JP2003039476A - 成形体、成形体の製造方法および流体機器用ケーシング - Google Patents

成形体、成形体の製造方法および流体機器用ケーシング

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JP2003039476A
JP2003039476A JP2001234582A JP2001234582A JP2003039476A JP 2003039476 A JP2003039476 A JP 2003039476A JP 2001234582 A JP2001234582 A JP 2001234582A JP 2001234582 A JP2001234582 A JP 2001234582A JP 2003039476 A JP2003039476 A JP 2003039476A
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JP2001234582A
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Naoya Kishi
直哉 岸
Naoki Nishioka
直樹 西岡
Tomoo Sugawara
智雄 菅原
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Zeon Corp
Original Assignee
Nippon Zeon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】複雑な温度制御をすることなしに、空孔の存在
量を一定レベル以下に抑制した成形不良のない、厚肉部
を有する成形体を製造することができる成形体の製造方
法を提供すること。 【解決手段】 厚さ10mm以上の厚肉部を有する成形
体を製造する方法であって、温度70℃以下に設定され
た金型内で、ルテニウムカルベン錯体の存在下にノルボ
ルネン系モノマーを塊状重合させることを特徴とする成
形体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば流体機器
用ケーシングなどのように、複雑形状であって、厚み1
0mm以上の厚肉部を有する成形体、およびその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】ノルボルネン系モノマーをメタセシス触
媒により金型内で塊状重合させる反応成形法(RIM=
リアクション・インジェクション・モールディング、R
TM=レジン・トランスファー・モールディングなど)
は、たとえば特公平3−37568号公報などで公知の
技術である。このような反応成形法によれば、熱可塑性
樹脂の射出成形法と比較して、簡易な金型・成形装置で
大型の成形体を得ることができるため、広範な応用が可
能として注目されている。
【0003】近年、このような反応成形法により、たと
えば流体機器用ケーシングなどの機械強度が要求される
成形体を成形する要請がある。この種の成形体がたとえ
ば厚み10mm以上の厚肉部を有する場合、該厚肉部を
成形不良なく成形する技術が必要である。
【0004】厚肉部を有する成形体を成形する技術とし
て、種々の提案がなされている。
【0005】たとえば、特公平7−29321号公報で
は、ノルボルネン系モノマーを密閉型の金型内に充填
(本ショット)した後、保圧(二次ショット)工程を設
けることにより、成形体の厚肉部に発生しやすいヒケを
防止する方法が開示されている。この公報では、ノルボ
ルネン系モノマーを塊状重合させるためのメタセシス触
媒として、モリブデン系やタングステン系などの公知の
メタセシス触媒を使用する旨が記載されており、実施例
ではモリブデン系触媒が使用されている。
【0006】しかしながら、特公平7−29321号公
報記載のメタセシス触媒は触媒活性が低く、しかも該触
媒の他にアルコールなどの低沸点副成分(活性助剤)を
必要とするので、成形体内部に空孔を生じ易く、特に蓄
熱しやすい厚肉部では顕著であった。したがって、この
公報記載の技術では、塊状重合後の成形体に生じる空孔
の量を一定レベル以下に抑制することは困難であった。
【0007】また、特許2720062号公報では、密
閉型の金型内に充填する際のノルボルネン系モノマーの
温度を調整したり、金型内で硬化した成形体全体を均一
に冷却していくなどして、塊状重合後の成形体に空孔が
生じることを防止する方法が開示されている。この公報
でも、メタセシス触媒として、モリブデン系、タングス
テン系、タンタル系などの公知のメタセシス触媒を使用
する旨が記載されており、実施例ではモリブデン系触媒
が使用されている。この公報記載の技術では、比較的多
量の触媒と、活性助剤とを使用するものではあるが、塊
状重合後の成形体に生じる空孔の量は若干低減される傾
向にある。
【0008】しかしながら、特許2720062号公報
記載の技術によっても、依然として、空孔の量を一定レ
ベル以下に低減させることは困難であった。これに加
え、この公報記載の技術では工程の制御が複雑になる上
に、装置が大型化する傾向もあった。
【0009】これに対し、特開2000−290382
号公報では、ノルボルネン系モノマーを開口型の引抜金
型内に供給し、該引抜金型内で重合硬化させつつ、成形
体を前記開口から外部へ連続的に引き抜くことにより、
20mm程度の厚肉部を有する長尺の連続成形体を成形
する方法が開示されている。この公報では、メタセシス
触媒として、ルテニウムカルベン錯体を使用することが
必須である。ルテニウムカルベン錯体は触媒活性が高
く、しかもアルコールなどの低沸点副成分を必要とせず
に比較的少量の触媒量でノルボルネン系モノマーの塊状
重合を行うことができる。
【0010】しかしながら、特開2000−29038
2号公報記載の技術では、金型温度が比較的高温(実施
例では80℃)に保持された金型内にノルボルネン系モ
ノマーの供給を行うことから、たとえ高触媒活性のルテ
ニウムカルベン錯体の存在下でノルボルネン系モノマー
を塊状重合させても、該高温に保持された金型壁面に接
する外周部分から重合固化が始まりやすく、中心部分の
