JP3763595B2 - 重合防止剤の回収方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合防止剤の回収方法に関し、さらに詳しくは、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を、酸やアルカリを使用することなく、簡単な操作で、効率よく経済的に有利に回収する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、スチレンなどの芳香族ビニル化合物は、熱などによって重合しやすい性質を有することが知られている。この芳香族ビニル化合物の製造プロセスにおいては、所望の化合物を分離回収したり、濃縮したり、あるいは精製などのために、種々の蒸留操作が施されている。しかしながら、芳香族ビニル化合物は前記したように熱により重合してポリマー状物質を形成するため、蒸留工程において種々のトラブルを引き起こし、長時間の安定な連続運転を不可能にするなど、好ましくない事態を招来しやすい。
したがって、このような事態を回避するために、従来から重合防止剤の存在下に蒸留操作を行う方法がとられている。この重合防止剤、特に芳香族ビニル化合物の重合防止剤としては、一般に、ジニトロフェノールやジニトロ−o−クレゾールなどのニトロフェノール系重合防止剤が用いられており、またこれらのニトロフェノール系重合防止剤は、蒸留残渣、いわゆるスチレンタール中に蓄積され、プロセス系外へ排出されている。
【0003】
このようなニトロフェノール系重合防止剤を含有するスチレンタールをそのまま焼却処理した場合、大気中に窒素酸化物などが排出され、環境汚染を引き起こすおそれがあり、また芳香族ビニル化合物の製造コストを下げるためにも、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を回収し、再使用することが望まれる。
このため、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を回収する方法として、例えば(1)スチレンタールをアルカリ性水溶液で処理し、その中に含まれるニトロフェノール系重合防止剤を抽出したのち、水相中のニトロフェノール系重合防止剤を酸性条件下に有機溶剤で逆抽出する方法(特公昭59−4410号公報)、(2)スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を含酸素有機溶剤で抽出したのち、蒸留に付して回収する方法(特公平4−16455号公報)などが提案されている。
しかしながら、上記(1)の方法においては、ニトロフェノール系重合防止剤の回収率は95%以上で良好であるものの、酸やアルカリ排水が発生する上、腐食を防止するために特殊な材質のものを用いる必要があり、また洗浄工程も必要となるため、設備費が高くつくなどの欠点がある。一方、(2)の方法においては、ニトロフェノール系重合防止剤の回収率が66%以下で低いという大きな問題がある上、蒸留工程が必要なため、設備費及び用役費が高くつくなどの欠点もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術がもつ欠点を克服し、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を酸やアルカリを使用することなく、簡単な操作で効率よく経済的に有利に回収する方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、スチレンタールを特定の温度の熱水で処理して、その中に含まれるニトロフェノール系重合防止剤を抽出することにより、あるいは、さらに抽出処理で得られた水相中のニトロフェノール系重合防止剤を特定の有機溶剤により逆抽出することにより、その目的を達成しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、ニトロフェノール系重合防止剤を含有するスチレンタールを温度80〜160℃の熱水で処理し、ニトロフェノール系重合防止剤を抽出することを特徴とする重合防止剤の回収方法、及びこの熱水処理を行ったのち、水相中のニトロフェノール系重合防止剤を芳香族炭化水素系溶剤で逆抽出することを特徴とする重合防止剤の回収方法を提供するものである。
【0006】
本発明でいうスチレンタールとは、芳香族ビニル化合物に蒸留などの処理を施すことにより生成した残渣を指称する。ここで、芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン,α−メチルスチレン,ジビニルベンゼン,ビニルトルエン及びこれらの各種誘導体などが挙げられる。
