JPH0545503A - 光学素子およびその製造方法 - Google Patents

光学素子およびその製造方法

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JPH0545503A
JPH0545503A JP3223704A JP22370491A JPH0545503A JP H0545503 A JPH0545503 A JP H0545503A JP 3223704 A JP3223704 A JP 3223704A JP 22370491 A JP22370491 A JP 22370491A JP H0545503 A JPH0545503 A JP H0545503A
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optical element
layer
refractive index
base material
oxide
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JP3223704A
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Tomohito Nakano
智史 中野
Tatsuo Ota
達男 太田
Setsuo Tokuhiro
節夫 徳弘
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Konica Minolta Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた反射防止性能および増反射防止性能を
有し、高精度の光学系に対応可能で、しかも、クラック
などが発生しにくくて良好な耐久性を有する光学素子を
提供することにある。 【構成】 本発明の光学素子は、高分子樹脂製の基材
と、この基材の表面に形成された前記基材とは異なる光
学特性を有する表面層とよりなり、前記表面層は、プラ
ズマ照射またはイオン照射により基材の表面が改質され
て形成された改質層であることを特徴とする。また、表
面層上に、更に表面被覆層が形成されていてもよい。本
発明の製造方法は、イオン源から発生するプラズマまた
はイオンビームを基材の表面に照射して表面層を形成す
る工程を含むことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光学素子およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、カメラ、テレビプロジェクター、
複写機などの光学系に搭載される光学素子において、反
射防止性能、増反射防止性能、ビームスプリッター性
能、透明導電性能、波長分離性能など各種の光学特性が
要求されている。
【0003】また、近年において、アクリル樹脂、ポリ
カーボネート樹脂などの高分子樹脂製の基材と、この基
材の表面に形成された光学膜とからなる光学素子が知ら
れている。しかして、このような光学素子を製造する場
合、基材を構成する高分子樹脂の耐熱性がガラスより低
いことから、基材の表面に光学膜を形成する手段として
真空中での加熱蒸着手段を適用することができない。従
来、高分子樹脂製の基材の表面に光学膜例えば反射防止
膜を形成する方法として、以下のような技術が提案され
ている。 基材の表面に、酸化シリコンや酸化アルミニウムな
どよりなる中間層を形成し、更に、この中間層上に反射
防止膜を形成する技術。 シリコン樹脂などの有機物材料を基材の表面に塗布
してハードコート層を形成し、更に、このハードコート
層上に反射防止膜を形成する技術。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、の技
術では、中間層の厚さが大きいものとなるために形成さ
れる光学膜にクラックが発生しやすく、これにより光透
過率が低下する、という問題を有し、の技術では、ハ
ードコート層を均一に塗布することが困難であることか
ら、カメラレンズやレーザ光学素子などの高精度レンズ
には適用できない、という問題を有する。このように、
従来の技術では、良好な光学特性および耐久性を有する
ものとして、満足できる光学素子は提供されていないの
が現状である。
【0005】本発明は、以上のような事情に基づいてな
されたものであって、本発明の第1の目的は、優れた反
