JP2003073769A - 高強度機械構造用鋼 - Google Patents

高強度機械構造用鋼

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JP2003073769A JP2001264399A JP2001264399A JP2003073769A JP 2003073769 A JP2003073769 A JP 2003073769A JP 2001264399 A JP2001264399 A JP 2001264399A JP 2001264399 A JP2001264399 A JP 2001264399A JP 2003073769 A JP2003073769 A JP 2003073769A
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    • Y02P10/00Technologies related to metal processing
    • Y02P10/20Recycling

Abstract

(57)【要約】 【課題】 単純な組成からなるためにリサイクル性に優
れ、なおかつ複雑な加工熱処理を必要としない、耐遅れ
破壊特性に優れた新規な高強度機械構造用鋼を提供す
る。 【解決手段】 組成が、重量%で、C:0.2〜0.7
%、Si:0.2〜2.5%、Mn:0.05〜1.0
%、Cr:0.2〜1.5%、Mo:0.3〜1.5%
で、かつ合金元素の総量が、Si+Mn+Cr+Mo≦
5重量%を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物か
らなる鋼材であって、500℃〜Ae1点以下の温度範
囲で、焼きもどしパラメーター:λが、λ=T(20+
logt)≧15800(式中、Tは温度(K)、tは
時間(h)を示す)となる条件で焼きもどし処理を施さ
れ、引張強さが1800MPa以上である高強度機械構
造用鋼とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、高強度機
械構造用鋼に関するものである。さらに詳しくは、この
出願の発明は、単純な組成からなるためにリサイクル性
に優れ、なおかつ複雑な加工熱処理を必要としない、耐
遅れ破壊特性に優れた新規な高強度機械構造用鋼に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】近年の構造物の大型化や自動
車部品等の軽量化に伴い、今まで以上に高い強度を有す
る機械構造用鋼の実現が求められている。それと同時
に、環境負荷の低減の観点から、材料設計の全般におい
ては、リサイクル性を考慮した単純かつ低合金組成の鋼
材の開発が望まれてもいる。
【0003】しかしながら、鋼を1200MPa以上に
高強度化すると、耐遅れ破壊特性が著しく低下すること
が一般に知られている。そして、1200MPa以上で
優れた耐遅れ破壊特性を示す鋼材としては、高合金組成
のマルエージング鋼や特殊な加工熱処理を施したピアノ
線が知られている程度であり、汎用性のある高強度の機
械構造用鋼については実現されていないのが実状であ
る。高強度の機械構造用鋼について耐遅れ破壊特性を向
上させることができれば、構造物の安全性や信頼性を高
めるだけでなく、使用寿命の長期化や材料の省資源化に
もつながるため、社会的な貢献度は極めて大きい。すな
わち、汎用性のある高強度の機械構造用鋼の実現には、
遅れ破壊を克服することが最重要課題とされている。
【0004】この課題を解決するために、従来より、遅
れ破壊の大半が旧γ粒界を起点とすることに着目して、
旧γ粒界の強度を高めることで遅れ破壊を抑制するよう
にした対策が講じられている。具体的には、旧γ粒界を
脆化させるP、S等の不純物元素を低減させ、高温焼き
もどしにより粒界セメンタイトを球状化させることで、
旧γ粒界の強度を高めるようにする方法がある。
【0005】この高温焼きもどしによる方法について
は、耐遅れ破壊特性に優れ、比較的高強度の鋼材が得ら
れる方法がいくつか提案されているのものの、焼きもど
し軟化抵抗を示す合金元素の複合添加が必要不可欠とさ
れ、低合金化は実現されていない。また、その加熱処理
については、強度低下を避けるため500℃以下の温度
で焼きもどすか、あるいはオースフォーミングなどの複
雑な加工熱処理を必要としている。
【0006】一方で、最近になって、V、Ti、Nb等
の炭化物の析出に関連する水素トラップを利用して遅れ
破壊を抑制することが注目されているが、これらの元素
の働きは必ずしも明確ではなく、また低合金化について
も有効な策とはなり得ていなかった。
【0007】そこで、この出願の発明は、以上の通りの
事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を
解消し、単純な組成からなるためにリサイクル性に優
れ、なおかつ複雑な加工熱処理を必要としない、高強度
を有する耐遅れ破壊特性に優れた新規な機械構造用鋼を
提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、この出願の発明
は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従
来技術の問題点を解消し、以下の通りの発明を提供す
る。
【0009】すなわち、まず第1には、この出願の発明
は、組成が、重量%で、C :0.2〜0.7%、S
i:0.2〜2.5%、Mn:0.05〜1.0%、C
r:0.2〜1.5%、Mo:0.3〜1.5%で、か
つ合金元素の総量が、 Si+Mn+Cr+Mo≦5重量% を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼
材であって、500℃〜Ae1点以下の温度範囲で、焼
きもどしパラメーター:λが、 λ=T(20+logt)≧15800 (式中、Tは温度(K)、tは時間(h)を示す)とな
る条件で焼きもどし処理が施され、引張強さ(σB)が
1800MPa以上であることを特徴とする高強度機械
構造用鋼を提供する。
【0010】また、この出願の発明は、上記第1の発明
について、第2には、焼入れ処理の前に、鍛錬成形比で
4以上の鍛造を施されていることを特徴とする高強度機
械構造用鋼を、第3には、不純物としてのP、Sの含有
量が、0.01重量%以下であることを特徴とする高強
度機械構造用鋼を、第4には、Moの代わりにWが0.
