JP2003055380A - ポルフィセン金属錯体 - Google Patents

ポルフィセン金属錯体

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JP2003055380A
JP2003055380A JP2001243968A JP2001243968A JP2003055380A JP 2003055380 A JP2003055380 A JP 2003055380A JP 2001243968 A JP2001243968 A JP 2001243968A JP 2001243968 A JP2001243968 A JP 2001243968A JP 2003055380 A JP2003055380 A JP 2003055380A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 機能性材料として有用な新規なポルフィセン
金属錯体を提供する。 【解決手段】 下記の一般式(I)で表されることを特
徴とするポルフィセン金属錯体。但し、式(I)中、M
は2価または3価の金属原子を表し、R1は炭素数1〜
3のアルキル基またはアルケニル基、R2は−(CH2)
COOH(nは1から3の整数を表す)、R3は炭素数
1〜3のアルキル基またはアルケニル基、R4は炭素数
1〜3のアルキル基もしくはアルケニル基または−(C
2)COOH(nは1から3の整数を表す)を表し、
2≠R4である。アポミオグロブリンに結合してきわめ
て優れた酸素保持能を有する。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属錯体の技術分
野に属し、特に、ポルフィセンの金属錯体に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】ポルフィリンの金属錯体は、
ヘムタンパク質の構成要素として生体内で重要な作用を
行うとともに、ポルフィリン核に種々の置換基をもつ誘
導体が比較的容易に合成できるので、生化学における反
応過程の追究や有機合成化学の触媒などとして広く利用
されている。最近、このポルフィリンの構造異性体とし
て、ポルフィセンが注目され、ポルフィセン金属錯体の
中心金属がポルフィリン金属錯体に比べ、強いルイス酸
性と反応活性種に対する耐久性を示すことから、良好な
触媒となることなどが報告されている。
【0003】しかし、ポルフィセン金属錯体に関する研
究や応用開発は、緒に就いたばかりであり、例えば、こ
れまで報告されているポルフィセンは専ら対称性(D2h
対称性)をもつ構造から成るものである。天然のポルフ
ィリン誘導体に類似の非対称な構造のポルフィセンを得
ることができれば、そのようなポルフィリン誘導体と比
較しながら、これに匹敵しまたはこれを凌駕し得る機能
を有する新しい機能性材料を取得することも期待される
が、そのようなポルフィセン金属錯体は未だ見当たらな
い。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、このたび、
これまで知られていない構造のポルフィセン金属錯体の
合成に成功し、このポルフィセン金属錯体がきわめて特
異な性質を有することを見出した。かくして、本発明
は、下記の一般式(I)で表されるポルフィセン金属錯
体を提供するものである。
【0005】
【化2】
【0006】但し、式(I)中、Mは2価または3価の
金属原子を表し、R1は炭素数1〜3のアルキル基また
はアルケニル基、R2は−(CH2)COOH(nは1か
ら3の整数を表す)、R3は炭素数1〜3のアルキル基
またはアルケニル基、R4は炭素数1〜3のアルキル基
もしくはアルケニル基または−(CH2)COOH(n
は1から3の整数を表す)を表し、R2≠R4である。
【0007】一般式(I)で表される本発明のポルフィ
セン金属錯体の特に好ましい1例においては、MがFe
(III)であり、R1とR4が−CH3であり、R2が−CH2CH
2COOHであり、R3が−CH2CH3である。本発明に従え
ば、さらに、上記のようなポルフィセン金属錯体がアポ