射防止性能および増反射防止性能を有し、高精度の光学
系に対応可能で、しかも、クラックなどが発生しにくく
て良好な耐久性を有する光学素子を提供することにあ
る。
【0006】本発明の第2の目的は、優れた反射防止性
能および増反射防止性能を有するとともに、ビームスプ
リッター性能、反射ミラー性能、透明導電性能、バンド
パスフィルターやダイクロイックフィルターなどの波長
分離性能などにも優れ、しかも、クラックが発生しにく
くて良好な耐久性を有する光学素子を提供することにあ
る。
【0007】本発明の第3の目的は、上記の光学素子を
好適に製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、高分子樹脂製
の基材の表面に、プラズマ照射またはイオン照射を施す
ことにより、その表面状態が改質されて基材自体とは異
なる光学特性例えば屈折率を有する表面層が形成される
ことを見出し、斯かる知見に基いてなされたものであ
る。
【0009】本発明の光学素子は、高分子樹脂製の基材
と、この基材の表面に形成された前記基材とは異なる光
学特性を有する表面層とよりなり、前記表面層は、プラ
ズマ照射またはイオン照射により基材の表面が改質され
て形成された改質層であることを特徴とする。
【0010】また、表面層の屈折率が基材の屈折率とは
異なることが好ましい。
【0011】また、表面層が不均質な屈折率特性を有す
ることが好ましい。
【0012】また、基材の表面に照射されたプラズマま
たはイオンは、酸素、フッ素および炭素からなる群より
選ばれた少なくとも一種の元素を含む導入ガスがイオン
源に供給されて発生したものであることが好ましい。
【0013】更に、本発明の光学素子は、高分子樹脂製
の基材と、この基材の表面に形成された前記基材とは異
なる光学特性を有する表面層と、この表面層上に形成さ
れた1層または複数層からなる表面被覆層とよりなり、
前記表面層は、プラズマ照射またはイオン照射により基
材の表面が改質されて形成された改質層であることを特
徴とする。
【0014】また、表面層の屈折率が基材の屈折率とは
異なることが好ましい。
【0015】また、表面層が不均質な屈折率特性を有す
ることが好ましい。
【0016】また、基材の表面に照射されたプラズマま
たはイオンは、酸素、フッ素および炭素からなる群より
選ばれた少なくとも一種の元素を含む導入ガスがイオン
源に供給されて発生したものであることが好ましい。
【0017】また、表面被覆層の一部または全部は、酸
素、フッ素および炭素からなる群より選ばれた少なくと
も一種の元素を含むプラズマ化またはイオン化されたガ
ス雰囲気下で形成されたことが好ましい。
【0018】また、表面被覆層が、少なくとも一種の低
屈折率層からなることが好ましく、この場合において、
低屈折率層を形成する低屈折率物質が、酸化シリコン、
フッ化マグネシウムおよび酸化アルミニウムからなる群
より選ばれた少なくとも一種の化合物であることが特に
好ましい。
【0019】また、表面被覆層が、低屈折率層と高屈折
率層との積層体からなることが好ましく、この場合にお
いて、低屈折率層を形成する低屈折率物質が、酸化シリ
コン、フッ化マグネシウムおよび酸化アルミニウムから
なる群より選ばれた少なくとも一種の化合物であり、高
屈折率層を形成する高屈折率物質が、酸化チタン、酸化
ジルコニウムと酸化チタンの混合物、酸化チタンと酸化
プラセオジウムの混合物、硫化亜鉛、酸化セリウム、酸
化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化イン
ジウムと酸化スズの混合物および酸化スズとアンチモン
の混合物からなる群より選ばれた少なくとも一種の化合
物またはこれらの混合物であることが特に好ましい。
【0020】本発明の光学素子の製造方法は、高分子樹
脂製の基材と、この基材の表面に形成された前記基材と
は異なる光学特性を有する表面層と、この表面層上に形
成された表面被覆層とよりなる上記の光学素子を製造す
る方法であって、イオン源を具えてなる真空装置内に高
分子樹脂製の基材を配置し、酸素、フッ素および炭素か
らなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含む導入
ガスをイオン源に供給し、イオン源から発生する前記元
素を含むプラズマまたはイオンビームを前記基材の表面
に照射して表面層を形成する表面層形成工程と、プラズ
マまたはイオンビームの照射を停止し、あるいは照射を
