JP2003053423A - 使用済み核燃料集合体収納用バスケットの製造方法及び押出しダイスの表面処理方法 - Google Patents

使用済み核燃料集合体収納用バスケットの製造方法及び押出しダイスの表面処理方法

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JP2003053423A
JP2003053423A JP2001249676A JP2001249676A JP2003053423A JP 2003053423 A JP2003053423 A JP 2003053423A JP 2001249676 A JP2001249676 A JP 2001249676A JP 2001249676 A JP2001249676 A JP 2001249676A JP 2003053423 A JP2003053423 A JP 2003053423A
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extrusion
treatment
vacuum
die
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JP2001249676A
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Atsushi Ono
淳 大野
Takeshi Yokoyama
武 横山
Yasuhiro Sakaguchi
康弘 坂口
Toyoaki Yasui
豊明 安井
Shigenori Shirogane
重徳 白銀
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 押出しダイスの耐摩耗性を向上させること。 【解決手段】 プラズマ窒化装置800によって押出し
ダイス510を窒化処理する(ステップS1)。つぎ
に、窒化処理の終了した押出しダイス510をPVD装
置810内に設置し、ここでコーティング層としてCr
N等の硬質皮膜が成膜されて(ステップS2)、押出し
ダイス510の表面処理が完了する(ステップS3)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アルミニウム押
出し材を製造するダイスに関し、さらに詳しくは、硬質
粒子を分散させたAl合金を押出し加工する際に、押出
しダイスの耐摩耗性を高くして寿命を延ばし、寸法精度
の高いバスケット材等の製品を長い押出し距離で押出し
加工できる使用済み核燃料集合体収納用バスケットの製
造方法及び押出しダイスの表面処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】押出し加工は塑性状態の材料を押出しダ
イスを通して押出し、ダイス孔断面形状の長物を製作す
る加工法であり、押出し圧力が高いため緻密で強力な製
品が製造できる。図22は、一般的に使用されている押
出し加工の一例を示す説明図である。この押出し加工は
前方押出しであり、ステム640によってコンテナ63
0の内部に配置されたビレット650の後方から高圧を
作用させる。そして、ステム640の進行方向前方に配
置した押出しダイス600のダイス孔620から、所定
の断面形状に成形された製品660が押出される。ここ
で、押出し加工では高い圧力で塑性状態のビレット65
0を押出すため、ダイス孔620には大きな力が作用し
て摩耗する。この摩耗を低減させるために、ダイス孔6
20の内壁面を窒化処理することでその硬度を高くし、
耐磨耗性を向上させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、使用済み核
燃料集合体を収納するバスケットは、B(ボロン)によ
って中性子吸収能を持たせたAl(アルミニウム)合金
材を熱間押出し加工することによって製造されている。
このバスケットに使用されるAl合金材は、中性子吸収
能を有するBを、B4C等のボロン化合物の形で分散さ
せている。また、Bの他にもAl23等の微細な粒子が
分散している。ここで、B4C等のボロン化合物やAl2
3等のAl酸化物は硬度がHV3000〜4000で
あり、窒化処理を施したダイス孔620の硬度HV10
00よりもはるかに高い。このため、押出し加工時には
これらのボロン化合物等によってダイス孔620が摩耗
してしまい、加工開始から短い押出し距離で所定の寸法
精度を維持できなくなっていた。
【0004】また、使用済み核燃料集合体を貯蔵・輸送
するためのキャスクでは、落下の衝撃力に耐えるように
厳しい寸法精度が要求されているので、できるだけ高精
度の角パイプやバスケット用部品が多数必要である。こ
のため、精度の高い部品を大量に製造する要求があり、
頻繁に押出しダイスを交換していたのでは作業効率が落
ち、また不経済であった。特に近年のキャスクでは、ボ
ロン化合物を均一に分散させて中性子吸収能を高めると
同時に強度も高くするために、メカニカルアロイング法
によってボロン化合物をAl粉末中に分散させる方法が
使用されつつある。この方法によって製造したAl合金
は強度が高くなるので、押出しダイスの負担もそれだけ
大きくなり、大量のバスケット材を押出すには、多くの
押出しダイスを必要としていた。
【0005】また、燃焼度の高いPWR(加圧水型炉)
の使用済み核燃料集合体を収納するバスケットでは、角
パイプ等の壁面をその軸方向に貫通する孔を備えたもの
が使用されるが、このような部材は貫通孔の分だけ表面
積が大きくなるので、押出しダイス600にかかる負担
もより大きくなる。このため、使用済み核燃料集合体を
収納するバスケット材の押出しにおいては、対摩耗性に
優れた押出しダイスが求められていた。
【0006】そこで、この発明は、上記に鑑みてなされ
たものであって、中性子吸収能を持つボロン化合物等の
硬質粒子が分散したAl材料を使用し、工具の交換を最
小限に抑えて精度の高い使用済み核燃料集合体を収納す
るバスケット材を製造できること、メカニカルアロイン
グ法によって硬度の高いボロン化合物を分散したAl合
金を使用した場合でも、工具の交換頻度をできるだけ少
なくしつつ精度の高いバスケット材を製造できること、
ボロン化合物やAl酸化物等の硬質粒子が分散した押出
し加工の難しいAl材を押出し加工してもダイス孔の摩
耗が少なく寿命の長い押出しダイスを提供すること、の
うち少なくとも一つを達成できる使用済み核燃料収納用
バスケットの製造方法及び押出しダイス並びにその表面
処理方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、請求項1に係る使用済み核燃料集合体収納用バス
ケットの製造方法は、真空中で表面硬化処理した後、こ
の表面硬化処理面の硬度よりも高い硬度を持つコーティ
ング層を設けた押出しダイスによって、B4C、Al2
3その他の分散粒子をAl母材に分散させた合金粉末か
ら作られたビレットを押出し加工することを特徴とす
る。
【0008】この使用済み核燃料集合体収納用バスケッ
トの製造方法に使用する押出しダイスは、真空中で窒化
や浸炭等の表面硬化処理を施した後、CrNやTiAl
N等のコーティング層を形成させたものである。そし
て、この押出しダイスによってB化合物等の硬質粒子を
分散させたAl粉末を焼結して得られたビレットを押出
し加工することで、キャスク等に使用する使用済み核燃
料集合体を収納するバスケット材を製造するものであ
る。この押出しダイスは、真空中で窒化等の表面硬化処
理をしているので押出しダイスの表面は清浄に保たれて
おり、密着性の高い緻密なコーティング層が形成でき
る。したがって、ボロン化合物やアルミナ等の硬質粒子
が分散した強度の高いAl合金を押出し加工しても、押
出しダイス表面の摩耗は非常に少ないため、寸法精度の
高いバスケット材料を製造できる。また、この押出しダ
イスは耐摩耗性が高く、従来の押出しダイスと比較して
数倍の寿命を持つ。このため、押出しダイスの交換に要
する手間を軽減でき、作業効率を高くできる。
【0009】なお、硬質粒子であるボロン化合物の含有
割合が低い場合には、それだけ押出しダイスの摩耗が少
なくなるので、さらに寿命が長くなる。例えば、中性子
吸収能を持つB10を濃縮した、いわゆる濃縮ボロンを使
用すると、同じ中性子吸収能を発揮させるためには、濃
縮しないボロンよりもその使用量を少なくできる。この
ような濃縮ボロンを使用して添加するボロン量を少なく
したAl材料に、この製造方法を適用すれば、従来の押
出しダイスを使用した場合よりも押出し距離を長くでき
るので、製造効率を高くできる(以下同様)。
