JP2003073981A - 皮革様シート - Google Patents

皮革様シート

Info

Publication number
JP2003073981A
JP2003073981A JP2001262519A JP2001262519A JP2003073981A JP 2003073981 A JP2003073981 A JP 2003073981A JP 2001262519 A JP2001262519 A JP 2001262519A JP 2001262519 A JP2001262519 A JP 2001262519A JP 2003073981 A JP2003073981 A JP 2003073981A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer
fiber
leather
elastic polymer
conjugate fiber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001262519A
Other languages
English (en)
Inventor
Kimio Nakayama
公男 中山
Nobuo Takaoka
信夫 高岡
Hideaki Adachi
秀昭 足立
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2001262519A priority Critical patent/JP2003073981A/ja
Publication of JP2003073981A publication Critical patent/JP2003073981A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Synthetic Leather, Interior Materials Or Flexible Sheet Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 カード処理およびニードルパンチ処理におい
ても繊維の長手方向に実質的に剥離することがなくカー
ド工程性およびニードルパンチ工程性が良好で、厚みの
薄い用途から厚い用途まで適用が可能な天然皮革ライク
な風合いのスエード調人工皮革及び銀付調人工皮革を提
供する。 【解決手段】 硬質成分と軟質成分からなる弾性ポリマ
ーと、弾性ポリマーの硬質成分と同系のポリマー種から
なる非弾性ポリマーが、相互に隣接し且つその接合界面
の少なくとも1部が繊維表面に露出している接合型複合
繊維、および該接合型複合繊維が2個以上に分割した接
合型複合繊維束、および高分子弾性体から構成される皮
革様シート。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来の人工皮革に
比べゴム感・反発感が少なく、柔軟で充実感に優れた天
然皮革ライクな風合い、外観を有する皮革様シートに関
する。更に詳しくは、本発明は、カード処理およびニー
ドルパンチ処理で不織布化する場合においても繊維の長
手方向に実質的に剥離、割繊することなく不織布化工程
性が良好な、繊維と高分子弾性体からなる皮革様シート
に関する。
【0002】皮革様シートの製造法としては、2〜4
デシテックス程度の繊度のナイロンやポリエステルのレ
ギュラー短繊維を不織布化して、極細化をはかることな
くそのままの繊度で皮革様シートに用いる方法、直接
紡糸法により0.1デシテックス程度の繊度で紡糸した
ナイロンやポリエステルの短繊維を不織布化し、そのま
まの繊度で人工皮革用シートに用いる方法、ナイロン
やポリエステルなどの1成分が他成分(海成分)に分散
した極細繊維発生型海島繊維からなる短繊維を不織布化
した後、溶剤抽出やアルカリ抽出により海成分を除去し
て極細化したナイロンやポリエステルの極細繊維を皮革
様シートに用いる方法、ナイロンとポリエステルな
ど、2成分が相互に隣接し且つその界面の少なくとも1
部が繊維表面に露出していた接合型複合繊維を不織布化
し、繊維の接合界面で2成分を剥離させた極細繊維を皮
革様シートに用いる方法、などがある。
【0003】のレギュラー繊維を用いる方法では、太
い繊度のナイロンやポリエステルで皮革様シートが構成
されているため、風合いが堅くて反発感が強く、柔軟な
天然皮革ライクな人工皮革は得られない。またスエード
感のあるものを得ることは困難である。の方法では、
不織布化する際の繊度が0.1デシテックス程度であり
人工皮革の不織布化に一般に使用されているカード法と
ニードル法で不織布化することができないため、スクリ
ム上に抄紙したショートカット繊維を水流絡合法などで
絡合する抄紙・水流絡合法で不織布化する方法が採られ
ており、人工皮革が広く使用されている靴用途などの厚
みの大きいの用途に適用できないのに加え、風合いが布
帛ライクで充実感に乏しく天然皮革ライクな人工皮革を
得ることは困難である。の方法は、一般にカード法と
ニードル法で不織布化が行われ、厚みの小さい用途から
大きい用途まで様々な用途に適用可能であり、また風合
いも柔軟な人工皮革を得ることが可能である。しかし、
海成分が例えばポリエチレンやポリスチレンなどの場合
にはトルエンやパークレンなどの有機溶剤を使用する必
要があり、アルカリ易溶解性の変性ポリエチレンテレフ
タレートなどの場合には高濃度アルカリ液を使用する必
要がある。近年、環境面からこのような有機溶剤や高濃
度アルカリ液およびその中和廃液などの削減が求めら
れ、また除去される海成分による廃棄物量の増加といっ
た問題もある。さらに抽出設備およびその回収や廃液設
備などの製造工程が複雑で生産性が悪い。
【0004】以上のように、は風合いの問題、は風
合いの問題および厚みの大きい用途への展開が困難であ
るといった問題、は環境面および生産性の問題を有し
ている。の方法は有機溶剤や高濃度アルカリ溶液とい
った環境への負荷の大きい溶剤を使用することなく、ま
た抽出等の複雑な製造設備を必要としないで繊維の極細
化を図れることから理想的な方法である。しかし接合型
複合繊維に使用する2成分のポリマーとしてナイロンと
ポリエステルなどの接合界面の接着性が弱い互いに非相
溶系の非弾性ポリマーが一般に使用される。このような
非相溶系の接合型複合繊維をカード法とニードル法で不
織布化した場合には、捲縮処理で接合型複合繊維長手方
向の接合界面でクラックが生成し、カード処理でそのク
ラックから剥離が進行し繊維が細化されてカード装置中
で詰まり、カードの紡出速度を著しく低下させ、更にニ
ードルパンチ処理で繊維の絡合が進まず不織布物性の著
しく低いものとなってしまう。そのため、接合型複合繊
維を皮革様シートに用いる場合には、長繊維を編織法で
編織物とする方法や、カードの紡出速度を著しく下げて
薄いウエブを作り水流絡合法で繊維を絡合させて不織布
化する方法などが一般に採られている。しかしながら該
方法では、厚みの薄いものしか得ることができず、また
風合いも布帛ライクで天然皮革ライクな風合いのものは
得られていない。
【0005】接合型複合繊維長手方向の接合界面の剥離
を防止する方法として、ナイロン6とナイロン12等の
ポリアミド系の非弾性ポリマーを接合型複合繊維の2成
分として使用する方法や、ポリエチレンテレフタレート
とポリブチレンテレフタレートあるいはアルカリ易減量
変性ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系の
非弾性ポリマーを接合型複合繊維の2成分として使用し
た方法などの同系の非弾性ポリマーを接合型複合繊維の
2成分に使用する方法が提案されている。該方法は、カ
ード法およびニードルパンチ法による不織布化工程性は
改良されるものの、不織布化した後に割繊することが著
しく困難で割繊不良となるため、風合いが堅くて反発感
が強く、またざらざらとした表面タッチでライティング
