JP2003036519A - 六方晶系フェライト粉末及びそれを含む磁気記録媒体 - Google Patents

六方晶系フェライト粉末及びそれを含む磁気記録媒体

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JP2003036519A
JP2003036519A JP2001223101A JP2001223101A JP2003036519A JP 2003036519 A JP2003036519 A JP 2003036519A JP 2001223101 A JP2001223101 A JP 2001223101A JP 2001223101 A JP2001223101 A JP 2001223101A JP 2003036519 A JP2003036519 A JP 2003036519A
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powder
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hexagonal ferrite
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Noboru Jinbo
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Abstract

(57)【要約】 【課題】分散処理が容易でかつ、分散度の良好な六方晶
系フェライト粉末、及びそれを含む走行耐久性及び電磁
変換特性の良好な塗布型磁気記録媒体を提供すること。 【解決手段】Feに対してMnを0.005〜2原子%
含むことを特徴とする六方晶系フェライト粉末。支持体
上に磁性層を有する磁気記録媒体において、磁性層は前
記六方晶系フェライト粉末を含有することを特徴とする
磁気記録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気テープ、磁気デ
ィスク等の磁気記録媒体に関し、特に強磁性粉末と結合
剤を主体とする磁性塗料を支持体上に塗布して磁性層を
形成した塗布型の磁気記録媒体に関連し、短波長領域に
おけるノイズ、出力、C/N、及び保存性が優れた磁気
記録媒体に関する。また、再生に磁気抵抗効果を利用し
たMRヘッドを使用したシステムで使用すると特に好適
である磁性層を含む高密度記録用磁気記録媒体に関連す
る。
【0002】
【従来の技術】塗布型の磁気記録媒体は、ポリエチレン
テレフタレート等の非磁性支持体と、この支持体に、強
磁性粉末を樹脂バインダ液中に均一に分散された磁性塗
料を塗布してなる磁性層とで構成されている。上記磁性
粉末としては従来よりγ−Fe 23等の針状強磁性粉末
が用いられてきたが、近年では記録密度の向上を狙って
六方晶フェライトの超微粒子磁性粉末を用いたものが開
発されており一部実用化も進められている。
【0003】一般的に、磁性粉末の樹脂バインダー液中
での分散挙動を支配する因子としては、磁性粉末粒子同
士の静磁気的相互作用などに起因する凝集の進行、及び
磁性粉末表面とバインダー液との界面化学的相互作用に
起因する分散の進行があげられる。
【0004】バインダー液と粉末表面との界面化学的相
互作用は、粉末の表面積に比例して起こると考えられ
る。特に最近の高密度化に伴う強磁性粉末の微細化によ
り益々分散することが難しくなってきている。
【0005】ところで、六方晶フェライトの微粒子を磁
性粉末に用いる場合は、当該微粒子の形状が板状である
ために磁気的相互作用が大きいこと、及び磁性粉末一つ
一つが単結晶であり多結晶の集合体で形成される従来の
針状粒子に比べ粉末表面の凹凸等の微細構造を取りにく
いことに起因する分散の困難さ、ならびに分散安定性の
欠如が指摘されてきた。このために、塗布して得られる
媒体の表面は高密度記録に十分適した表面精度に仕上が
っていないことが多かった。
【0006】かかる指摘に対し、従来は有機物コートに
よる表面処理等が提案されてきたが十分な効果を見い出
すには至らなかった。また混練処理とサンドミル分散等
を組み合わせても分散性向上、塗膜強度向上及び塗膜の
平滑化に限界があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、分散
処理が容易でかつ、分散度の良好な六方晶系フェライト
粉末、及びそれを含む走行耐久性及び電磁変換特性の良
好な塗布型磁気記録媒体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、Feに
対してMnを0.005〜2原子%含むことを特徴とす
る六方晶系フェライト粉末、及び支持体上に磁性層を有
する磁気記録媒体において、磁性層は上記六方晶系フェ
ライト粉末を含有することを特徴とする磁気記録媒体に
より達成できる。本願発明の好ましい態様は、以下の通
りである。 (1)Fe/Baが11.1〜12.9原子%であり、
かつCo/Feが0.1〜2原子%、Zn/Feが0.
3〜5原子%及びNb/Feが0.3〜3原子%である
バリウムフェライトである上記六方晶系フェライト粉
末。 (2)Al、Si、Ti、Zr、Sn、Sb、Zn、及
びYを含む希土類元素の一種以上の水酸化物または酸化
物が表面に存在する上記六方晶系フェライト粉末。 (3)平均板径が10〜35nmである上記六方晶系フ
ェライト粉末。 (4)抗磁力Hcが2000〜5000Oe(160〜
400kA/m)である 上記六方晶系フェライト粉末。
【0009】
【発明の実施の形態】まず、本発明の六方晶系フェライ
ト粉末について説明する。本発明の六方晶系フェライト
粉末は、Feに対してMnを0.005〜2原子%、好
ましくは0.05〜1.2原子%、更に好ましくは0.