また、このスチレンタール中に含有するニトロフェノール系重合防止剤としては、特に制限はなく、従来スチレンなどの芳香族ビニル化合物の重合防止剤として慣用されているもの、例えば2,4−ジニトロフェノールや4,6−ジニトロo−クレゾールなどを挙げることができる。また、このニトロフェノール系重合防止剤には、装置内雰囲気において還元されて生成する2−アミノ−4−ニトロフェノールや6−アミノ−4−ニトロ−o−クレゾールなども含まれる。これらのニトロフェノール系重合防止剤は、スチレンタール中に一種含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
【0007】
本発明の方法においては、上記ニトロフェノール系重合防止剤を含有するスチレンタールを熱水で処理して、該ニトロフェノール系重合防止剤を抽出する。この際使用する熱水の温度は80〜160℃の範囲に設定すべきである。この温度が80℃未満ではニトロフェノール系重合防止剤の回収率が低すぎて実用的でなく、また160℃を超えると処理圧力が高くなりすぎて設備費が高くつく上、ニトロフェノール系重合防止剤が変性し、その回収率が低下する傾向がみられる。ニトロフェノール系重合防止剤の回収率及び設備費などの面から、好ましい熱水温度は100〜150℃の範囲であり、特に120〜140℃の範囲が好適である。また、処理圧力については、抽出処理に用いられる熱水が液相を維持するのに充分な圧力であればよく、特に制限はない。
さらに、この熱水は、スチレンタール1重量部に対して、通常1〜200重量部の割合で使用される。この使用量が1重量部未満ではニトロフェノール系重合防止剤の回収率が不充分であり、また200重量部を超えると装置が大きくなって設備費が高くつき、好ましくない。ニトロフェノール系重合防止剤の回収率及び設備費などの面から、熱水の好ましい使用量は、スチレンタール1重量部に対して20〜150重量部の範囲であり、特に30〜140重量部の範囲が好適である。また、処理時間は、処理温度やその他の条件によって左右され、一概に定めることができないが、通常は10秒〜1時間程度で充分である。
【0008】
このようにして、ニトロフェノール系重合防止剤が熱水により抽出され、それを含む水相が得られる。この水相から、ニトロフェノール系重合防止剤を回収する方法としては様々な方法を用いることができるが、芳香族炭化水素系溶剤を用いて逆抽出する方法が有利である。この芳香族炭化水素系溶剤としては、例えばエチルベンゼン,スチレン,ジビニルベンゼン,トルエン,クメン,ベンゼン,キシレン,α−メチルスチレンなどの炭素数6〜10の芳香族炭化水素化合物を挙げることができる。これらの芳香族炭化水素系溶剤は単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。これらの芳香族炭化水素系溶剤の中では、特にエチルベンゼンとスチレンとの混合物が好適である。逆抽出処理により得られたニトロフェノール系重合防止剤を含むエチルベンゼンとスチレンとの混合物は、そのままスチレン製造プロセスにおける蒸留系に供給することができる。
この逆抽出処理においては、芳香族炭化水素系溶剤は、ニトロフェノール系重合防止剤を含む水相1重量部に対し、通常0.1〜10重量部の割合で用いられる。この使用量が0.1重量部未満ではニトロフェノール系重合防止剤の抽出が不充分であり、また10重量部を超えるとその量の割には抽出効果の向上はみられず、むしろ設備が大きくなり、経済的に不利となる。抽出効果及び経済性などの面から、芳香族炭化水素系溶剤の好ましい使用量は、水相1重量部に対して、0.2〜1重量部の範囲である。
また、この逆抽出処理における温度は、抽出効果及び操作性の面から、20〜140℃の範囲が好ましく、特に40〜100℃の範囲が好適である。さらに、抽出処理時間は、処理温度及びその他の条件によって左右され、一概に定めることはできないが、通常10秒〜1時間程度で充分である。処理圧力については、抽出処理に供されるニトロフェノール系重合防止剤を含む水相及び芳香族炭化水素系溶剤が、共に液相を維持するのに充分な圧力であればよく、特に制限はない。
【0009】
このようにして、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を、回収率90%以上で効率よく回収することができる。
