JP2003098311A - 光学部品 - Google Patents

光学部品

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JP2003098311A
JP2003098311A JP2001291467A JP2001291467A JP2003098311A JP 2003098311 A JP2003098311 A JP 2003098311A JP 2001291467 A JP2001291467 A JP 2001291467A JP 2001291467 A JP2001291467 A JP 2001291467A JP 2003098311 A JP2003098311 A JP 2003098311A
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optical component
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English (en)
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Atsushi Fujinawa
淳 藤縄
Junji Nakada
純司 中田
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】プラスチック基板に真空蒸着で複数の膜を形成
してなる光学部品であって、膜の密着力が高く、良好な
耐久性を有する光学部品を提供する。 【解決手段】基板表面に存在する不純物の厚さを0.2
nm以下とすることにより、前記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、レンズ等の光学部
品の技術分野に属し、詳しくは、密着力の強い多層反射
防止膜等を有する、耐久性に優れた光学部品に関する。 【0002】 【従来の技術】レンズ等の光学部品の材料としては、従
来より、ガラスが利用されている。一方で、軽量で低コ
スト、さらには生産性に優れることから、近年では、ポ
リメチルメタアクリレート(PMMA)等からなる、プ
ラスチック製の光学部品も汎用されている。これらの光
学部品に広く要求される特性のひとつに、光反射防止性
が高いこと(低光反射性)があり、光学部品の表面に
は、(光)反射防止膜が形成される場合が多い。 【0003】光学部品の表面に形成される反射防止膜と
しては、フッ化マグネシウム(MgF2 )等の低屈折率
材料を用いて成膜される単層の膜が汎用されているが、
より光反射防止性が高い反射防止膜として、低屈折率材
料からなる層と高屈折率材料からなる層とを、交互に、
少なくとも一層ずつ形成してなる、多層反射防止膜(マ
ルチコート反射防止膜)が知られている。ところが、多
層反射防止膜を有するプラスチック製の光学部品は、基
板(すなわちプラスチック製の光学部品)と多層反射防
止膜との密着性が低く、すなわち、耐久性が不十分であ
るという問題点がある。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】多層反射防止膜は、一
般的に、真空蒸着等の気相成膜法で形成される。気相成
膜法では、基板加熱を行わなくても、基板の温度は上昇
し、基板が膨張する。特に、多層反射防止膜では、生産
性等を考慮して複数層の成膜を連続的に行い、かつ、高
屈折材料の成膜は高めのエネルギで行うのが通常である
ため、基板温度は高くなり、基板は、少なからず膨張す
る。従って、多層反射防止膜の成膜を終了した基板を大
気中に取り出すと、基板は急激に冷却されて、収縮す
る。 【0005】ところが、プラスチック製の基板、特に、
PMMAを代表とするアクリル系材料からなる基板と、
基板に成膜された多層反射防止膜とでは、熱膨張係数が
異なり、基板に成膜された多層反射防止膜の熱膨張係数
は、基板よりも小さい。そのため、成膜を終了して大気
中に取り出された際に、基板の収縮による変形に、多層
反射防止膜が追随することができず、多層反射防止膜が
ダメージを受け、かつ、大きな歪みを持ってしまう。そ
の結果、多層反射防止膜の密着力が低下し、しかも、密
着力は経時と共に、漸次、低下してしまい、これによ