1〜1.0原子%含むことを特徴とする。本発明の六方
晶系フェライト粉末の基本組成及び結晶構造としては、
上記条件を満足するものであれば特に制限はない。例え
ば、六方晶系フェライト粉末としては、バリウムフェラ
イト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カル
シウムフェライトおよびこれらの各種の各置換体、Co
置換体等がある。本発明の六方晶系フェライト粉末のう
ち、好ましくはバリウムフェライトであり、Fe/Ba
が11.1〜12.9原子%、好ましくは11.4〜1
2.7であり、かつCo/Feが0.1〜2原子%、好
ましくは0.5〜1.5原子%、Zn/Feが0.3〜
5原子%、好ましくは1〜4原子%及びNb/Feが
0.3〜3原子%、好ましくは0.5〜2原子%のもの
が挙げられる。バリウムフェライトの結晶構造として
は、M型マグネトプランバイト、W型マグネトプランバ
イト、Y型マグネトプランバイト、Z型マグネトプラン
バイト、及びこれらにスピネル系フェライトをエピタキ
シャルに複合化させたいわゆる複合タイプが挙げられ、
中でもM型マグネトプランバイトが好ましい。本発明の
六方晶系フェライト粉末は、上記以外にAl、Si、
S、Sn、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、P
d、Ag、Sn、Sb、Te、W、Re、Au、Bi、
La、Ce、Pr、Nd、P、Ni、B、Geなどの原
子を組成原子として含むことができる。これらの総量
は、Feに対して5〜20原子%が好ましい。原料・製
法によっては特有の未知の不純物も許容されるが、上記
組成を満足することが好ましい。本発明の六方晶系フェ
ライト粉末は、詳細な理由は不明であるが、Mnを特定
の範囲に制御したためか、平均板径が10〜35nmの
範囲でサイズ分布を比較的安定に製造できると共に粒子
の分散性が確保されるので、磁気記録媒体のSFD(ス
イッチング・フィールド・ディストリビューション)を
小さくでき、電磁変換特性におけるノイズ、C/Nを改
善することができる。
【0010】本発明の六方晶系フェライト粉末の粒子表
面は、Al、Si、Ti、Zr、Sn、Sb、Zn、及
びYを含む希土類元素の一種以上の水酸化物または酸化
物が存在することが好ましい。ここで、Yを含む希土類
元素とはY、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、G
d、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びL
aを意味する。上記粒子表面に存在する層の厚みは、適
宜選択されるが、1〜40Åが好ましく、2〜20Åが
更に好ましい。また、該層の形態は表面を完全に被覆し
た連続体でも、連続体に穴のある形態でも島状でもよい
が、その表面の少なくとも30%以上が被覆されている
ことが好ましい。上記水酸化物または酸化物を粒子表面
に存在させる方法としては、従来公知の方法が用いられ
が、例えば、上記元素の水酸化物を六方晶系フェライト
粉末表面に沈着させ、次いで、濾過、水洗、乾燥、熱処
理を順次行う方法等が例示される。
【0011】六方晶系フェライト粉末の表面に上記水酸
化物または酸化物を粒子表面に存在させると、粒子間の
磁気的な凝集力を更に低減でき、表面処理前の効果が増
強され得る。
【0012】本発明に用いる六方晶系フェライト粉末の
平均板径は、10〜35nmが好ましい。尚、その平均
板径の範囲は表面処理を施されたものもそうでないもの
も同じ範囲である。当該平均板径が10nm未満では磁
化量の低下が著しいため記録媒体には適さず、35nm
を越えるとノイズ成分が大きくなり高密度記録には適さ
ない。平均板径の変動係数は30%以下が好ましい。
【0013】一方、六方晶系フェライト粉末の厚さに対
する板径の比で表わされる板状比の算術平均である平均
板状比は2〜5が好ましい。当該比が、2未満では六方
晶系フェライト粉末の製造が困難であり、5を越えると
磁気的凝集力が分散力に比べて優勢となるため、分散が
困難となるからである。板状比の変動係数も30%以下
が好ましい。尚、板径の変動係数は100×σ/平均板
径より求められ、板状比の変動係数は100×σ/平均
板状比より求められる。σは板径または板状比の標準偏
差を示す。
【0014】本明細書において、六方晶系フェライト粉
末やカーボンブラックのように種々の粉体のサイズ(以
下、「粉体サイズ」と言う)は、高分解能透過型電子顕
微鏡写真及び画像解析装置より求められる。高分解能透
過型電子顕微鏡写真の粉体の輪郭を画像解析装置でなぞ
り、粉体のサイズを求めることができる。即ち、粉体サ
イズは、粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、
高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を
構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、粉体の形
状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底
面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の
最大長径、即ち板径で表され、粉体の形状が球形、多
面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成
する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。
【0015】また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉
体サイズの算術平均であり、約500個の粉体について
上記の如く測定を実施して求めたものである。また、該
粉体の平均針状比は、上記測定において粉体の短軸の長
さ、即ち短軸長を測定し、各粉体の(長軸長/短軸長)
の値の算術平均を指す。ここで、短軸長とは、上記粉体
サイズの定義での場合は、粉体を構成する短軸の長さ
を、同じくの場合は、厚さ乃至高さを各々指し、の
場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸
長)は、便宜上1とみなす。そして、粉体の形状が特定
の場合、例えば、上記粉体サイズの定義の場合は、平
均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義の場合は平
均粉体サイズを平均板径と言い、(板径/厚さ乃至高
さ)の算術平均を平均板状比という。同定義の場合は
平均粉体サイズを平均粒子径という。
【0016】上記六方晶系フェライト粉末の製造方法と
しては、ガラス結晶化法、水熱合成法、共沈法、フラッ
クス法などいかなる方法によってもよい。いずれの方法
においても、所定の元素組成、形状分布及び粒径分布が
シャープになる条件を見い出すことが高密度達成には重
要である。中でも水熱合成法が好ましい。六方晶系フェ
ライト粉末は、飽和磁化σsが通常、40〜80A・m2
/kg、好ましくは45〜70A・m2/kg、抗磁力
Hcが通常、160〜400kA/m、好ましくは18
0〜350kA/m、BET法による比表面積
(SBET)が通常、40〜100g/m2、好ましくは5
0〜80m2/gである。該磁性粉のpHは用いる結合
剤との組み合わせにより最適化することが好ましいが、
通常、pH4〜12、好ましくは5.5〜10である。
【0017】以下、上記六方晶系フェライト粉末を用い
た磁気記録媒体について要素毎に説明する。 [磁性層]本発明の磁気記録媒体は、六方晶系フェライ
ト粉末を有する磁性層を支持体の片面だけでも、両面に
設けても良い。その片側に設けられている磁性層は単層
でも互いに組成の異なる複層でもよい。また、支持体と
磁性層の間に非磁性層(下層ともいう)を設けてもよ
い。本発明は、下層の上に磁性層を設けた構成が好まし
い。この場合の磁性層を上層または上層磁性層ともい
う。上層は下層を同時または逐次塗布後、下層が湿潤状
態の内に設けるウェット・オン・ウェット(W/W)で
も、下層が乾燥した後に設けるウェット・オン・ドライ
(W/D)にでも形成できる。生産得率の点かW/Wが
好ましい。W/Wでは上層/下層が同時に形成できるた
め、カレンダー工程などの表面処理工程を有効に活用で
き、薄層でも上層磁性層の表面粗さを良化できる。
【0018】[下層]次に下層に関する詳細な内容につ
いて説明する。下層としては非磁性無機粉末と結合剤を
主体とするものが好ましい。下層に用いられる非磁性無
機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属炭酸塩、金
属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の
無機質化合物から選択することができる。無機化合物と
しては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−ア
ルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、炭化ケイ素、酸
化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、ヘマタイト、ゲ
ータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、
酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウ
ム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ
素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸
バリウム、二硫化モリブデンなどが単独または組み合わ
せで使用される。特に好ましいのは、粒度分布の小さ
さ、機能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、
酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましい
のは二酸化チタン、α酸化鉄である。これら非磁性無機
粉末の平均粒子径は0.005〜2μmが好ましいが、
必要に応じて平均粒子径の異なる非磁性無機粉末を組み
合わせたり、単独の非磁性無機粉末でも粒径分布を広く
して同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ま
しいのは非磁性無機粉末の平均粒子径は0.01μm〜
0.2μmである。特に、非磁性無機粉末が粒状金属酸
化物である場合は、平均粒子径0.08μm以下が好ま
しく、針状金属酸化物である場合は、平均長軸長が0.
