JP4210445B2 - ポルフィセン金属錯体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属錯体の技術分野に属し、特に、ポルフィセンの金属錯体に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
ポルフィリンの金属錯体は、ヘムタンパク質の構成要素として生体内で重要な作用を行うとともに、ポルフィリン核に種々の置換基をもつ誘導体が比較的容易に合成できるので、生化学における反応過程の追究や有機合成化学の触媒などとして広く利用されている。最近、このポルフィリンの構造異性体として、ポルフィセンが注目され、ポルフィセン金属錯体の中心金属がポルフィリン金属錯体に比べ、強いルイス酸性と反応活性種に対する耐久性を示すことから、良好な触媒となることなどが報告されている。
【0003】
しかし、ポルフィセン金属錯体に関する研究や応用開発は、緒に就いたばかりであり、例えば、これまで報告されているポルフィセンは専ら対称性(D2h対称性)をもつ構造から成るものである。天然のポルフィリン誘導体に類似の非対称な構造のポルフィセンを得ることができれば、そのようなポルフィリン誘導体と比較しながら、これに匹敵しまたはこれを凌駕し得る機能を有する新しい機能性材料を取得することも期待されるが、そのようなポルフィセン金属錯体は未だ見当たらない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、このたび、これまで知られていない構造のポルフィセン金属錯体の合成に成功し、このポルフィセン金属錯体がきわめて特異な性質を有することを見出した。
かくして、本発明は、下記の一般式(I)で表されるポルフィセン金属錯体を提供するものである。
【0005】
【化2】
【0006】
但し、式(I)中、Mは2価または3価の金属原子を表し、R1は炭素数1〜3のアルキル基またはアルケニル基、R2は−(CH2)nCOOH(nは1から3の整数を表す)、R3は炭素数1〜3のアルキル基またはアルケニル基、R4は炭素数1〜3のアルキル基もしくはアルケニル基または−(CH2)nCOOH(nは1から3の整数を表す)を表し、R2≠R4である。
【0007】
一般式(I)で表される本発明のポルフィセン金属錯体の特に好ましい1例においては、MがFe(III)であり、R1とR4が−CH3であり、R2が−CH2CH2COOHであり、R3が−CH2CH3である。
本発明に従えば、さらに、上記のようなポルフィセン金属錯体がアポミオグロブリンに結合して構成されている酸素保持剤が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
(I)式で示されるように、本発明は、親水基(カルボキシアルキル基)と疎水基(アルキル基、アルケニル基)とが導入され天然のポルフィリンに類似の非対称構造を有する水溶性ポルフィセンを配位子とする金属錯体を実現したものである。
【0009】
式(I)においてMで表される2価または3価の金属原子の好ましい例としては、Fe(III)、Co(III)、Zn(II)、Ni(II)等が挙げられる。R1、R3およびR4で表されるアルキル基またはアルケニル基のうち、特に好ましいのは、メチル基(−CH3)(本明細書中では−Meで表すことがある)またはエチル基(−CH2CH3)(本明細書中では−Etと表すことがある)である。また、R2またはR4で表されるカルボキシアルキル基(−(CH2)nCOOH)として特に好ましいのは、−CH2COOHまたは−CH2−CH2COOHである。但し、R2とR4は互いに別異の官能基である。
【0010】
したがって、式(I)で表される本発明の金属錯体を構成するポルフィセン誘導体の好ましい例として次のものが挙げられる。
R1=−Me,R2=−CH2CH2COOH,R3=−Et,R4=−Me
R1=−Me,R2=−CH2CH2COOH,R3=−Me,R4=−Me
R1=−Me,R2=−CH2CH2COOH,R3=−Me,R4=−Et
R1=−Me,R2=−CH2CH2COOH,R3=−Et,R4=−Et
R1=−Me,R2=−CH2COOH,R3=−Et,R4=−Me
R1=−Me,R2=−CH2COOH,R3=−Me,R4=−Me
R1=−Me,R2=−CH2COOH,R3=−Me,R4=−Et
R1=−Me,R2=−CH2COOH,R3=−Et,R4=−Et
R1=−Me,R2=−CH2COOH,R3=−Me,R4=−CH2CH2COOH
