JP2003064147A - リグニン系ポリウレタン及びその製造方法 - Google Patents

リグニン系ポリウレタン及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリウレタンの分子鎖中にリグニンスルホン
酸成分を組み込んだ安価でかつ物性にすぐれたポリウレ
タンを提供する。 【解決手段】 リグニンスルホン酸又はその部分中和塩
を溶解状態で含むポリオール溶液にポリイソシアネート
を重縮合反応させて形成したものからなり、該リグニン
スルホン酸の含有量が全ポリウレタン中1〜40%であ
ることを特徴とするポリウレタン。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リグニン系ポリウ
レタン及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】これまでに、本発明者らは、単糖、オリ
ゴ糖等の糖類、およびソルボリシスリグニン、クラフト
リグニン等のリグニンを原料とする生分解性ポリウレタ
ンが、優れた物性を有すること、さらに、糖類及びリグ
ニンを併用すると、得られるポリウレタンの物性がさら
に向上することなどを見いだしてきた。一方、リグニン
系物質としては、サルファイトパルプ製造工程において
副生するリグニンスルホン酸塩が知られている。しか
し、このものはポリオールには溶解しないため、これを
ポリウレタン分子中に組込むことは非常にむつかしい。
本発明者らは、リグニンスルホン酸塩を、酸型のリグニ
ンスルホン酸又はその部分中和塩が、ポリオールに可溶
であり、ポリウレタンの分子鎖中に組み込むことが可能
であることを見いだした。さらに、得られるポリウレタ
ンは優れた物性を有することを見いだした。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ポリウレタ
ンの分子鎖中にリグニンスルホン酸又はその部分中和塩
を組み込んだ安価でかつ物性にすぐれたポリウレタン及
びその製造方法を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、以下に
示すリグニン系ポリウレタン及びその製造方法が提供さ
れる。 (1)リグニンスルホン酸又はその部分中和塩を溶解状
態で含むポリオール溶液にポリイソシアネートを重縮合
反応させて形成したものからなり、該リグニンスルホン
酸又はその部分中和塩の含有量が全ポリウレタン中1〜
40%であることを特徴とするポリウレタン。 (2)該重縮合反応を水の存在下で行って形成させたフ
ォーム状のポリウレタンからなる前記(1)のポリウレ
タン。 (3)リグニンスルホン酸又はその部分中和塩を溶解状
態で含むポリオール溶液に対し、ポリイソシアネートを
重縮合反応させることからなり、該リグニンスルホン酸
又はその部分中和塩の含有量が全ポリウレタン中1〜4
0%であることを特徴とするポリウレタンの製造方法。 (4)該重縮合反応を水の存在下で行ってフォーム状の
ポリウレタンを生成させる前記(3)の方法。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明で用いるリグニンスルホン
酸又はその部分中和塩は、リグニンスルホン酸塩を酸で
加水分解することあるいはイオン交換法でイオン交換す
ることにより得ることができる。リグニンスルホン酸塩
は、従来、サリファイトパルプ製造工程で副産される安
価なものであるが、通常のポリオールには不溶性である
ため、リグニンスルホン酸塩をそのまま原料とするポリ
ウレタンは知られていない。これまでは、リグニンスル
ホン酸塩を、ヒドロキシメチル化してポリオール可溶と
して、分子内に組み込んだポリウレタンが知られている
程度である。このようなポリウレタンはコスト高とな
り、安価なリグニンスルホン酸塩の特徴が生かされてい
ない。本発明者らは、リグニンスルホン酸塩を加水分解
して遊離スルホン酸型又はその部分中和塩型とすると、
このリグニンスルホン酸又はその部分中和塩は容易にポ
リオールに溶解し、このリグニンスルホン酸を溶解状で
含むポリオール溶液をポリイソシアネートと縮合反応さ
せることにより、リグニンスルホン酸成分をポリウレタ
ン分子鎖に含むすぐれた物性を有する生分解性ポリウレ
タンが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】前記リグニンスルホン酸部分中和塩は、リ
グニンスルホン酸塩を酸を用いて部分的に加水分解する
ことあるいはイオン交換法でイオン交換することにより
得ることができる。この場合、そのリグニンスルホン酸
塩には、ナトリウム塩やカリウム塩、アンモニウム塩、
カルシウム塩、マグネシウム塩等が包含される。その部
分加水分解の程度は、通常その5%水溶液のpHが1〜
8、好ましくは2.5〜6、より好ましくは3〜4を示
す程度であり、ポリオールに溶解する程度であればよ
い。
【0007】本発明においては、リグニンスルホン酸
(リグノスルホン酸)又はその部分中和塩は、ポリオー
ルに溶解させて溶液状で用いることを特徴とする。本発
明においては、前記ポリオールには、リグニンスルホン
酸又はその部分中和塩の他、必要に応じ、糖蜜及び/又
は糖化合物を溶解させることができる。この場合、糖蜜
としては、精糖蜜も使用し得るが、そのコストの点か
ら、廃糖蜜が好ましく使用される。また、糖化合物に