継続しながら、蒸着処理またはスパッタコート処理を行
うことにより、表面層上に表面被覆層を形成する表面被
覆層形成工程とを含んでなり、前記各工程におけるイオ
ン源の加速電圧が 200V以下であることを特徴とする。
【0021】また、各工程におけるイオン源からの基材
表面でのイオン電流密度が50μA/cm2 以上であること
が好ましい。
【0022】また、プラズマまたはイオンビームを基材
の表面に照射するときにおける真空装置内の真空度が、
0.8×10-4〜4×10-4Torrであることが好ましい。
【0023】以下、本発明について具体的に説明する。 <第1の発明>本発明のうち第1の発明は、高分子樹脂
製の基材と、この基材の表面に形成された前記基材とは
異なる光学特性を有する表面層とよりなる光学素子であ
る。
【0024】光学素子の基材を構成する高分子樹脂とし
ては、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポ
リスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、非晶質ポ
リオレフィン樹脂などを挙げることができる。これらの
うち、非晶質ポリオレフィン樹脂は、耐熱温度が他の樹
脂に比較して高く、また吸水率が低いことから、得られ
る光学素子に優れた耐環境性を付与することができるの
で好ましい。
【0025】光学素子を構成する表面層は、プラズマ照
射またはイオン照射により基材の表面が改質されて形成
された改質層である。
【0026】基材の表面へのプラズマ照射またはイオン
照射は、図1に示すような真空装置内で行うことができ
る。図1において、1は真空装置、Aは高分子樹脂製の
基材よりなる基板、2は基板Aの表面にイオンビームを
照射するためのイオン源、3は基板Aを支持するホルダ
ー、4はイオン源2に導入ガスを供給するための導入ガ
ス供給源、5はガス流量調節弁、6は流量計、7は後述
する蒸着処理に用いる電子銃、8は水晶振動子膜厚計で
ある。
【0027】イオン源2は真空装置1の内部に設けられ
ているが、基板Aの表面にイオンビームを照射すること
ができれば真空装置1の外部に設けられていてもよい。
【0028】この例においては、複数の基板Aがホルダ
ー3に支持されている。このように複数の基板Aの表面
に同時にイオンビームを照射する場合には、各基板Aの
表面をイオン源2から等距離に配置するかホルダー3を
回転させるなどして、各表面へのイオン照射量を均一に
することが好ましい。これにより、得られる光学素子が
性能の揃ったものとなる。
【0029】導入ガス供給源4からイオン源2に供給さ
れる導入ガスとしては、酸素、フッ素および炭素からな
る群より選ばれた少なくとも一種の元素を含むガスであ
ることが好ましく、例えば酸素ガス(O2 )、炭酸ガス
(CO2 )、水蒸気(H2 O)、四フッ化炭素ガス(C
4)などを単独でもしくは混合して用いることができ
る。また、必要に応じて異なる種類のガスを混合して用
いてもよく、更に、アルゴンガス(Ar)、窒素ガス
(N2 )などの不活性ガスを混合してもよい。特に、酸
素元素を含むガスを供給する場合には、アルゴンなどの
不活性ガスとの混合状態で供給することが好ましい。こ
れにより、イオン源2のフィラメント寿命が酸素ガスを
単独で供給する場合に比べて2〜3倍に延び、例えば連
続して50時間程度の照射が可能となる。この場合におい
て、酸素ガスとアルゴンガスの混合比は、容量比で
2 :Ar=8:2〜3:7であることが好ましい。
【0030】導入ガスの流量は、真空装置1内における
真空度が 0.8×10-4〜4×10-4Torrを維持するように設
定することが好ましい。
【0031】イオン源2へ供給された導入ガスは、イオ
ン源2においてイオン化される。ここで、イオン源2の
加速電圧は、基材Aの表面のチャージアップを防止し、
表面へのイオン照射を均一化させる観点から低い方が好
ましく、具体的には 200V以下であることが好ましい。
ここに例えば、導入ガスとして酸素ガスを流量30SCCMで
供給し、真空度が2〜3×10-4Torrの状態において、イ
オン源2の加速電圧を 200Vを超える値に設定してイオ
ン照射またはプラズマ照射を行うと、形成される表面層
が均一な特性のものとならず、反射率で±0.5 %の不均
一性を生じ、光学素子として使用上問題となる。加速電
圧を 200V以下の値に設定することにより、形成される
