JP2002292882A - インクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents

インクジェットヘッドの製造方法

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JP2002292882A
JP2002292882A JP2001104493A JP2001104493A JP2002292882A JP 2002292882 A JP2002292882 A JP 2002292882A JP 2001104493 A JP2001104493 A JP 2001104493A JP 2001104493 A JP2001104493 A JP 2001104493A JP 2002292882 A JP2002292882 A JP 2002292882A
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jet head
ink jet
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Haruhiko Deguchi
治彦 出口
Hitoshi Isono
仁志 磯野
Narimitsu Kakiwaki
成光 垣脇
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Original Assignee
Sharp Corp
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    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2202/00Embodiments of or processes related to ink-jet or thermal heads
    • B41J2202/01Embodiments of or processes related to ink-jet heads
    • B41J2202/10Finger type piezoelectric elements

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 構造的信頼性の低下や製造コストの増加を伴
うことなく絶縁膜の信頼性を向上させることのできる、
インクジェットヘッドの製造方法を提供する。 【解決手段】 インクジェットヘッドの製造方法は、電
極5と、前記電極5を覆う絶縁膜51を備えるインクジ
ェットヘッドの製造方法であって、前記絶縁膜51の表
面を親水化するためにプラズマ処理を行なう親水化処理
工程を含み、前記プラズマ処理におけるパワー密度と処
理時間の積が0.06W・秒/cm2より大きく、21
1W・秒/cm2より小さい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェットヘ
ッドの製造方法に関し、特に水性のインクを使用するイ
ンクジェットヘッドのインク流路内の親水化に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】今日、インパクト印字装置に代わり、カ
ラー化、多階調化に適したインクジェット方式などのノ
ンインパクト印字装置が急速に普及している。なかで
も、印字時のみに必要なインクを吐出させるドロップ・
オン・デマンド型の印字装置が、印字効率の良さ、低コ
スト化、低ランニングコスト化に有利であるなどの点で
注目されており、圧電素子を用いたカイザー方式や、サ
ーマルジェット方式が主流となっている。
【0003】しかし、カイザー方式は、小型化が難し
く、高密度化には適さないという欠点を有していた。ま
た、サーマルジェット方式は、高密度化には適している
ものの、ヒーターを加熱することで、インク内にバブル
(泡)を生じさせて、そのバブルのエネルギーを吐出に
使用するため、インクの耐久性に対する要求が厳しく、
また、ヒーターの寿命を長くすることが困難であり、さ
らに、消費電力も大きくなるという問題を有していた。
このような欠点を解決するものとして、圧電材料の剪断
モードを利用したインクジェット方式が提案されてい
る。この方式は、圧電材料からなるインクチャンネルの
