JP2003081241A - アルミニウム製絞り缶およびその製造方法 - Google Patents
アルミニウム製絞り缶およびその製造方法Info
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Abstract
性内分泌撹乱化学物質の溶出が無く、耐食性が良く、し
かも印刷外観が美麗で高級感ある良好なアルミニウム製
絞り缶を提供することにある。 【解決手段】 絞り比が、最終缶体の絞り比として1.
5〜2.5の範囲内であり、缶内面側には厚みが10〜
30μm、X線回折による測定で2θが22〜28°に
検出されるピークの内、最も高いピークの強度が500
cps〜5000cpsの範囲にある配向結晶化され
た、極限粘度(IV)が0.55以上の熱可塑性ポリエ
ステル樹脂フィルムが被覆されており、缶外面側にはア
ルミニウム側から熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層
/印刷インキ層/クリアーコート層の構成の多層有機被
膜が被覆されていることを特徴とするアルミニウム製絞
り缶およびその製造方法。
Description
脂で被覆されたアルミニウム合金板に対して1回もしく
は複数回の絞り加工を施すことによって得られる絞り缶
および深絞り缶とその製造方法に関するものである。
板やアルミニウム合金板に対してプレスによる一回もし
くは複数回の絞り成形加工を施すことによって得られる
絞り缶は、主に魚肉、獣肉、穀物やペットフード等が充
填される、いわゆる食缶用途として広く使用されてい
る。こうした金属板からの絞り缶では、金属缶の缶内面
に当たる面には耐食性を確保するための塗装が施され、
また缶外面に当たる面にも塗装・印刷が施された塗装
板、いわゆるプレコート材から、直接プレスによる絞り
成形加工を行い絞り缶を得ている場合が多い。
形加工を行う場合、缶の内外面の塗膜の損傷や外面の印
刷絵柄の歪みや外観性の低下の問題等から、余り絞り比
の高い高加工度のものは行われていないのが現状で、高
加工度の缶(縦横比が1:1以上の缶)の場合は金属板
を直接成形加工した後、内面塗装や外面塗装・印刷を行
うのが一般的である。
刷を施した塗装板から得る絞り缶の場合、缶の外面印刷
は、当然最終缶体の加工歪みを考慮した印刷図柄を予め
作成し(絞り成形板用図柄の作成;例えば、特公平7−
73943号公報参照)、その印刷図柄に基づいて作成
した刷板により金属板に歪み印刷を施すことにより行わ
れ、塗装印刷金属板はその後、絞り成形加工に供され
る。
チやコンプレッション、また成形加工時の微細な損傷は
避けられず、印刷外観は例えば、スリーピース缶のよう
に缶胴部を円筒状に成形するだけの缶や、絞りしごき缶
(Drawn&Ironed:DI缶)のように成形加
工後に内外面に塗装や印刷をするといった缶に比べ、劣
るといった欠点がある。
うに絞り缶は魚肉、獣肉、穀物やペットフード等といっ
たものが充填されるため、時には高濃度の食塩を含む場
合があり、内容物の腐食性は厳しいものがある。
缶は前述したように予め塗装されたプレコート材を成形
加工して得るため、加工性の良い塗料が使用されている
が、こうした塗料は、逆に今話題となっている外因性内
分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)問題の心配もある塗
料が多いことが最近分かってきている。
金属板への塗装から熱可塑性樹脂フィルムをラミネート
した材料の実用化が目立つようになってきており、多く
の提案がなされている。例えば、特開平2−26352
3号公報、特開平3−133523号公報、特開平4−
237524号公報等はツーピース缶を対象としたもの
で、特開平5−112361号公報、特開平5−111
979号公報、特開平5−31868号公報等はスリー
ピース缶を対象としたものである。
開昭61−149341号公報、特開平3−87249
号公報、特開平4−344231号公報等には、樹脂フ
ィルムと金属板の間に接着用有機樹脂組成物を介在させ
たラミネート材が提案されている。
開昭48−61584号公報、特開昭52−65579
号公報、特開昭54−141886号公報には、成形後
の缶蓋又は缶体被覆樹脂フィルムの応力解消のために、
缶蓋又は缶体に後加熱処理を施すことが記載されてい
る。更にまた、特開昭51−63787号公報、特開平
3−226319号公報では、成形後の缶体を潤滑剤の
揮発温度以上に加熱し、潤滑剤を除去すると同時に、併
せて成形加工後の被覆樹脂フィルムの歪み緩和をする方
法が提案されている。
金属板から成形した缶の場合、前述した外因性内分泌撹
乱化学物質(環境ホルモン)問題は、樹脂成分を適正に
選定することで、ほとんど心配ないと考えられている
が、前述した先行技術の多くは基本的には飲料缶用途を
対象としたもので、食缶を対象としたものではない。こ
うした状況の下、食缶分野においても、低コストで内容
物への外因性内分泌撹乱化学物質の溶出が無く、耐食性
の良い、しかも印刷外観の美麗な缶体の出現が強く望ま
れていた。
な、食缶を対象に内容物への外因性内分泌撹乱化学物質
の溶出が無く、耐食性が良く、しかも印刷外観が美麗で
高級感ある良好なアルミニウム製絞り缶を提供すること
を課題としたものである。
両面に熱可塑性樹脂被膜を施したアルミニウム合金板に
対してプレス成形加工による一段絞り加工または多段絞
り加工を施すことによって得られる絞り缶又は深絞り缶
において、該絞り缶の絞り比が、最終缶体の絞り比とし
て1.5〜2.5の範囲にあり、缶内面側には厚みが1
0〜30μm,X線回折による測定で2θが22°〜2
8°に検出されるピークの内最も高いピークの強度が5
00cps〜5000cpsの範囲にある配向結晶化さ
れた、極限粘度(IV)が0.55以上の熱可塑性ポリ
エステル樹脂フィルムが被覆されており、缶外面側には
金属側から熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層/印刷
インキ層/クリアーコート層の構成の多層有機被膜が被
覆されていることを特徴とするアルミニウム製絞り缶で
ある。
脂被覆を施したアルミニウム合金板に対してプレス成形
加工による一段絞り加工または多段絞り加工によって得
られる絞り缶又は深絞り缶の製造方法において、缶内面
側と成る面には厚みが10〜30μm,X線回折による
