JP2003094468A - 光学用ポリカーボネートフイルム及びその製造法 - Google Patents

光学用ポリカーボネートフイルム及びその製造法

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JP2003094468A
JP2003094468A JP2001293124A JP2001293124A JP2003094468A JP 2003094468 A JP2003094468 A JP 2003094468A JP 2001293124 A JP2001293124 A JP 2001293124A JP 2001293124 A JP2001293124 A JP 2001293124A JP 2003094468 A JP2003094468 A JP 2003094468A
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casting
anisotropy
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Yoshiyuki Namita
快之 波多
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 TFT型や階調表示のFSTN型のように高
コントラストを実現した液晶表示装置の高コントラスト
特性を実質的に損なうことなく、かつ生産性に優れた光
学用フイルムを提供する。 【解決手段】 流延法又は溶融押出法で製造されるポリ
カーボネートフイルムをその製造工程の途中でフイルム
面に磁界をかけたり、製造後のフイルムに温度と磁界を
かけることによってフィルム異方性を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、光学用途に用いら
れるフイルムであって、保護フィルム、特に液晶表示装
置に用いられる偏光子用保護フィルム、位相差フイルム
用支持体等として有用に使用される光学用フィルム及び
その製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、需要が拡大している液晶表示装置
には偏光フィルムが使用されている。偏光フィルムは、
ポリビニルアルコールにヨウ素、二色性染料を吸着、配
向させたものを偏光素子とし、この偏光素子を保護フィ
ルムで被覆したものである。この保護フィルムに用いる
素材としては、複屈折が小さい、すなわち光学的異方性
の小さい素材であることが望ましい。このため、光学的
異方性の小さいセルローストリアセテート、ポリエステ
ル、ポリカーボネート等のフィルムが用いられてきた。
特に、溶液流延法により製膜した酢酸セルロースエステ
ルフイルム、ポリカーボネートフィルムは、平面性に優
れる薄膜を形成できることから、多く用いられてきた。
【0003】溶液流延法、溶融押し出し法により製膜し
たポリカーボネートフィルムは、芳香族基を含むポリマ
ーからなっているために、透明性、耐熱性は高いが、僅
かな配向により屈折率異方性が生じ、光学的異方性の点
で、溶液流延法の酢酸セルロースエステルフイルムに較
べ劣り、光学的等方性を要求される用途に用いることが
難しい。
【0004】溶融押し出し法で製膜のポリカーボネート
フィルムは、平面性に優れるが、溶融フイルムを冷却ド
ラムに接触させて冷却、固化する過程でフイルム長手方
向に配向が生じるため、この寄与による正面レターデー
ション値(RMT)及び厚み方向レターデーション値(R
TH)が大きくなる。また溶液流延法による製膜のポリカ
ーボネートフィルムは、平面性に優れるが、乾燥過程で
フィルム厚み方向に素材の面配向が生じるため、この寄
与による厚み方向レターデーション値(RTH)が大きく
なる。これら正面レターデーション値(RMT)及び厚み
方向レターデーション値(RTH)が大きくなると、高コ
ントラストを実現した液晶表示装置の視覚特性に影響を
与え、無視することが出来なくなる。溶融押し出し法の
場合、ポリカーボネート溶融樹脂がダイスより長手方向
に押し出されて、冷却、固化の過程で、長手方向に配向
するからである。生産性をあげるために、溶融押し出し
法のポリカーボネートフイルムの製膜ラインスピードを
上げようとすると、より一層長手方向に配向する。溶液
流延法の場合、乾燥過程で、フィルムの長手および幅手
方向に収縮しようとして収縮応力が発生し、素材の面配
向が生じるため、これらの影響を少しでも排除しよう
と、収縮応力を打ち消すべく、長手方向に引き取り張力
をかけ、幅手方向は両端を把持して収縮しないよう工夫
している。また生産性をあげるために、溶液流延法のポ
リカーボネートフイルムの製膜ラインスピードを上げよ
うとすると、乾燥時間を短縮せねばならず、例えば、乾
燥温度を上げて、溶媒の蒸発スピードを上げる必要があ
る。溶媒の蒸発スピードを上げると、平面性が損なわれ
ると同時に、乾燥過程でフィルム厚み方向に、著しく素
材の面配向を生じるため、この寄与による厚み方向レタ
ーデーション値(RTH)が大きくなる。
【0005】一方、液晶セルの高コントラストを実質的
に損なうことなく適用できる偏光フイルム及び楕円偏光
フイルムが求められている。この目的を達成するために
は、溶液流延法の乾燥過程で、極力収縮応力のかからな
いよう、ゆっくりと乾燥する事が行われている。又、溶
融押し出し法の冷却、固化の過程で、長手方向に配向し
ないよう、長手方向の引き取り張力を抑えて巻き取る事
が行われている。これら溶液流延法、溶融押し出し法の