【0010】また、請求項2に係る使用済み核燃料集合
体収納用バスケットの製造方法は、真空中で表面硬化処
理した後、この表面硬化処理面の硬度よりも高い硬度を
持つコーティング層を設けた押出しダイスによって、メ
カニカルアロイング法を用いてB4C、Al23その他
の分散粒子をAl母材に分散させた合金粉末から作られ
たビレットを押出し加工することを特徴とする。
【0011】この使用済み核燃料集合体収納用バスケッ
トの製造方法に使用する押出しダイスは、真空中で窒化
や浸炭等の表面硬化処理を施した後、CrNやTiAl
N等のコーティング層を形成させたものである。そし
て、メカニカルアロイング法によって分散粒子を分散さ
せたAl粉末を焼結して得られたビレットを、この押出
しダイスを用いて押出し加工することで、キャスク等に
使用する使用済み核燃料集合体を収納するバスケット材
を製造するものである。この押出しダイスは、真空中で
窒化等の表面硬化処理をしているので、押出しダイスの
表面に脆弱な化合物層はほとんど存在しない。このた
め、密着性の高い緻密なコーティング層が形成できる。
したがって、メカニカルアロイング法によりボロン化合
物等を分散させて製造した強度の高いAl合金を押出し
加工しても、押出しダイス表面の摩耗は非常に少ないた
め、寸法精度の高いバスケット材料を製造できる。ま
た、この押出しダイスは耐摩耗性が高く、従来の押出し
ダイスと比較して数倍の寿命を持つので、ダイスの交換
頻度は従来の数分の一で済む。このため、押出しダイス
の交換に要する手間が軽減でき、作業効率が高くなる。
また、同じ量の製品を製造する場合に必要な押出しダイ
スの個数も従来の数分の一で済むので、製造コストもそ
れだけ低くできる。
【0012】また、請求項3に係る押出しダイスの表面
処理方法は、Al材料の押出し加工に使用する押出しダ
イスに表面処理をするにあたって、この押出しダイスに
真空中における表面硬化処理をした後、この表面硬化処
理面に、当該表面硬化処理面の硬度よりも高い硬度を持
つコーティング層を設けたことを特徴とする。
【0013】この押出しダイスの表面処理方法は、Cr
NやTiAlN等の硬質皮膜によるコーティング層をダ
イス表面に形成する前に、押出しダイス表面に真空中に
おいて窒化処理等の表面硬化処理を施すものである。こ
のように、押出しダイスの表面に予め表面硬化処理を施
しておくことで、押出しダイスと硬質皮膜との硬度差を
緩和して、両者の密着性を高くすることができる。ま
た、真空中で窒化や浸炭等の表面硬化処理をすること
で、押出しダイス表面に脆弱な化合物層はほとんど形成
されない。これらの作用によって、この表面処理方法に
よれば、押出しダイス表面に高い密着度で緻密な硬質皮
膜のコーティング層を成膜できる。そして、この表面処
理方法によって処理した押出しダイスは、押出し加工の
際に発生するせん断力およびAlの凝着によるコーティ
ング層の剥離を抑えることができる。また、このコーテ
ィング層によって、ボロン化合物やアルミナといった硬
度の高い分散粒子による摩耗も低減できる。このため、
このような分散粒子を分散させたAl合金を押出し加工
した場合には、従来の窒化処理のみを施した押出しダイ
スと比較して数倍の寿命を持つので、押出し加工の作業
効率を大幅に改善できる。そして、上記硬度の高い分散
粒子を含まないAl材料を押出し加工した場合には、押
出しダイスの交換なしで極めて長い距離を押出すことが
できる。
【0014】この押出しダイスの表面処理方法によって
処理した押出しダイスは、一般的なAl押出し材料の押
出しにも使用できるが、特に、Al23やB4Cといっ
た硬度の高い粒子を分散させたAl合金の押出し加工に
適する。また、真空とは、通常の大気圧より低い圧力の
気体で満たされた空間をいう。なお、この押出しダイス
の表面処理方法は、使用済み核燃料集合体を収納するバ
スケット材の製造のみに適用されるものではなく、他の
部材を押出し加工する場合にも適用できる(以下同
様)。
【0015】また、請求項4に係る押出しダイスの表面
処理方法は、上記押出しダイスの表面処理方法におい
て、さらに、上記真空中における表面硬化処理は、プラ
ズマ窒化処理またはプラズマ浸炭処理であることを特徴
とする。
【0016】この押出しダイスの表面処理方法では、真
空中における表面硬化処理に、プラズマ窒化処理または
プラズマ浸炭処理を使用する。このため、押出しダイス
には粒界酸化がなく、また、その表面は清浄で光輝性を
有するので、コーティング層を形成する硬化皮膜の密着
性および成膜性を高くできる。また、処理後における押
出しダイスのひずみも少ないので、寸法精度の高いダイ
スを得ることができる。さらに、処理速度が速く、か
つ、低温で処理できるので、処理に手間を要さない。
【0017】また、請求項5に係る押出しダイスの表面
処理方法は、上記押出しダイスの表面処理方法におい
て、さらに、上記真空中における表面硬化処理が窒化処
理である場合には窒化金属化合物を、上記表面硬化処理
が浸炭処理である場合には炭化金属化合物をコーティン
グすることを特徴とする。
【0018】この押出しダイスの表面処理方法は、真空
中における表面硬化処理に応じてコーティングする硬化
皮膜の種類を変更する。窒化処理の場合にはCrNやT
iAlN等の窒化金属化合物を、浸炭処理の場合にはT
iC等の炭化金属化合物をコーティングする。このた
め、コーティング層を形成する硬化皮膜は母材の表面硬
化処理となじみやすく、両者の密着度をより高めること
ができ、また、緻密な硬化皮膜を形成できる。したがっ
て、この表面処理方法で処理した押出しダイスは、上記
表面処理による場合よりもコーティング層の剥離に対し
て強いので、さらに寿命を長くできる。
【0019】また、請求項6に係る押出しダイスは、真
空中で表面硬化処理した後、この表面硬化処理面の硬度
よりも高い硬度を持つコーティング層を設けたことを特
徴とする。この押出しダイスは、真空中で表面硬化処理
をするので、脆弱な化合物層のない清浄な表面が得られ
る。そして、この清浄な表面にコーティング層として硬
化皮膜を成膜するので、硬化皮膜の密着度が高く、ま
た、緻密な硬化皮膜が成膜できる。これによって、押出
しのせん断力やAlの凝着による硬化皮膜の剥離を抑え
ることができるので、押出しダイスの寿命を長くでき
る。また、硬質皮膜がAl母材中に分散したB4CやA
23等といった硬質粒子による摩耗から押出しダイス
表面を保護するので、従来よりも長い押出し距離を持
ち、また寸法精度の高い製品を製造できる。また、硬質
粒子の分散していない通常のAl押出し材を押出した場
合には、押出しダイスの交換なしで極めて長い距離のA
l材料を押出すことができるので、作業効率が高くな
る。さらに、押出しダイスの消費も少ないので、経済的
である。
【0020】また、請求項7に係るAl材料の押出し加
工方法は、真空中で表面硬化処理した後、この表面硬化
処理面の硬度よりも高い硬度を持つコーティング層を設
けた押出しダイスによって、B4C、Al23その他の
分散粒子の外寸を5μm以下に微細化したAl材料のビ
レットを押出し加工することを特徴とする。このAl材
料の押出し加工方法は、Al材料中の分散粒子を5μm
以下に微細化しているので、Alの凝着力および摩擦抵
抗を低くできる。これによって、さらに押出しダイスの
摩耗を低減できるので、押出しダイスの寿命をより長く
でき、押出しダイスの交換なしで、より寸法精度の高い
製品を押出すことができる。なお、Al材料の押出し加
工方法は、使用済み核燃料集合体を収納するバスケット
材の製造のみに適用されるものではなく、他の部材を押
出し加工する場合にも適用できる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、この発明につき図面を参照
しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこ
の発明が限定されるものではない。また、下記実施の形
態における構成要素には、当業者が容易に想定できるも
のが含まれるものとする。
【0022】(実施の形態1)図1は、この発明の実施
の形態1に係る押出しダイスの表面処理方法を示す説明
図である。この表面処理方法は、真空中で押出しダイス
に表面硬化処理を施した後、その上にコーティング層と
してCrNやTiAlN等の硬化皮膜を成膜する点に特
徴がある。この実施の形態においては、真空中における
表面硬化処理にプラズマ窒化処理を使用するが、真空中
で処理する方法であれば、真空窒化処理を使用してもよ
い。まず、プラズマ窒化装置800によって押出しダイ