表面層の均一性が維持され、特定波長の反射率は 0.1%
以下となり、光学素子として使用上の問題は生じない。
【0032】イオン源2からのイオン電流は、照射時間
の短縮化、照射の均一化の観点から大きい方が好まし
く、具体的には、基材表面におけるイオン電流密度が50
μA/cm2 以上であることが好ましい。ここに例えば、
加速電圧を 150Vに設定し、イオン電流密度を50μA/
cm2 未満とすると、1時間の照射によっても十分な表面
層が形成されず、斯かる表面層では反射率の低下が平均
0.5%未満に止まり、光学素子として実用上不十分であ
る。イオン電流密度を50μA/cm2 以上とすることによ
り、約20分間の照射で反射率の低下が平均1〜2%の表
面層が形成され、実用上十分な反射防止性能が得られ
る。
【0033】イオン源2から発生したイオンビームは、
ホルダー3に支持されている基材Aに照射される。イオ
ンビームの照射は連続的に行うことが効率的であるが、
イオン源2のフィラメントからの放射熱によって真空装
置1内の温度が上昇し、これにより光学素子の形状精度
やイオン照射効果などに影響を及ぼす場合には間欠的に
照射を行ってもよい。照射時間はイオン電流の設定値に
よっても異なるが、所望の反射防止性能が得られる範囲
で自由に設定することができる。但し、実質的に反射防
止性能を得るためには少なくとも1分間程度の照射が必
要となる。
【0034】これら一連の処理を行うことにより、通常
の蒸着処理やスパッタコート処理などの手段を用いるこ
となく、良好な反射防止性能および増反射防止性能を有
する光学素子を得ることができる。
【0035】なお、イオン照射中において、イオンビー
ムの照射強度、イオン電流、イオン源の加速電圧、導入
ガスの流量などの処理条件を適宜変更することによっ
て、不均質な表面層を形成させることもできる。ここに
例えば、イオンまたはプラズマの加速電圧が 200V以
下、イオン電流密度が50μA/cm2 以上の低電圧高電流
の条件で照射すると、基材の表面には不均質な表面層が
形成されやすい。上記の低電圧高電流条件で照射処理
後、照射された元素イオンの濃度を表面分析(ESCA
分析)により測定したところ、表面付近が最も高濃度
で、内部へいくほど低濃度となる不均質性が顕著にみら
れた。不均質な表面層が形成されてなる光学素子は、広
い光波長領域において反射防止性能が得られ、更に、均
質な表面層では得られない光学特性が発現される点で好
ましい。
【0036】<第2の発明>本発明のうち第2の発明
は、上記第1の発明を構成する表面層上に、更に1層ま
たは複数層からなる表面被覆層が形成されてなる光学素
子である。
【0037】第2の発明において、光学素子を構成する
表面被覆層は、少なくとも一種の低屈折率層または低屈
折率層と高屈折率層との積層体からなることが好まし
い。
【0038】表面被覆層が、少なくとも一種の低屈折率
層からなる場合には、更に優れた反射防止性能および増
反射防止性能を光学素子に付与することができる。ここ
に、低屈折率層を形成する好ましい低屈折率物質として
は、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、酸化アルミニ
ウムなどを挙げることができる。
【0039】表面被覆層が、低屈折率層と高屈折率層と
の積層体からなる場合には、更に優れた反射防止性能お
よび増反射防止性能を光学素子に付与することができ、
また低屈折率層および高屈折率層を構成する物質を適宜
選定することにより、ビームスプリッター性能、反射ミ
ラー性能、透明導電性能、バンドパスフィルターやダイ
クロイックフィルターなどの波長分離性能を光学素子に
付与することができる。また、形成された表面被覆層
は、基材との密着性が良好で剥離やクラックが発生しに
くく、従って斯かる光学素子は良好な耐久性を有するも
のとなる。ここに、低屈折率層を形成する好ましい低屈
折率物質としては、酸化シリコン、フッ化マグネシウ
ム、酸化アルミニウムなどを挙げることができ、高屈折
率層を形成する好ましい高屈折率物質としては、酸化チ
タン、酸化ジルコニウムと酸化チタンの混合物、酸化チ
タンと酸化プラセオジウムの混合物、硫化亜鉛、酸化セ
リウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化ス
ズ、酸化インジウムと酸化スズの混合物および酸化スズ
とアンチモンの混合物などを挙げることができる。