測定で2θが22°〜28°に検出されるピークの内最
も高いピークの強度が500cps〜5000cpsの
範囲にある配向結晶化された極限粘度(IV)が0.5
5以上の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムが被覆され
ており、缶外面側と成る面には金属側から熱可塑性ポリ
エステル樹脂フィルム層/印刷インキ層/クリアーコー
ト層の構成の多層有機被膜が被覆されたアルミニウム合
金板を最終缶体の絞り比として1.5〜2.5の範囲に
一回もしくは複数回の絞り成形加工を行った後、更に該
絞り缶を180℃〜220℃の温度で20秒〜120秒
間の範囲で後加熱することを特徴とするアルミニウム製
絞り缶の製造方法である。
されている前記熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムが、
融点(Tm)が200℃以上で厚みが3〜15μmの熱
可塑性ポリエステル樹脂フィルム層(A)と、融点が2
10℃以上で厚みが5〜15μmの熱可塑性ポリエステ
ル樹脂フィルム層(B)との総厚みが10〜30μmの
二層フィルムであり、該二層フィルムの低融点側の熱可
塑性ポリエステル樹脂フィルム層(A)が金属と接する
ように被覆されているアルミニウム製絞り缶およびその
製造方法である。
脂フィルムが被覆されたアルミニウム製絞り缶は、缶の
内外面側共に被覆された熱可塑性樹脂フィルムは高密着
性を示すと共に、高食塩濃度の内容物を充填しても高耐
食性を示し、更に缶の外面側には印刷インキが熱可塑性
樹脂フィルムの上に施されているため、美麗な印刷外観
が得られる。また前述した外因性内分泌撹乱化学物質
(環境ホルモン)問題はなく、安全で安心して食するこ
とが出来る内容物の保持性に優れた缶体が得られる。
について詳細に説明する。まず、本発明に適用される金
属板について説明する。本発明では表面処理が施され
た、厚みが0.20mm〜0.25mmのアルミニウム
合金版が好適に使用される。アルミニウム合金板の厚み
は、内容物充填後に行われるレトルト加熱殺菌工程で缶
の変形が起こらない厚さである。
用されている3004系アルミ合金、5052系アルミ
合金、5182系アルミ合金、5T50系アルミ合金等
に、クロム量として5〜80mg/m2付着させたリン
酸クロム酸処理、ジルコニウム量として7〜17mg/
m2付着させたリン酸ジルコニウム処理等の化成処理が
施されたものが適用される。更に、またアルミニウム合
金板の場合、硫化黒変といった現象はないため、フィル
ムとの密着性を重視した化成処理として、リン酸または
リン酸ジルコニウムとフェノール樹脂やアクリル樹脂等
の有機樹脂からなる処理液から得られる有機無機複合化
成処理皮膜が特に有効である。
リン(P)と有機樹脂のみ含有する有機無機複合化成処
理の場合は、皮膜の付着量としては片面のリン(P)付
着量として2〜7mg/m2、有機樹脂は皮膜炭素
(C)付着量として5〜50mg/m2が最適である。
機無機複合化成処理皮膜の場合も、付着量は片面のリン
(P)付着量として2〜7mg/m2,皮膜炭素(C)
付着量として5〜50mg/m2、ジルコニウム付着量
として5〜20mg/m2の付着量が最適である。
エステル樹脂フィルムについて説明する。本発明のよう
な絞り缶の場合、充填される内容物は前述したように主
に魚肉、獣肉、穀物やペットフード等で、内容物充填
後、調理と殺菌を兼ねてレトルト加熱殺菌処理が行わ
れ、このレトルト加熱殺菌処理は最も厳しい場合は11
3℃で100分間とか、125℃で60分間とかの様な
高温且つ高圧の蒸気によるレトルト加熱殺菌処理を行う
ことから、この処理に耐えるためには、少なくとも13
0℃以上の耐熱性を有する熱可塑性樹脂フィルムが必要
であり、熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムは最適であ
る。
リエステル樹脂フィルムとしてはテレフタル酸、イソフ
タル酸、アジピン酸、セバシン酸等の酸成分と、エチレ
ングリコール、ブチレングリコール等のアルコール成分
からなるポリエステル樹脂で、例えば、ポリエチレンテ
レフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート
(PBT)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)の
ようなホモポリマーや、例えばポリエチレンテレフタレ
ートとポリエチレンイソフタレートとの共重合樹脂であ
るエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体、
ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレ
ートとの共重合樹脂であるポリブチレンテレフタレート
/イソフタレート共重合体等のコポリマー、更には、こ
うしたホモポリマー同士のブレンド樹脂、ホモポリマー
とコポリマーとのブレンド樹脂、コポリマー同士のブレ
ンド樹脂、等から得られるフィルムが適用される。
も、前述したレトルト加熱殺菌処理に耐え、内容物の保
護性からは、特に配向結晶化した二軸延伸ポリエステル
樹脂フィルムが最適である。
なる面には印刷・塗装が施されるが、印刷インキやクリ
アー塗料用樹脂として広く使用されている熱硬化性樹脂
塗料の硬化温度は、通常の場合、170〜180℃であ
り、最も高い温度でも200℃程度である。又、乾燥時
間としては長くて10〜12分間であるが、こうした外
面の印刷・塗装工程で内面側の熱可塑性ポリエステル樹
脂フィルムが軟化しないこと、更には絞り缶成形加工後
の缶体の後加熱条件である180℃〜210℃の温度で
20秒〜120秒間で内外面側の熱可塑性ポリエステル
樹脂フィルムが軟化しないことが必須となる。
フィルムの融点(Tm)は、200℃以上である。熱可
塑性ポリエステル樹脂フィルムの融点(Tm)が200
℃未満の場合は、缶の外面側となる面の印刷・塗装の乾
燥工程や缶体の後加熱処理工程での温度変動や設備上の
バラツキを考慮すると安全性が低下し、時には軟化し内
面側のフィルムに欠陥を発生させる危険性があり好まし
くない。かかる意味において熱可塑性ポリエステル樹脂
フィルムの融点(Tm)は200℃以上としたものであ
るが、好ましくは210℃以上である。
缶体の後加熱工程での温度で熱可塑性ポリエステル樹脂
