JP2003025377A - 車両灯具用レンズ体およびその成形用金型並びにその製造方法 - Google Patents

車両灯具用レンズ体およびその成形用金型並びにその製造方法

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JP2003025377A JP2001220686A JP2001220686A JP2003025377A JP 2003025377 A JP2003025377 A JP 2003025377A JP 2001220686 A JP2001220686 A JP 2001220686A JP 2001220686 A JP2001220686 A JP 2001220686A JP 2003025377 A JP2003025377 A JP 2003025377A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 薄肉部分と厚肉部分とを共有して一体形成さ
れるにも拘わらず、各部分毎に要求値の範囲内の寸法精
度が容易に得られること。 【解決手段】 ランプハウジングの開口部を覆う薄肉の
カバー部2と、このカバー部2の正面部分2aに外方へ
突出させて厚肉に形成される光学的に作用する光学部3
とを有して透明樹脂材を用いた射出成形で一体形成され
てなる車両灯具用レンズ体1であって、カバー部2は、
金型のキャビティ内の光学部3の樹脂材の固化後に、光
学部3の内側部分を含めてキャビティの残容量の全体に
充填された透明樹脂材により形成される。光学部3とカ
バー部2とを別々に形成するようにしたので、それぞれ
金型温度や射出速度や冷却速度等の加工条件を最適にし
て形成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、車両の
プロジェクタ式ランプのアウタレンズとして適用される
車両灯具用レンズ体およびその成形用金型並びにその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図9は、この種の車両灯具用レンズ体1
00を示す。このレンズ体100は、ランプハウジング
4の開口部4aを覆う薄肉のカバー部2と、このカバー
部2の正面部分2aに外方へ突出させて厚肉に形成され
る光学的に作用する光学部(凸レンズ部)3とを有して
透明樹脂材を用いた射出成形で一体形成されている。な
お、図9中、符号5はリフレクタ、符号6は光源バル
ブ、符号7はレンズ体100とランプハウジング4とに
より画成された灯室をそれぞれ示す。
【0003】図10(a)、(b)は、レンズ体100
を形成するための成形用金型200を示す。この成形用
金型200は、図10(b)に示すように、レンズ体1
00の外側面(灯室7と反対側の側面)に対応するキャ
ビティ一側壁13が形成されている雌型11と、レンズ
体100の内側面(灯室7側の側面)に対応するキャビ
ティ他側壁14およびサイドゲート15(図10(a)
参照)が形成されている雄型12とから構成されてい
る。このとき、キャビティ一側壁13は、光学部3の外
側面に対応する球面壁13aと、カバー部2の外側面に
対応する平坦壁13bとを有して形成されている。
【0004】そして従来では、レンズ体100は、成形
用金型10を用いた射出成形により、一回の形成で、カ
バー部2と光学部3とを備えた全体が形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに形成されたレンズ体100は、光学部3にヒケが生
じて光学部3の厚み等の寸法精度を要求値の範囲内に設
定することが難しいばかりでなく、金型10と接する表
面部分にフローマークが生じて外観を低下させる、とい
う課題を有している。
【0006】このため、発明者は、さらに検討を重ね、
光学部3に対応する部分に樹脂ゲートを設置して、まず
キャビティ全体に一般的な射出速度で樹脂材を充填し、
キャビティのほぼ全容量に行き渡った時点で、射出速度
を低速に切り換えると共に、光学部3に一定時間樹脂材
を保圧充填するレンズ体100の製造方法も試みたが、
寸法精度および外観に幾分の改良が見られたものの、未
だ満足する品質のものは得られなかった。
【0007】そこで、この発明は、薄肉部分と厚肉部分
とを共有して一体形成されるにも拘わらず、各部分毎に
要求値の範囲内の寸法精度が容易に得られると共に、フ
ローマークの出現を無くして外観上の向上も確保できる
車両灯具用レンズ体およびその成形用金型並びにその製
