JP2003048717A - 立方晶岩塩型リチウムフェライト系酸化物およびその製造方法 - Google Patents
立方晶岩塩型リチウムフェライト系酸化物およびその製造方法Info
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Abstract
5V以上の作動電圧領域において充放電容量が100mAh/g以
上であり、安価でかつ資源的制約の少ないリチウムフェ
ライト系酸化物を提供することを主な目的とする。 【解決手段】組成式Li2-xTi1-zFezO3-y(0≦x<2、0≦y
≦1、0.05≦z≦0.95)で表され、立方晶岩塩型構造を有
するリチウムフェライト系酸化物、その製造方法、この
リチウムフェライト系酸化物からなる正極材料およびこ
の正極材料を使用するリチウムイオン二次電池。
Description
チウムイオン二次電池の正極材料として有用なリチウム
フェライト系複合酸化物およびその製造方法に関する。
パソコンなどのポータブル機器に搭載されている二次電
池の殆どは、リチウムイオン二次電池である。このリチ
ウムイオン二次電池は、今後電気自動車、電力負荷平準
化システムなどの大型電池としても実用化されるものと
予測されており、その重要性はますます高まっている。
は、正極材料として主にリチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)材料を使用し、負極材料として黒鉛などの炭素材料を
使用し、電解液として有機電解液を使用している。
作動電圧(正極中の遷移金属の酸化還元電位と負極元素
の酸化還元電位との差)、充放電容量(正極から脱離・
挿入可能なLi量)などの電池性能に関連する重要な材料
であるので、今後需要が一層増大するものと予測されて
いる。しかしながら、この化合物は、希少金属であるコ
バルトを含むために、リチウムイオン二次電池の高コス
ト要因の一つとなっている。さらに、現在すでに全世界
のコバルト生産量の約20%が電池産業において用いられ
ていることを考慮すれば、LiCoO2からなる正極材料のみ
では、資源枯渇を伴うことなく、今後の需要拡大に対応
可能かどうかは、不明である。
材料として、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウ
ムマンガン酸化物(LiMn2O4)などが知られており、一部
はLiCoO2に代替して実用化されている。しかしながら、
これらの材料は、電池充電時の安全性の問題(LiNiO2)、
50℃以上でのマンガンの溶解による顕著な特性劣化(LiM
n2O4)などの問題点を有しているので、これら材料によ
るLiCoO2の代替は、予期された程には進展していない。
て、資源的により一層豊富であり、毒性が低く、安価な
鉄を含むリチウムフェライト(LiFeO2)について、電極材
料としての可能性が検討されている。しかしながら、通
常の鉄源とLi源とを用いて、高温焼成により得られるリ
チウムフェライトは、殆ど充放電しない(すなわち、リ
チウムイオン二次電池の正極材料としての活性を有して
いない)。一方、α-NaFeO2またはFeOOHを出発物質とし
て、H/Liイオン交換法あるいはNa/Liイオン交換法を用
いて得られるLiFeO2は、4V付近に充電平坦電位を有して
いるものの、平均放電電位は2V付近にある。(R.Kanno,
T.Shirane, Y.Kawamoto, Y.Takeda, M.Takano, M.Ohash
i and Y.Yamaguchi, J. Electrochem. Soc., 143, [8],
2435, (1996);Y.Sakurai, H.Arai, S.Okada and J.Ya
maki, J. Power Sources, 68, 711, (1997);L.Guenne,
P.Deniard, A.Lecerf, P.Biensan, C.Siret,L.Fournes
and R.Brec, Ionics, 4, 220, (1998);特開平10-1204
21号公報、特開平8-295518号公報など)。このイオン交
換法により得られたLiFeO2の放電電位は、LiCoO2の放電
電位に比べて、約2V以上低く、前者材料による後者材料
の代替は、かなり困難である。この様に、実用的レベル
に達するリチウムフェライトの製造技術は、未だ確立さ
れていない。
ウムマンガン酸化物(Li2-xMnO3-y)との固溶体(以下「鉄
含有Li2MnO3」と略記する)を形成させることにより、4V