ミオグロブリンに結合して構成されている酸素保持剤が
提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】(I)式で示されるように、本発
明は、親水基(カルボキシアルキル基)と疎水基(アル
キル基、アルケニル基)とが導入され天然のポルフィリ
ンに類似の非対称構造を有する水溶性ポルフィセンを配
位子とする金属錯体を実現したものである。
【0009】式(I)においてMで表される2価または
3価の金属原子の好ましい例としては、Fe(III)、
Co(III)、Zn(II)、Ni(II)等が挙げられ
る。R1、R3およびR4で表されるアルキル基またはア
ルケニル基のうち、特に好ましいのは、メチル基(−C
3)(本明細書中では−Meで表すことがある)また
はエチル基(−CH2CH3)(本明細書中では−Etと
表すことがある)である。また、R2またはR4で表され
るカルボキシアルキル基(−(CH2)COOH)とし
て特に好ましいのは、−CH2COOHまたは−CH2
CH2COOHである。但し、R2とR4は互いに別異の
官能基である。
【0010】したがって、式(I)で表される本発明の
金属錯体を構成するポルフィセン誘導体の好ましい例と
して次のものが挙げられる。 R1=−Me,R2=−CH2CH2COOH,R3=−E
t,R4=−Me R1=−Me,R2=−CH2CH2COOH,R3=−M
e,R4=−Me R1=−Me,R2=−CH2CH2COOH,R3=−M
e,R4=−Et R1=−Me,R2=−CH2CH2COOH,R3=−E
t,R4=−Et R1=−Me,R2=−CH2COOH,R3=−Et,R
4=−Me R1=−Me,R2=−CH2COOH,R3=−Me,R
4=−Me R1=−Me,R2=−CH2COOH,R3=−Me,R
4=−Et R1=−Me,R2=−CH2COOH,R3=−Et,R
4=−Et R1=−Me,R2=−CH2COOH,R3=−Me,R
4=−CH2CH2COOH
【0011】本発明のポルフィセン金属錯体は、各種の
反応を創意工夫することにより合成されたものである。
図1は本発明の金属錯体の配位子となるポルフィセンの
合成ルートを全体的に概示するものである。(詳細な合
成ルートは図2および図3に沿って後述の実施例に示
す。)
【0012】図1に示すように、まず、ピロール(II)
のα位メチル基をカルボキシル基、ヨウ素基へと順次変
換し、ウルマン(Ullmann)カップリングによりビピロ
ールとする。この際、無保護ピロール(後述の実施例で
は化合物7)では活性なプロトンNHが銅触媒の活性を
低下させるので、カップリング反応をスムーズに収率よ
く進行させるために、ピロールのNHをt−ブトキシカ
ルボニル(Boc)基で保護した化合物(後述の実施例
では化合物8)を合成した後、カップリング反応を行う
ことが肝要である。また得られたビピロール(後述の実
施例では化合物9)をさらに収率よく得るために、銅の
活性化、DMFの乾燥を慎重に行わなければならない。
次に、ベンジルオキシカルボニル基をホルミル基に変換
し、3,3’−ジメトキシカルボニルエチルビピロール
(III)(後述の実施例では化合物13)を合成する。
もう片方のビピロール(V)はエチオ型ポルフィセンを
合成する際に用いられるもので、既知のようにピロール
(IV)から誘導することができる(Guilard, R. ; Auka
uloo, M.A. ; Tardieux, C. ; Vogel, E. Synthesis. 1
995, 1480)。
【0013】(III)と(V)をマクマリー(McMurry)
カップリングによりヘテロカップリングさせて(VI)を
得、メチルエステルを加水分解することで(I)を合成
することができる。この際、通常のマクマリーカップリ
ングと同じ濃度で反応を行うと2つ以上のビピロールが
直線的に連結したオリゴマーやポリマーが大量に生成す
るので、1:1の環化カップリング生成物をできるだけ
収率よく得るために、マクマリー触媒を予め用意してお
き、そこへビピロール溶液を非常にゆっくりと高希釈状