【0040】低屈折率物質および高屈折率物質の特に好
ましい組み合わせ、並びに斯かる組合せによって発現さ
れる光学特性を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】表1中、Iは反射防止性能および増反射性
能、IIはビームスプリッター性能、III は透明導電性
能、IVはバンドパスフィルターやダイクロイックフィル
ターなどの波長分離性能を示す。
【0043】表1からも理解されるように、表面被覆層
を構成する層のうち、表面層の直上に形成される層が、
金属酸化物、酸化シリコン、フッ化マグネシウムからな
ることが好ましい。
【0044】表面被覆層は、蒸着処理、スパッタコート
処理のいずれの手段によっても形成することができる
が、光学素子の精度を保つという観点からは蒸着処理に
よって形成することが好ましい。
【0045】蒸着処理は、表面層形成工程が終了した
後、図1に示した真空装置内で行うことができる。この
場合において、蒸着処理はイオンビームの照射を停止し
てから行ってもよいし、イオンビームの照射を継続しな
がら行ってもよい。イオンビームの照射を継続しながら
蒸着処理を行う場合には、蒸着材料に応じて導入ガスの
種類や流量、イオン源の加速電圧、イオン電流を適宜変
更しながら行ってもよい。なお、蒸着材料として酸化シ
リコンを用いる場合には酸素元素を含むガスを供給しな
がら蒸着処理を行うことが好ましく、蒸着材料としてフ
ッ化マグネシウムを用いる場合には酸素元素および/ま
たはフッ素元素を含むガスを供給しながら蒸着処理を行
うことが好ましい。斯かるガスの存在下で蒸着処理を行
うことにより、ガスがイオン化されているか否かに関わ
らず、表面被覆層の膜質を向上させることができる。
【0046】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、本発明
はこれらに限定されるものではない。
【0047】(実施例1)ポリメチルメタアクリレート
樹脂(以下「PMMA樹脂」という)製の基板を、図1
に示した真空装置1内に複数配置した。真空装置1の内
部にはイオン源2として「MarkII」(米国コモンウ
ェルス社製)が配置されており、イオン源2には、導入
ガス供給源4からガス流量調節弁5、流量計6を通って
導入ガスが供給される。
【0048】真空度が1×10-5Torrになるまで真空装置
1内を排気した後、流量30SCCMで酸素ガスをイオン源2
に供給した。更に、イオン源2のカソード電圧(イオン
源の加速電圧)を 120V、アノード電流を2Aに設定し
てイオンビームを発生させ、ホルダー3に支持されてい
る基板の表面にイオンビームを10分間照射して本発明の
光学素子を得た。イオン照射を停止し、光学素子を取り
出したところ、その表面はややアンバー色を呈してい
た。分光光度計で反射率を測定したところ、図2に示す
ような反射率特性が得られた。なお、同図において破線
はイオン照射処理を行わなかった基板における反射率特
性を示したものである。図2の結果から、本実施例の光
学素子は、可視光の全領域において、照射処理を行わな
かった基板よりも低い反射率特性を示していることが理
解される。
【0049】(実施例2)アノード電流を 1.5Aに設定
したこと以外は実施例1と同様にしてイオンビームを発
生させ、ホルダー3に支持されている基板の表面にイオ
ンビームを照射した。3分間経過後、イオン照射を継続
したまま、真空装置1内に配置された電子銃7により蒸
着処理を開始した。蒸着材料としては酸化シリコン(S
iO2 )を用い、蒸着速度を 0.5nm/秒とし、水晶振動
子膜厚計8の表示が 100nmに達したところで蒸着処理を
停止して本発明の光学素子を得た。光学素子を取り出
し、分光光度計で反射率を測定したところ、図3に示す
ような反射率特性が得られた。図3の結果から、本実施
例の光学素子は非常に優れた反射防止性能を示している
ことが理解される。また、非晶質ポリオレフィン樹脂
(例えば日本合成ゴム社製商品名「ARTON」)製の
基板を用いた場合も実施例2と同等の効果が得られた。
【0050】(実施例3)PMMA樹脂製の基板に代え
て、非晶質ポリオレフィン樹脂(日本合成ゴム社製)よ
りなる基板を真空装置内に複数配置した。真空度が1×
10-5Torrになるまで真空装置1内を排気した後、流量30
SCCMで四フッ化炭素ガス(CF4 )をイオン源2に供給
した。更に、イオン源2のカソード電圧を 130V、アノ