り、多層反射防止膜を有する光学部品の耐久性が大幅に
低下してしまう。 【0006】本発明の目的は、前記従来技術の問題点を
解決することにあり、軽量、低コスト、生産性等に優れ
たプラスチックを基板とし、真空蒸着によって多層反射
防止膜などの複数の膜を形成してなる光学部品であっ
て、膜の密着力が高く、良好な耐久性を有する光学部品
を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の光学部品は、樹脂材料製の基板と、真空蒸
着によって形成される複数の膜を有し、かつ、前記基板
の表面に存在する不純物の厚さが0.2nm以下である
ことを特徴とする光学部品を提供する。 【0008】また、このような本発明の光学部品は、樹
脂材料製の基板に、真空蒸着によって複数の膜を形成し
てなる光学部品を製造するに際し、成膜材料の溶かし込
みを行う際に、基板表面に形成される膜の成膜材料以外
の溶かし込みは、基板表面に成膜した後に行う製造方法
により製造するのが好ましい。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明の光学部品につい
て、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説
明する。 【0010】図1に、本発明の光学部品の一例の概念図
を示す。本発明の光学部品10は、基板となる光学部品
12(以下、基板12とする)と、この基板12の表面
に形成される酸化硅素膜14と、酸化硅素膜14の上に
形成される多層反射防止膜16(以下、反射防止膜16
とする)とから構成される。なお、図示例において、反
射防止膜16は、高屈折率材料からなる高屈折率層18
(18aおよび18b)と、低屈折率材料からなる低屈
折率層20(20aおよび20b)とを、交互に2層ず
つ積層してなる、4層構成を有する。 【0011】本発明において、基板12(すなわち、本
発明の光学部品10)には特に限定はなく、公知の光学
部品が、各種利用可能である。具体的には、各種のレン
ズ、各種のフィルタ、各種のスクリーン、高分子フィル
ム、基板等が例示される。また、基板12の形成材料に
も特に限定はなく、光学部品に利用されるプラスチック
(樹脂材料)が、全て利用可能である。具体的には、P
MMA(ポリメチルメタアクリレート)、PC(ポリカ
ーボネート)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル,ポリ
スチレン等が好適に例示される。なお、高分子フィルム
は、上記材料以外にも、ポリエステルフィルム、ポリエ
ーテルイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリ
エーテルサルフィンフィルム等も好適である。中でも、
後述する酸化硅素膜14(第1層)の密着力の向上効果
等の点で、アクリル系材料、特に、PMMA製の基板1
2が好適である。 【0012】ここで、本発明の光学部品においては、基
板12の表面に存在する不純物の厚さ(膜(層)の積層
方向の厚さ)が、0.2nm以下である。すなわち、図
示例の光学部品10においては、基板12と酸化硅素膜
14の間に存在する酸化硅素膜14以外の不純物の厚
さ、具体的には、両者の間に存在する、高屈折率層18
と同様の物質の厚さが、0.2nm以下である。 【0013】前述のように、プラスチック製の基板、特
にPMMA等のアクリル系材料からなる基板に多層反射
防止膜を形成した際には、主として両者の熱膨張係数の
違いにより、成膜終了後に大気開放した際の冷却による
基板の大きな収縮/変形に、多層反射防止膜が追随する
ことができず、多層反射防止膜がダメージを受け、か
つ、歪みを持ってしまう。このような問題は、真空蒸着
による成膜を行うプラスチック製の光学部品では、不可
避的に生じるが、多層反射防止膜では、複数層の成膜を
連続で行うので、より顕著になる。その結果、膜の密着
力が低下し、かつ、この密着力は、経時と共にさらに低
下するため、特に、多層反射防止膜を有する光学部品
は、耐久性という点で要求される特性を満たしていな
い。 【0014】この問題点を解決するために、本発明者ら