【0011】
本発明のポルフィセン金属錯体は、各種の反応を創意工夫することにより合成されたものである。図1は本発明の金属錯体の配位子となるポルフィセンの合成ルートを全体的に概示するものである。(詳細な合成ルートは図2および図3に沿って後述の実施例に示す。)
【0012】
図1に示すように、まず、ピロール(II)のα位メチル基をカルボキシル基、ヨウ素基へと順次変換し、ウルマン(Ullmann)カップリングによりビピロールとする。この際、無保護ピロール(後述の実施例では化合物7)では活性なプロトンNHが銅触媒の活性を低下させるので、カップリング反応をスムーズに収率よく進行させるために、ピロールのNHをt−ブトキシカルボニル(Boc)基で保護した化合物(後述の実施例では化合物8)を合成した後、カップリング反応を行うことが肝要である。また得られたビピロール(後述の実施例では化合物9)をさらに収率よく得るために、銅の活性化、DMFの乾燥を慎重に行わなければならない。次に、ベンジルオキシカルボニル基をホルミル基に変換し、3,3’−ジメトキシカルボニルエチルビピロール(III)(後述の実施例では化合物13)を合成する。
もう片方のビピロール(V)はエチオ型ポルフィセンを合成する際に用いられるもので、既知のようにピロール(IV)から誘導することができる(Guilard, R. ; Aukauloo, M.A. ; Tardieux, C. ; Vogel, E. Synthesis. 1995, 1480)。
【0013】
(III)と(V)をマクマリー(McMurry)カップリングによりヘテロカップリングさせて(VI)を得、メチルエステルを加水分解することで(I)を合成することができる。この際、通常のマクマリーカップリングと同じ濃度で反応を行うと2つ以上のビピロールが直線的に連結したオリゴマーやポリマーが大量に生成するので、1:1の環化カップリング生成物をできるだけ収率よく得るために、マクマリー触媒を予め用意しておき、そこへビピロール溶液を非常にゆっくりと高希釈状態で滴下することが重要である。また、系全体を高希釈するために、触媒、ビピロールとも大量のTHFに溶解させるようにする。
【0014】
本発明のポルフィセン金属錯体は、触媒として、また、ポルフィリン金属錯体の類縁体ないしは擬似ヘムとして生化学研究における研究ツール等に利用することができる。さらに、本発明のポルフィセン金属錯体の特筆すべき性質は、アポミオグロビン(アポタンパク質)のヘムポケットに挿入すると安定なホロタンパク質を形成し、天然のミオグロビンをしのぐ程度の安定な酸素保持能を有することである。かくして、本発明のポルフィセン金属錯体は、言わば、人工ミオグロビンないしはスーパーミオグロビンとして、例えば、酸素の保持を目的とする人工血液の構成成分としての利用などが期待される。
【0015】
【実施例】
以下に本発明の特徴をさらに具体的に明らかにするため実施例を示すが、本発明はこの実施例によって制限されるものではない。
実施例1:水溶性ポルフィセン金属錯体の合成
図2および図3に示す合成ルートに従い本発明のポルフィセン金属錯体を以下のように合成した。
メチル 4 −アセチル− 5 −オキソ−ヘキサノエート(4)
アセチルアセトン(3) 616.1 ml(6000 mmol)とアクリル酸メチル135.1 ml(1500 mmol)の混合溶液に、炭酸カリウム103.7 g(750 mmol)を加え、室温で48時間激しく撹拌した。反応液をセライトを通して吸引濾過、アセトンで洗浄した。濾液を減圧留去し、アセトンと過剰のアセチルアセトンを除去した。残渣を減圧蒸留(1.5 mmHg, 95 ℃)し、黄色液体4を得た。収率249.4 g, 89 %。
【0016】
ベンジル 4 −( 2 −メトキシカルボニルエチル)− 3,5 −ジメチルピロール− 2 −カルボキシレート(5)
アセト酢酸ベンジル(1) 180.7 ml(1046 mmol)と氷酢酸240 mlを混合し、氷浴で5℃に冷却した。10℃以下に保ちながら、亜硝酸ナトリウム77.4 g(1121 mmol)水溶液240 mlを3時間かけて滴下しさらに1時間撹拌した。この反応液を冷蔵庫で終夜静置した。(溶液▲1▼)