固化が遅れやすい。このため、成形体内部に空孔を生
じ、成形不良となり易かった。しかもこの公報記載の技
術は、熱可塑性樹脂の成形方法の一例である押出成形に
類似するため、成形体の引き抜き方向に対する直交方向
に沿った断面形状が変化しない形状(たとえば断面H型
や断面L型など)を持つ長尺の連続成形体を成形するこ
とはできるが、断面形状が変化する複雑な形状を持つ成
形体を成形することはできず、また、該複雑な形状を持
つ成形体を成形するための技術が示唆されているとはい
えない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、空孔
の存在量を一定レベル以下に抑制した成形不良のない、
厚肉部を有する成形体および該成形体の一例としての流
体機器用ケーシングを提供することである。また、本発
明は、複雑な温度制御をすることなしに、空孔の存在量
を一定レベル以下に抑制した成形不良のない、厚肉部を
有する成形体を製造することができる成形体の製造方法
を提供することも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、所定温度
以下に保持された金型内で、高触媒活性のルテニウムカ
ルベン錯体の存在下に、ノルボルネン系モノマーを塊状
重合させることにより、たとえばポンプなどの流体機器
用ケーシングなどの、厚肉部を有する成形体を、実質的
に空孔を発生させることなく製造することができること
を見出し、本発明を完成させた。
【0013】すなわち、本発明に係る成形体の製造方法
は、厚さ10mm以上の厚肉部を有する成形体を製造す
る方法であって、温度70℃以下に設定された金型内
で、ルテニウムカルベン錯体の存在下にノルボルネン系
モノマーを塊状重合させることを特徴とする。ここでい
う「厚肉部」は、成形体全体に付与されていても良い
し、成形体の一部分に付与されていても良い。
【0014】本発明で用いる金型の形態は、特に限定さ
れず、たとえば特開2000−290382号公報に記
載されているような開口型の引抜金型であってもよい
し、あるいはたとえば雄型と雌型とを分割面で重ね合わ
せて内部に空隙部(キャビティ)が形成される密閉型で
あってもよいが、雄型と雌型とで構成される密閉型であ
ることが好ましい。
【0015】ここでいう「密閉型」は、必ずしも雄型と
雌型との2つの型で構成されている必要はなく、第3の
型を含むものであってもよい。このような密閉型とする
ことにより、厚さ10mm以上の厚肉部を有し、かつ複
雑な形状を持つ成形体を製造することが可能となる。
【0016】ここでいう「複雑な形状」とは、成形体の
一方向(たとえば長手方向)に対する直交方向(たとえ
ば幅方向)に沿った断面形状が場所によって変化する形
状をいう。このような複雑な形状を持つ成形体として
は、特に限定されないが、流体機器用ケーシング、住宅
設備関連部材(たとえば洗面ボール、浴槽、浴槽の壁な
ど)、建設機械や農業機械などのボディーカバー、ピッ
トや下水管などの土木資材、マンホールの蓋などが例示
される。ここでいう「流体機器用ケーシング」とは、ポ
ンプ、コンプレッサ、ブロワもしくはその他の流体機器
用のケーシングとして用いることが可能であり、一般に
ケーシングと指称されるもののみでなく、グランドカバ
ー等も含む広い概念で用いられ、内部を流れる流体の流
体圧が作用する全ての部品を含む。
【0017】本発明で用いる金型が雄型と雌型とで構成
される密閉型である場合に、該金型を構成する雄型と雌
型との温度差を30℃以内に設定することが好ましい。
【0018】本発明では、金型内へのノルボルネン系モ
ノマーの充填を5〜300秒で行うことが好ましい。
【0019】本発明に係る成形体は、ルテニウムカルベ
ン錯体の存在下に塊状重合されたポリノルボルネン系樹
脂からなり、厚さ10mm以上の厚肉部を有する成形体
であって、直径0.3mm以上の空孔の存在量が0.1
(個/cm)以下であることを特徴とする。
【0020】本発明に係る成形体は、透明性が高いた
め、成形体内部に直径0.3mm以上の空孔が存在する
場合、目視で表面から確認することができる。空孔の存
在数は、簡易的には目視で計数し、成形体の体積で除す
ることにより、空孔の存在量を算出することができる。
空孔の存在数を目視で計数することが困難な場合は、超
音波を利用した検出機を用いて計数しても良い。
【0021】本発明に係る成形体の一例としての流体機
器用ケーシングは、ルテニウムカルベン錯体の存在下に
塊状重合されたポリノルボルネン系樹脂からなり、厚さ
10mm以上の厚肉部を有する流体機器用ケーシングで
あって、直径0.3mm以上の空孔の存在量が0.1
(個/cm)以下であることを特徴とする。
【0022】このような本発明に係る成形体およびこの
成形体の一例としての流体機器用ケーシングは、たとえ
ば上述した方法、すなわち温度70℃以下に設定された
金型内でルテニウムカルベン錯体の存在下にノルボルネ
ン系モノマーを塊状重合させることにより、製造するこ
とができる。
【0023】
【発明の作用および効果】本発明に係る成形体の製造方
法では、高触媒活性のルテニウムカルベン錯体の存在下
にノルボルネン系モノマーを塊状重合させるために用い
る金型の温度を、比較的低温である70℃以下に設定す
る。すなわち本発明では、複雑な温度制御をすることな
しに、ルテニウムカルベン錯体の存在下にノルボルネン
系モノマーを塊状重合させて、厚さ10mm以上の厚肉
部を有する成形体を成形する。このため、得られる成形
体での、空孔の存在量を一定レベル以下に抑制し、実質
的に空孔を有しないようにすることができる。
【0024】ここでいう「空孔」とは、成形体を外部か
ら観察したときに、目視により判別可能な孔をいい、通
常、直径0.3mm以上の空孔は目視により判別可能で
ある。また、「実質的に空孔を有しない」とは、直径
0.3mm以上の空孔の存在量が、0.1(個/cm
)以下であることをいう。
【0025】すなわち、本発明によれば、得られる成形
体での、直径0.3mm以上の空孔の存在量を、0.1
(個/cm)以下にすることができる。
【0026】また、本発明に係る方法は、単に所定厚さ