図1は、本発明の方法を適用し、スチレン/エチルベンゼン混合物から蒸留によりエチルベンゼンとスチレンとをそれぞれ分離するための一例の工程図である。 エチルベンゼン・スチレンスプリッター1に、スチレン/エチルベンゼン混合物(DM)を、抽出槽(II) 4からの2,4−ジニトロフェノール(DNP)を含むDMと共に供給し、同時に重合防止剤としてDNPを供給する。スプリッター1の頂部からエチルベンゼンが留出し、底部からの液はスチレン精留塔2に供給され、この精留塔2の頂部からスチレンが留出する。精留塔2の底部から排出されるDNPを含むスチレンタールは、水と共に抽出槽(I)3に供給され処理される。抽出層(I)3の底部からタールが排出され、また3から出たDNPを含む水相は、DMと共に抽出槽(II) 4に供給され、処理される。抽出槽(II)4の底部から排出される水は、DNPを含むスチレンタールの処理にリサイクルされる。一方、抽出槽(II) 4から出たDNPを含むDMは、スプリッター1に新しいDMと共に供給される。
【0010】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1〜9
攪拌機付耐圧容器中において、2,4−ジニトロフェノール2.0重量%を含むスチレンタールを、第1表に示す量の熱水にて、第1表に示す温度で30分間抽出処理した。
得られた回収水相中の2,4−ジニトロフェノールを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析を行い、2,4−ジニトロフェノールの回収率を求めた。結果を第1表に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
第1表から分かるように、実施例8では、スチレンタールに対し、35倍重量の熱水を用い、140℃で処理することにより、2,4−ジニトロフェノールの回収率は99.9%であり、ほぼ定量的に回収できた。また実施例9では、抽出温度が160℃と高く、2,4−ジニトロフェノールの変性が起こり、回収率は実施例8に比べて低下した。
【0013】
比較例1
水酸化ナトリウム1重量%濃度の水溶液をスチレンタールの2倍重量用い、温度80℃にて実施例と同様にして処理した。その結果、2,4−ジニトロフェノールの回収率は97.9%であった。
【0014】
比較例2
2,4−ジニトロフェノール2.0重量%を含むスチレンタールを、その0.6倍重量のエタノールを用いて、15℃で30分間抽出処理した。
得られた回収エタノール相中の2,4−ジニトロフェノールをHPLCを用いて分析を行ったところ、2,4−ジニトロフェノールの回収率は66.0%であった。
【0015】
実施例10
実施例8で得られた2,4−ジニトロフェノール0.057重量%を含む水相100重量部を、エチルベンゼンとスチレンとの重量比1:1の混合物60重量部を用い、80℃にて3分間抽出処理した。有機相を分離、回収し、その中の2,4−ジニトロフェノールをHPLCを用いて分析を行ったところ、2,4−ジニトロフェノールの抽出率は97%であった。
【0016】
【発明の効果】
本発明によると、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防剤を、酸やアルカリを使用することなく、簡単な操作で効率よく経済的有利に回収することができる。
本発明の重合防止剤の回収方法は、(1)回収した重合防止剤はリサイクルすることにより、新たに投入する量が減少するため、経済的に有利であり、(2)酸やアルカリ排水が発生しないため、排水処理設備を必要とせず、(3)特殊な材質を必要としないため、設備コストが低く、さらに(4)抽出工程のみであるので、設備費及用役費が安い、などの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の方法を適用し、スチレン/エチルベンゼン混合物から蒸留によりエチルベンゼンとスチレンとをそれぞれ分離するための一例の工程図である。
【符号の説明】
1:エチルベンゼン・スチレンスプリッター
2:スチレン精留塔
3:抽出槽(I)
4:抽出槽(II)
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合防止剤の回収方法に関し、さらに詳しくは、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を、酸やアルカリを使用することなく、簡単な操作で、効率よく経済的に有利に回収する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、スチレンなどの芳香族ビニル化合物は、熱などによって重合しやすい性質を有することが知られている。この芳香族ビニル化合物の製造プロセスにおいては、所望の化合物を分離回収したり、濃縮したり、あるいは精製などのために、種々の蒸留操作が施されている。しかしながら、芳香族ビニル化合物は前記したように熱により重合してポリマー状物質を形成するため、蒸留工程において種々のトラブルを引き起こし、長時間の安定な連続運転を不可能にするなど、好ましくない事態を招来しやすい。