領域に鉄の3+/4+酸化還元に伴う放電平坦電位を有する
化合物が得られることを見出した(2000年8月25日出願
に係る特願2000-262043号および2000年10月11日出願に
係る特願2000-310246号;以下においては、これらの出
願を「先出願」という)。しかしながら、この材料のも
つ4V領域の充放電容量は、80mAh/g以下と小さい。実用
化のためには、2.5V以上の作動電圧を保持しつつ、充放
電容量の一層の増大(>100mAh/g)を達成することが必要
である。
チウムイオン二次電池用正極材料として、2.5V以上の作
動電圧領域において充放電容量が100mAh/g以上であり、
安価でかつ資源的制約の少ないリチウムフェライト系酸
化物を提供することを主な目的とする。
従来技術の問題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定量
の鉄を立方晶岩塩型Li2-xTiO3-y中に固溶させることに
より得られる固溶体Li2 -xTi1-zFezO3-y(0≦x<2、0≦y
≦1、0.05≦z≦0.95) が、3V付近に放電平坦電圧を有
し、コバルト酸リチウムとほぼ同等の放電容量(150mAh/
g以上)を発揮することを見出し、本発明を完成するに至
った。
塩型リチウムフェライト系酸化物、その製造方法、リチ
ウムフェライト系酸化物からなるリチウムイオン二次電
池用正極材料およびリチウムイオン二次電池を提供す
る。 1.組成式Li2-xTi1-zFezO3-y(0≦x<2、0≦y≦1、0.05
≦z≦0.95)で表され、立方晶岩塩型構造を有するリチ
ウムフェライト系酸化物。 2.水溶性チタン塩と水溶性鉄塩とを含む混合水溶液を
アルカリにより共沈させ、得られた沈殿物を酸化剤およ
び水溶性リチウム化合物とともに101〜400℃の温度範囲
で水熱処理し、次いで水熱処理反応物から過剰のリチウ
ム化合物などの不純物を除去することを特徴とする上記
項1に記載のリチウムフェライト系酸化物の製造方法。 3.過剰のリチウム化合物などの不純物を除去した水熱
処理反応物にリチウム化合物を加え、さらに大気中、酸
化雰囲気中或いは還元雰囲気中300-800℃で熱処理した
後、溶媒洗浄処理により残存するリチウム化合物を除去
する上記項2に記載の方法。 4.組成式でLi2-xTi1-zFezO3-y(0≦x<2、0≦y≦1、0.
05≦z≦0.95)で表され、立方晶岩塩型構造を有するリ
チウムフェライト系酸化物からなるリチウムイオン二次
電池用正極材料。 5.組成式でLi2-xTi1-zFezO3-y(0≦x<2、0≦y≦1、0.
05≦z≦0.95)で表され、立方晶岩塩型構造を有するリ
チウムフェライト系酸化物からなる正極材料を構成要素
とするリチウムイオン二次電池。
3-yは、α-LiFeO2に類似する立方晶岩塩型構造を有す
る。この構造は、立方最密充填した酸化物イオンの8面
体格子間位置にLiイオンと Feイオンとがランダムに分
布したものである。本発明の鉄含有Li2-xTi 1-zFezO3-y
においては、Feイオンと同じ格子位置をTiイオンが占有
していることを特徴とする。すなわち、Feイオンは、Ti
イオンとの共存により、希釈されている。Tiイオンが共
存しないLiFeO2およびFeイオンが共存しないLi2-xTizO
3-yは、ほとんど充放電容量を有しない。従って、固溶
させるFeイオン量は、遷移金属(Fe+Ti)イオン量の5〜95
モル%(0.05≦Fe/Fe+Ti≦0.95)程度であることが好まし
く、20〜80モル%程度であることがより好ましい。
においては、立方晶岩塩型の結晶構造を保つことができ
る限り、Li2-xTi1-zFezO3-yのxとyは、正の値であって
も良い。例えば、xとyは、それぞれ0≦x<2、0≦y≦1の
値をとることができる。しかしながら、充電容量の観点
からは、できるだけ0に近い方が望ましい。さらに、充
放電特性に重大な影響を及ぼさない範囲で、炭酸リチウ
ム、水酸化リチウム、スピネルフェライト(LiFe5O8)な
どの不純物相が存在しても良い。例えば、0≦x≦1およ
び0≦y≦1の場合には、10モル%を超えない量のこれら不
純物相を含んでいても良い。
合成法である水熱反応法、固相反応法などにより製造す
ることが可能である。しかしながら、一般に、乾式混合
プロセスを用いる固相反応法においては、遷移金属イオ
ン間の均質混合が困難である。従って、本発明の複合金
属酸化物の製造は、各イオンの生成源となる金属塩を
水、水/アルコール混合物などに溶解させた混合溶液を