は、鋭意検討を重ねた。その結果、溶かし込みの際に発
生した蒸気が、基板12の表面に付着/析出してしま
い、これが基板表面に成膜される膜(以下、第1層とす
る)と異なる場合に、第1層の密着力を低下させ、前述
の変形に起因する歪み等と相乗して、多層反射防止膜等
の密着力を、さらに低下させていることを見いだした。 【0015】真空蒸着による成膜では、成膜材料の特性
等に起因して、成膜中に成膜材料が突沸し、いわゆるス
プラッシュ等が生じる場合がある。これが膜中に混入し
てしまうと、膜の性状等が悪い不適正品となり、得率が
低下する。このような不都合を防止するため、突沸し易
い成膜材料を利用する場合には、成膜に先立ち、ハース
内の成膜材料を一度溶融する、いわゆる溶かし込みが行
われる。特に、図示例のような(多層)反射防止膜16
の高屈折率層18の成膜に用いられる高屈折率材料は、
溶かし込みが必要な場合が多い。 【0016】溶かし込みは、真空蒸着装置((真空)チ
ャンバ)内の所定位置に、成膜基板や成膜材料等をセッ
トして、成膜が開始できる状態とした後に、蒸発源(成
膜材料)からの蒸気を遮蔽するシャッタを閉塞した状態
で、成膜に準ずる条件(真空度および加熱エネルギ)で
成膜材料を溶融することで行われる。あるいは、成膜材
料に混入する不純物の除去を目的として、成膜よりも材
料が蒸発し易い条件で溶かし込みを行う場合も多い。従
って、溶かし込みの際には、成膜材料は、少なからず蒸
発する。いかにシャッタを閉塞した状態であっても、通
常、シャッタは、蒸発源と基板の存在空間とを完全に隔
離するものではないので、成膜材料の蒸気はシャッタを
回り込んで拡散し、チャンバ内に充満して、成膜基板に
至り、基板表面に付着して析出してしまう。すなわち、
通常の真空蒸着の成膜プロセスでは、溶かし込みを行う
場合には、溶かし込みを行う成膜材料が基板表面に析出
するのを避けることができない。 【0017】溶かし込みを行うのが、第1層の成膜材料
である場合には、基板表面に析出する物質は、第1層と
同じであるので、何ら、問題は生じない。ところが、溶
かし込みを行うのが、第1層以外の成膜材料である場合
には、基板12の表面に析出する物質が第1層と異な
り、すなわち不純物となる。そのため、この不純物が、
基板表面を汚染したのと同様に作用してしまい、溶かし
込みの後に成膜される第1層の密着を阻害し、第1層の
密着力を低下させている。図示例においては、前述のよ
うに、通常、高屈折率層18の成膜材料は溶かし込みを
行うので、これが、基板12の表面に析出し、第1層で
ある酸化硅素膜14の密着を阻害する。なお、当然であ
るが低屈折率層20の成膜材料の溶かし込みを行う場合
でも、同様の不都合が生じる。 【0018】ここで、前述のように、このような、溶か
し込みによる基板表面への蒸気の付着/析出は、通常の
真空蒸着の成膜プロセスでは、不可避で、すなわち、第
1層の成膜材料以外の溶かし込みを行う場合には、不純
物の析出は不可避である。また、不純物は、層状に基板
全面を覆って析出、基板表面に点状に析出、基板表面に
縞状に析出等、チャンバやシャッタの構成、成膜材料の
特性等に応じて、様々な状態で基板12の表面に析出す
る。しかしながら、本発明者らの検討によれば、基板表
面における不純物の付着がいかなる状態であっても、そ
の厚さが0.2nm以下であれば、この不純物に起因す
る悪影響をほとんど無くすことができる。すなわち、基
板表面の不純物の厚さが0.2nm以下の本発明によれ
ば、第1層の密着の阻害を防ぐことができ、第1層の密
着力を良好にして、耐久性の高い光学部品10を実現で
きる。 【0019】本発明の光学部品10において、基板12
の表面の不純物の厚さを0.2nm以下とする方法に
は、特に限定はなく、各種の方法が利用可能である。例
えば、溶かし込みによる成膜材料蒸気の拡散、基板12
の表面への付着状態や量は、チャンバの形状、シャッタ
の形状やサイズ等に影響される場合が多いので、これら
を、適宜、設定あるいは調整することにより、基板表面
への付着量を低減して、厚さを0.2nm以下とする方
法が例示される。また、溶かし込みの条件を、適宜、設
定することによっても、同様の効果を上げることができ
る。 【0020】前述のように、図示例の光学部品10にお
