JP2003080718A - 複合膜およびその製造方法ならびにこの複合膜を備えるインクジェットヘッド - Google Patents
複合膜およびその製造方法ならびにこの複合膜を備えるインクジェットヘッドInfo
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Abstract
としての複合膜およびその製造方法ならびに信頼性の高
いインクジェットヘッドを提供する。 【解決手段】 複合膜200は、表面に露出する主層2
02を備え、上記主層202は、有機材料を含み、表面
近傍に親水性粒子201を一部露出するように埋設して
保持している。主層202の含む有機材料は、好ましく
は、ポリパラキシリレンである。親水性粒子201は、
半導体、半導体の酸化物、半導体の窒化物、金属の酸化
物および金属の窒化物からなる群から選ばれたいずれか
の材料を主成分としている。
Description
ッドなどに絶縁膜として用いる複合膜およびその製造方
法に関する。特に、複合膜の表面に親水性をもたせる、
ないし、維持させることに関する。さらに、これを用い
たインクジェットヘッドに関する。
印字装置に代わって、カラー化、多階調化に対応しやす
いインクジェット方式などのノンインパクト印字装置が
急速に普及している。これに用いるインク噴射装置とし
てのインクジェットヘッドとしては、特に、印字に必要
なインク滴のみを噴射するというドロップ・オン・デマ
ンド型が、噴射効率の良さ、低コスト化の容易さなどか
ら注目されている。ドロップ・オン・デマンド型として
は、カイザー(Kyser)方式やサーマルジェット方式が
主流となっている。
高密度化に不向きであるという欠点を有していた。ま
た、サーマルジェット方式は、高密度化には適している
ものの、ヒータでインクを加熱してインク内にバブル
(泡)を生じさせて、そのバブルのエネルギーを利用し
て噴射させる方式であるため、インクの耐熱性が要求さ
れ、また、ヒータの長寿命化も困難であり、エネルギー
効率が悪いため、消費電力も大きくなるという問題を有
していた。
して、圧電材料のシェアモードを利用したインクジェッ
ト方式が開示されている。この方式は、圧電材料からな
るインクチャンネルの壁(以下、「チャンネル壁」とい
う。)の両側面に形成した電極を用いて、圧電材料の分
極方向と直交する方向に電界を生じさせることで、シェ
アモードでチャンネル壁を変形させ、その際に生じる圧
力波変動を利用してインク滴を吐出するものであり、ノ
ズルの高密度化、低消費電力化、高駆動周波数化に適し
ている。
ドを利用したインクジェットヘッドの構造について説明
する。図20は、構造をわかりやすくするために各部を
分解した状態で表した図である。このインクジェットヘ
ッドは、図20の上下方向に分極処理を施した圧電体に
複数のチャンネル溝4が形成されたベース部材1と、イ
ンク供給口21と共通インク室22が形成されたカバー
部材2と、ノズル孔10があけられたノズル板9を貼り
合わせることで、インクチャンネルを形成している。
「インクチャンネル」とは、チャンネル溝4の内部の空
間を利用して形成される圧力室の部分をいう。チャンネ
ル壁3には、電界を印加するための電極5が上半分のみ
に形成されている。
反対側)は、溝加工時に使用されるダイシングブレード
の直径に対応したR形状に加工されており、外部との通
電のための電極引き出し部としての浅溝部6が同じくダ
イシングブレードにより加工されている。浅溝部6に形
成された電極は、浅溝部の後端部で例えばフレキシブル
基板のような外部電極8とボンディングワイヤ7によっ
て接続されている。
る場合、金属膜である電極5と水性インクとが接触して
いると、圧電体に印加する電圧によってインク中に電流
が流れ、金属膜が電界腐食する。そこで、電極5とイン
クとの接触を避けるために、インクチャンネルの内面に
は、絶縁膜(図示省略)が形成されている。
対して均一な膜厚で成膜することのできる、ポリパラキ
シリレン膜が用いられる。しかし、このポリパラキシリ
レン膜は水性インクとの濡れ性が悪く、水性インクをは
じくため、狭いインク流路内にインクを注入することが
困難であるとともに、インクチャンネル内に気泡が発生