用いて、水熱反応法により行うことが、望ましい。
および水溶性チタン塩を含む水溶液または水-アルコー
ル混合溶液にアルカリ水溶液を添加して共沈物を得た
後、酸化剤の存在下にこの共沈物とリチウム源となる化
合物とを加熱することにより、行われる。
(FeおよびTi)源材料としては、水溶性塩(塩化物、硝酸
塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩など)、水酸化物など
が挙げられる。これらの塩は、無水物および水和物のい
ずれであってもよい。これらの塩類および水酸化物は、
いずれの金属についても、それぞれ単独で使用してもよ
く、2種以上を併用してもよい。また、金属源として
は、いずれの金属についても、金属酸化物を塩酸などの
酸で溶解させた水溶液を用いてもよい。
る複合金属酸化物中のFe/(Fe+Ti)比に応じて、適宜選択
することができる。
めのアルカリ源としては、水酸化リチウム、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム、アンモニア水などが好まし
い。水酸化リチウムを使用する場合には、これに由来す
るリチウムも、所望のリチウムフェライト系酸化物の一
部となり得る。
源としては、水酸化リチウム(無水物および水和物のい
ずれであっても良い)、塩化リチウム、硝酸リチウムな
どが好ましい。
属のモル比(Li/(Fe+Ti))は、1-3程度であることが好
ましく、1.5-2.5であることがより好ましい。
酸化物を製造するに際しては、所定モル比の鉄塩および
チタン塩を全濃度0.01-5M(無水物換算)程度、より好
ましくは0.1-2Mになるように蒸留水または蒸留水-アル
コール混合溶媒中で溶解させる。次いで、得られた混合
溶液を攪拌しつつ、0.1-20M程度、より好ましくは0.5-1
0M程度に相当する水酸化カリウムなどのアルカリの水溶
液を混合溶液が完全にアルカリ性(pH11以上)になるまで
滴下することにより、共沈物を生成させる。滴下終了
後、反応溶液に0〜150℃程度、より好ましくは20-100℃
程度の温度で、2〜7日間程度、より好ましくは3〜5日間
程度にわたり空気を吹き込みながら、共沈物の酸化・熟
成処理を行う。次いで、得られた沈殿を蒸留水で洗浄し
て、過剰のアルカリ成分および残留塩類を除去し、濾別
した沈殿を80℃以上の温度で、通常100℃程度の温度で
乾燥することにより、精製した共沈物を得る。
ポリテトラフルオロエチレン製ビーカー)中で蒸留水と
混合し、これに水酸化リチウムなどのリチウム塩を0.1-
10M、より好ましくは1-8Mとなるように加え、さらに塩
素酸カリウムなどの酸化剤を0.1-10M、より好ましくは
0.5-5Mとなるように加えた後、このビーカーを水熱反応
装置(例えば、市販のオートクレーブ)内に静置して、
混合物を水熱反応に供する。水熱反応条件は、特に限定
されるものではないが、通常100-400℃の温度で0.1-150
時間程度であり、より好ましくは150-300℃程度の温度
で1-100時間程度である。
O3など)を除去するために、反応生成物を水洗し、濾過
し、80℃以上の温度(より好ましくは100℃程度の温度)
で加熱乾燥することにより、所望の立方晶岩塩型リチウ
ムフェライト系複合酸化物を得る。
を向上させるためには、上記で得られた複合酸化物を粉
砕し、リチウム塩(水酸化リチウム、塩化リチウム、硝
酸リチウムなど)と混合し、大気中、酸化性雰囲気中、
不活性雰囲気中或いは還元雰囲気中で200-800℃程度(よ
り好ましくは300-600℃程度)で1-100時間程度(より好ま
しくは20-60時間程度)焼成してもよい。さらに、この焼
成終了後、必要に応じて、残存する過剰のリチウム塩を
除去するために、焼成物を水、水-アルコール、アセト
ンなどにより洗浄処理し、80℃以上の温度(より好まし
くは100℃程度の温度)で加熱乾燥してもよい。この加熱
乾燥物を粉砕し、焼成し、水洗し、乾燥するという一連
の操作を繰り返し行う場合には、リチウムフェライト系
複合酸化物の優れた特性(リチウムイオン二次電池用正
極材料としての作動電圧領域における安定的な充放電特
性、高容量など)をより一層改善することができる。
複合酸化物を用いるリチウムイオン二次電池は、公知の
手法により製造することができる。すなわち、正極材料
として、本発明による新規な複合酸化物を使用し、負極
材料として、公知の金属リチウム、炭素系材料(活性
炭、黒鉛)などを使用し、電解液として、公知のエチレ
ンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの溶媒に過
塩素酸リチウム、LiPF6などのリチウム塩を溶解させた
溶液を使用し、さらにその他の公知の電池構成要素を使
用して、常法に従って、リチウムイオン二次電池を組立
てることができる。
て、2.5V以上の作動電圧領域において安定に充放電させ
ることができ、かつ充放電容量が高いという新規なリチ
ウムフェライト系酸化物を得ることができる。
ライト系複合酸化物は、サイクル劣化の少ない、低コス
トのリチウムイオン二次電池用正極材料として極めて有
用である。
本発明の特徴とするところをより一層明確にする。本発
明は、これら実施例などの記載により、限定されるもの
ではない。
の結晶相はX線回折分析により、それらの組成は誘導結
合高周波プラズマ分光分析(ICP)および原子吸光分析に
より、各材料の鉄およびチタンの原子価状態は57Feメス
バウワ分光スペクトルおよびTiのK吸収端におけるX線吸
収スペクトルにより、それぞれ評価した。また、得られ
た各酸化物を正極材料とし、金属リチウムを負極材料と
するコイン型リチウム電池を作製して、その充放電特性
を測定した。 実施例1 硫酸鉄(II)7水和物34.75gおよび30wt%硫酸チタン(IV)水
溶液300g(全量0.5mol、Fe:Tiモル比=1:3)を400mlの蒸留
水に加え、完全に溶解させた。この水溶液を攪拌しつ
つ、水酸化カリウム水溶液(蒸留水800mlに水酸化カリウ
ム200gを溶解させた溶液)を徐々に滴下することによ
り、沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(p
H11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を
含む反応液に室温で3日間空気を吹き込んで酸化処理し
た後、沈殿を含む反応液をポリプロピレン瓶に移し、50
℃で3日間保持して、沈殿を熟成させた。
後、水酸化リチウム1水和物80g、塩素酸カリウム80gお
よび蒸留水200mlとともにポリテトラフルオロエチレン
ビーカー中に入れ、よく攪拌した後、水熱反応炉(オー
トクレーブ)内に設置し、220℃で8時間水熱処理した。
却し、水熱反応液を含むビーカーをオートクレーブ外に
取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄して、過
剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去し、濾過
し、乾燥することにより、粉末状生成物(25モル%鉄含有
Li2-xTiO3-y)を得た。
(b)に示す。すべてのピークは、既知の粉末X線回折デー
タ(JCPDSカード16-0223および17-0938)に記載されてい
る立方晶岩塩型のLi2-xTiO3-y (LiTiO2)またはα-LiFeO
2の単位胞(空間群:Fm3m, a=4.140Aまたは4.158A)によ
り、指数付けすることができた。また、本実施例におい
て得られた25モル%鉄含有Li2-xTiO3-yの各ピークより計
算される格子定数(a=4.14067(8)A)がLi2-xTiO3-yとα-L
iFeO2の中間的な値を有していること、化学分析(下記
表1参照)により、鉄が仕込量通り25モル%含まれてい
ること、Li/(Fe+Ti)値がほぼ1.6であることなどから、
本実施例において、25モル%鉄含有Li2-xTiO3 -yが製造さ
れたことが、確認できた。 実施例2 硫酸鉄(II)7水和物34.75gおよび30wt%硫酸チタン(IV)水
溶液 100g(全量0.25mol、Fe:Tiモル比=1:1)を400mlの蒸
留水に加え、完全に溶解させた。この水溶液を攪拌しつ
つ、水酸化カリウム水溶液(蒸留水400mlに水酸化カリウ
ム100gを溶解させた溶液)を徐々に滴下することによ
り、沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(p
H11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を
含む溶液に室温で3日間空気を吹き込んで酸化処理した
後、沈殿を含む反応液をポリプロピレン瓶に移し、反応
液を50℃で3日間保持して、沈殿を熟成させた。
後、これを水酸化リチウム1水和物80g、塩素酸カリウ
ム80g、蒸留水200mlとともにポリテトラフルオロエチレ
ンビーカーに入れ、よく攪拌した後に水熱反応炉(オー
トクレーブ)内に設置し、220℃で8時間水熱処理した。