側壁(「チャンネル壁」ともいう。)に形成した電極に
より、圧電材料の分極方向と直交する方向に電界を加
え、チャンネル壁を剪断モードで変形させて、その際に
生じる圧力波変動を利用してインク滴を吐出させるもの
であり、ノズルの高密度化、低消費電力化、高駆動周波
数化に適している。このような、剪断モードを利用した
インクジェットヘッドの構造を図21を参照して説明す
る。
【0004】インクジェットヘッドは、図21の上下方
向に分極処理を施した圧電体に複数のチャンネル溝4が
形成されたベース部材1と、インク供給口21と共通イ
ンク室22が形成されたカバー部材2と、ノズル孔10
があけられたノズル板9を張り合わせることで、インク
チャンネルが形成されている。「インクチャンネル」と
は、チャンネル溝4の内部の空間を利用して形成される
圧力室の部分をいう。チャンネル壁3には、電界を印加
するための電極5が上半分のみに形成されている。
【0005】インクチャンネルの後端部は、溝加工時に
使用されるダイシングブレードの直径に対応したR形状
に加工されており、外部との通電のための電極引き出し
部としての浅溝部6が同じくダイシングブレードにより
加工されている。浅溝部6に形成された電極は、浅溝部
の後端部で例えばフレキシブル基板のような外部電極8
とボンデイングワイヤ7によって接続されている。
【0006】ところで、用いるインクが水性インクであ
る場合、金属膜である電極5と水性インクとが接触して
いると、圧電体に印加する電圧によってインク中に電流
が流れ、金属膜が電界腐食する。そこで、電極5とイン
クとの接触を避けるために、インクチャンネルの内面に
は、絶縁膜(図示省略)が形成されている。
【0007】上述の絶縁膜としては、複雑な表面形状に
対して均一な膜厚で成膜することのできる、ポリパラキ
シリレン膜が用いられる。しかし、このポリパラキシリ
レン膜は水性インクとの濡れ性が悪く、水性インクをは
じくため、狭いインク流路内にインクを注入することが
困難であるとともに、インク流路内に気泡が発生する可
能性が高い。このため、インク注入前に上記ポリパラキ
シリレン膜の表面に親水化処理を行う必要がある。
【0008】特開2000−168082公報(以下、
「文献1」という。)には、上記ポリパラキシリレン膜
の親水化処理方法についての技術が開示されている(文
献1の段落0083,0086)。すなわち、平行平板
型のプラズマ処理装置において、原料ガスに酸素を用
い、10Paの圧力下で200Wのパワーを投入し、2
分間処理する(文献1の段落0087)。
【0009】この処理によって、ポリパラキシリレン膜
などの絶縁膜が0.5μmエッチングされるとともに、
ポリパラキシリレン膜と水との接触角が85°から10
°に低下し(文献1の段落0087)、親水性が向上す
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】一般に、ポリパラキシ
リレン膜のような機能性薄膜を成膜する場合、このよう
な薄膜の厚さ(以下、「膜厚」という。)は、所望の特
性が得られる最低の膜厚に設定される。これは、第一
に、材料コスト低減や製造時間短縮による製造コストの
低滅を目的としたものである。また、第二に、膜厚を薄
くすることによって膜応力を低減し、構造的な信頼性の
向上を目的としたものでもある。ところが、膜厚を薄く
するにつれて、ピンホールなどの膜の欠陥が増加する傾
向にある。上記ポリパラキシリレン膜などの絶縁膜にピ
ンホールが発生すると、このピンホールを通してインク
チャンネル間にリーク電流が発生する。このリーク電流
によって電極5の金属膜に電界腐食が生じる。このた
め、インクジェットヘッドの動作不良などの問題が生じ
る。
【0011】ところで、文献1によると、プラズマ処理
中の酸素ガス圧を10Paという高い値に設定すること
によって、エッチングの等方性を増加し、インク流路の
側壁に付着したポリパラキシリレン膜とインク流路底面
に付着したポリパラキシリレン膜とを均一にエッチング
するようにしている。このような条件では、エッチング
が等方的であるため、ピンホールの径が増加し、ポリパ
ラキシリレン膜の絶縁特性が大幅に劣化するという問題
がある。
【0012】一方、ポリパラキシリレン膜をあらかじめ
厚く形成すると、上述のように膜応力の増大による構造