フィルムの軟化するのを抑える方法としては、熱可塑性
樹脂フィルムを二重構造にし、金属板と接する側の熱可
塑性樹脂フィルムとその上層の熱可塑性樹脂フィルムと
の融点(Tm)差を持たせた樹脂フィルム(前者が低融
点で後者が高融点)の使用は有効である。更に、二層フ
ィルムにすることでラミネート時の熱で破壊される配向
結晶を最小限に抑えることができ、耐食性のより優れた
絞り缶が得られる。
側に被覆されている熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム
は、アルミニウム板と接する接着層フィルムをして融点
(Tm)が200℃以上の熱可塑性ポリエステル樹脂
(低融点のポリエステル樹脂)フィルム層(A)と、そ
の上層フィルムとして融点が210℃以上の高融点の熱
可塑性ポリエステル樹脂(高融点のポリエステル樹脂)
フィルム層(B)との二層フィルムも好適に使用され
る。
層フィルムとの融点(Tm)差が大きいと、接着層フィ
ルムと上層フィルムとの密着性が劣って行く方向にあ
り、前述した缶の外面側となる面の印刷・塗装の乾燥工
程や缶体の後加熱工程での温度で、上層フィルムの収縮
が起こる場合があるため、接着層フィルムと上層フィル
ムの融点(Tm)差は大きくとも25℃以下、出来れば
20℃以下にすることが好ましい。
(Tm)は示差走査熱量計(DSC)で、10℃/分の
昇温速度で測定したときの結晶融解吸熱ピークの最大値
を示す温度である。
酸成分とアルコール成分の選定、コーポリマーの程度、
ブレンドする樹脂組成をその配合比、等適宜選定するこ
とで得ることができる。
脂フィルムは極限粘度(IV)が0.55以上のものが
好適である。極限粘度(IV)は樹脂の平均分子量を示
す指標であるが、極限粘度が0.55未満では樹脂フィ
ルムの耐衝撃強度が小さく、絞り缶成形加工の際に形成
される、缶体のレトルト加熱殺菌処理時の膨張を最小限
に抑えるための缶底部の突起リング(エクスパンション
リング)部のフィルムにクラックが入ったり、また、内
容物が充填された缶体を落とした場合、その部位に衝撃
が加わり材料が変形するばかりでなく、同時にその衝撃
と変形で樹脂フィルムにクラックが入り、激しい場合は
そこが缶体金属の腐食起点となる。内容物充填後の缶体
の落下に対する特性を耐デント性と呼ぶが、腐食の激し
い内容物の場合、穿孔缶となることもあり、耐デント性
が劣ることは、重大な問題となる要因を有しており好ま
しくない。
る現象は、基本的には樹脂フィルムの耐衝撃強度の問題
であり、耐衝撃強度は極限粘度が高い程良好である。こ
の極限粘度は0.55以上であれば前述した接着剤層と
の相互効果により多くの場合実用上問題のない品質が確
保されるが、腐食性の強い内容物に対しては高い方が安
心であり、好ましくは0.58以上が良い。
ムが二層フィルムの場合は、接着層フィルムと上層フィ
ルムとが一体となっている状態で測定した値が0.55
以上であれば良い。
樹脂フィルムの極限粘度(IV)は、ウペローデ粘度計
でフェノールとテトラクロロエタンの重量比6:4の溶
液に熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムを0.100±
0.003g溶解し、30.0±0.1℃で測定した値
である。
ムは厚みが10〜30μmである。フィルム厚みは基本
的には缶の耐食性および内容物充填後に行われるレトル
ト加熱殺菌処理時に起こるフィルム剥離(デラミ)の点
から限定したものである。
肉、獣肉、穀物やペットフード等といったものが充填さ
れるが、こうした内容物の中には醤油や食塩で味付けさ
れた、いわゆる含塩食品が多く、アルミニウムに対し高
腐食性の内容物となっている。更に、魚肉、獣肉、穀物
やペットフード等の内容物を充填した場合、レトルト加
熱殺菌処理は、例えば厳しい場合は135℃で30分と
か125℃で50分といった条件で行われ、熱可塑性樹
脂ではその樹脂のガラス転移温度によって多少異なる
が、いずれの樹脂フィルムにとっても物質透過性の点か
らはバリアー性は低下する方向にあり耐食性の面から苛
酷な条件である。熱可塑性樹脂フィルムの持つバリアー
性は、樹脂の組成、密度によって差異があるが、同一樹
脂組成、同一結晶状態の場合、フィルム厚みが厚いほど
バリアー性は良い。
いほど耐食性は良好であるが、フィルム厚みが厚いと延
伸フィルムの製膜時の残留歪みや缶体の成形加工時の歪
みが多くなり、レトルト加熱殺菌処理でデラミが発生す
る場合がある。そこで、本発明では、熱可塑性樹脂フィ
ルムの厚みを10〜30μmに限定したが、缶体の実質
実用特性や経済性を考慮すると、樹脂フィルムの厚みは
12〜25μmが最適である。
ル樹脂フィルム層(A)の厚みは3〜15μm、ポリエ
ステル樹脂フィルム層(B)の厚みは5〜15μmであ
り、二層フィルムの総厚みとしては10〜30μmであ
るが、缶体の実質的な実用特性や経済性を考慮すると、
総樹脂フィルム厚みは10〜25μmが最適である。
樹脂フィルムは、X線回折による測定で2θが22°〜
28°に検出されるピークの内最も高いピークの強度が
500cps〜5000cpsの範囲にある配向結晶化
されたものである。
脂フィルムの中でも、レトルト加熱殺菌処理に耐えかつ
内容物の保護性からは、特に配向結晶化された二軸延伸
ポリエステル樹脂フィルムが最適である。しかし、配向
度の高い熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムは、フィル
ム製膜の延伸時の残留歪みが概して大きく、絞り缶等の
成形加工を受けた場合、その残留歪みが接着力に勝り、
フィルムが剥離(デラミ)するといったことがしばしば
起こる場合がある。
物の保護の兼備からは、熱可塑性ポリエステル樹脂フィ
ルムの配向度を最適な範囲にする必要があり、本発明で
は適用される缶の内面側に被覆する熱可塑性ポリエステ
ル樹脂フィルムの配向性は、少なくとも絞り成形加工に
供される前のラミネート材のフィルムをX線回折による
測定で、2θが22°〜28°に検出されるピークの内
最も高いピークの強度が500cps〜5000cps
の範囲にある熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムとす
る。
れるピークの内最も高いピークの強度が500cps未
満の場合、密着性は良好であるが、耐食性の点で劣り、