3μm以下が好ましく、0.2μm以下がさらに好まし
い。タップ密度は通常、0.05〜2g/ml、好まし
くは0.2〜1.5g/mlである。非磁性無機粉末の
含水率は通常、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜
3質量%、更に好ましくは0.3〜1.5質量%であ
る。非磁性無機粉末のpHは通常、2〜11であるが、
pHは5.5〜10の間が特に好ましい。非磁性無機粉
末のSBETは通常、1〜100m2/g、好ましくは5〜
80m2/g、更に好ましくは10〜70m2/gであ
る。非磁性無機粉末の結晶子サイズは0.004μm〜
1μmが好ましく、0.04μm〜0.1μmが更に好
ましい。DBP(ジブチルフタレート)を用いた吸油量
は通常、5〜100ml/100g、好ましくは10〜
80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/
100gである。比重は通常、1〜12、好ましくは3
〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいず
れでも良い。モース硬度は4以上、10以下のものが好
ましい。非磁性無機粉末のSA(ステアリン酸)吸着量
は1〜20μmol/m2、好ましくは2〜15μmo
l/m2、さらに好ましくは3〜8μmol/m2であ
る。pHは3〜6の間にあることが好ましい。これらの
非磁性無機粉末の表面には表面処理によりAl23、S
iO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、Zn
O、Y23が存在するが好ましい。特に分散性に好まし
いのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2である
が、更に好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2であ
る。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用
いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面
処理層を用いても良いし、先ずアルミナを存在させた後
にその表層をシリカを存在させる方法、またはその逆の
方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応
じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が
一般には好ましい。本発明の下層に用いられる非磁性無
機粉末の具体的な例及び製造法としては、WO98/3
5345に記載のものが例示される。
【0019】下層にカーボンブラックを混合させて公知
の効果である表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率
を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビ
ッカース硬度を得る事ができる。また、下層にカーボン
ブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらす
ことも可能である。カーボンブラックの種類はゴム用フ
ァーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチ
レンブラック、等を用いることができる。下層のカーボ
ンブラックは所望する効果によって、以下のような特性
を最適化すべきであり、併用することでより効果が得ら
れることがある。
【0020】下層のカーボンブラックのSBETは通常、
100〜500m2/g、好ましくは150〜400m2
/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好
ましくは30〜400ml/100gである。カーボン
ブラックの平均粒子径は通常、5nm〜80nm、好ま
しくは10〜50nm、さらに好ましくは10〜40n
mである。平均粒子径が80nmより大きいカーボンブ
ラックを少量含んでもかまわない。カーボンブラックの
pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度
は0.1〜1g/mlが好ましい。
【0021】下層に用いられるカーボンブラックの具体
的な例は、WO98/35345に記載のものが挙げら
れる。これらのカーボンブラックは上記非磁性無機粉末
(カーボンブラックは包含しない)に対して50質量%
を越えない範囲、非磁性層総質量の40%を越えない範
囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、ま
たは組み合わせで使用することができる。本発明で使用
できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便
覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることがで
きる。
【0022】また下層には有機質粉末を目的に応じて、
添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹
脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉
末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフ
ィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド
系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレ
ン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62
−18564号、特開昭60−255827号に記され
ているようなものが使用できる。
【0023】下層あるいは後述のバック層の結合剤樹
脂、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は
以下に記載する磁性層のそれが適用できる。特に、結合
剤樹脂量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関し
ては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0024】[結合剤]本発明に使用される結合剤とし
ては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹
脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑性樹脂として
は、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子
量が1,000〜200,000、好ましくは10,0
00〜100,000、重合度が約50〜1000程度
のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢
酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル
酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニ
トリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレ
ン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニル
アセタール、ビニルエ−テル、等を構成単位として含む
重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系
樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂とし
てはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化
型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アク
リル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹
脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイ
ソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリ
オールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンと
ポリイソシアネートの混合物等があげられる。これらの
樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブ
ック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬
化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの
例とその製造方法については特開昭62−256219
に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組み
合わせて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル
樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル酢酸
ビニルビニルアルコール共重合体、塩化ビニル酢酸ビニ
ル無水マレイン酸共重合体、から選ばれる少なくとも1
種とポリウレタン樹脂の組み合わせ、またはこれらにポ
リイソシアネートを組み合わせたものがあげられる。
【0025】ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポ
リウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテル
ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレ
タン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポ
リカプロラクトンポリウレタンなど公知のものが使用で
きる。ここに示したすべての結合剤について、より優れ
た分散性と耐久性を得るためには必要に応じ、−COO
M,−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM)2、−
O−P=O(OM)2、(以上につきMは水素原子、ま
たはアルカリ金属塩基)、−NR2、−N+3(Rは炭
化水素基)、エポキシ基、−SH、−CN、などから選
ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付
加反応で導入したものを用いることが好ましい。このよ
うな極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ま
しくは10-2〜10-6モル/gである。これら極性基以
外にポリウレタン分子末端に少なくとも1個ずつ、合計
2個以上のOH基を有することが好ましい。OH基は硬
化剤であるポリイソシアネートと架橋して3次元の網状
構造を形成するので、分子中に多数含むほど好ましい。
特にOH基は分子末端にある方が硬化剤との反応性が高
いので好ましい。ポリウレタンは分子末端にOH基を3
個以上有することが好ましく、4個以上有することが特
に好ましい。本発明において、ポリウレタンを用いる場
合はガラス転移温度が通常、−50〜150℃、好まし
くは0℃〜100℃、特に好ましくは30〜100℃、
破断伸びが100〜2000%、破断応力は通常、0.
