JP2003055053A - セラミック塗料、セラミックグリーンシートの製造方法およびセラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

セラミック塗料、セラミックグリーンシートの製造方法およびセラミック電子部品の製造方法

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JP2003055053A
JP2003055053A JP2001238749A JP2001238749A JP2003055053A JP 2003055053 A JP2003055053 A JP 2003055053A JP 2001238749 A JP2001238749 A JP 2001238749A JP 2001238749 A JP2001238749 A JP 2001238749A JP 2003055053 A JP2003055053 A JP 2003055053A
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resin
sheet
ceramic
green sheet
average particle
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JP2001238749A
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Shigeki Sato
佐藤  茂樹
Toshio Sakurai
俊雄 櫻井
Tomoko Uchida
知子 内田
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Original Assignee
TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 添加すべき樹脂量を必要以上に増加させなく
ても、基材上に形成されるグリーンシートの内部に樹脂
の偏析が生じることを効率的に抑制し、ひいてはグリー
ンシートの強度および伸度(可撓性)を改善することが
可能なセラミック塗料を用いたセラミックグリーンシー
トの製造方法を提供すること。 【解決手段】 誘電体原料およびエマルジョン樹脂を有
し、前記誘電体原料の平均粒径(D1)と前記エマルジ
ョン樹脂の平均粒径(D2)との比(D1/D2)が
2.94超であるセラミック塗料を用いてセラミックグ
リーンシートを形成することを特徴とするセラミックグ
リーンシートの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バインダとしてエ
マルジョン樹脂を用いたセラミック塗料、該セラミック
塗料を用いたセラミックグリーンシートの製造方法およ
びセラミック電子部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】積層セラミックコンデンサ、積層インダ
クタ、多層基板などのセラミック電子部品を製造する工
法の一つとして、シート工法が知られている。このシー
ト工法によれば、まず、誘電体原料を含むセラミック塗
料を、ドクターブレード法などを用いて、基材としての
PETフィルム上に塗布し、加熱乾燥させた後、PET
フィルムを剥離してセラミックグリーンシートを得る。
次に、このセラミックグリーンシート上に内部電極を印
刷して乾燥させ、これを積層したものをチップ状に切断
してグリーンチップとし、これらのグリーンチップを焼
成後、外部電極を形成し、セラミック電子部品を得る。
【0003】このようなシート工法に用いられるセラミ
ック塗料としては、有機バインダと有機溶剤とをベース
とした有機溶剤系塗料と、水溶性樹脂と水とをベースと
した水系塗料とが知られている。
【0004】有機溶剤系塗料は、(1)バインダ樹脂の
選択範囲が広いこと、(2)表面張力や塗料粘度を低く
することが可能なため、グリーンシートの表面性が良好
になること、(3)乾燥性に優れること、などの理由か
ら広く利用されている。
【0005】一方、近年では、セラミック電子部品の製
造に際し、有機溶剤にかかるコストの問題のみでなく、
乾燥および排気による有機溶剤の大気放出、すなわち大
気汚染や温暖化の問題、あるいは溶剤回収装置のコスト
の問題が指摘されている。このため、セラミックグリー
ンシート用塗料のためのバインダとして、有機溶剤を使
用しない水溶性アクリル樹脂やポリビニルアルコールな
ど水溶性樹脂への要望が高まっている。
【0006】しかしながら、水系塗料では、溶媒として
水を用いることから、(1)PETフィルムなどの基材
への濡れ性や乾燥性が悪いこと、(2)塗料の発泡性の
問題や樹脂溶解力が低いために塗料が高粘度になり易い
こと、などの問題があった。
【0007】そこで、近年、このような問題を解決する
ために、水系塗料のバインダとしてエマルジョン樹脂を
用いる方法が提案されている(たとえば特開平11−1
06267号公報参照)。バインダとしてエマルジョン
樹脂を用いた塗料では、(1)塗料中で樹脂が分散され
ているため、塗料を低粘度にすることができること、
(2)溶媒としての水の添加量を削減可能なため、乾燥
性を改善できること、などの利点を有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、通常の
エマルジョン樹脂を用いて形成されたグリーンシートで
は、樹脂が基材としてのPETフィルム面側に偏析して
析出する傾向にある。グリーンシート内部で樹脂が偏析
して存在すると、グリーンシートの強度やハンドリング
に必要な伸度(可撓性)を保持できなくおそれがある。
そこで、この場合、添加すべき樹脂量を増加させること
により、グリーンシート内部での樹脂の偏析を可能な限
り低減させる必要がある。
【0009】ところが、添加すべき樹脂量を増加させる
と、グリーンシート表面のベタツキや脱脂不良による欠
陥の発生など、種々の問題が生じることが分かった。
【0010】本発明の目的は、添加すべき樹脂量を必要
以上に増加させなくても、基材上に形成されるグリーン
シートの内部に樹脂の偏析が生じることを効率的に抑制
し、ひいてはグリーンシートの強度および伸度(可撓
性)を改善することが可能なセラミック塗料、並びに該
セラミック塗料を用いたセラミックグリーンシートの製
造方法およびセラミック電子部品の製造方法を提供する