以上の厚肉部を有する長尺の連続成形体のみならず、所
定厚さ以上の厚肉部を有し、かつ複雑な形状を持つ成形
体の製造に適用されても、複雑な温度制御をすることな
しに、得られる成形体での、空孔の存在量を一定レベル
以下に抑制し、実質的に空孔を有しないようにすること
ができる。
【0027】ところで、厚さ10mm以上の厚肉部を有
する成形体をノルボルネン系モノマーの塊状重合により
成形する場合には、塊状重合の均一性が特に重要とな
る。そこで、本発明では、金型を雄型と雌型とで構成す
る場合に、該雄型と該雌型との温度差を30℃以内に設
定することにより、金型壁面に接する成形体の外周部分
と、金型壁面から離れた成形体の中心部分との間で、塊
状重合が不均一となることが防止され、得られる成形体
に歪みやクラックなどの成形不良を生じさせることはな
い。
【0028】また、本発明では、金型内へのノルボルネ
ン系モノマーの充填を5秒以上で行うことにより、ノル
ボルネン系モノマー中に泡が混入し難く、これにより成
形体に空孔を生じるおそれがなくなる。また、ノルボル
ネン系モノマーの充填を300秒以下で行うことによ
り、充填不良を生じ難く、これにより成形体にウェルド
を生じるおそれがない。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を説明す
る。
【0030】ノルボルネン系モノマー 本発明で使用可能なノルボルネン系モノマーは、ノルボ
ルネン環構造を有する二環若しくは三環以上の多環炭化
水素化合物(以下、ノルボルネン類ともいう)であり、
置換基を有するものであってもよい。
【0031】このようなノルボルネン系モノマーとして
は、たとえば、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチ
ルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボ
ルネン、塩素化ノルボルネン、エチリデンノルボルネ
ン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノル
ボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネ
ン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボ
ルネン、ピリジルノルボルネン、ノルボルネンのナヂッ
ク酸無水物、ノルボルネンのナヂック酸イミドなどの二
環ノルボルネン類;ジシクロペンタジエン(シクロペン
タジエンの二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエンや
そのアルキル、アルケニル、アルキリデンまたはアリー
ル置換体などの三環ノルボルネン類;ジメタノヘキサヒ
ドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそ
のアルキル、アルケニル、アルキリデンまたはアリール
置換体などの四環ノルボルネン類;トリシクロペンタジ
エン(シクロペンタジエンの三量体)などの五環ノルボ
ルネン類、ヘキサシクロヘプタデセンなどの六環ノルボ
ルネン類;ジノルボルネン、二個のノルボルネン環を炭
化水素鎖またはエステル基などで結合した化合物、これ
らのアルキルまたはアリール置換体などのノルボルネン
環を含む化合物などが挙げられる。
【0032】このようなノルボルネン系モノマーに、シ
クロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロ
ドデセンなどの単環シクロオレフィンおよび置換基を有
するそれらの誘導体を併用して用いて、共(塊状)重合
させることもできる。
【0033】ノルボルネン系モノマーは、単独で用いて
も、二種以上を混合して用いてもよい。二種以上を用い
る場合には、熱可塑性樹脂となる1つの二重結合を有す
るノルボルネン系モノマーと、熱硬化性樹脂となる複数
の二重結合を有するノルボルネン系モノマーを適宜組合
せると、種々の物性を有するポリノルボルネン系樹脂か
らなる成形体を得ることができる。また、ノルボルネン
系モノマーを単独で使用する場合と比較して、二種以上
を併用すると凝固点降下により、凝固点温度が高いモノ
マーでも液状として取扱えるという塊状重合時の利点が
ある。
【0034】これらのノルボルネン系モノマーの中でも
ジシクロペンタジエンを主たる成分として用いることが
好ましく、80重量%以上がジシクロペンタジエンであ
ることが更に好ましい。ジシクロペンタジエンは塊状重
合時の活性に優れ、得られるポリノルボルネン系樹脂か
らなる成形体の耐熱性が高いからである。ノルボルネン
系モノマー中、ジシクロペンタジエンは純粋(例えば9
9重量%以上)であってもよく、得られるポリノルボル
ネン系樹脂からなる成形体の機械的強度が優れることか
ら、シクロペンタジエンの三量体を例えば2〜20%の
範囲で含むものであっても良い。
【0035】ルテニウムカルベン錯体 本発明で使用するメタセシス触媒としてのルテニウムカ
ルベン錯体とは、ルテニウム原子を中心金属とし、この
ルテニウム原子にカルベン化合物が結合し、ルテニウム
原子(Ru)とカルベン炭素(>C:)が直接に結合し
た構造(Ru=C)を錯体中に有するものである。カル
ベン化合物とは、カルベン炭素すなわちメチレン遊離基
を有する化合物の総称である。
【0036】ルテニウムカルベン錯体の中では、少なく
とも2つのカルベン炭素がルテニウム金属原子に結合し
ており、該カルベン炭素のうち少なくとも一つには、ヘ
テロ原子を含む基が結合しているルテニウムカルベン錯
体が特に好ましい。ここで、ヘテロ原子とは、周期律表
第15族及び第16族の原子を意味し、具体的には、
N、O、P、S、As、Se原子等を挙げることができ
る。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる
観点から、N、O、P、S原子等が好ましく、N原子が
特に好ましい。ヘテロ原子含有カルベン化合物の中で
は、カルベン炭素には、好ましくはその両側に、ヘテロ
原子が隣接して結合しているものが好ましく、カルベン
炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含むヘテロ環が構
成されているものが更に好ましく、当該ヘテロ環は二重
結合を含まない飽和環構造となっていることが特に好ま
しい。さらに、カルベン炭素に隣接するヘテロ原子には
嵩高い置換基を有していることが好ましい。以上のよう
な好ましい構造を持つカルベン化合物が結合したルテニ
ウムカルベン錯体をメタセシス触媒として使用した場合
に、塊状重合の活性が特に高く、ポリノルボルネン系樹
脂からなる成形体の生産効率が特に良くなる。
【0037】好ましいルテニウムカルベン錯体の具体例
は、WO97/06185、特表平10−508891
号公報、特開平11−322953号公報などに開示さ
れるが、より具体的には、ベンジリデン(1,3−ジメ
シチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘ
キシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−
ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチ
ル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチル
ホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン
(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾー
ル−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)
ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1
−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデ
ン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジク
ロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−
ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシ
クロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベン
ジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,
4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1
H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニ
ウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒド
ロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)
(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリ
ド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン
−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド等のヘ
テロ原子含有カルベン化合物と中性の電子供与性化合物
が結合したルテニウムカルベン錯体;ベンジリデンビス
(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリ
デン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデンビス(1,
3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデ
ン)ルテニウムジクロリド等の2つのヘテロ原子含有カ
ルベン化合物が結合したルテニウムカルベン錯体;等が
挙げられる。
【0038】本発明のルテニウムカルベン錯体の使用量
は、ルテニウムカルベン錯体中の金属ルテニウム/ノル
ボルネン系モノマーのモル比として、通常1:1,00
0〜1:2,000,000、好ましくは1:2,00
0〜1,000,000、より好ましくは1:5,00
0〜1:500,000である。これが小さすぎれば塊
状重合時の活性が十分でなく、大きすぎれば塊状重合の
活性が高すぎて反応ムラや金型への充填不良を生じやす
くなる。
【0039】本発明のルテニウムカルベン錯体は、必要
に応じて、少量の不活性溶剤に溶解して使用することが
できる。かかる不活性溶剤としては、例えば、ペンタ
ン、ヘキサン、ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素溶
剤;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘ
キサン、デカヒドロナフタレン、トリシクロデカン、シ
クロオクタンなどの脂環式炭化水素溶剤;ベンゼン、ト
ルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤;ジエチル
エ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶剤な
どを使用することができる。また、触媒としての活性を
落とさないようなものであれば、液状の老化防止剤、可
塑剤やエラストマーを溶剤として用いても良い。これら
の溶剤の中では、工業的に汎用されている芳香族炭化水
素溶剤、脂肪族炭化水素溶剤や脂環式炭化水素溶剤が好
ましい。
【0040】その他の成分 本発明では、ルテニウムカルベン錯体の存在下にノルボ
ルネン系モノマーを塊状重合させるが、これらの成分の
他に本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を加
えて塊状重合しても良い。
【0041】塊状重合時に、例えば着色剤や、難燃剤、