製膜スピードを上げることによって、縦、横両方向に発
生する応力で面配向するので、これら配向をキャンセル
するような物理的力を外部より付与してやれば良いとも
考えられ、更には、製膜されたポリカーボネートフイル
ムに外部からレターデーション値(RTH)を低下するよ
う処理することも考えられるが、ポリカーボネートフイ
ルムではその制御が容易でなく、製造適性も充分とはい
えない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、TF
T型や階調表示のFSTN型のように高コントラストを
実現した液晶表示装置の高コントラスト特性を実質的に
損なうことなく、かつ生産性に優れた光学用フイルム、
およびその製造法を提供することにある。
【0007】
〔nMDは長手方向に平行な方向でのフィルム屈折率、nTDは長手方向に垂直な方向でのフィルム屈折率、nTHは厚み方向でのフィルム屈折率、dはフィルム厚み(nm)である。従って、流延法の場合、nMDは流延方向に平行な方向でのフィルム屈折率を、nTDは流延方向に垂直な方向でのフィルム屈折率を、溶融押し出し法の場合、nMDは押し出し方向に平行な方向でのフィルム屈折率、nTDは押し出し方向に垂直な方向でのフィルム屈折率を表す。〕
(6)偏光素子と該偏光素子の少なくとも一方が(1)
から(4)項に記載のフィルム異方性を制御する製造法
を用いた光学用フィルムとからなることを特徴とする偏
光フィルム。 (7)偏光素子と該偏光素子の少なくとも一方が(5)
項に記載の光学用フィルムとからなることを特徴とする
偏光フィルム。 (8)前記(7)項に記載の偏光フイルムと位相差フイ
ルムとを積層してなることを特徴とする楕円偏光フイル
ム。
【0008】まず、本発明のポリカーボネートフイルム
に関連して、下記(式1)で示されるレターデーション
値(RTH)について説明する。 RTH={(nMD+nTD)/2−nTH}×d (式1) 〔nMDは長手方向に平行な方向でのフィルム屈折率、n
TDは長手方向に垂直な方向でのフィルム屈折率、nTHは
厚み方向でのフィルム屈折率、dはフィルム厚み(n
m)である。従って、流延法の場合、nMDは流延方向に
平行な方向でのフィルム屈折率を、nTDは流延方向に垂
直な方向でのフィルム屈折率を、溶融押し出し法の場
合、nMDは押し出し方向に平行な方向でのフィルム屈折
率、nTDは押し出し方向に垂直な方向でのフィルム屈折
率を表す。〕 一般に、光学的に一軸異方性をもった物質に光が入射す
ると、位相速度の異なる互いに直交する直線偏光が伝搬
するため、2つの屈折光が現れる。このような現象を複
屈折といい、複屈折の大きさは、光学軸に平行な方向で
の屈折率(np)と光学軸に垂直な方向での屈折率(nv
)との差によるので、 Δn=np −nv (式2) を複屈折という。この複屈折(Δn)と厚み(d)の
積、 Re=Δn×d (式3) をレターデーション値(Re)といい、物質の光学異方
性を表す指標として用いられる。
【0009】一般に、フイルムのレターデーション値と
しては、図1に示すようにフイルム面に対して垂直方向
から測定した場合のフイルム面内で直交する2つの屈折
率の差の絶対値(以下「正面複屈折」という。)に基づ
いて下記(式4)のように表される。以下、これを正面
レターデーション値(RMT)という。 RMT=|nMD−nTD|xd (式4) ポリカーボネートフイルムは、この正面レターデーショ
ン値が極めて低いものとして知られ、液晶表示装置に用
いる偏光板保護フイルムとしての需要が大きい。しかし
ながら、液晶表示装置の偏光板としての用途の場合、液
晶表示装置の表示面に垂直な方向での光学異方性のみな
らず、表示面に対して任意の角度における光学異方性を
も考慮する必要がある。この場合、フイルム面内で直交
する2つの屈折率(nMD、nTD)に加えてフイルム面に
垂直な方向の屈折率(nTH)の寄与も考慮する必要があ
る。このため、フイルムの光学異方性は(式1)に示す
レターデーション値(RTH:以下「厚み方向レターデー
ション」という。)を考慮する必要がある。
【0010】ところで、式(1)から、レターデーショ
ン値(RTH)は、 RTH=|{(nMD+nTD)/2−nTH}|×d (式1) 〔nMDは長手方向に平行な方向でのフィルム屈折率、n
TDは長手方向に垂直な方向でのフィルム屈折率、nTHは
厚み方向でのフィルム屈折率、dはフィルム厚み(n
m)である。〕と定義され、レターデーション値(RT
H)を小さくするには、屈折率項の|{(nMD+nTD)
/2−nTH}|とフイルム厚みdの両者を共に小さくす
る必要がある。ポリカーボネートフイルムの機械的強度
を保持するには、フイルム厚みを厚くして強度を稼ぐ必
要があり、フイルムの薄膜化に自ずから限界がある。従
って、レターデーション値(RTH)を小さくするには、
屈折率項の|{(nMD+nTD)/2−nTH}|を極力小
さく、すなわち出来るだけ光学異方性の少ないフイルム
とする必要がある。先に述べたように、生産性をあげる
ために、フイルム製膜ラインスピードを上げると、流延
法の場合、乾燥時間を短縮せねばならず、例えば、溶媒
量を減らして、高濃度ドープキャストで乾燥時間を短縮
するとか、乾燥温度を上げて、溶媒の蒸発スピードを上
げ、乾燥時間を短縮する必要がある。溶媒の蒸発スピー
ドを上げると、平面性が損なわれると同時に、乾燥過程
でフィルム厚み方向に、著しく素材の面配向を生じて、
厚み方向レターデーション値(RTH)が大きくなって、
液晶セルの高コントラスト性能を損なう。溶融押し出し
