JP5761920B2 - ダイオキシン類汚染土壌の浄化方法及び前記土壌中のダイオキシン類の分解方法 - Google Patents

ダイオキシン類汚染土壌の浄化方法及び前記土壌中のダイオキシン類の分解方法 Download PDF

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Description

本発明は、ダイオキシン類に汚染された土壌を浄化する方法、及びこのような土壌中のダイオキシン類を分解する方法に関する。
ダイオキシン類を含有するダイオキシン類で汚染された土壌(ダイオキシン類汚染土壌)は、例えば焼却炉の使用、焼却施設の解体や焼却灰の埋め立てによって発生する。このようなダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、種々の方法が知られている。
ダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、ダイオキシン類汚染土壌を水中で攪拌して平均粒径100μm以下の微細土壌粒子と粗大土壌粒子とに分級によって分離し、得られた微細土壌粒子にダイオキシン類分解反応触媒を含有する塩酸酸性水溶液と接触させて無害化し、粗大土壌粒子をダイオキシン類汚染土壌を採取した個所に埋め戻す方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、ダイオキシン類汚染土壌をダイオキシン抽出用の有機溶媒と混合して有機溶媒にダイオキシン類を抽出し、土壌を有機溶媒から分離し、分離した土壌に残留する有機溶媒を土壌から除去し、分離した有機溶媒を濃縮し、ダイオキシン類が濃縮された有機溶媒をダイオキシン分解用の極性有機溶媒中でアルカリと反応させてダイオキシン類を分解し、抽出に用いた有機溶媒と極性有機溶媒とを分離して抽出用有機溶媒を回収する方法が知られている(例えば、特許文献2及び3参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、ダイオキシン類を含有する高含水比土壌を浄化する方法であって、前記高含水比土壌を凝集剤で凝集させてダイオキシン類を取込んだ凝集土壌を得、得られた凝集土壌中に含まれる水を分離し脱水し、得られた凝集土壌から溶媒抽出により有害物質を除去する方法が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を土壌から抽出する方法として、例えば、ダイオキシン類汚染土壌中のダイオキシン類を、その性状に応じて選択された1種又は複数の非ハロゲン系有機溶媒によって抽出し、抽出液に他の特定の沸点をもつ非ハロゲン系有機溶媒を添加して蒸留分離することによって、分析対象とするダイオキシン類を含む複数の試料を得る方法が知られている(例えば、特許文献5参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を土壌から抽出する方法として、例えば、ダイオキシン類汚染土壌中のダイオキシン類をトルエンによって抽出し、得られた溶液に不活性ガス雰囲気中において金属ナトリウムを加えて反応させてダイオキシン類を無機ハロゲン化合物に還元・変換し、前記溶液に水を加えて得られた無機ハロゲン化合物を水相に移行させる方法が知られている(例えば、特許文献6参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、ダイオキシン類汚染土壌に200〜370℃で飽和蒸気圧以上の高温高圧水を接触させることにより、ダイオキシン類汚染土壌からダイオキシン類を抽出除去する方法が知られている(例えば、特許文献7参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、ダイオキシン類汚染土壌を間接的に加熱してダイオキシン類を揮発させ、揮発したダイオキシン類を水蒸気又は空気と反応させてダイオキシン類を分解する方法が知られている(例えば、特許文献8〜10参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、白色腐朽菌の粗酵素を抽出して固定化してなる顆粒状ダイオキシン類分解剤を、ダイオキシン類汚染土壌中に散布及び混入し、1ヶ月以上の自然放置をもって、前記土壌中に残留物を残さないようにダイオキシン類を分解する方法が知られている(例えば、特許文献11参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、ダイオキシン類汚染土壌を試料として好気性及び嫌気性のハロゲン化ダイオキシン類分解微生物の検出を行い、前記分解微生物が検出された土壌又はそれを接種した培養液をダイオキシン類汚染土壌に導入する方法が知られている(例えば、特許文献12参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、ダイオキシン類汚染土壌を収容した第1の反応槽に超臨界二酸化炭素を導入してダイオキシン類汚染土壌からダイオキシン類を抽出し、吸着剤を充填した第2の反応槽に、前記第1の反応槽でダイオキシン類を溶解させた超臨界二酸化炭素を導入して前記吸着剤にダイオキシン類を吸着させ、前記第2の反応槽に超臨界水及び酸化剤を導入して前記吸着剤に吸着させたダイオキシン類を超臨界水酸化分解する方法が知られている(例えば、特許文献13参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、ダイオキシン類汚染土壌とアルコール類の混合溶液に金属カルシウムを添加混合し、所定温度で撹拌する方法が知られている(例えば、特許文献14参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、ダイオキシン類汚染土壌をこの土壌同士の擦れ合い又は移動流体との接触を伴う方法で分級し、設定粒径以下の粉粒体を化学的に処理してダイオキシン類の無害化を図る一方で、設定粒径を超える粉粒体には化学的処理を行わない方法が知られている(例えば、特許文献15参照。)。
またダイオキシン類汚染土壌を浄化する方法としては、例えば、芳香族環に結合する酸素原子を有する置換基と芳香族環に結合するクロロ基とを有する塩素化芳香族化合物の存在下で培養されたバチルス・ミドウスジの菌体膜を含む菌体破砕物又はその分画物とダイオキシン類汚染土壌と水系媒体とを混合する方法が知られている(例えば、特許文献16参照。)。