態で滴下することが重要である。また、系全体を高希釈
するために、触媒、ビピロールとも大量のTHFに溶解
させるようにする。
【0014】本発明のポルフィセン金属錯体は、触媒と
して、また、ポルフィリン金属錯体の類縁体ないしは擬
似ヘムとして生化学研究における研究ツール等に利用す
ることができる。さらに、本発明のポルフィセン金属錯
体の特筆すべき性質は、アポミオグロビン(アポタンパ
ク質)のヘムポケットに挿入すると安定なホロタンパク
質を形成し、天然のミオグロビンをしのぐ程度の安定な
酸素保持能を有することである。かくして、本発明のポ
ルフィセン金属錯体は、言わば、人工ミオグロビンない
しはスーパーミオグロビンとして、例えば、酸素の保持
を目的とする人工血液の構成成分としての利用などが期
待される。
【0015】
【実施例】以下に本発明の特徴をさらに具体的に明らか
にするため実施例を示すが、本発明はこの実施例によっ
て制限されるものではない。実施例1:水溶性ポルフィセン金属錯体の合成 図2および図3に示す合成ルートに従い本発明のポルフ
ィセン金属錯体を以下のように合成した。メチル 4−アセチル−5−オキソ−ヘキサノエート
(4) アセチルアセトン(3) 616.1 ml(6000 mmol)とアクリ
ル酸メチル135.1 ml(1500 mmol)の混合溶液に、炭酸
カリウム103.7 g(750 mmol)を加え、室温で48時間激
しく撹拌した。反応液をセライトを通して吸引濾過、ア
セトンで洗浄した。濾液を減圧留去し、アセトンと過剰
のアセチルアセトンを除去した。残渣を減圧蒸留(1.5
mmHg, 95 ℃)し、黄色液体4を得た。収率249.4 g, 8
9 %。
【0016】ベンジル 4−(2−メトキシカルボニルエ
チル)−3,5−ジメチルピロール−2−カルボキシレート
(5) アセト酢酸ベンジル(1) 180.7 ml(1046 mmol)と氷酢
酸240 mlを混合し、氷浴で5℃に冷却した。10℃以下に
保ちながら、亜硝酸ナトリウム77.4 g(1121 mmol)水
溶液240 mlを3時間かけて滴下しさらに1時間撹拌した。
この反応液を冷蔵庫で終夜静置した。(溶液) メチル 4−アセチル−5−オキソ−ヘキサノエート(4)
111.7 g(600 mmol) と氷酢酸400 mlを混合させ、油浴で65℃に加熱した。65
℃に保ちながら、溶液を2.5時間かけて滴下し同時
に、活性化亜鉛114.0 g(1743 mmol)と無水酢酸ナトリ
ウム114.0 g(1390 mmol)の混合粉末を少しずつ加え
た。さらに1.5時間撹拌した。反応液を2000 mlの氷水に
注ぎ、終夜静置した後、吸引濾過により黄色固体を得
た。これをクロロホルムに溶解させ、水で洗浄、無水硫
酸ナトリウムで乾燥させた。クロロホルムを減圧留去
し、残渣を最少量より多めのトルエンに溶解、再結晶さ
せ、白色結晶5を得た。収率120.3 g, 64 %。
【0017】ベンジル 5−カルボキシ−4−(2−メト
キシカルボニルエチル)−3−メチルピロール−2−カル
ボキシレート(6) ベンジル 4−(2−メトキシカルボニルエチル)−3,5
−ジメチルピロール−2−カルボキシレート (5) 10.5
g(33 mmol)を窒素下で無水ジエチルエーテル367 mlに
溶解させた。氷浴で20 ℃に保ちながら、単蒸留した塩
化スルフリル8.1ml(101 mmol)を1.5時間かけて滴下
し、さらに3時間撹拌した。一晩放置した後、溶媒を減
圧留去し、1,4-ジオキサン50 mlに溶解させた。これに
酢酸ナトリウム三水和物4.7g(35 mmol)水溶液67 mlを
加え、70℃に加熱し、0.5時間撹拌した。ジエチルエー
テル67 mlを加え、分液ロートで水相を除去し、この水
相をジエチルエーテル67 mlで再抽出した。有機相を10
%炭酸ナトリウム水溶液17 ml×4で逆抽出した。水相を
濃塩酸21 mlで徐々に酸性にすると、淡黄色の沈殿が析
出した。この沈殿を濾別し、温水でよく洗浄、減圧乾燥
し6 を得た。収率7.72 g, 67 %。
【0018】ベンジル 5−イオド−4−(2−メトキシ
カルボニルエチル)−3−メチルピロール−2−カルボキ