ス510を窒化処理する(ステップS1)。プラズマ窒
化装置800の外部から供給されるプロセスガスは装置
内でプラズマ化されて、プラズマ中の窒素イオンがプラ
ズマ窒化装置800の壁面と押出しダイス510との電
位差により、押出しダイス510の表面に向かって強く
加速される。この窒素イオンが押出しダイス510の表
面から内部に入り込んで押出しダイス510が窒化され
る。
【0023】窒化処理の終了した押出しダイス510
は、PVD(Physical Vapor Deposition:物理的プロ
セスによる成膜)法によって、硬化皮膜として金属化合
物のCrNを成膜する。窒化処理後の押出しダイス51
0はPVD装置810内に設置され、ここでCrNが成
膜されて(ステップS2)、押出しダイス510の表面
処理が完了する(ステップS3)。なお、PVD法の他
に、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的プロ
セスによる成膜)法によって、CrNをコーティングし
てもよい。このようにして成膜されたCrNの硬化皮膜
は、母材である押出しダイス510との密着性が高く、
押出し加工においても容易には剥離しない。この理由を
つぎに説明する。
【0024】図2は、母材にコーティング層として硬化
皮膜を成膜したときの状態を示す模式図である。ここ
で、図2(a)はこの発明に係る方法で母材であるダイ
スに窒化処理してCrNを成膜したもの、図2(b)は
ガス窒化によって母材であるダイスに窒化処理をしてC
rNを成膜したものである。図2(b)に示すように、
ガス窒化によるものは、母材である押出しダイス510
の窒化層510a表面に、ガス中の不純物に起因する脆
弱な化合物層507が堆積してしまう。そして、CrN
の硬化皮膜550と押出しダイス510との密着性が悪
くなり、この硬化皮膜550が容易に剥離してしまう。
これに対しこの発明に係る表面処理法では、プラズマ窒
化によって真空中で窒化処理を施すので、清浄な雰囲気
中で窒化でき不純物の存在する余地が非常に少ない(図
2(a))。したがって、窒化処理後における押出しダ
イス510の窒化層510a表面には脆弱な化合物層が
ほとんど存在しなくなる。これによって、CrNの硬化
皮膜550と押出しダイス510の窒化層510a表面
との密着性が非常に高くなり、また、CrNの硬化皮膜
550が緻密に形成できる。その結果、押出しダイス5
10の窒化層510a表面に成膜されるCrNの硬化皮
膜550は強靭なものとなる。
【0025】このように、この発明に係る表面処理法で
処理した押出しダイス510は、硬化皮膜と母材である
ダイスとの密着性が高いので、押出し成形時に容易には
剥離しない。また、押出しダイス510の表面には硬度
の高いCrNの硬化皮膜550が形成されているので、
耐摩耗性が極めて高くなっている。このため、Al材料
に分散するB4CやAl23といった硬質粒子によって
も容易に摩耗しないので、これまでのダイスと比較して
工具寿命が飛躍的に長くなる。具体的には、同じ寸法・
形状の部材を押出し加工する場合であれば、従来の押出
しダイスで押出すことのできる数倍の長さまで押出すこ
とができる。これによって、一つの押出しダイス510
で寸法精度の高い製品を相当量製造できるので、押出し
ダイス510の交換頻度を大幅に低減できる。その結
果、押出しダイス510の交換時間を短縮して、これま
でよりも短い時間で製品を製造できる。また、押出しダ
イス510の交換コストも大幅に低減できる。
【0026】ここで、この発明に適用できるコーティン
グ層を形成するための硬化皮膜について説明する。この
発明に係る押出しダイスは、硬質粒子を分散させる等の
処理をしたAl材の押出し加工に使用するものであるの
で、硬化皮膜にはこの加工に適する特性が要求される。
まず、硬度の高い分散粒子に対する耐摩耗性を有するも
のであることが必要である。つぎに、母材であるAlと
の反応性が低いことが必要である。これは、Alとの反
応性が高いと、押出し加工中に硬化皮膜とAlとが凝着
して剥離するおそれがあるからである。さらに、硬化皮
膜の酸化開始温度がAl材料の押出し温度である550
℃よりも高いことが必要である。これは、硬化皮膜が酸
化すると瞬時に母材である押出しダイスから剥離するか
らである。
【0027】これらの条件を満たす材料としては、上述
したCrNの他に、TiC、TiN、TiAlN、Ti
CrNおよびDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボ
ン)が適している。これらの材料の中で、特にCrNは
母材であるAlと反応し難く、また摩擦係数も低い点で
優れる。また、TiAlNやDLCは硬度が高いので、
分散粒子に対する摩耗が少ないという点で優れている。
特にDLCはダイアモンドに次ぐ硬度を持つので、耐摩
耗性という観点では非常に優れている。分散粒子の種
類、押出し速度や製品の寸法といった押出し条件、およ
びコスト等を考慮して、これらの中から適宜材料を選択
することができる。
【0028】また、これらの材料から2以上を選択して
多層に硬化皮膜を形成してもよい。例えば、硬度の高い
DLCを窒化処理したダイス鋼の上に成膜すると、両者
間における硬度の違いが非常に大きいので、ダイス鋼の
変形にDLC膜が追従できず、DLC膜の割れや剥離が
起こりやすくなる。これを防止するため、ダイス鋼とD
LC膜との間に中間の硬度を持つ材料を配置して、段階
的にコーティング層の硬度を高くする。このようにする
と、中間に配置した材料によってダイス鋼の変形が吸収
されるので、DLC膜の割れや剥離を抑えることがで
き、工具寿命を延ばすことができる。
【0029】図3は、この発明に係る表面処理方法によ
って処理した押出しダイスによって製造できる部材を示
す説明図である。この押出しダイスは、図3(a)に示
すような角パイプ900の他、平板も押出し加工でき
る。また、内部に貫通孔を備えた中空平板901(図3
(b))や、内部に複数の貫通孔を備えたL型材902
(図3(c))のように、貫通孔の分だけ表面積が大き
くそれだけダイスの負担が大きい部材も押出すことがで
きる。そして、この表面処理方法によって処理した押出
しダイスは耐磨耗性に優れるので、このような表面積の
大きい部材を押出しても交換の頻度が少なくて済む。ま
た、押出しダイスの寿命が長くなるので、押出しの負荷
が軽い材料に対してはこれまでよりも多くのビレットを
押出すことができる。さらに、メカニカルアロイング法
によってB4C等の粒子を分散させた難押出しAl材料
を使用した場合であっても、この押出しダイスを使用す
れば、図3(a)〜(c)に示すような部材であって
も、従来よりも精度よく、長い押出し距離で加工でき
る。
【0030】(変形例)図4は、実施の形態1に係る表
面処理方法の変形例を示す説明図である。この表面処理
方法は、窒化処理の代わりに浸炭処理を使用して、母材
である押出しダイスの表面硬度を高くする点に特徴があ
る。なお、この変形例においても、真空中で浸炭処理を
する必要がある。この理由は窒化の場合と同様で、ガス
浸炭や固体浸炭では、母材表面にガスや固体浸炭剤中に
含まれる不純物によって脆弱な化合物が母材表面に形成
され、これによって硬化皮膜の成膜性や密着性が悪化す
るからである。この変形例においては、真空中で浸炭す
る方法として、プラズマ浸炭法を使用するが、通常の真
空浸炭を使用しても構わない。ただし、プラズマ浸炭法
では、粒界酸化がなく、処理物の表面が清浄で光輝性が
あるので、硬化皮膜の密着性および成膜性を高くできる
点で好ましい。また、浸炭速度が速く、かつ低温で、グ
レインの成長がなく、ひずみの少ない処理ができる。
【0031】まず、プラズマ浸炭装置802によって、
押出しダイス510に浸炭処理をする(ステップS
1)。つぎに、押出しダイス510の表面を硬化させる
ために、真空熱処理炉805によって押出しダイス51
0の表面を焼き入れする(ステップS2)。真空中で焼
き入れするのは、不純物が押出しダイス510の表面へ
堆積することを防止するためである。そして、PVD装
置(図示せず)に焼き入れ後の押出しダイス510を移
してTiCの硬化皮膜を成膜し(ステップS3)、この
変形例に係る押出しダイス510の表面処理が終了する
(ステップS4)。
【0032】この変形例に係る表面処理方法も、硬化皮
膜と母材である押出しダイス510との密着性が高いの
で、TiCの硬化皮膜は押出し成形時においても容易に
は剥離しない。また、押出しダイス510の表面には硬
度の高いTiCの硬化皮膜が形成されているので、耐摩
耗性が極めて高くなっており、これまでのダイスと比較