剛性付与剤、低熱膨張化剤、増量剤、軽量化剤、導電付
与剤および帯電防止剤などの無機物質を添加することが
できる。これらの無機物質により、各種色調を有する成
形体とすることも可能である。
【0042】塊状重合時に、例えば難燃剤、耐衝撃改良
剤などの各種の有機物質を添加することもできる。ま
た、得られる成形体の機械的強度を改良すること等を目
的として、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエス
テル樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレン
サルファイド、フェノール系熱硬化性樹脂等の微粒子;
アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の
単繊維のチョップ等を添加しても良い。
【0043】得られる成形体の耐衝撃性改良のほか、ノ
ルボルネン系モノマーの粘度を調製することを目的とし
て、塊状重合時に各種のエラストマーを添加することも
できる。エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポ
リブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン
共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン
ブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−
スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−
ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニ
ル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などがあ
げられる。エラストマーは、通常、ノルボルネン系モノ
マーを含む反応溶液に予め溶解させて使用する。エラス
トマーを溶解させることにより、モノマーを含む反応溶
液が低粘度である場合には、その粘度を適度なものに調
節することができる。エラストマーの使用量は、ポリノ
ルボルネン系樹脂100重量部に対し、通常、0.5〜
20重量部、好ましくは1〜15重量部、より好ましく
は2〜10重量部である。エラストマーの使用量が過度
に少ないと、溶液粘度が低くなり、反応溶液の操作性の
改良効果がなくなり、また、得られる成形体への耐衝撃
性付与効果が小さい。逆に過度に多くなると反応溶液の
粘度が高くなり過ぎて、塊状重合時の操作性が悪くなっ
たり、得られる成形体の熱変形温度や曲げ弾性率が低く
なる傾向がある。
【0044】更に、ノルボルネン系モノマーの保存安定
性を改良することを目的としてノルボルネン系モノマー
に可溶性の酸化防止剤を添加しておくことが好ましい。
また、得られる成形体の保存安定性や耐候性を改良する
ことを目的として、ノルボルネン系モノマーに可溶性の
酸化防止剤、紫外線吸収剤や耐候安定剤添加剤を、ノル
ボルネン系モノマーに予め添加、または反応原液の塊状
重合時までに添加することも好ましい。酸化防止剤や耐
候安定剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤や
リン系酸化防止剤等がある。酸化防止剤の中では、ヒン
ダードフェノール系酸化防止剤が効果が優れるので好ま
しい。このようなヒンダードフェノール系酸化防止剤の
例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェ
ノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノー
ル、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス−
〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’
−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2,
2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェ
ノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−
t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス
(2,6−ジ−t−ブチルフェノ−ル)、1,3,5−
トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブ
チル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5
−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロ
キシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1
H、3H、5H)トリオン等が挙げられる。紫外線吸収
剤としては各種の油溶性染料が挙げられる。酸化防止
剤、耐候安定剤及び紫外線吸収剤の添加量は、通常は、
50〜10,000ppm以下であるが、10,000
ppmを越えて添加しても良い。
【0045】なお、必要に応じて、ノルボルネン系モノ
マーの塊状重合の開始を遅らせる成分(遅延剤)を用い
ることも好ましい。このような遅延剤の具体的な例とし
ては、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキ
シルヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ト
リフェニルホスファイト、n−ブチルホスフィンなどの
リン原子を含むルイス塩基化合物が挙げられ、これらの
中では、n−ブチルホスフィンなどのRCH
(R、R、Rはアルキル基、
アリール基など)で表される化合物が特に好ましい。異
なる遅延剤の例としては、n−ブチルアミン、ピリジ