シレート(7) ベンジル 5−カルボキシ−4−(2−メトキシカルボニ
ルエチル)−3−メチルピロール−2−カルボキシレート
(6) 33.8 g(98 mmol)を水240 mlに懸濁させ、75℃
に加熱した。さらに炭酸水素ナトリウム28.2 g(336 mm
ol)を加え、溶解させた。75℃に保ちながら、よう化カ
リウム34.5 g(208 mmol)とヨウ素26.7 g(105 mmol)
を一緒に溶解させた水溶液200 mlを2時間かけて滴下
し、0.5時間撹拌した。しばらく放冷した後、氷浴で10
℃以下に冷却した。10℃以下に保ちながら、チオ硫酸ナ
トリウム五水和物17.1 g(69 mmol)水溶液50 mlをゆっ
くりと加え、さらに0.5時間撹拌した。沈殿を吸引濾別
し、水と冷ペンタンで洗浄し7 を得た。収率31.7 g, 76
%。
【0019】2,2'−ジベンジルオキシカルボニル−4,4'
−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)−3,3'−ジメチ
ル−5,5'−ビピロール(10) ベンジル 5−イオド−4−(2−メトキシカルボニルエ
チル)−3−メチルピロール−2−カルボキシレート5.3
g (7)(12 mmol)、ジ-tert-ブチルジカルボネート3.3
g(15 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン151 mg(1.2
mmol)をジクロロメタン60 mlに溶解させ、窒素下、室
温で0.5時間撹拌した。反応液をシリカゲル(MERCK C-6
0)を通して吸引濾過、ジクロロメタンで抽出した。濾
液を減圧留去し、減圧下で1日乾燥させ、橙色のオイル8
を得た。活性化銅7.1 g(112 mmol)を加え、化合物8
に加え窒素置換した後に、無水DMF30 mlに溶解させ、室
温で1時間、100 ℃で1時間撹拌した。吸引濾過により銅
を除去し、銅を熱クロロホルム48 mlで洗浄した。クロ
ロホルム72 mlを加え、水144 ml×3、20 %硝酸水溶液72
ml×2、水72 ml×1で洗浄した。有機相を無水硫酸マグ
ネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、減圧下で1
日乾燥させ、橙色のオイル9を得た。 さらに減圧下で2
時間乾燥させた後、窒素置換した。170℃で0.5時間撹拌
した後、室温まで放冷した。メタノールより再結晶さ
せ、白色固体10を得た。収率2.9 g, 78 %
【0020】2,2'−ジカルボキシ−4,4'−ジ(2−メト
キシカルボニルエチル)−3,3'−ジメチル−5,5'−ビピ
ロール(11) 2,2'−ジベンジルオキシカルボニル−4,4'−ジ(2−メ
トキシカルボニルエチル)−3,3'−ジメチル−5,5'−ビ
ピロール (10) 159 mg(0.26 mmol)とパラジウム-活性
炭素(Pd 10 %)8.4 mgをフラスコに入れ、窒素置換し
た後、無水THF2 mlと1,4-シクロヘキサジエン1.0 ml(1
1 mmol)を加え、TLC(Merck60 F254,CHCl3)で反応を
追跡した。反応が徐々に進行することを確認しながら、
さらに無水THF 2 ml、1,4-シクロヘキサジエン1.0 ml、
パラジウム-活性炭素35 mgをそれぞれ徐々に添加し、計
1週間室温で撹拌した。TLCで原料の消失を確認した
後、セライトを通して濾過した。セライト上に残ったパ
ラジウム-活性炭素はTHF200 mlに加え、72時間撹拌し、
パラジウム-活性炭素中に吸着した生成物を抽出した
後、既に濾過した濾液と共に、THFを減圧留去、オイル
ポンプで一晩減圧乾燥させ11 を得た。収率100 mg, 90
%。
【0021】2,2'−ジホルミル−4,4'−ジ(2−メトキ
シカルボニルエチル)−3,3'−ジメチル−5,5'−ビピロ
ール(13) 2,2’−ジカルボキシ−4,4’−ジ(2−メトキシカルボ
ニルエチル)−3,3’−ジメチル−5,5’−ビピロール
(11) 180 mg(0.43 mmol)を昇華器に入れ、減圧下(0.