ことである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係るセラミック塗料は、誘電体原料および
エマルジョン樹脂を有するセラミック塗料であって、前
記誘電体原料の平均粒径(D1)と前記エマルジョン樹
脂の平均粒径(D2)との比(D1/D2)が2.94
超であることを特徴とする。
【0012】本発明に係るセラミックグリーンシートの
製造方法は、誘電体原料およびエマルジョン樹脂を有
し、前記誘電体原料の平均粒径(D1)と前記エマルジ
ョン樹脂の平均粒径(D2)との比(D1/D2)が
2.94超であるセラミック塗料を用いてセラミックグ
リーンシートを形成することを特徴とする。
【0013】本発明に係るセラミック電子部品の製造方
法は、誘電体原料およびエマルジョン樹脂を有し、前記
誘電体原料の平均粒径(D1)と前記エマルジョン樹脂
の平均粒径(D2)との比(D1/D2)が2.94超
であるセラミック塗料を用いてセラミックグリーンシー
トを形成する工程と、前記セラミックグリーンシートを
積層した焼成前素子素体を焼成する工程とを、有する。
【0014】好ましくは、前記エマルジョン樹脂の平均
粒径(D2)が0.1μm以下である。
【0015】
【作用】セラミック塗料中での誘電体原料の平均粒径
(D1)と、エマルジョン樹脂の平均粒径(D2)とが
近づくと、誘電体原料とエマルジョン樹脂との分散性が
悪くなる。このため、基材上に形成されるグリーンシー
ト内部に樹脂の偏析が発生しやすくなる(図2(A)参
照)。また、誘電体原料の平均粒径(D1)と、エマル
ジョン樹脂の平均粒径(D2)とが近づき、ついには等
しくなると、誘電体原料とエマルジョン樹脂との接触点
数または融着点数が少なくなる。このため、グリーンシ
ートの強度や伸度(可撓性)が低下してしまうと考えら
れる。
【0016】本発明者らは、これらの知見により、セラ
ミック塗料中での誘電体原料の平均粒径(D1)と、エ
マルジョン樹脂の平均粒径(D2)との関係に着目し、
これらの比(D1/D2)を特定の値より大きくするこ
とで、基材上に形成されるグリーンシート内部の特に基
材側での樹脂の偏析を抑制し、グリーンシートの強度お
よび伸度(可撓性)を改善できることを見出し、本発明
を完成させた。
【0017】すなわち、本発明に係るセラミック塗料で
は、誘電体原料とエマルジョン樹脂との平均粒径の比
(D1/D2)を2.94超とすることにより、添加す
べき樹脂量を必要以上に増加させなくても、基材上に形
成されるグリーンシート内部の特に基材側での樹脂の偏
析が効果的に抑制され(図2(B)参照)、グリーンシ
ートの強度および伸度(可撓性)が改善される。
【0018】積層セラミックコンデンサや積層インダク
タなどのセラミック電子部品に使用される誘電体原料に
は、通常、1μm以下の平均粒径を持つものが多い。特
に、積層セラミックコンデンサに代表される薄層・多層
用の誘電体原料は、通常0.5μm以下、好ましくは
0.3μm以下のものが用いられる。このような平均粒
径を持つ誘電体原料を用いたセラミックグリーンシート
での分散状態を最適にするためには、エマルジョン樹脂
の平均粒径(D2)が0.1μm以下であることが好ま
しい。このような微細なエマルジョン樹脂を用いること
により、グリーンシート内部での樹脂の偏析を一層効果
的に抑制できるとともに、グリーンシートの強度や伸度
の改善も著しい。
【0019】セラミック電子部品としては、特に限定さ
れないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チッ
プインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チ
ップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部
品などが例示される。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面に示す実施
形態に基づき説明する。
【0021】図1は本発明の一実施形態に係る積層セラ
ミックコンデンサの概略断面図、図2はエマルジョン樹
脂を用いたグリーンシートにおいて、該エマルジョン樹
脂の存在状態を説明する模式図であって、同図(A)は
エマルジョン樹脂が基材面側に偏析している状態の図、
同図(B)はエマルジョン樹脂の偏析が認められない状
態の図、図3は試料1〜4におけるシート伸度とシート
強度との関係を示すグラフ(応力−歪み曲線)、図4は
試料1〜4におけるエマルジョン樹脂の平均粒径(D
2)とシートの伸度・強度との関係を示すグラフ、図5
は試料1(比較例)におけるグリーンシートでの樹脂の
偏析状態を観察した顕微鏡写真であって、同図(A)は
基材(PET)とは反対面の表面側の状態を示し、同図
(B)は基材面側の状態を示す顕微鏡写真、図6は試料
4(実施例)におけるグリーンシートでの樹脂の偏析状
態を観察した顕微鏡写真であって、同図(A)は基材
(PET)とは反対面の表面側の状態を示し、同図
(B)は基材面側の状態を示す顕微鏡写真、図7は試料
5〜14における樹脂添加量とシート伸度・強度との関
係を示すグラフ、図8は試料15〜17におけるシート
伸度とシート強度との関係を示すグラフ(応力−歪み曲
線)、図9は試料15〜17におけるエマルジョン樹脂
の平均粒径(D2)とシートの伸度・強度との関係を示
すグラフ、図10は試料15(比較例)におけるグリー
ンシートでの樹脂の偏析状態を観察した顕微鏡写真であ
って、同図(A)は基材(PET)とは反対面の表面側
の状態を示し、同図(B)は基材面側の状態を示す顕微
鏡写真、図11は試料17(実施例)におけるグリーン
シートでの樹脂の偏析状態を観察した顕微鏡写真であっ
て、同図(A)は基材(PET)とは反対面の表面側の
状態を示し、同図(B)は基材面側の状態を示す顕微鏡
写真、図12は試料18〜27における樹脂添加量とシ
ート伸度・強度との関係を示すグラフである。
【0022】図1に示すように、セラミック電子部品の
一例としての積層セラミックコンデンサ1は、層間誘電
体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコン
デンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体
10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置さ