感も乏しく、天然皮革ライクな風合い・外観の人工皮革
を得ることが困難である。このような同系の非弾性ポリ
マーから構成される接合型複合繊維の分繊性を向上させ
る方法として、中空部分を有する接合型複合繊維を使用
することも提案されているが、該中空繊維では捲縮処理
における機械的応力で中空部分が潰れて変形し接合型複
合繊維長手方向の接合界面でクラックが生成し、カード
処理中にそのクラックから剥離が進行し繊維が細化され
てカード装置中で詰まり、カードの紡出速度を著しく低
下させるのに加え、ニードルパンチでの繊維の絡合が進
まず不織布の剥離強力の著しく低いものとなり、不織布
化工程の確保が困難となる。以上のように、今まで開示
されている2種の非弾性ポリマーからなる接合型複合繊
維を皮革様シートに用いる方法では、カード法およびニ
ードルパンチ法での不織布化工程性が良好で且つ柔軟で
充実感に優れた天然皮革ライクな風合いのものは得られ
ていない。
【0006】一方、人工皮革はナイロンやポリエステル
などの非弾性ポリマーからなる不織布に、弾性ポリマ
ー、主に湿式ポリウレタン溶液を含浸した後、湿式法ま
たは乾式法により該弾性ポリマーを凝固させる等の方法
で一般に繊維のバインダー処理を行っている。該方法で
はスポンジ状あるいはブロック状の弾性ポリマーが繊維
の周囲を覆い囲む構造となっているため、弾性ポリマー
特有のゴム感・反発感が強く、天然皮革に比べて充実感
等の感覚的性能が劣っている。他方、天然皮革は繊維の
みで形成されており、繊維が3次元的に緻密に絡合した
構造をとっている。人工皮革においても、繊維状の弾性
ポリマーを接合型複合繊維の1成分に用いて繊維状の弾
性ポリマーをバインダーとして用いることで、天然皮革
独特の風合い・充実感・外観を得ようとする試みが開示
されている。
【0007】弾性ポリマーと非弾性ポリマーを接合型複
合繊維の2成分に使用する例として、特開昭52−85
575号、特開昭52−85576号、特開昭52−8
5577号、特開平2−160964号等の公報が開示
されている。これらは何れも接合型複合繊維を構成する
ポリマーとして、接着性の弱い非相溶系の弾性ポリマー
と非弾性ポリマーを2成分に使用したものであり、接合
型複合繊維を構成する2種ポリマーの接着性が弱いこと
から、カード法およびニードルパンチ法で不織布化する
場合に接合型複合繊維長手方向の接合界面で剥離が生
じ、繊維が細化されてカード装置中で詰まり、カードの
紡出速度を著しく低下させるのに加え、ニードルパンチ
での繊維の絡合が進まず不織布の剥離強力の著しく低い
ものとなる。
【0008】また、特開昭52−87201号の公報で
は、種々の弾性ポリマーと種々の非弾性ポリマーからな
る接合型複合繊維を、弾性ポリマーの熱融着温度で接合
型複合繊維のエラストマー成分を熱融着させて皮革様シ
ートの表面を緻密化させる方法が開示されている。該方
法は、接合型複合繊維の弾性ポリマー成分をバインダー
として用いていることに主眼を置いたものであり、カー
ド法およびニードルパンチ法での不織布化工程性に関し
て全く考慮されておらず実用性に乏しい。また、高分子
弾性体を全く用いておらず接合型複合繊維を構成する弾
性ポリマーの熱融着のみで繊維のバインドを行っている
が、繊維同士を強固に熱接着させた場合には風合いが非
常に堅くなり柔軟な皮革様シートは得られないばかり
か、繊維が強く拘束されるため、引裂強力などの実用物
性に著しく劣ったものとなる。逆に、繊維同士を強固に
熱接着しない場合には、繊維の素抜けが生じ外観や充実
感に劣るばかりか、引張特性等の実用性能を満たすこと
ができない。更に、ポリブチレンテレフタレートとポリ
エステルエーテルエラストマーからなる接合型複合繊維
が例示されているが、ポリエステルエーテルエラストマ
ーはポリブチレンテレフタレートを硬質成分としたポリ
エステルエーテルエラストマーが一般的であり、該方法
では、弾性ポリマーの硬質成分と非弾性ポリマーが全く
同一の成分からなるために接着性が極めて高く、カード
法およびニードルパンチ法による不織布化工程性は良好
であるものの、不織布化した後に割繊することが極めて
困難となるため、風合いが堅くなるのに加え、ざらざら
とした表面タッチでライティング感に劣ったものとな
る。以上のように、今まで開示されている弾性ポリマー
と非弾性ポリマーを2成分とした接合型複合繊維を皮革
様シートに用いる方法では、カード法およびニードルパ
ンチ法での不織布化工程性が良好で且つ柔軟で充実感に
優れた天然皮革ライクな風合いと外観を有するのものは
得られていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の人工
皮革に比べゴム感・反発感が少なく、柔軟で充実感に優
れた天然皮革ライクな風合いを有する皮革様シートに関
する。更に詳しくは、本発明は、カード処理やニードル
パンチ処理で不織布化する場合において、接合型複合繊
維が接合界面で実質的に剥離することなく不織布化工程
性が良好で、柔軟で充実感に優れた天然皮革ライクな風
合いと外観を有する皮革様シートに関する。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、カード処
理やニードルパンチ処理で不織布化する場合において、
接合型複合繊維長手方向の接合界面で実質的に剥離する
ことなく不織布化工程性が良好で、柔軟で充実感に優れ
た天然皮革ライクな風合い、外観の皮革様シートを得る
ことを課題とし鋭意検討した結果、接合型複合繊維とし
て、硬質成分と軟質成分からなる弾性ポリマーと、弾性
ポリマーの硬質成分と同系の非弾性ポリマーが相互に隣
接し且つその接合界面の少なくとも1部が繊維表面に露
出している接合型複合繊維を用い、該接合型複合繊維、
および該接合型複合繊維が2個以上に分割した接合型複
合繊維束、および高分子弾性体から構成されていること
を特徴とする皮革様シートとすることで、上記課題を達
成することを見出した。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明に用いる接合型複合繊維
は、硬質成分と軟質成分からなる弾性ポリマーと、弾性
ポリマーの硬質成分と同系のポリマー種からなる非弾性
ポリマーが相互に隣接しその接合界面の少なくとも1部
が繊維表面に露出している接合型複合繊維であることが
必須である。ここで、同系のポリマー種とは、ポリエス
テルと同系のポリマー種については主としてエステル結
合を有するポリエステル系ポリマーを指し、またポリア
ミドと同系のポリマー種については主としてアミド結合
を有するポリアミド系ポリマーを指す。硬質成分と軟質
成分からなる弾性ポリマーと、弾性ポリマーの硬質成分
と同系のポリマー種からなる非弾性ポリマーから構成さ
れた接合型複合繊維を用いることで、接合型複合繊維長
手方向の接合界面の接着性を充分に高めると同時に、弾
性ポリマーの弾性特性によって捲縮処理での機械的衝撃
を緩和して接合界面のクラック生成を抑制することがで
きる。その結果、カード処理およびニードルパンチ処理
において接合型複合繊維長手方向の接合界面で実質的に
剥離することなくカード性が良好で、更にニードルパン
チ処理での繊維絡合を進め、充分な剥離強力を有する不
織布を得ることができる。
【0012】接合型複合繊維として弾性ポリマーと、弾
性ポリマーの硬質成分と同系のポリマー種ではない非弾
性ポリマーから構成された接合型複合繊維を用いた場合
には、接合型複合繊維の接合界面の接着力が不足し、カ
ード処理およびニードルパンチ処理において接合型複合
繊維長手方向の接合界面で剥離が生じ不織布化工程性が
著しく劣ったものとなる。また、本発明に用いる接合型
複合繊維を構成するポリマーは、弾性ポリマーと非弾性
ポリマーであることが必須である。接合型複合繊維の1
成分に弾性ポリマーを用いることで、弾性ポリマーの弾
性特性によって捲縮処理での機械的衝撃を緩和して接合
