JP2003027189A - 耐食性に優れる合金並びにそれを用いた半導体製造装置用部材およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れる合金並びにそれを用いた半導体製造装置用部材およびその製造方法

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JP2003027189A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐食性に優れ、腐食性ガスに曝される半導体製
造装置用とし最適な部材を提供することができる。 【解決手段】(1) C:0.03%以下、Si:0.01〜1%、
Mn:1%以下、Ni:30〜65%、Cr:18〜25%、T
i:0.001〜1.2%およびAl:0.001〜0.6%を含有し、
さらに下記(a)式で表される耐食性指数Xが46以上であ
る耐食性に優れる合金である。 X=0.9×Ni+Cr+Mo+W+Ti+Al+Cu
・・・ (a) この合金の介在物は、d60×400≦0.05%であり、Al
:70%以下、MgO:30%以下およびSiO:1
%以上にするのが好ましい。 (2) 上記合金からなる表面粗さがRmax≦10μmである
半導体製造装置用部材とその製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体製造用とし
て耐食性に優れる合金、並びにそれを用いた腐食性ガス
に曝される半導体製造装置用として最適な部材およびそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近の半導体および液晶製造分野におい
ては、著しく高集積化が進み、超LSIと称されるデバ
イスの製造では、1μm以下の微細パターンの加工が必
要とされている。このような超LSI製造プロセスで
は、微小な塵や微量不純物ガスが、素材基板であるSi
ウェーハの活性領域に付着、吸着した場合には、配線パ
ターンの回路不良を発生させるため、デバイス製品の品
質や歩留に大きく影響することになる。
【0003】このため、使用する反応ガスおよびキャリ
アガスはともに高純度であること、すなわち、ガス中の
微粒子および不純物ガスが少ないことが必要とされる。
したがって、半導体製造装置に用いられる高純度ガスの
配管や容器等のように、半導体製造用ガスと接する部材
は、その接触表面から放出される汚染物としての微粒子
(パーティクル)およびガスが極力少ないことが要求さ
れる。
【0004】一方、半導体製造用ガスとしては、窒素、
アルゴン等の不活性ガスの他に、いわゆる特殊ガスと呼
ばれる塩素ガス、塩化水素ガス、臭化水素ガス、シラン
ガスおよびジボランガス等が使用される。これらの特殊
ガス用の配管材料としては、塩素ガス、塩化水素ガス、
臭化水素ガス等の腐食性ガスに対する耐食性は勿論、シ
ランガス等の化学的に不安定なガスに対する非触媒性を
有することが必要とされる。
【0005】さらに、近年ではSiウェーハ製造技術の
進歩および超LSIのコスト低減の要請に応じて、製造
されるSiウェーハの大径化と長尺化による大型化が進
んでいる。具体的には、従来のSiウェーハの引上げ直
径は200〜250mmφであったが、最近では300mmφまで大
径化し、さらに一層の長尺化によって大型化の進展が予
想される。このような半導体基板の大型化は、不純物や
汚染物のより一層の低減を要求するものであり、従来で
は問題にならなかった不純物レベルであっても、デバイ
ス製品の品質悪化や製品不良の要因となる。
【0006】上述の現象は、半導体製造装置のキャビネ
ットに用いられる半導体製造用ガス配管の腐食を要因と
するものが顕著になりつつある。すなわち、半導体製造
用として腐食性ガスを使用する装置を組み立てる際に、
配管の中に存在した空気とガスが反応し、ガス配管を腐
食させることになる。例えば、配管中で塩素ガスと空気
中の水分とが反応して塩酸が生成し、この塩酸によって
配管が腐食したり、またはガス中に不純物として存在す
る水分によっても、配管腐食が促進されることになる。
このように腐食された配管等の製造装置用部材から汚染
物質が発生すると、LSIとして要求される特性を満た
すことができず、製品不良に結びつくことになる。
【0007】従来から、このような半導体製造装置に使
用される配管には、高純度鋼管として、SUS 316L 鋼に