して工具寿命が飛躍的に長くなる。さらに、硬化皮膜の
成膜前には浸炭によって押出しダイス510の表面を硬
化させているので、CrN等の窒化物よりも炭化物との
密着性に優れている。このため、ここで説明したTiC
はもとより、炭素系の材料であるDLCを使用した場合
にも優れた密着性が得られるので、硬度の極めて高いD
LCの優れた耐磨耗性を十分に発揮させることができ
る。
【0033】なお、浸炭によって押出しダイス510の
表面を硬化させると、炭化物との密着性には優れるが、
窒化物の中には密着性にやや劣るものがある。実施の形
態1に係る表面硬化処理方法のように、窒化処理によっ
て押出しダイス510の表面を硬化させた方が窒化物に
対する密着性はよい場合が多い。したがって、CrNや
TiAlN等の窒化物を硬化皮膜として使用する場合に
は、窒化処理によって押出しダイス510の表面を硬化
させる方が好ましい。
【0034】(実施の形態2)図5は、この発明の実施
の形態2に係る押出し加工方法を示す説明図である。こ
の発明に係る表面処理方法によって製造した押出しダイ
スの表面には、緻密な硬化皮膜が強靭に形成されている
ので、これまで使用されてきた押出しダイスの数倍の寿
命を持つ。このため、本発明に係るダイスを使用すれ
ば、ダイスの交換をしなくとも、寸法精度に優れた製品
をこれまでよりも長い押出し距離で製造できる。しか
し、押出し加工に使用するAl材料にも工夫をすれば、
この発明に係る押出しダイスでさらに寸法精度に優れた
製品をより長い時間製造することができる。
【0035】実施の形態2で使用するAl押出し材は、
分散粒子508の大きさを5μm程度まで微細化してあ
る点に特徴がある。これは、硬い分散粒子508を微細
化すると、母材であるAlの凝着力が低下する結果、摩
耗抵抗も同時に低くなるからである。分散粒子508の
微細化は、ジェットミルを使用して母材に混入するSi
CやB4C等を粉砕加工してもよいし、アトライターミ
ルによってSiCやB4C等と母材であるAl粉末とを
混合してもよい。
【0036】このようにして分散粒子508を分散させ
て製造したAlのビレット520を押出し加工すると、
硬度の高い分散粒子508は微細化されているので、押
出しダイス510と接触しても分散粒子による削り深さ
は小さくなる。また、ダイス孔512の内壁面には、C
rN等の硬度が高い緻密な硬化皮膜550が強靭に形成
されているので、微細な分散粒子508による削り深さ
はさらに小さくできる。そして、分散粒子508の微細
化によって、母材であるAlの凝着力が低くなるので、
Alの凝着による硬化皮膜の剥離も起こり難くなる。こ
れらの作用によって押出しダイス510の摩耗を極めて
小さくできるので、本発明に係る押出しダイス510を
単体で使用するよりも、より押出しダイス510の寿命
を長くできるので経済的であり、製品の寸法精度もさら
に高くできる。
【0037】(適用例1)ここでは、この発明に係る表
面処理方法によって処理した押出しダイスによる押出し
加工によって製造できる角パイプについて説明する。な
お、この角パイプは使用済み核燃料集合体を収納するバ
スケットを構成するために使用するものである。図6
は、この発明に係るダイスによって製造できる角パイプ
を示す断面図である。この角パイプ1は、断面が正方形
をしており、AlまたはAl合金粉末に中性子吸収性能
を持つBまたはB化合物の粉末を添加したアルミニウム
複合材またはアルミニウム合金により構成されている。
また、中性子吸収材には、ボロンの他にカドミウム、ハ
フニウム、希土類元素などの中性子吸収断面積の大きな
ものを用いることができる。希土類元素には、ユーロピ
ウム、ディスプロシウム、サマリウム、ガドリニウムな
どの酸化物を用いることができる。
【0038】つぎに、角パイプ1の具体的な製造方法の
一例について説明する。図7は、この発明の適用例1に
係る角パイプの製造方法を示すフローチャートである。
まず、アトマイズ法などの急冷凝固法によりAlまたは
Al合金粉末を作製すると共に(ステップS401)、
BまたはB化合物の粉末を用意し(ステップS40
2)、これら両粒子をクロスロータリーミキサー、Vミ
キサー、リボンミキサー、パグミキサー等によって10
〜20分間混合する(ステップS403)。なお、混合
は、アルゴン雰囲気中で行うようにしてもよい。また、
用いるAl粉末の平均粒径は35μm、B4Cの平均粒
径は10μm程度である。
【0039】前記AlまたはAl合金には、純Al地
金、Al−Cu系Al合金、Al−Mg系Al合金、A
l−Mg−Si系Al合金、Al−Zn−Mg系Al合
金、Al−Fe系Al合金などを用いることができる。
また、前記BまたはB化合物には、B4C、B23など
を用いることができる。ここで、Alに対するBの添加
量は、1.5重量%以上、9重量%以下とするのが好ま
しい。1.5重量%以下では十分な中性子吸収能が得ら
れず、9重量%より多くなると引っ張りに対する延びが
低下するためである。
【0040】つぎに、混合粉末をラバーケース内に入れ
て10-2Torr程度まで真空引きした後、気密テープ
により真空封入し、CIP(Cold Isostatic Press)に
より常温で全方向から均一に高圧をかけ、粉末成形する
(ステップS404)。CIPの成形条件は、成形圧力
を100MPa〜200MPaとする。CIP処理によ
って粉状体の体積は2割ほど減少し、その予備成形体の
直径が600mm、長さが1500mmになるようにす
る。CIPによって全方向から均一に圧力を加えること
により、成形密度のばらつきが少ない高密度な成形品を
得ることができる。
【0041】続いて、前記予備成形体をアルミニウム缶
(アルミニウム合金継目無缶:JIS6063)に真空
封入する。缶内は、10-4Torr程度まで真空に引か
れて、300℃まで昇温する(ステップS405)。こ
の脱ガス工程で缶内のガス成分および水分を除去する。
つぎの工程では、真空脱ガスした成形品をHIP(Hot
Isostatic Press )により再成形する(ステップS40
6)。HIPの成形条件は、温度400℃〜450℃、
時間30sec、圧力6000tonとし、成形品の直
径が400mmになるようにする。
【0042】続いて、缶を除去するために機械加工によ
り外削、端面削を施し(ステップS407)、ポートホ
ール押出機を用いて機械加工後の成形品(ビレット)を
熱間押出しする(ステップS408)。この場合の押出
条件として、加熱温度を500℃〜520℃、押出速度
を5m/minとする。なお、この条件は、Bの含有量
により適宜変更する。この熱間押出しには、本発明に係
るダイスを使用するので、合金中に分散している硬度の
高いB4C等のボロン化合物による摩耗が少ない。この
ため、一つの押出しダイスによって多くのビレットを押
出し、多くの角パイプを加工することができる。つぎ
に、押出成形後、引張矯正を施すと共に(ステップS4
09)、非定常部および評価部を切断し、製品とする
(ステップS410)。完成した角パイプ1は、図6に
示すように、断面の一辺が162mm、内側が151m
mの四角形状となる。
【0043】なお、上記例では押出機に、圧縮率が高
く、Alなどの軟質材の複雑形状押出しに適したポート
ホール押出しを用いたが、押出機はこれに限定されな
い。たとえば、固定または移動マンドレル方式を採用し
てもよい。また、直接押出しの他、静水圧押出しを行う
ようにしてもよく、当事者の可能な範囲で適宜選択する
ことができる。さらに、上記HIPを用いることにより
ニヤネットシェイプ成形が可能になるが、後に押出し工
程があることに鑑み、これに代えて擬似HIPを用いる
ようにしても十分な精度を確保することができる。具体
的には、一軸方向に圧縮する金型内に圧力伝達媒体であ
るセラミック粒状体を入れ、焼結するものである。この
方法によっても、良好な角パイプ1を製造することがで
きる。
【0044】また、上記HIPに代えて、ホットプレス
を使用することもできる。ここで、ホットプレスとは、
耐熱型を加熱して一軸加圧下で焼結する方法をいう。上
記例の場合、予備成形体を缶に封入して真空脱ガスした
後、400℃〜450℃の温度で10sec〜30se
c加熱し、6000tonの圧力条件下でホットプレス
する。後に押出し工程があるので、ホットプレスによっ
ても十分な品質のビレットを製作できるが、ビレットの
サイズその他の条件により焼結状態が好ましくない場合
は、HIPを用いるようにすれば良い。ホットプレスの
利点は、生産性が良く、安価である点にある。さらに、
ホットプレスの他に常圧焼結法を用いる場合もある。
