JP2003126989A - 高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法 - Google Patents
高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法Info
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Abstract
テナイト系ステンレス鋼の溶接部において、腐食環境に
晒される面での耐食性に優れ、かつ、耐溶接高温割れ性
及び機械的特性に優れた溶接方法を提供する。 【解決手段】 開先底部での初層ビード溶接及び該初層
ビードの上から鋼材表面の下方1〜3mmまでを、質量
%で、C:0.001〜0.1%、Si:0.01〜
1.5%、Mn:0.01〜2.0%、Cr:20〜2
5%、Ni:10〜15%を含有し、かつ、1.14×
Cr当量−Ni当量≧9.0を満たし、残部Fe及び不
可避不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼溶接
ワイヤを用いて溶接後、引き続いて、最終層までの厚み
範囲を、質量%で、C:0.001〜0.01%、S
i:0.01〜0.2%、Mn:0.01〜2%、C
r:14〜25%、Ni:55〜75%、Mo:6〜1
6%含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる高N
i合金溶接ワイヤを用いて溶接する溶接方法。
Description
などの耐海水、耐海塩粒子性が要求される環境下で使用
される溶接鋼構造物、及び化学プラント、食品製造プラ
ントなどの耐塩化物性が要求される環境下で使用される
溶接鋼構造物の組立で用いられる高耐食性高Moオース
テナイト系ステンレス鋼の溶接方法に関し、特に、鋼材
と同等以上の腐食環境下での耐食性を有し、かつ優れた
引張強度、靭性、曲げ延性などの機械的特性及び耐高温
割れ性などの溶接性を有する溶接部が経済的に得られる
高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方
法に関するものである。
ラントなどの耐塩化物性、及び海洋構造物、橋梁、石油
・天然ガス輸送、あるいは海水利用技術等などの耐海
水、耐海塩粒子性が要求される苛酷な腐食環境に耐えら
れるような耐食材料として、各種のオーステナイト系ス
テンレス鋼、高合金が開発・適用されつつある。
工して鋼構造物を建造する場合、通常、溶接部の溶接金
属は凝固組織のままで使用されるため、同組成の母材と
比較してその耐食性が低くなる。したがって、耐食構造
物全体の耐食性を向上する上で、構造部材だけでなく溶
接部の溶接金属の耐食性を向上させることが重要な課題
である。
材料として、耐食性の向上のためにMoを3.5〜8%
程度含有した高耐食性の高Moオーステナイト系ステン
レス鋼の適用が増加している。
溶接する場合に、共金系の溶接材料を用いており、その
ため、各種のオーステナイト系ステンレス鋼用の共金系
溶接材料が開発されている。しかし、高耐食性の高Mo
オーステナイト系ステンレス鋼を共金系の溶接材料を用
いて溶接すると、溶接金属中のMo含有量が高いために
凝固偏析が起こりやすくなり、それによる耐食性の劣化
が生じ、これを抑制するために、通常、溶接後の熱処理
を行うことが必須となる。さらに、溶接金属中のMo含
有量が高い場合には、溶接金属中にσ相などの脆弱な金
属間化合物が生成し溶接金属の延性・靭性が低下すると
いう問題も生じる。
レス鋼を溶接する場合のこのような問題を改善するため
に、最近、共金系の溶接材料に替えて、高Cr−高Mo
含有高Ni合金の溶接材料が用いられている。この高C
r−高Mo含有高Ni合金の溶接材料は、Niベースの
ため、溶接金属中のMoの凝固偏析を抑制すると共に、
Ni自体も耐食性を向上させる元素であるため、共金系
の溶接材料を用いて溶接する場合に比べて溶接金属の耐
食性は向上する。しかし、この高Cr−高Mo含有高N
i合金の溶接材料では、溶接金属がオーステナイト単体
となるため、溶接時に高温割れが発生しやすく、さら
に、Mo含有量も多いために、室温での機械的特性は強
度は高いものの、溶接金属中にσ相などの金属間化合物
が生成しやすく延性及び靭性が低い等の問題があり、高
耐食性溶接構造用の溶接材料としては充分ではない。
報、特開平01−293992号公報、特開平07−2
14374号公報、特開平08−252692号公報等
に開示されているように、耐食性や靭性及び延性に有害
なCr炭化物及び耐高温割れ性に有害なWまたはMo炭
化物を低減するためにNbによるCの固定を用いずC含
有量を低減し、耐食性及び強度向上のためにN添加、固
溶させることにより、従来溶接材の耐食性、靭性、延
性、強度及び耐高温割れ性を改善した高Ni合金溶接材
料が開発されている。しかし、目的とする溶接金属特性
を得るためには、厳しい成分規制などによる製造コスト
の増大の問題があり、また、溶接金属の耐食性、靭性、
延性及び強度は良好ではあるものの、溶接金属がオース
テナイト単相のために耐高温割れ性が発生しやすい。
及び耐塩化物性に優れた溶接構造物用材料である高耐食
性高Moオーステナイト系ステンレス鋼を従来の溶接材
料を用いて単に溶接する方法では、耐海水及び耐塩化物
性を向上させ、かつ強度、靭性、曲げ延性等の機械的特
性及び耐溶接高温割れ性などの溶接作業性を充分に確保
できるだけの溶接部を溶接のままで得ることは困難であ
った。
性高Moオーステナイト系ステンレス鋼を溶接するに際
に腐食環境に晒される面での耐食性に優れ、かつ機械的
特性及び耐溶接高温割れ性に優れた溶接部が得られる高
耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法
を提供することを目的とする。
解決するためになされたものであり、その発明の要旨は
以下の通りである。
0.005〜0.02%、Si:0.3〜0.8%、M
n:0.3〜1.0%、P:0.03%以下、S:0.
