用いて消化・分離するこ
とも可能である。発現後のMHCクラスIIあるいはその
一部の精製には公知の手法が用いられ、例えば、硫安沈
澱法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティー
クロマトグラフィー、ゲルろ過、疎水クロマトグラフィ
ー等が挙げられ、また、メソッドイン エンザイモロジ
ー(アカデミックプレス社 1890)に記載の方法が
適応できる。また、プロテインジスルフィドイソメラー
ゼ、チオレトキシン、プロチオニン、グルタチオンやβ
メルカプトエタノールなどを添加しサブユニットのジス
ルフィド結合を矯正してもよい。
【0029】また、αサブユニットおよびβサブユニッ
トを別々に発現させた後に再構成するには、両サブユニ
ットを等モル量ずつを混合し4℃〜60℃より好ましく
は20C〜40℃の温度で5分以上より好ましくは60
分以上放置する。
【0030】また、混合するときに若干の変性剤(例え
ば1M尿素、10%アセトニトリル等)を添加し、前述
の温度範囲内で透析しつつ再構成することも可能であ
る。
【0031】本発明におけるMHCクラスIIを固定化し
た材料は、生体膜中より得られる天然型MHCクラスII
あるいはそのαおよび/またはβサブユニットあるいは
それらの一部分、あるいは細胞や細菌を形質転換し得ら
れる組換え型MHCクラスIIあるいはそのαおよび/ま
たはβサブユニットあるいはそれらの一部分をビーズ、
繊維、中空糸、織物、プレート、チューブなどの材料上
に共有結合を用いて結合することにより得られる。
【0032】この中で、MHCクラスIIは、大量に効率
よく入手できることから、組換え型、特に大腸菌あるい
は酵母菌により産生されたものがより好ましい。
【0033】このように、MHCクラスIIの発現、固定
化法、担体の検討を進めることによりMHCクラスIIの
活性を損なわない固定化材の開発に成功し本発明に至っ
た。
【0034】以下に詳細を説明する。 (1)MHCクラスII MHCクラスIIは、B細胞・単核球などの抗原提示細胞
をそのままあるいはガンマー一インターフェロン等によ
り刺激したものの細胞膜上から直接単離精製した天然型
MHCクラスIIあるいはCHO細胞、L細胞等の哺乳類
由来の細胞や昆虫細胞を形質転換して得られるMHCク
ラスII産生細胞より精製する組換え型MHCクラスIIを
用いることができる。この中で、大量に効率よく入手で
きることから、組換え型、特に大腸菌や酵母菌あるいは
枯草菌により産生されたものがより好ましい。また、M
HCクラスIIのサブユニットのみ、あるいはその部分配
列の固定でも結合能はあるが、結合の強さから考える
と、アミノ酸40残基以上の分子量を有することが好ま
しく、より好ましくはαβ複合体を用いる。 (2)固定化法 固定化方法としては、共有結合、イオン結合、配位結
合、疎水結合あるいは包括法を用いて結合あるいは吸着
することにより得られるが、固定した蛋白質の遊離を防
ぐためには共有結合がより好ましい。
【0035】また、蛋白質の固定にはタンパク質のアミ
ノ基、カルボキシル基、スルフィド基を用いる方法が一
般的であるが、MHCクラスIIのN末端側にスーパー抗
原の結合部位があることを考慮すると、カルボキシル基
を用いた固定化方法がより好ましい。
【0036】(3)固定化担体 MHCクラスIIを固定化する担体はポリメチルメタアク
リレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリアリルア
ミン、ポリビニルアルコールあるいはそれらの誘導体等
の合成高分子やセルロース、キトサンあるいはそれら誘
導体等のような天然高分子、セラミックスや金属などの
無機材料、で構成されるビーズ、繊維、中空糸、プレー
ト、チューブなどを用いることができる。このうち、固
定化材料としては官能基の挿入が容易な高分子化合物を
用いることがより好ましく、形態としては操作性や表面
積の大きさから中空系、ビーズ、繊維、織物等がより好
ましい。
【0037】このようにしてにして得られるMHCクラ
スII固定化材料において、MHCクラスIIの活性を最大
に用いることの出来得る結合法を検討した結果、血液中
に置いてもスーパー抗原を特異的に捕捉結合し得る血液
浄化モジュールを確立し、本発明の成功に至った。
【0038】また、スーパー抗原を検出定量する方法と
してMHCクラスIIあるいはMHCクラスIIαサブユニ