造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、請求項1の発明は、ランプハウジングの開口部を覆
う薄肉のカバー部と、このカバー部に厚肉に形成される
光学的に作用する光学部とを有して透明樹脂材を用いた
射出成形で一体形成されてなる車両灯具用レンズ体であ
って、前記カバー部および光学部の内いずれか一方は、
他方の樹脂材の金型のキャビティ内の固化後に、前記キ
ャビティの残容量の全体に充填された前記透明樹脂材に
より形成されることを特徴とする。
【0009】このため、請求項1の発明では、光学部と
カバー部とを別々に形成するようにしたので、それぞれ
金型温度や射出速度や冷却速度等の加工条件を最適にし
て形成することができる。
【0010】また、一方がカバー部で、他方が光学部で
ある場合は、光学部をカバー部よりも先に形成すること
になるので、光学部の樹脂材の固化時に生じたヒケ部分
とゲート跡は、カバー部を形成する樹脂材により埋めら
れて、成形品の外側面に現出することがない。
【0011】また、請求項2の発明は、請求項1の車両
灯具用レンズ体の成形用金型であって、前記キャビティ
のゲートは、前記光学部のキャビティに対して進退動す
るように取り付けられ前進して前記光学部のキャビティ
の根本部分を閉塞すると共に、後退して前記光学部およ
び前記カバー部の各キャビティを含む全キャビティの全
容積を連通させるスライド駒に設けられており、かつ前
記スライド駒は、前記光学部のキャビティへ前記ゲート
を介して樹脂材を充填するために前進すると共に該樹脂
材の固化後後退するように移動制御されていることを特
徴とする。
【0012】このため、請求項2の発明では、スライド
駒の前進で光学部のキャビティ内のみに樹脂材を充填し
て光学部を形成することができると共に、その後スライ
ド駒の後退で光学部の内側面側の内側キャビティおよび
カバー部のキャビティに樹脂材を充填して光学部を除い
たレンズ体の残余部分を形成することができる。このよ
うに、光学部とカバー部とを別々に形成することができ
るので、それぞれ金型温度や冷却速度や射出速度等の加
工条件を最適に設定することができる。
【0013】また、スライド駒の移動制御により光学部
をカバー部よりも先に形成するようにしたので、光学部
の樹脂材の固化時に生じたヒケ部分とゲート跡は、カバ
ー部を形成する樹脂材により埋められて、成形品の外側
面に現出することがない。
【0014】また、スライド駒に設けられるゲートは、
スライド駒の進退動により、光学部とカバー部の形成に
共用できる。
【0015】また、請求項3の発明は、請求項2の車両
灯具用レンズ体の成形用金型であって、前記光学部のキ
ャビティの周辺の金型部分には、前記キャビティへの樹
脂材の充填の際に前記金型部分を部分的に加熱する温度
調節用ヒータが、内蔵されていることを特徴とする。
【0016】このため、請求項3の発明では、光学部の
形成時の金型温度を、カバー部の形成時と独立して最適
条件に設定することができる。
【0017】また、請求項4の発明は、請求項2または
3の車両灯具用レンズ体の成形用金型であって、前記光
学部のキャビティの根本部分の周縁部に、前記スライド
駒の先端部が突き当たる段部が形成されていることを特
徴とする。
【0018】このため、請求項4の発明では、スライド
駒の先端部が段部に突き当たることによって、スライド
駒の精確な移動ストロークが得られると共に、光学部の
キャビティ内に充填された樹脂材の外部へのはみ出しも
防ぐことができる。
【0019】また、請求項5の発明は、請求項2〜4の
いずれか1項の車両灯具用レンズ体の成形用金型であっ
て、前記キャビティのゲートが、ピンポイントゲートで
構成されていることを特徴とする。
【0020】このため、請求項5の発明では、射出成形
品に形成されるゲート跡は、ピンポイントゲートによる
ものであるから小さく、配光性能上からも外観上からも
無視できるものとして形成される。
【0021】また、請求項6の発明は、請求項1の車両
灯具用レンズ体の製造方法であって、前記射出成形は、
前記キャビティのゲートが、前記光学部のキャビティに
対して進退動するように取り付けられ前進して前記光学
部のキャビティの根本部分を閉塞すると共に後退して前
記光学部および前記カバー部の各キャビティを含む前記
キャビティの全容積を連通させるスライド駒に設けられ
ている成形用金型を用いた2色成形法で、前記スライド
駒が前進した位置での前記ゲートを用いた一次モールド
