JP2003071204A5 - - Google Patents

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【書類名】 明細書
【発明の名称】 被処理水からのフェノール類の分離回収方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記工程(1)〜(7)を組み合わせたことを特徴とする、フェノール類を含む被処理水からのフェノール類の分離回収方法。
工程(1);フェノール類を含む被処理水と液化ジメチルエーテルとを混合し、水を含む水相とフェノール類を含むジメチルエーテル相とに分離する工程
工程(2);該ジメチルエーテル相をガス化ジメチルエーテルとフェノール類を含む相とに分離する工程
工程(3);該フェノール類を含む相からフェノール類と水を分離しフェノール類を回収する工程
工程(4);前記工程(3)で分離された水を前記工程(1)に循環する工程
工程(5);前記工程(1)により得られる水を含む水相を、ガス化ジメチルエーテルと水からなる水相とに分離する工程
工程(6);前記工程(5)により得られる水からなる水相を、水とガス化ジメチルエーテルとに分離する工程
工程(7);前記工程(2)、工程(5)及び工程(6)により得られるガス化ジメチルエーテルの少なくとも一種を液化ジメチルエーテルとし、これを前記工程(1)に循環する工程
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中に溶解しているフェノール類を分離回収する方法、特に、石油精製施設、石炭・タール処理施設、バイオマス処理施設、製紙工場、染料工場、石油化学工場などの工業用廃水からフェノール類を緩和な条件で分離回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水中に含まれるフェノール類の回収は、水の蒸留、または、ヘプタンのような脂肪族炭化水素またはトルエンのような芳香族炭化水素などの溶剤による抽出で行われてきた。
しかし、これらの方法では、抽出物を単離する際に水や溶剤の蒸留が必須であり、また、加熱及び冷却に多大のエネルギーを必要とするため、水中に含まれるフェノール類の濃度が低い場合には有効な方法とはいえなかった。また活性汚泥による処理方法も知られているが、この方法は、多量の汚泥を用いる必要があり、また装置が大掛かりとなり更にはその分離操作が煩雑となるといった問題点を包含する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、その回収に多量のエネルギーを消費する蒸留工程を省けエネルギー消費量を大幅に軽減し得る緩和な条件で、被処理水からそれに含まれるフェノール類を高効率で工業的に有利に回収する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、抽出剤として特定な抽出剤を用いると共に特定な工程を組み合わせることにより上記課題が解決できることを見いだし本発明を完成するに至った。
すなわち、この出願は、以下の発明を提供するものである。
〈1〉 下記工程(1)〜(7)を組み合わせたことを特徴とする、フェノール類を含む被処理水からのフェノール類の分離回収方法。
工程(1);フェノール類を含む被処理水と液化ジメチルエーテルとを混合し、水を含む水相とフェノール類を含むジメチルエーテル相とに分離する工程
工程(2);該ジメチルエーテル相をガス化ジメチルエーテルとフェノール類を含む相とに分離する工程
工程(3);該フェノール類を含む相からフェノール類と水を分離しフェノール類を回収する工程
工程(4);前記工程(3)で分離された水を前記工程(1)に循環する工程
工程(5);前記工程(1)により得られる水を含む水相を、ガス化ジメチルエーテルと水からなる水相とに分離する工程
工程(6);前記工程(5)により得られる水からなる水相を、水とガス化ジメチルエーテルとに分離する工程
工程(7);前記工程(2)、工程(5)及び工程(6)により得られるガス化ジメチルエーテルの少なくとも一種を液化ジメチルエーテルとし、これを前記工程(1)に循環する工程
【発明の実施の形態】
【0005】
本発明の対象となる被処理水は、フェノール類を含むものである。
このような被処理水の代表例としては、工業用廃水例えば、石油精製、コールタール製造、バイオマス処理、製紙、染料製造、石炭、石油からの化学薬品製造に由来するものなどが挙げられる。
ここで、フェノール類とは、具体的には、フェノール、レゾルシノールなどのフェノール類およびそれらのアルキル置換体を意味する。このようなフェノール類としては、たとえば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノールなどが挙げられる
【0006】
以下、本発明を図1のフローチャートに従って説明する。
本発明の基本的な工程は以下の工程を組み合わせてなる。
工程(1);フェノール類を含む被処理水と液化ジメチルエーテルとを混合し、水を含む水相とフェノール類を含むジメチルエーテル相とに分離する工程
工程(2);該ジメチルエーテル相をガス化ジメチルエーテルとフェノール類を含む相とに分離する工程
工程(3);該フェノール類を含む相からフェノール類と水を分離しフェノール類を回収する工程
工程(4);前記工程(3)で分離された水を前記工程(1)に循環する工程
工程(5);前記工程(1)により得られる水を含む水相を、ガス化ジメチルエーテルと水からなる水相とに分離する工程
工程(6);前記工程(5)により得られる水からなる水相を、水とガス化ジメチルエーテルとに分離する工程
工程(7);前記工程(2)、工程(5)及び工程(6)により得られるガス化ジメチルエーテルの少なくとも一種を液化ジメチルエーテルとし、これを前記工程(1)に循環する工程