却し、水熱反応溶液を収容したビーカーをオートクレー
ブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄し
て、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去
し、濾過し、乾燥することにより、粉末状生成物(50モ
ル%鉄含有Li2-xTiO3-y)を得た。
(c)に示す。すべてのピークは、既知の粉末X線回折デー
タ(JCPDSカード16-0223または17-0938)に記載されてい
る立方晶岩塩型のLi2-xTiO3-y (LiTiO2)またはα-LiFeO
2の単位胞(空間群:Fm3m, a=4.140Aまたは4.158A)で、指
数付けすることができた。本実施例によって得られた50
モル%鉄含有Li2-xTiO3-yの各ピークより計算される格子
定数(a=4.1477(5)A)がLi 2-xTiO3-yとα-LiFeO2の中間的
な値を有していること、化学分析(下記表1参照)によ
り、鉄がほぼ仕込量通り50モル%含まれていること、Li/
(Fe+Ti)値がほぼ1.2であることなどから、本実施例に
おいて、50モル%鉄含有Li2-xTiO3-yが製造されたこと
が、確認できた。 実施例3 硫酸鉄(II)7水和物34.75g及び30wt%硫酸チタン(IV)水溶
液 100g(全量0.25mol、Fe:Tiモル比=1:1)を400mlの蒸留
水に加え、完全に溶解させた。
水溶液(蒸留水400mlに水酸化カリウム100gを溶解させた
溶液)を徐々に滴下することにより、沈殿物を形成させ
た。反応液が完全にアルカリ性(pH11以上)になっている
ことを確認し、攪拌下に共沈物を含む溶液に室温で3日
間空気を吹き込んで酸化処理した後、沈殿を含む反応液
をポリプロピレン瓶に移し、反応液を50℃で3日間保持
して、沈殿を熟成させた。
後、これを水酸化リチウム1水和物80g、塩素酸カリウ
ム80g、蒸留水200mlとともにポリテトラフルオロエチレ
ンビーカーに入れ、よく攪拌した後、水熱反応炉(オー
トクレーブ)内に設置し、220℃で8時間水熱処理した。
却し、水熱反応溶液を収容したビーカーをオートクレー
ブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄し
て、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去
し、濾過し、乾燥することにより、粉末状生成物(50モ
ル%鉄含有Li2-xTiO3-y)を得た。
るために生成粉末と水酸化リチウム水溶液(蒸留水100ml
に水酸化リチウム10gを溶解させた溶液)とを混合し、乾
燥し、粉砕した後、大気中400℃で20時間焼成した。次
いで、過剰のリチウム塩を除去するために、焼成物を蒸
留水で洗浄し、濾過し、乾燥することにより、所望の粉
末状生成物(50モル%鉄含有Li2-xTiO3-y)を得た。
(d)に示す。すべてのピークは、既知の粉末X線回折デー
タ(JCPDSカード16-0223または17-0938)に記載されてい
る立方晶岩塩型のLi2-xTiO3-y (LiTiO2)またはα-LiFeO
2の単位胞(空間群:Fm3m, a=4.140Aまたは4.158A)で、指
数付けすることができた。本実施例によって得られた50
モル%鉄含有Li2-xTiO3-yの各ピークより計算される格子
定数(a=4.1470(10)A)がLi2-xTiO3-yとα-LiFeO2の中間
的な値を有していること、化学分析(下記表1参照)に
より、鉄がほぼ仕込量通り50モル%含まれていること、L
i/(Fe+Ti)値がほぼ1.3であることなどから、本実施例
において、50モル%鉄含有Li2-xTiO3-yが製造されたこと
が、確認できた。 実施例4 硝酸鉄(III)9水和物75.75gおよび30wt%硫酸チタン(IV)
水溶液 50g(全量0.25mol、Fe:Tiモル比=3:1)を400mlの
蒸留水に加え、完全に溶解させた。この水溶液を攪拌し
つつ、水酸化カリウム水溶液(蒸留水400mlに水酸化カリ
ウム100gを溶解させた溶液)を徐々に滴下することによ
り、沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(p
H11以上)になっていることを確認し、攪拌下に共沈物を
含む溶液に室温で3日間空気を吹き込んで酸化処理した
後、沈殿を含む反応液をポリプロピレン瓶に移し、反応
液を50℃で3日間保持して、沈殿を熟成させた。