015%以下、Mo:3.5〜8.0%、Cr:18〜
25%、Ni:15〜22%を含有し、残部が鉄及び不
可避的成分からなり、かつミクロ組織がオーステナイト
単相である高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス
鋼材を多層盛り片面溶接する際に、開先底部での初層ビ
ード溶接及び該初層ビードの上から鋼材表面の下方1〜
3mmまでの厚み範囲を、化学成分として、質量%で、
C:0.001〜0.1%、Si:0.01〜1.5
%、Mn:0.01〜2.0%、Cr:20〜25%、
Ni:10〜15%を含有し、Sを0.01%以下、P
を0.03%以下に制限し、かつ、1.14×Cr当量
−Ni当量≧9.0を満たし、残部Fe及び不可避的成
分からなるオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを
用いて溶接後、引き続いて、鋼材表面の下方1〜3mm
から最終層までの厚み範囲を、化学成分として、質量%
で、C:0.001〜0.01%、Si:0.01〜
0.2%、Mn:0.01〜2%、S:0.01%以
下、P:0.01%以下、Cr:14〜25%、Ni:
55〜75%、Mo:6〜16%を含有し、さらに、N
b及びWのうちの1種または2種の合計量:1〜4%、
Cu:0.1〜3%、Co:0.1〜5%、及びN:
0.1〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有
し、残部がFe及び不可避的成分からなる高Ni合金溶
接ワイヤを用いて溶接することを特徴とする高耐食性高
Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。 但し、Cr当量=Cr(質量%)+Mo(質量%)+
1.5×Si(質量%) Ni当量=Ni(質量%)+0.5×Mn(質量%)+
30×C(質量%)
0.005〜0.02%、Si:0.3〜0.8%、M
n:0.3〜1.0%、P:0.03%以下、S:0.
015%以下、Mo:3.5〜8.0%、Cr:18〜
25%、Ni:15〜22%を含有し、残部が鉄及び不
可避的成分からなり、かつミクロ組織がオーステナイト
単相である高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス
鋼材を多層盛り片面溶接する際に、鋼材裏面からの溶込
み深さが2mm以上となるように、化学成分として、質
量%で、C:0.001〜0.01%、Si:0.01
〜0.2%、Mn:0.01〜2%、S:0.01%以
下、P:0.01%以下、Cr:14〜25%、Ni:
55〜75%、Mo:6〜16%を含有し、さらに、N
b及びWのうちの1種または2種の合計量:1〜4%、
Cu:0.1〜3%、Co:0.1〜5%、及びN:
0.1〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有
し、残部がFe及び不可避的成分からなる高Ni合金溶
接ワイヤを用いて開先底部の初層ビード溶接を行った
後、引き続き、該初層ビードの上から最終層までの厚み
範囲を、化学成分として、質量%で、C:0.001〜
0.1%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.01
〜2.0%、Cr:20〜25%、Ni:10〜15%
を含有し、Sを0.01%以下、Pを0.03%以下に
制限し、かつ、1.14×Cr当量−Ni当量≧9.0
を満たし、残部がFe及び不可避的成分からなるオース
テナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて溶接するこ
とを特徴とする高耐食性高Moオーステナイト系ステン
レス鋼の溶接方法。 但し、Cr当量=Cr(質量%)+Mo(質量%)+
1.5×Si(質量%) Ni当量=Ni(質量%)+0.5×Mn(質量%)+
30×C(質量%)
鋼溶接ワイヤを用いて溶接した際に得られる室温状態で
の溶接金属の組織は、フェライトを20%以下含有する
オーステナイト主体の組織であることを特徴とする上記
(1)または(2)の何れか1項に記載の高耐食性高M
oオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
ト系ステンレス鋼の化学成分として、さらに、質量%で
Cu:0.5〜1.0%、N:0.1〜0.3%のうち
の1種または2種を含有することを特徴とする上記
(1)から(3)のうちの何れか1項に記載の高耐食性
高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
ーステナイト系ステンレス鋼を溶接する際に、溶接金属
の耐食性は良好であるが、Mo含有量が多いために靭性
及び延性が母材に比べて劣ることを特徴とする高Ni合
金溶接ワイヤと、Moを含有しないために溶接金属の靭
性及び延性は良好であるが、耐食性が母材に比べて劣る
ことを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワ
イヤを種々の条件で組み合わせて溶接を行うことにより
溶接継手を作製し、それらの溶接部の諸特性を詳細に調
査・検討した。
系ステンレス鋼の溶接において、腐食環境に晒される面
の溶接部を高Ni合金溶接ワイヤを用いて所定厚みで溶
接し、それ以外の溶接部の厚み範囲をMoを含有せず、
かつ室温状態での溶接金属組織が20%以下のフェライ
トを含有したオーステナイト主体組織である溶接金属が
得られる成分系のオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワ
イヤで溶接することにより、腐食環境に晒される面での
溶接部の耐食性を確保し、かつ、溶接部全体での引張強
度、靭性、曲げ延性などの機械的特性及び耐溶接高温割
れ性などの溶接作業性が良好である溶接継手が得られる
ことが明らかとなった。
態の一例を示す溶接継手の断面図であり、何れも下向き
姿勢で多層盛り片面溶接する場合で、(a)は、腐食環
境に晒される面が鋼材表面の場合、(b)は、腐食環境
に晒される面が鋼材裏面の場合を示す。なお、ここで
は、説明の便宜上、溶接姿勢が下向き姿勢であることを
前提として説明するが、これに限定する訳ではない。
1に晒される面が鋼材表面の高Moステンレス鋼2の溶
接方法は、図1(a)に示すように、開先底部での初層
ビード溶接及び該初層ビードの上から鋼材表面の下方1
〜3mmまでの厚み範囲を、後述する強度、靭性、延性
などの機械的特性が良好なステンレス鋼溶接金属3が得
られるオーステナイト系ステンレス鋼ワイヤを用いて溶
接後、引き続いて、鋼材表面の下方1〜3mmから最終
層までの厚み範囲を、後述する耐食性が良好な高Ni合
金溶接金属4が得られる高Ni合金ワイヤを用いて溶接
する。これにより、腐食環境に晒される鋼板表面側の溶
接部の耐食性が高Ni合金溶接金属によって鋼材並に向
上できると共に、それ以外の溶接部の強度、靭性、延性
などの機械的特性はオーステナイト系ステンレス鋼溶接
金属によって確保することができる。
属及びオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属の所要特
性を確保するためには、それぞれの溶接金属の形成に用
いる高Ni合金ワイヤ及びオーステナイト系ステンレス
鋼ワイヤの成分組成を後述のように規定すると共に、高
Ni合金溶接金属及びオーステナイト系ステンレス鋼溶
接金属を形成する厚み範囲を規定する必要がある。
Ni合金ワイヤを用いて溶接する厚み範囲が、鋼材表面
の下方1mm未満の場合はオーステナイト系ステンレス
鋼溶接金属による希釈の影響が大きくなって、腐食環境
に晒される鋼板表面側の溶接部の耐食性が低下し、鋼材
並以上の耐食性を確保できない。一方、高Ni合金溶接
金属を形成する、つまり、高Ni合金ワイヤを用いて溶
接する厚み範囲が、鋼材表面の下方3mmを超える場合
は、溶接部全体に占める高Ni合金溶接金属の体積が大
きくなり、溶接部の強度、靭性、延性などの機械的特性
が低下する。
ヤを用いて溶接する厚み範囲を、鋼材表面の下方1〜3
mmとし、それ以外の厚み範囲をオーステナイト系ステ
ンレス鋼ワイヤを用いて溶接する。
食環境1に晒される面が鋼材裏面の高Moステンレス鋼
の溶接方法は、図1(b)に示すように、鋼材裏面から
の溶込み深さが2mm以上となるように、後述する耐食
性が良好な高Ni合金溶接金属4が得られる高Ni合金