れた内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形
成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限
はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法に
も特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよ
いが、通常、縦(0.6〜5.6mm)×横(0.3〜
5.0mm)×厚み(0.3〜1.9mm)程度であ
る。
【0023】内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子
本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するよう
に積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子
本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電
極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成
する。
【0024】コンデンサ素子本体10において、内部電
極層3および層間誘電体層2の積層方向の両外側端部に
は、外側誘電体層2aが配置してあり、素子本体10の
内部を保護している。
【0025】層間誘電体層2および外側誘電体層2aの
組成は、本発明では特に限定されないが、たとえば以下
の誘電体磁器組成物で構成される。本実施形態の誘電体
磁器組成物は、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸
ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどを
含む主成分を有する。
【0026】本実施形態の誘電体磁器組成物には、前記
主成分の他に各種副成分が含有してあってもよい。誘電
体磁器組成物中に主成分と共に含まれる副成分として
は、Sr、Y、Gd、Tb、Dy、V、Mo、Zn、C
d、Ti、Sn、W、Ba、Ca、Mn、Mg、Cr、
SiおよびPの酸化物から選ばれる1種類以上を含む副
成分が例示される。副成分を添加することにより、温度
特性の向上や、低温焼成、信頼性の向上などを図ること
ができる。ただし、層間誘電体層2の組成は、本発明の
効果・作用に何ら影響がない為、限定されるものではな
い。
【0027】なお、図1に示す層間誘電体層2の積層数
や厚み等の諸条件は、目的や用途に応じ適宜決定すれば
よいが、本実施形態では、層間誘電体層2の厚みは、2
μm〜50μm程度である。また、外側誘電体層2aの
厚みは、たとえば100μm〜数百μm程度である。
【0028】内部電極層3に含有される導電材は、特に
限定されないが、層間誘電体層2の構成材料が耐還元性
を有するため、卑金属を用いることができる。卑金属と
しては、Ni、Cu、Ni合金またはCu合金が好まし
い。内部電極層3の主成分をNiにした場合には、誘電
体が還元されないように、低酸素分圧(還元雰囲気)で
焼成するという方法がとられている。内部電極層3の厚
さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常0.5
〜5μm、好ましくは1〜2.5μm程度である。
【0029】外部電極4に含有される導電材は、特に限
定されないが、通常、CuやCu合金あるいはNiやN
i合金等を用いる。なお、AgやAg−Pd合金等も、
もちろん使用可能である。なお、本実施形態では、安価
なNi、Cuや、これらの合金を用いることができる。
外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよ
いが、好ましくは10〜50μm程度である。
【0030】次に、本発明の一実施形態に係る積層セラ
ミックコンデンサの製造方法について説明する。
【0031】本実施形態では、ペーストを用いた通常の
印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これ
を焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成する
ことにより製造される。以下、製造方法について具体的
に説明する。
【0032】まず、誘電体層用ペーストを準備する。本
実施形態では、誘電体層用ペーストは、誘電体原料と、
エマルジョン樹脂バインダと、分散剤と、溶剤水とを少
なくとも有する水系セラミック塗料で構成される。この
塗料には、必要に応じて、可塑剤、湿潤剤などが添加さ
れる。
【0033】この誘電体層用ペーストを用いて、図1に
示す層間誘電体層2および外側誘電体層2aを成形する
ことができる。
【0034】誘電体原料としては、前述した誘電体磁器
組成物の組成に応じ、主成分を構成する原料と、副成分
を構成する原料とが用いられる。
【0035】主成分を構成する原料としては、Ti、B
a、Sr、Ca、Zrの酸化物および/または焼成によ
り酸化物になる化合物が用いられる。
【0036】副成分を構成する原料としては、Sr、
Y、Gd、Tb、Dy、V、Mo、Zn、Cd、Ti、
Sn、W、Ba、Ca、Mn、Mg、Cr、Si、Li
およびPの酸化物および/または焼成により酸化物にな
る化合物から選ばれる1種類以上、好ましくは3種類以
上の単一酸化物または複合酸化物が用いられる。
【0037】主成分を構成する原料の原料粉末は、通
常、平均粒子径0.005〜5μm程度のものが用いら
れる。このような原料粉末から誘電体原料を得るには、
例えば下記のようにすればよい。まず、出発原料を所定
の量比に配合し、例えば、ボールミル等により湿式混合
する。次いで、スプレードライヤー等により乾燥させ、
その後仮焼し、主成分を構成する上記式の誘電体酸化物
を得る。なお、仮焼は、通常500〜1300℃にて、
2〜10時間程度、空気中にて行う。次いで、ジェット
ミルあるいはボールミル等にて所定粒径となるまで粉砕
し、誘電体原料を得る。
【0038】得られる誘電体原料の平均粒径(D1)
は、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは
0.3〜0.5μmである。