界面のクラック生成を抑制し、カード処理およびニード
ルパンチ処理における接合型複合繊維長手方向の接合界
面での剥離を抑制することができる。特に、分繊しやす
い繊維構造である中空部分を有する接合型複合繊維を用
いた場合には、繊維構造上、捲縮工程で中空部分が潰さ
れて変形する際に接合界面でクラックが生成しやすく接
合型複合繊維長手方向の接合界面で剥離が起こり易い
が、接合型複合繊維の1成分に弾性ポリマーを用いるこ
とで、クラック生成による接合型複合繊維長手方向の接
合界面での剥離を抑制することができる。また、接合型
複合繊維の1成分に弾性ポリマーを用いることで、繊維
自体が柔らかくなり、風合いが大幅に柔軟化される。更
に、弾性ポリマーと非弾性ポリマーでは物理的性質ある
いは化学的性質が異なることから、不織布化処理の後に
物理的処理や化学的処理などで割繊が起こり易く、割繊
性にも優れている。
【0013】また2種の同系の非弾性ポリマーで構成さ
れている場合には、接合型複合繊維の接合界面の接着力
が高すぎ、不織布化処理後の割繊が極めて困難となる結
果、風合いが堅くて反発感が強く、またざらざらとした
表面タッチでライティング感も乏しく、天然皮革ライク
な風合い・外観の人工皮革を得ることが困難となる。逆
に、接合型複合繊維が2種の同系の弾性ポリマーで構成
されている場合には、不織布化工程性は良好であり、ま
た繊維自体が柔らかいため割繊が完全に起こらずとも柔
軟な風合いとなるが、弾性ポリマーの粘着性に起因して
各種の工程性に著しく劣ったものとなるばかりか、得ら
れる皮革様シートの強度等の実用性能が著しく劣るもの
となり実用的ではない。本発明の接合型複合繊維は、弾
性ポリマーの硬質成分と非弾性ポリマーが同系のポリマ
ーからなるため、カード処理およびニードルパンチ処理
における接合型複合繊維の接合界面の実質的に剥離は起
らず良好な不織布化工程を確保しつつ、不織布化した後
の物理的あるいは化学的処理により容易に部分的な割繊
を起こすことが可能である。また接合型複合繊維の1成
分に弾性ポリマーを用いており繊維自体が柔らかいため
に、接合型複合繊維が完全に割繊せずとも部分的な割繊
を起こすだけで柔軟な風合いとなり、天然皮革のような
柔軟性と充実感を有し、表面タッチや外観の良好なスエ
ード調人工皮革が得られることを見出した。
【0014】本発明の接合型複合繊維を構成する弾性ポ
リマーと非弾性ポリマーの重量比率(弾性ポリマー/非
弾性ポリマー)としては、割繊が完全に起こらずとも柔
軟性や低反発性を確保できる点、および弾性ポリマーに
起因する工程性および実用性能の問題を防ぐ点から、1
5/85〜50/50が好ましく、25/75〜40/
60が更に好ましい。
【0015】本発明の接合型複合繊維を構成する硬質成
分と軟質成分からなる弾性ポリマーとしては、割繊が完
全に起こらずとも柔軟性や低反発性を確保できる点、お
よび弾性ポリマーに起因する工程性および物性の問題を
防ぐ点から、弾性ポリマーを構成する硬質成分と軟質成
分の重量比率(硬質成分/軟質成分)は、80/20〜
40/60であることが好ましく、70/30〜50/
50であることが更に好ましい。本発明の接合型複合繊
維を構成する弾性ポリマーとは、該ポリマーを室温にて
50%伸長した場合の1分後の伸長回復率が50%以上
であるポリマーを意味し、また非弾性ポリマーとは同様
の方法で測定した伸長回復率が50%以下または室温に
おいて限界伸長率が50%に達しないポリマーを意味し
ている。また、弾性ポリマーの硬質成分とは、該硬質成
分のみからなるポリマーのガラス転移温度が室温以上で
あって室温にて50%伸長した場合の1分後の伸長回復
率が50%以下または室温において限界伸長率が50%
に達しないものを意味しており、弾性ポリマーの軟質成
分とは、該軟質成分のみからなるポリマーの融点が50
℃程度以下であって50℃程度において液状あるいは半
液状のものを意味している。
【0016】本発明の接合型複合繊維は、硬質成分と軟
質成分からなる弾性ポリマーと、弾性ポリマーの硬質成
分と同系のポリマー種からなる非弾性ポリマーが相互に
隣接し且つその界面の少なくとも1部が繊維表面に露出
している接合型複合繊維であって、カード処理およびニ
ードルパンチ処理における接合型複合繊維長手方向の接
合界面の剥離が実質的に起こらず不織布化工程性を確保
しつつ、不織布化処理後に容易に部分的な割繊を起こす
ことが容易となる点で、接合型複合繊維を構成する弾性
ポリマーの硬質成分および非弾性ポリマーがポリアミド
を主体としている場合には、弾性ポリマーの硬質成分の
ポリマー繰り返し単位の炭素数/アミド基数と、非弾性
ポリマーのポリマー繰り返し単位の炭素数/アミド基数
の差が1以上であるポリアミドから構成されている接合
型複合繊維が好ましい。
【0017】例えば、ナイロン99(炭素数/アミド基
数=9)、ナイロン9−12(炭素数/アミド基数=1
0.5)、ナイロン10(炭素数/アミド基数=1
0)、ナイロン11(炭素数/アミド基数=11)、ナ
イロン12(炭素数/アミド基数=12)やそれらの共
重合体からなるポリアミド系ポリマーを硬質成分とし、
且つポリエーテルあるいはポリエステルあるいはポリエ
ーテルエステルあるいはポリカーボネートからなるポリ
マーを軟質成分として組み合わせたポリアミド系エラス
トマーを弾性ポリマーとし、ナイロン6(炭素数/アミ
ド基数=6)、ナイロン66(炭素数/アミド基数=
6)やそれらの共重合体からなるポリアミド系ポリマー
を非弾性ポリマーとする場合がナイロン系接合型複合繊
維の好適な例としてあげられる。また、ナイロン6(炭
素数/アミド基数=6)、ナイロン6−9(炭素数/ア
ミド基数=7.5)からなるポリアミド系ポリマーを硬
質成分とし、且つポリエーテルあるいはポリエステルあ
るいはポリエーテルエステルあるいはポリカーボネート
からなるポリマーを軟質成分として組み合わせたポリア
ミド系エラストマーを弾性ポリマーとし、ナイロン11
(炭素数/アミド基数=11)、ナイロン12(炭素数
/アミド基数=12)およびそれらの共重合体からなる
ポリアミド系ポリマーを非弾性ポリマーとする場合もナ
イロン系接合型複合繊維の好適な例としてあげられる。
【0018】また、接合型複合繊維を構成する弾性ポリ
マーの硬質成分および非弾性ポリマーが、アルキレンテ
レフタレートを主体としており、弾性ポリマーの硬質成
分のポリマー繰り返し単位の炭素数/エステル基数と、
非弾性ポリマーのポリマー繰り返し単位の炭素数/エス
テル基数の差が1以上であるアルキレンテレフタレート
から構成されている接合型複合繊維が好ましく、例え
ば、ポリブチレンテレフタレ―ト(炭素数/エステル基
数=5)を硬質成分とし且つポリエーテルあるいはポリ
エステルあるいはポリエーテルエステルあるいはポリカ
ーボネートからなるポリマーを軟質成分として組み合わ
せたポリエステル系エラストマーを弾性ポリマーとし、
ポリエチレンテレフタレート(炭素数/エステル基数=
4)を主成分とした非弾性ポリマーとする場合がポリエ
ステル系接合型複合繊維の好適な例としてあげられる。
【0019】弾性ポリマーの硬質成分のポリマー繰り返
し単位の炭素数/アミド基数と、非弾性ポリマーのポリ
マー繰り返し単位の炭素数/アミド基数の差が1未満で
あるポリアミドから構成されている接合型複合繊維の場
合、および、弾性ポリマーの硬質成分のポリマー繰り返
し単位の炭素数/エステル基数と、非弾性ポリマーのポ
リマー繰り返し単位の炭素数/エステル基数の差が1未
満であるポリエステルから構成されている接合型複合繊
維の場合には、弾性ポリマーと非弾性ポリマーの接着性
が高くなる傾向があり、カード法およびニードルパンチ
法による不織布化工程性は良好であるものの、不織布化
した後に割繊することが困難となるため、風合いが堅く
なるのに加えて、ざらざらとした表面タッチでライティ
ング感に乏しく外観に劣ったものとなる傾向がある。
【0020】また、本発明の接合型複合繊維には、上記