的な信頼性の低下と、製造コストの増加を招く。
【0013】したがって、ポリパラキシリレン膜の薄膜
化と、プラズマを用いた親水化処理後の絶縁信頼性を同
時に確保する、製造プロセス条件の確立が必要とされ
る。
【0014】本発明は、かかる問題を解決するためにな
されたもので、構造的信頼性の低下や製造コストの増加
を伴うことなく絶縁膜の信頼性を向上させることのでき
る、インクジェットヘッドの製造方法を提供することを
目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に基づくインクジェットヘッドの製造方法
は、電極と、前記電極を覆う絶縁膜を備えるインクジェ
ットヘッドの製造方法であって、前記絶縁膜の表面を親
水化するためにプラズマ処理を行なう親水化処理工程を
含み、前記プラズマ処理におけるパワー密度と処理時間
の積が0.06W・秒/cm2より大きく、211W・
秒/cm2より小さい。この方法を採用することによ
り、すべてのインク流路に良好に水系インクを注入する
ことができる。
【0016】上記発明において好ましくは、前記絶縁膜
はポリパラキシリレンを主成分とする。この方法を採用
することにより、絶縁膜はポリパラキシリレンを主成分
とするため、絶縁膜形成にあたっては、素材を加熱する
ことなく、室温で成膜することができるようになる。し
たがって、ベース部材1を構成する圧電体の分極特性低
下を回避することができる。また、ポリパラキシリレン
膜は段差被覆性が良好であるため、インクジェットヘッ
ドのような複雑な表面形状を有する部材において、絶縁
性を確保する手段として非常に有用である。
【0017】上記発明において好ましくは、前記親水化
処理工程は、酸素を含む雰囲気のプラズマによってなさ
れる。この方法を採用することにより、プラズマ処理に
手近なガスである空気を使用することができるようにな
る。親水化処理として行なうプラズマ処理は、酸素ラジ
カルを反応させるものだからである。
【0018】上記発明において好ましくは、前記雰囲気
は空気である。この方法を採用することにより、プラズ
マ処理に手近なガスである空気を使用するため、導入ガ
スの入手が容易になる。
【0019】上記発明において好ましくは、前記プラズ
マ処理は、円筒型のプラズマ処理装置を用いて行なう。
この方法を採用することにより、円筒型プラズマ処理装
置は、平行平板型のプラズマ処理装置に比べて単位チャ
ンバー体積当たりの処理可能サンプル数が多いため、効
率よく親水化処理を行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】(実施の形態1) (構成)図1、図2を参照して、本発明に基づく実施の
形態1において、製造しようとするインクジェットヘッ
ドの構成について説明する。このインクジェットヘッド
は、基本的な構成は、従来の技術を説明したときのもの
(図21参照)と類似であるので共通する部分について
は説明を繰り返さない。
【0021】チャンネル溝4は、領域Aでは、深さ30
0μm、幅80μmで形成されている。領域Aの長さは
3mmである。領域Bでは、チャンネル溝4の深さが徐
々に浅くなっている。チャンネル溝4の加工に用いたダ
イシングブレードの直径が52mmであるので、領域B
の長さは約3.9mmとなっている。電極5を形成する
金属膜は、領域B内のうち電極引出部の側の部分では、
ベース部材1の上面にまで設けられている。ベース部材
1の上面には電極分離溝24が設けられており、一つの
インクチャンネルの電極5は、隣接するチャンネル溝4
の電極5と、電極分離溝24によって互いに分離されて
いる。したがって、各電極5は、インクチャンネルごと
に電気的に独立した状態で電極引出部23に接続されて
外部へ引き出され、ボンディングワイヤ7によって外部
電極8と接続されている。
【0022】この例では、電極5の金属膜として、アル
ミニウムを蒸着法により形成し、チャンネル壁3の側面
において厚みが1.2μm、電極引出部23において厚
みが4μmとなるようにしている。電極5の金属膜とし
ては、アルミニウム以外にニッケル、銅、チタンなどの
導電材料を用いることもできる。
【0023】インクと電極5との接触を避けるために電
極5の表面には、ポリパラキシリレンなどからなる有機
絶縁膜(図示省略)が形成されている。