3〜1.5重量%含まれていることを特徴とする高強度
機械構造用鋼を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】この出願の発明は、上記の通りの
特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態につい
て詳しく説明する。
【0012】この出願の発明者らは、鋼の高強度化と耐
遅れ破壊特性の向上をより単純な組成で実現するため
に、まず、500℃以上での焼きもどしにおけるMo炭
化物の超微細析出による鋼材の2次硬化に着目した。そ
してさらに、多数の合金元素の中から、複合添加元素と
して鉄炭化物に固溶しないSiおよび固溶するCrを選
定して、Mo、SiおよびCrの合金元素の複合添加が
鉄の強度と遅れ破壊特性に及ぼす影響を詳細に調査し
た。
【0013】その結果、この出願の発明者らは、Mo、
Si、Cr合金元素の複合添加により、(1)Mo添加
による鋼材の硬さの極大が500〜600℃付近に現わ
れること、また(2)Siはおよそ350℃以下の低温
域、Crはおよそ400℃以上の高温域での焼きもどし
による軟化を顕著に抑制できること、そして焼きもどし
処理後の鋼材についても、(3)1800MPa以上と
いう強度レベルを維持することができることを見出し
た。そして更なる検討を重ねた結果、上記の高温焼きも
どしの条件と効果、および、Mo、Si、Cr、Mn元
素の複合添加による効果を巧みに組み合わせることによ
り、(4)耐遅れ破壊特性を大幅に向上させることがで
きるという全く新しい知見を得るに至った。
【0014】すなわち、この出願の発明の提供する高強
度機械構造用鋼は、Si、Mn、CrおよびMoのみを
合金元素とする単純な組成を有し、それぞれが重量%
で、C :0.2〜0.7%、Si:0.2〜2.5
%、Mn:0.05〜1.0%、Cr:0.2〜1.5
%、Mo:0.3〜1.5%で、かつその総量が、 Si+Mn+Cr+Mo≦5重量% を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼
材であって、500℃〜Ae1点以下の温度範囲で、焼
きもどしパラメーター:λが、 λ=T(20+logt)≧15800 (式中、Tは温度(K)、tは時間(h)を示す)とな
る条件で焼きもどし処理を施され、引張強さ(σB)が
1800MPa以上であることを特徴としている。なお
この出願の発明では特にことわりのない限り、%表示は
全て重量%を示すものとする。
【0015】この出願の発明の高強度機械構造用鋼は、
Mo添加による鋼材の2次硬化を積極的に利用するよう
にしている。そして、この出願の発明者らにより、Mo
鋼には、図1に□で例示したように、550〜600℃
(823〜873K)付近にMoの添加による硬度の極
大が認められることが見出された。
【0016】さらに、このMo鋼に対するSi、Cr元
素の添加は、Mo添加鋼の焼きもどし硬さに以下のよう
な影響を及ぼすことが見出された。図1において、前述
の□は0.6%C−0.2%Mn−1%Mo鋼を、△は
1%Cr添加Mo鋼を、▲は2%Si添加Mo鋼を、○
は2%Si−1%Cr添加Mo鋼を示している。すなわ
ち、たとえば0.6%C−0.2%Mn−1%Mo鋼の
焼入れ硬さ(as−Quenched)は、Siおよび
Crの添加に依らずいずれの場合でもHv840程度で
ほぼ同じである。そして、Siの添加により350℃
(623K)以下の低温域で、Crの添加により450
℃(723K)以上の高温域で、焼きもどしによる軟化
が顕著に遅滞されるのである。さらにSiとCrの複合
添加は、550〜600℃(823〜873K)の高温
域での焼きもどし後も1800MPa超級の強度(Hv
530以上)を維持するのに有効であることが見出され
た。
【0017】加えて、この出願の発明の高強度機械構造
用鋼における複合添加元素として選定されたSiおよび
Crは、たとえば、鉄中のMo、CrおよびSi合金元
素の1時間あたりの拡散移動距離を例示した図2からわ
かるように、Siは400℃(673K)以上で、Cr
は450℃(723K)以上で、Moは550℃(82
3K)以上で格子拡散量が顕著になるという特性を示
す。すなわち、これらの合金元素の拡散は鋼材中で炭化
物の生成と成長とに密接に関係しており、換言すると、
炭化物の生成および成長はこれらの合金元素の拡散に律
速されることになる。従って、SiおよびCrの添加
は、高温域における析出強化を促し、炭化物が均一かつ
微細に分散した組織を有する鋼材の実現にも寄与するこ
とがわかった。
【0018】これらの新たな知見を基に、各元素の含有
量についてさらに詳細に調査した結果、その含有量は以
下の範囲とすることが好適なものとして考慮することが
できる。 <C> Cは炭化物を形成し、析出強化によって鋼の強
度を高める必須元素であり、その含有量は0.2〜0.