した硬質成分と軟質成分からなる弾性ポリマーと、弾性
ポリマーの硬質成分と同系の非弾性ポリマーからなるこ
とが必須であるが、本発明の風合いおよび不織布化等の
工程性を損なわない範囲で、本発明の範疇に入らないポ
リマーを少量混合しても構わない。また、本発明におい
て、皮革様シートを構成する繊維は、上記した接合型複
合繊維からなる場合が必須であるが、本発明の風合いお
よび不織布化等の工程性を損なわない範囲で、本発明の
範疇に入らない繊維を少量混合しても構わない。さらに
繊維中には、各種安定剤や着色剤などを混合してもよ
い。
【0021】本発明の接合型複合繊維は、上記した弾性
ポリマーと非弾性ポリマーとを溶融状態にし、これを常
法により交互に配列させた状態で口金ノズルに導き、該
ノズル孔より吐出させることにより得ることができる。
また、接合型複合繊維の断面形状としては、特に限定さ
れず、用途に応じて多層型、花弁型、中空多層型、中空
花弁型など任意に選ぶことができるが、中空多層型、中
空花弁型などの割繊の起こり易い断面形状を用いた場合
には、不織布化処理後に割繊性を高めることが特に容易
であり、風合い・外観が特に優れたものを得ることがで
きる。また、接合数も用途、性能に応じて任意に選ぶこ
とができるが、接合型複合繊維を割繊し極細化したとき
の繊度が小さくなって表面タッチや外観および風合いが
良好となることから10以上の接合数が好ましく、より
好ましくは20以上である。また本発明の接合型複合繊
維は、弾性ポリマーと非弾性ポリマーが相互に隣接し且
つその接合界面の少なくとも1部が繊維表面に露出して
いた接合型複合繊維であることが必須である。接合界面
の少なくとも1部が繊維表面に露出していない接合型複
合繊維を用いた場合には、接合型複合繊維を割繊するこ
とが困難となり、表面タッチや外観、風合いが劣ったも
のとなる。なお、接合型複合繊維の接合数に関しては、
走査型電子顕微鏡で接合型複合繊維の断面を観察する方
法により容易に確認できる。また、接合型複合繊維を構
成する弾性ポリマーと非弾性ポリマーのポリマー種類や
重量比率は、走査型電子顕微鏡で接合型複合繊維の断面
を観察する方法、および溶解性や分解性を異にする任意
の溶剤等を選んで接合型複合繊維から任意の成分を除去
した後に成分分析を行う方法などにより確認することが
できる。
【0022】接合型複合繊維は、必要に応じて延伸、捲
縮、熱固定、油剤付与、カットなどの処理工程を経て繊
度1〜20デニールの繊維とする。接合型複合繊維の単
糸繊度は、特に限定されず用途によって任意に繊度を選
ぶことができるが、カード処理およびニードルパンチ処
理に適した繊度であって且つ得られる皮革様シートの風
合いが優れる点から、1デシテックス〜10デシテック
スが好ましく、2デシテックス〜5デシテックスがより
好ましい。また、カット長もその用途により任意に選ぶ
ことができるが、カード処理およびニードルパンチ処理
に適したカット長が好ましく、10mm〜100mmが
好ましく、25mm〜75mmがより好ましい。接合型
複合繊維をカードで解繊し、ウェバーを通してランダム
ウェブまたはクロスラップウェブを形成し、得られたウ
ェブを所望の重さ、厚さに積層し、次いでニードルパン
チで絡合処理を行なって不織布とする。不織布化の方法
に関しては厚みの大きい不織布が得られる点、および剥
離強力等の不織布物性に優れる点でカード法およびニー
ドルパンチ法で不織布化を行うことが好ましいが、抄紙
法や水流絡合法など、カード法およびニードルパンチ法
以外の公知の不織布化法で行うことも可能である。本発
明に用いる接合型複合繊維は、弾性ポリマーと、弾性ポ
リマーの硬質成分と同系の非弾性ポリマーから構成され
ているため、捲縮処理での接合界面のクラックが起こり
にくく、カード処理およびニードルパンチ処理において
繊維長手方向の接合界面の剥離が起こりにくく、厚みの
薄いものから厚いものまで充分な剥離強力を有した不織
布を得ることができる。また必要に応じて、不織布に溶
解除去可能な樹脂、例えばポリビニルアルコール系樹脂
を付与して不織布の仮固定を行っても構わない。
【0023】該不織布は、皮革様シートとした際の厚さ
等を考慮して目的に応じた形態にする必要が有るが、目
付けとしては100〜3000g/m、より好ましく
は200〜2000g/m、厚みとしては1〜20m
m、より好ましくは1〜10mmの範囲が工程中での取
り扱いの容易さの観点から好ましい。
【0024】本発明では、繊維絡合不織布の繊維を固定
するため高分子弾性体を用いる。ここで高分子弾性体と
は非繊維状の高分子弾性体を示し、接合型複合繊維の1
成分を構成している弾性ポリマーを含まない。高分子弾
性体は、繊維絡合不織布に少量の溶剤系や水系の高分子
弾性体を含浸、凝固して繊維絡合不織布をバインドする
が、高分子弾性体の量が多い場合にはゴム感や反発感が
強くなって天然皮革ライクな風合いが得られにくくなる
ことから、繊維絡合不織布に対する高分子弾性体の量と
しては35重量%以下にすることが好ましく、更に好ま
しくは25重量%以下である。逆に、弾性重合体の量が
少ない場合には繊維の素抜けが生じて外観や充実感に劣
るばかりか、引張強力や剥離強力などの実用性能に問題
が生じるため、繊維絡合不織布に対して10重量%程度
以上の高分子弾性体を使用することが好ましい。
【0025】繊維絡合不織布に含浸する弾性重合体とし
ては、従来から皮革様シートの製造に使用されている高
分子弾性体であれば特に限定されず、ポリウレタン系樹
脂、軟質アクリル系樹脂、ポリウレタンアクリル複合樹
脂、ポリエステルエラストマーで代表される軟質ポリエ
ステル系樹脂、ポリアミドエラストマーで代表される軟
質ポリアミド系樹脂、軟質ポリオレフィン系樹脂などが
例として挙げられる。中でも、繊維絡合不織布をバイン
ドする能力が高く引張強力や剥離強力等の実用性能に優
れる点、および得られる皮革様シートの風合いが優れる
点から、ポリウレタン系樹脂や軟質アクリル系樹脂、ポ
リウレタンアクリル複合樹脂が好適な例として挙げられ
る。弾性重合体を溶剤に溶解あるいは水などの非溶剤中
に分散させて重合体液としたのち、繊維絡合不織布に含
浸し、重合体の非溶剤で処理して湿式凝固させるか、あ
るいは熱処理や熱水処理などを施して乾式凝固や熱水凝
固あるいは感熱ゲル化処理を施し基体とする。中でも、
有機溶剤を使用することなく環境への負荷が少ない点か
ら、水分散型エマルジョンを含浸付与して得られるもの
であることが好適な例として挙げられる。また、重合体
液には必要に応じて着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤等
の如き添加剤を配合しても構わない。接合型複合繊維と
高分子弾性体の重量比率に関しては、溶解性や分解性を
異にする任意の溶剤を選び、皮革様シートから任意の成
分を除去する方法などにより確認できる。
【0026】また、比重調整や基体表面の平滑化のため
繊維絡合不織布に加圧加熱処理を行う方法が一般に採ら
れるが、加圧加熱等の処理により接合型複合繊維を構成
する弾性ポリマーが、隣接する接合型複合繊維と適度に
融着してバインダーの役割を果たす。それにより、高分
子弾性体の量を少量に減らすことができるため、天然皮
革のような繊維質基体構造とすることができる。ただ
し、接合型複合繊維を構成する弾性ポリマーが隣接する
接合型複合繊維と適度に融着させる方法については、弾
性ポリマーの融着が起こる方法であれば特に限定され
ず、加熱溶融させて熱融着する方法や、溶剤や膨潤剤で
膨潤させて融着する方法、および高圧で融着する方法な
どを任意に選ぶことができる。
【0027】本発明の皮革様シートは、弾性ポリマー
と、弾性ポリマーの硬質成分と同系のポリマー種からな
る非弾性ポリマーから接合型複合繊維が構成されている
ため、弾性ポリマーと隣接する接合型複合繊維の接着性
が高く屈曲等の揉みでも融着が外れにくく、少量の融着