いて、基板12の表面には、酸化硅素膜14が形成され
る。酸化硅素膜14は、好ましい態様として設けられ
る、基板12と反射防止膜16との密着力を向上するた
めの密着層として作用する膜で、図示例においては、よ
り好ましい態様として、一酸化硅素(SiO)を成膜材
料とする真空蒸着で成膜される膜である。また、図示例
においては、さらに好ましい態様として、この酸化硅素
膜14は、成膜中に、成膜系内に酸素を導入することに
より、膜に柔軟性を有する弾性を付与してなるものであ
る。なお、この点以外は、酸化硅素膜14の成膜は、通
常の真空蒸着と同様でよい。 【0021】SiOを成膜材料として真空蒸着で形成さ
れた酸化硅素膜14は、プラスチック、特に、PMMA
との密着性に優れる。また、この酸化硅素膜14は、成
膜中に、系内に酸素を導入することにより、膜をポーラ
ス(多孔性)にでき、酸素の導入量に応じて、柔軟性を
有する弾性を付与することができ、しかも、成膜中の酸
素導入により、応力(薄膜の内部応力)も低減すること
ができる。従って、このような酸化硅素膜14を有する
ことにより、真空蒸着による反射防止膜16の成膜にお
ける基板12の変形(膨張/収縮)を吸収して、この変
形による反射防止膜16のダメージおよび歪みを防ぎ、
これ起因する反射防止膜16の密着力の低下を防止し
て、耐久性に優れた光学部品10を実現できる。しか
も、本発明の光学部品10においては、前述のように、
基板12の表面に付着している不純物の厚さが0.2n
m以下であるので、酸化硅素膜14の密着力も良好であ
る。 【0022】光学部品10において、酸化硅素膜14の
膜厚には特に限定は無い。しかしながら、この膜厚が薄
過ぎると、基板12の変形を吸収する効果が十分ではな
く、目的とする反射防止膜16の密着性向上効果を得る
ことができず、逆に厚過ぎると、光学部品10の光学特
性、生産性、基板温度上昇の増加によるダメージ等の点
で、不利になる。従って、酸化硅素膜14の厚さは、以
上の点を考慮して、目的とする耐久性、光学特性、生産
性等に応じて、適宜決定すればよいが、本発明者らの検
討によれば、100nm〜800nm、特に、350n
m〜600nmが好ましい。 【0023】光学部品10において、このような密着層
として作用する酸化硅素膜14の上には、(多層)反射
防止膜16が形成される。図示例においては、反射防止
膜16は、高屈折率材料からなる高屈折率層18(18
aおよび18b)と、低屈折率材料からなる低屈折率層
20(20aおよび20b)とを、交互に2層ずつ積層
してなる、4層構成を有する。 【0024】なお、反射防止膜16は、これに限定はさ
れず、高屈折率層18と低屈折率層20とを、交互に、
少なくとも1層ずつ形成してなる、公知の多層(マルチ
コート)の反射防止膜が各種利用可能である。例えば、
高屈折率層18と低屈折率層20とを1層ずつ有する反
射防止膜であってもよく、3層以上ずつの高屈折率層1
8と低屈折率層20を有する反射防止膜でもよい。 【0025】従って、高屈折率層18および低屈折率層
20の形成材料にも、限定はなく、各種の多層反射防止
膜に利用されるものが、全て利用可能である。例えば、
高屈折率層18としては、ZrO2 を成膜材料とする
層、TiO2 を成膜材料とする層、前記OH−5のよう
なZrO2 とTiO2 の混合材料を成膜材料とする層、
2 3 を成膜材料とする層、CeO2 を成膜材料とす
る層、Ta2 5 を成膜材料とする層、等が例示され
る。また、低屈折率層20としては、SiO2 を成膜材
料とする層、MgF2 を成膜材料とする層、CaF2
成膜材料とする層、等が例示される。同様に、反射防止
膜16を構成する各層の厚さにも特に限定はなく、形成
材料、層構成、要求される光学特性等に応じて、適宜、
決定すればよい。 【0026】なお、本発明は、このような多層反射防止
膜を有する光学部品に限定はされず、プラスチック製の
基板で、かつ、複数の膜を有するものであれば、単層の
反射防止膜を有するものでもよく、また、反射防止膜を
有さなくてもよく、各種の構成の光学部品が利用可能で
あり、さらに、密着層も、必ずしも必要ではない。 【0027】本発明の光学部品は、前述のようにして、
溶かし込みの際の基板12への不純物の付着を十分に考