法の場合、溶融フイルムの冷却、固化の過程で、ポリカ
ーボネート溶融樹脂がダイスより長手方向に押し出され
て、より一層長手方向に配向し、正面レターデーション
値(RMT)が大きくなると同時に、厚み方向レターデー
ション値(RTH)も大きくなる。以上のことから、フイ
ルム製造ラインのスピードアップによる生産性向上と、
レターデーション値(RMT,RTH)を極力小さくして制
御することとは二律相反し、同時に達成することは難し
い。
【0011】本発明は、ポリカーボネートフイルムを製
膜して、光学異方性の少ない光学用フイルム及びその製
造法を提供する事を目的とし、フィルム異方性を適宜制
御することを特徴とする光学用フイルム及びその製造法
を提供しようとするものである。すなわち、ポリカーボ
ネートドープ溶液の流延以降の固化、剥離、乾燥の製造
工程で、フイルム面に、0.01T(テスラ)以上の磁
束密度をかけて、フィルム異方性を制御するか、ポリカ
ーボネート樹脂の溶融押出し以降の冷却、固化、巻き取
りの製造工程で、フイルム面に、0.01T(テスラ)
以上の磁束密度をかけて、フィルム異方性を制御する
か、或いは、光学異方性を有するポリカーボネートフイ
ルム面に磁界をかけながら加熱処理して、光学異方性の
制御されたポリカーボネートからなる光学用フイルム及
びその製造法を提供しようとするものである。図2に示
す通り、一般に溶液流延法による製膜では、乾燥過程で
溶媒が除かれるにつれフイルムの厚みは流延当初の1/
5〜1/10となり、フイルム厚み方向に直交するポリ
マーの配向が進んで厚み方向の屈折率(nTH)が小さく
なり、結果として厚み方向のレターデーション値(RT
H)は大きくなる。レターデーション値(RTH)は、溶
媒により異なるが、通常の製造法で作製された市販のセ
ルローストリアセテートフイルムのレターデーション値
(RTH)は60〜150nm、ポリカーボネートフイル
ムは220nmもある。これに対し、本発明の製造法で
作製のポリカーボネートフイルムは、(1)流延法の冷
却固化、剥離、乾燥の過程で、フイルム面に磁界をかけ
て、フィルム異方性を適宜制御できる。(2)溶融押出
し以降の溶融フイルムの冷却、固化、剥離、巻き取りの
過程で、フイルム面に磁界をかけて、フィルム異方性を
適宜制御できる。(3)ポリカーボネートフイルムのフ
イルム面に、磁界をかけながら、加熱処理してフィルム
異方性を適宜制御する事が出来る。すなわち、本発明の
製造法を用いて、製膜したポリカーボネートフイルムの
レターデーション値(RTH)を適宜制御でき、その絶対
値が0〜50nmと、光学異方性の極めて少ない光学用
フイルムを提供することも出来る。しかも、(式4)に
示す正面レターデーション値と(式1)に示す厚み方向
レターデーション値との差の絶対値が0〜50nmとフ
イルム全体としても光学異方性が少ない光学用フイルム
を提供するものである。本発明の主たる目的は、「ポリ
カーボネートフイルムのフィルム異方性を適宜制御す
る」ものであるが、上記(1)、(2)、(3)を実施
すると、同時にポリカーボネートフイルムをロール状に
巻き取った時に、巻癖がつきにくく、巻癖改良効果の大
きいポリカーボネートフイルムが得られる。
【0012】本発明で用いるポリカーボネートは、特に
限定されるものではなく、主としてビスフェノールがカ
ーボネート結合に結合されている芳香族系ポリカーボネ
ートの総称でその製造法は特には限定されないが、一般
にはホスゲン法あるいはジフェニルカーボネート法によ
り製造される。用いられるビスフェノールとしてはビス
フェノールAが代表的である。また、ビスフェノールA
に対して共重合比5〜30mol%でパーヒドロイソホ
ロン骨格からなるビスフェノール成分を共重合させたポ
リカーボネート。さらに、ビスフェノールAに対して共
重合比5〜30mol%でフルオレン骨格からなるビス
フェノール成分を共重合させた芳香族ポリカーボネート
である。
【0013】これらのポリカーボネートの平均分子量は
30,000以上である。30,000未満であるとフ
イルムの力学的強度が弱く好ましくない。また分子量の
上限は約100,000である。これ以上になると溶液
が高粘度になりすぎて製膜性が著しく損なわれるので好
ましくない。
【0014】本発明のポリカーボネート樹脂には必要に
応じて例えばトリフェニルフォスファイト、トリス(ノ
ニルフェニル)フォスファイト、ジステアリルペンタエ
リスリトールジフォスファイト、ジフェニルハイドロジ
ェンフォスファイト、イルガノックス1076[ステア
リル−β−(3,5−ジ−tertーブチル−4−ヒド
ロキシフェニル)プロピオネート]等のような安定剤、
例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニ
ル)ベンゾトリアゾール2−(2’−ヒドロキシ−
3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾト
リアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキ
シフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4
−オクトキシベンゾフェノン等のような耐候剤、着色
剤、帯電防止剤、離型剤、滑剤等の添加剤をフイルムの
透明性を損なわない範囲で加えてもよい。
【0015】本発明のポリカーボネートフイルムの厚み
は、光学補償フイルム製造プロセスや他の位相差板や液
晶セルとの貼り合わせ工程におけるハンドリング性やレ