【0007】
工程(1)は、上記被処理水を抽出剤である液化ジメチルエーテルと接触させ、水相に含まれるフェノール類をジメチエーテル相に抽出し、水を含む水相とフェノール類を含むジメチルエーテル相とに分離するものである。
ジメチルエーテルは、0.2〜1MPa程度の加圧により簡単に液化するので、この抽出分離工程は、好ましくはこのような加圧条件下でジメチルエーテルと被処理水を混合することにより行われる。
抽出温度は特に制限はないが、0〜80℃好ましくは10〜50℃である。抽出時間は被処理水の種類、フェノール類の含有量などを考慮することにより適宜定められる。
また、ジメチルエーテルの使用量は、被処理水の種類、フェノール類の含有量などにより異なるが、通常、被処理水1リットルに対して、1〜5リットル、好ましくは1〜3リットルである。
【0008】
工程(1)においては、前記フェノール類の大部分は液化ジメチルエーテルで抽出されジメチルエーテル相に移行するが、若干の水も含まれる。この水は後記する工程(3)で分離され、必要により工程(1)に循環される。水相は大部分が水であるが、通常、液化ジメチルエーテルが10〜40vol%含まれる。この液化ジメチルエーテルは後記する工程(5)及び工程(6)で分離回収され、必要により工程(1)に循環される。
【0009】
工程(2)は、工程(1)で得られる、ジメチルエーテル相をガス化ジメチルエーテルとフェノール類を含む相とに分離するものである。この分離操作は通常、常圧に戻すことにより行われる。この圧力スィングにより液化ジメチルエーテルはガス化される。また、フェノール類を含む相には若干の水が含まれる場合がある。この水は後記する工程(3)で分離され、必要により工程(1)に循環される。
【0010】
工程(3)は、工程(2)で得られるフェノール類を含む相からフェノール類と水を分離し、フェノール類を回収するものである。この分離操作は通常、分液で行われる。
【0011】
工程(4)は、工程(3)で分離された水を工程(1)に循環するものである。
【0012】
工程(5)は、前記工程(1)で得られる水を含む水相をガス化ジメチルエーテルと水からなる水相とに分離するものである。この工程(1)で得られる水を含む水相には、通常、液化ジメチルエーテルが10〜40vol%含まれる。この水相からのジメチルエーテルの分離操作は通常、室温付近で常圧に戻すことにより行われる。
【0013】
工程(6)は、工程(5)で得られる水相には、なお、0〜10vol%のジメチルエーテルが含まれるため、これを水とガス化ジメチルエーテルとに分離するものである。この分離操作は、通常、30〜100℃程度の加温操作により行われる。
【0014】
工程(7)は、前記工程(2)、工程(5)及び工程(6)で得られるガス化ジメチルエーテルの少なくとも一種を液化し、これを前記(1)の抽出分離工程に循環するものである。
この循環操作は、通常、ガス化ジメチルエーテルを0〜80℃のような条件で圧縮液化することにより行われる。
【0015】
本発明の分離回収方法は、前記構成からなるものであるが、これらの抽出操作は一段でもよいが必要に応じ多段抽出とすることができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1
フェノール、m-クレゾールをそれぞれ3.2および1.0重量%含む水溶液(モデル溶液)1容量部に、ジメチルエーテル1.5容量部を加え、0.5MPa、30℃の条件で抽出を行った。
その結果を表1に示す。表1から1回の抽出操作で水相中のフェノール、m-クレゾールの濃度をそれぞれ、0.57および0.12重量%まで低減できることが判る。
また、分離した水相を一旦常圧にし、再度同様に、2回目の抽出を行うことにより、上記化合物の濃度をそれぞれ、0.06および0.01重量%まで減らすことができる。
また、ジメチルエーテルは常温、操作圧力で水の約50体積%が溶解するが、水相を回収し、常圧に戻すことにより、水中の濃度は約10%まで減少した。一方、ジメチルエーテル相には約10%の水が溶解するが、ジメチルエーテルをガス化させることにより有機物相と水相に分離し、それぞれを別個に回収することができた。
【0017】
【表1】
Figure 2003071204
【0018】
【発明の効果】
(1)本発明方法は、被処理水からそれに含まれるフェノール類を、多量のエネルギーを消費する蒸留工程を用いることなく、簡便な抽出操作で回収することができるので、消費エネルギーの少ない緩和な工業的に有利な方法ということができる。
(2)本発明によれば、コールタールや石炭液化油からの極性物質の抽出分離、および極性物質が高濃度で排水に混入するプロセスで生成される水から、フェノール類を穏和な条件で分離回収することが可能であり、石炭系燃料や廃水処理への応用が期待される。
(3)本発明方法においては、ジメチルエーテルは水の約50体積%が水相に溶解するが、常圧に戻すことにより、ガスとして回収され、水相中の溶解量を約10%まで低減できる。さらに、加温することにより、ガスとしてほぼ完全に回収できる。また、抽出相のジメチルエーテルも常圧に戻すことにより、ガスとして回収できる。液化ジメチルエーテルは約10%の水を溶解するが、この水もジメチルエーテルをガス化したときに液体として回収される。この場合、フェノールなどの比較的溶解度の小さい物質は水から分離して液相となるため、それらと水の分離も容易となる。
この圧力スイング法を併用した抽出法により、溶剤の回収に多量のエネルギーを消費する蒸留工程を省略でき、エネルギー消費量を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分離回収方法のフローチャート図
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