慮すれば、基本的に、通常の真空蒸着で作製できる。す
なわち、図示例の光学部品10において、酸化硅素膜1
4および反射防止膜16の成膜は、前述のように酸化硅
素膜14の成膜を酸素の導入を伴う真空蒸着で行う以外
は、公知の真空蒸着で行えばよい。また、成膜は、抵抗
加熱を利用しても、電子ビーム加熱を利用してもよい
が、酸化硅素膜14の成膜は、抵抗加熱を利用して、比
較的低速の成膜速度で、緩やかに行うのが好ましい。ま
た、加熱エネルギは、400A以下とするのが好まし
い。これにより、酸化硅素膜14に、より好適な柔軟性
を有する弾性を付与でき、さらに、比較的、厚膜である
酸化硅素膜14の成膜における基板の温度上昇も低減で
きる。 【0028】真空蒸着による成膜を行う際には、前述の
ように、必要に応じて、成膜材料の溶かし込みが行われ
る。ここで、基板表面の不純物が0.2nm以下である
本発明の光学部品は、溶かし込みを行う場合には、第1
層の成膜材料以外の溶かし込みは第1層を成膜した後に
行う製造方法で製造するのが好ましい。すなわち、図示
例の光学部品10において、例えば高屈折率層18の成
膜材料の溶かし込みを行う場合には、基板12の表面に
第1層である酸化硅素膜14を成膜した後に、高屈折率
層18の成膜材料の溶かし込み行い、その後、高屈折率
層18a→低屈折率層20a→高屈折率層18b→低屈
折率層20bの順で、成膜を行う。 【0029】現在、複数の膜を有する光学部品を真空蒸
着によって製造する成膜プロセスでは、基板や成膜材料
を真空蒸着装置にセットした後に、最初に成膜材料の溶
かし込みを行い、その後、連続的に各層の成膜を行う。
また、このプロセスが、成膜効率が高く、かつ、生産性
も良好であると考えられている。そのために、第1層以
外の成膜材料の溶かし込みを行う場合には、基板12の
表面に不純物が付着することが不可避であるが、前述の
ように、この不純物の付着は、シャッタのサイズや形
状、チャンバの形状、溶かし込み条件の設定等によって
低減して、基板表面の不純物の膜厚を0.2nm以下に
できる。 【0030】しかしながら、溶かし込みの際における蒸
気の拡散を、より確実に防止するためには、シャッタを
大きく、かつ、形状を複雑にする必要がある場合も多
く、装置コスト等の点で不利になることも多い。また、
シャッタ回りすなわち蒸発源付近の変更や、チャンバ形
状の変更等は、真空蒸着の際の蒸気の拡散状態の変更に
もつながり、すなわち、成膜状態が変わってしまう場合
もあるので、この点の改変は避けたいのが、通常であ
る。さらに、溶かし込みの際における蒸気の拡散は、成
膜材料の特性によって異なる。ここで、通常の真空蒸着
装置は、1つの成膜材料のみに対応するわけではなく、
多数種の成膜材料に対応するのが通常である。従って、
1つの成膜材料で蒸気の拡散を好適に防げても、他の材
料では、蒸気の拡散によって不純物が多量に基板表面に
析出してしまうということは、往々にして有り得る。ま
た、実効有る溶かし込みを行うためには、成膜材料の蒸
発は不可避であり、溶かし込み条件によって蒸発による
不純物の付着を防止するためには、例えば、溶かし込み
の時間が非常に長くなる等、各種の不都合が生じる。 【0031】これに対し、第1層の成膜材料以外の溶か
し込みを行う際には、 第1層を成膜した後に溶かし込み
を行う製造方法によれば、シャッタ形状の変更や、溶か
し込みの条件の設定等を行うことなく、しかも、全ての
成膜材料に対応して、溶かし込みに起因する基板表面へ
の不純物の析出を防止できる。さらに、溶かし込みによ
る基板表面の不純物の析出を、完全に防止できるので、
(多層)反射防止膜16を有する光学部品10のよう
に、膜の密着力を含めた品質が重要な製品では、特に有
利である。 【0032】ここで、前述のように、通常の真空蒸着の
成膜プロセスでは、成膜を効率良く行うために、溶かし
込みを行った後に、複数層を連続的に成膜する。一方、
この製造方法では、基板表面の成膜を行った後に、溶か
し込みを行い、その後、残りの成膜を行う。そのため、
この製造方法は、成膜時間や成膜の作業効率という点で
は、若干ではあるが、通常のプロセスよりも劣る。しか
しながら、この製造方法によれば、基板表面への不純物
の付着を完全に防止することができるので、不純物によ