ターデーション値を考慮すると、50〜150μmの範
囲が好ましい。
【0016】本発明におけるフィルム異方性を制御する
光学用フイルムの製造法について、実施態様に沿って説
明するが、必ずしも以下の記載に限定されるものではな
い。
【0017】(1)第1のフィルム異方性を制御する光
学用フイルムの製造法は、ポリカーボネートを溶解して
かつ低沸点の、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタ
ン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン等
のハロゲン系溶媒、1,3−ジオキソラン、1,4−ジ
オキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶
媒、アニソール等の芳香族エーテル系溶媒、シクロヘキ
サノン等のケトン系溶媒等を用いて溶解し、さらに、該
ポリカーボネートと安定剤、耐候剤、着色剤、帯電防止
剤、離型剤、滑剤等の固形分とを合わせた溶液濃度は、
ポリカーボネートの分子量にも依存するが、10〜35
重量%、好ましくは12〜30重量%の範囲になるよう
に調製して用いられる。濃度がこの上限を越えると、溶
液の安定性が落ちたり、溶液粘度が高くなり過ぎて、均
一製膜が困難になるため好ましくない。また下限を下回
ると、流延工程で外部擾乱による影響を受けやすく、そ
のために表面均一性が低下して好ましくない。調製した
ポリカーボネート溶液は、流延機より鏡面状態に仕上げ
た流延用支持体、例えば、ドラムまたはバンド上に押出
し、固化して後、流延用支持体から剥離、乾燥して、ポ
リカーボネートフイルムを成形し、流延以降の固化、剥
離、乾燥の製造工程で、フイルム面に、0.01T(テ
スラ)以上の磁束密度をかけて、フィルム異方性を制御
する方法である。
【0018】フイルム面にかける磁界の強さは、乾燥処
理する温度、時間に依存し特に限定されないが、磁束密
度の大きさが最大40T(テスラ)程度で、好ましく
は、0.01〜30T(テスラ)、更に好ましくは、
0.02〜30T(テスラ)、最も好ましくは、0.1
〜20T(テスラ)の磁場をかけながら、30秒〜30
分間程度、固化、剥離、乾燥の製造工程を通過させるこ
とで、異方性を制御する方法である。磁場をかけながら
製造工程を通過させる時間は、乾燥温度、印加する磁束
密度に依存するが、30秒以上30分間以下が好まし
い。製造工程を通過させる時間、すなわち、磁場をかけ
ながら加熱乾燥する時間は、30分間を越えて、その目
的を達成する事は可能であるが、30分間程度でその効
果が収斂し、30分を越えて2時間程度まで加熱乾燥処
理してもあまり効果がない。磁界の印加は、流延以降の
固化、剥離、乾燥の製造工程のどこでかけても良い。す
なわち、全工程で印加しても良いし、工程の一部で印加
しても良い。その組み合わせは自由であるが、固化しな
い内にかけ、剥離する直前まで磁界を印加するのが好ま
しい。磁界を印加する方向は、磁力線が支持体面に垂直
であっても良いし、斜めでも、また、水平であっても良
いが、磁界を印加した結果として、ポリカーボネートフ
イルムの異方性を、適宜目的とする範囲内に制御出来る
ように調整することは言うまでもない。ポリカーボネー
トフイルムを成形する流延法において、その製造の容易
さから磁界を印加する方向は、磁力線が支持体面に垂直
であることが良い。
【0019】このような、ソルベントキャスト法におけ
る流延および乾燥方法については、米国特許23363
10号、同2367603号、同2492078号、同
2492977号、同2492978号、同26077
04号、同2739069号、同2739070号、英
国特許640731号、同736892号各明細書、特
公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭6
0−176834号、同62−115035号各公報に
セルローストリアセテートフイルムについて詳細に記載
されている。
【0020】(2)第2のフィルム異方性を制御する光
学用フイルムの製造法は、ポリカーボネート溶融樹脂
を、通常の押出し法製膜設備、すなわち単軸または双軸
押出し機よりコートハンガー型ダイを経由して、フイル
ム状に冷却ドラム上に押出し、冷却ドラム(熱媒により
温度調節が可能)、引取りロールを経て巻取機(巻取張
力調整可能)で巻き取るポリカーボネートフイルム溶融
押出し製膜法において、押出し以降の冷却、固化、冷却
ドラム上よりの剥離、巻き取りの製造工程で、フイルム
面に、0.01T(テスラ)以上の磁束密度をかけて、
フィルム異方性、特にポリカーボネートフイルムの厚み
方向レターデーション値(RTH)を制御することを特徴
とする光学用フイルムの製造法である。
【0021】押出し製膜法によりプラスチックフイルム
を製造する場合、光学的歪みが発生する機構は完全に解
明されているわけではないが、一般に、次の(a)〜
(c)の因子が複雑に絡み合い分子が配向した結果とし
て発現するものと考えられている。すなわち;(a)製
膜ダイ内で流動する溶融樹脂が流れ方向(本発明でいう
長手方向)の剪断応力をうけ、分子が長手方向に配向す
る。(b)ダイと冷却ドラムとの間で溶融フイルムが長
手方向のドラフトと張力の影響を受け、分子が長手方向
に配向する。(c)冷却ドラムに接触した溶融フイルム
が冷却ドラムにて冷却固化する際に熱収縮が生じるが、
収縮が拘束されると拘束された方向に収縮応力が発生
し、これに応じて分子が配向する。