【0039】なお、副成分を構成する原料は、それぞれ
主成分を構成する原料とは別に用意し、得られた誘電体
原料に混合される。
【0040】水系セラミック塗料中の誘電体原料の含有
量は、55〜75重量%程度とすればよい。
【0041】エマルジョン樹脂バインダとしては、特に
限定されず、アクリルエマルジョン、ウレタンエマルジ
ョン、酢酸ビニル系エマルジョンなどが挙げられるが、
特にアクリルエマルジョン、ウレタンエマルジョンが好
ましい。これらのエマルジョン樹脂は、それぞれ単独
で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができ
る。
【0042】アクリル系エマルジョンは、アクリル酸エ
ステル、メタクリル酸エステルを主体とし、これらのエ
ステル相互および/またはスチレン、アクリル酸、メタ
クリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミドと共重合
したエマルジョンである。アクリル酸エステルとして
は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸
ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸
グリシジル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸
ヒドロキシプロピル、エチレングリコールジアクリレー
ト、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチ
ルプロパンアクリレート、ペンタエリスリトールアクリ
レートおよびブタンジオールアクリレート等が用いられ
る。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチ
ル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタク
リル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジ
ル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒド
ロキシプロピル、エチレングリコールジアクリレート、
ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチルメ
タクリレート、ペンタエリスリトールメタクリレートお
よびブタンジオールメタクリレート等が用いられる。ア
クリルエマルジョンは、通常、以上に例示したモノマー
を重合開始剤の存在下に水中で乳化重合して製造され
る。
【0043】ウレタンエマルジョンは、ポリイソシアネ
ートとポリオールを反応させたポリウレタンを水中に乳
化したエマルジョンである。ポリイソシアネートとして
は、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(メ
チルジフェニルジイソシアネート)、IPDI(イソホ
ロンジイソシアネート)およびHMDI(ヘキサメチレ
ンジイソシアネート)などが挙げられる。ポリオールと
しては、エチレングリコールおよびプロピレングリコー
ルのポリマー、またはこれとペンタエリスリトール、グ
リセリンおよびブタンジオール等との共重合体のほか、
末端水酸基のポリエステルが挙げられる。ポリオール
は、またカルボキシル基をもつ原料を用いてカルボキシ
基をつくり、これとイソシアネートを反応させたポリウ
レタンの水に対する分散性を高めることができる。合成
したポリウレタンを水に分散させてウレタンエマルジョ
ンを製造するには種々の方法があるが、一般的には溶剤
に溶解したのち水に分散し、減圧で溶剤を回収して得る
ことができる。
【0044】酢酸ビニル系エマルジョンというのは、酢
酸ビニル単独、または酢酸ビニルと他のモノマーとを乳
化重合させて得られるエマルジョンである。酢酸ビニル
と共重合させる他のモノマーとしては、エチレン、アク
リル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、
メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、C
8〜10分岐アルキルビニルエステルなどが用いられ
る。酢酸ビニル系エマルジョンは、通常、例示したモノ
マーを重合開始剤の存在下に水中で乳化重合して製造さ
れる。
【0045】本発明では、上述した誘電体原料の平均粒
径(D1)と、エマルジョン樹脂の平均粒径(D2)と
の比(D1/D2)が、2.94超、好ましくは5.0
以上であって、好ましくは16以下である。このよう
に、誘電体原料とエマルジョン樹脂との平均粒径の比
(D1/D2)を2.94超とすることにより、添加す
べき樹脂量を必要以上に増加させなくても、基材上に形
成されるグリーンシート内部の基材側での樹脂の偏析が
効果的に抑制され(図2(B)参照)、グリーンシート
の強度および伸度(可撓性)が改善される。
【0046】ここで、エマルジョン樹脂の平均粒径(D
2)は、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは
0.06μm以下であって、通常0.03μm以上であ
る。平均粒径(D2)が0.1μm以下といった微細な
エマルジョン樹脂を用いることで、グリーンシート内部
での基材側での樹脂の偏析を一層効果的に抑制できると
ともに、グリーンシートの強度や伸度の改善も著しい。
【0047】エマルジョン樹脂バインダの最適量は、誘
電体原料やバインダの比重によって異なるが、誘電体原
料100重量部に対するエマルジョン樹脂バインダの重
量割合は、樹脂固形分に換算して、通常3〜15重量部
程度、好ましくは3〜7重量部程度である。そして、こ
の範囲内において、特に、本発明の効果が顕著である。
【0048】可塑剤としては、エマルジョン樹脂(アク
リルエマルジョンなど)に柔軟性を付与するものであれ
ば、特に限定されず、たとえばフタル酸エステル、アジ
ピン酸、リン酸エステル類が使用できる。エマルジョン
樹脂100重量部(樹脂固形分)に対する可塑剤の重量
割合は、10〜50重量部程度とすればよい。
【0049】分散剤としては、粉体粒子を凝縮させない
ように分散させるものであれば特に限定されず、たとえ
ばポリカルボン酸アンモニウム塩、アリルエーテルコポ