する可能性が高い。このため、インク注入前に上記ポリ
パラキシリレン膜の表面に親水化処理を行う必要があ
る。
「文献1」という。)には、上記ポリパラキシリレン膜
の親水化処理方法についての技術が開示されている(文
献1の段落0083,0086)。すなわち、平行平板
型のプラズマ処理装置において、原料ガスに酸素を用
い、10Paの圧力下で200Wのパワーを投入し、2
分間処理する(文献1の段落0087)。この処理によ
って、ポリパラキシリレン膜などの絶縁膜が0.5μm
エッチングされるとともに、ポリパラキシリレン膜と水
との接触角が85°から10°に低下し(文献1の段落
0087)、親水性が向上する。
親水性を付与した場合、プラズマ処理された面が空気に
触れることによって、親水性が徐々に劣化する。たとえ
ば、このインクジェットヘッドをプリンタに搭載して使
用する場合、インク切れなどの状態でポリパラキシリレ
ン膜が長時間空気に触れると、親水性が劣化し、次にイ
ンクを注入した場合、インクチャンネル内に気泡を発生
させてしまうおそれがある。
て、プラズマ処理された面にSiO2、Si3N4などの
親水性薄膜を形成するか、水溶性高分子、ポリエチレン
イミン、ポリアクリル酸などをポリパラキシリレン膜の
表面にグラフト重合することとし(文献1の段落008
8)、経時変化による親水性劣化を防止している。
に、SiO2やSi3N4などの薄膜を形成する場合、以
下のような問題がある。
0に示したように、通常の半導体装置とは異なり、イン
クチャンネル内面として複雑な表面形状を有している。
このような複雑な形状の表面にSiO2やSi3N4など
の薄膜を形成する場合、蒸着やスパッタリングなどの方
法では段差被覆性が悪いため、インクチャンネル内面に
上記薄膜を均一に形成することは不可能である。
(Chemical Vapor Deposition)法を用いても、均一に
薄膜を形成することは困難である。さらに、CVD法に
よって上記薄膜を形成する場合、良好な膜質を得るため
には、基板を200℃以上に加熱する必要がある。とこ
ろが、インクジェットヘッドに用いられている圧電材料
は、このような加熱によって圧電特性が劣化する傾向が
ある。圧電材料の圧電特性を劣化させないように薄膜を
形成しようとした場合、良好な膜質のSiO2やSi3N
4などの薄膜を形成することは困難である。
表面に薄膜を形成する場合、良好な密着性を確保しにく
いという問題もある。密着性が不十分であると、インク
ジェットヘッドとして動作中に上記薄膜が剥離する場合
があり、仮に剥離した場合、剥離した薄膜片がノズル孔
10を塞いでしまうおそれがある。
溶性高分子、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸など
をポリパラキシリレン膜の表面にグラフト重合する場
合、インクジェットヘッドを、これらの薬液に浸漬し、
電磁波や放射線を印加する必要があり、これでは、プロ
セスが煩雑になるとともに、グラフト重合処理のために
専用の設備を備える必要があり、製造コストも増大す
る。
性劣化が生じない絶縁膜としての複合膜およびその製造
方法ならびに信頼性の高いインクジェットヘッドを提供
することを目的とする。
め、本発明に基づく複合膜は、表面に露出する主層を備
え、上記主層は、有機材料を含み、表面近傍に親水性粒
子を一部露出するように埋設して保持している。この構
成を採用することにより、露出する親水性粒子によって
水分子が結合しやすくなり、親水性が維持される。した
がって、経時変化によって劣化することもなく、複合膜
全体として安定して親水性を維持することができる。
粒子は、半導体、半導体の酸化物、半導体の窒化物、金
属の酸化物および金属の窒化物からなる群から選ばれた
いずれかの材料を主成分としている。この構成を採用す
ることにより、親水性粒子は、化学的に安定なSi
O2、Si3N4、Al2O3、AlN、TiO2などといっ
た酸化物、窒化物、あるいは、通常、表面に自然酸化膜
を有するSiを主成分とするため、複合膜が暴露される
環境に対して、腐食したり溶出したりするおそれがな
く、複合膜の親水性を安定して維持することができる。