【0022】本発明のフィルム異方性を制御したポリカ
ーボネートフイルムを得るには、厚み方向レターデーシ
ョン値(RTH)を制御する必要がある。先にも述べたよ
うに、厚み方向レターデーション値(RTH)を制御する
には、屈折率項の|{(nMD+nTD)/2−nTH}|を
同時に制御する必要がある。最も理想的な例は、nMD、
nTD、nTHを限りなくゼロに近づけた厚み方向レターデ
ーション値(RTH)がゼロの無配向フイルムである。か
かるポリカーボネートフイルムを得るには、例えば巻取
機の張力を調整して長手方向の張力を可能な限り低めに
設定するとか、それに加えて例えば、フイルム状に押出
された『溶融フイルム』が冷却ドラムに接触し固化する
際に、このフイルムに幅手方向の張力を発生させること
及び/又は幅手方向にフイルムを拘束して発生する幅手
方向の熱収縮応力を十分フィルム面に作用させるといっ
た方法がある。
【0023】溶融フイルムを冷却ドラムに接触させて、
冷却、固化して幅手方向の配向を制御する方法に、次の
(i)〜(v)の方法がある。すなわち;(i)静電ワ
イヤーにより冷却過程のフイルム両端部に静電気を荷電
させることにより、フイルム両端部を冷却ドラムに密着
させる方法。(ii)エアーナイフ(銅製等金属製のパイ
プの先端をスリット状に加工し、先端部から圧空を吹き
付ける)にて冷却過程のフイルム両端部にエアーを吹き
付けることにより、フイルム両端部を冷却ドラムに密着
させる方法。(iii)エアーナイフにてフイルムが幅手
方向に伸長し、かつ冷却ドラムに密着するよう冷却過程
のフイルム両端部にフイルム面に垂直よりやや外側に向
けてエアーを吹き付ける方法。(iv)押えロール(内部に
冷媒を循環出来る機構を有した金属製またはゴム製ロー
ル等)にて冷却過程のフイルム両端部を冷却ドラムに圧
着させる方法。(v)エアーナイフと静電ワイヤーを併
用して冷却過程のフイルムを冷却、固化する方法であ
る。しかしながら、上述の方法をフィルム面に作用させ
て、ある程度目的は達成できるが、猶目標に程遠く、不
十分である。
【0024】本発明は、ポリカーボネートフイルムの溶
融押出し製膜法において、押出し以降の冷却ドラムでの
冷却、固化、剥離、及び巻き取りの製造工程で、フイル
ム面に、0.01T(テスラ)以上の磁束密度をかけ
て、フィルム異方性を制御することを特徴とする光学用
フイルムの製造法である。
【0025】フイルム面にかける磁界の強さは、処理す
る温度、時間に依存し特に限定されないが、磁束密度の
大きさが最大40T(テスラ)程度で、好ましくは、
0.01〜30T(テスラ)、更に好ましくは、0.0
2〜30T(テスラ)、最も好ましくは、0.1〜20
T(テスラ)の磁場をかけながら、3秒〜3分間程度、
冷却、固化、剥離、乾燥の製造工程を通過させること
で、異方性を制御する方法である。磁界の印加は、溶融
押出し以降の冷却、固化、冷却ドラム上よりの剥離、巻
き取りの製造工程のどこでかけても良い。すなわち、全
工程で印加しても良いし、工程の一部で印加しても良
い。その組み合わせは自由であるが、溶融フイルムが固
化しない内に磁界をかけるのが好ましく、溶融押し出し
以降、冷却ドラムに接触して剥離するまでの間、磁界を
印可するのが好ましい。磁界を印加する方向は、磁力線
が支持体面に垂直であっても良いし、斜めでも、また、
水平であっても良いが、磁界を印加した結果として、ポ
リカーボネートフイルムの異方性を、適宜目的とする範
囲内に制御出来るように調整することは言うまでもな
い。ポリカーボネートフイルムを成形する溶融押し出し
法において、その製造の容易さから磁界を印加する方向
は、磁力線が支持体面に垂直であることが良い。
【0026】本発明のポリカーボネートフイルムは、通
常の巻取機で製品としてそのまま巻き取ることが可能で
あるが、フイルムの表面保護や巻取性向上等の目的でマ
スキングフイルムを挿入して巻き取ったり、フイルム両
端にエンボス加工を施しながら巻き取ることが欠点のな
い製品が得られ易いので好ましい。
【0027】(3)第3のフィルム異方性を制御する光
学用フイルムの製造法は、ポリカーボネートフイルム
を、(Tg−30℃)からTgの温度範囲で、フイルム
面に、0.01T(テスラ)以上の磁束密度をかけなが
ら、30分以上加熱処理してフィルム異方性を制御する
事を特徴とする光学用フイルム製造方法である。(ここ
で、Tgは、ポリカーボネートフイルムのガラス転移温
度(℃)を表す)
【0028】フイルム面にかける磁界の強さは、加熱処
理する温度、時間に依存し特に限定されないが、磁束密
度の大きさが最大40T(テスラ)程度で、好ましく
は、0.01〜30T(テスラ)、更に好ましくは、
0.02〜30T(テスラ)、最も好ましくは、0.1
〜20T(テスラ)の磁場をかけながら、30分以上加
熱処理して、異方性を制御する方法である。加熱処理時
間は、加熱処理温度、印加する磁束密度に依存するが、
30分以上500時間以下が好ましい。加熱処理時間
は、500時間を越えて加熱して、その目的を達成する
事は可能であるが、工業レベルでの加熱処理時間は、5
00時間でその効果が収斂し、500時間を越えて加熱
処理してもあまり効果がない。ポリカーボネートフイル
ムのロールに磁界をかけながら加熱処理する場合は、磁
力線がロール支持体面の各部に、任意の角度で印加され
るので、フィルム各部のフイルム異方性を同レベルに制
御することは難しく、好ましくない。
【0029】磁界を印加しながら製造する方法は、ポリ
カーボネートフイルムをロールより巻き出し、搬送しな
がら、熱をかけて、磁界をフイルム面に印加して製造し