は、単糖、少糖、多糖、糖アルコール等が包含され、ポ
リオールに可溶性のものであれば任意のものが用いられ
る。このような糖化合物には、例えば、グルコース、ガ
ラクトース、キシロース、乳糖、マンノース、タロー
ス、ラムノース、アラビノース、グルコシルマンノー
ス、リキソース、アロース、アルトロース、グロース、
イドース、リボース、エリトロース、トレオース、プシ
コース、フルクトース、ソルボース、タガトース、ペン
ツロース、テトロース、スクロース、マルトース、イソ
マルトース、セロビオース、ラクトース、トレハロー
ス、コウジビオース、ソホロース、ニゲロース、ラミナ
リビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリ
ビオース、ブランテオビオース、ツラノース、ビシアノ
ース、アガロビオース、シラビオース、ルチノース、プ
リメプロース、キシロビオース、ロジメナビオース、エ
リトリトール、メソエリトリトール、マルチトール、ラ
クチトール、D−トレイトール、D−アラビニトール、
リビトール、キシリトール、ソルビトール、ガラクチト
ール、D−マンニトール、アリトール、高級アルジトー
ル等の他、デンプン、デキストラン、マンナン、ペクチ
ン、ペクチン酸、アルギン酸、キトサン等が挙げられ
る。
【0008】本発明で用いるポリオールとしては、例え
ば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリ
エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6
−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメ
チロールプロパン、グリセリン、トリエタノールアミ
ン、ソルビトール等の低分子量ポリオール:ポリエチレ
ングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラ
メチレングリコール、エチレンオキシド/プロピレンオ
キシド共重合体等のポリエーテルポリオール:ポリカプ
ロラクトン、ポリ−β−メチル−δ−プチロラクトン、
ジオールと二塩基酸からのポリエステル等が挙げられ
る。その他、水酸基含有液状ポリブタジエン、ポリカー
ボネートジオール、アクリルポリオール等が挙げられ
る。
【0009】本発明で用いるポリイソシアネートとして
は、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシ
アネートおよび芳香族系ポリイソシアネートの他、それ
らの変性体が包含される。脂肪族系ポリイソシアネート
としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、
リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等
が挙げられ、脂環族系ポリイソシアネートとしては、例
えば、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。芳香
族系ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジ
イソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェ
ニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニル
メタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソ
シアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホ
スフェート等が挙げられる。ポリイソシアネート変性体
としては、例えば、ウレタンプレポリマー、ヘキサメチ
レンジイソシアネートビューレット、ヘキサメチレンジ
イソシアネート、トリマー、イソホロンジイソシアネー
トトリマー等が挙げられる。
【0010】本発明のポリウレタンは、前記リグニンス
ルホン酸又はその部分中和塩を溶解状態で含むポリオー
ル溶液に対して、ポリイソシアネートを重縮合反応させ
ることによって得ることができる。この場合、その反応
系に水を存在させることにより、フォーム状のポリウレ
タン(ポリウレタンフォーム)を得ることができる。
【0011】前記反応は、触媒の存在下で実施される
が、この場合の触媒としては、従来公知のウレタン化反
応用触媒、通常、スズ系やアミン系の触媒が用いられ
る。その反応温度は常温でよいが、必要に応じ加温を用
いることもできる。リグニンスルホン酸又はその部分中
和塩及び必要に応じての糖蜜及び/又は糖化合物を含む
ポリアルコール(以下、ヒドロキシル基成分とも言う)
とポリイソシアネートの使用割合を示すと、ポリイソシ
アネートの使用割合は、そのヒドロキシル基成分中に含
まれる全ヒドロキシル基の当量数に対し、そのイソシア
ネート基当量数で0.8〜2倍当量、好ましくは1〜
1.5倍当量である。リグニンスルホン酸又はその部分
中和塩と必要に応じての糖蜜及び/又は糖化合物の使用
割合は、全ヒドロキシル基成分中、0.1〜50%、好
ましくは1〜45%となる割合である。リグニンスルホ
ン酸の割合は、全ポリウレタン中、1〜40%、好まし
くは2〜20%、より好ましくは5〜10%の割合にす
るのがよい。このようなリグニンスルホン酸又はその部