07 Torr)、210 ℃で2.5時間加熱した。さらに、220 ℃
で0.5時間加熱し、昇華させた。窒素下、昇華生成物を
無水DMF 3 mlに溶解させ、5 ℃以下に保ちながら、オキ
シ塩化リン0.23 ml(2.4 mmo)を加え、0.5時間撹拌し
た。さらに、60 ℃で1時間撹拌した。無水酢酸ナトリウ
ム 2.6 g(31 mmol)水溶液16 mlを加え、85℃で1時間
撹拌した。放冷後、冷凍庫で一晩放置し、茶色の固体13
を得た。収率130 mg, 78 %。
【0022】13,16−ジ(2−メトキシカルボニルエチ
ル)−2,7−ジエチル−3,6,12,17−テトラメチルポルフ
ィセン(14b) 窒素下、活性化亜鉛3.3 g(50 mmol)と塩化銅(I)0.49
g(5 mmol)を無水THF 107 mlに加えた。この懸濁液を0
℃以下に保ちながら、塩化チタン(IV)4.7 g(25mmol)
を2時間かけて加え、さらに、3時間撹拌した。室温まで
放冷し、2,2’−ジホルミル−4,4’−ジ(2−メトキシ
カルボニルエチル)−3,3’−ジメチル−5,5’−ビピロ
ール (13) 160 mg(0.41 mmol)と3,3’−ジエチル−2,
2’−ジホルミル−4,4’−ジメチル−5,5’−ビピロー
ル112 mg(0.41 mmol)を溶解させた無水THF 1214 mlを
8.5時間かけて滴下し、さらに、0.5時間還流した。再
び、0℃以下に冷却し、10 %炭酸ナトリウム水溶液63 m
lを1.5時間かけて滴下した。吸引濾過により、固体を除
去し、塩化メチレンで洗浄した。濾液とこの塩化メチレ
ンを一緒にして水で3回洗浄、無水硫酸マグネシウムで
乾燥させ、溶媒を減圧留去して深緑色の固体を得た。カ
ラムクロマトグラフィー(中性アルミナactivity III、
φ2.7×18 cm、CH2Cl2)により、青色の第一成分を分取
した。この混合物からゲル透過クロマトグラフィー(GP
C)により、第二成分を分取し、目的とする14bを得た。
収率8.5 mg, 3.5 %。
【0023】クロロ(13,16−ジ(2−メトキシカルボニ
ルエチル)−2,7−ジエチル−3,6,12,17−テトラメチル
ポルフィセナート)Fe(III)(15b) 窒素下、遮光し、13,16−ジ(2−メトキシカルボニルエ
チル)−2,7−ジエチル−3,6,12,17−テトラメチルポル
フィセン (14b) 3.7 mg(0.0063 mmol)、無水塩化鉄(I
II)6.0 mg(0.037 mmol)無水酢酸ナトリウム1.0 mg
(0.012 mmol)を減圧下で1時間乾燥させた。氷酢酸4 m
lに溶解させ、3時間還流させた。室温まで放冷した後、
ジクロロメタン20mlに溶解させ、水50 ml×2で洗浄し、
水相をジクロロメタン20 mlで逆抽出した。有機相を無
水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。カ
ラムクロマトグラフィー(シリカゲル MERCK C-60, φ
1.7×12 cm、CH2Cl2 → 10 %CH3OH/CH2Cl2)により、
緑色の第4成分を分取した。これを2N塩酸52 mlで洗浄
し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去
し、緑色の固体15b をほぼ定量的に得た。
【0024】クロロ(13,16−ジ(2−カルボキシエチ
ル)−2,7−ジエチル−3,6,12,17−テトラメチルポルフ
ィセナート)Fe(III)(16b) クロロ(13,16−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)−
2,7−ジエチル−3,6,12,17−テトラメチルポルフィセナ
ート)Fe(III) (15b)をメタノール4 mlとTHF 4mlの混合
溶媒に溶解させ、0.2N水酸化カリウム水溶液4 mlを加
え、室温で3時間撹拌した。0.1N塩酸でpH 6まで中和し
た。ジクロロメタン50 mlを加え、水50 ml×2さらに、1
00 mlで洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥さ
せ、溶媒を減圧留去し、深緑色の固体16bをほぼ定量的
に得た。
【0025】なお、各化合物の同定データは次のとおり
である。13,16−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)−2,7−ジ