料がポリパラキシリレンを主成分とする。この構成を採
用することにより、主層は、ポリパラキシリレンを含む
ため、化学的に安定したものとなる。したがって、複合
膜の暴露される環境によって損傷を受けにくいため、絶
縁特性を安定して維持することができる。また、ポリパ
ラキシリレンは、室温において気相成長によって形成す
ることができるため、熱によって特性が劣化する基材に
対しても、劣化させることなく膜を形成することができ
る。また、ポリパラキシリレンは、段差被覆性に優れて
いるため、表面形状が複雑に入り組んだ基材に対して
も、均一に膜を形成することができる。
複合膜の製造方法は、複合膜を形成すべき基材の上に、
有機材料を含む第1の膜を形成する第1膜形成工程と、
上記第1の膜の上に親水性粒子を吸着させる粒子吸着工
程と、上記粒子吸着工程によって吸着した上記親水性粒
子を封止するように上記第1の膜の上に有機材料を含む
第2の膜を形成する第2膜形成工程と、上記親水性粒子
の一部が露出するように上記第2の膜の表面を除去する
粒子露出工程とを含む。この方法を採用することによ
り、従来技術のような重合を行なうための設備が不要で
あり、製造工程や設備が簡単となる。また、第2の膜に
よって親水性粒子が固定されるため、親水性粒子が剥離
するといった事態を防止できる。
着工程は、静電気力によって上記親水性粒子を吸着させ
る工程を含む。この方法を採用することにより、接着剤
や粘着材を用いる必要がなく、簡便な処理で親水性粒子
を吸着させることができる。
形成工程は、成膜装置の処理室内部で行なわれ、上記粒
子吸着工程は、上記処理室内部で行なわれる。この方法
を採用することにより、第1の膜の表面に大気中の汚染
物質が吸着することを防止できる。したがって、第1の
膜と第2の膜との密着性を向上させることができる。ま
た、処理室内に入れたまま、第1膜形成工程、粒子吸着
工程および第2膜形成工程を連続して行なうことが可能
となるため、生産効率が向上する。
出工程は、酸素ラジカルを有するプラズマを用いたエッ
チングの工程を含む。この方法を採用することにより、
親水性粒子はエッチングされず、第2の膜のみが選択的
にエッチングされ、親水性粒子を第2の膜の表面から一
部露出する形を実現できる。この結果、親水性粒子の表
面積が増加し、複合膜としての親水性が向上する。
ングの工程は、円筒型プラズマ処理装置を用いて行な
う。この方法を採用することにより、平行平板型プラズ
マ処理装置に比べて、処理室の単位体積当たりの処理サ
ンプル数が多いため、効率良く親水化処理を行なうこと
ができる。
インクジェットヘッドは、圧電材料を含み、インクチャ
ンネルを構成するチャンネル壁と、上記チャンネル壁に
電圧を印加するための電極と、上記電極を覆う絶縁膜と
を備え、上記絶縁膜は、表面に露出する主層を含み、上
記主層は、有機材料を含み、かつ、表面近傍に親水性粒
子を一部露出するように埋設して保持している。この構
成を採用することにより、絶縁膜の親水性が経時変化に
よって劣化しにくいこととなるので、インク切れや輸送
中の乾燥などによるインクチャンネル内の親水性劣化を
抑えることができる。その結果、再度インクを充填する
際に、インク充填不良や気泡の巻き込みといったトラブ
ルを回避でき、インクの吐出特性が安定したインクジェ
ットヘッドとすることができる。
粒子は、半導体、半導体の酸化物、半導体の窒化物、金
属の酸化物および金属の窒化物からなる群から選ばれた
いずれかの材料を主成分としている。この構成を採用す
ることにより、親水性粒子は、化学的に安定なSi
O2、Si3N4、Al2O3、AlN、TiO2などといっ
た酸化物、窒化物、あるいは、通常、表面に自然酸化膜
を有するSiを主成分とするため、インクチャンネル内
面の絶縁膜としての複合膜が、インクに暴露される環境
において、腐食したり溶出したりするおそれがなく、イ
ンクチャンネル内面の親水性を安定して維持することが
できる。
料がポリパラキシリレンを主成分とする。この構成を採
用することにより、主層は、ポリパラキシリレンを含む
ため、化学的に安定したものとなる。したがって、絶縁
膜としての複合膜がインクに暴露される環境によって損
傷を受けにくいため、電極をインクから絶縁する機能を