代表されるオーステナイト系ステンレス鋼による継目無
鋼管が多用される。そして、配管腐食に起因する汚染物
質の発生を抑制するため、耐食性を改善した鋼種とし
て、種々の鋼材および部材の提案がなされている。
【0008】例えば、特許2720716号公報では、Tiお
よび/またはAlを添加して、平滑化処理した表面にT
iおよび/またはAlを主体とする酸化皮膜を形成させ
て、この皮膜によって耐食性を向上させた高純度ガス用
の鋼材が提案されている。
【0009】さらに、特許2737551号公報、特開平6−4
1629号公報、特開平6−172934号公報および特開平7−
11421号公報では、Crを含有させて酸化Crを主成分
とする酸化皮膜を形成させることによって、耐食性を向
上させたステンレス鋼、または半導体装置用ステンレス
部材が提案されている。
【0010】しかしながら、提案のあった鋼材、部材で
は、酸化皮膜の形成処理によって耐食性を確保するもの
であるため、半導体製造装置の組立施工に際して、配
管、バルブ、継ぎ手等を溶接加工すると、この鋼材およ
び部材の溶接部では酸化皮膜が剥離、脱落することにな
る。酸化皮膜の剥離、脱落が発生すると、この剥離、脱
落部位が優先的に腐食を発生させる。一旦、腐食が発生
すると、酸化皮膜の内部まで腐食が進展し、鋼材および
部材が順次腐食される。
【0011】さらに、鋼材および部材の溶接部以外であ
っても、配管を曲げ加工すると、曲げ部に形成された酸
化皮膜にクラックが発生し、このクラック部位を起点と
して、鋼材および部材の内部に腐食が進展することにな
る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述の通り、従来から
半導体製造装置に使用される部材は、耐食性を確保する
ため、基本的にはSUS 316L 鋼に代表されるステンレス
鋼を採用し、その表面に耐食性の酸化皮膜を形成するこ
ととしている。ところが、製造装置の組立施工に際し
て、部材に溶接、曲げ加工を施すと、酸化皮膜に剥離、
脱落若しくはクラックを発生し、該当部位から母材の腐
食が進展するとの問題があった。
【0013】本発明は、上記の半導体製造装置に用いら
れる部材に関する問題点に鑑みてなされたものであり、
合金の成分、非金属介在物量およびその組成を適正なも
のとし、さらに適切な製造方法を選択することによっ
て、半導体製造装置に用いられる部材の腐食防止を可能
にする、耐食性に優れる合金、それを用いた半導体製造
装置用部材およびその製造方法を提供することを目的と
している。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上述の課題
を解決するため、半導体製造用ガスとして用いられる、
各種の腐食性ガスに対する耐食性について、Ni基、F
e基の合金における成分設計や製造法による影響につい
て鋭意検討を重ねた結果、成分設計においてNiを30%
以上、およびCrを18%以上含有させることが必須であ
るとともに、合金の基本成分を、耐食性を向上させる元
素であるNi、Cr、Mo、W、Ti、Al、およびC
uによって総合的に表される耐食性指数Xが所定の条件
を満足するように、調整する必要があることを見出し
た。
【0015】本発明はこのような知見に基づいて完成さ
れたものであり、下記(1)、(2)の合金、(3)のそれを用
いた半導体製造装置用部材、および(4)のその製造方法
を要旨としている。 (1) 質量%で、C:0.03%以下、Si:0.01〜1%、M
n:1%以下、Ni:30〜65%、Cr:18〜25%、T
i:0.001〜1.2%およびAl:0.001〜0.6%を含有し、
残部は実質的にFeからなり、不純物としてP:0.03
%以下、S:0.003%以下、O(酸素):0.01%以下お
よびN:0.05%以下を含み、さらに下記(a)式で表され
る耐食性指数Xが46以上であることを特徴とする耐食性
に優れる合金である。
【0016】 X=0.9×Ni+Cr+Mo+W+Ti+Al+Cu ・・・ (a) ただし、式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を
示すさらに、残部Feの一部に代えて、下記イ群および
/またはロ群を選択するのが好ましい。
【0017】イ群…Cu:0.01〜3%、Mo:0.01〜15
%およびW:0.01〜5%のうちから1種または2種以上