ン、4−ビニルピリジン、アセトニトリル、エチレンジ
アミン、N−ベンジリデンメチルアミン、ピラジン、ピ
ペリジン、イミダゾールなどの窒素原子を含むルイス塩
基化合物が挙げられ、これらの中では、n−ブチルアミ
ンなどの一級アミンが好ましい。さらに異なる遅延剤の
例としては、ビニルノルボルネン、プロペニルノルボル
ネン、イソプロペニルノルボルネンなどのオレフィン化
合物が挙げられる。以上の各種の遅延剤の添加量は、メ
タセシス触媒(遷移金属原子)1モルに対して、好まし
くは0.1〜1000モルの割合である。
【0046】塊状重合 本発明では、メタセシス触媒としてのルテニウムカルベ
ン錯体の存在下に、液状のノルボルネン系モノマーが、
一挙にポリノルボルネン系樹脂からなる成形体に塊状重
合される。この塊状重合反応は急激なものであり、メタ
セシス触媒としてルテニウムカルベン錯体を使用する本
発明では、重合反応速度の温度依存性が大きいため、一
旦発熱が開始して温度が上昇すると、重合反応速度が極
めて速くなり、その結果、発熱時の温度の立ち上がり
(温度上昇カーブ)が急となる。最高昇温速度は、通常
10℃/秒以上である。
【0047】本発明において、ノルボルネン系モノマー
を塊状重合させるには、たとえば、レジントランスファ
ーモールディング(RTM)法や反応射出成形(RI
M)法などを用いることができる。
【0048】RTM法に用いるRTM機は、一般に、反
応原液タンク、触媒配合液タンク、計量ポンプ、スタテ
ィックミキサーなどの静的混合機またはスクリューやア
ジテータなどの動的混合機などからなり、上述したノル
ボルネン系モノマーと触媒配合液を計量ポンプにより1
000:1から10:1の容量比でスタティックミキサ
ーに送り込み、次いで所定温度に設定された金型内に充
填し、そこで即座に塊状重合させて成形体を得る。本発
明のように、メタセシス触媒としてルテニウムカルベン
錯体を用い、RTM機を使用した好ましい成形法は、た
とえば、ノルボルネン系モノマーからなる反応原液と、
ルテニウムカルベン錯体を溶媒に溶解させた触媒配合液
との二液を用意し、これらを混合し金型内に充填して成
形するものである。
【0049】RIM法に用いるRIM機は、二種類以上
の反応原液をミキシングヘッドに送り込み衝突エネルギ
ーによって混合させ、次いで所定温度の金型内に充填
し、そこで即座に塊状重合させて成形体を得る。本発明
のように、メタセシス触媒としてルテニウムカルベン錯
体を用い、RIM機を使用した好ましい成形法は、たと
えば、ノルボルネン系モノマーを二つの部分(A液およ
びB液の二液)に分け、三液目としてルテニウムカルベ
ン錯体を溶媒に溶解させた液(C液)を用意し、これら
の三液をミキシングヘッドに送り込み、衝突混合によっ
て混合して成形するものである。
【0050】なお、反応原液には、必要に応じて、ガラ
ス繊維などの補強材などの添加剤を配合し、成形体の特
性を改質することもできる。
【0051】成形体の製造 メタセシス触媒とノルボルネン系モノマーとの反応原液
の調製には、上述した各種混合機などが使用可能であ
る。その他の成分を、どこの工程で混合するかは特に限
定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマーに溶解
できる成分は、反応原液を調製する前までに混合してお
くことが好ましく、ノルボルネン系モノマーに不溶性の
成分は、塊状重合が始まって粘度が急激に上昇する前に
混合しておくことも好ましい。
【0052】塊状重合反応が開始する前の、ノルボルネ
ン系モノマーまたは反応原液の温度は、特に限定され
ず、室温(20℃程度)でも良いし、塊状重合の活性を
上げるため20〜70℃の間で昇温させても良い。ただ
し、成形方法によっては、塊状重合の開始を遅らせるた
めに、ノルボルネン系モノマーまたは反応原液を室温以
下に冷却することも好ましい。冷却する場合の温度は、
例えば−20〜20℃の範囲である。
【0053】本発明では、ノルボルネン系モノマーの塊
状重合を行う際の金型の温度を70℃以下に設定するこ
とが必須である。これにより、製造される厚さ10mm
以上の厚肉部を有する成形体での、空孔の存在量を一定
レベル以下に抑制し、実質的に空孔を有しないようにす
ることができる。具体的には、得られる成形体での、直
径0.3mm以上の空孔の存在量を、0.1(個/cm
)以下、好ましくは0.01(個/cm)以下
にすることができる。
【0054】本発明では、金型の温度は70℃以下であ
れば、特に限定されないが、成形体に発生する空孔の量
をより一層低減させるためには、60℃以下に設定する
ことが好ましく、より好ましくは50℃以下に設定す
る。
【0055】本発明で用いる金型の形態は、特に限定さ
れないが、本実施形態では、割型構造、すなわち雄型と
雌型とで構成される密閉型の金型を用い、それらの空隙
部に反応原液をバッチ式にて充填して塊状重合を行な
う。雄型と雌型とは、目的とする成形体の形状にあった
空隙部を形成するように作製される。金型の形状大きさ
には特に制限はない。また、金型の材質も特に限定され
ず、鋳鉄、鉄、ステンレス、アルミニウム、ニッケル電
鋳などの金属に限らず、ポリエチレン、ポリスチレン、
ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ウレタン、エポキ
シ、フェノール、ポリエステルなど合成樹脂、あるいは
その他の材質であってもよい。ノルボルネン系モノマー
の塊状重合による成形は、比較的低圧での成形が可能で
あり、必ずしも高剛性の金型を用いる必要はないからで
ある。
【0056】本実施形態では、金型を構成する雄型と雌
型との温度差を30℃以内に設定することが好ましく、
より好ましくは20℃以内、さらに好ましくは10℃以
内に設定する。雄型と雌型との温度差をこの範囲内で設
定することにより、得られる成形体に歪みやクラックな
どの成形不良を生じさせることはない。
【0057】なお、型締圧力は通常0.1〜100kg
/cmの範囲内である。
【0058】ノルボルネン系モノマーとメタセシス触媒
とを混合して金型の空隙部に充填すると、通常は数分で
塊状重合が開始、温度が上昇し、重合反応が進行する。