安定して維持することができる。また、ポリパラキシリ
レンは、室温において気相成長によって形成することが
できるため、熱によって特性が劣化する圧電材料に対し
ても、圧電特性を劣化させることなく膜を形成すること
ができる。また、ポリパラキシリレンは、段差被覆性に
優れているため、表面形状が複雑に入り組んだインクチ
ャンネル内面に対しても、均一に膜を形成することがで
きる。
における複合膜の構成について説明する。図1に示す例
では、この複合膜200は、基材203の表面に形成さ
れている。複合膜200は、有機膜である主層202
と、親水性粒子201とを備える。親水性粒子201
は、主層202の表面近傍に分散している。親水性粒子
201の一部は、主層202の表面に露出している。こ
の例では、主層202たる有機膜としては、膜厚4μm
のポリパラキシリレン膜を用いた。親水性粒子201と
しては、平均粒径が0.35μmのSiO2粒子を用い
た。
極性を有しており、この電気的な極性に対応して、水分
子が結合するため、非常に親水性が高い。一方、ポリパ
ラキシリレン膜は、分子構造中に有する極性が低いた
め、親水性が悪い。
定法を用いた。その結果、スパッタリングで形成したS
iO2膜の接触角は11°、ポリパラキシリレン膜の接
触角は90°であった。接触角が小さいことは、親水性
が大きいことを意味する。
素ラジカルを含むプラズマで表面処理を施すと、親水性
が増し、接触角は5〜10°まで低下した。プラズマ処
理後のポリパラキシリレン膜を長時間大気に暴露する
と、図2に示すように、親水性が低下する。すなわち、
1000時間経過後には約45°に達する。一方、本実
施の形態における複合膜200における接触角は、図2
に示すように、1000時間経過後でも約17°となっ
ており、表面にSiO2粒子を露出させたことによって
親水性の劣化が抑制されていることがわかる。
粒子を用いたが、親水性粒子の種類はこれに限らず、分
子構造に極性を有する材料であれば用いることができ
る。たとえば、半導体や、半導体の酸化物、窒化物を用
いることができる。したがって、Si、SiO2、Si3
N4などが挙げられる。また、金属の酸化物、窒化物を
主成分とする粒子、たとえば、Al2O3、AlN、Ti
O2などの粒子を用いた場合も、純水の接触角はいずれ
も20°以下となり、経時変化による劣化の少ない安定
した親水性を示した。
撥水性が高く、接触角が大きくなるが、粒子状のSiを
大気中で保管すると粒子の表面に自然酸化膜が形成され
る。この自然酸化膜はSiO2であるため、酸化膜除去
処理を行なわないSiは親水性が高い。
粒径を0.35μmとしたが、粒子の粒径が小さくなる
ほど、親水性の高い領域が均一に存在するようになり、
親水性を維持する効果が高くなる。したがって、親水性
粒子の粒径は、できるだけ小さいことが望ましい。
キシリレンのみからなる膜に限らず、ポリパラキシリレ
ンを主成分とする膜も含む。
〜図6を参照して、実施の形態1で説明した複合膜の製
造方法について説明する。
べき基材203の上に、第1の膜212としてポリパラ
キシリレン膜を形成する。この例では、第1の膜212
の厚みは3μmとした。次に、図4に示すように、第1
の膜212の上に、親水性粒子201として、SiO2
を主成分とする平均粒径が0.35μmの粒子を吸着さ
せる。親水性粒子201の粒径が大きくなると、粒子の
脱落を防止するために必要となる第2の膜(後述)の厚
みが増加するため、親水性粒子201の粒径は5μm以
下が望ましい。
って行なう。すなわち、親水性粒子201に正または負
の電荷を与えておき、第1の膜212の上に散布する。
こうすることによって、親水性粒子201を第1の膜2
12の上に均一に吸着させることができる。これは、ポ
リパラキシリレンからなる第1の膜212が電気的に中
性で、非常に帯電しにくい性質を有しているからであ
る。
201を封止するように第2の膜222としてポリパラ
キシリレン膜を形成する。この例では厚み1μmだけ形
成した。第2の膜222は、第1の膜212と同じ装置
を用いて形成することができる。ポリパラキシリレン膜
は非常に良好な段差被覆性を有しているため、第2の膜