05〜10Kg/mm2(≒0.49〜98MPa)、
降伏点は0.05〜10Kg/mm2(≒0.49〜9
8MPa)が好ましい。このような物性を有することに
より、良好な機械的特性を有する塗膜が得られる。
【0026】本発明に用いられるこれらの結合剤の具体
的な例としては塩化ビニル系共重合体としてユニオンカ
−バイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAG
F、VAGD,VROH,VYES,VYNC,VMC
C,XYHL,XYSG,PKHH,PKHJ,PKH
C,PKFE,日信化学工業社製、MPR−TA、MP
R−TA5,MPR−TAL,MPR−TSN,MPR
−TMF,MPR−TS、MPR−TM、MPR−TA
O、電気化学社製1000W、DX80,DX81,D
X82,DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−
104、MR−105、MR110、MR100、MR
555、400X−110A、ポリウレタン樹脂として
日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N230
2、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5
105、T−R3080、T−5201、バ−ノックD
−400、D−210−80、クリスボン6109,7
209,東洋紡社製バイロンUR8200,UR830
0、UR−8700、RV530,RV280、大日精
化社製ポリカ−ボネートポリウレタン、ダイフェラミン
4020,5020,5100,5300,9020,
9022、7020,三菱化成社製ポリウレタン、MX
5004,三洋化成社製ポリウレタン、サンプレンSP
−150、旭化成社製ポリウレタン、サランF310,
F210などが挙げられる。
【0027】非磁性層に用いられる結合剤は非磁性無機
粉末に対し、また磁性層に用いられる結合剤は六方晶系
フェライト粉末に対し、5〜50質量%の範囲、好まし
くは10〜30質量%の範囲で用いられる。塩化ビニル
系樹脂を用いる場合は5〜30質量%、ポリウレタン樹
脂を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネート
は2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いる
ことが好ましいが、例えば、微量の脱塩素によりヘッド
腐食が起こる場合は、ポリウレタンのみまたはポリウレ
タンとイソシアネートのみを使用することも可能であ
る。
【0028】本発明の磁気記録媒体が二層以上で構成さ
れる場合、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹
脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいは
それ以外の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子
量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性など
を必要に応じ各層とで変えることはもちろん可能であ
り、むしろ各層で最適化すべきであり、多層磁性層に関
する公知技術を適用できる。例えば、各層でバインダー
量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには
磁性層のバインダー量を増量することが有効であり、ヘ
ッドに対するヘッドタッチを良好にするためには、非磁
性層のバインダー量を多くして柔軟性を持たせることが
できる。
【0029】本発明に用いられるポリイソシアネートと
しては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェ
ニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシ
アネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−
1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシア
ネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメ
タントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、
これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成
物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポ
リイソシアネート等が挙げられる。これらのイソシアネ
ート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレ
タン社製、コロネートL、コロネートHL,コロネート
2030、コロネート2031、ミリオネートMR,ミ
リオネートMTL、武田薬品社製、タケネートD−10
2,タケネートD−110N、タケネートD−200、
タケネートD−202、住友バイエル社製、デスモジュ
ールL,デスモジュールIL、デスモジュールN,デス
モジュールHL,等がありこれらを単独または硬化反応
性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組み合わせで
各層とも用いることができる。
【0030】[カーボンブラック、研磨剤]本発明の磁
性層に使用されるカーボンブラックはゴム用ファーネ
ス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブ
ラック、等を用いることができる。S BETは5〜500
2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100
g、平均粒子径は5nm〜300nm、pHは2〜1
0、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1
g/cc、が好ましい。具体的には、WO98/353
45に記載のもが挙げられる。
【0031】カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩
擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあ
り、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従
って、本発明が多層構成の場合には各層でその種類、
量、組み合わせを変え、粒子径、吸油量、電導度、pH
などの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分け
ることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべ
きものである。
【0032】本発明は研磨剤を磁性層等に用いることが
できる。研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミ
ナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリ
ウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒
化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二
酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモース硬度6以上
の公知の材料が単独または組み合わせで使用される。ま
た、これらの研磨剤同士の複合体(研磨剤を他の研磨剤
で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨
剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合も
あるが主成分が90%以上であれば効果にかわりはな
い。これら研磨剤の平均粒子径は0.01〜2μmが好
ましく、特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度
分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるには
必要に応じて粒子径の異なる研磨剤を組み合わせたり、
単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもた
せることも可能である。タップ密度は0.3〜2g/m
l、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、SBET
1〜30m2/gが好ましい。本発明に用いられる研磨
剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでも良い
が、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好まし
い。具体的にはWO98/35345に記載のものが挙
げられ、中でもダイアモンドを同記載のごとく用いると
走行耐久性及び電磁変換特性の改善に有効である。磁性
層、非磁性層に添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適
値に設定すべきものである。
【0033】[添加剤]本発明の磁性層と非磁性層に使
用される、添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分
散効果、可塑効果、などをもつものが使用され、組み合
わせることにより総合的な性能向上が図れる。潤滑効果
を示すものとしては物質の表面同士の摩擦の際、生じる
凝着を著しく作用を示す潤滑剤が使用される。潤滑剤に
は2つの型のものがある。磁気記録媒体に使用される潤
滑剤は完全に流体潤滑か境界潤滑であるか判定すること
はできないが、一般的概念で分類すれば流体潤滑を示す
高級脂肪酸エステル、流動パラフィン、シリコン誘導体
などや境界潤滑を示す長鎖脂肪酸、フッ素系界面活性
剤、含フッ素系高分子などに分類される。塗布型媒体で
は潤滑剤は結合剤に溶解した状態また一部は六方晶系フ
ェライト粉末表面に吸着した状態で存在するものであ
り、磁性層表面に潤滑剤が移行してくるが、その移行速
度は結合剤と潤滑剤との相溶性の良否によって決まる。
結合剤と潤滑剤との相溶性が高いときは移行速度が小さ
く、相溶性の低いときには早くなる。相溶性の良否に対
する一つの考え方として両者の溶解パラメ−タ−の比較
がある。流体潤滑には非極性潤滑剤が有効であり、境界
潤滑には極性潤滑剤が有効である。
【0034】本発明においてはこれら特性の異なる流体
潤滑を示す高級脂肪酸エステルと境界潤滑を示す長鎖脂
肪酸とを組み合わせることが好ましく、少なくとも3種
組み合わせることが更に好ましい。これらに組み合わせ
て固体潤滑剤を使用することもできる。固体潤滑剤とし
ては例えば二硫化モリブデン、二硫化タングステングラ
ファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛などが使用される。
境界潤滑を示す長鎖脂肪酸としては、炭素数10〜24
の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐し
ていてもかまわない)、および、これらの金属塩(L
i、Na、K、Cuなど)が挙げられる。フッ素系界面
活性剤、含フッ素系高分子としてはフッ素含有シリコ−
ン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、フッ
素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩
などが挙げられる。流体潤滑を示す高級脂肪酸エステル
としては、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和
結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭
素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価ア
ルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また
分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エス
テルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステ
ル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエ−テル
の脂肪酸エステルなどが挙げられる。また流動パラフィ
ン、そしてシリコン誘導体としてジアルキルポリシロキ
サン(アルキルは炭素数1〜5個)、ジアルコキシポリ