により前記光学部を形成固化した後、前記スライド駒が
後退した位置での前記ゲートを用いた二次モールドによ
り前記光学部の内側部分および前記カバー部を含めたレ
ンズ体の残余部分を形成するようにしたことを特徴とす
る。
【0022】このため、請求項6の発明では、2色成形
法により、光学部とカバー部とを別々に形成するように
したので、それぞれ金型温度や冷却速度や射出速度等の
加工条件を最適にして形成することができる。
【0023】また、一次モールドにより光学部を形成
し、二次モールドにより光学部の内側部分およびカバー
部を含めたレンズ体の残余部分を形成するようにしたの
で、光学部の樹脂材の固化時に生じたヒケ部分は、二次
モールドの樹脂材により埋められて、成形品の外側面に
現出することがない。
【0024】また、請求項7の発明は、請求項6の車両
灯具用レンズ体の製造方法であって、前記一次モールド
は、前記二次モールドと比較して、前記光学部のキャビ
ティの周辺の金型部分を高温に設定すると共に、樹脂材
充填速度を低速に設定して前記光学部を形成するように
したことを特徴とする。
【0025】このため、請求項7の発明では、一次モー
ルドの樹脂材充填速度を低速にすることにより、光学部
にフローマークが生じるのを抑制することができると共
に、一次モールドを二次モールドよりも高温下で実行す
ることにより、光学部と、カバー部を含む他の部分との
冷却速度をほぼ一致させることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づき説明する。
【0027】図1は、この発明の一実施の形態としての
車両灯具用レンズ体1を示す。このレンズ体1は、従来
と同様に、ランプハウジングの開口部を覆う薄肉のカバ
ー部2と、このカバー部2の正面部分2aに外方へ突出
させて厚肉に形成される光学的に作用する光学部3とを
有して透明樹脂材を用いた射出成形で一体形成されて大
略構成されている。光学部3は、凸レンズ状に形成され
る。
【0028】そして、このレンズ体1は、従来のものと
異なり、カバー部2が、金型のキャビティ内の光学部3
の樹脂材の固化後に、光学部3の内側部分(図7に示す
灯室7側の部分)3aを含めてキャビティの残容量の全
体に充填された透明樹脂材により形成されて全体構成さ
れている。
【0029】このときの透明樹脂材としては、透明熱可
塑性樹脂材、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)、
アクリル樹脂(PMMA)、シクロオレフィンポリマー
樹脂(COP)、および透明ポリアミド樹脂(PA)が
考えられ、好ましくはポリカーボネート樹脂が用いられ
る。ポリカーボネート樹脂の分子量は、樹脂の性能を考
慮すると、好ましくは20,000以下、より好ましく
は15,000〜20,000である。
【0030】添加剤として、透明熱可塑性樹脂材に、顔
料、耐電防止剤、および離型剤等を適宜選択して加えて
もよい。
【0031】このように構成されたレンズ体1は、光学
部3とカバー部2とを別々に形成するようにしたので、
それぞれ金型温度や射出速度や冷却速度等の加工条件を
最適にして形成することができ、これによりカバー部2
の薄肉部分と光学部3の厚肉部分とを共有して一体形成
されるにも拘わらず、各部分毎に要求値の範囲内の寸法
精度が容易に得られると共に、フローマークの出現を無
くして外観上の向上も確保できる。
【0032】その上、レンズ体1は、光学部3をカバー
部2よりも先に形成することにより、光学部3の樹脂材
の固化時に生じたヒケ部分は、カバー部2を形成する樹
脂材により埋められて、成形品の外側面に現出すること
がないので、この点でも寸法精度および外観の向上を確
保することができる。
【0033】図2(a),(b)は、レンズ体1の成形
用金型20を示す。この金型20は、キャビティのゲー
ト8が、光学部3のキャビティ17に対して進退動する
ように取り付けられ前進してキャビティ17の根本部分
を閉塞すると共に後退して光学部3およびカバー部2の
各キャビティ17、18を含む全キャビティ16(図3
(a),(b)参照)の全容積を連通させるスライド駒
9に設けられており、かつスライド駒9は、光学部3の
キャビティ17へゲート8を介して樹脂材を充填するた
めに前進すると共に該樹脂材の固化後後退するように移
動制御されて全体構成されている。
【0034】具体的には、金型20は、レンズ体1の外
側面(灯室7と反対側の側面)に対応するキャビティ一