【0045】(適用例2)図8は、角パイプ1のもう一
つの製造方法を示すフローチャートである。この角パイ
プ1の製造方法は、同図に示すように、上記例における
缶封入および真空加熱脱ガス(ステップS405)、H
IP(ステップS406)、外削および端面削(ステッ
プS407)に代えて、真空ホットプレスを用いた点に
特徴がある(真空ホットプレス工程:S305)。その
他の工程は、上記適用例1と略同様であるからその説明
を省略する(ステップS301〜S304、S306〜
S308)。
【0046】図9は、この角パイプの製造方法に用いる
真空ホットプレス装置を示す構成図である。この真空ホ
ットプレス装置10は、ダイ11と、ダイ11の内面に
設けたダイリング12と、ベース13と、パンチ14と
から構成されている。これらはいずれもグラファイト製
である。ダイリング12、ベース13およびパンチ14
により構成される成形室内には、CIP工程において製
作した予備成形体Pを挿入する。ダイ11の周囲には、
加熱用の黒鉛ヒーター15が配置されている。
【0047】また、ダイリング12、ベース13および
パンチ14などは、真空ベッセル16内に収容されてい
る。真空ベッセル16には、真空引き用のポンプ17が
取り付けられている。前記パンチ14は、真空ベッセル
16の上部に設けた油圧シリンダー18により駆動され
る。前記ダイ11の内側にダイリング12を設けたの
は、加圧後にビレットが抜けやすいようにするためであ
る。なお、ダイ11の内径は直径350mm程度であ
る。また、実際にホットプレスを行う際には、摺動部位
に潤滑材を塗布または噴霧するようにする。潤滑材に
は、BNなどを用いることができる。なお、上記では片
押し法を例示しているが、両押し法あるいはフローティ
ング法を用いることもできる。
【0048】真空ホットプレスを行うには、まず、ダイ
11内に潤滑材を塗布した後に予備成形体Pを挿入し、
その上からパンチ14をセットする。つぎに、真空ベッ
セル16内を所定圧力まで真空引きすると共に黒鉛ヒー
ター15により室内を400℃〜500℃まで昇温す
る。また、当該温度帯域は、30分〜60分維持するよ
うにし、加圧は200℃程度で開始するようにする。そ
して、予備成形体Pを加圧焼結後、真空ベッセル16内
からダイ11ごと取り出して当該ダイ11からビレット
Bを取り出す。この際、ビレットBを外側から押出すこ
とになるが、ダイリング12もビレットBと共に多少押
出されて、当該ビレットBが容易に取り出せるように作
用する。取り出したビレットBは、つぎの押出工程(ス
テップS306)にて押出され、引張矯正(ステップS
307)、切断工程(ステップS308)を経て、最終
品の角パイプ1となる。
【0049】以上、この角パイプ1の製造方法によれ
ば、キャニングを省略すると共に真空ホットプレスを用
いてビレットBを成形するようにしたので、缶代が節約
でき、また缶除去のための切削工程(ステップS40
7)が不要になると共に、それに付随する製造工程(ス
テップS405)を省略することができる。このため、
角パイプ1を効率的かつ低コストで製造することができ
るようになる。
【0050】(適用例3)図10は、角パイプの第三の
製造方法を示すフローチャートである。この角パイプ1
の製造方法は、同図に示すように、上記例における缶封
入および真空加熱脱ガス(ステップS405)、HIP
(ステップS406)、外削および端面削(ステップS
407)に代えて、放電プラズマ焼結を用いた点に特徴
がある(放電プラズマ焼結工程:ステップS505)。
放電プラズマ焼結は、過渡アーク放電現象の火花放電エ
ネルギーを利用して加圧下で焼結するものである。その
他の工程は、上記適用例1と略同様であるからその説明
を省略する(ステップS501〜S504、S506〜
S508)。
【0051】図11は、この角パイプの製造方法に用い
る放電プラズマ焼結装置を示す構成図である。この放電
プラズマ焼結装置20は、グラファイト製のダイ21
と、上部電極および下部電極を兼ねた上下のパンチ2
2、23と、上下のパンチ22、23にパルス電流を供
給する電源24と、電源24を制御する制御部25と、
ダイ21およびパンチ22、23を収容する真空ベッセ
ル25と、真空ベッセル29内の真空を引くポンプ26
と、パンチ22、23を駆動する油圧シリンダ27、2
8とから構成される。CIPによる予備成形体Pは、ダ
イ21およびパンチ22、23により形成した成形室に
挿入する。
【0052】放電プラズマ焼結は、焼結エネルギーを制
御しやすいこと、取り扱いが容易であること等の種々の
利点があるが、高速で焼結できる点がこの製造方法にお
いて重要である。すなわち、上記ホットプレスでは、例
えば、焼結時間が約5時間かかるのに対し、放電プラズ
マ焼結では約1時間で済む。このように、高速焼結が可
能であるので、製造時間を短縮できる。
【0053】上記放電プラズマ焼結の条件は、真空ベッ
セル25内の真空度を10-2Torrとし、約10分で
500℃まで立ち上げる。そして、この温度領域を10
分〜30分維持し、5〜10tonで加圧する。上下の
パンチ22、23間にパルス電流を印加すると、予備成
形体P内で放電点が移動し、全体に分散する。火花放電
の部分では、局所的に高温状態(1000℃〜1000
0℃)になって粒子間接触部が点から面に成長し、ネッ
クを形成して溶着状態となる。これにより、硬い酸化皮
膜を形成するAl系材料であっても、放電プラズマのス
パッタ作用によってAl表面の酸化皮膜を破壊するか
ら、ビレットを容易に焼結することができる。
【0054】以上、この角パイプ1の製造方法によれ
ば、ホットプレスを用いる場合に比べて焼結時間を短縮
化できる。また、放電作用によりアルミニウムの不動体
皮膜を破壊するから、容易に焼結することができる。な
お、キャニングを省略したことによる利点については、
上記適用例2の場合と同様である。なお、放電プラズマ
焼結の他、熱プラズマ焼結法を用いることもできる。熱
プラズマ焼結法は、超高温のプラズマ熱を用いて無加圧
焼結を行うものである。さらに、通常の放電焼結により
製造することもできる。
【0055】(適用例4)ここでは、MA(メカニカル
アロイング)を適用してAl粉末にB4C粉末を微細か
つ均一に分散させてAl合金粉末を作り、この粉末を焼
結させてできるビレットを本発明に係る押出しダイスを
用いて角パイプを製造する例について説明する。
【0056】上記適用例においては、使用済み核燃料集
合体を収納するためのバスケットを構成する角パイプ1
の材料としてボロンを添加したAl合金を用いている。
ここで、添加元素であるB4Cの平均粒径が大きいと角
パイプ1の強度が低くなり、その一方、B4Cの平均粒
径を小さくするとB4C同士が凝集して偏析するため、
中性子吸収能の低下や加工性の悪化が生じてしまう。上
記の通り、Al粉末の平均粒径は80μmでありB4
粉末の平均粒径は9μmであって、当該B4Cの粒径を
9μmとしたのは、これ以上粒径を小さくするとB4
粉末の凝集が進んで偏析が生じやすくなるからである。
そこで、この適用例4では、上記適用例1〜3における
混合機に代えて、高エネルギーボールミリング(メカニ
カルアロイング)を用いることで、B4C粉末の微細化
および均一分散化を図るようにした。
【0057】当該高エネルギーボールミリングには、一
般的な転動ミル、揺動ミルおよびアトライターミルを用
いることができるが、次の説明ではアトライターミルを
使用した場合について例示する。図12は、この発明の
適用例4に係る角パイプ1の製造方法に用いるアトライ
ターミルの構成図である。アトライター30の容器31
には150リットルの容量のものを用いる。当該容器3
1の壁内にはウォータージャケット32が形成されてい
る。ウォータージャケット32内にはポンプなどの給水
器33から適量の冷却水を供給する。アトライター30
は、上方に配置した駆動モータ35と減速機36を介し
て結合している。容器31の上面には、容器31中を不
活性ガスであるアルゴン(Ar)雰囲気にするため、流
入口37および流出口38が設けられている。流入口3
7にはアルゴンガスのガスボンベ39が接続され、流出
口38にはホース40を接続して水中に入れ、大気の逆
流を防止する。また、このボールミリングに使用するボ
ール41には、炭素鋼ベースの軸受鋼(SUJ−2)を
用いる。
【0058】実際に高エネルギー粉末を製造する場合の
条件として、前記容器31内に入れるボール41の量を
450kg、当該ボール41の径を3/8インチとし
た。また、アトライター34の回転数は300rpmと
し、さらに、0.5リットル/minのアルゴンを連続