エチル−3,6,12,17−テトラメチルポルフィセン (14b) H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ(ppm) = 9.54 (d, 2H, J
= 10.0; meso), 9.47(d, 2H, J = 15.0; meso), 4.33
(t, 4H, J = 7.8; CH2 CH2CO) 3.83 (q, 4H, J= 7.5; CH
2 CH3), 3.54 (s, 12H; CH3), 3.42 (s, 6H; OCH3), 2.9
5 (t, 4H, J= 8.0; CH2 CH2 CO), 1.67 (t, 6H, J = 7.5;
CH2 CH3 ) MS (MALDI-TOF) : m/z = 596 (MH+) HRMS(FAB) : m/z = 595.3279 (MH+) UV-vis(CH2Cl2) :λ(nm) = 384 (Soret), 575, 624, 66
3
【0026】クロロ(13,16−ジ(2−メトキシカルボニ
ルエチル)−2,7−ジエチル−3,6,12,17−テトラメチル
ポルフィセナート)Fe(III) (15b) H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ(ppm) = 79.6 (br.s, 6
H; CH3), 57.3(br.s, 2H; CH2 CH2CO), 44.5 (br.s, 2H;
CH2 CH2CO) ,42.1(br.s, 6H; CH3), 36.3 (br.s, 2H; C
H2 CH3), 27.2 (br.s, 2H; CH2 CH3), -12.9 (br.s, 2H;
meso), -13.6(br.s, 2H; meso) MS (ESI-TOF) : m/z = 648 (M+) UV-vis(CH2Cl2) :λ(nm) = 368 (Soret), 621
【0027】クロロ(13,16−ジ(2−カルボキシエチ
ル)−2,7−ジエチル−3,6,12,17−テトラメチルポルフ
ィセナート)Fe(III) (16b) MS (ESI-TOF) : m/z = 620 (M+) MS (FAB) : m/z = 620 (M+) UV-vis(CH3OH) : λ(nm) = 372 (Soret), 622
【0028】実施例2:酸素保持能試験 実施例1で合成したポルフィセン鉄錯体(以下、Pcと略
記することがある)をアポミオグロビン(ミオグロビン
からヘムを除いたもの)に結合させることによりポルフ
ィセンミオグロビンの調製を試みた。すなわち、常法に
よって作成したアポミオグロビンをpH 7.0, リン酸緩衝
溶液(100 mM)に溶かした(1.4×10-2 mM,30 mL)。その溶
液に、少量ずつポルフィセン鉄錯体(Pc)の50 %ピリジ
ン水溶液(1.3×10-1 mM, 4.94 mL)を、振とう(30rpm)
しながら2℃で20 min.かけて滴下し、さらに20 min.振と
うした。得られた再構成ミオグロビンの溶液を遠心分離
し(4,000 rpm, 2 ℃, 20 min.)し、その上澄み液を限
外濾過して(amicon regenerated cellulose 10,000 Da)
し、10-1 mM 程度まで濃縮した。この溶液をPharmacia
製Hi-Trap Desalting(G25 Sephadex)カラムを通し、
ピリジンを完全に除去した。このようにして得られた再
構成ミオグロビン(以下、metPcMbと略記することがあ
る)の吸収スペクトルは387(ソーレー(Soret)バン
ド)、564、624 nmに特徴的なピークを示した(図
4)。質量分析(ESI-TOF-MS)ではm/z = 17,567に、Pc
がミオグロビンに取り込まれたホロタンパク質に一致す
るピークを観測した(図5)。これらのことからポルフ
ィセン錯体とアポミオグロビンとが結合して天然のミオ
グロビンに類似のホロタンパク質が形成されたことが確
認された。
【0029】metPcMbをジチオナイトにより還元した
後、この還元体(以下、deoxyPcMbと略記することがあ
る)にCOガスを吹き込むと、吸収スペクトルにおいて39
3(Soret)、613 nmにピークを示すCO錯体が形成された。
同様に、deoxyPcMbにO2を吹き込むと、386(Soret)、58
0、620 nmにピークをもつO2錯体oxyPcMbとなり、この酸