7%とする。Cが0.2%未満では炭化物の析出量が少
なくなってしまい、焼きもどしにより十分な強度が得ら
れないため好ましくない。一方、0.7%を超える場合
には、焼入れ時の焼き割れ感受性が増大すると共に靭性
の低下を招いてしまうために好ましくない。 <Si> Siは鋼の脱酸および強度上昇に必要不可欠
な合金元素であり、その含有量は0.2〜2.5%とす
る。とくにSiは、フェライト中に固溶して基地の強度
を高める作用が強い上に、セメンタイト粒にはほとんど
固溶せず、セメンタイトの生成を抑制し、低温域での焼
きもどしによる軟化を遅滞させる作用が強い元素であ
る。従って、脱酸剤として添加したもので鋼中に残るも
のも含め、他の合金元素とのバランスから含有量を0.
2%以上とする。また、過剰な添加は鋼と脆化させてし
まうため、その上限は2.5%とする。 <Cr> Crは焼入れ性の向上に必要な合金元素であ
り、その含有量は0.2〜1.5%とする。Crはセメ
ンタイト中に固溶して高温域での焼きもどしによる軟化
を遅滞させる作用が強い元素である。従って、少なくと
も0.2%以上含有させる必要がある。好ましくは1%
以上を含有させるが、過剰になるとその効果が飽和する
と共に靭性が低下してしまうため、上限は1.5%とし
ている。 <Mn> Mnは鋼材中に存在するSの害を阻止し、焼
入れ性を高めるために必要な合金元素であり、その含有
量は0.05〜1.0量%とする。含有量が0.05%
未満ではこの効果が少ないが、1%を超えて含有される
と靭性を劣化させるとともに、焼き戻し後の鋼材の水素
透過性を高め、その結果として遅れ破壊を起こしやすく
してしまう。したがって、Mn量は0.05〜1.0%
とする。 <Mo> Moは焼入れ性の向上に有効な元素であり、
拡散速度が遅く、比較的少量を添加することで、セメン
タイト中に固溶して高温域でのセメンタイトの成長を抑
制し、焼きもどしによる軟化を遅滞できる元素である。
しかしMoはセメンタイト中への固溶量が少なく、Fe
よりも炭化物形成能が強いという性質があるため、多量
に添加した場合には新しく別個の炭化物を形成し、鋼を
2次硬化させる効果をも得ることができる。それゆえ、
高温焼きもどしで鋼の高強度化を図るこの出願の発明に
おいて、Moの含有量は0.3%以上を必要とする。
1.5%以上となるとその効果は飽和し、また、過剰な
添加は経済性の観点から好ましくない。従って、Mo量
は0.3〜1.5%としている。またMoの代わりに、
Moと同様の特性を示すWを用いることもできる。
【0019】さらに、上記の合金元素の総量は、経済
性、リサイクル性の観点から、Si+Mn+Cr+Mo
≦5を満足する単純組成であることが好ましい。
【0020】このような極めて限定された単純組成で、
炭化物が均一かつ微細に分散した焼き戻し組織を有し、
1800MPa以上の強度レベルの鋼材に対し、この出
願の発明においては、500℃以上かつAe1点以下の
温度で、T(20+logT)≧15800の条件で焼
き戻し処理することで優れた耐遅れ破壊特性を付与する
ようにしている。ここで、前式中のTは焼きもどし温度
(単位:K)を、tは焼きもどし時間(単位:h)を示
している。この発明の高強度機械構造用鋼は、このよう
な条件で焼きもどし処理を施せばよく、従来のような複
雑な加工熱処理を必要としない。
【0021】さらに、この出願の発明の高強度機械構造
用鋼は、焼入れ処理の前に鍛錬成形比で4以上の鍛造を
行うこと、より好適には10以上、さらには50以上の
鍛造を行うことが好ましい。このような処理を行うこと
で、鋼材に含まれる合金元素の偏析帯の幅を狭めること
ができ、偏析による機械的性質への悪影響が抑制され
て、さらに遅れ破壊特性を向上させることができる。こ
れによって、例えば、負荷応力を0.9σBとする遅れ
破壊試験において、遅れ破壊の発生する拡散性水素量の
限界値(Hc)を0.1ppmレベル、さらには0.2
ppm、より好適には、0.4ppm以上に高めること
ができる。
【0022】また、遅れ破壊特性をさらに向上させるた
めには、不純物としてのPおよびSの量をそれぞれ0.