的に流して容器31内を不活性ガス雰囲気とした。さら
に、ボールミリングの前に、その助剤として粉末1kg
に対して30ccのエタノールあるいはメタノールを投
入した。前記容器31内に投入する粉末の量は、15k
gとし、このうち、B4Cの投入量は0.75kg(5
重量%)とした。また、使用するAl粉末には、平均粒
径が35μmのものを用い、B4C粉末には、平均粒径
が9μmのものを用いた。そして、ボールミリングの時
間は1hから10hの範囲で適宜選択するようにした。
【0059】ボールミリングの過程において、投入した
Alは、ボール41の衝撃を受けることによってつぶさ
れ、かつ折りたたまれ、扁平形状になる。このため、A
lの外径は一面方向に広がって80μm程度になる。一
方、B4C粉末は、ボールミリングによって破砕され、
その粒径が0.5μm〜1.0μm程度まで小さくなる
と共にAlマトリックス中に均一にすり込まれてゆく。
このため、微細な分散粒子が母材中に均一に分散するこ
とになるので、この粉末を焼結したAl合金は、強度に
優れたものとなる。
【0060】つぎに、ボールミリングの過程で、ボール
41同士の衝突により当該ボール41が磨耗してその成
分が不純物として混じることがある。そこで、ボール4
1の成分に予め不純物として添加する元素を含めてお
き、ボールミリングの過程で当該元素を添加するように
してもよい。この元素としては、たとえば、ジルコンな
どを挙げることができる。ボールミリングの終了後は、
容器31内から高エネルギー粉末を取りだし、ホットプ
レス工程、押出し工程に進み、図6に示すような角パイ
プ1を成形する。
【0061】以上、この角パイプ1の製造方法によれ
ば、B4C粉末を微細化、均一化してAl粉末のマトリ
ックス中に分散させることができるので、角パイプ1の
強度を向上させることができる。具体的には、上記適用
例1〜3の方法により得た角パイプ1と比較して、その
強度を約1.2〜1.5倍まで向上させることができ
る。なお、高い硬度を有するB4C粉末が微細かつ均一
に母材中に分散しているので、この材料を押出し成形す
る際には押出しダイスにかかる負担が大きくなり、従来
の押出しダイスでは摩耗による消耗が激しかった。しか
し、この発明に係る押出しダイスは、高い硬度を持つ硬
化皮膜が緻密に形成されており、かつその密着度も高い
ので、長期にわたり高い耐摩耗性を発揮できる。具体的
には従来使用されてきた押出しダイスの数倍の寿命があ
る。
【0062】(適用例5)ここでは、MA法以外のB4
C等を微細に分散させる方法について説明する。図13
は、B4C等を微細に分散させるための粉末製造装置を
示す概略構成図である。このように、高速気流を発生さ
せる粉末製造装置により、Al粉末の周囲にB4C粉末
を付着させるようにしてもよい。なお、このような、高
速気流中で攪拌し、母材の粉末の周囲に添加材を付着さ
せる粉末製造方法を、ハイブリダイゼーションという。
この粉末製造装置50は、高速回転する筒状の回転容器
51と、回転容器51内に設けた複数のインペラ52
と、窒素ガスなどの不活性ガスを供給するガスボンベ5
3とから構成されている。
【0063】つぎに、粉末の製造方法について説明す
る。まず、所定量のAlを回転容器51内に入れ、当該
回転容器51を回転させる。これにより、回転容器51
内で高速気流が発生し、Al粉末が当該高速気流により
渦状に回転する。つぎに、この回転している回転容器5
1内に所定量(5重量%)のB4C粉末を投入する。こ
の状態で回転を所定時間継続すると、図14に示すよう
に、Al粉末の外側に微細なB4C粉末がくい込むよう
にして付着する。ここで、前記Al粉末には平均粒径が
80μmのものを用い、B4C粉末には平均粒径が2μ
mのものを用いている。なお、B4C粉末は回転容器5
1内で多少粉砕されるから、実際にAl粉末に付着する
4C粉末の平均粒径は2μmよりも若干小さくなる。
【0064】また、前記回転容器51の回転速度は、7
0〜80m/secとする。たとえば、その回転速度が
60m/sec以下の場合では、B4C粉末がAl粉末
に付着しないため、Al合金の組成が変わってしまう
か、残りのB4C粉末が凝集を起こすことになる。一
方、回転速度が100m/sec以上の場合では、Al
粉末の運動エネルギーが大きくなりすぎて、インペラに
衝突する際の発熱により溶着を起こしてしまう。このた
め、上記回転速度は、70〜80m/sec程度に収め
るのが好ましい。このようにして製作したAl合金粉末
は、ホットプレス工程、押出し工程を経て、図6に示す
ような角パイプ1に成形される。
【0065】以上、この角パイプ1の製造方法によれ
ば、B4C粉末がAl粉末の表面にくい込むようにして
付着しているから、当該B4C粉末が好適に分散して焼
結時に凝集しにくくなる。このため、ビレットの偏析を
防止することができる。また、B4C粉末の衝突によ
り、Al粉末の表面に形成されていた酸化皮膜がある程
度除去されるから、焼結性が向上する。この結果、機械
的強度の優れた角パイプ1を成形することが可能にな
る。なお、このAl合金粉末は分散粒子が2μmと小さ
いので、さらに強度が高く押出し難いが、この発明に係
る押出しダイスによれば、十分な寸法精度で多くの角パ
イプ1を製造できる。
【0066】(適用例6)ここでは、使用済み燃料集合
体を収容するラックとして、上記角パイプ式に代えて平
板式とした例について説明する。この場合は角パイプで
はなく、平板状の部材を押出すことになる。図15は、
平板式のラックを示す斜視図である。この平板式ラック
60では、まず、上記適用例1〜5の製造方法により製
作したビレットを押出すことによって幅が300mm〜
350mm程度の板状部材61を成形する。続いて、そ
れぞれの板状部材61に複数のスリット62を連設す
る。そして、この板状部材61をスリット62部分で縦
横交互に係合させて格子状断面を形成する。なお、この
平板式ラック60の場合、上記角パイプ式に比べて板厚
が小さくなるので、Alに分散させるボロンの量を多め
にしておく。この平板式ラックは、キャスクや使用済み
燃料プールのラックなどに用いることができる。この板
状部材61は、上記角パイプに比べてB量が多いので、
より押出し加工し難い。しかし、この発明に係る押出し
ダイスによれば、硬質皮膜のコーティング層が押出しダ
イスを保護するので、このようなAl材料であっても精
度の高い板状部材61を大量に製造できる。
【0067】(適用例7)上記適用例1〜5では、角パ
イプ1にボロンを分散させることにより中性子吸収能を
与え、使用済み燃料集合体が臨界になるのを防止するよ
うにしている。この適用例7では、角パイプ1によら
ず、丸棒材によって使用済み燃料集合体からの中性子を
吸収する。丸棒材70は、図16に示す使用済み燃料集
合体71の制御棒クラスタ案内管72(または計測管)
内に挿入する。この丸棒材70を挿入することにより所
定の中性子吸収能が確保できるから、角パイプ1に多量
のボロンを分散させる必要がなくなる。なお、この丸棒
材70の製造には、最終の押出工程におけるダイスの形
状が異なるだけであるから、上記適用例1〜5の製造方
法を用いることができる。この丸棒材70は、本発明に
係る押出しダイスによって押出し加工するので、押出し
ダイスの交換頻度が少なく、効率よく製造できる。ま
た、製造した丸棒材70の寸法精度も高いものが得られ
る。なお、この丸棒材70は、上記角パイプと比較して
Bが少なくAlが多いので、押出しダイスのコーティン
グにはAlと反応し難いCrNを使用するとAlの凝着
を抑えることができるので、より押出しダイスの寿命を
長くできる。
【0068】(角パイプの使用例1)つぎに、上記角パ
イプ1の具体的な使用例について説明する。図17は、
キャスクを示す斜視図である。図18は、図17に示し
たキャスクの径方向断面図である。図19は、図17に
示したキャスクの軸方向断面図である。このキャスク1
00は、胴本体101のキャビティ102内面をバスケ
ット130の外周形状に合わせて機械加工したものであ
る。
【0069】胴本体101および底板104は、γ線遮
蔽機能を有する炭素鋼製の鍛造品である。なお、炭素鋼
の代わりにステンレス鋼を用いることもできる。前記胴
本体101と底板104は、溶接により結合する。ま
た、耐圧容器としての密閉性能を確保するため、一次蓋
110と胴本体101との間には金属ガスケットを設け
ておく。
【0070】胴本体101と外筒105との間には、水
素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を