特に表面処理被膜が成形加工で破壊され易い、缶口部に
近い部位で腐食が起こる場合があり好ましくない。更
に、X線回折による測定で検出されるピークが小さい熱
可塑性ポリエステル樹脂フィルムは、概して熱安定性に
劣ることが多く、例えば熱可塑性ポリエステル樹脂フィ
ルムを金属板に被覆するためのラミネートの熱でフィル
ム収縮が起こったり、激しい場合は熱可塑性ポリエステ
ル樹脂フィルムが皺となったりして、ラミネート性を損
ねる原因ともなる場合がある。
検出されるピークが500cps未満の熱可塑性ポリエ
ステル樹脂フィルムは好ましくない。一方、上限値であ
るX線回折による測定で検出されるピークの内最も高い
ピークの強度が5000cpsを超えた場合は密着性が
劣り、レトルト加熱殺菌処理時にフィルム剥離が起こる
場合があり好ましくない。
れるピークの内最も高いピークの強度の下限値は耐食性
から、またX線回折による測定で検出されるピークの
内、最も高いピークの強度の上限値は、密着性から限定
してのものであり、好ましくは650cps〜4500
cpsの範囲が最適である。
フィルムが二層フィルムの場合は、接層フィルムと上層
フィルムとが一体となっている状態で測定した値が50
0cps〜5000cpsの範囲にあれば良く、二層フ
ィルムの場合も好ましくは650cps〜4500cp
sの範囲が最適である。
出されるピークの内、最も高いピークの強度が500c
ps〜5000cpsの範囲のものを得る手段として
は、熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムを製造する際の
製膜時の延伸倍率や延伸後に行う熱固定条件を適宜選択
すること、更にはフィルムを被覆するラミネート条件を
適宜選択することで達成される。
〜28°のピークは、例えばエチレンテレフタレートが
主な反復単位の場合は、2θが約26°付近に最も高い
ピークが現れ、ブチレンテレフタレートが主な反復単位
の場合は、2θが約24°付近に最も高いピークが現れ
る。
会社製のX線回折装置rad−BでCuターゲット(C
u−Kα)で40KV、20mAで測定したときの、2
θが22°〜28°に検出されるピークの内最も高いピ
ーク強度である。
明する。本発明の絞り缶の缶外面側となるアルミニウム
面には、アルミニウム側から熱可塑性ポリエステル樹脂
フィルム層/印刷インキ層/クリアーコート層が熱圧着
により直接被覆されている。
をするもので、絞り成形加工による変形を考慮して、予
め歪んだ形状に印刷が施されるわけであるが、印刷イン
キそのものは特別なものである必要はなく、現在使用さ
れている印刷インキがそのまま適用できる。
工時の損傷や、レトルト加熱殺菌処理時の変色、変質を
抑えるものであるが、特別なものである必要はなく滑り
性が良く、耐レトルト性の良好なものであれば現行の熱
硬化性樹脂塗料から成る切板用クリアーコートが適用で
きる。
ルムは、印刷外観の鮮鋭性、鮮明性を確保することに有
効である。現行の塗装・印刷缶は、多くは金属板にサイ
ズコートもしくはホワイトコートが施され、その上層に
印刷が行われるが、サイズコートもしくはホワイトコー
ト塗装の場合、ロール斑は避けられず、また塗装厚みも
数μmであるため、絞り成形加工によって生じるアルミ
ニウム合金板の粗度の増大の影響を受け易く、その結
果、印刷外観の鮮鋭性、鮮明性は低下する。
樹脂フィルムの上層に印刷を施した場合、上記のような
絞り成形加工によって生じるアルミニウム合金板の粗度
の増大の影響を受け難く、印刷外観の鮮鋭性、鮮明性を
確保することが可能となる。かかる意味から、缶の外面
側に被覆される熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムの厚
みは、10〜15μmが最適である。
脂フィルム上への歪み印刷(絞り加工により成形した缶
側壁の印刷図柄が適切な状態となる様に、平板状態では
歪んだ図柄となる歪み印刷図柄を予め印刷しておく)
は、熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムをアルミニウム
合金板に熱接着した後に行っても良いし、或いは、熱接
着する前の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム上に、グ
ラビア印刷方法等により歪み印刷を施し、直ちにその印
刷(印刷インキ層)の上にクリアーコートを塗装し、乾
燥・硬化させてから、この熱可塑性ポリエステル樹脂フ
ィルムをアルミニウム合金板に熱接着しても良い。
可塑性ポリエステル樹脂フィルムに、石膏、雲母、二酸
化チタンコーティング雲母、ケイ酸アルミニウム、炭酸
マグネシウム、炭酸バリウム等の無機物、二酸化チタ
ン、酸化亜鉛、ベンガラ、カーボンブラック、硫化カド
ミウム、硫化錫等の無機顔料、有機色素と金属塩との結
合によって生じた有機顔料(レーキ顔料)、染料、金属
粉末から選ばれる1種類又は2種類以上の着色剤を混入
して着色したものも好適に使用される。
エステル樹脂フィルム中に白色の二酸化チタン顔料を含
有するフィルム上に印刷を行った場合は、印刷外観は大
幅に向上する。
内容物に見せるための色彩効果の観点から、着色フィル
ムは有効であり、かかる意味において、本発明では缶の
内外面側に被覆される熱可塑性ポリエステル樹脂フィル
ムに無機物、無機顔料、有機顔料、染料、金属粉末から
選ばれる1種類又は2種類以上の着色剤を含有させたも
のも好適に使用される。
させる量としては5〜20重量%であるが、5重量%未
満では着色効果は見られず好ましくない。一方、20重
量%を超えても、着色の効果はあまり大きくならず、飽
和してくるため経済的でないばかりか、密着性が劣る場
合があり好ましくない。
中に含有させる無機物、無機顔料、有機顔料、染料およ
び金属粉末は、特別限定するものではないが、缶の内外
面側のポリエステル樹脂フィルム中に含有させる場合
は、当然にレトルト加熱殺菌処理で溶解しないこと、特
に内面側は食品衛生上問題なく且つ保存中にも内容物中
には溶解しない物質を選定する必要が有ることは、言う
までもない。
ィルムは、前述した缶の内面側に被覆される樹脂組成や
融点(Tm)を有する熱可塑性ポリエステル樹脂フィル
ムが適用出来るが、アルミニウム合金板に被覆する手法
によって最適な融点(Tm)を有する熱可塑性ポリエス
テル樹脂フィルムを選択する必要がある。
を加熱されたアルミニウム合金板に直接熱圧着して被覆