シロキサン(アルコキシは炭素数1〜4個)、モノアル
キルモノアルコキシポリシロキサン(アルキルは炭素数
1〜5個、アルコキシは炭素数1〜4個)、フェニルポ
リシロキサン、フロロアルキルポリシロキサン(アルキ
ルは炭素数1〜5個)などのシリコ−ンオイル、極性基
をもつシリコ−ン、脂肪酸変性シリコ−ン、フッ素含有
シリコ−ンなどが挙げられる。
【0035】その他の潤滑剤として炭素数12〜22の
一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール(不飽
和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、
炭素数12〜22のアルコキシアルコール(不飽和結合
を含んでも、また分岐していてもかまわない)、フッ素
含有アルコールなどのアルコール、ポリエチレンワック
ス、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレング
リコール、ポリエチレンオキシドワックスなどのポリグ
リコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金
属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属
塩、ポリフェニルエ−テル、炭素数8〜22の脂肪酸ア
ミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが挙げられ
る。
【0036】帯電防止効果、分散効果、可塑効果などを
示すものとしてフェニルホスホン酸、具体的には日産化
学(株)社の「PPA」など、αナフチル燐酸、フェニ
ル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン
酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シラ
ンカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有
アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、など
が使用できる。
【0037】本発明において使用される潤滑剤は特に脂
肪酸と脂肪酸エステルが好ましく、具体的にはWO98
/35345に記載のものが挙げられる。これらに加え
て別異の潤滑剤、添加剤も組み合わせて使用することが
できる。
【0038】また、アルキレンオキサイド系、グリセリ
ン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオ
キサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミ
ン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダン
トイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニ
ウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフ
ォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、など
の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミ
ノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エ
ステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等
も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面
活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載さ
れている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも1
00%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、
副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかま
わない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さら
に好ましくは10%以下である。本発明は脂肪酸エステ
ルとしてWO98/35345に記載のようにモノエス
テルとジエステルを組み合わせて使用することも好まし
い。
【0039】本発明の磁気記録媒体、特にディスク状磁
気記録媒体の磁性層表面のオージェ電子分光法によるC
/Feピーク比は、好ましくは5〜100、特に好まし
くは5〜80である。オージェ電子分光法の測定条件
は、以下の通りである。 装置:Φ社製PHI−660型 測定条件:1次電子線加速電圧3KV 試料電流130nA 倍率250倍 傾斜角度30° 上記条件で、運動エネルギ−(Kinetic Ene
rgy)130〜730eVの範囲を3回積算し、炭素
のKLLピークと鉄のLMMピークの強度を微分形で求
め、C/Feの比をとることで求める。
【0040】一方、本発明の磁気記録媒体の上層及び下
層の各層に含まれる潤滑剤量は、それぞれ六方晶系フェ
ライト粉末又は非磁性無機粉末100質量部に対し5〜
30質量部が好ましい。
【0041】本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面
活性剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、
その種類、量、および相乗的効果を生み出す潤滑剤の併
用比率は目的に応じ最適に定められるべきものである。
非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面への
滲み出しを制御する、沸点、融点や極性の異なるエステ
ル類を用い表面への滲み出しを制御する、界面活性剤量
を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の
添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させるなど考
えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではな
い。一般には潤滑剤の総量として六方晶系フェライト粉
末または非磁性粉末に対し、0.1質量%〜50質量
%、好ましくは2〜25質量%の範囲で選択される。
【0042】また本発明で用いられる添加剤のすべてま
たはその一部は、磁性塗料および非磁性塗料製造のどの
工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に磁
性体と混合する場合、磁性体と結合剤と溶剤による混練
工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後
に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐
次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することによ
り目的が達成される場合がある。また、目的によっては
カレンダーした後、またはスリット終了後、磁性層表面
に潤滑剤を塗布することもできる。
【0043】[層構成]本発明の磁気記録媒体の厚み構
成は支持体が通常、2〜100μm、好ましくは2〜8
0μmである。コンピューターテープの支持体は、3.
0〜6.5μm(好ましくは、3.0〜6.0μm、更
に好ましくは、4.0〜5.5μm)の範囲の厚さのも
のが使用される。支持体、好ましくは非磁性可撓性支持
体と非磁性層または磁性層の間に密着性向上のための下
塗り層を設けてもかまわない。本下塗層厚みは0.01
〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μmであ
る。帯電防止やカール補正などの効果を出すために磁性
層が設けられている側と反対側の支持体にバック層を設
けてもかまわない。この厚みは通常、0.1〜4μm、
好ましくは0.3〜2.0μmである。これらの下塗
層、バック層は公知のものが使用できる。
【0044】本発明の下層及び上層構成の磁性層の厚み
は用いるヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録
信号の帯域により最適化されるものであるが、一般には
0.05〜0.5μmであり、好ましくは0.05〜
0.30μmである。下層の厚みは通常、0.2〜5.
0μm、好ましくは0.3〜3.0μm、さらに好まし
くは1.0〜2.5μmである。なお、下層は実質的に
非磁性であればその効果を発揮するものであり、たとえ
ば不純物としてあるいは意図的に少量の磁性粉を含んで
も、本発明の効果を示すものであり、本発明と実質的に
同一の構成と見なすことができることは言うまでもな
い。実質的に非磁性層とは下層の残留磁束密度が10m
T以下または抗磁力が100エルステッド(≒8kA/
m)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と
抗磁力をもたないことを示す。又、下層に磁性粉を含む
場合は、下層の全無機粉末の1/2未満含むことが好ま
しい。また、下層として、非磁性層に代えて軟磁性粉末
と結合剤を含む軟磁性層を形成してもよい。軟磁性層の
厚みは上記下層と同様である。
【0045】また、磁性層を2層有する磁気記録媒体の
場合は、非磁性層や軟磁性層は設けても設けなくともよ
く、例えば支持体から遠い側の磁性層を0.2〜2μ
m、好ましくは0.2〜1.5μmにし、支持体から近
い側の磁性層を0.8〜3μmにすることができる。な
お、磁性層を単独で有する場合は、通常0.2〜5μ
m、好ましくは0.5〜3μm、さらに好ましくは0.
5〜1.5μmとする。
【0046】[バック層]本発明の磁気記録媒体は、バ
ック層を設けることができる。磁気ディスクでもバック
層を設けることはできるが、一般に、コンピュータデー
タ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテ
ープに比較して、繰り返し走行性が強く要求される。こ
のような高い走行耐久性を維持させるために、バック層
には、カーボンブラックと無機粉末が含有されているこ
とが好ましい。
【0047】カーボンブラックは、平均粒子径の異なる
二種類のものを組み合わせて使用することが好ましい。
この場合、平均粒子径が10〜20nmの微粒子状カー
ボンブラックと平均粒子径が230〜300nmの粗粒
子状カーボンブラックを組み合わせて使用することが好
ましい。一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラ
ックの添加により、バック層の表面電気抵抗を低く設定
でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置に
よっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使
用しているものが多くあるため、このような場合には特
に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。ま
た微粒子状カーボンブラックは一般に液体潤滑剤の保持
力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与す
る。一方、平均粒子径が230〜300nmの粗粒子状
カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有して
おり、またバック層の表面に微小突起を形成し、接触面
積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。
【0048】本発明に用いられる微粒子状カーボンブラ
ック及び粗粒子状カーボンブラックとして、市販のもの
を用いる場合、具体的な商品としては、WO98/35
345に記載のものを挙げることができる。バック層に
おいて、平均粒子径の異なる二種類のものを使用する場
合、10〜20nmの微粒子状カーボンブラックと23
0〜300nmの粗粒子状カーボンブラックの含有比率
(質量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範
囲にあることが好ましく、更に好ましくは、95:5〜
85:15の範囲である。バック層中のカーボンブラッ
ク(二種類のものを使用する場合には、その全量)の含
有量は、結合剤100質量部に対して、通常30〜80
質量部の範囲であり、好ましくは、45〜65質量部の
範囲である。
【0049】無機粉末は、硬さの異なる二種類のものを
併用することが好ましい。具体的には、モース硬度3〜
4.5の軟質無機粉末とモース硬度5〜9の硬質無機粉
末とを使用することが好ましい。モース硬度が3〜4.