【0024】(製造方法)次に、図3〜図9を参照し
て、このインクジェットヘッドの製造方法について説明
する。
【0025】まず、図3を参照して、上下方向に分極処
理を施した圧電材料からなるベース部材1にダイシング
ブレードを用いて複数の溝を形成する。ベース部材1
は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)
系のセラミックス材料で製造されている厚さ約1mmの
いたである。図1、図2における領域Aに対応する部分
では、溝の深さは、300μmの一定で、幅は80μm
で、長さ3mmである。図1、図2における領域Bにつ
いては、ダイシングブレードの直径に対応したR形状に
加工される。これらの溝は、それぞれチャンネル溝4と
なるものである。
【0026】次に、図4を参照して、各溝の内側の面に
Alを主成分とする金属膜からなる電極5を形成する。
この金属膜形成の際には、いわゆる斜め蒸着を行なう。
ここでいう斜め蒸着とは、ベース部材1を蒸着装置内に
設置する際に、蒸着源に対して傾斜して配置することと
し、蒸着源から飛来する粒子が溝を形成する壁によって
一部遮蔽されるようにすることによって、壁の上部のみ
に電極5を形成する蒸着方法である。もっとも、この斜
め蒸着の際には、壁の側面上部のみならず上面にも金属
膜が付着するが、上面に付着した金属膜は、ラッピング
を行なって除去するか、または、チャンネル溝4の加工
より前に予めレジスト膜を貼り付けておいてそのレジス
ト膜をはがすことによって除去する。
【0027】次に、図5を参照して、インク供給孔21
(図1、図2)と共通インク室22(図1、図2)が設
けられたカバー部材2を、ベース部材1の所定の位置に
接着する。ここで、カバー部材2のインク供給孔21と
共通インク室22は、サンドブラストなどによって予め
加工されている。
【0028】次に、図6を参照して、この構造体の溝部
分の内表面に、ポリパラキシリレンからなる絶縁膜51
を4μmの厚さで形成する。絶縁膜51としてのポリパ
ラキシリレン膜はCVD法によって形成する。上記ポリ
パラキシリレン膜は素材を加熱することなく、室温で成
膜することができるため、ベース部材1を構成する圧電
体の分極特性を低下するおそれがない。また、上記ポリ
パラキシリレン膜は段差被覆性が良好であるため、イン
クジェットヘッドのような複雑な表面形状を有する部材
において、絶縁性を確保する手段として非常に有用であ
る。本実施の形態におけるインクジェットヘッドでは、
インク流路内におけるポリパラキシリレン膜の膜厚は
1.2μm以上である。
【0029】図7を参照して、絶縁膜51としてのポリ
パラキシリレン膜の親水化処理を行った。本実施の形態
では、上記親水化処理は、円筒型プラズマ処理装置を用
いて、 導入ガス:空気 ガス圧:0.3Torr(約40Pa) 投入パワー密度:0.12W/cm2 処理時間:30秒 の条件でプラズマ処理を行った。この処理条件において
は、パワー密度と時間との積は、3.6W・秒/cm2
である。この処理によって上記ポリパラキシリレン膜は
約8.5nmエッチングされ、表面に親水基が配列され
る。円筒型プラズマ処理装置は、平行平板型のプラズマ
処理装置に比べて単位チャンバー体積当たりの処理可能
サンプル数が多いため、効率よく親水化処理を行うこと
ができる。また、ここでは導入ガスとして空気を用いた
が、本プラズマ処理はポリパラキシリレン膜と酸素ラジ
カルの反応であるため、空気以外にも酸素を含有するガ
スを用いることができる。
【0030】次に、図8を参照して、上記インクジェッ
トヘッドの所定の位置に、ノズル板9をエポキシ系の接
着剤によって貼り付ける。電極引出部23と外部電極8
とをワイヤボンディングによって接続した後、カバー部
材2に配置されたインク供給口21を介してインクジェ
ットヘッド内にインクが充填される。本実施の形態にお
いては、上記水溶液を乾燥してからインクジェットヘッ
ド内にインクが充填されるまでの時間を48時間として
処理した。
【0031】(作用・効果)上述の製造方法によって得
たインクジェットヘッドにおいては、水系インクを充填
する際にインク流路内に気泡が発生することがなかっ
た。このため、吐出特性の良好なインクジェットヘッド
を製造することができた。
【0032】(実施の形態2) (実験)本発明に基づく実施の形態2について説明す