で繊維絡合不織布をバインドすることができる。ただ
し、高分子弾性体を全く使用せず接合型複合繊維を構成
する弾性ポリマーの融着のみで繊維絡合不織布をバイン
ドする場合には、接合型複合繊維を構成する弾性ポリマ
ーを溶解あるいは熱融解させて強く加圧して強固に繊維
同士を融着させないと繊維の素抜けが生じて強度等の実
用性能を満たすことが困難となり、そうした場合には風
合いが非常に堅いものとなり、また繊維が強く拘束され
た状態となるために引裂強力等の実用物性が著しく劣っ
たものとなる。従って、柔軟で充実感に優れた天然皮革
ライクな風合いを確保するためには、接合型複合繊維と
して、弾性ポリマーと、弾性ポリマーの硬質成分と同系
のポリマー種からなる非弾性ポリマーから接合型分割繊
維を用いること、および構成繊維絡合不織布のバインダ
ーとして、接合型複合繊維を構成する弾性ポリマーの融
着と高分子弾性体の2種類のバインダーを併用すること
が好ましい。
【0028】必要に応じて、シートを厚み方向にスライ
スして2分割処理を行う。本発明の皮革様シートは、厚
みの薄い物から厚い物まで任意の厚みの物を製造するこ
とができるため、靴用、家具用、車両用、鞄用、衣料用
などの幅広い用途に適用できる。
【0029】スエードタイプはその一面をバフィングな
どで立毛を有する面とする。本発明の接合型複合繊維
は、弾性ポリマーの硬質成分と非弾性ポリマーが同系の
ポリマーを用いているため、不織布化工程性が良好で、
しかも不織布化処理を行った後に、物理的処理や化学的
処理などで容易に部分的な割繊を起こすことができる。
接合型複合繊維を割繊させる方法に関しては、バフィン
グなどの機械的応力で基体表面の接合型複合繊維を割繊
する方法や、浸透剤や膨潤剤、離型剤などの各種添加剤
を接合型複合繊維中に添加したり含浸やグラビア法等で
基体に付与する、或いはサーキュラーなどの揉み処理を
施すなどで、基体表面あるいは基体表面と基体内部を割
繊する方法などを任意に選ぶことができる。また、基体
表面に存在する接合型複合繊維の分割割合と基体内部に
存在する接合型複合繊維の分割割合も任意に選ぶことが
できるが、表面繊維の素抜けが起こりにくく耐ピリング
性などの表面摩耗性に優れることから、基体表面の分割
割合を基体内部の分割割合より大きくすることが好まし
い。
【0030】得られたシートを繊維の種類に応じて酸性
染料、金属錯塩染料、分散染料などを主体とした染料を
用いて、通常の染色方法により染色を行う。本発明の皮
革様シートは、弾性ポリマーおよび弾性ポリマーと同系
の非弾性ポリマーから接合型複合繊維が構成されている
ため、弾性ポリマーと非弾性ポリマーの染色性および発
色性が類似しており、色斑などが起こりにくく染色性に
優れている。また、必要に応じて染色したスエ―ド調繊
維質基体を、もみ、柔軟化処理、ブラッシングなどの仕
上げ処理を行ないスエ―ド調人工皮革が得られる。ま
た、染色処理や、もみ、柔軟化処理、ブラッシングなど
の仕上げ処理で接合型複合繊維の割繊を促進させても構
わない。
【0031】本発明のスエード調人工皮革は、表面タッ
チや外観が優れることから、基体表面に存在する接合型
複合繊維の分割割合は70%以上で、その平均繊度は
0.7デシテックス以下であることが好ましい。分割割
合が70%未満である場合やその平均繊度が0.7デシ
テックスを越える場合には、ざらざらとした表面タッチ
となり、外観も劣ったものとなる傾向がある。スエード
調人工皮革の表面を構成する接合型複合繊維の平均繊度
は、走査型電子顕微鏡で皮革様シートの断面および表面
を観察する方法などで確認できる。またスエード調人工
皮革の表面に存在する接合型複合繊維の分割割合は、走
査型電子顕微鏡でスエード調人工皮革の表面を観察して
下記の計算式に従い分割割合を計算した。
【0032】分割割合(%)=(2個以上に分割してい
る接合型複合繊維束/全繊維束)×100(%)
【0033】銀付きタイプとする場合には、銀面層とな
る表面被覆層を離型性支持体上にポリウレタン等の弾性
ポリマー溶液または分散液等を塗布し、更に必要があれ
ば着色剤を添加したポリウレタン等の弾性ポリマー溶液
または分散液を塗布し、塗布した被膜層がまだ粘着性の
あるうちに絡合不織布に接合して一体化する方法、ある
いは乾燥させた被膜層を柔軟な接着剤で絡合不織布に接
合して一体化するなどの転写法、あるいはポリウレタン
などの弾性ポリマー溶液または分散液を絡合不織布に刻
目ロールで塗布積層して乾燥する方法あるいはロールコ
ーティング法等で塗布し湿式凝固し乾燥し次いで表面着
色するなどで表面被覆層を形成した後に、エンボス加工
して仕上げるコーティング法等によって表面被膜層を形
成する方法などで銀面層を形成する。また必要に応じて
柔軟化処理や染色処理や撥水剤処理などの仕上げ処理を
行い銀付き皮革様シートとするなど、一般に用いられる
何れの方法でも製造することができる。銀面層の厚み
は、10μm〜500μmの範囲が好ましく10μmよ
り小さいと表面の平滑性が得られにくく、500μmを
超えると風合いのバランスが崩れる傾向がある。
【0034】中でも、人体に有害な有機溶剤を使用する
ことなく銀付きタイプが得られることから、ポリウレタ
ン系などの水系分散液を使用した方法が好適な例として
挙げられる。また、接合型複合繊維を構成する弾性ポリ
マーが熱変形性および熱固定性に優れる特性が活かさ
れ、エンボス処理をした場合のエンボス性およびエンボ
スしぼ保持性に優れることから、エンボス加工して仕上
げるコーティング法が好適な例として挙げられる。
【0035】このようにして得られたスエード調人工皮
革および銀付き調人工皮革は、従来の人工皮革に比べゴ
ム感・反発感が少なく柔軟で充実感に優れた天然皮革ラ
イクな風合いを有しており、スエードタイプおよび銀付
きタイプとして衣料用、家具用、靴用、鞄用などの用途
に適用できる。
【0036】
【実施例】次に、本発明の実施態様を具体的な実施例で
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。なお、実施例中の部および%は、ことわりのな
い限り重量に関するものである。
【0037】実施例1 硬質成分がナイロン12(炭素数/アミド基数=12)
で、軟質成分がポリテトラメチレングリコールで重量比
率が70/30であるナイロン12系ポリアミドエラス
トマー[弾性ポリマー]と、ナイロン6[非弾性ポリマ
ー](炭素数/アミド基数=6)を用いて、弾性ポリマ
ーと非弾性ポリマーの重量比率が30/70の割合で、
弾性ポリマーが11層、非弾性ポリマーが10層の21
層に交互に隣接して配列させ且つその接合界面の少なく
とも1部が繊維表面に露出した21層多層型断面となる
よう口金より吐出させて紡糸して接合型複合繊維を得
た。得られた接合型複合繊維を3倍に延伸し、機械捲縮
を付与した後、繊維長51mmに切断して単糸繊度3.3
デシテックスの接合型複合短繊維を得た。この接合型複
合短繊維の断面を走査型電子顕微鏡で観察して接合界面
のクラックや割繊を調べたところ、クラックや割繊はほ
とんど見られなかった。接合型複合短繊維をカードで解
繊した後、クロスラップウェバーでウェブとし、次に、
ニードルパンチにより、目付1000g/mの繊維絡
合不織布とした。カードへの捲き付きも無く、ニードル
パンチ後の繊維絡合体の剥離強力も15kg/2.5cmと充分
に高いものであり不織布化工程性は良好であった。また
ニードルパンチ工程後の接合型複合短繊維の断面を走査
型電子顕微鏡で観察したが、接合界面の割繊はほとんど
見られなかった。このようにして得られた繊維絡合不織
布にポリエーテル系ポリウレタン25%を主体とする水
系ポリウレタンエマルジョン組成物を固形分重量が繊維
絡合不織布の15重量%になるよう含浸し、熱処理を施
した後、熱プレス処理を行った。
【0038】スエード調人工皮革の仕上げ方法:得られ
たシートを2分割処理し、一面をバフィングして厚さ
1.4mmに厚み合わせを行なった後、他の面をエメリー