222は吸着した親水性粒子201の隙間にも成膜する
ことができる。その結果、図5に示すように親水性粒子
201を巻き込んで封止するように形成される。
を酸素ラジカルを含むプラズマによってエッチングし、
親水性粒子201の一部を露出させる。このエッチング
処理には、円筒型プラズマ処理装置を用いることが好ま
しい。この例では、円筒型RFプラズマ処理装置を用
い、500W、0.3Torrの条件下で15分間処理
を行ない、第2の膜222をエッチングした。この場
合、親水性粒子201であるSiO2は酸素ラジカルに
はほとんどエッチングされないので、第2の膜222の
みが選択的にエッチングされる。その結果、図6に示す
ように、親水性粒子201の一部が表面に露出する形と
なる。
経時変化による親水性劣化をも抑制した複合膜を製造す
ることができる。
着の工程は、第1の膜212および第2の膜222とし
てのポリパラキシリレン膜を形成するために使用する成
膜装置の処理室内部で、処理室内部を大気に開放するこ
となく、処理室内に親水性粒子201を散布することに
よって行なうことが好ましい。こうすることにより、第
1の膜212の表面に大気中の汚染物質が吸着すること
がないので、第1の膜212と第2の膜222との密着
性が向上する。また、こうすることにより、処理室内に
大気中の水分が吸着することなく工程を連続して進めら
れるので、第2の膜222を成膜する際に行なう処理室
の排気のために要する時間が短くなり、生産効率が向上
する。一方、処理室内において、親水性粒子201を散
布すると、処理室の内壁などにも親水性粒子201が吸
着するが、この後に第2の膜222が内壁などにも形成
されるので、内壁などに吸着していた親水性粒子201
は、内壁などに形成される第2の膜222中に封止され
る。したがって、内壁などに吸着していた親水性粒子2
01が、発塵することは避けられる。
SiO2を用いたが、親水性粒子の種類はこれに限ら
ず、分子構造に極性を有する材料であれば用いることが
できる。たとえば、半導体や、半導体の酸化物、窒化物
を用いることができる。したがって、Si、SiO2、
Si3N4などが挙げられる。また、金属の酸化物、窒化
物を主成分とする粒子、たとえば、Al2O3、AlN、
TiO2などの粒子を用いることもできる。
気力によって、親水性粒子201を第1の膜212に吸
着したが、このほかの方法として、接着剤を塗布した上
に親水性粒子201を散布する方法も可能である。
の膜222のエッチングには円筒型プラズマ処理装置を
用いたが、代わりに平行平板型のプラズマ処理装置を使
用することもできる。
一旦成膜を停止し、親水性粒子201を吸着させた後、
第2の膜222の成膜を行なったが、途中で一旦成膜を
停止しなくても、成膜処理中に成膜雰囲気に親水性粒子
201を散布することで、ポリパラキシリレン膜中に親
水性粒子201を巻き込み、封入することができる。
形態3におけるインクジェットヘッドの構成を説明す
る。図7は斜視図であるが、内部がわかりやすいように
手前の一部を切り落とした状態を示している。図8は、
チャンネル溝4に沿って切断したときの断面図である。
8に示すように、ベース部材1aとカバー部材2aとが
組み合わせられている。ベース部材1aは、強誘電性を
有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミック
ス材料で製造されている厚さ約1mmの板である。ベー
ス部材1aには平行な複数のチャンネル溝4が設けられ
ている。ベース部材1aの後端には各チャンネル溝4に
入り込むように導電性部材26がそれぞれ配置されてお
り、各チャンネル壁3に形成された電極5は、チャンネ
ル溝4内で導電性部材26に電気的に接続されている。
導電性部材26は、基板41に接続されている。基板4
1の表面には、各インクチャンネルに対応した位置に導
電層のパターン(図示省略)が形成されている。したが
って、電極5は、導電性部材26をそれぞれ介し、基板
41の導電層のパターンに対してそれぞれ独立に電気的
接続を確保することができる。ここで、電極5として
は、アルミニウム、ニッケル、銅、金などが用いられ
る。導電性部材26としては、エポキシ系の樹脂成分を