側壁13が形成されている雌型11と、レンズ体1の内
側面(灯室7側の側面)に対応するキャビティ他側壁1
4が形成されている雄型12とから構成されている。こ
のとき、キャビティ一側壁13は、光学部3の外側面に
対応する球面壁13aと、カバー部2の外側面に対応す
る平坦壁13bとを有して形成されており、かつスライ
ド駒9は、図2(b)中、矢印Aで示すように、その先
端が球面壁13aに対向するキャビティ他側壁14から
出没するように雄型12に取り付けられている。
【0035】雌型11と雄型12との型締めにより、キ
ャビティ17は、球面壁13aとスライド駒9の先端面
との間で構成され、キャビティ18は、平坦壁13bと
キャビティ他側壁14との間で構成される。スライド駒
9は、例えば油圧シリンダ(図示せず)を備えて構成さ
れており、キャビティ17内の樹脂材の有無および固化
状態を検出するセンサ(図示せず)からの信号に基づい
て前記油圧シリンダを介して矢印A方向に移動制御させ
られる。
【0036】このように構成された金型20は、スライ
ド駒9の前進で光学部3のキャビティ17内のみに樹脂
材を充填して光学部3を形成することができると共に、
その後スライド駒9の後退で光学部3の内側面側の内側
キャビティおよびカバー部2のキャビティ18に樹脂材
を充填して光学部3を除いたレンズ体1の残余部分を形
成することができる。このように金型20は、光学部3
とカバー部2とを別々に形成することができるので、そ
れぞれ金型温度や、冷却速度や、射出速度等の加工条件
を最適に設定することができ、これにより前述した作用
効果を奏するレンズ体1を容易に形成することができ
る。
【0037】また、スライド駒9の移動制御により光学
部3をカバー部2よりも先に形成するようにしたので、
光学部3の樹脂材の固化時に生じたヒケ部分とゲート跡
は、カバー部2を形成する樹脂材により埋められて、成
形品の外側面に現出することがない。このため金型20
は、成形品の寸法精度の確保は勿論のこと、その外観上
の向上をも確保することができる。
【0038】また、スライド駒9に設けられるゲート8
は、スライド駒9の進退動により、光学部3とカバー部
2の形成に共用できる。このため金型20は、ゲート8
を一個設けるだけで良く、構造の複雑化を伴うこともな
い。
【0039】また、好ましくは、金型20は、光学部3
のキャビティ17の周辺の金型部分には、キャビティ1
7への樹脂材の充填の際に金型部分を部分的に加熱する
温度調節用ヒータ19が、内蔵されて構成される。な
お、スライド駒9にもヒータ22が内蔵されており、こ
のヒータ22は、ゲート8に連通するランナー内の樹脂
材Rを加熱している。
【0040】この構成によれば、金型20は、光学部3
の形成時の金型温度を、カバー部2の形成時と独立して
最適条件に設定することができる。すなわち、金型20
は、光学部3の形成時の金型温度を、カバー部2の形成
時よりも高温に設定することができ、これにより前述し
た作用効果を奏するレンズ体1を一層容易に形成するこ
とができる。
【0041】また、さらに好ましくは、金型20は、光
学部3のキャビティ17の根本部分の周縁部に、スライ
ド駒9の先端部が突き当たる段部21(図3(b)参
照)が形成されて構成される。
【0042】この構成によれば、スライド駒9の先端部
が段部21に突き当たることによって、スライド駒9の
精確な移動ストロークが得られると共に、光学部3のキ
ャビティ17内に充填された樹脂材の外部へのはみ出し
も防ぐことができ、これによりレンズ体1の寸法精度お
よび外観を共に向上させることができる。
【0043】また、さらに好ましくは、金型20は、キ
ャビティ16のゲート8が、ピンポイントゲートで構成
される。このピンポイントゲートは、ピンゲートあるい
はバルブゲートともいう。
【0044】この構成によれば、射出成形品に形成され
るゲート跡は、ピンポイントゲートによるものであるか
ら小さく、配光性能上からも外観上からも無視できるも
のとして形成され、これにより射出成形品を、何等後加
工を加えることなしにそのままレンズ体1として使用可
能である。
【0045】次に、図3〜図6に基づいて、金型20を
用いた射出成形によりレンズ体1を形成する製造方法に
ついて説明する。
【0046】この製造方法における射出成形は、全キャ
ビティ16のゲート8が、光学部3のキャビティ17に
対して進退動するように取り付けられ前進して光学部3
のキャビティ17の根本部分を閉塞すると共に後退して