したがって、このような事態を回避するために、従来から重合防止剤の存在下に蒸留操作を行う方法がとられている。この重合防止剤、特に芳香族ビニル化合物の重合防止剤としては、一般に、ジニトロフェノールやジニトロ−o−クレゾールなどのニトロフェノール系重合防止剤が用いられており、またこれらのニトロフェノール系重合防止剤は、蒸留残渣、いわゆるスチレンタール中に蓄積され、プロセス系外へ排出されている。
【0003】
このようなニトロフェノール系重合防止剤を含有するスチレンタールをそのまま焼却処理した場合、大気中に窒素酸化物などが排出され、環境汚染を引き起こすおそれがあり、また芳香族ビニル化合物の製造コストを下げるためにも、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を回収し、再使用することが望まれる。
このため、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を回収する方法として、例えば(1)スチレンタールをアルカリ性水溶液で処理し、その中に含まれるニトロフェノール系重合防止剤を抽出したのち、水相中のニトロフェノール系重合防止剤を酸性条件下に有機溶剤で逆抽出する方法(特公昭59−4410号公報)、(2)スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を含酸素有機溶剤で抽出したのち、蒸留に付して回収する方法(特公平4−16455号公報)などが提案されている。
しかしながら、上記(1)の方法においては、ニトロフェノール系重合防止剤の回収率は95%以上で良好であるものの、酸やアルカリ排水が発生する上、腐食を防止するために特殊な材質のものを用いる必要があり、また洗浄工程も必要となるため、設備費が高くつくなどの欠点がある。一方、(2)の方法においては、ニトロフェノール系重合防止剤の回収率が66%以下で低いという大きな問題がある上、蒸留工程が必要なため、設備費及び用役費が高くつくなどの欠点もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術がもつ欠点を克服し、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を酸やアルカリを使用することなく、簡単な操作で効率よく経済的に有利に回収する方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、スチレンタールを特定の温度の熱水で処理して、その中に含まれるニトロフェノール系重合防止剤を抽出することにより、あるいは、さらに抽出処理で得られた水相中のニトロフェノール系重合防止剤を特定の有機溶剤により逆抽出することにより、その目的を達成しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、ニトロフェノール系重合防止剤を含有するスチレンタールを温度80〜160℃の熱水で処理し、ニトロフェノール系重合防止剤を抽出することを特徴とする重合防止剤の回収方法、及びこの熱水処理を行ったのち、水相中のニトロフェノール系重合防止剤を芳香族炭化水素系溶剤で逆抽出することを特徴とする重合防止剤の回収方法を提供するものである。
【0006】
本発明でいうスチレンタールとは、芳香族ビニル化合物に蒸留などの処理を施すことにより生成した残渣を指称する。ここで、芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン,α−メチルスチレン,ジビニルベンゼン,ビニルトルエン及びこれらの各種誘導体などが挙げられる。
また、このスチレンタール中に含有するニトロフェノール系重合防止剤としては、特に制限はなく、従来スチレンなどの芳香族ビニル化合物の重合防止剤として慣用されているもの、例えば2,4−ジニトロフェノールや4,6−ジニトロo−クレゾールなどを挙げることができる。また、このニトロフェノール系重合防止剤には、装置内雰囲気において還元されて生成する2−アミノ−4−ニトロフェノールや6−アミノ−4−ニトロ−o−クレゾールなども含まれる。これらのニトロフェノール系重合防止剤は、スチレンタール中に一種含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