ダイオキシン類汚染土壌中のダイオキシン類は、通常は、ダイオキシン類汚染土壌中に偏在している。またダイオキシン類は化学的に安定な物質である。したがって、ダイオキシン類汚染土壌から、実質的にダイオキシン類を含有する部分のみを取り出して処理することによって、ダイオキシン類汚染土壌の浄化効率のさらなる向上や、ダイオキシン類汚染土壌の浄化のさらなる省力化が期待される。ダイオキシン類汚染土壌の浄化方法においては、この点について検討の余地が残されている。
特開2001−113261号公報 特開2001−278878号公報 特開2002−336834号公報 特開2004−160399号公報 特開2004−251846号公報 特開2006−177981号公報 特開2000−246231号公報 特開2004−057911号公報 特開2006−035218号公報 特開2005−040674号公報 特開2004−351263号公報 特開2005−278433号公報 特開2008−029967号公報 特開2004−065729号公報 特開2008−272539号公報 特開2004−298868号公報
本発明は、ダイオキシン類汚染土壌からダイオキシン類をさらに効率よく除去し、又は分解することが可能な方法を提供する。
ダイオキシン類汚染土壌中に含まれるダイオキシン類には、一般に、種々のダイオキシン類が種々の濃度で含まれている。ダイオキシン類汚染土壌は、ダイオキシン類の存在を平均化すると、土壌全体ではダイオキシン類は希薄であるように見える。しかしながら、ダイオキシン類汚染土壌は不均一系である。本発明者らは、ダイオキシン類汚染土壌においてダイオキシン類に富む成分を見出し、さらにこの成分からの効率のよいダイオキシン類の抽出方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
より詳しくは、土壌は、下記表1に示すように、砂礫成分とシルトの混合物である。ダイオキシン類汚染土壌において、土壌中の下記の成分ごとのダイオキシン類の含有量を、土壌が砂礫成分とシルトとから構成され、各成分間には相互作用がないと仮定して、下記式にて定量的に評価すると、砂礫成分にはダイオキシン類はほとんど含まれておらず、シルトにダイオキシン類の90%以上が付着・吸着していることが判明した。なお、表1中の測定値における単位は質量%である。
Figure 0005761920
土壌質量(z(g))=砂礫成分質量(x(g))+シルト質量(y(g))
土壌中ダイオキシン類(c(pg−TEQ/g))=砂礫付着ダイオキシン類(a(pg−TEQ/g))+シルト付着ダイオキシン類(b(pg−TEQ/g))
シルト砂礫質量比(r(−))=y/x=(c−a)/(c−b)
シルト率(s(%))=y/z×100={r/(1+r)}×100
ダイオキシン類濃縮率(γ(%))=b×y/c×z×100=b/c×s
さらに発明者らは、シルトの組成を調査したところ、シルトの熱分析によって、シルトには、シルトの重量の20%前後に相当する重量の可燃性物質、つまり有機物が含まれていることが判明した。またシルトの前記熱分析で510〜520℃のガラス転移温度が検出され、またシルトの表面の電子顕微鏡による観察結果と併せることによって、シルトはシリカガラスのようなケイ素成分を主成分とする多孔質構造を有すると判断した。
さらに発明者らは、シルト中の有機物に吸着されているであろうダイオキシン類の効率のよい抽出について鋭意検討を重ね、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、シルトを含有し、ダイオキシン類で汚染されたダイオキシン類汚染土壌からシルトを分離するシルト分離工程と、分離したシルトを酸液と混合して酸処理する酸処理工程と、酸液中のシルトからシルト中に含まれている有機物を抽出剤によって抽出する第一の抽出工程と、を含むダイオキシン類汚染土壌の浄化方法を提供する。
また本発明は、前記抽出剤が非水溶性有機溶剤である前記の方法を提供する。
又は本発明は、前記抽出剤が腐植質である前記の方法を提供し、さらに、第一の抽出工程後のシルトを含有する酸液と非水溶性有機溶剤とを混合してシルト中に残存する有機物を抽出する第二の抽出工程をさらに含む方法を提供する。
また本発明は、前記非水溶性有機溶剤がn−ヘキサデカンである前記の方法を提供する。
また本発明は、前記抽出工程前に、シルトを含有する酸液にアルコールを混合して酸液中のシルトをアルコール処理するアルコール処理工程をさらに含む前記の方法を提供する。
また本発明は、ダイオキシン類汚染土壌から分離され、酸処理されたシルトに抽出剤として作用させた腐植質に、ダイオキシン類を分解する微生物又はその微生物に由来するダイオキシン類分解成分を作用させて、腐植質中のダイオキシン類を分解する、ダイオキシン類汚染土壌中のダイオキシン類の分解方法を提供する。
また本発明は、ダイオキシン類汚染土壌から分離され、酸処理されたシルトに抽出剤として作用させた非水溶性有機溶剤中のダイオキシン類を、非水溶性有機溶剤に対してダイオキシン類の溶解性が高く、かつ水溶性有機溶剤に抽出する第三の抽出工程を含み、第三の抽出工程で回収された前記水溶性有機溶剤に、ダイオキシン類を分解する微生物又はその微生物に由来するダイオキシン類分解成分を作用させて、水溶性有機溶剤中のダイオキシン類を分解する、ダイオキシン類汚染土壌中のダイオキシン類の分解方法を提供する。
また本発明は、前記ダイオキシン類を分解する微生物又はその微生物に由来するダイオキシン類分解成分が、塩素化芳香族化合物で馴化されたバチルス・ミドウスジ又はその菌体膜を含む菌体破砕物若しくはその分画物である前記の分解方法を提供する。
また本発明は、前記ダイオキシン類汚染土壌が、70〜75℃で乾燥処理された土壌である前記の方法を提供する。
本発明は、ダイオキシン類汚染土壌からシルトを分離し、分離したシルトを酸で処理した後にシルトから有機物を抽出することから、ダイオキシン類汚染土壌中に局在する、ダ
イオキシン類を実質的に含有する土壌成分を分離し、かつ該土壌成分から有機物を効率よく抽出することができるので、ダイオキシン類汚染土壌からダイオキシン類を効率よく除去することができる。
本発明は、前記抽出剤が非水溶性有機溶剤であることが、前記有機物の効率のよい抽出の観点、及び抽出作業の作業性の向上の観点からより一層効果的である。
又は本発明は、前記抽出剤が腐植質であることが、ダイオキシン類汚染土壌から除去されたダイオキシン類の分解までの作業工程の削減の観点からより一層効果的である。
特に抽出剤が腐植質である場合では、本発明は、抽出工程後の酸液中のシルトと非水溶性有機溶剤とを混合してシルト中に残存する有機物を抽出する第二の抽出工程をさらに含むことが、ダイオキシン類汚染土壌からのダイオキシン類の除去率を高める観点からより一層効果的である。