バフ機で処理し、さらにIrgalan Red 2GL(Chiba Geigy
社製)を用いて、4%owfの濃度で染色した。仕上げ
をして得られたスエード調人工皮革の基体断面および基
体表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、弾性ポリ
マーと非弾性ポリマーからなる接合型複合繊維、および
接合型複合繊維が2個以上に分割した接合型複合繊維
束、および高分子弾性体が混在した構造になっており、
また表面の接合型複合繊維の分割割合は98%で、その
平均繊度は0.2デシテックスであった。得られたスエ
ード調人工皮革は反発感やゴム感が少なく柔軟で充実感
に優れた天然皮革ライクな風合いであり、また色斑も少
なく発色性に優れ、表面タッチやライティングに優れ良
好な外観であった。
【0039】また、上記のシートを下記の方法で銀付調
人工皮革に仕上げたところ、反発感やゴム感が少なく柔
軟で充実感に優れた天然皮革ライクな風合いであった。
また折れ皺感が天然皮革ライクであり外観も優れたもの
であった。
【0040】銀付調人工皮革の仕上げ方法:上記の繊維
質基体の一面をバフィングして厚さ1.20mmに厚み合
わせを行なった後、表面を160℃のフラットロール面
に接触させて表面平滑化処理を行った後、ポリウレタン
20%水溶液をグラビアロールで塗布し、更に仕上黒顔
料添加ポリウレタン10%水溶液をグラビアロールで塗
布し厚み70μmの銀面層を得た。そしてポリウレタン
塗布面を加熱エンボスロールでエンボシィングして銀付
調人工皮革に仕上げた。得られた銀付調人工皮革は、柔
軟で充実感に優れ反発感やゴム感が少なく天然皮革に近
い風合いであった。また折れ皺感が天然皮革ライクであ
り外観も優れたものであった。
【0041】実施例2 弾性ポリマーをナイロン12系アミドエラストマーか
ら、硬質成分がポリブチレンテレフタレート(炭素数/
エステル基数=5)で軟質成分がPTMGで重量比率が
50/50であるポリエステルエラストマーに変更し、
非弾性ポリマーをナイロン6からイソフタル酸8mol変
性ポリエチレンテレフタレート(炭素数/エステル基数
=4)に変更し、分散染料を用いて染色した以外は実施
例1と同様の操作を行いスエード調人工皮革を得た。得
られたスエード調人工皮革は実施例1と同様に天然皮革
に近い風合いで外観も良好なものであった。また走査型
電子顕微鏡で観察したところ、基体表面の接合型複合繊
維の分割割合は92%で、その平均繊度は0.4デシテ
ックスであった。
【0042】また、実施例2のシートを実施例1の方法
で銀付調人工皮革に仕上げたところ、柔軟で充実感に優
れ反発感やゴム感が少なく天然皮革に近い風合いであっ
た。また折れ皺感が天然皮革ライクであり外観も優れた
ものであった。
【0043】実施例3 弾性ポリマーを硬質成分がナイロン99(炭素数/アミ
ド基数=9)で軟質成分がポリプロピレングリコールで
重量比率が65/35であるナイロン99系ポリアミド
エラストマーに変更した以外は実施例1と同様の操作を
行いスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人
工皮革は実施例1と同様に天然皮革に近い風合いで外観
も良好なものであった。また走査型電子顕微鏡で観察し
たところ、表面の接合型複合繊維の分割割合は95%
で、その平均繊度は0.3デシテックスであった。
【0044】実施例4 36層中空花弁断面となるよう口金より吐出させて紡糸
して接合型複合繊維を得た以外は、実施例1と同様の操
作を行いスエード調人工皮革を得た。得られたスエード
調人工皮革は実施例1以上に柔軟で表面タッチや外観に
優れたものであった。また走査型電子顕微鏡で観察した
ところ、表面の接合型複合繊維の分割割合は100%
で、その平均繊度は0.1デシテックスであった。
【0045】実施例5 弾性ポリマーをナイロン12系アミドエラストマーか
ら、硬質成分がポリブチレンテレフタレート(炭素数/
エステル基数=5)で軟質成分がポリテトラメチレング
リコールで重量比率が50/50であるポリエステルエ
ラストマーに変更し、非弾性ポリマーをナイロン6から
ポリブチレンテレフタレート(炭素数/エステル基数=
5)に変更して、分散染料で染色した以外は実施例1と
同様の操作を行いスエード調人工皮革を得た。得られた
スエード調人工皮革を走査型電子顕微鏡で観察したとこ
ろ、表面の接合型複合繊維の分割割合は45%で、その
平均繊度は1.4デシテックスであり、天然皮革のよう
な風合い・タッチおよび外観を有するものの、実施例1
に比べて風合いがやや堅く、表面タッチとライティング
感に劣る傾向であった。
【0046】実施例6 水系ポリウレタンエマルジョン組成物を固形分重量が繊
維絡合不織布の50重量%になるよう含浸した以外は実
施例1と同様の操作を行った。得られたスエード調人工
皮革は、天然皮革のような充実感を有するものの、実施
例1に比べゴム感・反発感が強く、風合いおよび外観に
劣る傾向であった。
【0047】比較例1 弾性ポリマーのナイロン12系アミドエラストマーから
非弾性ポリマーであるナイロン12(炭素数/アミド基
数=12)に変更した以外は実施例4と同様の操作を行
ったが、得られたスエード調人工皮革は、堅くて反発感
が強く風合いに劣るものであり、走査型電子顕微鏡で観
察したところ、表面および内部共に繊維の割繊がほとん
ど起こっておらず、表面の接合型複合繊維の分割割合は
20%で、その平均繊度は3.0デシテックスであり表
面のライティング感が無く外観も著しく劣るものであっ
た。
【0048】比較例2 弾性ポリマーをアミドエラストマーから、硬質成分がポ
リブチレンテレフタレート(炭素数/エステル基数=
5)で軟質成分がポリテトラメチレングリコールで重量
比率が50/50であるポリエステルエラストマーに変
更した以外は実施例1と同様の操作を行ったが、カード
工程で糸割れが多発し、またニードルパンチ工程で繊維
の絡合が進まず剥離強力も極めて低く、カード工程性お
よびニードルパンチ工程性に大きく劣り生産性の無いも
のであった。
【0049】比較例3 非弾性ポリマーをナイロン6からポリエチレンテレフタ
レートに変更し、分散染料で染色した以外は実施例1と
同様の操作を行ったが、カード工程で糸割れが多発し、
またニードルパンチ工程で繊維の絡合が進まず剥離強力
も極めて低く、カード工程性およびニードルパンチ工程
性に大きく劣り生産性の無いものであった。
【0050】比較例4 非弾性ポリマーのナイロン6から、弾性ポリマーである
硬質成分がナイロン6で軟質成分がポリプロピレングリ
コールで重量比率が70/30であるナイロン6系ポリ
アミドエラストマーに変更した以外は実施例1と同様の
操作を行ったが、紡糸工程や延伸工程等で繊維同士の膠
着が起こり工程性に劣るものであった。また得られたス
エード調人工皮革も、引張強力や引裂強力に劣るもので
あった。
【0051】比較例5 水系ポリウレタンエマルジョン組成物の含浸を行わない
以外は実施例2と同様の操作を行ったが、得られたスエ
ード調人工皮革は、繊維の素抜けが多く外観が著しく劣
るものであり、引張強力や剥離強力も著しく劣ったもの
であった。また、熱プレス温度や圧力を上げる方法も検
討したが、得られたスエード調人工皮革は、風合いが非
常に堅く、また引裂強力が著しく劣るものであった。
【0052】
【発明の効果】本発明により得られるシートは従来の人
工皮革に無い天然皮革ライクな風合い・外観であり、し
かも厚みの薄い物から厚い物まで得ることが可能である
ため、スエードタイプあるいは銀付タイプとして靴用、
家具用、衣料用、鞄用などの広い用途に適用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F055 AA02 BA12 DA07 EA04 EA05 EA14 EA24 EA34 FA18 GA03 HA04 HA11