【0059】本発明では、金型内へのノルボルネン系モ
ノマーの充填を5〜300秒で行うことが好ましく、よ
り好ましくは10〜150秒で行う。金型内への充填を
この範囲内で行うことにより、ノルボルネン系モノマー
中に泡が混入し難く、これにより成形体に空孔を生じる
おそれがなくなり、また充填不良を生じ難く、これによ
り成形体にウェルドを生じるおそれがなくなる。
【0060】重合時間は適宜選択すればよいが、通常、
10秒〜20分、好ましくは5分以内である。
【0061】なお、成形後に生ずる成形体のヒケを防止
するために、さらに、金型内に反応原液を供給した後、
保圧をかけてもよい。ここでいう「保圧」とは、金型の
キャビティ内に反応原液を供給した後に、ヒケ容積に相
当する反応原液を追加供給する際に必要な圧力をいう。
【0062】成形体 ポリノルボルネン系樹脂からなる成形体は、割型構造の
金型の場合は塊状重合終了後に、必要に応じて一定時間
冷却後に、金型を開いてエアーエジェクターまたは金型
に設けた脱型装置により脱型することで得られる。
【0063】本発明の方法によって得られる成形体は、
ルテニウムカルベン錯体の存在下に塊状重合されたポリ
ノルボルネン系樹脂からなり、厚さ10mm以上、好ま
しくは20mm以上、より好ましくは25mm以上の厚
肉部を有し、しかも直径0.3mm以上の空孔の存在量
が、0.1(個/cm)以下、好ましくは0.01
(個/cm)以下である。
【0064】また、本発明の方法によって得られる成形
体は、ウェルドも実質的に有しない。ここでいう「ウェ
ルド」とは、樹脂の流れが二つ以上合流する部分に現れ
る毛髪状の線をいう。
【0065】さらに、本発明に係る成形体の製造方法
は、所定厚さ以上の厚肉部を有し、かつ複雑な形状を持
つ成形体の製造に適用されても、複雑な温度制御をする
ことなしに、得られる成形体での、空孔の存在量を一定
レベル以下に抑制し、実質的に空孔を有しないようにす
ることができる。
【0066】以下の説明では、厚さ10mm以上の厚肉
部を有し、かつ複雑な形状を持つ成形体として、ポンプ
用ケーシングを例に採り、説明する。
【0067】図1は成形体の一例であるケーシングを用
いたポンプの断面図である。図1に示すように、ポンプ
1は、遠心ポンプの一種であり、ケーシング10の流路
6内に羽根車7が回転自在に装着してある。羽根車7は
回転軸8の端部に固定され、回転軸8の回転と共に回転
するようになっている。ケーシング10は、吸込側フラ
ンジ2及び吐出側フランジ3が一体に形成されたケーシ
ング本体4と、グランドカバー5とで構成されている。
これらケーシング本体4とグランドカバー5とは、ボル
ト9によって連結され、内部に羽根車7が収容された流
路6を構成するようになっている。グランドカバー5と
回転軸8との間の隙間から流体が漏洩するのを防止する
ため、これらの隙間にはパッキン11が装着してあり、
これらパッキン11をパッキン押え12で保持するよう
になっている。
【0068】このようなポンプ1のケーシング10(ケ
ーシング本体4とグランドカバー5)が、本発明に係る
成形体の一例である。本実施形態では、吸込側フランジ
2、吐出側フランジ3およびグランドカバー5は、厚さ
10mm以上の厚肉部を有しており、複雑な形状を持
つ。
【0069】
【実施例】以下に実施例および比較例を挙げて、本発明
についてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実
施例に限定されるものではない。特に断りのない限り、
「部」、「%」は重量基準である。
【0070】実施例1 まず、約10%のシクロペンタジエン三量体を含むジシ
クロペンタジエンからなるノルボルネン系モノマー30
0gを、それぞれ2つのタンクに入れた(A液およびB
液)。A液及びB液とは別に、ベンジリデン(1,3−
ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシク
ロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド(Or
g.Lett.1999年、1巻、953頁の記載に基
づいて合成したもの)62mgをトルエン3.6mlに
溶解したC液(ルテニウム錯体/ノルボルネン系モノマ
ー=1/10000(mol/mol))を調製した。
【0071】次いで、これらの三液をミキシングヘッド
に送り込み、衝突混合(衝突圧60kgf/cm
させた後、雌型40℃、雄型40℃に加熱された金型の
キャビティ内に、15秒かけて充填した。ピーク温度ま
での時間は約50秒であった。重合反応終了後に金型を
室温で放置し、十分に金型が冷えてから成形体を取り出
した。
【0072】得られた成形体は、厚さ30mmの厚肉部
を有し、複雑な形状を持つ、図1に示すケーシング本体
4であり、ほぼ透明であった。
【0073】この成形体の外観を目視にて観察したとこ
ろ、直径0.3mm以上の空孔の存在量は0(個/cm
)であった。また成形体の表面を目視にて観察した
ところ、ウェルドもなく、綺麗な厚肉成形体であった。
【0074】実施例2 雌型60℃、雄型20℃とした以外は、実施例1と同様
にして成形体を得た。得られた成形体の外観を目視にて
観察したところ、直径0.3mm以上の空孔の存在量は
0.005(個/cm)であった。また成形体の表
面を目視にて観察したところ、ウェルドもなく、しかも
歪みやクラックなども生じておらず、綺麗な厚肉成形体
であった。
【0075】実施例3 金型のキャビティ内へのモノマー充填時間を3秒とした
以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた
成形体の外観を目視にて観察したところ、直径0.3m
m以上の空孔の存在量は0.05(個/cm)であ
った。また成形体の表面を目視にて観察したところ、ウ
ェルドもなく、綺麗な厚肉成形体であった。
【0076】実施例4 金型のキャビティ内へのモノマー充填時間を420秒と
した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得ら
れた成形体の外観を目視にて観察したところ、直径0.