また本発明において、前記非水溶性有機溶剤がn−ヘキサデカンであることが、シルトから有機物を高い抽出効率で抽出する観点からより一層効果的である。
また本発明は、前記の抽出工程前に、シルトを含有する酸液にアルコールを混合して酸液中のシルトをアルコール処理するアルコール処理工程をさらに含むことが、シルトから有機物を高い抽出効率で抽出する観点からより一層効果的である。
また本発明は、抽出剤が腐植質である場合では、腐植質をそのまま微生物による分解に供することによって、ダイオキシン類汚染土壌から抽出したダイオキシン類を微生物によって分解することができ、よって、従来の微生物によるダイオキシン類汚染土壌中のダイオキシン類の分解に比べて、ダイオキシン類汚染土壌からダイオキシン類をさらに効率よく分解することができる。
また本発明は、抽出剤が非水溶性溶剤である場合では、この非水溶性溶剤からダイオキシン類を水溶性有機溶剤にさらに抽出して微生物による分解に供することによって、ダイオキシン類汚染土壌から抽出したダイオキシン類を微生物によって分解することができ、よって、従来の微生物によるダイオキシン類汚染土壌中のダイオキシン類の分解に比べて、ダイオキシン類汚染土壌からダイオキシン類をさらに効率よく分解することができる。
本発明は、前記ダイオキシン類を分解する微生物又はその微生物に由来するダイオキシン類分解成分が、バチルス・ミドウスジ又はバチルス・ミドウスジの菌体膜を含む菌体破砕物若しくはその分画物であることが、ダイオキシン類を高い効率で分解する観点からより一層効果的である。
本発明は、前記ダイオキシン類汚染土壌が、70〜75℃で乾燥処理された土壌であることが、ダイオキシン類が抽出されにくい状態のシルトからダイオキシン類を高い効率で抽出し、分解する観点からより一層効果的である。
本発明の第一の実施の形態を示す図である。 本発明の第二の実施の形態を示す図である。 本発明の第三の実施の形態を示す図である。 本発明の第四の実施の形態を示す図である。 本発明の第五の実施の形態を示す図である。 ダイオキシン類汚染土壌の示差熱分析及び熱重量測定の結果を示す図である。 H18、その砂礫成分、及びそのシルト中のダイオキシン類の濃度を示す図である。 A1、その砂礫成分、及びそのシルト中のダイオキシン類の濃度を示す図である。 MC、その摩砕処理品、その砂礫成分、及びそのシルト中のダイオキシン類の濃度を示す図である。 生物分解に供されたダイオキシン類汚染土壌中のダイオキシン類の種類と濃度を示す図である。 SH2B−J2菌株によるダイオキシン類の分解反応におけるダイオキシン類の濃度の経時変化を示す図である。 原料シルトと乾燥シルトのダイオキシン類の各化合物の濃度を示す図である。 原料シルトと乾燥シルトのダイオキシン類の種類別の濃度を示す図である。 原料シルト、酸処理シルト、乾燥シルト、及び乾燥−酸処理シルトのダイオキシン類の各化合物の濃度を示す図である。 原料シルト、酸処理シルト、乾燥シルト、及び乾燥−酸処理シルトのダイオキシン類の種類別の濃度を示す図である。
本発明のダイオキシン類汚染土壌の浄化方法(以下、「浄化方法」とも言う)は、シルトを含有し、ダイオキシン類で汚染されたダイオキシン類汚染土壌からシルトを分離するシルト分離工程と、分離したシルトを酸液と混合して酸処理する酸処理工程と、酸液中のシルトからシルト中に含まれている有機物を抽出剤によって抽出する第一の抽出工程と、を含む。
本発明において、シルトとは、土壌中の成分のうち、砂と粘土の中間の粒径を有する成分であり、より詳しくは粒径が5μm以上75μm未満の粒子の成分である。シルトは、珪藻の堆積物から生成されたとも言われている。本発明におけるダイオキシン類汚染土壌は、前記シルトを含有している。
ダイオキシン類汚染土壌は、70〜75℃で乾燥処理されていてもよい。このようなダイオキシン類汚染土壌は、含水率が2〜4%程度となっており、ダイオキシン類汚染土壌中のシルトが、ダイオキシン類が抽出されにくい状態になる。本発明では、このようなダイオキシン類が抽出されにくい状態のシルトが形成される、ダイオキシン類汚染土壌の低温乾燥品に対しても、ダイオキシン類を効率よく抽出することが可能である。
本発明において、ダイオキシン類とは、ポリ塩素化ジベンゾ−p−ダイオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフラン、及びコプラナーPCB(ポリ塩化ビフェニル)の全ての総称である。本発明では特に断らない限り、これらの化合物の一部又は全部を示す。
シルトは前述したように珪藻由来成分とも言われており、表面にケイ酸質の殻を有し、内部に多孔質構造を有している。本発明において、シルト中に含まれている有機物とは、珪藻由来の有機物、及びシルトの多孔質構造に吸着された他の有機物を意味し、このような有機物としては、例えばタンパク質や脂肪が挙げられる。ダイオキシン類汚染土壌におけるダイオキシン類は、砂や礫等の無機質な成分にはほとんど付着せず、シルトが有する有機物に実質的に付着する。
前記シルト分離工程は、ダイオキシン類汚染土壌からシルトを分離する工程である、この工程ではシルトのみが分離されてもよいし、シルトを主成分とし、それ以外の成分を副成分とするようにシルトが分離されてもよい。シルトのみの分離は、ダイオキシン類汚染土壌からのダイオキシン類の抽出率を高める観点から好ましく、シルトを主成分とし泥等
の副成分を含むシルトの分離は、シルトの分離作業の簡易化の観点から好ましい。シルトの分離は、土壌の分級における常法によって行うことができ、このような方法としては、例えば、所定量の水を土壌に加えた試料を振動する篩にかけて、篩の目開きに応じた所望の粒径の成分を分離する加水ふるい法が挙げられる。本発明では、分離されたシルトにおけるダイオキシン類の含有量を高める観点から、汚染土壌の一部又は全部を揉み擦り合わせる摩砕処理を行った後にシルトを分離することが好ましい。
前記酸処理工程は、分離されたシルトを酸で処理する工程である。酸処理工程は、シルトのシリカガラスやその類似のケイ素成分、特にシルトの表面に位置するケイ素成分を化学的に破壊することを目的としている。したがって、古くから知られている水ガラスと塩酸に見られる下記式の反応及び同様の反応によって前記ケイ素成分を溶解するのに十分な強度の酸処理を行うことが好ましい。酸処理工程で用いられる酸は一種でも二種以上でもよく、このような酸としては、例えば塩酸、硫酸、及び硝酸等の無機酸や、スルホン酸等の有機酸が挙げられる。
Na2SiO3+2HCl→H2SiO3+2NaCl