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】硬質成分と軟質成分からなる弾性ポリマー
    と、弾性ポリマーの硬質成分と同系のポリマー種からな
    る非弾性ポリマーが、相互に隣接し且つその接合界面の
    少なくとも1部が繊維表面に露出している接合型複合繊
    維、および該接合型複合繊維が2個以上に分割した接合
    型複合繊維束、および高分子弾性体から構成されている
    ことを特徴とする皮革様シートの製造方法。
  2. 【請求項2】接合型複合繊維および接合型複合繊維束
    が、下記の要件(1)あるいは(2) (1)接合型複合繊維および接合型複合繊維束を構成す
    る弾性ポリマーの硬質成分および非弾性ポリマーがポリ
    アミドを主体としており、弾性ポリマーの硬質成分のポ
    リマー繰り返し単位の炭素数/アミド基数と、非弾性ポ
    リマーのポリマー繰り返し単位の炭素数/アミド基数の
    差が1以上であるポリアミドから構成されていること、
    (2)接合型複合繊維および接合型複合繊維束を構成す
    る弾性ポリマーの硬質成分および非弾性ポリマーが、ポ
    リアルキレンテレフタレートを主体としており、弾性ポ
    リマーの硬質成分のポリマー繰り返し単位の炭素数/エ
    ステル基数と、非弾性ポリマーのポリマー繰り返し単位
    の炭素数/エステル基数の差が1以上であるアルキレン
    テレフタレートから構成されていること、を満たしてい
    る請求項1記載の皮革様シート。
  3. 【請求項3】接合型複合繊維が、多層張り合わせ型複合
    繊維または中空花弁型複合繊維である請求項1または2
    に記載の皮革様シート。
  4. 【請求項4】接合型複合繊維をカード法およびニードル
    パンチ法により不織布化し、それに高分子弾性体を付与
    して得られる請求項1〜3のいずれかに記載の皮革様シ
    ート。
  5. 【請求項5】接合型複合繊維および接合型複合繊維束と
    高分子弾性体の重量比率(接合型複合繊維および接合型
    複合繊維束/高分子弾性体)が、90/10〜65/3
    5である請求項1〜4のいずれかに記載の皮革様シー
    ト。
  6. 【請求項6】皮革様シートの少なくとも1面を毛羽立て
    ることにより得られる請求項1〜5のいずれかに記載の
    スエード調人工皮革。
  7. 【請求項7】スエード調人工皮革が、表面に存在する接
    合型複合繊維の分割割合が70%以上であって、その平
    均繊度が0.7デシテックス以下である請求項1〜6の
    いずれかに記載のスエード調人工皮革。
  8. 【請求項8】請求項1に記載の皮革様シートの少なくと
    も一面に樹脂層を付与することにより得られる銀付調人
    工皮革。
JP2001262519A 2001-08-31 2001-08-31 皮革様シート Pending JP2003073981A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001262519A JP2003073981A (ja) 2001-08-31 2001-08-31 皮革様シート