ても良いし、枚葉を静置した状態、又は移動させなが
ら、熱をかけて、フイルム面に磁界を印加して製造する
ことも出来る。フイルム面に磁界を印加する方向は、磁
力線が支持体面に垂直であっても良いし、斜めでも、ま
た、水平であっても良いが、磁界を印加した結果とし
て、ポリカーボネートフイルムの異方性を、適宜目的と
する範囲内に制御出来るように調整する。
【0030】これら請求項1〜請求項4に記載の光学用
フイルムの製造法を用いて、下記(式1)で定義するレ
ターデーション値(RTH)が 0nm<RTH≦50nm
の範囲にあるポリカーボネートからなる光学用フイル
ムが得られる。 RTH=|{(nMD+nTD)/2−nTH}|×d (式1) 〔nMDは長手方向に平行な方向でのフィルム屈折率、n
TDは長手方向に垂直な方向でのフィルム屈折率、nTHは
厚み方向でのフィルム屈折率、dはフィルム厚み(n
m)である。〕 厚み方向レターデーション値(RTH)が(式1)の範囲
にあるポリカーボネートフイルムは、液晶表示装置の偏
光板用途で、液晶セルの高コントラスト性能に極めて優
れた性能を発揮する。
【0031】磁場発生の手段としては、ソレノイドコイ
ルに代表されるコイル等の外、永久磁石等であってもよ
い。また、間欠的に磁場を発生する手段(パルス磁場手
段)であってもよい。
【0032】本発明における該ポリカーボネートフイル
ムからなる支持体を規定する物性値の評価方法を以下に
記す。
【0033】ポリカーボネートフイルムのガラス転移温
度(Tg)は、差動走査熱量計(DSC)を用い、試料
フイルム10mgを、窒素気流中で10℃/分で昇温し
ていったとき、ベースラインから偏奇しはじめる温度と
新たなベースラインに戻る温度の算術平均、もしくはT
gに吸熱ピークが現れる時は、この吸熱ピークの最大値
を示す温度をTg(℃)として定義する。
【0034】
【実施例】以下に、本発明を実施例を挙げて説明する
が、これに限定されるものではない。 (実施例1〜5、比較例1〜2)ホスゲンとビスフェノ
ールAの縮合によって得られた分子量3.8万のポリカ
ーボネートをメチレンクロライドに溶解し20%の溶液
とした。これをステンレスバンド上に均一に流延し、フ
イルム面に垂直に、表1に記載の磁束密度[単位:T
(テスラ)]をステンレスバンド上から剥離が可能にな
るまで、記載の時間(処理時間)かけながら、溶媒を蒸
発させ、ステンレスバンド上から連続的に剥離した。そ
の後、多数のロール間を20℃で搬送させながら、14
0℃に設定したピンテンターによりフイルム巾方向の両
側を把持し、乾燥を終了させ膜厚80μmのフィルムを
得た。フイルムの搬送においてはメチレンクロライドの
急激な蒸発による収縮を抑え、収縮応力による分子配向
を抑えるためフイルムがピンテンターオーブン内にある
時には巾方向が常時たるんでおり、いわゆる懸垂線を描
くようにレール幅を調整した。このレール幅の縮小率は
3.5%であった。得られたポリカーボネートフイルム
のガラス転移温度(Tg)は、158℃であった。
【0035】このフイルムのRe値(RMT)を測定した
ところフイルム幅方向で2〜9nmの間で変動してい
た。
【0036】表1に、実施例、比較例に基づいて製膜し
たフイルムのレターデーション値を示す。ここで、比較
例1は、磁界をかけない以外は、実施例1−5、比較例
2と全く同じ製膜条件である。なお、RMTは、フイルム
正面レターデーション値、RTHは、フイルム厚み方向の
レターデーション値をそれぞれ示す。レターデーション
値は、エリプソメーター(島津製作所のAEP−10
0)により測定した。フイルム厚み方向のレターデーシ
ョン値はレターデーション値の角度依存性の測定値から
計算によりnTHを求めることにより決定した。
【0037】
【表1】
【0038】得られたポリカーボネートフィルムを打ち
抜きして二枚のフィルムを作製し、これらの片面にポリ
ウレタン系接着剤を塗布して、ポリビニルアルコールと
二色性染料とからなる偏光素子(30μm)の両面に接
着することにより偏光フィルムを作製した。
【0039】以上の方法で得られた偏光フィルムは、磁
束密度を0.01T(テスラ)以上をかけて流延法で製
膜したポリカーボネートフィルムを使用しており、正面
レターデーション(RMT)値が2〜9nmの範囲にあ
り、その厚み方向のレターデーション(RTH)値は、い
ずれも50nm以下で、その数値が小さいもの程、|R
MT−RTH|値も小さくなる傾向(0〜45nm)にあ
り、光学的異方性に優れた光学用フイルムが得られた。
偏光フィルムとした時、値の小さいものほど、液晶セル
の高コントラスト性能の良好な偏光フイルムが得られ
た。
【0040】(実施例6〜10、比較例3〜4)帝人化
成(株)製ポリカーボネート樹脂(パンライト(商標
名)K−1285、分子量=28,000、DSC法に
よるガラス転移温度(Tg)=145℃)を、充填塔型
乾燥機にて乾燥温度130℃で、乾燥時間5時間乾燥し
たものを原料とし、単軸押出機より、樹脂温度280
℃、樹脂押出し量100Kg/hr.で、Tダイより押し出
し、フイルム状に押出されたポリカーボネート溶融フイ
ルムが冷却ドラムに接触し固化する過程のフイルム両端
部に、エアーナイフ(銅製パイプの先端をスリット状に
加工したものの内部から圧空を吹き付ける装置)と静電
ワイヤー(印加電圧=14kV;印加有効長さ=45m
m)を併用してフイルムを幅手方向に伸長させつつフイ
ルムの両端部を冷却ドラムに密着させ、しかる後冷却ド
ラムより剥離する方法を用いて、製膜速度7.0m/min.