酸処理工程は、1〜12規定の酸によって行われることが、処理時間の短縮の観点、及び対腐食性の高い装置を要することによるイニシャルコストの増加を抑制する観点から好ましく、6〜10規定であることがより好ましい。さらに酸処理工程は、常温で行うことができ、12〜24時間行われることが好ましい。酸処理工程の終点は、シルトの熱分析で前記ケイ素成分のガラス転移温度を示すピークが消えるか最小化することによって確認することができる。
前記第一の抽出工程は、酸液中のシルトからシルト中に含まれている有機物を抽出剤によって抽出する工程である。前記抽出剤には、酸液中でシルト中の有機物を吸着し又は結合してシルトから分離することができる成分を用いることができる。抽出剤は一種でも二種以上でもよい。このような抽出剤としては、例えば、腐植質や非水溶性有機溶剤が挙げられる。腐植質としては、例えばフミン酸、フルボ酸、及びこれらを含有する成分が挙げられる。非水溶性有機溶剤としては、例えば、アルカン等の飽和脂肪族炭化水素、アルケン等の不飽和脂肪族炭化水素、ベンゼンやトルエン等の芳香族炭化水素、及びこれらの非水溶性の誘導体が挙げられる。非水溶性有機溶剤としてより具体的には、炭素数16以上のアルカンが挙げられ、さらにはn−ヘキサデカンが挙げられる。
なお、本発明において、非水溶性有機溶剤における非水溶性とは、非水溶性有機溶剤を用いる抽出工程において、静置によって前記酸液と分液可能に分離することを意味する。
第一の抽出工程は、20〜65℃で行われることが好ましい。例えば抽出剤が腐植質である場合では、第一の抽出工程は20〜65℃で行うことが好ましく、例えば抽出剤が非水溶性有機溶剤である場合では、第一の抽出工程は20〜40℃で行うことが好ましい。
第一の抽出工程において、腐植質は、pH8以上のアルカリ性で水に溶解するので、前記酸液に腐植質を投入してなるスラリーのpHを8以上に調整することによって回収することができる。また第一の抽出工程において、非水溶性有機溶剤は、静置及び分液によって回収することができる。
本発明の浄化方法では、ダイオキシン類汚染土壌からのダイオキシン類の除去率を高めるために、さらなる工程を含んでいてもよい。このようなさらなる工程としては、例えば、第一の抽出工程前のシルトを含有する酸液中にアルコールを添加するアルコール処理工程や、腐植質による第一の抽出工程後のシルトからの非水溶性有機溶剤による第二の抽出工程が挙げられる。
アルコール処理工程は、酸処理工程後であって第一の抽出工程の前に行われ、シルトを含有する酸液にアルコールを混合して酸液中のシルトをアルコール処理する工程である。アルコールは、タンパク質に対して脱水作用を呈し、タンパク質を変性させること、及び、タンパク質はこの変性によって収縮すること、が知られている。アルコール処理工程によれば、シルト中の有機物がタンパク質の変性のようにアルコール処理によって収縮し、シルト中の細孔を通りやすくなり、抽出剤による抽出によってさらに抽出されやすくなると考えられる。
アルコール処理工程で用いられるアルコールは、前述したタンパク質の変性を生じさせるアルコールを用いることができる。アルコールは一種でも二種以上でもよい。このようなアルコールとしては、例えば、エタノール及びプロパノールが挙げられる。アルコール処理におけるアルコールの濃度は、シルトからの有機物の抽出率をさらに高める観点から、80体積%以上であることが好ましい。またアルコール処理は、常温で行うことができ、12〜24時間行われることが好ましい。
第二の抽出工程は、抽出剤に腐植質を用いる第一の抽出工程後のシルトを含有する酸液と非水溶性有機溶剤とを混合して、シルト中に残存する有機物を抽出する工程である。第二の抽出工程で用いられる非水溶性有機溶剤は、第一の抽出工程で前述した非水溶性有機溶剤と同じである。第二の抽出工程は、非水溶性有機溶剤を用いる第一の抽出工程と同様に行うことができる。
このような第一又は第二の抽出工程によって、有機物が除去された、すなわちダイオキシン類が除去されたシルトが排出される。抽出後の酸液中のシルトは、水中からシルトを分離する通常の方法、例えば沈澱や遠心分離、によって酸液中から分離することができる。
本発明の浄化方法では、浄化方法の効率化や環境への負荷の軽減の観点から、さらなる工程を含んでいてもよい。このようなさらなる工程としては、例えば、第一及び第二の抽出工程から回収された非水溶性有機溶剤を濃縮する工程が挙げられる。非水溶性有機溶剤の濃縮は、常圧又は減圧下における蒸留によって行うことができる。濃縮された非水溶性有機溶剤は後述するダイオキシン類の分解方法に用いることができ、濃縮によって凝縮液として回収された非水溶性有機溶剤は、非水溶性有機溶剤として第一及び第二の抽出工程に再利用することができる。
本発明の浄化方法によれば、ダイオキシン類が除去された清浄な土壌が得られる。得られた土壌の用途としては、ダイオキシン類汚染土壌の採取場所の埋め戻しが挙げられるが、土壌の用途は特に限定されない。
本発明の浄化方法におけるシルト分離工程で分離されたシルト以外の成分、すなわち砂や礫は、シルトに比べてごくわずかにしかダイオキシン類を含有していないことから、ダイオキシン類の含有量に応じて、適宜に処理し、又はそのまま、清浄な土壌として用いることができる。シルト以外の土壌の成分の適宜な処理としては、例えば、微量残存するダイオキシン類を除去するための焼却処理が挙げられる。
本発明の第一又は第二の抽出工程から排出されるシルトは、ダイオキシン類が除去されていることから、シルトの性状に応じて、適宜に処理し、又はそのまま、清浄な土壌として用いることができる。シルトの適宜な処理としては、例えば、シルトのpHを中性付近に戻すアルカリ処理や、シルト中の有機溶剤を除去する焼却処理が挙げられる。本発明の浄化方法によって得られるシルトとそれ以外の土壌の成分とは、清浄な土壌として別々に
用いられてもよいし、混合して清浄な土壌として用いられてもよい。
本発明のダイオキシン類の分解方法(以下、「分解方法」とも言う)は、前述した浄化方法で有機物を抽出して回収された抽出剤をそのまま、又は適宜に処理して、生物処理によって分解、無毒化する方法である。
より詳しくは、本発明の分解方法は、ダイオキシン類汚染土壌から分離され、酸処理されたシルトに抽出剤として作用させた腐植質、すなわち前記浄化方法の第一の抽出工程から回収された腐植質、に、ダイオキシン類を分解する微生物又はその微生物におけるダイオキシン類分解成分を作用させて腐植質中のダイオキシン類を分解する方法(以下、「第一の分解方法」とも言う)である。