溶接ワイヤを用いて開先底部の初層ビード溶接を行った
後、引き続き、この初層ビードの上から最終層までの厚
み範囲を、後述する強度、靭性、延性などの機械的特性
が良好なステンレス鋼溶接金属3が得られるオーステナ
イト系ステンレス鋼ワイヤを用いて溶接する。これによ
り、腐食環境に晒される鋼板裏面側の溶接部の耐食性が
高Ni合金溶接金属の初層ビードによって鋼材並に向上
できると共に、それ以外の溶接部の強度、靭性、延性な
どの機械的特性はオーステナイト系ステンレス鋼溶接金
属によって確保することができる。
る、つまり高Ni合金ワイヤを用いて初層ビード溶接す
る厚み範囲が、鋼材裏面からの溶込み深さで、2mm未
満の場合は、初層ビード形成後のオーステナイト系ステ
ンレス鋼ワイヤによる溶接で再溶融して、高Ni合金溶
接金属とオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属が混合
した初層ビードが形成されるため、腐食環境に晒される
鋼板表面側の溶接部の耐食性が低下し、鋼材並以上の耐
食性を確保できない。
ヤを用いて初層ビード溶接する厚み範囲を、鋼材裏面か
らの溶込み深さで2mm以上とし、初層ビードの上から
最終層までの厚み範囲をオーステナイト系ステンレス鋼
ワイヤを用いて溶接する。
食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の成分及びそ
の含有量の限定理由について説明する。なお、下記説明
における「%」は、特に明記しない限り質量%を意味す
る。
の耐食性に有害であるが、強度の観点からある程度の含
有が必要である。その含有量が0.005%未満では強
度確保が難しく、製造コストも高くなるため、0.00
5%を上限とした。また、その含有量が0.02%を超
えると加工性が低下すると共に、耐食性が著しく低下す
る。そのため、その含有量を0.005〜0.02%に
限定した。
材中に添加されるが、その含有量が0.3%未満ではそ
の効果が十分ではなく、その含有量が0.8%超では延
性・靭性が大きく低下する。そのため、その含有量を
0.3〜0.8%に限定した。
中に添加するが、その含有量が0.3%未満では効果が
十分ではなく、一方、その含有量が1.0%超では鋼板
の加工性が劣化する。そのため、その含有量を0.3〜
1.0%に限定した。
在すると鋼材の熱間加工性、延性を低下させるので少な
い方が望ましく、その含有量の上限を0.03%とし
た。
在すると鋼材の熱間加工性、延性及び耐食性を低下させ
るので少ない方が望ましく、その含有量の上限を0.0
15%とした。
度を向上させる元素である。特に耐食性向上の効果を十
分ならしめるためには3.5%以上必要であるが、一
方、8%を超えて含有すると、鋼中での延性・靭性に有
害な金属間化合物の生成を著しく促進する。そのため、
その含有量を3.5〜8.0%に限定した。
素であり、その効果を十分ならしめるためには18%以
上の含有量が必要である。一方、Cr量が25%超で
は、延性、靭性に有害な金属間化合物の生成を促す。そ
のため、その含有量を18〜25%に限定した。
ると共に耐食性を向上する作用も有する。高Moステン
レス鋼であってもその組織がフェライト単相、あるいは
フェライト+オーステナイト二相からなる場合には、耐
食性及び延性・靭性が必ずしも高くなく、また、組織中
にフェライト相が存在すると脆弱な金属間化合物が析出
しやすくなるので、本発明ではミクロ組織がオーステナ
イト単相となるようにその含有量を15〜22%に限定
した。
の後に直接組織観察する方法もしくはフェライトメータ
ーのような磁気的測定により判定できる組織である。
ナイト系ステンレス鋼の基本成分であり、他の成分は特
に限定されるものではないが、必要に応じて、他の成分
を含有できる。
Moオーステナイト系ステンレス鋼の基本成分である
が、必要に応じて以下の1種または2種の元素を以下の
含有範囲で含有することができる。
るのに顕著な効果があり、その含有量が0.5以上の添
加が有効であるが、その含有量が1.0%超の添加では
熱間加工性を低下させ、また、耐食性も害する。そのた
め、その含有量を0.5〜1.0%に限定した。
有効な元素であり、その効果を十分ならしめるには0.