ットあるいはβサブユニットあるいはそれらの部分配列
ペプチドを用いることにより1種類の固定化材料で、ス
ーパー抗原全てを捕捉できることが可能となった。
【0039】スーパー抗原に対する結合性は蛋白質の3
次構造に影響されるためa、スーパー抗原をより強く結
合させるためにはアミノ酸残基数30mer以上より好
ましくは40mer以上より好ましくはサブユニット全
配列さらに好ましくはαおよびβサブユニットより構成
されたMHCクラスIIが良い。
【0040】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明する。但し、本発明が実施例に限定されるものでは
ない。
【0041】実施例1 MHCクラスIIαサブユニットの大腸菌内での発現 MHCクラスIIのαサブユニットは以下のように作製し
た。
【0042】ヒートショックプロモーターを有し、βガ
ラクトシダーゼおよび血液凝固因子のFactorXaの認識部
位をコードする配列を持つpUEFのEcoRI サイトとXbaIサ
イトの問にMHCクラスIIαサブユニット遺伝子を挿入
した。 (図1)このベクターを用いて大腸菌を形質転
換し、L培地中で30℃、8時間培養後培地温度を42
℃に上昇させ15分間誘導をかける。誘導後培地温度を
30℃にしさらに2時間培養した後培養液より大腸菌を
回収した。
【0043】また、βガラクトシダーゼとの融合蛋白質
にすることでパラアミノフェニル1- チオβ- D- ガラ
クトピラノシド固定化カラムを用いて精製可能であり、
βガラクトシダーゼとMHCクラスIIの間にFaclorXaの
認識部位が存在するので、蛋白質発現後にFactorXaによ
り消化することで保護蛋白質であるβカラクトシダーゼ
を含まないMHCクラスIIαサブユニットを得ることが
できる。
【0044】実施例2 MHCクラスIIのβサブユニットの不溶性蛋白質として
の発現 MHCクラスIIのβサブユニットは以下のように作製し
た。
【0045】トリプトファンプロモーターを有し、tr
pE蛋白質およびIgAプロテアーゼの認識部位をコー
ドする配列を持つp TIベクターのEcoRI サイトとHind
IIIサイトの間にMHCクラスIIβサブユニット遺伝子
を挿入した(図2)。 このベクターを用いて大腸菌を
形質転換し、M9培地中で37℃、8時間培養後インド
ールアクリル酸を用いて誘導をかける。誘導後、2時間
培養した後培養液より大腸菌を回収した。
【0046】また、trpE蛋白質と融合蛋白質にする
ことで目的の蛋白質は不溶性画分に沈澱してくる。不溶
性画分を2M尿素を含むトリス緩衝液で洗浄後、8M尿
素を含むトリス緩衝液を用いて目的の融合蛋白質を可溶
化する。可溶化の際に、還元剤として1mMジチオスレ
イトールや2%βメルカプトエタノールを添加すると回
収率が向上しより好ましい。可溶化後直ちに、ゲルろ過
法により分子量分画を行い、混入している脂質や他の不
溶性の強い蛋白質と分離した後に、20mMトリス塩酸
緩衝液(pH7.4 )、50mM塩化ナトリウム緩衝
液中で透析する。透析後も沈澱物は得られず、融合蛋白
質は100%回収可能である。ここで、分子量分画を行
わずに透析しても可溶化成分に目的蛋白質は得られる
が、その大半は透析後に不溶性画分に沈澱してくる。
【0047】得られた可溶性画分をlgA プロテアーゼ消
化後、疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグ
ラフィー、ゲルろ過、等の方法により、保護蛋白質であ
るtrpE蛋白質を含まないMHCクラスIIβサブユニ
ットを得ることができる。疎水クロマトグラフやイオン
交換クロマトグラフによる目的蛋白質を精製のプロテア
ーゼ消化前に行うことも可能である。
【0048】実施例3 MHCクラスIIのα及びβサブユニットからの再構成 実施例1及び2で作成したMHCクラスIIのα及びβサ
ブユニットをそれぞれの濃度が5mg/mlになるよう
に、8M尿素、10mM塩化マグネシウム、100mM
塩化ナトリウムを含むトリス塩酸緩衝液(pH7.4)
に溶解する。溶解後、蛋白質溶液を4℃で1M尿素を含
む10mM塩化マグネシウム、100mM塩化ナトリウ
ムを含むトリス塩酸緩衝液(pH7.4)中で透析す
る。透析後さらに30℃で尿素を含まない10mM塩化
マグネシウム、100mM塩化ナトリウムを含むトリス
塩酸緩衝液(pH7.4)中で透析することによりMH
CクラスII複合体を得ることが出来る。