後、これを水酸化リチウム1水和物80g、塩素酸カリウ
ム80g、蒸留水200mlとともにポリテトラフルオロエチレ
ンビーカーに入れ、よく攪拌した後に水熱反応炉(オー
トクレーブ)内に設置し、220℃で8時間水熱処理した。
却し、水熱反応溶液を収容したビーカーをオートクレー
ブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄し
て、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去
し、濾過し、乾燥することにより、粉末状生成物(75モ
ル%鉄含有Li2-xTiO3-y)を得た。
(e)に示す。すべてのピークは、既知の粉末X線回折デー
タ(JCPDSカード16-0223または17-0938)に記載されてい
る立方晶岩塩型のLi2-xTiO3-y (LiTiO2)またはα-LiFeO
2の単位胞(空間群:Fm3m, a=4.140Aまたは4.158A)で、指
数付けすることができた。本実施例によって得られた75
モル%鉄含有Li2-xTiO3-yの各ピークより計算される格子
定数(a=4.1494(12)A)がLi2-xTiO3-yとα-LiFeO2の中間
的な値を有していること、化学分析(下記表1参照)に
より、鉄がほぼ仕込量通り75モル%含まれていること、L
i/(Fe+Ti)値がほぼ1.1であることなどから、本実施例に
おいて、75モル%鉄含有Li2-xTiO3-yが製造されたこと
が、確認できた。 比較例1 30%wt硫酸チタン(IV)水溶液200g(全量0.25mol)を400ml
の蒸留水に加え、完全に溶解させた。この水溶液を攪拌
しつつ、水酸化カリウム水溶液(蒸留水400mlに水酸化カ
リウム100gを溶解させた溶液)を徐々に滴下することに
より、沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性
(pH11以上)になっていることを確認し、攪拌下に沈殿物
を含む溶液に室温で3日間空気を吹き込んで酸化処理し
た後、沈殿を含む反応液をポリプロピレン瓶に移し、反
応液を50℃で3日間保持して、沈殿を熟成させた。
後、これを水酸化リチウム1水和物80g、塩素酸カリウ
ム80g、蒸留水200mlとともにポリテトラフルオロエチレ
ンビーカーに入れ、よく攪拌した後に水熱反応炉(オー
トクレーブ)内に設置し、220℃で8時間水熱処理した。
却し、水熱反応溶液を収容したビーカーをオートクレー
ブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄し
て、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去
し、濾過し、乾燥することにより、粉末状生成物(Li2-x
TiO3-y)を得た。
(a)に示す。すべてのピークは、既知の粉末X線回折デー
タ(JCPDSカード16-0223)に記載されている立方晶岩塩型
のLi2 -xTiO3-y (LiTiO2)の単位胞(空間群:Fm3m, a =4.1
40A)で、指数付けすることができた。本比較例によって
得られたLi2-xTiO3-yの各ピークより計算される格子定
数(a=4.1382(15)A)が以前の報告値に近いこと、化学分
析(下記表1参照)により、Li/(Fe+Ti)値がほぼ1.7で
あることなどから、本比較例において、Li2-xTiO3-yが
製造されたことが、確認できた。 比較例2 硫酸鉄(III)7水和物69.51g(全量0.25mol)を400mlの蒸留
水に加え、完全に溶解させた。この水溶液を攪拌しつ
つ、水酸化カリウム水溶液(蒸留水400mlに水酸化カリウ
ム100gを溶解させた溶液)を徐々に滴下することによ
り、沈殿物を形成させた。反応液が完全にアルカリ性(p
H11以上)になっていることを確認し、攪拌下に沈殿物を
含む溶液に室温で3日間空気を吹き込んで酸化処理した
後、沈殿を含む反応液をポリプロピレン瓶に移し、反応
液を50℃で3日間保持して、沈殿を熟成させた。
後、これを水酸化リチウム1水和物80g、塩素酸カリウ
ム80g、蒸留水200mlとともにポリテトラフルオロエチレ
ンビーカーに入れ、よく攪拌した後に水熱反応炉(オー
トクレーブ)内に設置し、220℃で8時間水熱処理した。
却し、水熱反応溶液を収容したビーカーをオートクレー
ブ外に取り出し、生成している沈殿物を蒸留水で洗浄し
て、過剰に存在する水酸化リチウムなどの塩類を除去
し、濾過し、乾燥することにより、粉末状生成物(LiFeO