含有した金ペースト、銀ペースト、銅ペーストもしくは
メッキ液をベースとした金メッキ、ニッケルメッキなど
を用いることができる。また、ベース部材1aおよびカ
バー部材2aからなり導電性部材26が設けられている
側と反対側の端面には、ノズル板9が接着されている。
ノズル板9の各インクチャンネルに対応した位置にはノ
ズル孔10が設けられている。さらに、ベース部材1a
およびカバー部材2aを組み合わせた構造体に対して、
導電性部材26が設けられている端面に基板41をはさ
んだ状態で、共通インク室22aを構成するようにマニ
ホールド27が接合されている。
ドでは、電極5の表面を覆うように、インクチャンネル
の内面には、ポリパラキシリレンなどからなる有機絶縁
膜(図示省略)が形成されている。
実施の形態におけるインクジェットヘッドの製造方法に
ついて説明する。
酸鉛(PZT)系のセラミックス材料の板であって、厚
み方向に分極処理を施したものを用意する。この板がベ
ース部材1aとなるものである。図9に示すように、ダ
イシングブレードによって、ベース部材1aの一方の面
に、複数のチャンネル溝4を平行に形成する。この例で
は、チャンネル溝4の深さは約300μmであり、幅は
約70μm、ピッチは140μmとなるように加工して
いる。チャンネル溝4同士の間に残った部分は、チャン
ネル壁3となる。各チャンネル壁3の上半分に斜め蒸着
によって金属膜からなる電極5を形成する。次に、チャ
ンネル壁3の上面に付着した金属膜をラッピングを施す
こと、またはレジスト膜をはがすことによって除去し、
図10に示すように、チャンネル溝4と垂直な方向に、
ダイシングブレード30を走行させ、深さ約350μ
m、幅500μmの塗布溝68を形成する。この時点で
の、チャンネル溝4に沿った断面の断面図を図11に示
す。図12に示すように、液状の導電性部材26をディ
スペンサ(図示省略)によって塗布溝68に沿って塗布
する。導電性部材26は、チャンネル溝4内で電極5に
接触するのに十分な量として深さ180μmの高さまで
塗布される。導電性部材26は当初塗布溝68に沿って
塗布されるが、毛細管現象によって各チャンネル溝4に
一部入り込む。そのため、チャンネル壁3の上面には導
電性部材26は上がり込まない。したがって、導電性部
材26を固化させる場合、導電性部材26によるベース
部材1のたわみを抑えるために上方から平板などで押え
つけることが可能となる。また、チャンネル壁3上面の
不要導電性部材除去のためのラッピングなどの加工が不
要となる。平板などで上方から押えつけるとともに加熱
することで、導電性部材26は固化する。
チャンネル溝4を覆うように載せ、接着する。図14に
示すように、図中右端の部分を切除する。その結果、導
電性部材26の一部がチャンネル溝4内に残った状態と
なる。図15に示すように、基板41を、導電性部材2
6と電気的に接続されるように、ベース部材1aに貼り
付ける。
ジェットヘッドの全表面を覆うように絶縁膜51として
実施の形態1で説明したような複合膜を形成する。この
絶縁膜51の形成工程について、さらに詳しく説明す
る。
ドに対して、第1の膜212としてポリパラキシリレン
膜を厚み3μm形成する。この第1の膜212はCVD
法で形成するが、ポリパラキシリレン膜は、試料を加熱
することなく、室温で成膜することができるので、圧電
材料の圧電特性を劣化させることはない。ポリパラキシ
リレン膜は、段差被覆性が良好であるので、インクジェ
ットヘッドのインクチャンネル内部のような複雑な表面
形状を有する部材において絶縁を確保するのには適して
いる。インクチャンネル内部においては、第1の膜21
2は、厚み2.5μmで形成することができた。図17
はインクチャンネル内のある断面の拡大図である。図1
7に示すように、第1の膜212上に、親水性粒子20
1として、SiO2を主成分とする平均粒径0.35μ
mの粒子を吸着させる。この吸着は、実施の形態1で説
明したように静電気力を利用して行なった。この後、第
2の膜222としてポリパラキシリレン膜を厚み1μm
形成する。インクチャンネル内部においては、第2の膜
222は、厚み0.8μm以上となるように形成するこ
とができた。こうすることによって、図17に示すよう