する場合は、アルミニウム合金板表面に片面ずつ順次被
覆する方法と両面に同時被覆する方法があるが、アルミ
ニウム合金板に缶の内外面用の熱可塑性ポリエステル樹
脂フィルムを同時に熱圧着して被覆する場合は、内外面
用の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムの融点(Tm)
をほぼ同じような融点(Tm)にすることがラミネート
温度の一致から必要で、順次被覆する方法の場合は融点
(Tm)の高い熱加塑性ポリエステル樹脂フィルムから
アルミニウム合金板に被覆し、次いで温度低下をみて融
点(Tm)の低い熱加塑性ポリエステル樹脂フィルムを
アルミニウム合金板に被覆するなどの手法が適用でき
る。どの手段を採用するかは設備の関係で適宜選択すれ
ば良い。
熱風炉中を通過させて加熱する方法、電気炉中を通過さ
せて加熱する方法、加熱ロール(ジャケットロール)に
接触させて加熱する方法等(これら方法の単独方法又は
複数の方法を組み合わせた方法)の周知の金属板加熱方
法が適用できる。
1.5〜2.5の範囲にある缶である。絞り比は、絞り
缶の径(Ld)に対するプランク径(Lb)の比で表さ
れ、Lb/Ldの値が1.5〜2.5の範囲にあること
を示している。
物を充填するには小さすぎて実質的でなく商品価値はな
い。一方、絞り比が2.5を超えると成形加工による歪
みが大きくなり過ぎ、前記した特公平7−73943号
公報に記載されている様な、予め成形加工による歪みを
考慮した印刷図柄を作成し、その印刷図柄を基に刷版を
作成して印刷する方法では対処できない程、缶外面の印
刷が歪んだものとなり折角の印刷外観を美麗な状態にし
たものが損なわれてしまい、好ましくない。また、密着
性の点でも低下が大きくなりフィルム剥離に繋がる危険
性が高く好ましくない。
れている熱加塑性樹脂フィルム層の密着性を一層強固な
ものとするため、前記した周知の樹脂被覆缶体成形後の
後加熱処理方法、即ち、成形加工後の缶体を180℃〜
220℃の温度で20秒〜120秒の範囲で後加熱処理
する。
ないと内容物充填後のレトルト加熱殺菌工程で内面およ
び外面側のポリエステル樹脂フィルムが局部的な剥離
(デラミ)を起こす場合があり、好ましくない。
工で入った熱加塑性ポリエステル樹脂フィルムの歪みが
取り難く密着性は確保されない場合があり、また、長時
間要することもあり、生産性の点で問題となり経済的で
ない。
よるが前述した熱加塑性ポリエステル樹脂フィルムの面
からも、配向性が樹脂組成によっては急激に低下し、耐
食性や前述した耐デント性が劣る場合があり、更には、
外面側のクリアー層が変色し外観を損ねる場合があり好
ましくない。
0秒〜120秒であるが、この時間は勿論加熱温度が高
い場合は短くて良く、加熱温度が低い場合は長くするこ
とが可能であることはいうまでもないことである。成形
加工後の缶体の後加熱条件としては、加熱温度は180
℃〜220℃で加熱時間は20秒〜120秒の範囲であ
れば外面の最表層のクリアーコート層の変色等に影響を
及ぼさず、また成形加工によって入った熱可塑性ポリエ
ステル樹脂フィルムの歪みを取ることができ、レトルト
加熱殺菌処理でデラミを起こすことはなく、そして缶外
面の印刷外観も美麗さを保持することができる。
被覆されている熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムの軟
化による欠陥発生を回避するために、後加熱条件である
特に温度は被覆されている熱可塑性ポリエステル樹脂フ
ィルムの融点(Tm)を考えて設定するのが肝要であ
る。缶体の加熱方法としては電気炉、熱風炉といった通
常の加熱炉が適用でき、加熱炉の雰囲気温度として前記
の180℃〜220℃に設定し、この炉内を20秒〜1
20秒の範囲で通過させることで良い。
可塑性ポリエステル樹脂フィルムの保護の観点から、例
えばネット等でできたベルトに乗せて加熱炉内を通過さ
せる場合は、ネットには缶の内面側フィルムには接触し
ないように、外面側を乗せて通過させて後加熱するのが
肝要である。
説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるもので
はない。なお、本実施例で行った評価法は以下の通りで
ある。 (1)絞り成形加工缶の密着性は、蓋を巻締めないフラン
ジ開口部がある状態で、125℃で30分間蒸気レトル
ト加熱処理を行い、フィルムの剥離状況を目視観察し
た。評価は次のように評価基準を設定し行った。 ○:剥離なく良好 □:軽微な剥離が開口部切り口に発生 △:フランジ部の1/2程度剥離が発生 ×:フランジ部から缶胴部にかけて剥離が発生 (2)缶内面の樹脂フィルムの健全性については、1.0
%食塩水に界面活性剤を0.1%添加した電解液で、缶
体を陽極、陰極を銅線とし印加電圧6Vで3秒後の電流
値を測定し、樹脂フィルムの被膜の健全性を評価とし
た。(以降、この評価法をQTV試験と称する) (3)内容物リパックにおける硫化黒変性については目視
観察した。評価は次のように評価基準を設定し行った。 ○:黒変なく良好 □:色の薄い黒変が、缶体上部にのみ僅かに見られる △:色の黒い黒変が缶上部に明確に見られる ×:色の黒い黒変が缶全体に明確に見られる (4)内容物リパックにおける腐食状況については目視観
察した。評価は次のように評価基準を設定し行った。 ○:腐食なく良好 □:表面腐食が僅かに発生 △:板厚の1/4〜1/3に達する孔食が発生 ×:板厚の1/2以上に達する孔食が発生
0.62と同一にした、X線回折強度が560cpsの
熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム(実施例1)、X線
回折強度が1870cpsの熱可塑性ポリエステル樹脂
フィルム(実施例2)、X線回折強度が3830cps
の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム(実施例3)、X
線回折強度が4800cpsの熱可塑性ポリエステル樹
脂フィルム(実施例4)を、板厚が0.22mmで片面
のCr付着量が25mg/m2のリン酸クロム酸処理を
施した5T50アルミニウム合金板を加熱ロールで加熱
し、板温が約230℃になった状態で両面に熱圧着し、
両面フィルムラミネートアルミニウム合金板を作成し
た。
ミニウム合金板の一方の面に印刷用インキにより印刷を
