JP2003071204A - 被処理水からの水可溶性有機物の分離回収方法 - Google Patents

被処理水からの水可溶性有機物の分離回収方法

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明光 松村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 その回収に多量のエネルギーを消費する蒸留
工程を省け、エネルギー消費量を大幅に軽減し得る、工
業的に有利な被処理水からそれに含まれる水可溶性有機
物を回収する方法を提供する。 【解決手段】 工程(1);水可溶性有機物を含む被処
理水と液化ジメチルエーテルとを混合し、水を含む水相
と前記水可溶性有機物を含むジメチルエーテル相とに分
離する工程、 工程(2);該ジメチルエーテル相をガ
ス化ジメチルエーテルと水可溶性有機物を含む相とに分
離する工程、 工程(3);水可溶性有機物を含む相か
ら水可溶性有機物を分離回収する工程を組み合わせる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水中に溶解してい
る水可溶性有機物を分離回収する方法、特に、石油精製
施設、石炭・タール処理施設、バイオマス処理施設、製
紙工場、染料工場、石油化学工場などの工業用廃水から
水可溶性有機物を緩和な条件で分離回収する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】水中に含まれる水可溶性有機物の回収
は、水の蒸留、または、ヘプタンのような脂肪族炭化水
素またはトルエンのような芳香族炭化水素などの溶剤に
よる抽出で行われてきた。しかし、これらの方法では、
抽出物を単離する際に水や溶剤の蒸留が必須であり、ま
た、加熱及び冷却に多大のエネルギーを必要とするた
め、水中に含まれる水可溶性有機物の濃度が低い場合に
は有効な方法とはいえなかった。また活性汚泥による処
理方法も知られているが、この方法は、多量の汚泥を用
いる必要があり、また装置が大掛かりとなり更にはその
分離操作が煩雑となるといった問題点を包含する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、その回収に
多量のエネルギーを消費する蒸留工程を省けエネルギー
消費量を大幅に軽減し得る緩和な条件で、被処理水から
それに含まれる水可溶性有機物を高効率で工業的に有利
に回収する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
した結果、抽出剤として特定な抽出剤を用いると共に特
定な工程を組み合わせることにより上記課題が解決でき
ることを見いだし本発明を完成するに至った。すなわ
ち、本発明によれば、第一に、下記工程(1)〜(3)
を組み合わせたことを特徴とする、常温常圧での水への
溶解度が20%以下の水可溶性有機物を含む被処理水から
の水可溶性有機物の分離回収方法が提供される。 工程(1);常温常圧での水への溶解度が20%以下の水
可溶性有機物を含む被処理水と液化ジメチルエーテルと
を混合し、水を含む水相と前記水可溶性有機物を含むジ
メチルエーテル相とに分離する工程 工程(2);該ジメチルエーテル相をガス化ジメチルエ
ーテルと水可溶性有機物を含む相とに分離する工程 工程(3);水可溶性有機物を含む相から水可溶性有機
物を分離回収する工程第二に、第一の方法において、前
記工程(3)において、水可溶性有機物を含む相から水
を分離し、これを工程(1)に循環する工程(4)を付
加することを特徴とする水可溶性有機物の分離回収方法
が提供される。第三に、前記工程(4)において、水を
含む水相をガス化ジメチルエーテルと水からなる水相と
に分離する工程(5)を付加することを特徴とする水可
溶性有機物の分離回収方法が提供される。第四に、前記
工程(5)において、水を含む水相を水とガス化ジメチ
ルエーテルとに分離する工程(6)を付加することを特
徴とする水可溶性有機物の分離回収方法が提供される。
第五に、前記工程(2)、工程(5)及び工程(6)に