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001262519A JP2003073981A (ja) 2001-08-31 2001-08-31 皮革様シート

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003073981A true JP2003073981A (ja) 2003-03-12

Family

ID=19089406

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001262519A Pending JP2003073981A (ja) 2001-08-31 2001-08-31 皮革様シート

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003073981A (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02160964A (ja) * 1989-09-26 1990-06-20 Kuraray Co Ltd 極細繊維シートの製造法
JPH10325019A (ja) * 1997-05-20 1998-12-08 Kuraray Co Ltd 分割型複合繊維
JPH11269722A (ja) * 1998-03-17 1999-10-05 Teijin Ltd ポリエステル系中空複合繊維

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02160964A (ja) * 1989-09-26 1990-06-20 Kuraray Co Ltd 極細繊維シートの製造法
JPH10325019A (ja) * 1997-05-20 1998-12-08 Kuraray Co Ltd 分割型複合繊維
JPH11269722A (ja) * 1998-03-17 1999-10-05 Teijin Ltd ポリエステル系中空複合繊維

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101317055B1 (ko) 인공 피혁용 기재 및 그 기재를 사용한 인공 피혁
EP0090397B1 (en) Ultrafine fiber entangled sheet and method of producing the same
US7132024B2 (en) Artificial leather composite reinforced with ultramicrofiber nonwoven fabric
KR101523394B1 (ko) 은 부조 피혁양 시트 및 그 제조 방법
WO2011121940A1 (ja) 皮革様シート
TWI500834B (zh) 人工皮革、長纖維絡合網及其製法
JP4116215B2 (ja) 皮革様シート状物およびその製造方法
JP3128333B2 (ja) 柔軟なスエード調人工皮革及びその製造方法
JP2003073981A (ja) 皮革様シート
JPH0253540B2 (ja)
JP2002242077A (ja) 人工皮革基体およびその製造方法
JPH0316427B2 (ja)
JP2004204358A (ja) スエード調人工皮革
JP2001131877A (ja) 人工皮革基体
JP4097933B2 (ja) 皮革様シート基材およびその製造方法
JP5497475B2 (ja) 人工皮革用長繊維不織布およびその製造方法
JP4132094B2 (ja) 柔軟性および引裂強力に優れた繊維質シート状物
JPS622075B2 (ja)
JPH05339863A (ja) 柔軟なスエード調人工皮革及び製造方法
JP5226709B2 (ja) オイル調皮革様シート
JP2011058107A (ja) 人工皮革用基材およびその製造方法
JP2011058109A (ja) 人工皮革用基材およびその製造方法
JP2011058108A (ja) 人工皮革用基材およびその製造方法
JP4017786B2 (ja) 多成分系繊維およびそれを用いた皮革様シート
JPS6343507B2 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080221

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100331

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100406

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100727