る。本実施の形態では、実施の形態1で説明した製造方
法のうち、ポリパラキシリレン膜の親水化処理条件につ
いて検討した結果について、詳しく説明する。
【0033】本実施の形態では,図7に示すような円筒
型プラズマ処理装置を用い、チャンバ内に空気を導入
し、0.3Torr(40Pa)のガス圧で、プラズマ
パワー密度・時間積を変化させながら処理を行った。円
筒型プラズマ処理装置は、石英などの誘電体材料で横成
されたチャンバー70の外側に、チャンバーに隣接して
前記チャンバーの曲率と同様の曲率を持った一対の放電
電極71が配置され、この電極間にRF発振器72によ
りRFパワーを印加することで、チャンバー内にプラズ
マを誘起している。このため、上記円筒型プラズマ処理
装置は、電極上に試料を配置する平行平板型のプラズマ
処理装置に比べ、試料配置の自由度が高く、単位チャン
バー体積あたりの処理能力が高い。さらに、本実施の形
態では、反応ガスとして空気を導入しているため、酸素
100%のガスを用いる場合に比べ、取り扱いが容易で
あると共に材料コストを低減することができる。
【0034】図9に、ポリパラキシリレン膜上の水との
接触角のパワー密度・時間積依存性を示す。ここで、
「パワー密度・時間積」とは、親水化処理時に円筒型プ
ラズマ処理装置に投入したパワー密度と処理時間の積を
いうものとする。また、「パワー密度」とは、円筒型プ
ラズマ処理装置において、RFを印加する対向電極の片
側の電極面積をもって、投入パワーを除した値である。
図9によると、接触角は、パワー密度・時間積の増加に
対して0.03W・秒/cm2までは急激に減少し、約
30°に達するが、これ以降は低下が緩慢になり、36
W・秒/cm2では、約6°に収束し、これ以上処理時
間を増やしても、接触角の低下はわずかである。
【0035】次に、このインクジェットヘッドに対す
る、水系インクの注入特性について調べた。本実施例で
用いたインクジェットヘッドのインク流路は、断面形状
が幅80μm、深さ300μmでインク流路長は3mm
である。また、評価をしやすくするため、実施の形態1
において説明したようなノズル板9は、まだ接着してい
ない。上記インクジェットヘッドに水系インクを注入
し、この時インク流路内に気泡を生じることなく水系イ
ンクが侵入するインク流路の割合を評価した。図10
に、パワー密度・時間積に対する水系インクの注入歩留
りの関係を示す。これによると、インクジェットヘッド
における水系インクの注入歩留りは、パワー密度・時間
積の増加に伴って増加する。また、パワー密度・時間積
が0.06W・秒/cm2以下では、水の注入不良が発
生するが、0.06W・秒/cm2より大きな値では、
すべてのインク流路において良好に水を注入することが
できた。
【0036】(好ましい処理条件)このことから、水系
インクを用いるインクジェットヘッドの親水化処理が十
分に行なえるためには、パワー密度・時間積が0.06
W・秒/cm2よりも大きい条件で処理する必要がある
ことがわかった。逆に、パワー密度・時間積が0.06
W・秒/cm2よりも大きくなる条件で処理することに
よって、ポリパラキシリレン膜のダメージを極力低減し
た親水化処理が可能となるといえる。
【0037】なお、パワー密度・時間積が35.8W・
秒/cm2のときのポリパラキシリレン膜のエッチング
量は85nmである。エッチング量は、パワー密度・時
間積に比例するため、比例係数kを求めると、 k=85(nm)/35.8(W・秒/cm2) =2.4(nm・cm2/W・秒) となる。たとえば、0.09W・秒/cm2ではエッチ
ング量は、0.09×k=約0.2nmであり、ポリパ
ラキシリレン膜はほとんどダメージを受けないことがわ
かる。このことから、本実施の形態におけるプラズマ処
理によっては、ポリパラキシリレン膜の膜厚減少やピン
ホール径の増加はほとんどないといえる。そのため、ポ
リパラキシリレン膜の絶縁特性が劣化することなく、ポ
リパラキシリレン膜に親水性を付与することができる。
【0038】また、上記文献1の段落0087にもある
ように、従来技術に基づく親水化処理では、ポリパラキ
シリレン膜が0.5μm、すなわち500nmエッチン
グされていることから、文献1におけるパワー密度・時
間積は、 500(nm)/k(nm・cm2/W・秒)=211