に、第2の膜222によって、親水性粒子201を封止
することができる。
ズマ処理装置の処理室(チャンバ)内に配置し、導入ガ
スを空気とし、ガス圧を0.3Torrとし、投入パワ
ーを500Wとし、処理時間を13分間とし、プラズマ
処理を行なう。このプラズマ処理は、酸素ラジカルの作
用でエッチングを行なうものであるため、SiO2を主
成分とする親水性粒子201はほとんどエッチングされ
ず、第2の膜222のみが選択的にエッチングされる。
このため、プラズマ処理の終了後には、図18に示すよ
うに、親水性粒子201が第2の膜222表面に突出す
るように露出し、インクチャンネルの内面の単位面積当
たりにおけるSiO2の表面積が増加し、親水性がより
向上する。ここで用いる円筒型プラズマ処理装置は、平
行平板型プラズマ処理装置に比べて、処理室の単位体積
当たりの処理サンプル数が多いため、効率良く親水化処
理を行なうことができる。この例では、導入ガスとして
空気を用いたが、このプラズマ処理は、ポリパラキシリ
レン膜と酸素ラジカルとの反応であるため、空気以外に
も酸素を含有するガスを用いることができる。
けられているのと反対側の端面に、ノズル板9を接着す
る。ノズル板9には、各チャンネル溝4に対応する位置
に予めノズル孔10が設けられている。最後に、導電性
部材26が設けられている端面に基板41を挟んだ状態
で、マニホールド27を接合する。マニホールド27を
接合する際には、接合部分からのインク漏れを防止し、
信頼性を向上するために、ベース部材1aおよびカバー
部材2aとマニホールド27との接合部分は、樹脂で封
止することが好ましい。こうして、図7、図8に示した
ようなインクジェットヘッドが得られる。図8に示され
るようにマニホールド27に予め設けられたインク供給
口21aを介して、インクジェットヘッド内にインクが
充填される。
クジェットヘッドでは、各チャンネル溝4内には導電性
部材26が入り込んでいるため、一つのチャンネル溝4
の両側面において互いに対向する2つの電極5に注目す
ると、一方の側面の電極5と他方の側面の電極5とが導
電性部材26によって電気的に接続された形となってい
る。このため、導電性部材26に電圧が印加されると、
導電性部材26を通してチャンネル溝4の両側面の2つ
の電極5に同時に電圧が印加され、チャンネル溝4の両
側面であるチャンネル璧3がチャンネル溝4の内側に向
けて同時に変形する。この変形によってチャンネル溝4
内部にあったインクの一部がインク滴として噴出され
る。
クジェットヘッドを、製造後1000時間大気中に放置
した後、水系インクを充填したところ、気泡を生じるこ
となく、すべてのインクチャンネルにインクを充填する
ことができた。これに対して、本発明の複合膜を適用し
ないインクジェットヘッドでは、気泡の巻き込みなどで
インクの充填不良が発生した。
ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の
範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって
示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での
すべての変更を含むものである。
い材料を主層に含んでいても、表面から露出する親水性
粒子によって水分子が結合しやすくなり、親水性が維持
される。したがって、経時変化によって劣化することも
なく、複合膜全体として安定して親水性を維持すること
ができる。
の断面図である。
と従来の膜との接触角の経時変化を比較するグラフであ
る。
の製造方法の第1の工程の説明図である。
の製造方法の第2の工程の説明図である。
の製造方法の第3の工程の説明図である。
の製造方法の第4の工程の説明図である。
ジェットヘッドの斜視図である。
ジェットヘッドの断面図である。
ジェットヘッドの製造方法の第1の工程の説明図であ
る。
クジェットヘッドの製造方法の第2の工程の説明図であ
る。
クジェットヘッドの製造方法の第3の工程の説明図であ
る。
クジェットヘッドの製造方法の第4の工程の説明図であ
る。
クジェットヘッドの製造方法の第5の工程の説明図であ