分中和塩を含むポリオールを反応成分として用いること
により、生分解性にすぐれるとともに、機械的強度の向
上したポリウレタンを得ることができる。
【0012】本発明のポリウレタンは、硬質ポリウレタ
ンフォームであることができる。この場合、その見かけ
密度(重さ/体積)は、反応原料中に加える水(発泡
剤)の量で調節することができ、その水の量は、ポリイ
ソシアネート1モル当り、0.001〜0.3モル、好
ましくは0.005〜0.05モル程度である。この硬
質ポリウレタンフォームにおいて、その見かけ密度(ポ
リウレタンフォームの重さ/体積)は0.01〜0.9
g/cm3、好ましくは、0.05〜0.5g/cm3
ある。
【0013】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明する。
【0014】実施例1 リグニンスルホン酸(LS)1部をポリエチレングリコ
ール200(分子量200)2部に溶解してリグニンス
ルホン酸ポリオール(LSP)を調製した。このLSP
をポリエチレングリコール200と混合してポリオール
混合物を作った。次に、このポリオール混合物1部に触
媒量のすず系触媒、水及びシリコン整泡剤を加えてよく
攪拌し、さらに、NCO/OHモル比が1.2になるよ
うに秤量したジフェニルメタンジイソシアネート(MD
I)を加えて室温で激しく攪拌してポリウレタンフォー
ムを得た。得られたフォームのガラス転移温度(T
g)、熱分解温度(Td)(℃)、見かけ密度(g/c
3)(ρ)、圧縮強度/見掛け密度比(σ/ρ)(M
Pa/g−cm-3)および圧縮弾性率/見掛け密度比
(E/ρ)(MPa/g・cm-3)を表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】実施例2 発糖蜜1部をポリエチレングリコール200(分子量2
00)2部に溶解して糖蜜ポリオール(MP)を調製し
た。実施例1で示したLSPとこのMPとを混合して混
合ポリオールを作った。この混合ポリオール1部にポリ
エチレングリコール1部、触媒量のすず系触媒、水およ
びシリコン整泡剤を加えてよく攪拌し、さらに、NCO
/OH比が1.2になるように秤量したジフェニルメタ
ンジイソシアネート(MDI)を加えて室温で激しく攪
拌してフォームを得た。得られたフォームのガラス転移
温度(Tg)、熱分解温度(Td)、見かけ密度
(ρ)、圧縮強度/見掛け密度比(σ/ρ)および圧縮
弾性率/見掛け密度比(E/ρ)を表2に示す。
【0017】
【表2】
【0018】実施例3 実施例1において、リグノスルホン酸の代わりに、リグ
ノスルホン酸部分中和塩を用いた以外は同様にしてポリ
ウレタンフォームを調製した。得られたフォームの物性
を下表に示す。なお、前記リグノスルホン酸部分中和塩
は、リグノスルホン酸のスルホン酸基の一部がナトリウ
ム塩に変換された構造のものであり、水溶性及びポリオ
ール溶解性を示し、その5%水溶液のpHが3.5であ
るものである。
【0019】
【表3】
【0020】実施例4 実施例3において、PEG200の代りにジエチレング
リコールを用いた以外は同様にして実験を行った。得ら
れたフォームの物性を表4に示す。
【0021】
【表4】
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、分子鎖中にリグニンス
ルホン酸成分を組込んだ機械的物性にすぐれた生分解性
ポリウレタンを安価に得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 廣瀬 重雄 茨城県つくば市東1−1−1 独立行政法 人産業技術総合研究所 つくばセンター内 (72)発明者 畠山 兵衛 福井県丹生郡越廼村八ッ俣73−8 Fターム(参考) 4J034 CA04 CA05 CB03 CB04 CB07 CC03 DF01 DF02 DF12 DG03 DG04 DG06 DG09 DQ09 DQ15 EA07 EA09 HA01 HA06 HA07 HA08 HB03 HB15 HC03 HC12 HC17 HC22 HC46 HC52 HC61 HC71 HC73 KA01 KC17 KD12 NA03 QB16 QC01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リグニンスルホン酸又はその部分中和塩
    を溶解状態で含むポリオール溶液にポリイソシアネート
    を重縮合反応させて形成したものからなり、該リグニン
    スルホン酸又はその部分中和塩の含有量が全ポリウレタ
    ン中1〜40%であることを特徴とするポリウレタン。
  2. 【請求項2】 該重縮合反応を水の存在下で行って形成
    させたフォーム状のポリウレタンからなる請求項1のポ
    リウレタン。
  3. 【請求項3】 リグニンスルホン酸又はその部分中和塩
    を溶解状態で含むポリオール溶液に対し、ポリイソシア
    ネートを重縮合反応させることからなり、該リグニンス
    ルホン酸又はその部分中和塩の含有量が全ポリウレタン
    中1〜40%であることを特徴とするポリウレタンの製
    造方法。
  4. 【請求項4】 該重縮合反応を水の存在下で行ってフォ
    ーム状のポリウレタンを生成させる請求項3の方法。
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