ード電流を2Aに設定してイオンビームを発生させ、ホ
ルダー3に支持されている基板の表面にイオンビームを
照射した。3分間経過後、イオン照射を継続したまま、
真空装置1内に配置された電子銃7により蒸着処理を開
始した。蒸着材料としてはフッ化マグネシウムを用い、
蒸着速度を 0.6nm/秒とし、水晶振動子膜厚計8の表示
が 110nmに達したところで蒸着処理を停止して本発明の
光学素子を得た。光学素子を取り出し、分光光度計で反
射率を測定したところ、図4に示すような反射率特性が
得られた。図4の結果から、本実施例の光学素子は非常
に優れた反射防止性能を示していることが理解される。
【0051】(比較例)PMMA樹脂製の基板を、図1
に示した真空装置内に複数配置した。真空度が1×10-5
Torrになるまで真空装置1内を排気した後、流量30SCCM
で酸素ガスを供給しながら真空装置1内の電子銃7によ
り蒸着処理を行った。蒸着材料としては酸化シリコンを
用い、蒸着速度を 0.5nm/秒とし、水晶振動子膜厚計8
の表示が 125nmに達したところで蒸着処理を停止して光
学素子を得た。光学素子を取り出し、分光光度計で反射
率を測定したところ、図5に示すような反射率特性が得
られた。
【0052】上記実施例1〜3および比較例により得ら
れた光学素子の各々について、テープテストによる付着
力の評価、並びに高温乾燥保存テスト(60℃×3時間)
によるクラックの発生の有無を調べたところ、表2に示
すように、本実施例の光学素子はいずれも良好な性能を
示した。
【0053】
【表2】
【0054】
【発明の効果】第1の発明の光学素子は、優れた反射防
止性能および増反射防止性能を有し、レーザ光学素子な
どの高精度の光学系に対応可能である。しかも、表面層
は、基材の表面上に直接無機物が積層されたものでな
く、プラズマ照射またはイオン照射により基材の表面が
改質されて形成された改質層であるので、基材との密着
性が良好で、熱膨張率の差に起因する膜剥離やクラック
が発生しにくく良好な耐久性を有する。
【0055】第2の発明の光学素子は、更に優れた反射
防止性能および増反射防止性能を有するとともに、表面
被覆層を構成する物質を適宜選定することにより、ビー
ムスプリッター性能、反射ミラー性能、透明導電性能、
バンドパスフィルターやダイクロイックフィルターなど
の波長分離性能等の光学特性を発現することができる。
しかも、表面被覆層は、表面層を介して基材との密着性
が良好で、熱膨張率の差に起因する膜剥離やクラックが
発生しにくく良好な耐久性を有する。
【0056】本発明の光学素子の製造方法によれば、通
常の蒸着処理やスパッタコート処理などの手段を用いる
ことなく、良好な反射防止性能および増反射防止性能を
有する光学素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】真空装置の概略を示す説明図である。
【図2】実施例1の反射率特性曲線である。
【図3】実施例2の反射率特性曲線である。
【図4】実施例3の反射率特性曲線である。
【図5】比較例の反射率特性曲線である。
【符号の説明】
1 真空装置 2 イオン源 3 ホルダー 4 導入ガス供給源 5 ガス流量調節弁 6 流量計 7 電子銃 8 水晶振動子膜厚

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高分子樹脂製の基材と、この基材の表面
    に形成された前記基材とは異なる光学特性を有する表面
    層とよりなり、 前記表面層は、プラズマ照射またはイオン照射により基
    材の表面が改質されて形成された改質層であることを特
    徴とする光学素子。
  2. 【請求項2】 表面層の屈折率が基材の屈折率とは異な
    ることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 【請求項3】 表面層が不均質な屈折率特性を有するこ
    とを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記
    載の光学素子。
  4. 【請求項4】 基材の表面に照射されたプラズマまたは
    イオンは、酸素、フッ素および炭素からなる群より選ば
    れた少なくとも一種の元素を含む導入ガスがイオン源に
    供給されて発生したものであることを特徴とする請求項
    1〜3のいずれかに記載の光学素子。