る。
クジェットヘッドの製造方法の第6の工程の説明図であ
る。
クジェットヘッドの製造方法の第7の工程の説明図であ
る。
クジェットヘッドの製造方法の第8の工程の説明図であ
る。
クジェットヘッドの製造方法の第9の工程の説明図であ
る。
クジェットヘッドの製造方法の第10の工程の説明図で
ある。
クジェットヘッドの製造方法の第11の工程の説明図で
ある。
分解図である。
ャンネル壁、4 チャンネル溝、5 電極、6 浅溝
部、7 ボンディングワイヤ、8 外部電極、9ノズル
板、10 ノズル孔、21,21a インク供給口、2
2,22a 共通インク室、26 導電性部材、27
マニホールド、30 ダイシングブレード、41 基
板、51 絶縁膜、68 塗布溝、70 チャンバ、7
1 放電電極、72 RF発振器、100 インクジェ
ットヘッド、200 複合膜、201 親水性粒子、2
02 主層、203 基材、212 第1の膜、222
第2の膜。
Claims (11)
- 【請求項1】 表面に露出する主層を備え、前記主層
は、有機材料を含み、表面近傍に親水性粒子を一部露出
するように埋設して保持している、複合膜。 - 【請求項2】 前記親水性粒子は、半導体、半導体の酸
化物、半導体の窒化物、金属の酸化物および金属の窒化
物からなる群から選ばれたいずれかの材料を主成分とし
ている、請求項1に記載の複合膜。 - 【請求項3】 前記有機材料がポリパラキシリレンを主
成分とする、請求項1または2に記載の複合膜。 - 【請求項4】 複合膜を形成すべき基材の上に、有機材
料を含む第1の膜を形成する第1膜形成工程と、前記第
1の膜の上に親水性粒子を吸着させる粒子吸着工程と、
前記粒子吸着工程によって吸着した前記親水性粒子を封
止するように前記第1の膜の上に有機材料を含む第2の
膜を形成する第2膜形成工程と、前記親水性粒子の一部
が露出するように前記第2の膜の表面を除去する粒子露
出工程とを含む、複合膜の製造方法。 - 【請求項5】 前記粒子吸着工程は、静電気力によって
前記親水性粒子を吸着させる工程を含む、請求項4に記
載の複合膜の製造方法。 - 【請求項6】 前記第1膜形成工程は、成膜装置の処理
室内部で行なわれ、前記粒子吸着工程は、前記処理室内
部で行なわれる、請求項4または5に記載の複合膜の製
造方法。 - 【請求項7】 前記粒子露出工程は、酸素ラジカルを有
するプラズマを用いたエッチングの工程を含む、請求項
4から6のいずれかに記載の複合膜の製造方法。 - 【請求項8】 前記エッチングの工程は、円筒型プラズ
マ処理装置を用いて行なう、請求項7に記載の複合膜の
製造方法。 - 【請求項9】 圧電材料を含み、インクチャンネルを構
成するチャンネル壁と、前記チャンネル壁に電圧を印加
するための電極と、前記電極を覆う絶縁膜とを備え、前
記絶縁膜は、表面に露出する主層を含み、前記主層は、
有機材料を含み、かつ、表面近傍に親水性粒子を一部露
出するように埋設して保持している、インクジェットヘ
ッド。 - 【請求項10】 前記親水性粒子は、半導体、半導体の
酸化物、半導体の窒化物、金属の酸化物および金属の窒
化物からなる群から選ばれたいずれかの材料を主成分と
している、請求項9に記載のインクジェットヘッド。 - 【請求項11】 前記有機材料がポリパラキシリレンを
主成分とする、請求項9または10に記載のインクジェ
ットヘッド。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001276322A JP3795360B2 (ja) | 2001-09-12 | 2001-09-12 | インクジェットヘッドおよびその製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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- 2001-09-12 JP JP2001276322A patent/JP3795360B2/ja not_active Expired - Fee Related
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