リマー、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ポリエチレ
ングリコール型ノニオン系分散剤などが例示される。誘
電体原料100重量部に対する分散剤の重量割合は、
0.1〜2重量部程度とすればよい。
【0050】湿潤剤としては、粉体粒子と分散媒の濡れ
性を向上させるものであれば特に限定されず、たとえば
ポリエチレングリコール型ノニオン系湿潤剤、スルホン
酸型アニオン系湿潤剤、コハク酸系湿潤剤、フッ素系湿
潤剤などが例示される。誘電体原料100重量部に対す
る湿潤剤の重量割合は、0.1〜2重量部程度とすれば
よい。
【0051】上述した誘電体原料と、エマルジョン樹脂
バインダと、可塑剤と、分散剤と、湿潤剤と、溶剤水と
は、例えばボールミル等で混合してペースト(スラリ
ー)化される。なお、混合に際し、誘電体原料と分散剤
と湿潤剤とを少量の溶剤水で一次混合し、その後、エマ
ルジョン樹脂バインダと可塑剤と残りの溶剤水とを、二
次混合することにより、水系セラミック塗料で構成され
る誘電体層用ペーストを得ても良い。
【0052】この誘電体層用ペーストをシート化するた
めの手段として、本実施形態では、ドクターブレード法
が用いられる。このシートを形成するための基材として
は、たとえばSi処理無しのPETフィルムが用いられ
る。この基材上に、たとえばドクターブレード法、グラ
ビア法、ロール法、ダイコート法、ワイヤ法など各種塗
布方法により誘電体層用ペーストを所定厚みに塗布し、
乾燥させる。
【0053】シートを乾燥させるための乾燥炉の内部温
度は、好ましくは25℃〜120℃、より好ましくは5
0℃〜70℃である。乾燥温度が低すぎると、乾燥に時
間を要し、乾燥温度が高すぎると、シートにクラックが
入りやすい傾向にある。
【0054】乾燥時間は、膜厚によって変わるが、好ま
しくは5分〜65分、さらに好ましくは10分〜15分
である。乾燥時間が短すぎると、単位時間当たりのグリ
ーンシートの乾燥温度勾配が上昇し、水分蒸発が急激に
生じ、シートにクラックが入りやすい傾向にある。ま
た、乾燥時間が長すぎると、生産性が低下する傾向にあ
る。
【0055】図1に示す外側誘電体層2aを、上記のよ
うにして成形されたグリーンシートで構成する場合の膜
厚は、たとえば50μm以上、好ましくは100μm以
上程度とすればよい。一方、この外側誘電体層用グリー
ンシートとは別に、2〜50μm程度に薄く成形された
層間誘電体層用グリーンシートの表面には、図1に示す
内部電極層3となる内部電極層用ペーストが所定パター
ンで塗布乾燥される。
【0056】内部電極層用ペーストは、内部電極層3
(図1参照)を形成するためのものであり、上述した導
電材などと、有機ビヒクルとを混練して調製される。
【0057】内部電極用ペーストを製造する際に用いる
導電材は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はな
く、また、これらの形状のものが混合したものであって
もよい。また、導電材の平均粒子径は、通常0.1〜1
0μm、好ましくは0.2〜1μm程度のものを用いれ
ばよい。
【0058】内部電極層用ペーストが塗布された層間誘
電体層用グリーンシートを交互に積層すると共に、その
積層方向の外側両端部に、外側誘電体層用グリーンシー
トを単層または複層で積層する。
【0059】次に、このようにして得られた積層体を、
所定の積層体サイズに切断し、グリーンチップとした
後、脱バインダ処理および焼成を行う。そして、誘電体
層2および2aを再酸化させるため、熱処理を行う。
【0060】脱バインダ処理は、通常の条件で行えばよ
いが、内部電極層の導電体材料にNiやNi合金等の卑
金属を用いる場合、特に下記の条件で行うことが好まし
い。
【0061】昇温速度:5〜300℃/時間、特に10
〜50℃/時間、 保持温度:200〜400℃、特に250〜350℃、 保持時間:0.5〜20時間、特に1〜10時間、 雰囲気ガス:空気中または加湿したNとHとの
混合ガス。
【0062】焼成条件は、下記の条件が好ましい。
【0063】昇温速度:50〜500℃/時間、特に2
00〜300℃/時間、 保持温度:1100〜1300℃、特に1150〜12
50℃、 保持時間:0.5〜8時間、特に1〜3時間、 冷却速度:50〜500℃/時間、特に200〜300
℃/時間、 雰囲気ガス:加湿したNとHとの混合ガス等。
【0064】ただし、焼成時の空気雰囲気中の酸素分圧
は、10−2Pa以下、特に10 〜10−8Paに
て行うことが好ましい。前記範囲を超えると、内部電極
層が酸化する傾向にあり、また、酸素分圧があまり低す
ぎると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切
れてしまう傾向にある。
【0065】このような焼成を行った後の熱処理は、保
持温度または最高温度を、好ましくは1000℃以上、
さらに好ましくは1000〜1100℃として行うこと
が好ましい。熱処理時の保持温度または最高温度が、前
記範囲未満では誘電体原料の酸化が不十分なために絶縁
抵抗寿命が短くなる傾向にあり、前記範囲をこえると内
部電極のNiが酸化し、容量が低下するだけでなく、誘
電体素地と反応してしまい、寿命も短くなる傾向にあ
る。熱処理の際の酸素分圧は、焼成時の還元雰囲気より
も高い酸素分圧であり、好ましくは10−3Pa〜1P
a、より好ましくは10−2Pa〜1Paである。前記
範囲未満では、誘電体層2の再酸化が困難であり、前記
範囲をこえると内部電極層3が酸化する傾向にある。
【0066】そして、そのほかの熱処理条件は下記の条
件が好ましい。
【0067】保持時間:0〜6時間、特に2〜5時間、 冷却速度:50〜500℃/時間、特に100〜300
℃/時間、 雰囲気用ガス:加湿したNガス等。
【0068】なお、Nガスや混合ガス等を加湿する
には、例えばウェッター等を使用すればよい。この場
合、水温は0〜75℃程度が好ましい。また脱バインダ
処理、焼成および熱処理は、それぞれを連続して行って
も、独立に行ってもよい。これらを連続して行なう場
合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続
いて焼成の際の保持温度まで昇温して焼成を行ない、次
いで冷却し、熱処理の保持温度に達したときに雰囲気を
変更して熱処理を行なうことが好ましい。一方、これら