る密着の阻害を完全に無くすことができ、これに起因す
る密着力の低下による不良品の発生を無くして、得率を
大幅に向上できる。従って、この製造方法によれば、全
体的にみれば、生産性および生産効率を向上することが
でき、しかも、得率の向上による生産コストの削減も図
ることができる。 【0033】なお、溶かし込みによる基板表面の不純物
の析出は、溶かし込みを行った後に、基板を真空蒸着装
置にセットして、複数層を連続して成膜する方法でも、
防止できる。しかしながら、この方法では、溶かし込み
の後にチャンバの大気開放をを行う必要があり、効率的
ではない。 【0034】以上、本発明の光学部品について詳細に説
明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の
要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行
ってもよいのは、もちろんである。 【0035】 【実施例】以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明
をより詳細に説明する。 【0036】[実施例]図3に模式的に示されるよう
な、市販されている真空蒸着装置50(以下、蒸着装置
50とする)に酸素導入手段を付加した装置を用いて、
図1に示される光学部品10を作成した。なお、この蒸
着装置50は、蒸発材料の加熱手段として、電子ビーム
による加熱を行う電子銃蒸発源28と、抵抗加熱による
加熱を行う抵抗加熱蒸発源30とを有する。 【0037】まず、蒸着装置50(真空チャンバ22)
内の回転ドーム24に、PMMA(三菱レイヨン社製、
VH001)製のレンズを基板12としてセットした。
なお、この回転ドーム24は、回転手段26によって所
定速度で回転される。次いで、酸化硅素膜14の成膜材
料として、SiOを抵抗加熱蒸発源30の所定位置(ハ
ース)にセットした。さらに、高屈折率層18の成膜材
料としてOH−5(ZrO2 とTiO2 の混合物 オプ
トロン社製)を、低屈折率層20の成膜材料としてSi
2 を、それぞれ、電子銃蒸発源28の所定位置(ハー
ス)にセットした。 【0038】真空チャンバ22(以下、チャンバ22と
する)を閉塞した後、排気を行い、チャンバ22内の圧
力が8×10-4Paとなった時点で、チャンバ内に酸素
を導入して圧力を0.05Paに調整し、次いで、シャ
ッタ32を開放して、抵抗加熱蒸発源30の抵抗加熱手
段を駆動して、SiOを充填したハースを加熱し、0.
05Paの成膜圧力で、厚さ約400nmの酸化硅素膜
14を成膜した。なお、抵抗加熱蒸発源30における抵
抗加熱手段は、6kWの抵抗加熱電極を有するものであ
り、350Aの電力を供給して、SiOを抵抗加熱し
て、成膜を行った。 【0039】酸化硅素膜14の成膜後、シャッタ32を
閉塞して、チャンバ22内の圧力が1×10-3Paとな
った時点で、電子銃蒸発源28において、250mAの
出力で電子銃を駆動して、OH−5を収容するハースに
電子ビームを照射、スキャニングして、OH−5の溶か
し込みを行った。溶かし込み終了後、溶かし込みによっ
て上昇したチャンバ22内の圧力が1×10-3Paとな
った時点で、シャッタ32を開放し、電子銃蒸発源28
において、電子銃の出力230mAでハース内のOH−
5に電子ビームを照射して、酸化硅素膜14の上に、厚
さ約20nmの高屈折率層18aを成膜した。なお、成
膜圧力は、8×10-3Paとした。 【0040】高屈折率層18の成膜終了後、成膜で上昇
したチャンバ22内の圧力が1×10-3Paとなった時
点で、電子銃蒸発源28において、ハースを切り換え、
電子銃の出力85mAでハース内のSiO2 に電子ビー
ムを照射して、高屈折率層18aの上に、厚さ約30n
mの低屈折率層20aを成膜した。なお、成膜圧力は、
1×10-3Paとした。 【0041】低屈折率層20aの成膜終了後、成膜で上
昇したチャンバ22内の圧力が1×10-3Paとなった
時点で、電子銃蒸発源28において、ハースを切り換
え、電子銃の出力230mAでハース内のOH−5に電
子ビームを照射して、低屈折率層20aの上に、厚さ約
100nmの高屈折率層18bを成膜した。なお、成膜