を含む ロ群…Ca、B、MgおよびZrのうちから1種または
2種以上を合計で0.0005〜0.01%を含む
【0018】(2) 上記(1)の合金は、JIS G 0555 に規定
する非金属介在物の清浄度が d60×400≦0.05%であ
り、かつ非金属介在物の平均組成が、Al:70%
以下、MgO:30%以下およびSiO:1%以上にす
るのが好ましい。
【0019】(3) 上記(1)または(2)の合金からなり、少
なくとも半導体製造用ガスと接する面の表面粗さがRma
x≦10μmであることを特徴とする半導体製造装置用部
材である。
【0020】(4) 上記(1)または(2)の化学組成および非
金属介在物の性状を有する鋳片を、1000〜1280℃の温度
領域で4時間以上保持した後、熱間圧延または熱間鍛造
により素材を製造し、次いでこの素材に熱間加工を施し
た後、冷間加工または機械加工によって少なくとも半導
体製造用ガスと接する面の表面粗さをRmax≦10μmと
することを特徴とする半導体製造装置用部材の製造方法
である。
【0021】本発明で規定する非金属介在物の平均組成
とは、抽出残渣分析により求めたAl、Si
、CaO、MnOおよびMgOの比率を示したもの
である。また、非金属介在物の性状とは、上記の介在物
の平均組成に加え、清浄度の特性を考慮したものであ
る。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の合金および半導体製造装
置用部材の製造方法を上記のように規定した理由を、合
金の化学組成等および部材の製造方法に区分して説明す
る。以下の説明のおいて、成分の含有量は質量%を示
す。
【0023】1.合金の化学組成および介在物の組成等 C:0.03%以下 Cはオーステナイト相を安定させて強度を高めるために
添加するが、炭化物を形成して耐食性を劣化させるの
で、0.03%以下に限定する。耐食性の向上にはC含有量
が少ない方がよく、好ましくは0.01%以下である。ただ
し、所定の強度を確保するには、0.003%以上含有させ
るのが好ましい。
【0024】Si:0.01〜1% Siは脱酸剤として有効であるから添加するが、その含
有量が1.0%を超えると熱間加工性と衝撃性が劣化する
ので、Si含有量の上限を1.0%とする。一方、介在物
の特性としてSiOは展延性に優れ、冷間加工時に割
れを生じにくい性質がある。この特性を有効に発揮させ
るには、含有量の下限を0.01%とする。好ましいSi含
有量は、0.1〜0.8%である。
【0025】Mn:1%以下 Mnは、Siと同様に脱酸作用を発揮するが、蒸気圧が
高く溶接時にヒュームとなり、その後表面に凝着するこ
とになる。Mnが凝着した部位は腐食され易いことか
ら、Mn含有量は低い方がよいので、その上限を1.0%
とし、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.20以下
である。
【0026】Ni:30〜65% Niは耐食性を向上させる元素であり、特に、全面腐食
に対する耐食性に優れることから、本発明の合金におけ
る必須の基本成分である。Ni含有量が30%未満では、
所定の耐食性が得られない。一方、Ni含有量が65%を
超えるようになると、もともと高価であることから製造
コストが高騰すると同時に、変形抵抗が高くなって熱間
加工性が悪化し、製造効率も劣化する。このため、Ni
含有量は30〜65%とし、好ましくは30〜50%である。
【0027】Cr:18〜25% Crは、Niと同様に、耐食性を向上させる元素であ
り、孔食および粒界腐食に対して優れた耐食性を発揮す
るので、本発明の合金における重要な基本成分である。
このような耐食性を発揮するには、18%以上の含有が必
要になる。一方、Cr含有量が多くなると、金属間化合
物の形成が促進され、合金組織の安定性が損なわれるこ
とになるので、その上限を25%とした。好ましいCr含
有量は、19〜23%である。
【0028】Ti:0.001〜1.2% Tiは炭化物や窒化物を形成し易いので、C含有にとも
なう耐食性の低下を補う効果があると同時に、Sの固定
と強度の確保に有効な元素である。これらの作用を発揮
させるには、Tiを0.001%以上含有させる必要があ
る。一方、Tiを多量に含有させると、低融点化合物を
生成し熱間加工性を低下させることになるので、その含
有量は1.2%以下に限定する。