2)を得た。
(f)に示す。すべてのピークは、既知の粉末X線回折デー
タ(JCPDSカード17-0938)に記載されている立方晶岩塩型
の(-LiFeO2の単位胞(空間群:Fm3m, 4.158A)で、指数付
けすることができた。111および222ピーク以外のピーク
が僅かに非対称になっているのは、試料中に僅かに正方
晶のβ- LiFeO2が含まれているため(a =2.89 A, c=4.28
A , JCPDSカード17-0936)である。本比較例によって得
られたLiFeO2の各ピークより計算される格子定数(a=4.1
58(7)A)が以前の報告値に近いことから、本比較例にお
いて、LiFeO2が製造されたことが、確認できた。
「基準試料」とは、組成式Li2-xTiO3-yで表され、鉄を
含有しないリチウムチタン酸化物を意味する。また、
「25%Fe含有」とは、鉄を25モル%含有するリチウムフェ
ライト(実施例1)を意味する。「50%Fe含有(A)」とは、
鉄を50モル%含有するリチウムフェライト(実施例2)を
意味する。「50%Fe含有(B)」とは、鉄を50モル%含有す
るリチウムフェライトであって、水熱処理後に大気中40
0℃で焼成を行ったもの(実施例3)を意味する。「75%Fe
含有」とは、鉄を75モル%含有するリチウムフェライト
(実施例4)を意味する。 参考例1 実施例2および実施例3で得られた50%鉄含有Li2-xTiO
3-y粉末の粒径を透過型電子顕微鏡(TEM)により確認した
(TEM写真を電子的に画像処理して得た図2参照)。図2
において、(a)は水熱合成試料(実施例2)についての結
果を示す図面であり、(b)は水熱合成後400℃で焼成した
試料(実施例3)についての結果を示す図面である。
2)では、100nm以下のほぼ同一形状を有する微粒子によ
り構成されていることが明らかである。一方、Li塩の存
在下に400℃で焼成することにより得られた試料(実施例
3)では、焼成により一部粒成長が進んでいるものの、1
00nm以下の微粒子もかなり存在していることがわかる。
このことは、鉄含有Li2-xTiO3-yが水熱反応時に液相か
ら析出したナノオーダーの微粒子からなる粉末であるこ
とを示唆している。
K吸収端のX線吸収スペクトル(図3)の閾値のエネルギー
位置が、二酸化チタン(TiO2)のそれに類似していること
から、試料中でチタンイオンが主に4+の状態で存在して
いることがわかる。
れぞれ得られた50%鉄含有Li2-xTiO3 -y粉末の57Feメスバ
ウワ分光スペクトルを図4に示す。
ての結果を示す図面、(b)は水熱合成後400℃で焼成した
試料についての結果を示す図面、(c)は比較例2で得ら
れたLiFeO2試料についての結果を示す図面である。ま
た、点線は実測データを、実線は計算曲線を、破線は計
算曲線を作製するため用いられた2つのダブレット成分
(A,B)を示す。
明らかな様に、得られた試料のスペクトルの同位体シフ
ト値(+0.36mm/s)が比較例2で得られたLiFeO2のメスバ
ウワ分光データから得られた値とほぼ一致することか
ら、Feイオンは、水熱処理生成物(実施例2)において
も、400℃での焼成物(実施例3)においても、3+の状態
を保っていることがわかる。
て、金属リチウムを負極材料として、LiPF6をエチレン
カーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒に溶解
させた1M溶液を電解液として、リチウムイオン二次電
池を組立て、その充放電特性(電位範囲2.5-4.8V、電流
密度7.5mA/g)を検討した(図5および表3)。図5におい
て、右上がりの曲線が充電曲線に、右下がりの曲線が放
電曲線に対応する。
ないLiFeO2は、ほとんど充放電しない(<6mAh/g、図5
(a))。これに対し、両者の固溶体である本発明鉄含有Li
2-xTiO3-yは、図5(b)に示されるように、初期充電可能
(充電容量>50mAh/g)であり、3V領域に放電平坦電位を
有し、約150mAh/g以上の初期放電容量を有していること
が明らかである。
よる水熱処理生成物および実施例3による水熱処理生成
物をさらに400℃で焼成したもの)について、放電容量
のサイクル劣化特性を検討したところ、400℃での焼成
物の方が、10サイクル後のサイクル劣化が少ないことが
確認された(表3)。
圧を3V付近に有し、充放電容量が100mAh/g以上であり、
かつサイクル劣化の少ない鉄含有Li2-xTiO3-yが得られ
ることが明らかである。この様な特性を発揮する鉄含有