おいて、得られるガス化ジメチルエーテルの少なくとも
一種を液化ジメチルエーテルとし、これを前記工程
(1)に循環する工程(7)を付加することを特徴とす
る水可溶性有機物の分離回収方法が提供される。第六
に、水常温常圧での水への溶解度が20%以下の水可溶性
有機物を含む被処理水が、工業用排水であることを特徴
とする前記第一乃至五何れか記載の水可溶性有機物の分
離回収方法が提供される。第七に、工業用排水が、石油
精製施設、石炭・タール処理施設、バイオマス処理施
設、製紙工場、染料工場、石油化学工場から選ばれた少
なくとも一種であることを特徴とする第六記載の水可溶
性有機物の分離回収方法が提供される。第八に、工業用
排水が、含酸素化合物及び/又は含窒素化合物を含むこ
とを特徴とする第七記載の水可溶性有機物の分離回収方
法が提供される。第九に、含酸素化合物が、フェノール
類、フラン類及び炭素数4以上のアルコール類から選ば
れた少なくとも一種であり、含窒素化合物が、アニリン
類、ピロール類、キノリン類及びインドール類から選ば
れた少なくとも一種であることを特徴とする第八記載の
水可溶性有機物の分離回収方法が提供される。
【発明の実施の形態】
【0005】本発明の対象となる被処理水は、常温常圧
での水への溶解度が20%以下の水可溶性有機物を含むも
のである。このような被処理水の代表例としては、工業
用廃水例えば、石油精製、コールタール製造、バイオマ
ス処理、製紙、染料製造、石炭、石油からの化学薬品製
造に由来するものなどが挙げられる。具体的には、フェ
ノール、アルキルフェノール類、フラン類、アルコール
類、ピロール類、アルキルピリジン類、インドール類、
キノリン類のような、含酸素化合物や含窒素化合物等を
含む被処理水が例示される。この場合、含酸素化合物と
しては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾ
ルシノールなどのフェノール類、フラン、ベンゾフラン
などのフラン類及びブタノール、ペンタノール、シクロ
ヘキサノールなどの炭素数4以上のアルコール類などが
含まれる。また、含窒素化合物としては、アニリン類、
ピロール類、キノリン類、インドール類などが含まれ
る。
【0006】以下、本発明を図1のフローチャートに従
って説明する。本発明の基本的な工程は以下の工程を組
み合わせてなる。 工程(1);常温常圧での水への溶解度が20%以下の水
可溶性有機物を含む被処理水と液化ジメチルエーテルと
を混合し、水を含む水相と前記水可溶性有機物を含むジ
メチルエーテル相とに分離する工程 工程(2);該ジメチルエぜーテル相をガス化ジメチル
エーテルと水可溶性有機物を含む相とに分離する工程 工程(3);水可溶性有機物を含む相から水可溶性有機
物を分離回収する工程
【0007】工程(1)は、上記被処理水を抽出剤であ
る液化ジメチルエーテルと接触させ、水相に含まれる水
可溶性有機物をジメチエーテル相に抽出し、水を含む水
相と水可溶性有機物を含むジメチルエーテル相とに分離
するものである。ジメチルエーテルは、0.2〜1MPa
程度の加圧により簡単に液化するので、この抽出分離工
程は、好ましくはこのような加圧条件下でジメチルエー
テルと被処理水を混合することにより行われる。抽出温
度は特に制限はないが、0〜80℃好ましくは10〜5
0℃である。抽出時間は被処理水の種類、水可溶性有機
物の含有量などを考慮することにより適宜定められる。
また、ジメチルエーテルの使用量は、被処理水の種類、
水可溶性有機物の含有量などにより異なるが、通常、被
処理水1リットルに対して、1〜5リットル、好ましく
は1〜3リットルである。
【0008】工程(1)においては、前記水可溶性有機
物の大部分は液化ジメチルエーテルで抽出されジメチル
エーテル相に移行するが、若干の水も含まれる。この水
は後記する工程(3)で分離され、必要により工程
(1)に循環される。水相は大部分が水であるが、通
常、液化ジメチルエーテルが10〜40vol%が含ま
れる。この液化ジメチルエーテルは後記する工程(5)
及び工程(6)で分離回収され、必要により工程(1)