【0029】Al:0.001〜0.6% Alは合金表面に微細な酸化物を生成し、耐食性の向上
に寄与するので、0.001%以上含有させる。しかし、多
量に含有させると、溶接時に大気中の酸素と結合して酸
化物を形成し、組立施工時の溶接性を劣化させる。さら
に、脱酸生成物であるアルミナ(Al)は硬質な
介在物であり、冷間加工時に母材との間にクラックを形
成してパーティクルとなるため、回路不良を起こしデバ
イス製品の不良要因となる。このため、Al含有量は、
0.6%以下に限定する。
【0030】P:0.03%以下 Pは鋼中に混入する不純物であり、多量に含有すると靭
性および溶接性が劣化するので、可能な限り少ないほう
がよく、その含有量を0.03%以下に限定する。
【0031】S:0.003%以下 Sも鋼中に混入する不純物であり、多量に含有すると硫
化物系介在物を形成して、熱間加工性を低下させるので
可能な限り少なくする。このため、S含有量は0.003%
以下とする。本発明の合金は変形抵抗が高く、また変形
能も比較的低いことから、熱間加工性の低下を抑制する
ため、S含有量は0.002%以下とするのが好ましい。
【0032】O(酸素):0.01%以下 Oは不純物であり、介在物形成の主要因となるので、可
能な限り少ない方がよく、その含有量は0.01%以下に限
定する。
【0033】N:0.05%以下 Nはガス成分であり、多量に含有させると放出ガスとな
って製品品質の劣化を招くので可能な限り少ないのがよ
い。したがって、N含有量は、0.05%以下に限定する。
【0034】本発明の合金は、上記の成分に加えて、さ
らに下記のイ群および/またはロ群を必要に応じて選択
することができる Cu:0.01〜3%、Mo:0.01〜15%およびW:0.01〜
5%のうちから1種または2種以上(イ群) Cuは耐食性を向上させる元素であるが、3%を超えて
含有させると熱間加工性が低下するので、含有させる場
合はCu含有量を0.01〜3%とし、好ましくは0.01〜2.
8%とする。
【0035】Moも耐食性を向上させる元素であるが、
15%を超えて含有させると熱間加工性が低下するととも
に、高価な元素であり製造コストが増大するので、含有
させる場合は、Mo含有量を0.01〜15%とし、好ましく
は0.01〜14%とする。
【0036】Wも耐食性を向上させる元素であるが、5
%を超えて含有させると熱間加工性が低下するともに、
高価な元素であり製造コストが増大するので、含有させ
る場合には、W含有量を0.01〜5%とし、好ましくは0.
01〜3.5%とする。
【0037】Ca、B、MgおよびZrのうちから1種
または2種以上を0.0005〜0.01%(ロ群) Ca、MgおよびZrは、硫化物を形成しSを固定する
ことによりSによる熱間加工性の劣化を防止する。一
方、Bは、粒界に偏在してSの粒界偏析を抑制すること
で熱間加工性の劣化を防止する。これらの効果はいずれ
も0.0005%以上含有させることで発揮される。さらに、
これらの元素の効果は相乗効果があることから、含有さ
せる場合には、Ca、B、MgおよびZrのうちから1
種または2種以上を合計で0.01%まで含有させればよ
い。これらの元素を多く含有させると、Ni−Mgに代
表される低融点化合物を生成して加工性が悪くなる。こ
のため、これらの元素の合計含有量は0.0005〜0.01%と
し、好ましくは0.001〜0.007%とする。
【0038】本発明の合金では、前述の知見に基づき、
合金の基本成分を下記の(a)式で総合的に表される耐食
性指数Xが46以上になるように調整する必要がある。
【0039】 X=0.9×Ni+Cr+Mo+W+Ti+Al+Cu ・・・ (a) ただし、式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を
示す図1は、(a)式で示される耐食性指数Xと合金の防
食性能(腐食速度指数)との関係を示す図である。同図
の縦軸である腐食速度指数は、後述する表2に示す鋼種
No.1〜19を用いてASTM G48 に規定されている塩化第二
鉄による孔食試験を行い、鋼種No.2の腐食速度を1と
して指数化したものである。
【0040】図1に示す関係から、耐食性指数Xが高く
なればなるほど、腐食速度指数が低減して耐食性に優れ
ることが分かる。発明者の検討によれば、耐食性指数X
を46以上にすれば、半導体製造装置用部材として十分な
耐食性が確保でき、さらに好ましくは耐食性指数Xを50