1%以上の添加が必要である。一方、その含有量が0.
3%超では、鋼板の製造性が著しく低下するため、その
含有量が0.1〜0.3%に限定した。
イヤの成分及びその含有量の限定理由について説明す
る。なお、下記説明における「%」は、特に明記しない
限り質量%を意味する。
ナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤの成分及びその含有量
の限定理由を述べる。
0.001%以上含有させる。一方、その含有量が0.
1%超では溶接金属の加工性、靭性が著しく低下すると
共に、溶接のままの状態及び再熱を受けるとCrなどと
結合し、これらの領域の耐食性を著しく劣化させる。そ
のため、その含有量を0.001%〜0.1%に限定し
た。
が、その含有量が0.01%未満ではその効果が十分で
なく、一方、その含有量が1.5%超では溶接金属のフ
ェライト相の延性低下に伴い、靭性が大きく低下すると
共に、溶接時の溶融溶込みも減少し、実用溶接上の問題
になる。したがって、その含有量を0.01〜1.5%
に限定した。
その含有量が0.01%未満では効果が十分でなく、一
方、その含有量が2.0%を超えて添加すると溶接金属
の加工性が低下する。そのため、その含有量を0.01
〜2.0%に限定した。
鋼の主要元素であり、溶接金属の強度と耐食性に寄与す
る。その含有量が20%未満では十分な強度が得られ
ず、また、その含有量が25%超では延性・靭性が低下
するため、その含有量を20〜25%に限定した。
鋼の主要元素であり、溶接金属のオーステナイト相を生
成・安定にする。その含有量が10%未満では溶接金属
のオーステナイトの安定能が下がり、冷却中にマルテン
サイトへ変態して靭性が低下する。一方、その含有量が
15%超ではオーステナイト単相となって溶接高温割れ
が発生する。そのため、その含有量を10〜15%に限
定した。
在すると溶接部の耐高温割れ性、熱間加工性、延性及び
耐食性を低下させるので少ない方が望ましく、その含有
量を0.01%を上限として制限する。
在すると凝固時の耐高温割れ性及び靭性を低下させるの
で少ない方が望ましく、その含有量を0.03%を上限
として制限する。
延性などの機械的特性を確保するために、オーステナイ
ト系ステンレス鋼溶接ワイヤの基本成分を以上のように
規定すると共に、さらに、溶接金属の高温割れ防止の観
点から室温時の溶接金属組織として、フェライトが20
%以下特に11%以下含有するオーステナイト主体組織
にさせることが必要である。
属組織がオーステナイト単相とならず、フェライトが2
0%以下含有するオーステナイト主体の組織となるため
の溶接ワイヤの成分系としては、オーステナイト系ステ
ンレス鋼溶接ワイヤの成分含有量がさらに、1.14×
Cr当量−Ni当量≧9.0の関係式を満足させる必要
があることが判明した。
(1)式及び(2)式でそれぞれ規定させるものであ
る。 Cr当量=Cr(質量%)+Mo(質量%)+1.5×Si(質量%) ・ ・ ・(1) Ni当量=Ni(質量%)+0.5×Mn(質量%)+30×C(質量%) ・ ・ ・(2) したがって、本発明で使用するオーステナイト系ステン
レス鋼溶接ワイヤの成分含有量が1.14×Cr当量−
Ni当量≧9.0の関係式を満足するように規定する。
金ワイヤの成分及びその含有量の限定理由を述べる。
01%以上添加する。一方、Cは高Ni溶接金属におい
ては、特にCrと結合しやすく、その含有量が0.01
%を超えると粒界等に炭化物として析出し、耐食性や延
性・靭性を阻害すると共に、Mo、Wとも結合して耐溶
接高温割れ性も低下させる。
01%に限定した。
0.01%以上含有されるが、多量に含有すると溶接熱
サイクル中に高Cr−高Mo系の金属間化合物であるσ
相の析出を著しく促進し、その結果、耐食性や延性・靭
性が低下する。
減するため、その含有量の上限を0.2%とした。
金属中のNの固溶も促進するため、0.01%以上の含
有が必要であるが、一方、多量に含有すると耐食性等に
有害な金属間化合物の析出も促進するため、その含有量
を0.01〜2.0%に限定した。
り、両者とも溶接高温割れ感受性を著しく阻害する元素
である。また、多層溶接や補修溶接等の多重熱サイクル
中に粒界脆化も促進する。また、Sは熱間加工性に著し
く影響を及ぼす。したがって、両元素ともできるだけ低
減する必要があり、いずれもその含有量の上限を0.0
1%とした。