に循環される。
【0009】工程(2)は、工程(1)で得られる、ジ
メチルエーテル相をガス化ジメチルエーテルと水可溶性
有機物を含む相とに分離するものである。この分離操作
は通常、常圧に戻すことにより行われる。この圧力スィ
ングにより液化ジメチルエーテルはガス化される。ま
た、水可溶性有機物を含む相には若干の水が含まれる場
合がある。この水は後記する工程(3)で分離され、必
要により工程(1)に循環される。
【0010】工程(3)は、工程(2)で得られる水可
溶性有機物が水と相分離する場合、水可溶性有機物を水
と分離回収するものである。この分離操作は通常、分液
で行われる。
【0011】工程(4)は、工程(3)で分離された水
を工程(1)に循環するものである。
【0012】工程(5)は、前記工程(1)で得られる
水を含む水相をガス化ジメチルエーテルと水からなる水
相とに分離するものである。この工程(1)で得られる
水を含む水相には、通常、液化ジメチルエーテルが10
〜40vol%が含まれる。この水相からのジメチルエ
ーテルの分離操作は通常、室温付近で常圧に戻すことに
より行われる。
【0013】工程(6)は、工程(5)で得られる水相
には、なお、0〜10vol%のジメチルエーテルが含
まれるため、これを水とガス化ジメチルエーテルとに分
離するものである。この分離操作は、通常、30〜10
0℃程度の加温操作により行われる。
【0014】工程(7)は、前記工程(2)、工程
(5)及び工程(6)で得られるガス化ジメチルエーテ
ルの少なくとも一種を液化し、これを前記(1)の抽出
分離工程に循環するものである。この循環操作は、通
常、ガス化ジメチルエーテルを0〜80℃のような条件
で圧縮液化することにより行われる。
【0015】本発明の分離回収方法は、前記構成からな
るものであるが、これらの抽出操作は一段でもよいが必
要に応じ多段抽出とすることことができる。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。 実施例1 フェノール、m-クレゾールをそれぞれ3.2および1.0重量
%含む水溶液(モデル溶液)1容量部に、ジメチルエー
テル1.5容量部を加え、0.5MPa、30℃の条件で抽出を行
った。その結果を表1に示す。表1から1回の抽出操作
で水相中のフェノール、m-クレゾールの濃度をそれぞ
れ、0.57および0.12重量%まで低減できることが判る。
また、分離した水相を一旦常圧にし、再度同様に、2回
目の抽出を行うことにより、上記化合物の濃度をそれぞ
れ、0.06および0.01重量%まで減らすことができる。ま
た、ジメチルエーテルは常温、操作圧力で水の約50体積
%が溶解するが、水相を回収し、常圧に戻すことによ
り、水中の濃度は約10%まで減少した。一方、ジメチル
エーテル相には約10%の水が溶解するが、ジメチルエー
テルをガス化させることにより有機物相と水相に分離
し、それぞれを別個に回収することができた。
【0017】
【表1】
【0018】
【発明の効果】(1)本発明方法は、被処理水からそれ
に含まれる水可溶性有機物を、多量のエネルギーを消費
する蒸留工程を用いることなく、簡便な抽出操作で回収
することができるので、消費エネルギーの少ない緩和な
工業的に有利な方法ということができる。 (2)本発明によれば、コールタールや石炭液化油から
の極性物質の抽出分離、および極性物質が高濃度で排水
に混入するプロセスで生成される水から、これらの有機
物を穏和な条件で分離回収することが可能であり、石炭
系燃料や廃水処理への応用が期待される。 (3)本発明方法においては、ジメチルエーテルは水の
約50体積%が水相に溶解するが、常圧に戻すことによ
り、ガスとして回収され、水相中の溶解量を約10%まで
低減できる。さらに、加温温することにより、ガスとし
てほぼ完全に回収できる。また、抽出相のジメチルエー
テルも常圧に戻すことにより、ガスとして回収できる。
液化ジメチルエーテルは約10%の水を溶解するが、この
水もジメチルエーテルをガス化したときに液体として回
収される。この場合、フェノールなどの比較的溶解度の