以上にすることによって、一層の耐食性を確保できるこ
とが明らかである。
【0041】前述の通り、半導体製造装置に用いられる
配管、継ぎ手等の部材では、合金母材中の介在物がパー
ティクルとなって放出され、配管、継ぎ手等の表面にお
いて汚染源になることがある。そのため、本発明の合金
では、上述の化学組成に加え、非金属介在物の清浄度が
JIS G 0555 の規定による d60×400≦0.05%の条件を満
足させるのが好ましい。非金属介在物がこれより多くな
ると、介在物を基点として孔食が発生するからである。
【0042】さらに、非金属介在物の平均組成を規定す
るのが好ましい。通常、酸化物系介在物は、その組成に
よって塑性変形の挙動が異なってくる。AlやM
gOは硬質で変形し難いため、合金母材の塑性変形に追
随して変形できず、合金母材と介在物との間に亀裂を生
じ易くなる。これに対し、SiO、CaOおよびMn
Oは軟質であるため、合金母材の塑性変形に追随して変
形することができ、合金母材と介在物との間に亀裂を生
ずることがない。
【0043】上記の知見を裏付けるため、半導体製造装
置用部材のパーティクルとして捕集された介在物の組成
分析を行うと、AlやMgOがリッチな介在物が
観察された。この結果を踏まえて、組織中に各種の非金
属介在物が存在する供試合金No.1〜11を作製し、後述
する実施例1と同様の熱間鍛造を施した後、冷間圧延し
て、合金母材と非金属介在物の界面での亀裂状態と非金
属介在物の平均組成を調査した。その結果を表1に示
す。亀裂状況は大、中、小の3区分としたが、中程度以
下の亀裂状況であれば、パーティクル発生の恐れがない
ことを確認している。
【0044】表1の調査結果から、AlやMgO
に関しては、許容できる上限組成を規定する必要があ
る。亀裂状態が中程度である場合の上限組成を確認する
と、Alは70%(供試No.3)であり、MgOは3
0%(供試No.5)であった。一方、SiOの下限組成
を確認すると、1%となる(供試No.9、10)。CaO
およびMnOは亀裂発生に対する影響が小さく、その組
成を個別に規定する必要がない。
【0045】
【表1】
【0046】本発明の合金での介在物の性状は、合金母
材中の非金属介在物がパーティクルとなって放出し、配
管、継ぎ手等の汚染源にならないようにするため、その
清浄度をJIS G 0555 の規定による d60×400≦0.05%と
し、同時に平均組成をAl:70%以下、MgO:
30%以下およびSiO:1%以上になるように調整す
るのが好ましい。
【0047】2.半導体製造装置用部材の製造方法 本発明の半導体製造装置用部材、例えば、管材または継
ぎ手は、上述した合金からなり、最終の部材形状に加工
されることによって、少なくとも半導体製造用ガスと接
する面の表面粗さがRmax≦10μmになることを特徴と
している。本発明の部材において、半導体製造用ガスと
接する面の表面粗さをRmax≦10μmと規定しているの
は、パーティクルの吸着を防ぎ、表面の清浄性を確保す
るためである。その製造方法を工程に沿って説明する。
【0048】鋳片の製造に際し、採用する溶解方法は、
電気炉、誘導炉または真空誘導炉による溶解である。本
発明の合金はNiを基本成分とし、他に高価な元素を多
量に含有するため、スクラップを多量に使用できる前述
の溶解法を用いる。また、電気炉溶解法を用いる場合
は、溶解後にAODまたはVODで精錬するのが好まし
い。さらにESRまたはVARで1回若しくは複数回の
再溶解を行うことによって、より清浄性を向上できる。
したがって、より厳しい環境で使用する場合は再溶解法
を採用することが好ましい。
【0049】得られた鋳片は、1000〜1280℃の温度領域
で4時間以上保持した後、熱間圧延または熱間鍛造によ
り熱間加工用の素材が製造される。ここで、1000〜1280
℃の温度領域で4時間以上の加熱を必要とするのは、本
発明の合金ではNiを多量に含有するために変形抵抗が
高く、同時に変形能が低いため、鋳片から素材を製造す
る段階で加熱ソーキングを施して偏析を低減し、加工性
を高めるためである。本発明の合金に対し、充分な加熱
ソーキングの効果を発揮するには、1000〜1280℃の温度
領域で4時間以上の加熱条件が必須になる。
【0050】半導体製造装置用部材が管材である場合に
は、上記の条件で熱間圧延または熱間鍛造によって素材
を製造した後、熱間加工として熱間押出によって鋼管を