主要元素であり、その効果を十分ならしめるためには1
4%以上が必要である。一方、多量に含有するとワイヤ
の製造性が著しく低下すると共に、耐食性に有害な金属
間化合物の析出を促す。それらを考慮して上限を25%
とし、14〜25%に限定した。
成する主要元素である。溶接金属の耐食性の確保、凝固
のまま組織中でのMo、Wの偏析の低減の観点から、少
なくとも55%以上の含有が必要であるが、Cr等合金
元素を表記の量含有するためには75%が上限であるた
め、その含有量を55〜75%に限定した。
して、溶接金属の耐食性、強度を向上させる。その効果
を十分ならしめるためには6%以上必要であるが、一
方、16%を超えて含有すると、溶接金属中で耐食性、
延性・靭性に有害な金属間化合物の生成を著しく促進す
るため、その含有量を6〜16%に限定した。
強度を向上させる。その効果を十分ならしめるためには
それらの成分のうちの1種または2種の合計含有量とし
て1%以上必要であるが、一方、4%を超えて含有する
と、耐食性、延性・靭性に有害な金属間化合物の生成を
著しく促進するため、その含有量を1〜4%に限定し
た。
や中性環境での溶接金属の耐食性を改善する元素であ
り、0.1%以上の添加が必要であるが、多量に含有す
ると熱間加工性を低下させるため溶接ワイヤの製造性を
害する上、塩化物含有酸化性環境での耐食性も害するこ
とから、これらを考慮して上限を3%とし、その含有量
を0.1〜3%とした。
0.1%未満含有されるが、0.1%以上添加すること
により、溶接金属の強度の改善が図られる。他方、5%
を超えて含有すると溶接ワイヤの製造性が低下する。し
たがって、その含有量を0.1〜5%に限定した。
属の耐食性、強度を向上させる。その効果を十分ならし
めるにはその含有量が0.1%以上必要であるが、一
方、0.3%を超えて含有させると溶接ワイヤの製造性
が著しく低下し、また、窒化物等の析出により溶接金属
の耐食性も低下する。そのため、その含有量を0.1〜
0.3%に限定した。
溶接する場合の少なくとも何れか1方の被溶接鋼材が上
記成分を有する高耐食性高Moオーステナイト系ステン
レス鋼であれば良く、この高耐食性高Moオーステナイ
トステンレス鋼同士の溶接は勿論のこと、高耐食性高M
oオーステナイトステンレス鋼とその他のオーステナイ
トステンレス鋼または普通鋼との異材との溶接にも適用
できる。
法としては、特に限定する必要はなく、TIG溶接、M
IG溶接、MAG溶接、プラズマ溶接、サブマージアー
ク溶接の何れでも良く、また、溶接が自動、半自動、手
動のいずれでも本発明の効果が発揮される。
法に適用される溶接ワイヤは、その成分組成が本発明の
範囲内であれば、ソリッドワイヤでもフラックス入りワ
イヤでも適用できる。
き、上向き、のいずれでも良く、また、継手形状も突合
わせ溶接、すみ肉溶接のいずれでも良く、特に限定され
るものではない。
ーステナイト系ステンレス鋼板の化学成分及びミクロ組
織を示す。この鋼板は、最終板厚:6mmでの圧延後、
1150℃で溶体化熱処理が施されたものであり、臨界
孔食発生温度で70℃以上の耐食性を有する。
ンレス鋼板の突合せ端部に、開先角度:60゜、ルート
フェース:0.5mmのY開先を設け、表2に示すオー
ステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤ(S−1〜S−
4)または高Ni合金溶接ワイヤ(N−1〜N−4)の
成分を有する、ワイヤ径:1.2φの溶接ワイヤを用い
て、腐食環境に晒される面が鋼材表面の場合の実施例と
して表3に示す条件で、腐食環境に晒される面が鋼材裏
面の場合の実施例として表4に示す条件でそれぞれ前述
の図1(a)及び(b)に示されるように溶接し、溶接
継手を作製した。溶接は、2%O2+98%Arガスを
用いたMIG溶接を用い、溶接電流:140〜200
A、アーク電圧:16〜27V、溶接速度:20〜35
cm/minの条件で行った。
及び機械的特性を調査した。
手から、いずれも溶接部を中央に含むよう30×30m
mの大きさを採取後、余盛を削除して元厚(6mm)の
まま用い、腐食環境としては、JIS−G0578−1
981に定める6%塩化第二鉄+0.05N塩酸水溶液
を用いた。耐食性の評価は、試験片を5℃間隔で管理さ
れた腐食環境に24時間浸漬し、評価面側に孔食の発生
しない最高温度を塩化物環境での臨界孔食発生温度(C
PT)と定義し、その臨界孔食発生温度により評価し
た。