メチル 4−アセチル−5−オキソ−ヘキサノエート(4) 111.7 g(600 mmol)と氷酢酸400 mlを混合させ、油浴で65℃に加熱した。65℃に保ちながら、溶液▲1▼を2.5時間かけて滴下し同時に、活性化亜鉛114.0 g(1743 mmol)と無水酢酸ナトリウム114.0 g(1390 mmol)の混合粉末を少しずつ加えた。さらに1.5時間撹拌した。反応液を2000 mlの氷水に注ぎ、終夜静置した後、吸引濾過により黄色固体を得た。これをクロロホルムに溶解させ、水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。クロロホルムを減圧留去し、残渣を最少量より多めのトルエンに溶解、再結晶させ、白色結晶5を得た。収率120.3 g, 64 %。
【0017】
ベンジル 5 −カルボキシ− 4 −( 2 −メトキシカルボニルエチル)− 3 −メチルピ ロール− 2 −カルボキシレート(6)
ベンジル 4−(2−メトキシカルボニルエチル)−3,5−ジメチルピロール−2−カルボキシレート (5) 10.5 g(33 mmol)を窒素下で無水ジエチルエーテル367 mlに溶解させた。氷浴で20 ℃に保ちながら、単蒸留した塩化スルフリル8.1 ml(101 mmol)を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間撹拌した。一晩放置した後、溶媒を減圧留去し、1,4-ジオキサン50 mlに溶解させた。これに酢酸ナトリウム三水和物4.7g(35 mmol)水溶液67 mlを加え、70℃に加熱し、0.5時間撹拌した。ジエチルエーテル67 mlを加え、分液ロートで水相を除去し、この水相をジエチルエーテル67 mlで再抽出した。有機相を10 %炭酸ナトリウム水溶液17 ml×4で逆抽出した。水相を濃塩酸21 mlで徐々に酸性にすると、淡黄色の沈殿が析出した。この沈殿を濾別し、温水でよく洗浄、減圧乾燥し6 を得た。収率7.72 g, 67 %。
【0018】
ベンジル 5 −イオド− 4 −( 2 −メトキシカルボニルエチル)− 3 −メチルピロール− 2 −カルボキシレート(7)
ベンジル 5−カルボキシ−4−(2−メトキシカルボニルエチル)−3−メチルピロール−2−カルボキシレート (6) 33.8 g(98 mmol)を水240 mlに懸濁させ、75℃に加熱した。さらに炭酸水素ナトリウム28.2 g(336 mmol)を加え、溶解させた。75℃に保ちながら、よう化カリウム34.5 g(208 mmol)とヨウ素26.7 g(105 mmol)を一緒に溶解させた水溶液200 mlを2時間かけて滴下し、0.5時間撹拌した。しばらく放冷した後、氷浴で10℃以下に冷却した。10℃以下に保ちながら、チオ硫酸ナトリウム五水和物17.1 g(69 mmol)水溶液50 mlをゆっくりと加え、さらに0.5時間撹拌した。沈殿を吸引濾別し、水と冷ペンタンで洗浄し7 を得た。収率31.7 g, 76 %。
【0019】
2,2' −ジベンジルオキシカルボニル− 4,4' −ジ( 2 −メトキシカルボニルエチル)− 3,3' −ジメチル− 5,5' −ビピロール(10)
ベンジル 5−イオド−4−(2−メトキシカルボニルエチル)−3−メチルピロール−2−カルボキシレート5.3 g (7)(12 mmol)、ジ-tert-ブチルジカルボネート3.3 g(15 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン151 mg(1.2 mmol)をジクロロメタン60 mlに溶解させ、窒素下、室温で0.5時間撹拌した。反応液をシリカゲル(MERCK C-60)を通して吸引濾過、ジクロロメタンで抽出した。濾液を減圧留去し、減圧下で1日乾燥させ、橙色のオイル8 を得た。
活性化銅7.1 g(112 mmol)を加え、化合物8に加え窒素置換した後に、無水DMF30 mlに溶解させ、室温で1時間、100 ℃で1時間撹拌した。吸引濾過により銅を除去し、銅を熱クロロホルム48 mlで洗浄した。クロロホルム72 mlを加え、水144 ml×3、20 %硝酸水溶液72 ml×2、水72 ml×1で洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、減圧下で1日乾燥させ、橙色のオイル9を得た。 さらに減圧下で2時間乾燥させた後、窒素置換した。170 ℃で0.5時間撹拌した後、室温まで放冷した。メタノールより再結晶させ、白色固体10を得た。収率2.9 g, 78 %
【0020】
2,2' −ジカルボキシ− 4,4' −ジ( 2 −メトキシカルボニルエチル)− 3,3' −ジメチル− 5,5' −ビピロール(11)