行い、更にその上に、クリアコートとして熱硬化性ポリ
エステル樹脂系塗料を60mg/dm2塗布し、170
℃で10分間電気オーブンで乾燥焼き付けを行った後、
加工用潤滑剤を塗油し印刷面が缶の外面になるように、
2回の絞り加工を行って、絞り比が1.76の絞り缶を
作成した後、該絞り缶を電気オーブンで200℃で10
0秒間後加熱を行った。
評価について、内面の熱可塑性ポリエステル樹脂フィル
ム被膜の健全性はQTV試験で、密着性については12
5℃で60分のレトルト加熱殺菌処理で調べた。また、
前記の絞り缶に市販の鮪味付け缶詰および鮪水煮缶詰か
ら内容物をリパックし缶蓋を巻締め後、113℃で10
0分のレトルト加熱殺菌処理を行い、55℃で1ヶ月間
貯蔵し耐食性を調べた。実施例1〜4で行った熱可塑性
ポリエステル樹脂フィルムの内容および性能評価結果を
表1に示した。
はレトルト加熱処理でも内外面のフィルム剥離はなく良
好な密着性を有しており、また内容物のリパックではあ
るが耐食性も良好であることが判る。
223℃の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層(A)
と厚みが10μm、融点が235℃の熱可塑性ポリエス
テル樹脂フィルム層(B)からなる二層フィルムで、極
限粘度(IV)が0.57と同一にしたX線回折強度が
630cpsの熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム(実
施例5)と、X線回折強度が4540cpsの熱可塑性
ポリエステル樹脂フィルム(実施例6)とを準備した。
点が225℃の二酸化チタンを10重量%含有する12
μmの白色熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムを準備し
た。こうした内外面用の熱可塑性ポリエステル樹脂フィ
ルムを、実施例1〜4で用いたアルミニウム合金板を加
熱ロールで加熱し、板温が225℃で一方の面には内面
用の実施例5の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムの
(A)層又は単層の実施例6の熱可塑性ポリエステル樹
脂フィルムがアルミニウム合金板に接するように、他方
の面には上記白色熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムを
両面同時熱圧着しフィルムラミネートアルミニウム合金
板を作成した。
ウム合金板の白色熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム面
に印刷インキにより印刷を施し、更に実施例1で使用し
たクリアーコートを60mg/dm2塗装し、170℃
で10分間電気オーブンで乾燥焼き付けを行った後、加
工用潤滑剤を塗油し印刷面が缶の外面になるように、2
回の絞り加工を行って、絞り比が1.76の絞り缶を作
成した後、該絞り缶を電気オーブンで210℃で30秒
間後加熱を行った。
評価について、内面の熱可塑性ポリエステル樹脂フィル
ム皮膜の健全性はQTV試験で、密着性については12
5℃で60分間のレトルト加熱殺菌処理で調べた。ま
た、前記の絞り缶に市販の鮪味付け缶詰および鮪水煮缶
詰から内容物をリパックし缶蓋を巻締め後、113℃で
100分間のレトルト加熱殺菌処理を行い、55℃で1
ヶ月間貯蔵し耐食性を調べた。実施例5、6で行った熱
可塑性ポリエステル樹脂フィルムの内容および性能評価
結果を表2に示した。
はレトルト加熱殺菌処理でも内外面のフィルム剥離はな
く良好な密着性を有しており、また内容物のリパックで
はあるが耐食性も良好であることが判る。
0.62、X線回折強度が5570cpsの熱可塑性ポ
リエステル樹脂フィルムを、板厚が0.22mmで片面
のCr付着量が25mg/m2のリン酸クロム酸処理を
施した5T50アルミニウム合金板を加熱ロールで加熱
し、板温が約230℃の状態で両面に熱圧着し、両面フ
ィルムラミネートアルミニウム合金板を作成した。
合金板の一方の面に印刷用インキにより印刷を行い、更
に実施例1で使用したクリアーコート用塗料60mg/
dm 2で塗装を行い、170℃で10分間電気オーブン
で乾燥焼き付けをした後、加工用潤滑剤を塗油し印刷面
が缶の外側になるように、2回の絞り加工を行って、絞
り比が1.92の絞り缶を作成した後、該絞り缶を電気
オーブンで200℃で100秒間の後加熱処理(比較例
1)および215℃で120秒間の後加熱処理(比較例
2)を行った。
評価について、内面の熱可塑性ポリエステル樹脂フィル
ム被膜の健全性はQTV試験でし、密着性については1
25℃で60分間のレトルト加熱処理をした後に調べ
た。比較例1、2で行った熱可塑性ポリエステル樹脂フ
ィルムの内容および性能評価結果を表3に示した。
ト加熱殺菌処理で内外面のフィルム剥離が発生し、密着
性が実施例に比較して劣ることが判る。なお、内容物の
リパックテストは、フィルム剥離が発生したため実施し
なかった。以上の結果にも示されているが、前述した通
り本発明に適用される熱可塑性ポリエステル樹脂フィル
ムは、X線回折による測定で2θが22°〜28°に検
出されるピークの内最も高いピークの強度が500cp
s〜5000cpsの範囲にある配向結晶化されたもの
である。
207℃の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層(A)
と厚みが10μm、融点が228℃の熱可塑性ポリエス
テル樹脂フィルム層(B)からなる二層フィルムで、極
限粘度(IV)が0.68、X線回折強度が850cp
sのフィルム(実施例7)、厚みが10μm、融点が20
7℃の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層(A)と厚
みが17μm、融点が228℃の熱可塑性ポリエステル
樹脂フィルム層(B)とからなる二層フィルムで、極限
粘度(IV)が0.68、X線回折強度が3700cp
sのフィルム(実施例8)の熱可塑性ポリエステル樹脂
フィルムを準備した。また、絞り缶の外面用フィルムと
しては実施例5、6で用いた白色熱可塑性ポリエステル
樹脂フィルムを準備した。
樹脂フィルムを、実施例1〜4で用いたアルミニウム合
金板を加熱ロールで加熱し、板温が220℃で一方の面
には内面用の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層