有するレジン106が充填されている。また、胴本体1
01と外筒105との間には熱伝導を行う複数の銅で製
造された内部フィン107が溶接されており、前記レジ
ン106は、この内部フィン107によって形成される
空間に流動状態で注入され、冷却固化される。なお、内
部フィン107は、放熱を均一に行うため、熱量の多い
部分に高い密度で設けるようにするのが好ましい。ま
た、レジン106と外筒105との間には、数mmの熱
膨張しろ108が設けられる。
【0071】蓋部109は、一次蓋110と二次蓋11
1により構成される。この一次蓋110は、γ線を遮蔽
するステンレス鋼または炭素鋼からなる円盤形状であ
る。また、二次蓋111もステンレス鋼製または炭素鋼
製の円盤形状であるが、その上面には中性子遮蔽体とし
てレジン112が封入されている。一次蓋110および
二次蓋111は、ステンレス製または炭素鋼製のボルト
113によって胴本体101に取り付けられている。さ
らに、一次蓋110および二次蓋111と胴本体101
との間にはそれぞれ金属ガスケットが設けられ、内部の
密封性を保持している。また、蓋部109の周囲には、
レジン114を封入した補助遮蔽体115が設けられて
いる。
【0072】キャスク本体116の両側には、キャスク
100を吊り下げるためのトラニオン117が設けられ
ている。なお、図17では、補助遮蔽体115を設けた
ものを示したが、キャスク100の搬送時には補助遮蔽
材115を取り外して緩衝体118を取り付ける(図1
8参照)。緩衝体118は、ステンレス鋼材により作成
した外筒120内にレッドウッド材などの緩衝材119
を組み込んだ構造である。
【0073】バスケット130は、使用済み核燃料集合
体を収容するセル131を構成する69本の角パイプ1
からなる。当該角パイプ1には、上記適用例1〜5に係
る製造方法により製造したものを用いる。図20は、上
記角パイプの挿入方法を示す斜視図である。上記工程に
より製造した角パイプ1は、キャビティ102内の加工
形状に沿って順次挿入される。
【0074】また、図19および図20に示すように、
キャビティ102のうちセル数が5個または7個となる
角パイプ列の両側には、それぞれダミーパイプ133が
挿入されている。このダミーパイプ133は、胴本体1
01の重量を軽減すると共に胴本体101の厚みを均一
化すること、角パイプ1を確実に固定することを目的と
する。このダミーパイプ133にもボロン入りアルミニ
ウム合金を用い、上記同様の工程により製作する。な
お、このダミーパイプ133は省略することもできる。
【0075】キャスク100に収容する使用済み核燃料
集合体は、核分裂性物質および核分裂生成物などを含
み、放射線を発生すると共に崩壊熱を伴うため、キャス
ク100の除熱機能、遮蔽機能および臨界防止機能を貯
蔵期間中(60年程度)、確実に維持する必要がある。
この適用例に係るキャスク100では、胴本体101の
キャビティ102内を機械加工して角パイプ1で構成し
たバスケット130の外側を略密着状態(大きな隙間な
し)で挿入するようにしており、さらに、胴本体101
と外筒105との間に内部フィン107を設けている。
このため、燃料棒からの熱は、角パイプ1或いは充填し
たヘリウムガスを通じて胴本体101に伝導し、主に内
部フィン107を通じて外筒105から放出されること
になる。
【0076】また、使用済み核燃料集合体から発生する
γ線は、炭素鋼あるいはステンレス鋼からなる胴本体1
01、外筒105、蓋部109などにおいて遮蔽され
る。また、中性子はレジン106によって遮蔽され、放
射線業務従事者に対する被ばく上の影響をなくすように
している。具体的には、表面線当量率が2mSv/h以
下、表面から1mの線量当量率が100μSv/h以下
になるような遮蔽機能が得られるように設計する。さら
に、セル131を構成する角パイプ1には、ボロン入り
のアルミニウム合金を用いているので、中性子を吸収し
て臨界に達するのを防止することができる。
【0077】さらに、このキャスク100によれば、胴
本体101のキャビティ102内を機械加工しバスケッ
ト130の外周を構成する角パイプ1を略密着状態で挿
入するようにしたので、角パイプとキャビティとの対面
する面積が広くなり、角パイプ1からの熱伝導を良好に
できる。また、キャビティ102内の空間領域をなくす
ことができるから、角パイプ1の収容数が同じであれ
ば、胴本体101をコンパクトかつ軽量にすることがで
きる。逆に、胴本体101の外径を変えない場合、それ
だけセル数を確保できるから、使用済み核燃料集合体の
収納数を増加することができる。具体的に当該キャスク
100では、使用済み核燃料集合体の収容数を69体に
でき、かつキャスク本体116の外径を2560mm、
重量を120tonに抑えることができる。なお、キャ
スクのみならず、キャニスタに上記バスケット130を
組み込んでもよい。従来の窒化処理のみを施した押出し
ダイスでは、ビレット3本程度を押出し加工した段階で
寿命が終わってしまうので、キャスク一体分に使用する
角パイプ1を押出し加工するには数個のダイスを要して
いた。しかし、この発明に係る押出しダイスは従来の押
出しダイスの数倍の寿命を持つので、押出しダイスの交
換なしでキャスク一体分に使用する程度の角パイプ1を
押出し加工できる。また、寸法精度も高いので、角パイ
プ1は落下の衝撃力を計算通りに受けることができ、強
固なバスケットを作ることができる。
【0078】(角パイプの使用例2)続いて、上記角パ
イプの他の使用例について説明する。図21は、PWR
用の使用済み燃料プールを示す斜視図である。この使用
済み燃料プール200は、上記適用例1〜5により製造
した角パイプ1を複数立設し、その上下部分をサポート
板201により支持したラック202を備えている。ラ
ック202は、鉄筋コンクリート製のピット203内に
設置されており、当該ピット203内面は、ピット水の
漏洩防止のためにステンレス鋼鈑のライニング204に
より内張りされている。この使用済み燃料プール200
は、上記角パイプ1を用いて構成しているので、中性子
吸収能が高く、かつその構造の健全性を確保できる。こ
のため、使用済み燃料集合体が臨界に達するのを有効に
防止することができる。なお、この角パイプ1は、PW
R用のみならずBWR用の使用済み燃料プールにも適用
できる。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の使用済
み核燃料集合体収納用バスケットの製造方法(請求項
1)では、真空中で押出しダイスに表面硬化処理を施し
た後、硬質皮膜のコーティング層を形成し、この押出し
ダイスによって分散粒子を分散させたAl粉末を焼結し
て得られたビレットを押出し加工することで、使用済み
核燃料集合体を収納するバスケット材を製造するように
した。この押出しダイスは、真空中で表面硬化処理をす
るので、密着性の高い緻密なコーティング層が形成でき
る。このため、ボロン化合物やアルミナ等の硬質粒子が
分散した強度の高いAl合金を押出し加工しても、押出
しダイス表面の摩耗は非常に少なく、寸法精度の高いバ
スケット材料を製造できる。また、この押出しダイスは
耐摩耗性が高く、寿命が長いので、押出しダイスの交換
に要する手間を軽減でき、作業効率を高くできる。
【0080】また、この発明の使用済み核燃料集合体収
納用バスケットの製造方法(請求項2)では、真空中で
窒化や浸炭等の表面硬化処理を施した後、CrNやTi
AlN等のコーティング層を形成させた押出しダイスを
用いて、メカニカルアロイング法によって分散粒子を分
散させたAl材料を押出し加工することで、キャスク等
に使用する使用済み核燃料集合体を収納するバスケット
材を製造するようにした。この押出しダイスの表面に
は、密着性の高い緻密なコーティング膜が形成されてい
るので、メカニカルアロイング法によってボロン化合物
を分散させて製造した強度の高いAl合金を押出加工し
ても、押出しダイス表面の摩耗が非常に少ない。このた
め、メカニカルアロイング法による強度の高いAl合金
を押出しても寸法精度の高いバスケット材料を製造でき
る。また、耐摩耗性が高いので、従来の押出しダイスと
比較して押出しダイスの交換頻度が少なくて済む。この
ため、押出しダイスの交換に要する手間が軽減でき、作
業効率が高くなる。
【0081】また、この発明の押出しダイスの表面処理
方法(請求項3)では、CrNやTiAlN等の硬質皮
膜をダイス表面にコーティングする前に、押出しダイス
表面に真空中において窒化処理等の表面硬化処理を施す
ようにした。このため、押出しダイス表面に高い密着度