01%以下と、極力減らすことが望ましい。
【0023】このように、この出願の発明は、引張り強
さが1800MPa以上で耐遅れ破壊に優れた高強度機
械構造用鋼を実現するものであって、しかもリサイクル
性を考慮した単純組成を有している。すなわち、この出
願の発明の高強度機械構造用鋼は、全く新しい合金設計
の指針を与えるものとなる。そしてこの発明の高強度機
械構造用鋼の実用化により、構造物や自動車材料の軽量
化や安全性が向上されることになり、社会的、経済的貢
献度は極めて高いものになると期待される。
【0024】以下に実施例を示し、この発明の実施の形
態についてさらに詳しく説明する。
【0025】
【実施例】(実施例1)A:引張り強さ 表1に示したとおりの組成を有し、各種の焼きもどし処
理を施したSi−Cr−Mn−Mo鋼(鋼1〜鋼7)の
丸棒試験片について引張り試験を行い、その結果を併せ
て示した。
【0026】なお、鋼1〜鋼7はいずれもSi+Cr+
Mn+Mo≦5重量%を満たしているが、鋼3〜7はこ
の出願の発明の鋼材の組成から外れている。なお、鋼4
は従来鋼のSUP12鋼に、鋼5はSCM440鋼に相
当している。
【0027】
【表1】
【0028】表中のλは焼きもどしパラメータであっ
て、焼きもどし温度T(K)および焼きもどし時間t
(h)より、λ=T(20+logt)で求められた値
である。Hvはビッカース硬さを、σBは引張強さ(M
Pa)を示している。また、評価欄における、○は、前
記λ≧15800かつσB≧1800を満たす鋼材を、
×は満たさない鋼材を示している。
【0029】表1から、この出願の発明の単純組成を有
する鋼1、鋼2に対し、500℃〜Ae1点以下の高温
焼きもどしをλ≧15800の条件で施すことで、σB
≧1800を満たす鋼材が得られることが示された。
【0030】一方、従来鋼の鋼4(SUP12鋼)およ
び鋼5(SCM440鋼)に500℃以上の高温焼きも
どし処理を施しても、σB≧1800を達成することは
できない。また、この出願の発明の鋼材の組成よりもM
o量の少ない鋼3、Si量の少ない鋼6、SiおよびC
r量の少ない鋼7については、500℃以上の高温焼き
もどし処理によりσB≧1800を達成することはでき
ない。従って、500℃以上の高温焼きもどし処理によ
りσB≧1800を示すこの出願の発明の鋼材を得るに
は、適切な量のSi,Cr,Moの複合添加が必要であ
ることが示された。B:遅れ破壊特性 遅れ破壊特性を、前記の表1の備考欄に※印で示した鋼
材について評価した。評価方法は、応力集中係数4.9
あるいは3.6の切欠き試験片を用意し、負荷荷重を上
記Aで測定した引張強さの0.9倍とする定荷重試験法
により行った。
【0031】なお、遅れ破壊試験に際し、陰極チャージ
によって試験片中の平均水素量を変化させ、Cdメッキ
を施すことによって、試験片中の水素が散逸しないよう
な状態にした上で荷重を負荷し、試験片が破断するまで
の時間を測定した。また、300℃までに放出される水
素量を鋼中の拡散性水素量と定義して、この拡散性水素
量を四重極質量分析計を用いた昇温分析法により測定し
た。この昇温分析は、試験片からCdメッキを除去した
後に行った。
【0032】表2に遅れ破壊試験の結果を示した。表中
の定荷重試験の結果は、荷重の負荷100時間後に試験
片が破断したか破断しなかった(未破断)かを示してい
る。また、備考欄に示した鋼材(a)(b)(c)につ
いての遅れ破壊特性を図3に示した。
【0033】
【表2】
【0034】表2および図3より、鋼材中の拡散性水素
量が少ないほど遅れ破壊が発生しにくいことがわかる。
そして、遅れ破壊が発生する拡散性水素量の限界値(H
c)は、鋼材(a):1%Mo、鋼材(b):0.5%
Moでそれぞれ0.4ppm、0.21ppmであり、
鋼材(c):0%Moの0.05ppmよりも4倍以上
高いことがわかった。この結果から、Moの添加が18
00MPa強度レベルの耐遅れ破壊特性の向上に有効で
あることが示された。
【0035】また、鋼4(SUP12相当)のHcも
0.04ppmときわめて低い値であり、耐遅れ破壊特