(A)がアルミニウム合金板に接するように、他方の面
には白色の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムを両面同
時に熱圧着してフィルムラミネートアルミニウム合金板
を作成した。
ウム合金板の白色熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム面
に印刷インキで多色印刷を行い、更に実施例1で使用し
たクリアーコートを60mg/dm2塗装し、その後、
170℃で10分間電気オーブンで乾燥焼き付けした
後、加工用潤滑剤を塗油し印刷面が缶の外面になるよう
に、2回の絞り加工を行って、絞り比が1.92の絞り
缶を作成した後、該絞り缶を電気オーブンで190℃で
120秒間後加熱処理を行った。
評価について、内面の熱可塑性ポリエステル樹脂フィル
ム被膜の健全性はQTV試験で、密着性については12
5℃で60分間のレトルト加熱殺菌処理を行って調べ
た。また、前記の絞り缶に市販の鮪味付け缶詰および鮪
水煮缶詰から内容物をリパックし缶蓋を巻締め後、11
3℃で100分間のレトルト加熱殺菌処理を行い、55
℃で1ヶ月間貯蔵して耐食性を調べた。実施例7、8で
行った熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムの内容および
性能評価結果を表4に示した。
は、レトルト加熱殺菌処理でも内外面のフィルム剥離は
なく良好な密着性を有しており、また内容物のリパック
ではあるが耐食性も良好であることが判る。
227℃の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層(A)
と厚みが5μm、融点が243℃の熱可塑性ポリエステ
ル樹脂フィルム層(B)とからなる二層フィルムで、極
限粘度(IV)が0.65、X線回折強度が890cp
sの熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムを準備した。ま
た、絞り缶の外面用フィルムとしては実施例5、6で用
いた白色熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムを準備し
た。
樹脂フィルムを、板厚が0.22mmで片面のリン
(P)付着量が3mg/m2、皮膜炭素(C)量として
20mg/m2の有機無機複合化成処理皮膜を有する5
T50アルミニウム合金板を加熱ロールで加熱し、板温
が約230℃の状態で該アルミニウム合金板の両面に熱
圧着し、両面フィルムラミネートアルミニウム合金板を
作成した。
ウム合金板の白色熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム面
に印刷用インキで印刷を行い、更にその上に、実施例1
で使用したクリアーコート用塗料60mg/dm2を塗
装し、170℃で10分間電気オーブンで乾燥焼き付け
をした後、加工用潤滑剤を塗油し印刷面が缶の外面にな
るように、2回の絞り加工を行って、絞り比が2.32
の絞り缶を作成した後、該絞り缶を電気オーブンで21
5℃で90秒間の後加熱処理を行った。
について、内面の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム被
膜の健全性はQTV試験で、密着性については125℃
で60分間のレトルト加熱殺菌処理をした後に調べた。
また、前記の絞り缶に市販の鮪味付け缶詰および鮪水煮
缶詰から内容物をリパックして缶蓋を巻締めて密封した
後、113℃で100分間のレトルト加熱殺菌処理を行
い、55℃で1ヶ月間貯蔵して耐食性を調べた。比較例
3で行った熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムの内容お
よび性能評価結果を表5に示した。
熱殺菌処理でも内外面のフィルム剥離はなく良好な密着
性を有しているが、得られた缶体のQTV値、また内容
物のリパックでの耐食性は実施例に比べ劣ることが判
る。以上の結果にも示されているが、前述した通り本発
明に適用される熱可塑性樹脂フィルムの厚みは10〜3
0μmであり、二層フィルムの場合は、ポリエステル樹
脂フィルム層(A)の厚みは3〜15μm、ポリエステ
ル樹脂フィルム層(B)の厚みは5〜15μmであり、
二層フィルムの総厚みとしては10〜30μmである。
218℃の熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層(A)
と厚みが8μm、融点が235℃の熱可塑性ポリエステ
ル樹脂フィルム層(B)とからなる二層フィルムで、極
限粘度(IV)が0.63、X線回折強度が1250c
psの熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム(実施例9〜
11)を準備した。また、絞り缶の外面用フィルムとし
ては実施例5、6で用いた白色熱可塑性ポリエステル樹
脂フィルムを準備した。
樹脂フィルムを、板厚が0.22mmで片面のリン
(P)付着量が3mg/m2、皮膜炭素(C)付着量と
して20mg/m2の有機無機複合化成処理皮膜を有す
る5T50アルミニウム合金板を加熱ロールで加熱し、
板温が230℃で両面に熱圧着し、両面フィルムラミネ
ートアルミニウム合金板を作成した。
ウム合金板の白色熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム内
に多色インキで印刷を行い、更に実施例1で使用したク
リアーコート塗料を60mg/dm2塗装し、170℃
で10分間電気オーブンで乾燥焼き付けをした後、加工
用潤滑剤を塗油し印刷面が缶の外面になるように、2回
の絞り加工を行って、絞り比が1.58の絞り缶(実施
例9)、絞り比が1.92の絞り缶(実施例10)、絞り
比が2.32の絞り缶(実施例11)を作成した後、該
絞り缶を電気オーブンで200℃で90秒間の後加熱処
理を行った。
能評価について、内面の熱可塑性ポリエステル樹脂フィ
ルム被膜の健全性はQTV試験で、密着性については1
25℃で60分間のレトルト加熱殺菌処理をした後に調
べた。また、前記の絞り缶に市販の鮪味付け缶詰および
鮪水煮缶詰から内容物をリパックし缶蓋を巻締め後、1
13℃で100分間のレトルト加熱殺菌処理を行い、5