5の軟質無機粉末を添加することで、繰り返し走行によ
る摩擦係数の安定化を図ることができる。しかもこの範
囲の硬さでは、摺動ガイドポールが削られることもな
い。またこの無機粉末の平均粒子径は、30〜50nm
の範囲にあることが好ましい。モース硬度が3〜4.5
の軟質無機粉末としては、例えば、硫酸カルシウム、炭
酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マ
グネシウム、炭酸亜鉛、及び酸化亜鉛を挙げることがで
きる。これらは、単独で、あるいは二種以上を組み合わ
せて使用することができる。バック層内の軟質無機粉末
の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して1
0〜140質量部の範囲にあることが好ましく、更に好
ましくは、35〜100質量部である。
【0050】モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を添加
することにより、バック層の強度が強化され、走行耐久
性が向上する。これらの無機粉末をカーボンブラックや
前記軟質無機粉末と共に使用すると、繰り返し摺動に対
しても劣化が少なく、強いバック層となる。またこの無
機粉末の添加により、適度の研磨力が付与され、テープ
ガイドポール等への削り屑の付着が低減する。特に軟質
無機粉末と併用すると、表面の粗いガイドポールに対し
ての摺動特性が向上し、バック層の摩擦係数の安定化も
図ることができる。硬質無機粉末の平均粒子径は80〜
250nmが好ましく、100〜210nmの範囲にあ
ることが更に好ましい。モース硬度が5〜9の硬質無機
質粉末としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、
及び酸化クロム(Cr23)を挙げることができる。こ
れらの粉末は、それぞれ単独で用いても良いし、あるい
は併用しても良い。これらの内では、α−酸化鉄又はα
−アルミナが好ましい。硬質無機粉末の含有量は、カー
ボンブラック100質量部に対して通常3〜30質量部
であり、好ましくは、3〜20質量部である。
【0051】バック層に前記軟質無機粉末と硬質無機粉
末とを併用する場合、軟質無機粉末と硬質無機粉末との
硬さの差が、2以上(更に好ましくは、2.5以上、特
に、3以上)であるように軟質無機粉末と硬質無機粉末
とを選択して使用することが好ましい。バック層には、
前記それぞれ特定の平均粒子径を有するモース硬度の異
なる二種類の無機粉末と、前記平均粒子径の異なる二種
類のカーボンブラックとが含有されていることが好まし
い。
【0052】バック層には、潤滑剤を含有させることが
できる。潤滑剤は、前述した非磁性層、あるいは磁性層
に使用できる潤滑剤として挙げた潤滑剤の中から適宜選
択して使用できる。バック層において、潤滑剤は、結合
剤100質量部に対して通常1〜5質量部の範囲で添加
される。
【0053】[支持体]本発明に用いられる支持体は、
非磁性可撓性支持体であることが好ましく、支持体の面
内各方向に対し、100℃30分での熱収縮率が0.5
%以下であり、80℃30分での熱収縮率が0.5%以
下、更に好ましくは0.2%以下であることが好まし
い。更に前記支持体の100℃30分での熱収縮率及び
80℃30分での熱収縮率が前記支持体の面内各方向に
対し、10%以内の差で等しいことが好ましい。支持体
は非磁性であることが好ましい。これら支持体はポリエ
チレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等
のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルロ−ストリ
アセテート、ポリカ−ボネート、芳香族又は脂肪族ポリ
アミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォ
ン、ポリアラミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知
のフィルムが使用できる。ポリエチレンナフタレート、
ポリアミドなどの高強度支持体を用いることが好まし
い。また必要に応じ、磁性面とベ−ス面の表面粗さを変
えるため特開平3−224127に示されるような積層
タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体
にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着
処理、熱処理、除塵処理、などをおこなっても良い。ま
た本発明の支持体としてアルミまたはガラス基板を適用
することも可能である。
【0054】本発明の目的を達成するには、支持体とし
てWYKO社製の表面粗さ計TOPO−3Dで測定した
中心面平均表面粗さRaは4.0nm以下、好ましくは
2.0nm以下のものを使用する必要がある。これらの
支持体は単に中心面平均表面粗さが小さいだけではな
く、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。
また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加される
フィラーの大きさと量により自由にコントロールされる
ものである。これらのフィラーとしては一例としてはC
a,Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系
などの有機粉末があげられる。支持体の最大高さRma
xは1μm以下、十点平均粗さRzは0.5μm以下、
中心面山高さRpは0.5μm以下、中心面谷深さRv
は0.5μm以下、中心面面積率Srは10%以上、9
0%以下、平均波長λaは5μm以上、300μm以下
が好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、
これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコ
ントロールできるものであり、0.01〜1μmの大き
さのもの各々を0.1mm2あたり0〜2000個の範
囲でコントロールすることができる。
【0055】本発明に用いられる支持体のF−5値は好
ましくは5〜50Kg/mm2(≒49〜490MP
a)、また、支持体の100℃30分での熱収縮率は好
ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、8
0℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに
好ましくは0.5%以下である。破断強度は5〜100
Kg/mm2(≒49〜980MPa)、弾性率は10
0〜2000Kg/mm2(≒0.98〜19.6GP
a)が好ましい。温度膨張係数は10-4〜10-8/℃で
あり、好ましくは10-5〜10-6/℃である。湿度膨張
係数は10-4/RH%以下であり、好ましくは10-5
RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強
度特性は支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほ
ぼ等しいことが好ましい。
【0056】[製法]本発明の磁気記録媒体の磁性塗料
を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、お
よびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程
からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれて
いてもかまわない。本発明に使用する磁性粉末、非磁性
粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止
剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初ま
たは途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を
2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例え
ば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度
調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発
明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を
一部の工程として用いることができる。混練工程ではオ
ープンニーダ、連続ニ−ダ、加圧ニ−ダ、エクストルー
ダなど強い混練力をもつものを使用することが好まし
い。ニ−ダを用いる場合は磁性粉末または非磁性粉末と
結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30
%以上が好ましい)および磁性粉末100部に対し15
〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理
の詳細については特開平1−106338、特開平1−
79274に記載されている。また、磁性層液および非
磁性層液を分散させるにはガラスビーズを用いることが
できるが、高比重の分散メディアであるジルコニアビー
ズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。こ
れら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられ
る。分散機は公知のものを使用することができる。
【0057】本発明で重層構成の磁気記録媒体を塗布す
る場合、以下のような方式を用いることが好ましい。第
一に磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗
布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗
布装置等により、まず下層を塗布し、下層がウェット状
態のうちに特公平1−46186や特開昭60−238
179,特開平2−265672に開示されている支持
体加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布
する方法。第二に特開昭63−88080、特開平2−
17971,特開平2−265672に開示されている
ような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘ
ッドにより上下層をほぼ同時に塗布する方法。第三に特
開平2−174965に開示されているバックアップロ
ール付きエクストルージョン塗布装置により上下層をほ
ぼ同時に塗布する方法である。なお、磁性粒子の凝集に
よる磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するた
め、特開昭62−95174や特開平1−236968
に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗
布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布
液の粘度については、特開平3−8471に開示されて
いる数値範囲を満足する必要がある。本発明の構成を実
現するには下層を塗布し乾燥させたのち、その上に磁性
層を設ける逐次重層塗布を用いてもむろんかまわず、本
発明の効果が失われるものではない。ただし、塗布欠陥
を少なくし、ドロップアウトなどの品質を向上させるた
めには、前述の同時重層塗布を用いることが好ましい。
【0058】ディスクの場合、配向装置を用いず無配向
でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コ
バルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで
交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用い
ることが好ましい。六方晶フェライトは、一般的に面内
および垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内
2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向
磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周
方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に
高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、ス
ピンコートを用い円周配向としてもよい。
【0059】磁気テープの場合はコバルト磁石やソレノ
イドを用いて長手方向に配向する。乾燥風の温度、風
量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御で
きる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜
1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好まし
い、また磁石ゾ−ンに入る前に適度の予備乾燥を行うこ
ともできる。カレンダー処理ロールとしてエポキシ、ポ
リイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性の
あるプラスチックロールまたは金属ロールで処理する
が、特に両面磁性層とする場合は金属ロール同志で処理
することが好ましい。処理温度は、好ましくは50℃以
上、さらに好ましくは100℃以上である。線圧力は好
ましくは200kg/cm(≒196kN/m)以上、
さらに好ましくは300kg/cm(≒294kN/
m)以上である。
【0060】[物理特性]本発明になる磁気記録媒体の
磁性層厚みは、0.01〜0.5μmが好ましく、残留
磁束密度×磁性層厚みが、5〜200mT・μmが好ま
しい。抗磁力Hcは1800〜5000エルステッド
(≒144〜400kA/m)が好ましく、1800〜
3000エルステッド(≒144〜240kA/m)が
更に好ましい。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SF
D(スイッチング・フィールド・ディストリビューショ
ン)およびSFDrは0.6以下が好ましい。
【0061】磁気ディスクの場合、角形比(SQ)は2
次元ランダムの場合、通常、0.55〜0.67で、好
ましくは0.58〜0.64、3次元ランダムの場合は
0.45〜0.55が好ましく、垂直配向の場合は垂直
方向に通常、0.6以上、好ましくは0.7以上、反磁
界補正を行った場合は通常、0.7以上、好ましくは
0.8以上である。2次元ランダム、3次元ランダムと
も配向度比は0.8以上が好ましい。2次元ランダムの
場合、垂直方向の角形比、垂直方向のBrおよび垂直方
向のHcは面内方向の0.1〜0.5倍以内とすること
が好ましい。磁気テープの場合、角形比(SQ)は0.