を独立して行なう場合、焼成に際しては、脱バインダ処
理時の保持温度までNガスあるいは加湿したN
ガス雰囲気下で昇温した後、雰囲気を変更してさらに昇
温を続けることが好ましく、熱処理時の保持温度まで冷
却した後は、再びNガスあるいは加湿したN
ス雰囲気に変更して冷却を続けることが好ましい。ま
た、熱処理に際しては、Nガス雰囲気下で保持温度
まで昇温した後、雰囲気を変更してもよく、熱処理の全
過程を加湿したNガス雰囲気としてもよい。
【0069】このようにして得られた焼結体(素子本体
10)には、例えばバレル研磨、サンドプラスト等にて
端面研磨を施し、外部電極用ペーストを焼きつけて外部
電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、
例えば、加湿したNとH との混合ガス中で60
0〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好
ましい。そして、必要に応じ、外部電極4上にめっき等
を行うことによりパッド層を形成する。なお、外部電極
用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様に
して調製すればよい。このようにして製造された本発明
の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリ
ント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用され
る。
【0070】本実施形態に係るセラミックグリーンシー
トの製造方法、および積層セラミックコンデンサの製造
方法では、セラミック塗料を構成する誘電体原料とエマ
ルジョン樹脂との平均粒径の比(D1/D2)を2.9
4超とすることにより、添加すべき樹脂量を必要以上に
増加させなくても、基材上に形成されるグリーンシート
内部の樹脂の偏析を効果的に抑制でき、グリーンシート
の強度および伸度(可撓性)を改善することができる。
【0071】また、平均粒径(D2)が0.1μm以下
の微細なエマルジョン樹脂を用いることで、グリーンシ
ート内部での樹脂の偏析を一層効果的に抑制できるとと
もに、グリーンシートの強度や伸度の改善を著しくする
こともできる。
【0072】しかも本実施形態によれば、セラミックグ
リーンシートを製造するに際して有機溶剤を用いないの
で、有機溶剤を使用することによる種々の不都合を防止
することができる。
【0073】以上、本発明の実施形態について説明して
きたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるも
のではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において
種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0074】また、本発明では、製造されるセラミック
電子部品としては、図1に示すように、内部電極層3が
多数積層してある積層セラミックコンデンサに限定され
ない。図1では、内部電極層3が多数積層してあるが、
内部電極が1対のみ、または複数対のみしか積層されな
いコンデンサやその他の電子部品もある。
【0075】
【実施例】以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0076】実施例1 誘電体原料として、主成分:BaTiO(平均粒径
0.5μm/堺化学工業社製BT−05粉)と、副成
分:主成分100モルに対して、Y2モル、
MgO2モル、MnO0.4モル、V0.1
モル、(Ba0. Ca0.4 )SiO3モル
とを用いた。これらの誘電体原料を、下記に示す配合比
にて、ジルコニア製ボールを用いてボールミル混合し、
スラリー化してセラミック塗料試料した。
【0077】すなわち、まず、誘電体原料:100重量
部と、ポリカルボン酸アンモニウム塩(分散剤/サンノ
プコ社製SN5468):1重量部と、ノニオン系湿潤
剤(サンノプコ社製SNウェット366):0.4重量
部と、溶剤水(イオン交換水):18重量部とを、Zr
ボール(10mmφ):200gとともにポリエ
チレン容器に投入し、16時間、一次混合して、一次混
合液を得た。
【0078】次に、得られた一次混合液に、表1に示す
平均粒径を持つアクリル系樹脂エマルジョン(エマルジ
ョン樹脂バインダ/Tg=−5℃、日本カーバイト工業
社製)を、樹脂固形分に換算して9重量部の割合で添加
して、4時間、二次混合した後、前記ZrOボール
を取り除き、低速(5rpm以下)で消泡処理を行い、
複数のセラミック塗料試料1〜4を得た。
【0079】得られた各セラミック塗料試料1〜4を用
いて、ドクターブレード法により、基材としてのPET
フィルム上に、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗
料を塗布し、その塗料を、下記の乾燥条件で乾燥させ、
下記に示す評価を行った。乾燥条件は、乾燥炉内の温度
が50〜70℃、乾燥時間が15分であった。
【0080】(シート伸度)塗料試料の組成によって
は、シートを積層するために、PETフィルムからのシ
ートの剥離工程時に、シートの剥離が困難となる。この
ときのシートの伸度を、引張試験機で測定したところ、
そのシートの伸度は、1%未満であることが判明した。
そこで、このシートの伸度を、シート成膜の判定の評価
項目の一つとした。具体的には、乾燥後のシートを、幅
20mm、長さ30mmの大きさに切断し、シートの伸
びを、引っ張り試験機(INSTRON製5543)を
用いて測定した。測定条件としては、シート引っ張り速
度が8mm/分、治具のギャップが5mmであった。シ
ート伸度は、シートが破断するまでの伸びの値を採用し
た。1%未満を「×」、1%以上10%未満を「○」、
10%以上を「◎」として結果を表1に示す。
【0081】(シート強度)塗料試料の組成によって
は、シートの乾燥後の巻き取り工程で、シートにひびが
入る。このときのシートの強度を、引張試験機で測定し
たところ、その強度値が0.9MPa未満であることが
判明した。そこで、このシート強度を、シート成膜の判
定の評価項目の一つとした。具体的には、上述したシー
ト伸度の評価と同条件で行った。シートの強度は、破断
するまでの強度最高値を採用した。0.9MPa未満を
「×」、0.9MPa以上を「○」として結果を表1に