又は本発明の分解方法は、ダイオキシン類汚染土壌から分離され、酸処理されたシルトに抽出剤として作用させた非水溶性有機溶剤、すなわち前記浄化方法の第一及び第二の抽出工程から回収された非水溶性有機溶剤又はその濃縮物、中のダイオキシン類を水溶性有機溶剤に抽出する第三の抽出工程を含み、第三の抽出工程から回収された水溶性有機溶剤に、ダイオキシン類を分解する微生物又はその微生物におけるダイオキシン類分解成分を作用させて、水溶性有機溶剤中のダイオキシン類を分解する方法(以下、「第二の分解方法」とも言う)である。
第二の分解方法における前記水溶性有機溶剤は、非水溶性有機溶剤に対してダイオキシン類の高い溶解性を有し、かつ水溶性を有する有機溶剤である。水溶性有機溶剤は一種でも二種以上でもよい。このような水溶性有機溶剤としては、例えばジメチルスルホキシド及びアセトンが挙げられる。
第三の抽出工程は、ダイオキシン類の溶解性の差と水溶性とを利用して非水溶性有機溶剤から水溶性有機溶剤へダイオキシン類を移し、抽出する工程である。このような第三の抽出工程は、例えば、回収された非水溶性有機溶剤と水溶性有機溶剤とを混合し、これらの混合溶剤にさらに水を加えて混合し、水溶性有機溶剤と水溶性有機溶剤に溶解したダイオキシン類とを水相に移し、分液することによって行うことができる。第三の抽出工程は、10〜30℃で行われることが好ましく、常温で行われることがより好ましい。
回収された抽出剤中のダイオキシン類の分解には、ダイオキシン類を分解する微生物又はその微生物におけるダイオキシン類分解成分が用いられる。前記微生物は、ダイオキシン類を分解する微生物であれば特に限定されないが、多塩素化のダイオキシン類に対しても高い分解能力を有する観点から、塩素化芳香族化合物で馴化されたバチルス・ミドウスジであることが好ましい。また前記に生物におけるダイオキシン類分解成分は、前記微生物におけるダイオキシン類分解酵素等のダイオキシン類を分解する成分であれば特に限定されないが、多塩素化のダイオキシン類に対する高い分解能力を有する観点、及び微生物の活動可能温度以下の温度でもダイオキシン類の分解が可能である観点から、塩素化芳香族化合物で馴化されたバチルス・ミドウスジの菌体膜を含む菌体破砕物、若しくはその分画物が好ましい。
塩素化芳香族化合物で馴化されたバチルス・ミドウスジには、特許文献16に記載されている、芳香族環に結合する酸素原子を有する置換基と芳香族環に結合するクロロ基とを有する塩素化芳香族化合物の存在下で培養されたバチルス・ミドウスジ(Bacillus midousuji)を用いることができる。また、塩素化芳香族化合物で馴化されたバチルス・ミドウスジの菌体膜を含む菌体破砕物、若しくはその分画物には、特許文献16に記載されているように、塩素化芳香族化合物で馴化されたバチルス・ミドウスジの菌体を、超音波、圧搾、細胞膜分解酵素の添加等によって破砕し、必要に応じて破砕物から菌体膜分画を分離
することによって得られる。
また塩素化芳香族化合物で馴化されたバチルス・ミドウスジによる腐植質又は水溶性有機溶剤中のダイオキシン類の分解は、バチルス・ミドウスジの活動可能温度、例えば62〜90℃の温度かつ酸素供給下で行うことができる。前記菌体破砕物又はその分画物による腐植質又は水溶性有機溶剤中のダイオキシン類の分解は、常温からバチルス・ミドウスジの活動可能温度、例えば15〜90℃の温度かつ酸素供給下で行うことができる。
第二の分解方法は、ダイオキシン類の分解の効率向上の観点から、さらなる工程を含んでいてもよい。このようなさらなる工程としては、例えば、第三の抽出工程から回収された水溶性有機溶剤(水相)を濃縮する工程が挙げられる。水溶性有機溶剤の濃縮は、常圧又は減圧下での蒸留によって行うことができる。この濃縮工程によって、水溶性有機溶剤中のダイオキシン類の濃度をさらに高めることができる。また前記の濃縮工程によって凝縮液として回収された水溶性有機溶剤は、水溶性有機溶剤として第三の抽出工程に再利用することができる。
本発明の実施の形態を以下に説明する。
本発明の浄化方法及び分解方法には、図1に示すように、酸処理槽1と第一抽出槽2とを含む装置を用いることができる。酸処理槽1には、不図示の摩砕処理装置(例えば新六精機株式会社製、骨材研磨機「ハリケーン」(登録商標))で摩砕処理されたダイオキシン類汚染土壌を、加水ふるい装置(例えば筒井理化学器械株式会社製、ふるい振とう機)によって粒径75μm以下の粒子の分級品としたシルトが投入される。一方で加水ふるい装置において粒径75μm超の砂や礫は、浄化土壌として、例えばそのままか、焼却処理後に、ダイオキシン類汚染土壌の採取場所に埋め戻される。
シルトが供給される酸処理槽1には、6規定(N)の塩酸が供給される。前記シルトは酸処理槽1にて常温で24時間攪拌される。
次いで酸処理槽1中のシルトの塩酸分散液(酸液)は、第一抽出槽2に供給される。また第一抽出槽2には、腐植質であるフミン酸が供給される。前記酸液とフミン酸との混合液は、第一抽出槽2において50〜65℃で72時間攪拌される。
攪拌後、第一抽出槽2からは、前記混合液のpHをNaOH水溶液の添加によって8以上に調整することによってフミン酸が水層として回収される。回収されたフミン酸は、不図示のダイオキシン類分解槽に供給される。ダイオキシン類分解槽は、例えば、熱媒が供給、循環するジャケットを有する温度調整装置と、攪拌装置と、空気導入装置とを有している。ダイオキシン類分解槽には、塩素化芳香族化合物で馴化されたバチルス・ミドウスジが供給され、又はその菌体膜を有する菌体破砕物が供給され、フミン酸中のダイオキシン類は適切な温度において空気が供給されている状態で前記の微生物又はその菌体破砕物によって分解される。
第一抽出槽2の底部からはシルト中の有機物ごと、ダイオキシン類がシルトから除去された浄化シルトが排出される。浄化シルトは、例えば中性化のためのアルカリ処理や、沈降や遠心分離による固液分離が必要に応じて行われ、ダイオキシン類汚染土壌の採取場所に埋め戻される。
図1に基づく実施形態によれば、酸処理によって表面のケイ素成分が除去されたシルトから、シルトに含まれており、ダイオキシン類を取りこんでいる有機物がフミン酸によって効率よく抽出され、また回収されたフミン酸ごとダイオキシン類分解槽に供給されることから、簡素な工程でダイオキシン類汚染土壌の高い浄化効率が得られるダイオキシン類
汚染土壌の浄化方法及び該汚染土壌中のダイオキシン類の分解方法を提供することができる。
また本発明の浄化方法及び分解方法には、図2に示すように、酸処理槽1と第二抽出槽3と第三抽出槽4とを含む装置を用いることができる。酸処理槽1までの操作は図1に基づいて前述した操作と同じである。