7以上、好ましくは0.8以上である。
【0062】本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩
擦係数は温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲に
おいて通常0.5以下、好ましくは0.3以下、表面固
有抵抗は好ましくは磁性面104〜1012オ−ム/s
q、帯電位は−500V〜+500Vが好ましい。磁性
層の0.5%伸びでの弾性率は面内各方向で好ましくは
100〜2000Kg/mm2(≒980〜19600
N/mm2)、破断強度は好ましくは10〜70Kg/
mm2(≒98〜686N/mm2)、磁気記録媒体の弾
性率は面内各方向で好ましくは100〜1500Kg/
mm2(≒980〜14700N/mm2)、残留のびは
好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度
での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは
0.5%以下、もっとも好ましくは0.1%以下であ
る。磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動
的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50℃以上12
0℃以下が好ましく、下層のそれは0℃〜100℃が好
ましい。損失弾性率は1×10 3〜1×104N/cm2
の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下で
あることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障
が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面
内各方向で10%以内でほぼ等しいことが好ましい。磁
性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m
2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗
布層が有する空隙率は下層、上層とも好ましくは30容
量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空
隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、
目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。
例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空
隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0063】磁性層の表面をWYKO社製の表面粗さ計
TOPO−3Dで測定した中心面平均表面粗さRaは好
ましくは5.0nm以下、更に好ましくは4.0nm以
下、特に好ましくは3.5nm以下である。磁性層の最
大高さRmaxは0.5μm以下、十点平均粗さRzは
0.3μm以下、中心面山高さRpは0.3μm以下、
中心面谷深さRvは0.3μm以下、中心面面積率Sr
は20%以上、80%以下、平均波長λaは5μm以
上、300μm以下が好ましい。磁性層の表面突起は
0.01〜1μmの大きさのものを0〜2000個の範
囲で任意に設定することが可能であり、これにより電磁
変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これ
らは支持体のフィラ−による表面性のコントロールや磁
性層に添加する粉体の粒径と量、カレンダー処理のロー
ル表面形状などで容易にコントロールすることができ
る。カールは±3mm以内とすることが好ましい。本発
明の磁気記録媒体は、目的に応じ下層と上層でこれらの
物理特性を変えることができるのは容易に推定されるこ
とである。例えば、上層の弾性率を高くし走行耐久性を
向上させると同時に下層の弾性率を上層より低くして磁
気記録媒体のヘッドへの当りを良くするなどである。
【0064】
【実施例】以下に、実施例を用いてさらに本発明を詳細
に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。尚、「部」は特に言及しない限り「質量部」を意味
する。 <六方晶系フェライト磁性粉の生成> 実施例A1 六方晶系フェライト製造原料として、各種の化合物を酸
化物換算(単位:モル)で表1の基本処方から秤量した
(表1のA1に記載)。
【0065】B23を除く組成物を120℃のクエン酸
に溶解させ、約200℃に保ち原料を均一に混合させ、
450℃で加水分解した。さらに空気中600℃で焼成
し遊離の炭素を除去した。B23を加え、粉末ミキサー
にて十分混合した後、攪拌機の付属したPt−Rh製ル
ツボに入れ1300〜1350℃で2時間溶融し、回転
しているステンレス製冷却双ロール間に噴出させて非晶
質体を得て,粉砕処理を行った。次いで非晶質体をセラ
ミック容器に2cm厚にひろげ,650℃に保持した電
気炉中に搬送し2時間保持後,850℃に保持した電気
炉中にただちに搬送し3時間保持した。その後,室温の
金属製ホッパーに処理物を投入し,冷却し結晶粉末を得
た。該結晶粉末を遊星ミルにより粉砕し2mol/lの
酢酸水溶液に浸漬し、80℃、5時間保持しガラス成分
を除去し、ろ別し微結晶を回収した。回収した微結晶を
多量のイオン交換水で水洗した。次いで、このようにし
て得られた磁性粉300gを3000mlの水中によく
分散させてスラリーとした。さらにAlを含む塩化物
を、未処理磁性粉100重量部に対して4部調合して上
記スラリーに添加した。スラリーを十分撹拌した後、前
記の塩化物に対して1.5倍等量のアンモニア水を添加
し沈着させた。得られた沈殿物を、濾別、水洗、乾燥、
熱処理の順で処理して処理磁性粉A1を得た。 実施例A2 上記基本処方において、表1(A2に記載)に記載した
ように変更した以外は、実施例A1と同様にしてガラス
成分を除去し、ろ別し微結晶を回収した。回収した微結
晶を多量のイオン交換水で水洗し、水中によく分散させ
てスラリーとした。さらにAlを含む塩化物を、未処理
磁性粉100重量部に対して4部調合して上記スラリー
に添加した。スラリーを十分撹拌した後、Alの塩化物
に対して1.5倍等量のアンモニア水を添加し沈着させ
た。次いでAlを沈着させたスラリ−を十分攪拌し、Y
を含む塩化物を磁性粉100重量部に対して2部調合し
て、上記スラリーに添加した。スラリーを十分撹拌した
後、Yの塩化物に対して1.5倍等量のアンモニア水を
添加し沈着させた。得られた沈殿物を、濾別、水洗、乾
燥、熱処理の順で処理して処理磁性粉A2を得た。
【0066】比較例H1 上記基本処方において、表1(H1に記載)に記載した
ように変更し、且つAlを被着させてないこと以外は実
施例1と同様にして磁性粉H1を作成した。 比較例H2 比較例H1において、Alを実施例1と同様に被着させ
て磁性粉H2を作成した。
【0067】
【表1】
【0068】上記得られた各磁性粉をX線回折法で解析