製造するのがよい。各種の熱間製管法がある中で、変形
能の低い合金管材の加工には熱間押出法が最も適してい
る。
【0051】熱間製管された管材は、さらに慣用される
表面処理を経たのち、冷間加工によって、例えば、半導
体製造用ガスと接する内面の表面粗さをRmax≦10μm
に仕上げられる。採用される冷間加工としては、冷間圧
延または冷間抽伸がある。突起部や凹部への汚染物質の
付着や堆積を防止するための平滑さとして、表面粗さR
max≦1μmが必要な場合には、冷間加工された管材に
電解研磨を施す。
【0052】次に、半導体製造装置用部材が継ぎ手また
はフランジである場合には、鋼管の場合と同様に、熱間
加工用の素材が製造される。製造された素材は、熱間加
工として熱間圧延または熱間押出が行われ、棒材または
板材に加工される。その後、機械加工、例えば、切削加
工によって、半導体製造用ガスと接する面の表面粗さを
Rmax≦10μmとされる。さらに、必要がある場合に
は、電解研磨を施すことによって、表面粗さRmax≦1
μmを確保することになる。
【0053】
【実施例】本発明の合金から半導体製造装置用部材とし
て管材を製造した場合の効果を、下記の実施例1、2に
基づいて説明する。
【0054】(実施例1)真空誘導炉で溶解し鋳型に鋳
造して、表2に示す化学組成の鋳片を製造した。この鋳
片を1000〜1250℃の温度領域で6時間保持した後、熱間
鍛造を行い、最終的に180mmφの熱間加工用の素材(ビ
レット)とし、外削、穴明け等の機械加工を施した後、
熱間押出法により63.5mmφ×6.0mmt×5000mm長さの素
管材を製造した。さらに、冷間圧延法によって15.6mmφ
×1.2mmtとし、冷間抽伸法により9.5mmφ×0.65mmtの
合金管材を製造した。
【0055】得られた管材から試験材を採取して、非金
属介在物をJIS G 0555 の規定により測定した。その結
果を表2に示す。さらに、同じ管材から試験材を採取し
て、腐食試験を実施した。試験方法は ASTM G48 に規定
されている塩化第二鉄による孔食試験である。
【0056】図2は、実施例1の孔食試験における供試
管材と腐食速度指数との関係を示す図である。同図の供
試管材は、表2の鋼種No.1〜19を示している。本発明
で規定する合金組成および耐食性指数Xの条件を具備す
る本発明例No.1〜13は、孔食試験における腐食速度が
低く抑えられ、耐食性に優れている。
【0057】一方、比較例No.14、15、16および19は、
Ni、Cr成分、または耐食性指数Xのいずれかが本発
明の規定範囲に外れることから、腐食速度が大ききなっ
ている。比較例No.17は、組成中のOが多く含有され、
介在物量の清浄度が0.055%と悪化しているので、介在
物を起点とした孔食が生じ腐食速度が大きくなってい
る。さらに、比較例No.18はCを多く含有し炭化物が多
くなり、これを起点とした孔食が生じ、腐食速度が大き
くなっている。
【0058】確認のため、本発明例の鋼種No.1〜13か
ら採取した試験材を用いて、非金属介在物の平均組成を
測定した。その結果を表3に示す。ここでいう平均組成
は、前述の分析要領によって得られた分析値を平均した
ものである。表3に示すいずれの本発明例とも、非金属
介在物の平均組成がAl:70%以下、MgO:30
%以下およびSiO:1%以上を満足するものであっ
た。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】(実施例2)前記表2の鋼種No.4の組成
からなる鋳片を用いて、合金管材の製造を行った。鋳片
の製造には各種の溶解方法を採用し、得られた鋳片は、
1000〜1300℃の温度領域で加熱ソーキングした後、熱間
圧延により熱間押出用の素材として180mmφの丸ビレッ
トを製造した。このときの溶解方法および加熱ソーキン
グ条件を表4に示す。
【0062】この丸ビレットを熱間押出して外径63.5mm
φ、肉厚8.25mmの素管材を製造し、表4に示す加工条件
で冷間加工を行い、最終的に外径9.53mmφ、肉厚1.0mm
の管材を得て、管材No.401〜413とした。その後、管材N
o.408を除いて、電解研磨を行って、冷間加工後の表面
粗さ、および電解研磨後の表面粗さを測定した。さら
に、非金属介在物の清浄度も測定した。これらの結果を
併せて表4に示す。
【0063】表4の結果から、溶解条件ではESRおよ