5℃で1ヶ月間貯蔵し耐食性を調べた。実施例9〜11
で行った熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムの内容およ
び性能評価結果を表6に示した。
はレトルト加熱殺菌処理しても内外面のフィルム剥離は
なく良好な密着性を有しており、また内容物のリパック
ではあるが耐食性も良好であることが判る。以上の結果
にも示されているように、本発明では絞り比が1.5以
上の缶で前述した諸物性を得ることができる。
ム合金板の白色熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム面に
印刷用インキで印刷を行い、更にその上に、実施例1で
使用したクリアーコート用塗料を60mg/dm2塗装
し、170℃で10分間電気オーブンで乾燥焼き付けを
した後、加工用潤滑剤を塗油し印刷面が缶の外面になる
ように、2回の絞り加工を行って、絞り比が1.58の
絞り缶を作成した。
について、缶体の後加熱を行わないで内面の熱可塑性ポ
リエステル樹脂フィルム被膜の健全性はQTV試験で、
密着性については125℃で60分間のレトルト加熱殺
菌処理を行った後に調べた。比較例4で行った熱可塑性
ポリエステル樹脂フィルムの内容および性能評価結果を
表7に示した。
理で内外面のフィルム剥離が発生し、密着性が本発明の
実施例9に比較して劣ることが判る。なお、内容物のリ
パックテストは、フィルム剥離が発生したため実施しな
かった。このように、本発明の効果を得るためには絞り
成形加工を行った後、更に後加熱処理が必要であること
がわかる。
よれば内面が熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムで被覆
されているため、従来の塗装缶に比べて耐食性の良好な
絞り缶が得られると共に、缶の外面にもポリエステル樹
脂フィルムが施されていて平滑性に優れているため、そ
の上層に施された印刷の鮮鋭性が増すことから、従来の
印刷面に比べ印刷外観の美麗な絞り缶が得られることが
できる。また、本発明の絞り缶は缶内面の熱可塑性ポリ
エステル樹脂フィルムが、原材料にビスフェノールAや
その外の外因性内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)が
使用されていないため安全であり、現在の社会的要望に
応えられる食缶用の絞り缶である。
Claims (6)
- 【請求項1】 両面に熱可塑性樹脂を被覆したアルミニ
ウム合金板に対してプレス成形加工による一段絞り加工
または多段絞り加工を施すことにより得られる絞り缶ま
たは深絞り缶において、 該絞り缶の絞り比が、最終缶体の絞り比として1.5〜
2.5の範囲内であり、 缶内面側には厚みが10〜3
0μm、X線回折による測定で2θが22〜28°に検
出されるピークの内、最も高いピークの強度が500c
ps〜5000cpsの範囲にある配向結晶化された、
極限粘度(IV)が0.55以上の熱可塑性ポリエステ
ル樹脂フィルムが被覆されており、 缶外面側にはアルミニウム側から熱可塑性ポリエステル
樹脂フィルム層/印刷インキ層/クリアーコート層の構
成の多層有機被膜が被覆されていることを特徴とするア
ルミニウム製絞り缶。 - 【請求項2】 缶内面側に被覆されている前記熱可塑性
ポリエステル樹脂フィルムが、融点(Tm)が200℃
以上で厚みが3〜15μmの熱可塑性ポリエステル樹脂
フィルム層(A)と融点が210℃以上で厚みが5〜1
5μmの熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層(B)と
の総厚みが10〜30μmの二層フィルムであり、 該二層フィルムの低融点側の熱可塑性ポリエステル樹脂
フィルム層(A)が金属と接するように被覆されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム製絞り
缶。 - 【請求項3】 缶の内面側および/または外面側に積層
されている熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層が、無
機物、金属粉末、無機顔料、有機顔料及び染料から選ば
れる1又は2種類以上の着色剤を、5〜20重量%含有
していることを特徴とする請求項1または2に記載のア
ルミニウム製絞り缶。 - 【請求項4】 両面に熱可塑性樹脂をラミネートしたア
ルミニウム合金板に対してプレス成形加工による一段絞
り加工または多段絞り加工を施すことにより得られる絞
り缶または深絞り缶において、 缶内面側と成る面には厚みが10〜30μm,X線回折
による測定で2θが22°〜28°に検出されるピーク
の内、最も高いピークの強度が500cps〜5000
cpsの範囲にある配向結晶化された、極限粘度(I
V)が0.55以上の熱可塑性ポリエステル樹脂フィル
ムが被覆されており、 缶外面側と成る面にはアルミニウム側から熱可塑性ポリ
エステル樹脂フィルム層/印刷インキ層/クリアーコー
ト層の構成の多層有機皮膜が被覆されたアルミニウム合
金板を、最終缶体の絞り比として1.5〜2.5の範囲
に1回もしくは複数回の絞り成形加工を行った後、 更に該絞り缶を180℃〜220℃の温度で20秒〜1
20秒間の範囲で後加熱することを特徴とするアルミニ
ウム製絞り缶の製造方法。 - 【請求項5】 缶内面側に被覆されている前記熱可塑性
ポリエステル樹脂フィルムが、融点(Tm)が200°
以上で厚みが3〜15μmの熱可塑性ポリエステル樹脂
フィルム層(A)と融点が210℃以上で厚みが5〜1
5μmの熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層(B)と
の総厚みが10〜30μmの二層フィルムであり、 該二層フィルムの低融点側の熱可塑性ポリエステル樹脂
フィルム層(A)が金属と接するように被覆されている
ことを特徴とする請求項4に記載のアルミニウム製絞り
缶の製造方法。 - 【請求項6】 缶の内面側および/または外面側に積層
されている熱可塑性ポリエステル樹脂フィルム層が、無
機物、金属粉末、無機顔料、有機顔料及び染料から選ば
れる1又は2種類以上の着色剤を、5〜20重量%含有
していることを特徴とする請求項4または5に記載のア
ルミニウム製絞り缶の製造方法。
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