するとマグネトプランバイト構造を示した。強磁性粉末
を透過型電子顕微鏡観察し、平均粉体サイズを測定し
た。窒素中250℃で30分脱気処理し、BET法で比
表面積を測定した。磁気特性はVSMを使用して印加磁
界800kA/mで測定した。得られたバリウムフェラ
イトの組成及び磁気特性を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】磁気記録媒体の作成 上記得られたバリウムフェライトを用いて磁気テープを
以下のように作成した。 実施例1、2、比較例1、2 <塗料の作製>実施例中、「部」との表示は「重量部」
を示す。 磁性液処方 バリウムフェライト(表3に記載) 100部 結合剤樹脂 塩化ビニル共重合体 12部 (−SO3K基を1×10-4eq/g含有、重合度:300) ポリエステルポリウレタン樹脂 4部 (ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1、−SO3Na基:1×10-4eq/g含有 ) フェニルフォスフォン酸 3部 α−アルミナ(平均粒子径:0.15μm) 2部 カ−ボンブラック(平均粒子径:7nm) 5部 ブチルステアレート 2部 ステアリン酸 3部 メチルエチルケトン 125部 シクロヘキサノン 125部
【0071】 非磁性液処方 針状ヘマタイト 80部 (SBET:55m2/g、 平均長軸長:0.10μm、平均針状比:7、 pH:8.8、アルミ処理:Al23として1質量%) カーボンブラック 20部 (平均粒子径:17nm、 DBP吸油量:80ml/100g、 SBET:240m2/g、pH7.5) 結合剤樹脂 塩化ビニル共重合体 12部 (−SO3K基を1×10-4eq/g含有、重合度:300) ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 (ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1、−SO3Na基:1×10-4eq/g含有) フェニルフォスフォン酸 3部 ブチルステアレート 3部 ステアリン酸 3部 メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 280部
【0072】上記の磁性液処方及び非磁性液処方のそれ
ぞれについて、顔料、ポリ塩化ビニル、フェニルフォス
フォン酸と処方量の50質量%の各溶剤をニーダーで混
練したのち、ポリウレタン樹脂と残りの成分を加えてサ
ンドグラインダーで分散した。得られた分散液にイソシ
アネートを非磁性液には15部、磁性液には14部を加
え、さらにそれぞれにシクロヘキサノン30部を加え、
1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、
非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ
調製した。
【0073】得られた下層非磁性層用の塗布液1を厚さ
7μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に乾燥後
の厚さが1.5μmとなるように塗布し、さらにその直
後下層非磁性層用塗布層がまだ湿潤状態にあるうちに、
磁性液処方1の塗布量を制御することで所定の磁性層厚
みとなるように湿式同時重層塗布を行い、両層がまだ湿
潤状態にあるうちに配向装置を通過させ長手配向した。
この時の配向磁石は希土類磁石(表面磁束500mT)
を通過させた後、ソレノイド磁石(磁束密度500m
T)中を通過させ、ソレノイド内で配向が戻らない程度
まで乾燥しさらに磁性層を乾燥し巻き取った。その後、
金属ロールより構成される7段カレンダーでロール温度
を90℃にしてカレンダー処理を施して、ウェッブ状の
磁気記録媒体を得、それを8mm幅にスリットして8m
mビデオテープのサンプルを作成した。振動試料型磁力
計を使用しサンプルの磁気特性を測定した。さらに表面
粗さ、電磁変換特性を測定した。
【0074】<テープの評価>電磁変換特性(出力、C
/N)の測定法は次の方法によった。データー記録用8
ミリデッキにMIGヘッド(ヘッドギャップ0.2μ
m、トラック幅17μm、飽和磁束密度1.5T、アジ
マス角20°)と再生用MRヘッド(SALバイアス、
MR素子はFe−Ni、トラック幅6μm、ギャップ長
0.2μm、アジマス角20°)を搭載した。MIGヘ
ッドを用いて、テープとヘッドの相対速度を10.2m
/秒とし、1/2Tb(λ=0.5μm)の入出力特性
から最適記録電流を決めこの電流で信号を記録し、MR
ヘッドで再生した。C/Nは再生キャリアのピークから
消磁ノイズまでとし、スペクトルアナライザーの分解能
バンド幅は100kHzとした。比較例1のテープに対
する特性で表わした。
【0075】表面粗さは、WYKO社(USアリゾナ
州)製の光干渉3次元粗さ計「TOPO−3D」を使用
し250μm角の試料面積を測定した。測定値の算出に
あたっては、傾斜補正、球面補正、円筒補正等の補正を
JIS−B601に従って実施し、中心面平均表面粗さ
Raを表面粗さの値とした。 室温における摩擦係数(μ値):磁性層面の1パス目の
摩擦係数(RT μ1)及び100パス目の摩擦係数
(RT μ100) 4mmφのSUS420Jに180度の角度でテープを
渡し、荷重10g、秒速18mmで摺動させて、オイラ
ーの式に基づいて摩擦係数を求めた。 μ=(1/π)ln(T2/10) T2は摺動抵抗値
(g)。 測定は繰り返し100パスまで行い、1パス目の摩擦係
数μ1と100パス目の摩擦係数μ100を求めた。6
0℃90%RH、1週間保存後の磁性層面の1パス目の
摩擦係数(60℃90% μ1)も上記と同様に求め
た。磁気特性は室温(23±5℃、40〜60%RH)
で振動試料型磁力計(東英工業製)を使用し外部磁界8
00kA/mで配向方向に平行に測定した。また、60
℃90%RH、1週間保存後のテ−プの最大磁束密度
(Bm)も同様に測定し、保存前との減少率(%)(Δ
Bm)を求めた。
【0076】
【表3】
【0077】
【発明の効果】本発明はMnを特定量配合した六方晶系
フェライト粉末であるので、これを磁気記録媒体の磁性
層に用いると、本発明の六方晶系フェライト粉粒子は、
SFDが良好であるので、その電磁変換特性におけるノ
イズ、C/Nを改善することができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Feに対してMnを0.005〜2原子
    %含むことを特徴とする六方晶系フェライト粉末。
  2. 【請求項2】 支持体上に磁性層を有する磁気記録媒体
    において、磁性層は請求項1記載の六方晶系フェライト
    粉末を含有することを特徴とする磁気記録媒体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006005299A (ja) * 2004-06-21 2006-01-05 Fuji Photo Film Co Ltd 六方晶フェライト磁性粉末、その製造方法および磁気記録媒体

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