で緻密な硬質皮膜を成膜して、押出し加工の際に発生す
るせん断力およびAlの凝着による硬質皮膜の剥離を抑
えることができる。また、この硬質皮膜によって、ボロ
ン化合物やアルミナといった硬度の高い分散粒子による
摩耗も低減できる。このため、硬質粒子の分散したAl
合金を押出し加工した場合には、従来の窒化処理のみを
施した押出しダイスと比較して数倍の寿命を持つので、
押出し加工の作業効率を大幅に改善できる。
【0082】また、この発明の押出しダイスの表面処理
方法(請求項4)では、真空中における表面硬化処理
に、プラズマ窒化処理またはプラズマ浸炭処理を使用す
るようにした。このため、粒界酸化がなく、処理対象で
ある押出しダイスの表面は清浄で光輝性を有するので、
硬化皮膜の密着性および成膜性を高くでき、より密着度
が高く、緻密な硬質皮膜を形成できる。
【0083】また、この発明の押出しダイスの表面処理
方法(請求項5)では、真空中における表面硬化処理に
応じてコーティングする硬質金属の種類を変更するよう
にした。このため、母材に施した硬化処理と硬質皮膜と
がなじみやすく、よりコーティング層の密着度を高める
ことができ、また、緻密な硬化皮膜を形成できる。
【0084】また、この発明の押出しダイスの表面処理
方法(請求項6)では、真空中で表面硬化処理をするよ
うにしたので、脆弱な化合物層のない清浄な表面が得ら
れる。そして、この清浄な表面に硬化皮膜をコーティン
グするようにしたので、硬化皮膜の密着度が高く、ま
た、緻密な硬化皮膜が成膜できる。このため、押出しの
せん断力やAlの凝着による硬化被膜の剥離を抑えて押
出しダイスの寿命を長くできる。また、硬質皮膜がAl
母材中に分散したB4CやAl23等といった硬質粒子
から押出しダイスを保護するので、従来よりも長い距離
で寸法精度の高い製品を押出すことができる。
【0085】また、この発明のAl材料の押出し加工方
法(請求項7)では、Al材料中の分散粒子を5μm以
下に微細化するようにしたので、Al材料の凝着力およ
び摩擦抵抗を低くできる。これによって、さらに押出し
ダイスの摩耗を低減できるので、押出しダイスの寿命を
より長くでき、押出しダイスの交換なしで、より寸法精
度の高い製品を押出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る押出しダイスの
表面処理方法を示す説明図である。
【図2】母材にコーティング層として硬化皮膜を成膜し
たときの状態を示す模式図である。
【図3】この発明に係る表面処理方法によって処理した
押出しダイスによって製造できる部材を示す説明図であ
る。
【図4】実施の形態1に係る表面処理方法の変形例を示
す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る押出し加工方法
を示す説明図である。
【図6】この発明に係るダイスによって製造できる角パ
イプを示す断面図である。
【図7】この発明の適用例1に係る角パイプの製造方法
を示すフローチャートである。
【図8】角パイプ1のもう一つの製造方法を示すフロー
チャートである。
【図9】この角パイプの製造方法に用いる真空ホットプ
レス装置を示す構成図である。
【図10】角パイプの第三の製造方法を示すフローチャ
ートである。
【図11】この角パイプの製造方法に用いる放電プラズ
マ焼結装置を示す構成図である。
【図12】この発明の適用例4に係る角パイプ1の製造
方法に用いるアトライターミルの構成図である。
【図13】B4C等を微細に分散させるための粉末製造
装置を示す概略構成図である。
【図14】Al粉末の外側に微細なB4C粉末がくい込
んだ状態を示す模式図である。
【図15】平板式のラックを示す斜視図である。
【図16】丸棒材70を使用済み燃料集合体の制御棒ク
ラスタ案内管内に挿入した状態を示す説明図である。
【図17】キャスクを示す斜視図である。
【図18】図17に示したキャスクの径方向断面図であ
る。
【図19】図17に示したキャスクの軸方向断面図であ
る。
【図20】キャスクのキャビティ内を示す斜視図であ
る。
【図21】PWR用の使用済み燃料プールを示す斜視図
である。
【図22】一般的に使用されている押出し加工の一例を
示す説明図である。
【符号の説明】
1、900 角パイプ 3、520、650 ビレット 30、34 アトライター 31 容器 32 ウォータージャケット 33 給水器 35 駆動モータ 36 減速機 37 流入口 38 流出口 39、53 ガスボンベ 40 ホース 41 ボール 50 粉末製造装置 51 回転容器 52 インペラ 507 化合物層 508 分散粒子 510、600 押出しダイス 510a 窒化層 512 ダイス孔 550 硬化皮膜 600 押出しダイス 620 ダイス孔 630 コンテナ 640 ステム 660 製品 800 プラズマ窒化装置 802 プラズマ浸炭装置 805 真空熱処理炉 810 PVD装置 901 中空平板 902 L型材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂口 康弘 兵庫県高砂市荒井町新浜2丁目1番1号 三菱重工業株式会社高砂研究所内 (72)発明者 安井 豊明 広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱 重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者 白銀 重徳 広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱 重工業株式会社広島研究所内 Fターム(参考) 4E029 AA06 AA07 MB07 MB08 4G035 AB48

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空中で表面硬化処理した後、この表面
    硬化処理面の硬度よりも高い硬度を持つコーティング層
    を設けた押出しダイスによって、B4C、Al23その
    他の分散粒子をAl母材に分散させた合金粉末から作ら
    れたビレットを押出し加工することを特徴とする使用済
    み核燃料集合体収納用バスケットの製造方法。
  2. 【請求項2】 さらに、メカニカルアロイング法を用い
    て上記分散粒子をAl母材に分散させたことを特徴とす
    る請求項1に記載の使用済み核燃料集合体収納用バスケ
    ットの製造方法。
  3. 【請求項3】 Al材料の押出し加工に使用する押出し
    ダイスに表面処理をするにあたって、この押出しダイス
    に真空中における表面硬化処理をした後、この表面硬化
    処理面に、当該表面硬化処理面の硬度よりも高い硬度を
    持つコーティング層を設けたことを特徴とする押出しダ
    イスの表面処理方法。
  4. 【請求項4】 さらに、上記真空中における表面硬化処
    理は、プラズマ窒化処理またはプラズマ浸炭処理である
    ことを特徴とする請求項3に記載の押出しダイスの表面
    処理方法。
  5. 【請求項5】 さらに、上記真空中における表面硬化処
    理が窒化処理である場合には窒化金属化合物を、上記表
    面硬化処理が浸炭処理である場合には炭化金属化合物を
    コーティングすることを特徴とする請求項3または4に
    記載の押出しダイスの表面処理方法。
  6. 【請求項6】 真空中で表面硬化処理した後、この表面
    硬化処理面の硬度よりも高い硬度を持つコーティング層
    を設けたことを特徴とするAl材料の押出しに使用する
    押出しダイス。
  7. 【請求項7】 真空中で表面硬化処理した後、この表面
    硬化処理面の硬度よりも高い硬度を持つコーティング層
    を設けた押出しダイスによって、B4C、Al23その
    他の分散粒子の外寸を5μm以下に微細化したAl材料
    のビレットを押出し加工することを特徴とするAl材料
    の押出し加工方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009012039A (ja) * 2007-07-04 2009-01-22 Sumitomo Electric Ind Ltd 粉末成形用金型、該粉末成形用金型を用いて成形した成形体および焼結体
CN106363032A (zh) * 2016-11-26 2017-02-01 遵义恒佳铝业有限公司 一种铝材挤压机

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