性の機械的特性は、それぞれ溶接継手の引張試験、溶接
金属のシャルピー衝撃試験、溶接継手の表・裏曲げ試験
の結果から評価した。
削除した試験片(1号試験片、JIS−Z3121−1
961)を採取し、引張試験を行い、その結果から引張
強度を求めた。
2mmVノッチ5mmサブサイズシャルピー試験片を採
取し、0℃にてシャルピー衝撃試験を行い、その結果か
ら吸収エネルギーを求めた。
向に垂直方向から余盛を削除した試験片(5t×30w
×250L mm)を採取し、溶接部を表または裏から
ローラ曲げ(JIS−Z 3124−1960、曲げ半
径:R=10mm)試験を行い、その結果から溶接継手
の曲げ延性を評価した。
束突合せ溶接割れ試験(JIS−Z3155−197
4)により評価した。
機械試験結果及び高温割れ試験の結果も示す。
範囲内の溶接条件、つまり、本発明範囲内の成分のN−
1〜3の高Ni合金ワイヤを用いて腐食環境に晒される
面の溶接部に相当する最終層(試験No1〜3)または
初層ビード(試験No.10〜12)を本発明範囲内の
厚みで溶接し、それ以外の溶接部の厚み範囲を本発明範
囲内の成分を有するS−1のオーステナイト系ステンレ
ス鋼溶接ワイヤを用いて溶接した、試験No1〜3及び
10〜12の本発明例は、全て、耐食性、引張強度、靭
性及び曲げ延性の機械的特性、耐高温割れ性の要求特性
を同時に満足できた。
比較例は、本発明範囲から外れた成分のN−4の高Ni
合金ワイヤを用いて腐食環境に晒される面の溶接部に相
当する最終層(試験No4)または初層ビード(試験N
o.13)を溶接したり、本発明範囲内の成分の高Ni
合金ワイヤを用いて本発明範囲から低く外れた厚みで最
終層(試験No8)または初層ビード(試験No.1
7)を溶接したために、何れも本発明例に比較して、耐
食性が低下し、目標よする母材並の耐食性が得られなか
った。
は、本発明範囲内の成分のN−2の高Ni合金ワイヤを
用いて腐食環境に晒される面の溶接部に相当する最終層
または初層ビードを本発明内の厚みで溶接しているが、
それ以外の溶接部の厚み範囲の溶接を本発明範囲から外
れた成分のオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤ
(S−2〜4)を用いて溶接したために、試験No5、
14は、引張強度が低下し、試験No6、15は、引張
強度及び耐溶接高温割れ性が低下し、試験No7、16
は靭性、曲げ延性及び耐溶接高温割れ性が低下し、目標
とする溶接金属の機械的特性及び溶接特性が得られなか
った。
内の成分のN−2の高Ni合金ワイヤを用いて腐食環境
に晒される面の溶接部に相当する最終層を溶接している
が、その溶接の厚み範囲が本発明範囲から外れているた
めに、それ以外の溶接部の厚み範囲に形成されたオース
テナイト系ステンレス鋼溶接金属の特性が充分に発揮で
きず、溶接部全体の靭性、曲げ延性及び耐溶接高温割れ
性が低下した。
ナイト系ステンレス鋼の溶接方の適用により、耐食性の
みならず機械的特性、耐溶接高温割れ性にも優れた良好
な溶接部が得られことが判った。
ナイト系ステンレス鋼の溶接において、腐食環境に晒さ
れる面での耐食性に優れ、かつ、耐溶接高温割れ性及び
機械的特性に優れる溶接部が得られるものであり、産業
の発展に貢献するところが極めて大である。
図であり、何れも下向き姿勢で多層盛り片面溶接する場
合で、(a)は、腐食環境に晒される面が鋼材表面の図
であり、(b)は、腐食環境に晒される面が鋼材裏面の
図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 化学成分として、質量%で、C:0.0
05〜0.02%、Si:0.3〜0.8%、Mn:
0.3〜1.0%、P:0.03%以下、S:0.01
5%以下、Mo:3.5〜8.0%、Cr:18〜25
%、Ni:15〜22%を含有し、残部が鉄及び不可避
的成分からなり、かつミクロ組織がオーステナイト単相
である高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼材
を多層盛り片面溶接する際に、開先底部での初層ビード
溶接及び該初層ビードの上から鋼材表面の下方1〜3m
mまでの厚み範囲を、化学成分として、質量%で、C:
0.001〜0.1%、Si:0.01〜1.5%、M
n:0.01〜2.0%、Cr:20〜25%、Ni:
10〜15%を含有し、Sを0.01%以下、Pを0.