2,2'−ジベンジルオキシカルボニル−4,4'−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)−3,3'−ジメチル−5,5'−ビピロール (10) 159 mg(0.26 mmol)とパラジウム-活性炭素(Pd 10 %)8.4 mgをフラスコに入れ、窒素置換した後、無水THF 2 mlと1,4-シクロヘキサジエン1.0 ml(11 mmol)を加え、TLC(Merck60 F254, CHCl3)で反応を追跡した。反応が徐々に進行することを確認しながら、さらに無水THF 2 ml、1,4-シクロヘキサジエン1.0 ml、パラジウム-活性炭素35 mgをそれぞれ徐々に添加し、計1週間室温で撹拌した。TLCで原料の消失を確認した後、セライトを通して濾過した。セライト上に残ったパラジウム-活性炭素はTHF200 mlに加え、72時間撹拌し、パラジウム-活性炭素中に吸着した生成物を抽出した後、既に濾過した濾液と共に、THFを減圧留去、オイルポンプで一晩減圧乾燥させ11 を得た。収率100 mg, 90 %。
【0021】
2,2' −ジホルミル− 4,4' −ジ( 2 −メトキシカルボニルエチル)− 3,3' −ジメチル− 5,5' −ビピロール( 13 )
2,2’−ジカルボキシ−4,4’−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)−3,3’−ジメチル−5,5’−ビピロール (11) 180 mg(0.43 mmol)を昇華器に入れ、減圧下(0.07 Torr)、210 ℃で2.5時間加熱した。さらに、220 ℃で0.5時間加熱し、昇華させた。
窒素下、昇華生成物を無水DMF 3 mlに溶解させ、5 ℃以下に保ちながら、オキシ塩化リン0.23 ml(2.4 mmo)を加え、0.5時間撹拌した。さらに、60 ℃で1時間撹拌した。無水酢酸ナトリウム 2.6 g(31 mmol)水溶液16 mlを加え、85 ℃で1時間撹拌した。放冷後、冷凍庫で一晩放置し、茶色の固体13 を得た。収率130 mg, 78 %。
【0022】
13,16 −ジ( 2 −メトキシカルボニルエチル)− 2,7 −ジエチル− 3,6,12,17 −テトラメチルポルフィセン( 14b )
窒素下、活性化亜鉛3.3 g(50 mmol)と塩化銅(I)0.49 g(5 mmol)を無水THF 107 mlに加えた。この懸濁液を0℃以下に保ちながら、塩化チタン(IV)4.7 g(25 mmol)を2時間かけて加え、さらに、3時間撹拌した。室温まで放冷し、2,2’−ジホルミル−4,4’−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)−3,3’−ジメチル−5,5’−ビピロール (13) 160 mg(0.41 mmol)と3,3’−ジエチル−2,2’−ジホルミル−4,4’−ジメチル−5,5’−ビピロール112 mg(0.41 mmol)を溶解させた無水THF 1214 mlを8.5時間かけて滴下し、さらに、0.5時間還流した。再び、0℃以下に冷却し、10 %炭酸ナトリウム水溶液63 mlを1.5時間かけて滴下した。吸引濾過により、固体を除去し、塩化メチレンで洗浄した。濾液とこの塩化メチレンを一緒にして水で3回洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去して深緑色の固体を得た。カラムクロマトグラフィー(中性アルミナactivity III、φ2.7×18 cm、CH2Cl2)により、青色の第一成分を分取した。
この混合物からゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、第二成分を分取し、目的とする14bを得た。収率8.5 mg, 3.5 %。
【0023】
クロロ( 13,16 −ジ( 2 −メトキシカルボニルエチル)− 2,7 −ジエチル− 3,6,12,17 −テトラメチルポルフィセナート) Fe ( III ) (15b)