光学部3およびカバー部2の各キャビティ17,18を
含む全キャビティ16の全容積を連通させるスライド駒
9に設けられている成形用金型20を用いた2色成形法
で、スライド駒9が前進した位置でのゲート8を用いた
一次モールドにより光学部3を形成固化した後、スライ
ド駒9が後退した位置でのゲート8を用いた二次モール
ドにより光学部3の内側部分およびカバー部2を含めた
レンズ体1の残余部分を形成するようにした。
【0047】そして、この製造方法は、好ましくは、一
次モールドは、二次モールドと比較して、光学部3のキ
ャビティ17の周辺の金型部分を高温に設定すると共
に、樹脂材充填速度を低速に設定して光学部3を形成す
るようにする。
【0048】具体的には、まず、図3(a)、(b)に
示すように、金型20の雌型11と雄型12とを型締め
した後、スライド駒9をa方向に前進させてその先端部
を段部21に突き当ててキャビティ17の根本部分をス
ライド駒9の先端面で閉塞する。このとき、キャビティ
17の周辺の金型部分は、温度調節用ヒータ19により
高温に設定されている。
【0049】このセット状態で一次モールドが行われ
る。すなわち、図4(a)、(b)に示すように、ゲー
ト8から樹脂材Rが矢印b方向に低速でキャビティ17
内に充填される。充填後は、温度調節用ヒータ19を停
止し一定時間冷却後、樹脂材Rが固化するまでこの状態
を維持する。キャビティ17内の樹脂材Rの固化によ
り、光学部3を形成することができる。
【0050】キャビティ17内の樹脂材Rの固化後は、
図5(a)、(b)に示すように、スライド駒9をc方
向に後退させる。この後退により、光学部3の内側面側
に内側キャビティ18aが出現し、この内側キャビティ
18aを介してカバー部2のキャビティ18を含む残余
のキャビティが連通することになる。
【0051】このキャビティの連通状態で二次モールド
が行われる。すなわち、図6(a)、(b)に示すよう
に、ゲート8から樹脂材Rが矢印d方向に通常速度で内
側キャビティ18aを介してカバー部2のキャビティ1
8を含む残余のキャビティ内に充填される。このとき金
型20は、一次モールドよりも低温の通常の金型温度に
設定される。この充填後一定時間冷却して樹脂材Rを固
化することにより、光学部3を除いたレンズ体1の残余
部分を形成することができ、以後型開きすることによっ
て成形品としてレンズ体1を得ることができる。内側キ
ャビティ18a内の樹脂材Rの固化により、光学部3の
内側部分3a(図1(a)参照)が形成される。
【0052】この製造方法によれば、2色成形法によ
り、光学部とカバー部とを別々に形成するようにしたの
で、それぞれ金型温度や、冷却速度や、射出速度等の加
工条件を最適にして形成することができるので、前述し
た作用効果を奏するレンズ体1を容易に形成することが
できる。
【0053】また、この製造方法は、一次モールドによ
り光学部3を形成し、二次モールドにより光学部3の内
側部分およびカバー部2を含めたレンズ体1の残余部分
を形成するようにしたので、光学部3の樹脂材の固化時
に生じたヒケ部分とゲート跡は、二次モールドの樹脂材
により埋められて、成形品の外側面に現出することがな
いので、成形品の寸法精度の確保は勿論のこと、その外
観上の向上をも確保することができる。
【0054】さらに、この製造方法は、一次モールドの
樹脂材充填速度を低速にすることにより、光学部3にフ
ローマークが生じるのを抑制することができると共に、
一次モールドを二次モールドよりも高温下で実行するこ
とにより、光学部3と、カバー部2を含む他の部分との
冷却速度をほぼ一致させることができるので、この点で
も成形品の寸法精度の確保は勿論のこと、その外観上の
向上をも確保することができる。
【0055】また、本発明の車両灯具用レンズ体の光学
部3は、図1に示すように、薄肉のカバー部2に凸レン
ズ状に外方へ突出させて厚肉に形成されるばかりでな
く、図7に示すように、薄肉のカバー部2に表裏面がや
や凹面状に凹んだ厚肉部として形成しても良く、あるい
は図8に示すように、薄肉のカバー部2に凸レンズ状に
内方へ突出させて厚肉に形成しても良く、要するに、薄
肉のカバー部2に厚肉に一体形成したものであれば、そ
の形状には何等限定されるものではない。
【0056】さらに、本発明の車両灯具用レンズ体の光
学部3は、カバー部2よりも先に形成されるばかりでな
く、カバー部2よりも後に形成しても良い。
【0057】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば次のような効果を奏することができる。