び/またはVARでの二重溶解を施すことによって、非
金属介在物量が減少し清浄度が向上している(管材No.4
03、404、405)。本発明の合金管材の製造では、鋳片の
加熱ソーキングが不適であると、熱間圧延で疵の発生が
ありその後の管材製造ができなくなる。具体的には、管
材No.406では、加熱ソーキングの保持時間が短いため、
十分な均熱が得られず疵が発生した。また、管材No.407
では、1280℃を超えて1300℃にまで加熱したため、固相
線の温度近傍になり局部的な溶融状態となり、液膜脆化
で大きな疵が発生し、管材の製造を止めざるを得なかっ
た。
【0064】
【表4】
【0065】
【発明の効果】本発明の合金によれば、合金の成分設
計、および非金属介在物の清浄度および平均組成を好ま
しい性状に改善し、さらに適切な製造方法を選択するこ
とによって、耐食性に優れ、半導体製造装置用として最
適な部材を得ることができる。そして、この部材を腐食
性ガスに曝される半導体製造装置用として採用すれば、
製造装置の長寿命化やLSIの製品不良が抑制できるだ
けでなく、Siウェーハの効率生産の要請にも対応する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐食性指数 Xと合金の防食性能(腐食速度指
数)との関係を示す図である。
【図2】実施例1の孔食試験における供試管材と腐食速
度指数との関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/10 C22F 1/10 H // C22F 1/00 612 1/00 612 626 626 640 640D 640Z 641 641Z 682 682 683 683 685 685Z 691 691B 691C

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C:0.03%以下、Si:0.01〜
    1%、Mn:1%以下、Ni:30〜65%、Cr:18〜25
    %、Ti:0.001〜1.2%およびAl:0.001〜0.6%を含
    有し、残部は実質的にFeからなり、不純物としてP:
    0.03%以下、S:0.003%以下、O(酸素):0.01%以
    下およびN:0.05%以下を含み、さらに下記(a)式で表
    される耐食性指数Xが46以上であることを特徴とする耐
    食性に優れる合金。 X=0.9×Ni+Cr+Mo+W+Ti+Al+Cu ・・・ (a) ただし、式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を
    示す
  2. 【請求項2】残部Feの一部に代えて、下記イ群および
    /またはロ群を選択することを特徴とする請求項1に記
    載の耐食性に優れる合金。 イ群…Cu:0.01〜3%、Mo:0.01〜15%およびW:
    0.01〜5%のうちから1種または2種以上を含む ロ群…Ca、B、MgおよびZrのうちから1種または
    2種以上を合計で0.0005〜0.01%を含む
  3. 【請求項3】JIS G 0555 に規定する非金属介在物の清
    浄度が d60×400≦0.05%であり、かつ非金属介在物の
    平均組成が、Al:70%以下、MgO:30%以下
    およびSiO:1%以上であることを特徴とする請求
    項1または2に記載の耐食性に優れる合金。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかの合金からなり、
    少なくとも半導体製造用ガスと接する面の表面粗さがR
    max≦10μmであることを特徴とする半導体製造装置用
    部材。
  5. 【請求項5】請求項1〜3のいずれかの化学組成および
    非金属介在物の性状からなる鋳片を、1000〜1280℃の温
    度領域で4時間以上保持した後、熱間圧延または熱間鍛
    造により素材を製造し、次いでこの素材に熱間加工を施
    した後、冷間加工または機械加工によって少なくとも半
    導体製造用ガスと接する面の表面粗さをRmax≦10μm
    とすることを特徴とする半導体製造装置用部材の製造方
    法。
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