(W・秒/cm2) と推定できる。本発明では、従来技術に基づく親水化処
理に比べてエッチング量をより小さくすることを意図し
ているため、このパワー密度・時間積の値をプラズマ処
理条件の上限とした。
【0039】(実施の形態3) (構成)本発明に基づく実施の形態3におけるインクジ
ェットヘッドの製造方法では、図11、図12に示すよ
うな構成のインクジェットヘッドを製造する。
【0040】このインクジェットヘッドでは、図11、
図12に示すように、ベース部材1aとカバー部材2a
とが組み合わせられている。ベース部材1aには平行な
複数のチャンネル溝4が設けられている。ベース部材1
aの後端には各チャンネル溝4に入り込むように導電性
部材26がそれぞれ配置されており、各チャンネル壁3
に形成された電極5は、チャンネル溝4内で導電性部材
26に電気的に接続されている。導電性部材26は、基
板41に接続されている。基板41の表面には、各イン
クチャンネルに対応した位置に導電層のパターン(図示
省略)が形成されている。したがって、電極5は、導電
性部材26をそれぞれ介し、基板41の導電層のパター
ンに対してそれぞれ独立に電気的接続を確保することが
できる。ここで導電性部材26としては、エポキシ系の
樹脂成分を含有した金ペースト、銀ペースト、銅ペース
トもしくはメッキ液をベースとした金メッキ、ニッケル
メッキなどを用いることができる。また、ベース部材1
aおよびカバー部材2aからなり導電性部材26が設け
られている側と反対側の端面には、ノズル板9が接着さ
れている。ノズル板9の各インクチャンネルに対応した
位置にはノズル孔10が設けられている。さらに、ベー
ス部材1aおよびカバー部材2aからなり導電性部材2
6が設けられている端面に基板41をはさんだ状態で、
共通インク室22aを構成するようにマニホールド27
が接合されている。
【0041】なお、本実施の形態でも、実施の形態1と
同様の理由から、電極5の表面には、ポリパラキシリレ
ンなどからなる有機絶縁膜(図示省略)が形成されてい
る。
【0042】(製造方法)このインクジェットヘッドの
製造方法について、図13〜図20を参照して説明す
る。基本的な考え方は、実施の形態1において説明した
のと同様である。ただし、ダイシングブレードを用いて
複数のチャンネル溝4を形成する際には、実施の形態1
と異なり、R形状の部分が不要であるので、図13に示
すようにベース部材1の両端を完全に結ぶように一定深
さの溝を形成する。ここでは、深さ300μm、幅70
μm、ピッチ140μmで溝を形成した。これらの溝が
それぞれチャンネル溝4となる。各チャンネル溝4同士
を隔てる壁がチャンネル壁3となる。各チャンネル壁3
の上半分に斜め蒸着によって金属膜からなる電極5を形
成する。次に図14に示すように、チャンネル壁3の上
面に付着した金属膜をラッピングを施すこと、またはレ
ジスト膜をはがすことによって除去し、さらに、チャン
ネル溝4と垂直な方向にダイシングブレード30を走行
させ、塗布溝68を形成する。塗布溝68は、後に導電
性部材26を塗布するための溝であり、図15に示すよ
うに、チャンネル溝4と垂直な方向に形成され、深さ約
350μm、幅500μmとなっている。図16に示す
ように、液状の導電性部材26をディスペンサ(図示省
略)によって塗布溝68に沿って塗布する。導電性部材
26は、チャンネル溝4内で電極5に接触するのに十分
な量として深さ180μmの高さまで塗布される。導電
性部材26は当初塗布溝68に沿って塗布されるが、毛
細管現象によって各チャンネル溝4に一部入り込む。そ
のため、チャンネル壁3の上面には導電性部材26は上
がり込まない。したがって、導電性部材26を固化させ
る場合、導電性部材26によるベース部材1のたわみを
抑えるために上方から平板などで押えつけることが可能
となる。また、チャンネル壁3上面の不要導電性部材除
去のためのラッピングなどの加工が不要となる。平板な
どで上方から押えつけるとともに加熱することで、導電
性部材26は固化する。
【0043】図17に示すように、カバー部材2aを、
チャンネル溝4を覆うように載せ、接着する。図18に
示すように、図中右端の部分を切除する。その結果、導
電性部材26の一部がチャンネル溝4内に残った状態と
なる。図19に示すように、基板41を、導電性部材2