Li2-xTiO3-yは、リチウムイオン二次電池用正極材料と
して、有用である。
下記に定義した意味を有する。
容量)/(初期放電容量)×100
び75モル%鉄含有Li2-xTiO 3-yのX線回折パターンと比較
例1〜2で得られたLi2-xTiO3-yおよびLiFeO2のX線回折
パターンとを比較して示す図面である。
微鏡写真を電子的に画像処理した図面である。
ンK吸収端のX線吸収スペクトルを二酸化チタン試料の同
様のデータを比較として示す図面である。
メスバウワ分光スペクトルを示す図面である。
eO2(a)あるいは実施例1〜3で得られた鉄含有Li2-xTiO
3-y(b)を正極とし、Li金属を負極とするコイン型リチウ
ム電池の初期充放電特性を示すグラフである。右上がり
の曲線が充電曲線を示し、右下がりの曲線が放電曲線を
示す。
Claims (5)
- 【請求項1】組成式Li2-xTi1-zFezO3-y(0≦x<2、0≦y≦
1、0.05≦z≦0.95)で表され、立方晶岩塩型構造を有す
るリチウムフェライト系酸化物。 - 【請求項2】水溶性チタン塩と水溶性鉄塩とを含む混合
水溶液をアルカリにより共沈させ、得られた沈殿物を酸
化剤および水溶性リチウム化合物とともに101〜400℃の
温度範囲で水熱処理し、次いで水熱処理反応物から過剰
のリチウム化合物などの不純物を除去することを特徴と
する請求項1に記載のリチウムフェライト系酸化物の製
造方法。 - 【請求項3】過剰のリチウム化合物などの不純物を除去
した水熱処理反応物にリチウム化合物を加え、さらに大
気中、酸化雰囲気中或いは還元雰囲気中300-800℃で熱
処理した後、溶媒洗浄処理により残存するリチウム化合
物を除去する請求項2に記載の方法。 - 【請求項4】組成式Li2-xTi1-zFezO3-y(0≦x<2、0≦y
≦1、0.05≦z≦0.95)で表され、立方晶岩塩型構造を有
するリチウムフェライト系酸化物からなるリチウムイオ
ン二次電池用正極材料。 - 【請求項5】組成式Li2-xTi1-zFezO3-y(0≦x<2、0≦y
≦1、0.05≦z≦0.95)で表され、立方晶岩塩型構造を有
するリチウムフェライト系酸化物からなる正極材料を構
成要素とするリチウムイオン二次電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001233197A JP3914981B2 (ja) | 2001-08-01 | 2001-08-01 | 立方晶岩塩型リチウムフェライト系酸化物およびその製造方法 |
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JP2003048717A true JP2003048717A (ja) | 2003-02-21 |
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JP2001233197A Expired - Lifetime JP3914981B2 (ja) | 2001-08-01 | 2001-08-01 | 立方晶岩塩型リチウムフェライト系酸化物およびその製造方法 |
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JP (1) | JP3914981B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005063673A (ja) * | 2003-08-08 | 2005-03-10 | Sanyo Electric Co Ltd | 非水電解質二次電池 |
JP2007165027A (ja) * | 2005-12-10 | 2007-06-28 | Sakai Chem Ind Co Ltd | リチウム二次電池用正極活物質とリチウム二次電池 |
JP2012030988A (ja) * | 2010-07-28 | 2012-02-16 | Tayca Corp | 鉄含有チタン酸リチウムの製造方法 |
KR101617836B1 (ko) | 2015-02-05 | 2016-05-04 | 한국화학연구원 | 이차전지용 탄소 코팅된 전극소재 및 그 제조 방법 |
-
2001
- 2001-08-01 JP JP2001233197A patent/JP3914981B2/ja not_active Expired - Lifetime
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