03%以下に制限し、かつ、1.14×Cr当量−Ni
当量≧9.0を満たし、残部Fe及び不可避的成分から
なるオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて
溶接後、引き続いて、鋼材表面の下方1〜3mmから最
終層までの厚み範囲を、化学成分として、質量%で、
C:0.001〜0.01%、Si:0.01〜0.2
%、Mn:0.01〜2%、S:0.01%以下、P:
0.01%以下、Cr:14〜25%、Ni:55〜7
5%、Mo:6〜16%を含有し、さらに、Nb及びW
のうちの1種または2種の合計量:1〜4%、Cu:
0.1〜3%、Co:0.1〜5%、及びN:0.1〜
0.3%のうちの1種または2種以上を含有し、残部が
Fe及び不可避的成分からなる高Ni合金溶接ワイヤを
用いて溶接することを特徴とする高耐食性高Moオース
テナイト系ステンレス鋼の溶接方法。 但し、Cr当量=Cr(質量%)+Mo(質量%)+
1.5×Si(質量%) Ni当量=Ni(質量%)+0.5×Mn(質量%)+
30×C(質量%) - 【請求項2】 化学成分として、質量%で、C:0.0
05〜0.02%、Si:0.3〜0.8%、Mn:
0.3〜1.0%、P:0.03%以下、S:0.01
5%以下、Mo:3.5〜8.0%、Cr:18〜25
%、Ni:15〜22%を含有し、残部が鉄及び不可避
的成分からなり、かつミクロ組織がオーステナイト単相
である高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼材
を多層盛り片面溶接する際に、鋼材裏面からの溶込み深
さが2mm以上となるように、化学成分として、質量%
で、C:0.001〜0.01%、Si:0.01〜
0.2%、Mn:0.01〜2%、S:0.01%以
下、P:0.01%以下、Cr:14〜25%、Ni:
55〜75%、Mo:6〜16%を含有し、さらにに、
Nb及びWのうちの1種または2種の合計量:1〜4
%、Cu:0.1〜3%、Co:0.1〜5%、及び
N:0.1〜0.3%のうちの1種または2種以上を含
有し、残部がFe及び不可避的成分からなる高Ni合金
溶接ワイヤを用いて開先底部の初層ビード溶接を行った
後、引き続き、該初層ビードの上から最終層までの厚み
範囲を、化学成分として、質量%で、C:0.001〜
0.1%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.01
〜2.0%、Cr:20〜25%、Ni:10〜15%
を含有し、Sを0.01%以下、Pを0.03%以下に
制限し、かつ、1.14×Cr当量−Ni当量≧9.0
を満たし、残部がFe及び不可避的成分からなるオース
テナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて溶接するこ
とを特徴とする高耐食性高Moオーステナイト系ステン
レス鋼の溶接方法。 但し、Cr当量=Cr(質量%)+Mo(質量%)+
1.5×Si(質量%) Ni当量=Ni(質量%)+0.5×Mn(質量%)+
30×C(質量%) - 【請求項3】 前記オーステナイト系ステンレス鋼溶接
ワイヤを用いて溶接した際に得られる室温状態での溶接
金属の組織は、フェライトを20%以下含有するオース
テナイト主体の組織であることを特徴とする請求項1ま
たは2の何れか1項に記載の高耐食性高Moオーステナ
イト系ステンレス鋼の溶接方法。 - 【請求項4】 前記高耐食性高Moオーステナイト系ス
テンレス鋼の化学成分として、さらに、質量%でCu:
0.5〜1.0%、N:0.1〜0.3%のうちの1種
または2種を含有することを特徴とする請求項1から3
のうちの何れか1項に記載の高耐食性高Moオーステナ
イト系ステンレス鋼の溶接方法。
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JP2001320891A JP3819755B2 (ja) | 2001-10-18 | 2001-10-18 | 高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法 |
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