6と電気的に接続されるように、ベース部材1aに貼り
付ける。さらに、全表面を覆うように絶縁膜51として
ポリパラキシリレン膜を形成する。図20に示すよう
に、円筒型プラズマ処理装置を用いて、絶縁膜51の親
水化処理を行なう。この親水化処理のためのプラズマ処
理においては、パワー密度・時間積が0.06W・秒/
cm2より大きく、211W・秒/cm2より小さい値
になるような条件設定で行なった。
【0044】ベース部材1aおよびカバー部材2aの、
基板41を貼り付けた側の端面には、基板41を覆うよ
うにマニホールド27を接合する。マニホールド27を
接合する際には、接合部分からのインク漏れを防止し、
信頼性を向上するために、ベース部材1aおよびカバー
部材2aとマニホールド27との接合部分は、樹脂で封
止する。ベース部材1aおよびカバー部材2aの、基板
41を貼り付けた側と反対側の端面に、ノズル板9を接
着する。こうして、図11、図12に示したようなイン
クジェットヘッドが得られる。図12に示されるように
マニホールド27に予め設けられたインク供給口21a
を介して、インクジェットヘッド内にインクが充填され
る。
【0045】この製造方法の他の特徴は、実施の形態1
における製造方法と同様である。 (作用・効果)上述の製造方法によって得たインクジェ
ットヘッドにおいては、水系インクを充填する際にイン
ク流路内に気泡が発生することがなかった。言いかえれ
ば、実施の形態1とは異なるこのような構成のインクジ
ェットヘッドの製造においても、吐出特性の良好なイン
クジェットヘッドを製造することができた。インク流路
内のポリパラキシリレン膜の処理に用いる水溶性の有機
溶剤として用いることのできる有機溶剤の種類や濃度に
ついては、実施の形態1で述べたものと同様である。
【0046】このインクジェットヘッドでは、各溝4に
は導電性部材26が入り込んでいるため、一つの溝4の
両側面において互いに対向する2つの電極5に注目する
と、一方の側面の電極5と他方の側面の電極5とが導電
性部材26によって電気的に接続された形となってい
る。このため、導電性部材26に電圧が印加されると、
導電性部材26を通して溝4の両側面の2つの電極5に
同時に電圧が印加され、溝4の両側面であるチャンネル
璧3が溝4の内側に向けて同時に変形する。この変形に
よって溝4内部にあったインクの一部がインク滴として
噴出される。
【0047】なお、今回開示した上記実施の形態はすべ
ての点で例示であって制限的なものではない。本発明の
範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって
示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での
すべての変更を含むものである。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、インクジェットヘッド
の製造方法として、絶縁膜の表面を親水化するためにプ
ラズマ処理を行なう親水化処理工程を含み、このプラズ
マ処理は、パワー密度と処理時間の積が0.06W・秒
/cm2より大きく、211W・秒/cm2より小さくな
る条件で行なうため、プラズマ処理が適度に行なわれ、
すべてのインク流路に良好に水系インクを注入すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に基づく実施の形態1におけるインク
ジェットヘッドの分解斜視図である。
【図2】 本発明に基づく実施の形態1におけるインク
ジェットヘッドの断面図である。
【図3】 本発明に基づく実施の形態1におけるインク
ジェットヘッドの製造方法の第1の工程の説明図であ
る。
【図4】 本発明に基づく実施の形態1におけるインク
ジェットヘッドの製造方法の第2の工程の説明図であ
る。
【図5】 本発明に基づく実施の形態1におけるインク
ジェットヘッドの製造方法の第3の工程の説明図であ
る。
【図6】 本発明に基づく実施の形態1におけるインク
ジェットヘッドの製造方法の第4の工程の説明図であ
る。
【図7】 本発明に基づく実施の形態1におけるインク
ジェットヘッドの製造方法の第5の工程の説明図であ
る。
【図8】 本発明に基づく実施の形態1におけるインク
ジェットヘッドの製造方法の第6の工程の説明図であ
る。