性が劣ることが示された。一方の、鋼5(SCM440
相当)のHcは、応力集中係数が3.6、引張強さが1
600MPaレベルの鋼材で0.13ppm、引張強さ
1800MPa以上のレベルになると0.1ppm未満
と、比較的高めではあるものの、鋼1および鋼2に比較
すると1/2以下の低い値となることが示された。
【0036】以上のことから、Si、Cr、Mn、Mo
(Si+Cr+Mn+Mo≦5重量%)の単純合金組成
でも、これらを適切な量だけ複合添加し、かつ500℃
以上で高温焼きもどしを施した鋼は、引張強さが180
0MPa以上の強度レベルでも優れた耐遅れ破壊特性を
示すことが示された。 (実施例2)0.6C−2Si−1Cr−0.2Mn−
1Mo鋼について、焼入れ処理前に鍛錬成形比が4の熱
間鍛造を施した鋼材と、鍛錬成形比が50の鋼材とを用
意し、遅れ破壊特性を評価した。その結果を図4に示し
た。
【0037】熱間鍛錬成形比が4の鋼では、遅れ破壊が
発生する拡散性水素量の限界値(Hc)が0.2ppm
であるのに対し、鍛錬成形比が50の鋼では0.4pp
mと2倍程度高くなることがわかった。この結果は、鍛
造が耐遅れ破壊特性の向上に有効であることを示してい
る。
【0038】もちろん、この発明は以上の例に限定され
るものではなく、細部については様々な態様が可能であ
ることは言うまでもない。
【0039】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って、単純な組成からなるためにリサイクル性に優れ、
なおかつ複雑な加工熱処理を必要としない、耐遅れ破壊
特性に優れた新規な高強度機械構造用鋼が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】0.6%C−0.2%Mn−1%Mo鋼の焼き
もどし硬さに及ぼすSi、Cr添加の影響を例示した図
である。図中のマーカーの、□はSi、Cr添加なしの
0.6%C−0.2%Mn−1%Mo鋼を、△は1%C
r添加を、▲は2%Si添加を、○は2%Si−1%C
r添加を示している。
【図2】鉄材における各合金元素の1時間あたりの拡散
移動距離を例示した図である。
【図3】実施例における鋼材(a)(b)(c)につい
ての遅れ破壊特性を例示した図である。
【図4】鍛錬成形比と遅れ破壊特性の関係を例示した図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K032 AA05 AA06 AA11 AA12 AA16 AA19 AA20 AA31 AA32 AA37 CB00 CH04

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成が、重量%で、 C :0.2〜0.7%、 Si:0.2〜2.5%、 Mn:0.05〜1.0%、 Cr:0.2〜1.5%、 Mo:0.3〜1.5% で、かつ合金元素の総量が、 Si+Mn+Cr+Mo≦5重量% を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼
    材であって、500℃〜Ae1点以下の温度範囲で、焼
    きもどしパラメーター:λが、 λ=T(20+logt)≧15800 (式中、Tは温度(K)、tは時間(h)を示す)とな
    る条件で焼きもどし処理が施され、引張強さが1800
    MPa以上であることを特徴とする高強度機械構造用
    鋼。
  2. 【請求項2】 焼入れ処理の前に、鍛錬成形比で4以上
    の鍛造を施されていることを特徴とする請求項1記載の
    高強度機械構造用鋼。
  3. 【請求項3】 不純物としてのP、Sの含有量が、0.
    01重量%以下であることを特徴とする請求項1または
    2記載の高強度機械構造用鋼。
  4. 【請求項4】 Moの代わりにWが0.3〜1.5重量
    %含まれていることを特徴とする請求項1ないし3いず
    れかに記載の高強度機械構造用鋼。
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