小さい物質は水から分離して液相となるため、それらと
水の分離も容易となる。 この圧力スイング法を併用した抽出法により、溶剤の回
収に多量のエネルギーを消費する蒸留工程を省略でき、
エネルギー消費量を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分離回収方法のフローチャート図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 39/07 C07C 39/07 Fターム(参考) 4D037 AA11 AB18 BA11 BB07 BB08 CA06 4D056 AB17 AC07 BA03 CA17 CA18 CA20 CA21 CA25 CA28 CA31 CA39 DA02 4H006 AA02 AD11 AD16 BB15 BD41 BD53 BD60 BD84 FC52 FE13

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記工程(1)〜(3)を組み合わせた
    ことを特徴とする、常温常圧での水への溶解度が20%以
    下の水可溶性有機物を含む被処理水からの水可溶性有機
    物の分離回収方法。 工程(1);常温常圧での水への溶解度が20%以下の水
    可溶性有機物を含む被処理水と液化ジメチルエーテルと
    を混合し、水を含む水相と前記水可溶性有機物を含むジ
    メチルエーテル相とに分離する工程 工程(2);該ジメチルエーテル相をガス化ジメチルエ
    ーテルと水可溶性有機物を含む相とに分離する工程 工程(3);水可溶性有機物を含む相から水可溶性有機
    物を分離回収する工程
  2. 【請求項2】 前記工程(3)において、水可溶性有機
    物を含む相から水を分離し、これを前記工程(1)に循
    環する工程(4)を付加することを特徴とする請求項1
    記載の水可溶性有機物の分離回収方法。
  3. 【請求項3】 前記工程(1)において、水を含む水相
    をガス化ジメチルエーテルと水からなる水相とに分離す
    る工程(5)を付加することを特徴とする請求項1又は
    2記載の水可溶性有機物の分離回収方法。
  4. 【請求項4】 前記工程(5)において、水を含む水相
    を水とガス化ジメチルエーテルとに分離する工程(6)
    を付加することを特徴とする請求項1乃至3何れか記載
    の水可溶性有機物の分離回収方法。
  5. 【請求項5】 前記工程(2)、工程(5)及び工程
    (6)において、得られるガス化ジメチルエーテルの少
    なくとも一種を液化ジメチルエーテルとし、これを前記
    工程(1)に循環する工程(7)を付加することを特徴
    とする請求項1乃至4何れか記載の水可溶性有機物の分
    離回収方法。
  6. 【請求項6】水常温常圧での水への溶解度が20%以下の
    水可溶性有機物を含む被処理水が、工業用排水であるこ
    とを特徴とする請求項1乃至5何れか記載の水可溶性有
    機物の分離回収方法。
  7. 【請求項7】 工業用排水が、石油精製施設、石炭・タ
    ール処理施設、バイオマス処理施設、製紙工場、染料工
    場、石油化学工場から選ばれた少なくとも一種であるこ
    とを特徴とする請求項6記載の水可溶性有機物の分離回
    収方法。
  8. 【請求項8】工業用排水が、含酸素化合物及び/又は含
    窒素化合物を含むことを特徴とする請求項7記載の水可
    溶性有機物の分離回収方法。
  9. 【請求項9】含酸素化合物が、フェノール類、フラン類
    及び炭素数4以上のアルコール類から選ばれた少なくと
    も一種であり、含窒素化合物が、アニリン類、ピロール
    類、キノリン類及びインドール類から選ばれた少なくと
    も一種であることを特徴とする請求項8記載の水可溶性
    有機物の分離回収方法。
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