で、1200mm幅の製品フイルムを引取りロール系を
経て巻取機(張力調整可能)で巻き取り、膜厚125μ
mのポリカーボネートフイルムを製造した。なお、フイ
ルム状に押出されたポリカーボネート溶融フイルムが冷
却ドラムに接触し、固化、剥離するまでの間、フイルム
面に垂直に、表2に記載の磁束密度[単位:T(テス
ラ)]を、記載の時間(処理時間)かけた。
【0041】このフイルムのRe値を測定したところフ
イルム幅方向で2〜9nmの間で変動していた。
【0042】表2に、実施例、比較例に基づいて製膜し
たフイルムのレターデーション値を示す。ここで、比較
例3は、磁界をかけない以外は、実施例6−10、比較
例4と全く同じに製膜したものである。なお、、RMT
は、フイルム正面レターデーション値、RTHは、フイル
ム厚み方向のレターデーション値をそれぞれ示す。レタ
ーデーション値は、エリプソメーター(島津製作所のA
EP−100)により測定した。フイルム厚み方向のレ
ターデーション値はレターデーション値の角度依存性の
測定値から計算によりnTHを求めることにより決定し
た。
【0043】
【表2】
【0044】表2から明らかなように、実施例6〜10
のポリカーボネートフイルムは光学特性が良好で、製品
幅が1m以上のフイルムを安定的に製造することができ
た。なお、冷却ドラムの温度は、原料ポリカーボネート
樹脂のTg−0〜−40℃の範囲、特にTg−5〜−3
0℃の範囲に設定すると、フイルムサンプルの屈折率主
軸がより狭い範囲で幅手方向に揃ったプラスチックフイ
ルムが得られた。これに対して、磁界をかけない以外
は、実施例6−10、比較例4と全く同じようにに製膜
した比較例3は、正面レターデーション(RMT)値が約
10nm程度と大きく、その厚み方向のレターデーショ
ン(RTH)値も、220nm程度と大きく、|RMT−R
TH|値も210程度と大きく、光学的異方性に劣る光学
用フイルムが得られた。た。
【0045】得られたポリカーボネートフィルムを打ち
抜きして二枚のフィルムを作製し、これらの片面にポリ
ウレタン系接着剤を塗布して、ポリビニルアルコールと
二色性染料とからなる偏光素子(30μm)の両面に接
着することにより偏光フィルムを作製した。
【0046】以上の方法で得られた偏光フィルムは、磁
束密度を0.01T(テスラ)以上をかけて溶融押出し
法で製膜したポリカーボネートフィルムを使用してお
り、正面レターデーション(RMT)値が3〜6nmの範
囲にあり、その厚み方向のレターデーション(RTH)値
は、いずれも7〜50nmの範囲にあり、その数値が小
さいもの程、|RMT−RTH|値も小さく、光学的異方性
に優れた光学用フイルムが得られた。偏光フィルムとし
た時、値の小さいものほど、液晶セルの高コントラスト
性能の良好な偏光フイルムが得られた。
【0047】(実施例11〜15、比較例1、5〜7)
先に得られた比較例1のサンプルを、空気オーブン中で
縦、横両方向を拘束して、ポリカーボネートフイルム面
に垂直に、すなわち、厚み方向に、磁束密度7.0T
(テスラ)の磁界をかけながら、表3に記載の加熱処理
温度、処理時間をかけて処理した。すなわち、実施例1
1〜15,比較例5,7は、厚み方向に垂直に磁界をか
けながら、比較例6は磁界をかけずに、ガラス転移温度
で加熱処理した。ここで、比較例1のポリカーボネート
フィルムのガラス転移温度(Tg)が158℃であった
ので、実施例11〜14、比較例5〜6は、ガラス転移
温度(Tg)で、実施例15は、(Tg−30)℃で、
比較例7は、(Tg−35)℃で、加熱処理した。
【0048】表3に、実施例、比較例に基づいて製膜し
たポリカーボネートフィルムフイルムの、フイルム正面
レターデーション測定値(RMT)及びフイルム厚み方向
レターデーション測定値(RTH)を示す。
【0049】
【表3】
【0050】得られたポリカーボネートフィルムを打ち
抜きして二枚のフィルムを作製し、これらの片面にポリ
ウレタン系接着剤を塗布して、ポリビニルアルコールと
二色性染料とからなる偏光素子(30μm)の両面に接
着することにより偏光フィルムを作製した。
【0051】表3に記載の結果を取り纏めると、磁束密
度を7.0T(テスラ)かけながら、(Tg−30)℃
からTg℃の加熱処理温度範囲で、処理時間を30分〜
500時間かけたポリカーボネートフィルムは、その厚
み方向のレターデーション(RTH)が、いずれも50n
m以下で、その数値が小さいもの程、|RMT−RTH|値
も小さくなる傾向にあり、光学的異方性に優れた光学用
フイルムが得られた。偏光フィルムとした時、|RMT−
RTH|値の小さいものほど、液晶セルの高コントラスト
性能の良好な偏光フイルムが得られた。
【0052】(実施例16〜20、比較例1、8)先に
得られた比較例1のサンプルを、空気オーブン中で縦、
横両方向を拘束して、フイルム面に垂直に、すなわち厚
み方向に磁束密度を変えて磁界をかけながら、表4に記
載のガラス転移温度以下の加熱処理温度で、処理時間を
変えて処理した。ここで、比較例1のポリカーボネート
フィルムのガラス転移温度(Tg)が158℃であった
ので、実施例16〜20は、(Tg−15)℃、すなわ
ち143℃の加熱処理温度で、30分〜500時間処理
した。比較例8は、磁束密度0.005T(テスラ)の
磁界をかけながら、(Tg−15)℃、すなわち143
℃の加熱処理温度で、30分間加熱処理したものであ
る。
【0053】表4に、実施例、比較例に基づいて製膜し
たポリカーボネートフイルムのフイルム正面レターデー
ション測定値(RMT)及びフイルム厚み方向レターデー
ション測定値(RTH)を示す。
【0054】
【表4】
【0055】得られたポリカーボネートフィルムを打ち
抜きして二枚のフィルムを作製し、これらの片面にポリ
ウレタン系接着剤を塗布して、ポリビニルアルコールと
二色性染料とからなる偏光素子(30μm)の両面に接
着することにより偏光フィルムを作製した。
【0056】この結果を取り纏めると、Tg℃以下の
(Tg−15)℃、すなわち143℃の加熱処理温度
で、0.01〜5.0T(テスラ)の磁束密度範囲で、
処理時間30分〜500時間かけたポリカーボネートフ
ィルムは、その厚み方向のレターデーション(RTH)値
が、いずれも50nm以下で、その数値が小さいもの
程、|RMT−RTH|値も小さくなる傾向(0〜10n
m)にあり、光学的異方性に優れた光学用フイルムが得
られた。偏光フィルムとした時、|RMT−RTH|値の小
さいものほど、液晶セルの高コントラスト性能の良好な