酸処理槽1中のシルトを含有する酸液は第二抽出槽3に供給される。また第二抽出槽3にはアルカン、例えばn−ヘキサデカン、が、酸液に対して100体積%で供給される。前記酸液とn−ヘキサデカンは、第二抽出槽3において50〜65℃で攪拌される。
攪拌後、静置された第二抽出槽3ではn−ヘキサデカンの上層と酸液の下層とが形成される。シルトは第二抽出槽3の底部に沈降し、最下層を形成する。第二抽出槽3からは、最下層のシルトが浄化シルトとして排出される。また第二抽出槽3からは、下層の酸液が排出される。排出された酸液は、濃縮や酸の追加によって必要に応じて酸濃度を調整し、酸処理槽1に供給される酸に再利用することができる。
さらに第二抽出槽3からは、上層のn−ヘキサデカンが排出される。排出されたn−ヘキサデカンは、第三抽出槽4に供給される。また第三抽出槽4には前記水溶性有機溶剤、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)が、n−ヘキサデカンに対して8〜10体積%で供給される。n−ヘキサデカンとDMSOとの混合液は、第三抽出槽4において常温で12時間攪拌される。この攪拌によって、n−ヘキサデカンに抽出された有機物中からダイオキシン類がDMSOに溶解する。n−ヘキサデカンとDMSOとの混合後、第三抽出槽4にはさらに水がn−ヘキサデカンと同量で供給される。n−ヘキサデカン、DMSO、及び水は、第三抽出槽4において常温で12時間さらに攪拌される。この攪拌によって、ダイオキシン類を溶解しているDMSOは水相に溶解する。
攪拌後、静置された第三抽出槽4では、n−ヘキサデカンの上層とDMSO水溶液の下層とが形成される。DMSO水溶液の下層は、ダイオキシン類分解槽におけるDMSOの濃度が5〜10体積%となるように濃度が調整されて、前記のダイオキシン類分解槽に供給され、前記の微生物又はその菌体破砕物によって分解される。n−ヘキサデカンの上層は、第二抽出槽3に供給される抽出剤に再利用することができる。
図2に基づく実施形態によれば、シルト中のダイオキシン類を抽出した抽出剤が、有機相と水相との分液によって取り出されることから、高い抽出効率が得られ、また抽出剤を容易に再利用することができるダイオキシン類汚染土壌の浄化方法及び該汚染土壌中のダイオキシン類の分解方法をさらに提供することができる。
また本発明の浄化方法及び分解方法には、図3に示すように、酸処理槽1とアルコール処理槽5と第一抽出槽2とを含む装置を用いることができる。酸処理槽1までの操作は図1に基づいて前述した操作と同じである。
酸処理槽1中のシルトを含有する酸液はアルコール処理槽5に供給される。またアルコール処理槽5にはアルコール、例えば98%エタノール、が、酸液との混合後におけるアルコールの濃度が80体積%以上となるように供給される。前記酸液とアルコールの混合液は、アルコール処理槽5において常温で4時間攪拌される。このアルコール処理によって、シルト中のタンパク質等の有機物は変性し収縮する。
攪拌後、アルコール処理槽5中の混合液は、第一抽出槽2に供給される。また第一抽出槽2には、腐植質であるフミン酸が供給される。第一抽出槽2及びその後の操作は図1に
基づいて前述した操作と同じである。
図3に基づく実施形態によれば、シルト中の有機物が収縮してシルト内から排出されやすくなっていることから、高いダイオキシン類の浄化効率が得られるダイオキシン類汚染土壌の浄化方法及び該汚染土壌中のダイオキシン類の分解方法をさらに提供することができる。
また本発明の浄化方法及び分解方法には、図4に示すように、酸処理槽1とアルコール処理槽5と第二抽出槽3と第三抽出槽4とを含む装置を用いることができる。酸処理槽1までの操作は図1に基づいて前述した操作と同じであり、酸処理槽1からアルコール処理槽5までの操作は図3に基づいて前述した操作と同じである。
アルコール処理槽5での攪拌後、アルコール処理槽5中の混合液は、第二抽出槽3に供給される。第二抽出槽3での操作は図2に基づいて前述した操作と同じである。また第二抽出槽3のn−ヘキサデカンの上層は第三抽出槽4に供給される。第三抽出槽4における操作及びその後の操作も図2に基づいて前述した操作と同じである。
図4に基づく実施形態によれば、高い抽出効率及び高いダイオキシン類の浄化効率が得られ、また抽出剤を容易に再利用することができるダイオキシン類汚染土壌の浄化方法及び該汚染土壌中のダイオキシン類の分解方法をさらに提供することができる。
また本発明の浄化方法及び分解方法には、図5に示すように、酸処理槽1とアルコール処理槽5と第一抽出槽2と第二抽出槽3と第三抽出槽4とを含む装置を用いることができる。酸処理槽1までの操作は図1に基づいて前述した操作と同じであり、酸処理槽1からアルコール処理槽5までの操作は図3に基づいて前述した操作と同じである。
アルコール処理槽5での攪拌後、アルコール処理槽5中の混合液は、第一抽出槽2に供給される。第一抽出槽2での操作は図1に基づいて前述した操作と同じである。
第一抽出槽2の最下層のシルトは酸液を伴って第二抽出槽3に供給される。第二抽出槽3における操作は図2に基づいて前述した操作と同じである。また、第二抽出槽3の上層のn−ヘキサデカンは第三抽出槽4に供給される。第三抽出槽4における操作及びその後の操作も図2に基づいて前述した操作と同じである。
図5に基づく実施形態によれば、第一抽出槽2でフミン酸によって有機物が抽出されたシルトから、第二抽出槽3においてさらに有機物が抽出されることから、より一層高い抽出効率が得られるダイオキシン類汚染土壌の浄化方法及び該汚染土壌中のダイオキシン類の分解方法をさらに提供することができる。
以下、本発明に係る実験結果の一部を説明する。
<ダイオキシン類汚染土壌のDTA解析>
筒井理化学機器株式会社製の振とうふるい機、300−MMを用いて、含水率が45%であるダイオキシン類汚染土壌を加水ふるい処理法にて分級し、150メッシュを通過した、シルトと粘土成分とからなる土壌成分を得た。分級条件は、振動数が1,000rpm、片振幅が1.0mm、処理試料質量が200g、加水量が一回当たり1L、加水回数が3回とした。得られた土壌成分を「原料」とした。
またダイオキシン類汚染土壌を、新六精機株式会社製の骨材研磨機「ハリケーン」(登
録商標)を用いて摩砕処理し、摩砕処理品を得た。摩砕処理は、質量比が土壌:水で4:1となるようにダイオキシン類汚染土壌に水を加え、回転数を300rpとし、常温、常圧の条件で行った。
さらに前記原料を13.4Nの硝酸で常温にて24時間酸処理し、硝酸処理品を得た。さらには、前記原料を1Nの塩酸で常温にて24時間酸処理し、乾燥後に95%のエタノールを供給し、常温にてさらに24時間アルコール処理し、塩酸−アルコール処理品を得た。