【図9】 本発明に基づく実施の形態2における、パワ
ー密度・時間積と水の接触角との関係を示すグラフであ
る。
【図10】 本発明に基づく実施の形態2における、パ
ワー密度・時間積とインク注入歩留りとの関係を示すグ
ラフである。
【図11】 本発明に基づく実施の形態3におけるイン
クジェットヘッドの斜視図である。
【図12】 本発明に基づく実施の形態3におけるイン
クジェットヘッドの断面図である。
【図13】 本発明に基づく実施の形態3におけるイン
クジェットヘッドの製造方法の第1の工程の説明図であ
る。
【図14】 本発明に基づく実施の形態3におけるイン
クジェットヘッドの製造方法の第2の工程の説明図であ
る。
【図15】 本発明に基づく実施の形態3におけるイン
クジェットヘッドの製造方法の第3の工程の説明図であ
る。
【図16】 本発明に基づく実施の形態3におけるイン
クジェットヘッドの製造方法の第4の工程の説明図であ
る。
【図17】 本発明に基づく実施の形態3におけるイン
クジェットヘッドの製造方法の第5の工程の説明図であ
る。
【図18】 本発明に基づく実施の形態3におけるイン
クジェットヘッドの製造方法の第6の工程の説明図であ
る。
【図19】 本発明に基づく実施の形態3におけるイン
クジェットヘッドの製造方法の第7の工程の説明図であ
る。
【図20】 本発明に基づく実施の形態3におけるイン
クジェットヘッドの製造方法の第8の工程の説明図であ
る。
【図21】 従来技術に基づくインクジェットヘッドの
分解斜視図である。
【符号の説明】
1,1a ベース部材、2,2a カバー部材、3 チ
ャンネル壁、4 チャンネル溝、5 電極、6 浅溝
部、7 ボンディングワイヤ、8 外部電極、9ノズル
板、10 ノズル孔、21,21a インク供給口、2
2,22a 共通インク室、23 電極引出部、24
電極分離溝、26 導電性部材、27マニホールド、3
0 ダイシングブレード、41 基板、51 絶縁膜、
68塗布溝、70 チャンバ、71 放電電極、72
RF発振器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 垣脇 成光 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 Fターム(参考) 2C057 AF84 AF93 AG45 AP59 BA05 BA14

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極と、前記電極を覆う絶縁膜を備える
    インクジェットヘッドの製造方法であって、 前記絶縁膜の表面を親水化するためにプラズマ処理を行
    なう親水化処理工程を含み、 前記プラズマ処理におけるパワー密度と処理時間の積が
    0.06W・秒/cm 2より大きく、211W・秒/c
    2より小さい、 インクジェットヘッドの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記絶縁膜はポリパラキシリレンを主成
    分とする、請求項1に記載のインクジェットヘッドの製
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記親水化処理工程は、酸素を含む雰囲
    気のプラズマによってなされる、請求項1または2に記
    載のインクジェットヘッドの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記雰囲気は空気である、請求項3に記
    載のインクジェットヘッドの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記プラズマ処理は、円筒型のプラズマ
    処理装置を用いて行なう、請求項3に記載のインクジェ
    ットヘッドの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007106050A (ja) * 2005-10-14 2007-04-26 Sharp Corp インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法

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