【0049】実施例4 大腸菌を用いて産生したMHCクラスIIをビーズ上に固
定化した。固定化はMHCクラスIIを1mg/mlの濃度に
なるように50mM ほう酸緩衝液(pH8.0)5mlで
溶解した水溶液中にスクシンイミド基を有するキトサン
ビーズを1ml加え、4℃で8時間反応させた。反応後、
0.5Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)50mlによ
り、未反応の官能基の不活化と未反応蛋白質の洗浄を行
った。固定化ビーズのアミノ酸分析の結果より固定化量
はビーズ1ml当り2.3mg蛋白であった。このようにし
て作成したMHCクラスII固定化ビーズおよびトリス塩
酸緩衝液とのみ反応させたスクシンイミド基を有するキ
トサンビーズを各々0.5mlずつを1ng/m1 の濃度で黄
色ブドウ球菌外毒素(TSST−1)を含む水溶液中に
添加したところ図3に示すように、MHCクラスII固定
化ビーズにおいてのみ毒素の吸着が観察され、MHCク
ラスIIが毒素との結合活性を有したまま材料上に共有結
合により固定化されたことが示された。図3中、白丸印
はMHCクラスII固定化ビーズ、黒丸印は未反応ビーズ
を示す。MHCクラスII固定化ビーズにおいてのみTS
ST−1濃度の低下が観察された。
【0050】実施例5 大腸菌を用いて産生したMHCクラスIIを中空糸膜上に
固定化した。固定化はMHCクラスIIを1mg/mlの濃度
になるように50mMほう酸緩衝液(pH8.0)5mlで
溶解した水溶液中にアミノ基を有するポリスルホン中空
糸を1gを加え、4℃で8時間反応させた。
【0051】反応には触媒としてカルボシイミドを添加
した。固定化中空糸のアミノ酸分析の結果より固定化量
は中空糸1g当り2.0mg蛋白であった。このようにし
て作成したMHCクラスII固定化中空糸および未反応中
空糸各々0.5gずつを用いてモジュールを作製し1ng
/ml の濃度で黄色ブドウ球菌外毒素(TSST−1)を
含む血清を循環させたところ図4に示すように、MHC
クラスII固定化中空糸においてのみ毒素の吸着が観察さ
れ、MHCクラスII固定化中空糸により毒素の血液中か
らの除去が可能なことが示された。図4中、白丸印はM
HCクラスII固定化中空糸、黒丸印は未反応中空糸を示
す。MHCクラスII固定化中空糸においてのみTSST
−1の濃度低下が観察された。
【0052】実施例6 B細胞より抽出したMHCクラスII及び大腸菌により発
現したMHCクラスIIβサブユニット及びペプチド合成
機により合成したMHCクラスIIのβサブユニットの部
分アミノ酸配列(スーパー抗原との結合性があるとされ
る30アミノ酸残基部分)を10μg/mlの濃度でP
BS中に溶解した後、アミノ基を有する96穴のマイク
ロプレートの各ウェルに0.1mlずつ入れ、触媒とし
てカルボジイミドを添加し、4℃で1晩放置し蛋白質の
固定化を行った。0.5%牛血清アルブミン(BSA)
を含むPBS溶液でブロッキングを行い、その後各ウェ
ルを洗浄液(0.05%)Tween20を含むPB
S)で洗浄した。
【0053】このMHCクラスII固定化プレートに黄色
ブドウ球菌外毒素であり、スーパー抗原であるSEAを
反応させた。対照として、BSAのみを固定化したプレ
ートを用いて同様にSEAを反応させた。その後、抗S
EAモノクローナル抗体(ビオチン標識)、アビジン化
ペルオキシダーゼ、3,3’, 5,5’ −テトラメチ
ルベンジジンを順次反応させ、その発色を測定した結果
を図5に示した。BSAを固定化したプレートでは発色
がほとんど認められなかったが、MHCクラスII(約4
00アミノ酸残基長 )、βサブユニット(約200ア
ミノ酸残基長 )、βサブユニットの部分配列ペプチド
(50アミノ酸残基と30アミノ酸残基長)において発
色が認められ、SEAの結合が確認された。白丸印はM
HCクラスII固定化プレート、白三角印はβサブユニッ
ト固定化プレート、 黒丸印はβサブユニット部分配列
(50アミノ酸残基)、 黒三角印はβサブユニット部
分配列(30アミノ酸残基)、 黒四角印はコントロー
ル(BSAプレート)を示す。
【0054】また、アミノ酸残基数の増加に従って検出
感度も向上し、50mer以上では1μg/mlのSE
Aが検出可能になる。MHCクラスIIを固定化したプレ
ートにおいてはSEA濃度が0〜1μg/mlの範囲に
おいて、また、MHCクラスIIβサブユニットを固定化