示す。そして、試料1〜4におけるシート伸度とシート
強度との関係を図3に示し、エマルジョン樹脂の平均粒
径(D2)とシートの伸度・強度との関係を図4に示し
た。
【0082】(樹脂の偏析状態)塗料試料の組成によっ
ては、シート形成後に基材としてのPETフィルム面側
に樹脂が析出する。このとき、シートの剥離に要する力
が増大することに起因してシートの強度が低下し、また
可撓性が十分でないことに起因してハンドリング性に問
題を生じることが判明した。そこで、この樹脂の偏析状
態を、シート成膜の判定の評価項目の一つとした。具体
的には、乾燥後のシートにおける樹脂の偏析状態を、走
査電子顕微鏡により観察した。樹脂の偏析が確認された
場合を「×」、確認されなかった場合を「○」として結
果を表1に示す。そして、試料1(比較例)と試料4
(実施例)とにおけるグリーンシートでの樹脂の偏析状
態を観察した顕微鏡写真をそれぞれ図5(A)〜(B)
と図6(A)〜(B)に示した。なお、表1において、
比較例の試料番号には、*印を付した。
【0083】
【表1】
【0084】表1に示すように、誘電体原料の平均粒径
(D1)とエマルジョン樹脂バインダの平均粒径(D
2)との比(D1/D2)が2.94を超えると(試料
3〜4)、図6(A)〜(B)に示すように、基材(P
ET)面側での樹脂の偏析が抑制されることが確認でき
た。これに対し、(D1/D2)が2.94以下である
と、図5(A)〜(B)に示すように、基材(PET)
面側での樹脂の偏析(黒っぽい箇所が樹脂)が生じるこ
とが確認できた。
【0085】また、表1、図3および図4に示すよう
に、エマルジョン樹脂バインダの平均粒径(D2)が細
かいほど、シート伸度が大きく、ハンドリングしやすい
柔軟なシートが得られることが確認できた。逆に、D2
が大きいほど、シート強度が大きくなるが、シート伸度
が極めて小さくなり、シートが脆くなりやすいことも確
認できた。シート伸度については、1%程度以上あれ
ば、シートの脆さが解消されると考えられる。
【0086】以上より、総合評価としては、試料4がシ
ート伸度、シート強度、樹脂の偏析状態のいずれも優れ
ていることが確認できた。
【0087】実施例2 アクリル系樹脂エマルジョン(エマルジョン樹脂バイン
ダ/Tg=−5℃、日本カーバイト工業社製)を、表2
に示すように、樹脂固形分に換算して7〜15重量部の
割合で添加した以外は、実施例1と同様にして、複数の
セラミック塗料試料5〜14を得た。なお、試料6=表
1の試料1、試料11=表1の試料4である。
【0088】得られた各セラミック塗料試料5〜14を
用いて、ドクターブレード法により、基材としてのPE
Tフィルム上に、乾燥後の厚みが50μmとなるように
塗料を塗布し、その塗料を、実施例1の乾燥条件で乾燥
させ、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示
す。試料5〜14における樹脂添加量とシート伸度・強
度との関係を図7に示した。
【0089】
【表2】
【0090】表2および図7に示すように、細かい平均
粒径(D2)のエマルジョン樹脂バインダを用いると、
少ない添加量で柔軟なシートが得られることが確認でき
た。
【0091】D2が0.057μmのエマルジョン樹脂
を用いれば、樹脂添加量が7重量部と少量でも十分なシ
ート伸度を得ることができるが、0.2μmのエマルジ
ョン樹脂では、樹脂添加量を15重量部と多くしても十
分なシート伸度を得ることができず、しかも樹脂の偏析
が発生することが確認できた。
【0092】実施例3 アクリル系樹脂エマルジョンに代えて、表3に示す平均
粒径を持つウレタン系樹脂エマルジョン(エマルジョン
樹脂バインダ/Tg=10℃、武田薬品工業社製)を、
樹脂固形分に換算して9重量部の割合で添加した以外
は、実施例1と同様にして、複数のセラミック塗料試料
15〜17を得た。
【0093】得られた各セラミック塗料試料15〜17
を用いて、ドクターブレード法により、基材としてのP
ETフィルム上に、乾燥後の厚みが50μmとなるよう
に塗料を塗布し、その塗料を、実施例1の乾燥条件で乾
燥させ、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に
示す。試料15〜17におけるシート伸度とシート強度
との関係を図8に示した。
【0094】なお、実施例3〜5でのシート伸度および
シート強度は、シート伸度は、2%未満を「×」、2%
以上20%未満を「○」、20%以上を「◎」とした。
このようにアクリル系樹脂を用いた実施例1〜2と比較
して条件を厳しくしたのは、もともとウレタン系樹脂の
方がアクリル系樹脂よりも伸度および強度があるからで
ある。
【0095】
【表3】
【0096】表3に示すように、誘電体原料の平均粒径
(D1)とエマルジョン樹脂バインダの平均粒径(D
2)との比(D1/D2)が2.94を超えると(試料
17)、図11(A)〜(B)に示すように、基材(P
ET)面側での樹脂の偏析が抑制されることが確認でき
た。これに対し、(D1/D2)が2.94以下である
と(試料15)、図10(A)〜(B)に示すように、
基材(PET)面側での樹脂の偏析(黒っぽい箇所が樹
脂)が生じることが確認できた。
【0097】また、表3、図8および図9に示すよう
に、エマルジョン樹脂バインダの平均粒径(D2)が細
かいほど、シート伸度が大きく、ハンドリングしやすい
柔軟なシートが得られることが確認できた。逆に、D2
が大きいほど、シート強度が大きくなるが、シート伸度
が極めて小さくなり、シートが脆くなりやすいことも確
認できた。
【0098】以上より、総合評価としては、試料16,
17がシート伸度、シート強度、樹脂の偏析状態のいず
れも優れていることが確認できた。
【0099】実施例4 ウレタン系樹脂エマルジョン(エマルジョン樹脂バイン
ダ/Tg=10℃、武田薬品工業社製)を、表4に示す
ように、樹脂固形分に換算して7〜15重量部の割合で
添加した以外は、実施例1と同様にして、複数のセラミ
ック塗料試料18〜27を得た。なお、試料19=表3
の試料15、試料24=表3の試料17である。
【0100】得られた各セラミック塗料試料18〜27
を用いて、ドクターブレード法により、基材としてのP
ETフィルム上に、乾燥後の厚みが50μmとなるよう
に塗料を塗布し、その塗料を、実施例1の乾燥条件で乾