【0007】
本発明の方法においては、上記ニトロフェノール系重合防止剤を含有するスチレンタールを熱水で処理して、該ニトロフェノール系重合防止剤を抽出する。この際使用する熱水の温度は80〜160℃の範囲に設定すべきである。この温度が80℃未満ではニトロフェノール系重合防止剤の回収率が低すぎて実用的でなく、また160℃を超えると処理圧力が高くなりすぎて設備費が高くつく上、ニトロフェノール系重合防止剤が変性し、その回収率が低下する傾向がみられる。ニトロフェノール系重合防止剤の回収率及び設備費などの面から、好ましい熱水温度は100〜150℃の範囲であり、特に120〜140℃の範囲が好適である。また、処理圧力については、抽出処理に用いられる熱水が液相を維持するのに充分な圧力であればよく、特に制限はない。
さらに、この熱水は、スチレンタール1重量部に対して、通常1〜200重量部の割合で使用される。この使用量が1重量部未満ではニトロフェノール系重合防止剤の回収率が不充分であり、また200重量部を超えると装置が大きくなって設備費が高くつき、好ましくない。ニトロフェノール系重合防止剤の回収率及び設備費などの面から、熱水の好ましい使用量は、スチレンタール1重量部に対して20〜150重量部の範囲であり、特に30〜140重量部の範囲が好適である。また、処理時間は、処理温度やその他の条件によって左右され、一概に定めることができないが、通常は10秒〜1時間程度で充分である。
【0008】
このようにして、ニトロフェノール系重合防止剤が熱水により抽出され、それを含む水相が得られる。この水相から、ニトロフェノール系重合防止剤を回収する方法としては様々な方法を用いることができるが、芳香族炭化水素系溶剤を用いて逆抽出する方法が有利である。この芳香族炭化水素系溶剤としては、例えばエチルベンゼン,スチレン,ジビニルベンゼン,トルエン,クメン,ベンゼン,キシレン,α−メチルスチレンなどの炭素数6〜10の芳香族炭化水素化合物を挙げることができる。これらの芳香族炭化水素系溶剤は単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。これらの芳香族炭化水素系溶剤の中では、特にエチルベンゼンとスチレンとの混合物が好適である。逆抽出処理により得られたニトロフェノール系重合防止剤を含むエチルベンゼンとスチレンとの混合物は、そのままスチレン製造プロセスにおける蒸留系に供給することができる。
この逆抽出処理においては、芳香族炭化水素系溶剤は、ニトロフェノール系重合防止剤を含む水相1重量部に対し、通常0.1〜10重量部の割合で用いられる。この使用量が0.1重量部未満ではニトロフェノール系重合防止剤の抽出が不充分であり、また10重量部を超えるとその量の割には抽出効果の向上はみられず、むしろ設備が大きくなり、経済的に不利となる。抽出効果及び経済性などの面から、芳香族炭化水素系溶剤の好ましい使用量は、水相1重量部に対して、0.2〜1重量部の範囲である。
また、この逆抽出処理における温度は、抽出効果及び操作性の面から、20〜140℃の範囲が好ましく、特に40〜100℃の範囲が好適である。さらに、抽出処理時間は、処理温度及びその他の条件によって左右され、一概に定めることはできないが、通常10秒〜1時間程度で充分である。処理圧力については、抽出処理に供されるニトロフェノール系重合防止剤を含む水相及び芳香族炭化水素系溶剤が、共に液相を維持するのに充分な圧力であればよく、特に制限はない。
【0009】
このようにして、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防止剤を、回収率90%以上で効率よく回収することができる。
図1は、本発明の方法を適用し、スチレン/エチルベンゼン混合物から蒸留によりエチルベンゼンとスチレンとをそれぞれ分離するための一例の工程図である。 エチルベンゼン・スチレンスプリッター1に、スチレン/エチルベンゼン混合物(DM)を、抽出槽(II) 4からの2,4−ジニトロフェノール(DNP)を含むDMと共に供給し、同時に重合防止剤としてDNPを供給する。スプリッター1の頂部からエチルベンゼンが留出し、底部からの液はスチレン精留塔2に供給され、この精留塔2の頂部からスチレンが留出する。精留塔2の底部から排出されるDNPを含むスチレンタールは、水と共に抽出槽(I)3に供給され処理される。抽出層(I)3の底部からタールが排出され、また3から出たDNPを含む水相は、DMと共に抽出槽(II) 4に供給され、処理される。抽出槽(II)4の底部から排出される水は、DNPを含むスチレンタールの処理にリサイクルされる。一方、抽出槽(II) 4から出たDNPを含むDMは、スプリッター1に新しいDMと共に供給される。