圧力は、8×10-3Paとした。 【0042】高屈折率層20の成膜終了後、成膜によっ
て上昇したチャンバ22内の圧力が1×10-3Paとな
った時点で、電子銃蒸発源28において、ハースを切り
換え、電子銃の出力85mAでハース内のSiO2 に電
子ビームを照射して、高屈折率層18bの上に、厚さ約
90nmの低屈折率層20bを成膜し、反射防止膜16
を有する本発明の光学部品10を作製した。なお、低屈
折率層20bの成膜圧力は、先と同様に、1×10-3
aとした。 【0043】酸化硅素膜14の成膜開始から反射防止膜
16(低屈折率層20b)の成膜終了まで、基板12の
温度は室温〜80℃の範囲であった。なお、酸素を導入
したのは、酸化硅素膜14の成膜時のみである。各膜厚
は、光学シュミレーションソフトウエアによる設計値を
用いて、希望の光学特性を得られるように設定したもの
である。また、各膜(層)の膜厚は、予め行った成膜の
シュミレーションに基づいて、成膜時間で制御した。 【0044】[比較例]酸化硅素膜14の成膜前に、高
屈折率層18の成膜材料であるOH−5の溶かし込みを
行った以外は、前記実施例と全く同様にして、光学部品
を作製した。 【0045】このようにして得られた実施例の光学部品
10、および、比較例の光学部品について、反射防止膜
16の密着性を検査した。なお、光学的な特性は、両者
共に良好であった。密着試験は、作製した1バッチ(6
00個)の光学部品から30個を無作為に選択し、その
表面にセロハンテープ(ニチバン社製 No.405)
を強く貼り、膜面に対して垂直方向にテープを瞬時に引
き剥がした際の膜剥離を、目視で確認することで行っ
た。 【0046】全ての光学部品において膜剥離が全く認め
れられなかったサンプルを○、一部が膜剥離した光学部
品が1つでも発生したサンプルを△、ほぼ完全に膜剥離
した光学部品が1つでも発生したサンプルを×と評価し
た。なお、同じ試験を10回繰り返した後でも、全ての
光学部品で全く膜剥離が認められなかったサンプルは、
特に、◎と評価した。その結果、本発明の光学部品10
の評価は◎、比較例の光学部品の評価は×であった。し
かも、比較例の光学部品では、30個のサンプル全てに
おいて、膜が全面剥離した。以上の結果より、本発明の
効果は明らかである。 【0047】 【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、基板に、真空蒸着によって多層反射防止膜等を
形成した光学部品において、基板表面に形成される膜
(層)の密着力が高く、従って、耐久性に優れた光学部
品を実現することができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の光学部品の一例の概念図である。 【図2】 真空蒸着装置の一例の概念図である。 【符号の説明】 10 光学部品 12 基板 14 酸化硅素膜 16 (多層)反射防止膜 18(18a,18b) 高屈折率層 20(20a,20b) 低屈折率層 22 (真空)チャンバ 24 回転ドーム 26 回転手段 28 電子銃蒸発源 30 抵抗加熱蒸発源 32 シャッタ 50 真空蒸着装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2K009 AA07 AA15 BB13 BB14 BB24 CC03 CC06 CC42 DD03 EE00 4K029 AA11 AA21 BA46 BA50 BB02 BC07 BD00 CA01 DB14

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】樹脂材料製の基板と、真空蒸着によって形
    成される複数の膜を有し、 かつ、前記基板の表面に存在する不純物の厚さが0.2
    nm以下であることを特徴とする光学部品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007314891A (ja) * 2001-03-13 2007-12-06 Kiyousera Opt Kk 金属酸化膜被覆部材

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