偏光フイルムが得られた。
【0057】実施例21〜23,比較例1,9 先に得られた比較例1のサンプルを、空気オーブン中で
縦、横両方向を拘束して、ポリカーボネートフィルム
面、すなわち、厚み方向に磁束密度5.0T(テスラ)
の磁界をかけながら、表5に記載の加熱処理温度、処理
時間を変えて処理した。ここで、比較例1のポリカーボ
ネートフィルムのガラス転移温度(Tg)が158℃で
あったので、(Tg−30)℃からTg℃の温度範囲、
すなわち、128℃から158℃の範囲で、5.0T
(テスラ)の磁場をかけながら、30分から500時間
加熱処理した。
【0058】表5に、実施例、比較例に基づいて製膜し
たポリカーボネートフイルムのフイルム正面レターデー
ション測定値(RMT)及びフイルム厚み方向レターデー
ション測定値(RTH)を示す。
【0059】
【表5】
【0060】得られたポリカーボネートフィルムを打ち
抜きして二枚のフィルムを作製し、これらの片面にポリ
ウレタン系接着剤を塗布して、ポリビニルアルコールと
二色性染料とからなる偏光素子(30μm)の両面に接
着することにより偏光フィルムを作製した。
【0061】この結果を取り纏めると、(Tg−30)
℃からTg℃の温度範囲、すなわち、128℃から15
8℃の範囲で、5.0T(テスラ)の磁場をかけなが
ら、30分から500時間加熱処理したポリカーボネー
トフィルムは、その厚み方向のレターデーション(RT
H)値が、いずれも50nm以下で、その数値が小さい
もの程、|RMT−RTH|値も小さくなる傾向(0〜33
nm)にあり、光学的異方性に優れた光学用フイルムが
得られた。偏光フィルムとした時、|RMT−RTH|値の
小さいものほど、液晶セルの高コントラスト性能の良好
な偏光フイルムが得られた。
【0062】
【発明の効果】本発明のポリカーボネートフィルムの製
造法により、厚み方向の複屈折(RTH)が小さい光学的
異方性が極めて少ない光学用フイルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フイルムの屈折率相互の関係とフイルム厚みと
を示す図である。
【図2】溶液流延法による乾燥工程によるフイルム厚み
の変化とそれに伴うポリマーの面配向の変化を模式的に
示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G02F 1/1335 510 G02F 1/1335 510 1/13363 1/13363 // B29K 69:00 B29K 69:00 B29L 7:00 B29L 7:00 C08L 69:00 C08L 69:00 Fターム(参考) 2H049 BA02 BA04 BA06 BB03 BB27 BC06 BC09 BC22 2H090 JB03 JB12 JB13 LA06 LA09 2H091 FA08X FA08Z FA11X FA11Z FB02 KA01 KA02 LA16 4F071 AA50 AF29 AF31Y AG13 AG28 AG29 AG34 AH19 BA02 BB02 BC01 4F205 AA28 AG01 AM29 AR20 GA07 GB02 GC07 GN21 GN24 GN29

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリカーボネートドープ溶液を、流延機よ
    り流延用支持体上に押出し、固化して後、流延用支持体
    から剥離、乾燥して巻き取る、ポリカーボネートフイル
    ム流延製膜法において、流延以降の固化、剥離、乾燥の
    製造工程で、フイルム面に、0.01T(テスラ)以上
    の磁束密度をかけて、フィルム異方性を制御することを
    特徴とする光学用フイルムの製造法。
  2. 【請求項2】ポリカーボネート溶融樹脂を、押出し機よ
    りフイルム状に冷却ドラム上に押出し、冷却、固化して
    後、冷却ドラムから剥離して巻き取る、ポリカーボネー
    トフイルム溶融押出し製膜法において、押出し以降の冷
    却、固化、剥離、巻き取りの製造工程で、フイルム面
    に、0.01T(テスラ)以上の磁束密度をかけて、フ
    ィルム異方性を制御することを特徴とする光学用フイル
    ムの製造法。
  3. 【請求項3】ポリカーボネートフイルムを、(Tg−3
    0℃)からTgの温度範囲で、フイルム面に、0.01
    T(テスラ)以上の磁束密度をかけながら、30分以上
    加熱処理してフィルム異方性を制御することを特徴とす
    る光学用フイルムの製造法。(ここで、Tgは、ポリカ
    ーボネートフイルムのガラス転移温度(℃)を表す)
  4. 【請求項4】加熱処理時間が30分以上500時間以下
    である請求項3に記載のフィルム異方性を制御すること
    を特徴とする光学用フイルムの製造法。
  5. 【請求項5】請求項1〜請求項4に記載の光学用フイル
    ムの製造法を用いたことを特徴とする、下記(式1)で
    定義するレターデーション値(RTH)が 0nm<RTH
    ≦50nm の範囲にあるポリカーボネートからなる光
    学用フイルム。 RTH=|{(nMD+nTD)/2−nTH}|×d (式1) 〔nMDは長手方向に平行な方向でのフィルム屈折率、n
    TDは長手方向に垂直な方向でのフィルム屈折率、nTHは
    厚み方向でのフィルム屈折率、dはフィルム厚み(n
    m)である。従って、流延法の場合、nMDは流延方向に
    平行な方向でのフィルム屈折率を、nTDは流延方向に垂
    直な方向でのフィルム屈折率を、溶融押し出し法の場
    合、nMDは押し出し方向に平行な方向でのフィルム屈折
    率、nTDは押し出し方向に垂直な方向でのフィルム屈折
    率を表す。〕
  6. 【請求項6】偏光素子と該偏光素子の少なくとも一方が
    請求項1から請求項4に記載のフィルム異方性を制御す
    る製造法を用いた光学用フィルムとからなることを特徴
    とする偏光フィルム。
  7. 【請求項7】偏光素子と該偏光素子の少なくとも一方が
    請求項5に記載の光学用フィルムとからなることを特徴
    とする偏光フィルム。
  8. 【請求項8】請求項7に記載の偏光フイルムと位相差フ
    イルムとを積層してなることを特徴とする楕円偏光フイ
    ルム。
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