素分子との結合は可逆的であることが確認された。この
oxyPcMbからmetPcMbへの自動酸化反応を吸収スペクトル
により追跡した。すなわち、oxyPcMbの溶液をPharmacia
製Hi-Trap Desalting(G25 Sephadex)カラムを通し、
過剰のジチオナイトおよびその分解物を除いた。この溶
液をUVセルの中に入れ、621 nm の酸素錯体の吸収の減
少をモニターし、酸素錯体からメト体への自動酸化速度
を観測した。その反応速度定数はkobs = 2.8 × 10−2h
−1(pH7.0、100mMリン酸緩衝液、37℃)であった。同
じ条件で、天然のミオグロビン(アポミオグロビンに補
欠分子としてプロトポルフィリンIX鉄錯体が結合したも
の)についても同様の測定を行ったところ、kobs = 1.8
× 10−1h−1であった。このように、oxyPcMb、すなわ
ち、本発明に従うポルフィセン鉄錯体とアポミオグロビ
ンとが結合して得られる擬似ミオグロビンの酸化体の自
動酸化速度は、天然のミオグロビンのそれと比較すると
6.4倍も遅く、本発明のポルフィセン金属錯体はアポミ
オグロビンと結合して、天然のミオグロビンを上回る安
定な酸素保持物質として機能することがわかる。
【0030】
【発明の効果】本発明は、新規な構造のポルフィセン金
属錯体を提供する。本発明のポルフィセン金属錯体は、
例えば、アポミオグロビンと結合することにより、天然
のミオグロビンを凌駕する酸素保持能を有する安定な酸
素保持剤としての利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属錯体の配位子となるポルフィセン
の合成ルートを全体的に概示するものである。
【図2】実施例に示す本発明のポルフィセン金属錯体の
合成ルートの詳細を示すものであり、特に、一方のビピ
ロールが合成される工程を示す。
【図3】実施例に示す本発明のポルフィセン金属錯体の
合成ルートを示すものであり、特に、2種のビピロール
をヘテロカップリングさせる工程を示す。
【図4】本発明のポルフィセン錯体とアポミオグロビン
とから構成されるホロタンパク質の吸収スペクトルを示
す。
【図5】本発明のポルフィセン鉄錯体とアポミオグロビ
ンとから構成されるホロタンパク質の質量分析スペクト
ルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C050 PA20 4C084 AA02 BA32 BA44 DA38 NA14 ZA52 4C086 AA01 AA02 AA03 CB04 HA28 MA01 MA04 NA13 NA14 ZA52 ZC21 4H050 AA01 AB80 WB14

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の一般式(I)で表されることを特
    徴とするポルフィセン金属錯体。 【化1】 〔但し、式(I)中、Mは2価または3価の金属原子を
    表し、R1は炭素数1〜3のアルキル基またはアルケニ
    ル基、R2は−(CH2)COOH(nは1から3の整数
    を表す)、R3は炭素数1〜3のアルキル基またはアル
    ケニル基、R4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはア
    ルケニル基または−(CH2)COOH(nは1から3
    の整数を表す)を表し、R2≠R4である。〕
  2. 【請求項2】 MがFe(III)であり、R1とR4が−C
    H3であり、R2が−CH2CH2COOHであり、R3が−CH2C
    H3であることを特徴とする請求項1のポルフィセン金属
    錯体。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2のポルフィセン
    金属錯体がアポミオグロブリンに結合して構成されてい
    ることを特徴とする酸素保持剤。
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WO2008111501A1 (ja) * 2007-03-09 2008-09-18 Nissan Chemical Industries, Ltd. ポルフィセン-シリカハイブリッド化合物

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