したプレートではSEA濃度が103〜106ng/m1の範
囲において、発色とSEA濃度の間に良好な直線性を示
し、SEAの定量も可能であることが示された。
【0055】
【発明の効果】本発明により、これまでは哺乳類細胞や
昆虫細胞を利用して製造していた主要組織適合性抗原ク
ラスII蛋白質を細菌を用いることで効率よく且つ安価に
大量調整できるようになった。
【0056】本発明はまた、MHCクラスIIに親和性の
ある物質、例えば黄色ブドウ球菌外毒素などのスーパー
抗原などを水溶液や血液、尿などの体液、食料品、飲料
物中などから吸着、分離、検出、定量する際に、有効な
材料を提供するものであり、医学・免疫学・生化学の研
究や臨床、例えば、敗血症や自己免疫疾患等における治
療システムを構築するうえで有効に活用され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】MHCクラスIIαサブユニットを大陽菌内で発
現させるための発現用ベクターの概略図を示す。
【図2】MHCクラスIIβサブユニットを大腸菌内で発
現させるための発現用ベクターの概略図を示す。
【図3】MHCクラスII固定化ビーズによるTSST−
1の緩衝溶液中からの除去量と、反応時間との関係を示
す図面である。
【図4】MHCクラスIIを固定化した中空糸を用いた場
合における、血清中からのTSST−1の除去量と、反
応時間との関係を示す。
【図5】MHCクラスII、MHCクラスIIβサブユニッ
トおよびβサブユニットの部分配列ペプチドを固定化し
たプレートを用いた酵素免疫測定(サンドイッチ法)に
おけるSEA濃度と450nmの吸光度との関係を示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平4−345917 (32)優先日 平成4年12月25日(1992.12.25) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平4−345918 (32)優先日 平成4年12月25日(1992.12.25) (33)優先権主張国 日本(JP)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主要組織適合性抗原クラスII蛋白質、また
    はスーパー抗原との親和性を有する該主要組織適合性抗
    原クラスII蛋白質の40アミノ酸残基以上の長さを有す
    る部分を用いることを特徴とする、スーパー抗原を検出
    する方法。
  2. 【請求項2】主要組織適合性抗原クラスII蛋白質αサブ
    ユニット、またはスーパー抗原との親和性を有する該主
    要組織適合性抗原クラスII蛋白質αサブユニットの40
    アミノ酸残基以上の長さを有する部分を用いることを特
    徴とする、スーパー抗原を検出する方法。
  3. 【請求項3】主要組織適合性抗原クラスII蛋白質βサブ
    ユニット、またはスーパー抗原との親和性を有する該主
    要組織適合性抗原クラスII蛋白質βサブユニットの40
    アミノ酸残基以上の長さを有する部分を用いることを特
    徴とする、スーパー抗原を検出する方法。
  4. 【請求項4】主要組織適合性抗原クラスII蛋白質、また
    はスーパー抗原との親和性を有する該主要組織適合性抗
    原クラスII蛋白質の40アミノ酸残基以上の長さを有す
    る部分を用いることを特徴とする、スーパー抗原を定量
    する方法。
  5. 【請求項5】主要組織適合性抗原クラスII蛋白質αサブ
    ユニット、またはスーパー抗原との親和性を有する該主
    要組織適合性抗原クラスII蛋白質αサブユニットの40
    アミノ酸残基以上の長さを有する部分を用いることを特
    徴とする、スーパー抗原を定量する方法。
  6. 【請求項6】主要組織適合性抗原クラスII蛋白質βサブ
    ユニット、またはスーパー抗原との親和性を有する該主
    要組織適合性抗原クラスII蛋白質βサブユニットの40
    アミノ酸残基以上の長さを有する部分を用いることを特
    徴とする、スーパー抗原を定量する方法。
  7. 【請求項7】請求項1〜6のいずれかに記載の方法を用
    いるスーパー抗原の検出および/または定量するキッ
    ト。
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