窒素下、遮光し、13,16−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)−2,7−ジエチル−3,6,12,17−テトラメチルポルフィセン (14b) 3.7 mg(0.0063 mmol)、無水塩化鉄(III)6.0 mg(0.037 mmol)無水酢酸ナトリウム1.0 mg(0.012 mmol)を減圧下で1時間乾燥させた。氷酢酸4 mlに溶解させ、3時間還流させた。室温まで放冷した後、ジクロロメタン20mlに溶解させ、水50 ml×2で洗浄し、水相をジクロロメタン20 mlで逆抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル MERCK C-60, φ1.7×12 cm、CH2Cl2 → 10 %CH3OH/CH2Cl2)により、緑色の第4成分を分取した。これを2N塩酸52 mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去し、緑色の固体15b をほぼ定量的に得た。
【0024】
クロロ( 13,16 −ジ( 2 −カルボキシエチル)− 2,7 −ジエチル− 3,6,12,17 −テトラメチルポルフィセナート) Fe ( III )( 16b )
クロロ(13,16−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)−2,7−ジエチル−3,6,12,17−テトラメチルポルフィセナート)Fe(III) (15b)をメタノール4 mlとTHF 4 mlの混合溶媒に溶解させ、0.2N水酸化カリウム水溶液4 mlを加え、室温で3時間撹拌した。0.1N塩酸でpH 6まで中和した。ジクロロメタン50 mlを加え、水50 ml×2さらに、100 mlで洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去し、深緑色の固体16bをほぼ定量的に得た。
【0025】
なお、各化合物の同定データは次のとおりである。
13,16 −ジ( 2 −メトキシカルボニルエチル)− 2,7 −ジエチル− 3,6,12,17 −テトラメチルポルフィセン (14b)
1H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ(ppm) = 9.54 (d, 2H, J = 10.0; meso), 9.47 (d, 2H, J = 15.0; meso), 4.33 (t, 4H, J = 7.8; CH 2 CH2CO) 3.83 (q, 4H, J = 7.5; CH 2 CH3), 3.54 (s, 12H; CH3), 3.42 (s, 6H; OCH3), 2.95 (t, 4H, J = 8.0; CH2 CH 2 CO), 1.67 (t, 6H, J = 7.5; CH2 CH 3 )
MS (MALDI-TOF) : m/z = 596 (MH+)
HRMS(FAB) : m/z = 595.3279 (MH+)
UV-vis(CH2Cl2) :λ(nm) = 384 (Soret), 575, 624, 663
【0026】
クロロ( 13,16 −ジ( 2 −メトキシカルボニルエチル)− 2,7 −ジエチル− 3,6,12,17 −テトラメチルポルフィセナート) Fe(III) (15b)
1H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ(ppm) = 79.6 (br.s, 6H; CH3), 57.3(br.s, 2H; CH 2 CH2CO), 44.5 (br.s, 2H; CH 2 CH2CO) ,42.1(br.s, 6H; CH3), 36.3 (br.s, 2H; CH 2 CH3), 27.2 (br.s, 2H; CH 2 CH3), -12.9 (br.s, 2H; meso), -13.6(br.s, 2H; meso)
MS (ESI-TOF) : m/z = 648 (M+)
UV-vis(CH2Cl2) :λ(nm) = 368 (Soret), 621
【0027】
クロロ( 13,16 −ジ( 2 −カルボキシエチル)− 2,7 −ジエチル− 3,6,12,17 −テトラメチルポルフィセナート) Fe(III) (16b)
MS (ESI-TOF) : m/z = 620 (M+)
MS (FAB) : m/z = 620 (M+)
UV-vis(CH3OH) : λ(nm) = 372 (Soret), 622
【0028】
実施例2:酸素保持能試験