得られた原料、摩砕処理品、硝酸処理品、及び塩酸−アルコール処理品のそれぞれを示差熱分析(DTA)で分析した。この分析は、島津製作所社製のDTG−60を用い、露点が−80℃の清浄乾燥空気を供給し、10℃/minの昇温速度で行った。分析結果を以下の表2に示す。また原料のDTA及び熱重量測定(TGA)の結果を図6に示す。
Figure 0005761920
表2及び図6から明らかなように、原料及び摩砕処理品には、512℃付近にガラス転移点が見られる。しかしながら表2及び図6から明らかなように、硝酸処理品及び塩酸−アルコール処理品ではこのガラス転移点が見られない。この結果から、シルトの酸による処理によってシルト中のケイ素成分が除去されていることがわかる。
また表2から明らかなように、原料、摩砕処理品、硝酸処理品、及び塩酸−アルコール処理品のいずれも400〜430℃に最大発熱ピーク温度を有しており、有機物の存在が示されている。一方で、硝酸処理品、及び塩酸−アルコール処理品は、重量減少率が21〜25%であり、原料及び摩砕処理品の重量減少率が約16%であることに比べると、重量減少率が高い。このように、有機物を示す重量減少はケイ素成分が除去されたシルトにおいてより大きいことから、シルトのケイ素成分はシルトの表面に主に形成されており、有機物はシルトの粒子の内部に存在することがわかる。
さらに表2から明らかなように、原料の重量減少率が約16%であり、硝酸処理品及び塩酸−アルコール処理品の重量減少率が21〜25%であることから、酸処理及び酸+エタノール処理は、酸未処理に比べて、シルト中からの有機物の抽出効果を50%程度向上させている。
<汚染土壌中のダイオキシン類の濃度測定>
塩素数8までのポリクロロジベンゾフラン類(PCDFs)と塩素数8までのポリクロ
ロジベンゾ−p−ダイオキシン類(PCDDs)とを含有するダイオキシン類汚染土壌の試料及びその分級品の上記のダイオキシン類の濃度を測定した。試料中のダイオキシン類の濃度は、GC/MSを用いて測定した。
前記試料として、焼却炉を有している東京の病院の空き地から採取した、地表から300mmの深さまでの土壌(H18)を用いた。H18のダイオキシン類の濃度を測定したところ、PCDDsの濃度は570pg−TEQ/gであり、PCDFsの濃度は2,000pg−TEQ/gであった。H18を、前述の分級条件による加水ふるい処理法によって分級し、砂礫成分と、シルト及び粘土成分からなる成分(シルト)とを得た。そしてH18の砂礫成分及びH18のシルト中の前記ダイオキシン類の濃度を測定した。結果を図7に示す。H18のシルトのダイオキシン類の濃縮率γを求めたところ、55.7%であった。
また前記試料として、H18の40メッシュ通過成分(A1)を用いた。A1のダイオキシン類の濃度を測定したところ、PCDDsの濃度は92pg−TEQ/gであり、PCDFsの濃度は260pg−TEQ/gであった。A1をH18と同じ条件で加水ふるい処理法によって分級し、砂礫成分とシルトとを得た。そしてA1の砂礫成分及びA1のシルト中の前記ダイオキシン類の濃度を測定した。結果を図8に示す。A1のシルトのダイオキシン類の濃縮率γを求めたところ、72.3%であった。
さらに前記試料として、焼却炉から採取された飛灰と土壌とを混合して得られた合成汚染土壌(MC)を用いた。MCのダイオキシン類の濃度を測定したところ、PCDDsの濃度は340pg−TEQ/gであり、PCDFsの濃度は400pg−TEQ/gであった。得られたMCを前述した条件にて摩砕処理した。得られたMCの摩砕処理品を、H18やA1と同じ条件で加水ふるい処理法によって分級し、砂礫成分とシルトと得た。そして、MCの摩砕処理品、その砂礫成分、及びそのシルト中のダイオキシン類の濃度を測定した、結果を図9に示す。MCの摩砕処理品のシルトにおけるダイオキシン類の濃縮率γを求めたところ、99.8%であった。この結果から、摩砕処理を行うことは、汚染土壌中のダイオキシン類をシルトに移す観点から優れていることが分かる。
<ダイオキシン類の生物分解の有効性の評価>
特許文献16に記載されている方法を用いて、スラリー状のダイオキシン類汚染土壌とミドウスジ生菌との共存培養を行った。ダイオキシン類汚染土壌には、前記のH18のシルトを用いた。ミドウスジ生菌には、バチルス・ミドウスジSH2B−J2株(SH2B−J2菌株)を用いた。培養温度を65℃とし、培養時間を336時間とし、その他の諸条件には特許文献16に記載の条件を採用した。H18のシルトと培地とからなる系を比較系とし、H18のシルトと培地とSH2B−J2菌株とからなる系を試験系1とし、H18のシルトと培地とSH2B−J2菌株と系全体に対して10%のDMSOとからなる試験系2とし、試験系1及び2のそれぞれにおいてSH2B−J2菌株を培養し、比較系において培養条件で放置し、各系におけるダイオキシン類の濃度としてPCDFsの濃度を測定した。結果を表3及び図10に示す。試験系2において、14日間の振とう型の共存培養で、比較系の30%程度のダイオキシン類の分解(減少)が見られた。
なお図10中、「Te」は「テトラ」を表し、「Pe」は「ペンタ」を表し、「Hx」は「ヘキサ」を表し、「Hp」は「ヘプタ」を表し、「O」は「オクタ」を表している。
Figure 0005761920
<SH2B−J2菌株によるダイオキシン類の分解>
SH2B−J2菌株を用いる前述の65℃での振とう型の共存培養によってダイオキシン類を分解したときのダイオキシン類の濃度の経時変化を図11に示す。図11から明らかなように、SH2B−J2菌株によるダイオキシン類の分解反応の反応次数は一次である。したがって、ダイオキシン類の濃度を高めることによって前記分解反応の反応速度を向上させることができ、結果として処理日数の短縮が期待される。また、ダイオキシン類を可能な限り濃縮することで、ダイオキシン類とSH2B−J2菌株等の分解活性成分との出会いの確率を高めることによる浄化効率の向上が期待される。
<土壌の乾燥によるダイオキシン類の除去の検証>