【0010】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1〜9
攪拌機付耐圧容器中において、2,4−ジニトロフェノール2.0重量%を含むスチレンタールを、第1表に示す量の熱水にて、第1表に示す温度で30分間抽出処理した。
得られた回収水相中の2,4−ジニトロフェノールを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析を行い、2,4−ジニトロフェノールの回収率を求めた。結果を第1表に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
第1表から分かるように、実施例8では、スチレンタールに対し、35倍重量の熱水を用い、140℃で処理することにより、2,4−ジニトロフェノールの回収率は99.9%であり、ほぼ定量的に回収できた。また実施例9では、抽出温度が160℃と高く、2,4−ジニトロフェノールの変性が起こり、回収率は実施例8に比べて低下した。
【0013】
比較例1
水酸化ナトリウム1重量%濃度の水溶液をスチレンタールの2倍重量用い、温度80℃にて実施例と同様にして処理した。その結果、2,4−ジニトロフェノールの回収率は97.9%であった。
【0014】
比較例2
2,4−ジニトロフェノール2.0重量%を含むスチレンタールを、その0.6倍重量のエタノールを用いて、15℃で30分間抽出処理した。
得られた回収エタノール相中の2,4−ジニトロフェノールをHPLCを用いて分析を行ったところ、2,4−ジニトロフェノールの回収率は66.0%であった。
【0015】
実施例10
実施例8で得られた2,4−ジニトロフェノール0.057重量%を含む水相100重量部を、エチルベンゼンとスチレンとの重量比1:1の混合物60重量部を用い、80℃にて3分間抽出処理した。有機相を分離、回収し、その中の2,4−ジニトロフェノールをHPLCを用いて分析を行ったところ、2,4−ジニトロフェノールの抽出率は97%であった。
【0016】
【発明の効果】
本発明によると、スチレンタール中のニトロフェノール系重合防剤を、酸やアルカリを使用することなく、簡単な操作で効率よく経済的有利に回収することができる。
本発明の重合防止剤の回収方法は、(1)回収した重合防止剤はリサイクルすることにより、新たに投入する量が減少するため、経済的に有利であり、(2)酸やアルカリ排水が発生しないため、排水処理設備を必要とせず、(3)特殊な材質を必要としないため、設備コストが低く、さらに(4)抽出工程のみであるので、設備費及用役費が安い、などの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の方法を適用し、スチレン/エチルベンゼン混合物から蒸留によりエチルベンゼンとスチレンとをそれぞれ分離するための一例の工程図である。
【符号の説明】
1:エチルベンゼン・スチレンスプリッター
2:スチレン精留塔
3:抽出槽(I)
4:抽出槽(II)
Claims (7)
- ニトロフェノール系重合防止剤を含有するスチレンタールを温度80〜160℃の熱水で処理し、ニトロフェノール系重合防止剤を抽出することを特徴とする重合防止剤の回収方法。
- ニトロフェノール系重合防止剤を含有するスチレンタールを温度80〜160℃の熱水で処理し、ニトロフェノール系重合防止剤を抽出したのち、水相中のニトロフェノール系重合防止剤を芳香族炭化水素系溶剤で逆抽出することを特徴とする重合防止剤の回収方法。
- 熱水の温度が100〜150℃である請求項1又は2記載の方法。
- 熱水の温度が120〜140℃である請求項3記載の方法。
- スチレンタール1重量部に対し、熱水を20〜150重量部の割合で使用する請求項1又は2記載の方法。
- スチレンタール1重量部に対し、熱水を30〜140重量部の割合で使用する請求項5記載の方法。
- 芳香族炭化水素系溶剤が、エチルベンゼンとスチレンとの混合物である請求項2記載の方法。
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1995
- 1995-07-03 JP JP16757795A patent/JP3763595B2/ja not_active Expired - Fee Related
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