3mm以上の空孔の存在量は0.02(個/cm
であった。また成形体の表面を目視にて観察したとこ
ろ、若干のウェルドを生じていたが、問題はなく、綺麗
な厚肉成形体であった。
【0077】比較例1 雌型110℃、雄型75℃とした以外は、実施例1と同
様にして成形体を得た。得られた成形体の表面を目視に
て観察したところ、ウェルドはなかった。しかし、成形
体の外観を目視にて観察したところ、直径0.3mm以
上の空孔の存在量は0.3(個/cm)であった。
【0078】比較例2 まず、実施例1と同様のノルボルネン系モノマーを、そ
れぞれ2つのタンクに入れた。そして、一方のタンクに
は、モノマーに対し、ジエチルアルミニウムクロリド
(DEAC)を40ミリモル濃度、n−プロパノールを
44ミリモル濃度、四塩化ケイ素を20ミリモル濃度と
なるように添加して150gのA液を得た。他方のタン
クには、モノマーに対し、トリ(トリデシル)アンモニ
ウムモリブデートを10ミリモル濃度となるように添加
して150gのB液を得た。
【0079】次いで、これらの二液をスタティックミキ
サーに送り込み、混合させた後、実施例1と同様の金型
のキャビティ内に充填して塊状重合させ、成形体を得
た。
【0080】得られた成形体は、実施例1と同様の図1
に示すケーシング本体4であったが、黒色を帯びていた
ために、内部を見通すことができなかった。このため、
成形体に空孔がどの程度存在するかどうかは、0.5〜
10メガヘルツの超音波を成形体に流し、反射波の乱れ
を検出することにより行った。その結果、成形体には、
直径0.3mm以上の空孔が0.15(個/cm
存在しており、また成形体表面にウェルドも確認され
た。
【0081】考察 以上の実施例1〜4および比較例1〜2より、以下のこ
とが理解される。すなわち、高触媒活性のルテニウムカ
ルベン錯体を用いても、金型の温度が70℃を超えると
(比較例1)、直径0.3mm以上の空孔の存在量が
0.1(個/cm)を超えるが、金型の温度が70
℃以下であると(実施例1〜4)、空孔の存在量が0.
1(個/cm)以下に抑制される。低触媒活性のモ
リブデン系触媒を用いた場合(比較例2)には、金型の
温度を70℃以下にし、雄型と雌型との温度差を30℃
以下にして、モノマー充填時間を5〜300秒として
も、空孔の存在量が0.1(個/cm)を超え、ウ
ェルドも生じる。なお、金型の温度が70℃以下であっ
ても、雄型と雌型の温度差が大きすぎたり(実施例
2)、モノマー充填時間が短すぎると(実施例3)、空
孔の存在量が増える傾向にある。また、金型の温度が所
定温度以下であり、雄型と雌型の温度差が所定温度以下
であっても、モノマー充填時間が長すぎると(実施例
4)、ウェルドが生じる傾向にある。
【0082】以上、本発明の実施形態および実施例につ
いて説明してきたが、本発明はこうした実施形態および
実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を
逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得るこ
とは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は成形体の一例であるケーシングを用い
たポンプの断面図である。
【符合の説明】
1… ポンプ 2… 吸込側フランジ 3… 吐出側フランジ 4… ケーシング本体(成形体) 5… グランドカバー(成形体) 6… 流路 7… 羽根車 8… 回転軸 9… ボルト 10… ケーシング(成形体) 11… パッキン 12… パッキン押え
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B29K 45:00 B29K 45:00 (72)発明者 菅原 智雄 神奈川県川崎市川崎区夜光一丁目2番1号 日本ゼオン株式会社総合開発センター内 Fターム(参考) 4F204 AA12 AB04 AB19 AH42 AM32 AM34 AR06 AR11 AR12 EA03 EA04 EB01 EE02 EF02 EK13 EK24 EK26 4F206 AA12 AH42 AM34 AM36 AR064 JA01 JF01 JL02 JQ81 4J032 CA34 CB01 CB03 CC03 CD02 CE06 CG07

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 厚さ10mm以上の厚肉部を有する成形
    体を製造する方法であって、温度70℃以下に設定され
    た金型内で、ルテニウムカルベン錯体の存在下にノルボ
    ルネン系モノマーを塊状重合させることを特徴とする成
    形体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記金型を構成する雄型と雌型との温度
    差を30℃以内に設定する請求項1に記載の成形体の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記金型内へのノルボルネン系モノマー
    の充填を5〜300秒で行う請求項1または2に記載の
    成形体の製造方法。
  4. 【請求項4】 ルテニウムカルベン錯体の存在下に塊状
    重合されたポリノルボルネン系樹脂からなり、厚さ10
    mm以上の厚肉部を有する成形体であって、直径0.3
    mm以上の空孔の存在量が0.1(個/cm)以下
    であることを特徴とする成形体。
  5. 【請求項5】 ルテニウムカルベン錯体の存在下に塊状
    重合されたポリノルボルネン系樹脂からなり、厚さ10
    mm以上の厚肉部を有する流体機器用ケーシングであっ
    て、直径0.3mm以上の空孔の存在量が0.1(個/
    cm)以下であることを特徴とする流体機器用ケー
    シング。
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