前記摩砕処理品に前述の加水ふるい処理を施して含水率が46.7%〜47.6%の原料シルトを得た。得られた原料シルトを、乾燥空気の流通のみを許容した密閉系乾燥実験装置を用いてマントルヒータで加熱乾燥した。70℃で14日間の連続乾燥操作により、原料シルトの含水率は2%まで減少した。原料シルトから蒸発し、乾燥空気と同伴した水分は、三連のインピンジャ形冷却器で回収した。乾燥を行っていない原料シルト、乾燥を行った乾燥シルト、及び冷却器で回収された回収水のダイオキシン類の濃度を測定した。原料シルトのダイオキシン類の濃度の測定は、法定の方法、すなわち、前記のシルトを乾固後にトルエンでソックスレー抽出し、濃縮した抽出液をガスクロマトグラフと質量分析の連動でダイオキシン類の組成とその濃度を特定する方法、によって行った。回収水のダイオキシン類の濃度も、法定の方法、すなわち、回収水をろ過した後、ろ液をジクロロエタンで抽出し、ろ過残渣はトルエンでソックスレー抽出し、これらの二抽出液を混合、濃縮して、ガスクロマトグラフと質量分析の連動でダイオキシン類の組成とその濃度を特定する方法、によって行った。原料シルト及び乾燥シルトのダイオキシン類の濃度の測定結果を図12及び13に示す。
図12及び13より、原料シルトのダイオキシン類の濃度に比べて、乾燥シルトのダイオキシン類の濃度は約40%低い旨の測定結果が得られた。図12より明らかなように、原料シルトと乾燥シルトにおけるダイオキシン類の組成には変化が無いことから、乾燥前後における原料シルトでのダイオキシン類の減少は、特定のダイオキシン類の反応、分解によるものではないことが明らかになった。
しかしながら、回収水のダイオキシン類の濃度を測定したところ、回収水のダイオキシン類の濃度は非常に低い値であり、原料シルトと乾燥シルトとのダイオキシン類の濃度の差の1%程度に過ぎないことが明らかになった。よって、土壌の乾燥によるダイオキシン類の濃度の減少は、水蒸気の同伴による抽出ではないことも明らかになった。
以上より、乾燥前後の原料シルトにおけるダイオキシン類の濃度の減少は、物理的な抽出や化学的な反応、分解によるものではなく、実際は原料シルトからはダイオキシン類は乾燥によっては減少せず、乾燥によるシルトの状態の何らかの変化によって、原料シルト中のダイオキシン類が前述の測定方法では検出されなくなった可能性が考えられた。
そこで、シルトの表面を構成する主要な成分をガラス成分と考え、このガラス成分がシ
ルトからのダイオキシン類の検出を妨害している可能性があると考え、シルトの表面皮膜の破壊を目的として、下記に示す強酸によるシルト土壌の酸処理を行った。
まず、前述した条件による原料シルトと乾燥シルトのダイオキシン類の濃度を測定した。次いで、原料シルトと乾燥シルトのそれぞれを酸で処理した。酸処理は、原料シルト及び乾燥シルトのそれぞれに対して、当重量の1規定の塩酸を原料シルト及び乾燥シルトのそれぞれに添加し、24時間放置することによって行った。そして原料シルト、乾燥シルト、原料シルトに酸処理を行った酸処理シルト、乾燥シルトに酸処理を行った乾燥−酸処理シルトのそれぞれについて、ダイオキシン類の濃度を測定した。測定結果を図14及び図15に示す。
図15に示されるように、原料シルトと酸処理シルトとのダイオキシン類の濃度の比は、酸処理シルト:原料シルトで1:0.4であった。また乾燥シルトと乾燥−酸処理シルトとのダイオキシン類の濃度の比は、乾燥−酸処理シルト:乾燥シルトで1:0.3であった。乾燥処理に係らず、シルトからのダイオキシン類の抽出効率は酸処理により改善されることが明らかになった。
なお、原料シルトに20%の塩酸を添加し、12時間程度放置すると、原料シルトからゲル状の分離物が抽出された。一方で、水ガラスに強酸を添加すると、ゲル状のケイ酸が生成することが知られている。このような既知の反応に基づき、原料シルトはガラス成分を表面に有することが明らかになった。
以上より、シルトの表面はガラス成分で被覆されていることが明らかになった。また、原料シルトを乾燥させると、シルトの表面のガラス成分の被覆が強固になり、シルト内部に収容されているダイオキシン類がシルトの外部に抽出されにくくなり、あたかもダイオキシン類の濃度が乾燥によって減少したかのように見えることが明らかになった。このように、ダイオキシン類汚染土壌の乾燥によるダイオキシン類の濃度の減少は、土壌の乾燥によってダイオキシン類が前述の現行の分析方法では検出されにくくなることに起因していることが明らかになった。また、ダイオキシン類汚染土壌からのダイオキシン類の分離には、該土壌中のシルトの酸処理が有効であることが明らかになった。
ダイオキシン類汚染土壌のうち、ダイオキシン類は、90%以上がシルトに付着又は吸着している。本発明は、このシルトを含有するダイオキシン類を、シルトが含有するタンパク質等の有機物ごと、シルトの内部から表面付近に引き出す。したがって、ダイオキシン類の微生物による分解反応を阻害する要素を除去し、ダイオキシン類を分解する微生物又はその微生物が含有するダイオキシン類の分解の有効成分の使用量を最少化し、処理完了時間を短縮させることができ、結果として処理コストの削減ができることが期待される。
さらに本発明では、ダイオキシン類分解微生物の基質になり得る成分、例えばバチルス・ミドウスジに対して腐植質、n−ヘキサデカン又はDMSOを抽出剤に用いることによって、ダイオキシン類の分解反応への適用がより一層容易になることが期待される。特に本発明では、最終的にDMSOにダイオキシン類を抽出することによって、スラリー状にしたシルト(固相)と共存培養する培地(液相)との混相反応を、液相反応として扱えるようになり、ダイオキシン類の分解反応への適用や処理時間の制御がさらに一層容易になることが期待される。
1 酸処理槽
2 第一抽出槽
3 第二抽出槽
4 第三抽出槽
5 アルコール処理槽

Claims (4)

  1. シルトを含有し、ダイオキシン類で汚染されたダイオキシン類汚染土壌からシルトを分離するシルト分離工程と、分離したシルトを酸液と混合して酸処理する酸処理工程と、前記酸処理工程後の酸液中のシルトからシルト中に含まれている有機物を腐植質によって抽出する第一の抽出工程と、前記第一の抽出工程後のシルトを含有する酸液と非水溶性有機溶剤とを混合してシルト中に残存する有機物を抽出する第二の抽出工程とを含むことを特徴とするダイオキシン類汚染土壌の浄化方法。
  2. 前記ダイオキシン類汚染土壌が、含水率2〜4%の土壌であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記非水溶性有機溶剤がn−ヘキサデカンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記第一の抽出工程前に、前記酸処理工程後のシルトを含有する酸液にアルコールを混合して酸液中のシルトをアルコール処理するアルコール処理工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
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