実施例1で合成したポルフィセン鉄錯体(以下、Pcと略記することがある)をアポミオグロビン(ミオグロビンからヘムを除いたもの)に結合させることによりポルフィセンミオグロビンの調製を試みた。すなわち、常法によって作成したアポミオグロビンをpH 7.0, リン酸緩衝溶液(100 mM)に溶かした(1.4×10-2 mM, 30 mL)。その溶液に、少量ずつポルフィセン鉄錯体(Pc)の50 %ピリジン水溶液(1.3×10-1 mM, 4.94 mL)を、振とう(30rpm)しながら2℃で20 min.かけて滴下し、さらに20 min.振とうした。得られた再構成ミオグロビンの溶液を遠心分離し(4,000 rpm, 2 ℃, 20 min.)し、その上澄み液を限外濾過して(amicon regenerated cellulose 10,000 Da)し、10-1 mM 程度まで濃縮した。この溶液をPharmacia 製Hi-Trap Desalting(G25 Sephadex)カラムを通し、ピリジンを完全に除去した。
このようにして得られた再構成ミオグロビン(以下、metPcMbと略記することがある)の吸収スペクトルは387(ソーレー(Soret)バンド)、564、624 nmに特徴的なピークを示した(図4)。質量分析(ESI-TOF-MS)ではm/z = 17,567に、Pcがミオグロビンに取り込まれたホロタンパク質に一致するピークを観測した(図5)。これらのことからポルフィセン錯体とアポミオグロビンとが結合して天然のミオグロビンに類似のホロタンパク質が形成されたことが確認された。
【0029】
metPcMbをジチオナイトにより還元した後、この還元体(以下、deoxyPcMbと略記することがある)にCOガスを吹き込むと、吸収スペクトルにおいて393(Soret)、613 nmにピークを示すCO錯体が形成された。同様に、deoxyPcMbにO2を吹き込むと、386(Soret)、580、620 nmにピークをもつO2錯体oxyPcMbとなり、この酸素分子との結合は可逆的であることが確認された。
このoxyPcMbからmetPcMbへの自動酸化反応を吸収スペクトルにより追跡した。すなわち、oxyPcMbの溶液をPharmacia 製Hi-Trap Desalting(G25 Sephadex)カラムを通し、過剰のジチオナイトおよびその分解物を除いた。この溶液をUVセルの中に入れ、621 nm の酸素錯体の吸収の減少をモニターし、酸素錯体からメト体への自動酸化速度を観測した。その反応速度定数はkobs = 2.8 × 10− 2h− 1(pH7.0、100mMリン酸緩衝液、37℃)であった。同じ条件で、天然のミオグロビン(アポミオグロビンに補欠分子としてプロトポルフィリンIX鉄錯体が結合したもの)についても同様の測定を行ったところ、kobs = 1.8 × 10− 1h− 1であった。
このように、oxyPcMb、すなわち、本発明に従うポルフィセン鉄錯体とアポミオグロビンとが結合して得られる擬似ミオグロビンの酸化体の自動酸化速度は、天然のミオグロビンのそれと比較すると6.4倍も遅く、本発明のポルフィセン金属錯体はアポミオグロビンと結合して、天然のミオグロビンを上回る安定な酸素保持物質として機能することがわかる。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、新規な構造のポルフィセン金属錯体を提供する。本発明のポルフィセン金属錯体は、例えば、アポミオグロビンと結合することにより、天然のミオグロビンを凌駕する酸素保持能を有する安定な酸素保持剤としての利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属錯体の配位子となるポルフィセンの合成ルートを全体的に概示するものである。
【図2】実施例に示す本発明のポルフィセン金属錯体の合成ルートの詳細を示すものであり、特に、一方のビピロールが合成される工程を示す。
【図3】実施例に示す本発明のポルフィセン金属錯体の合成ルートを示すものであり、特に、2種のビピロールをヘテロカップリングさせる工程を示す。
【図4】本発明のポルフィセン錯体とアポミオグロビンとから構成されるホロタンパク質の吸収スペクトルを示す。
【図5】本発明のポルフィセン鉄錯体とアポミオグロビンとから構成されるホロタンパク質の質量分析スペクトルを示す。
Claims (3)
- MがFe(III)であり、R1とR4が−CH3であり、R2が−CH2CH2COOHであり、R3が−CH2CH3であることを特徴とする請求項1のポルフィセン金属錯体。
- 請求項1または請求項2のポルフィセン金属錯体がアポミオグロブリンに結合して構成されていることを特徴とする酸素保持剤。
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