燥させ、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に
示す。試料18〜27における樹脂添加量とシート伸度
・強度との関係を図12に示した。
【0101】
【表4】
【0102】表4および図12に示すように、細かい平
均粒径(D2)のエマルジョン樹脂バインダを用いる
と、少ない添加量で柔軟なシートが得られることが確認
できた。
【0103】D2が0.06μmのエマルジョン樹脂を
用いれば、樹脂添加量が7重量部と少量でも十分なシー
ト伸度を得ることができるが、0.18μmのエマルジ
ョン樹脂では、樹脂添加量を15重量部と多くしても十
分なシート伸度を得ることができず、しかも樹脂の偏析
が発生することが確認できた。
【0104】実施例5 表5に示すように、エマルジョン樹脂の平均粒径と、誘
電体原料の平均粒径とを変化させた以外は、実施例1と
同様にして、複数のセラミック塗料試料28〜30を得
た。
【0105】得られた各セラミック塗料試料28〜30
を用いて、ドクターブレード法により、基材としてのP
ETフィルム上に、乾燥後の厚みが50μmとなるよう
に塗料を塗布し、その塗料を、実施例1の乾燥条件で乾
燥させ、実施例1と同様の評価を行った。結果を表5に
示す。
【0106】
【表5】
【0107】表5に示すように、誘電体原料の平均粒径
が細かくなると、エマルジョン樹脂の平均粒径を相対的
に細かくしなければ、伸度、強度および偏析に悪影響を
与えることが確認できた。
【0108】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、添加すべき樹脂量を必要以上に増加させなくても、
基材上に形成されるグリーンシートの内部に樹脂の偏析
が生じることを効率的に抑制し、ひいてはグリーンシー
トの強度および伸度(可撓性)を改善することが可能な
セラミック塗料、並びに該セラミック塗料を用いたセラ
ミックグリーンシートの製造方法およびセラミック電子
部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミ
ックコンデンサの概略断面図である。
【図2】 図2はエマルジョン樹脂を用いたグリーンシ
ートにおいて、該エマルジョン樹脂の存在状態を説明す
る模式図であって、同図(A)はエマルジョン樹脂が基
材面側に偏析している状態の図、同図(B)はエマルジ
ョン樹脂の偏析が認められない状態の図である。
【図3】 図3は試料1〜4におけるシート伸度とシー
ト強度との関係を示すグラフ(応力−歪み曲線)であ
る。
【図4】 図4は試料1〜4におけるエマルジョン樹脂
の平均粒径(D2)とシートの伸度・強度との関係を示
すグラフである。
【図5】 図5は試料1(比較例)におけるグリーンシ
ートでの樹脂の偏析状態を観察した顕微鏡写真であっ
て、同図(A)は基材(PET)とは反対面の表面側の
状態を示し、同図(B)は基材面側の状態を示す顕微鏡
写真である。
【図6】 図6は試料4(実施例)におけるグリーンシ
ートでの樹脂の偏析状態を観察した顕微鏡写真であっ
て、同図(A)は基材(PET)とは反対面の表面側の
状態を示し、同図(B)は基材面側の状態を示す顕微鏡
写真である。
【図7】 図7は試料5〜14における樹脂添加量とシ
ート伸度・強度との関係を示すグラフである。
【図8】 図8は試料15〜17におけるシート伸度と
シート強度との関係を示すグラフ(応力−歪み曲線)で
ある。
【図9】 図9は試料15〜17におけるエマルジョン
樹脂の平均粒径(D2)とシートの伸度・強度との関係
を示すグラフである。
【図10】 図10は試料15(比較例)におけるグリ
ーンシートでの樹脂の偏析状態を観察した顕微鏡写真で
あって、同図(A)は基材(PET)とは反対面の表面
側の状態を示し、同図(B)は基材面側の状態を示す顕
微鏡写真である。
【図11】 図11は試料17(実施例)におけるグリ
ーンシートでの樹脂の偏析状態を観察した顕微鏡写真で
あって、同図(A)は基材(PET)とは反対面の表面
側の状態を示し、同図(B)は基材面側の状態を示す顕
微鏡写真である。
【図12】 図12は試料18〜27における樹脂添加
量とシート伸度・強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1… 積層セラミックコンデンサ 2… 層間誘電体層 2a… 外側誘電体層 3… 内部電極層 4… 外部電極 10… コンデンサ素子本体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内田 知子 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 Fターム(参考) 4G030 AA07 AA08 AA10 AA12 AA16 AA19 AA25 BA09 CA08 GA14 GA17 GA20 PA21 4G052 DA05 DA08 DB02 DC06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 誘電体原料およびエマルジョン樹脂を有
    するセラミック塗料であって、 前記誘電体原料の平均粒径(D1)と前記エマルジョン
    樹脂の平均粒径(D2)との比(D1/D2)が2.9
    4超であることを特徴とするセラミック塗料。
  2. 【請求項2】 前記エマルジョン樹脂の平均粒径(D
    2)が0.1μm以下であることを特徴とする請求項1
    に記載のセラミック塗料。
  3. 【請求項3】 誘電体原料およびエマルジョン樹脂を有
    し、前記誘電体原料の平均粒径(D1)と前記エマルジ
    ョン樹脂の平均粒径(D2)との比(D1/D2)が
    2.94超であるセラミック塗料を用いてセラミックグ
    リーンシートを形成することを特徴とするセラミックグ
    リーンシートの製造方法。
  4. 【請求項4】 誘電体原料およびエマルジョン樹脂を有
    し、前記誘電体原料の平均粒径(D1)と前記エマルジ
    ョン樹脂の平均粒径(D2)との比(D1/D2)が
    2.94超であるセラミック塗料を用いてセラミックグ
    リーンシートを形成する工程と、 前記セラミックグリーンシートを積層した焼成前素子素
    体を焼成する工程とを、有するセラミック電子部品の製
    造方法。
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