  5. 【請求項5】 高分子樹脂製の基材と、この基材の表面
    に形成された前記基材とは異なる光学特性を有する表面
    層と、この表面層上に形成された1層または複数層から
    なる表面被覆層とよりなり、 前記表面層は、プラズマ照射またはイオン照射により基
    材の表面が改質されて形成された改質層であることを特
    徴とする光学素子。
  6. 【請求項6】 表面層の屈折率が基材の屈折率とは異な
    ることを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
  7. 【請求項7】 表面層が不均質な屈折率特性を有するこ
    とを特徴とする請求項5または請求項6のいずれかに記
    載の光学素子。
  8. 【請求項8】 基材の表面に照射されたプラズマまたは
    イオンは、酸素、フッ素および炭素からなる群より選ば
    れた少なくとも一種の元素を含む導入ガスがイオン源に
    供給されて発生したものであることを特徴とする請求項
    5〜7のいずれかに記載の光学素子。
  9. 【請求項9】 表面被覆層の一部または全部は、酸素、
    フッ素および炭素からなる群より選ばれた少なくとも一
    種の元素を含むプラズマ化またはイオン化されたガス雰
    囲気下で形成されたことを特徴とする請求項5〜8のい
    ずれかに記載の光学素子。
  10. 【請求項10】 表面被覆層が、少なくとも一種の低屈
    折率層からなることを特徴とする請求項5〜9のいずれ
    かに記載の光学素子。
  11. 【請求項11】 低屈折率層を形成する低屈折率物質
    が、酸化シリコン、フッ化マグネシウムおよび酸化アル
    ミニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合
    物であることを特徴とする請求項10に記載の光学素
    子。
  12. 【請求項12】 表面被覆層が、低屈折率層と高屈折率
    層との積層体からなることを特徴とする請求項5〜9の
    いずれかに記載の光学素子。
  13. 【請求項13】 低屈折率層を形成する低屈折率物質
    が、酸化シリコン、フッ化マグネシウムおよび酸化アル
    ミニウムからなる群より選ばれた少なくとも一種の化合
    物であり、高屈折率層を形成する高屈折率物質が、酸化
    チタン、酸化ジルコニウムと酸化チタンの混合物、酸化
    チタンと酸化プラセオジウムの混合物、硫化亜鉛、酸化
    セリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化ス
    ズ、酸化インジウムと酸化スズの混合物および酸化スズ
    とアンチモンの混合物からなる群より選ばれた少なくと
    も一種の化合物またはこれらの混合物であることを特徴
    とする請求項12に記載の光学素子。
  14. 【請求項14】 請求項5〜13のいずれかの光学素子
    を製造する方法であって、 イオン源を具えてなる真空装置内に高分子樹脂製の基材
    を配置し、酸素、フッ素および炭素からなる群より選ば
    れた少なくとも一種の元素を含む導入ガスをイオン源に
    供給し、イオン源から発生する前記元素を含むプラズマ
    またはイオンビームを前記基材の表面に照射して表面層
    を形成する表面層形成工程と、 プラズマまたはイオンビームの照射を停止し、あるいは
    照射を継続しながら、蒸着処理またはスパッタコート処
    理を行うことにより、表面層上に表面被覆層を形成する
    表面被覆層形成工程とを含んでなり、 前記各工程におけるイオン源の加速電圧が 200V以下で
    あることを特徴とする光学素子の製造方法。
  15. 【請求項15】 各工程におけるイオン源からの基材表
    面でのイオン電流密度が50μA/cm2 以上であることを
    特徴とする請求項14に記載の光学素子の製造方法。
  16. 【請求項16】 プラズマまたはイオンビームを基材の
    表面に照射するときにおける真空装置内の真空度が、
    0.8×10-4〜4×10-4Torrであることを特徴とする請求
    項14または請求項15に記載の光学素子の製造方法。
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