【0058】すなわち、請求項1の発明によれば、光学
部とカバー部とを別々に形成するようにしたので、それ
ぞれ金型温度や射出速度や冷却速度等の加工条件を最適
にして形成することができ、これによりカバー部の薄肉
部分と光学部の厚肉部分とを共有して一体形成されるに
も拘わらず、各部分毎に要求値の範囲内の寸法精度が容
易に得られると共に、フローマークの出現を無くして外
観上の向上も確保できる車両灯具用レンズ体を提供する
ことができる。
【0059】さらに、請求項1の発明によれば、光学部
をカバー部よりも先に形成した場合には、光学部の樹脂
材の固化時に生じたヒケ部分とゲート跡は、カバー部を
形成する樹脂材により埋められて、成形品の外側面に現
出することがないので、この点でも寸法精度および外観
の向上を確保することができる車両灯具用レンズ体を提
供することができる。
【0060】また、請求項2の発明によれば、スライド
駒の進退動により、光学部とカバー部とを別々に形成す
ることができるので、それぞれ金型温度や射出速度等の
加工条件を最適に設定することができ、これにより請求
項1の車両灯具用レンズ体を容易に形成することができ
る成形用金型を提供することができる。
【0061】さらに、請求項2の発明によれば、スライ
ド駒の移動制御により光学部をカバー部よりも先に形成
するようにしたので、光学部の樹脂材の固化時に生じた
ヒケ部分とゲート跡は、カバー部を形成する樹脂材によ
り埋められて、成形品の外側面に現出することがないの
で、成形品の寸法精度の確保は勿論のこと、その外観上
の向上をも確保することができる。
【0062】またさらに、請求項2の発明によれば、ス
ライド駒に設けられるゲートは、スライド駒の進退動に
より、光学部とカバー部の形成に共用できるので、ゲー
トを一個設けるだけで良く、これにより構造の複雑化を
伴うこともない。
【0063】また、請求項3の発明によれば、光学部の
形成時の金型温度を、カバー部の形成時と独立して最適
条件に設定することができるので、請求項2の発明の効
果に加えて、請求項1の車両灯具用レンズ体を一層容易
に形成することができる。
【0064】また、請求項4の発明によれば、スライド
駒の先端部が、光学部のキャビティの段部に突き当たる
ことによって、スライド駒の精確な移動ストロークが得
られると共に、前記キャビティ内に充填された樹脂材の
外部へのはみ出しも防ぐことができ、これにより請求項
2または3の発明の効果に加えて、レンズ体の寸法精度
および外観を共に向上させることができる。
【0065】また、請求項5の発明によれば、射出成形
品に形成されるゲート跡は、ピンポイントゲートによる
ものであるから小さく、配光性能上からも外観上からも
無視できるものとして形成され、これにより請求項2〜
4のいずれか1項の発明の効果に加えて、射出成形品
を、何等後加工を加えることなしにそのまま車両灯具用
レンズ体として使用可能である。
【0066】また、請求項6の発明によれば、2色成形
法により、光学部とカバー部とを別々に形成するように
したので、それぞれ金型温度や、冷却速度や、射出速度
等の加工条件を最適にして形成することができるので、
請求項1の車両灯具用レンズ体を容易に形成することが
できる製造方法を提供することができる。
【0067】さらに、請求項6の発明によれば、一次モ
ールドにより光学部を形成し、二次モールドにより光学
部の内側部分およびカバー部を含めたレンズ体の残余部
分を形成するようにしたので、光学部の樹脂材の固化時
に生じたヒケ部分とゲート跡は、二次モールドの樹脂材
により埋められて、成形品の外側面に現出することがな
いので、成形品の寸法精度の確保は勿論のこと、その外
観上の向上をも確保することができる。
【0068】また、請求項7の発明によれば、一次モー
ルドの樹脂材充填速度を低速にすることにより、光学部
にフローマークが生じるのを抑制することができると共
に、一次モールドを二次モールドよりも高温下で実行す
ることにより、光学部と、カバー部を含む他の部分との
冷却速度をほぼ一致させることができるので、これによ
り請求項6の発明の効果に加えて、成形品の寸法精度の
確保は勿論のこと、その外観上の向上をも確保すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態としての車両灯具用レ
ンズ体を示し、(a)は(b)のIa−Ia線に沿う断
面図、(b)はその正面図である。
【図2】図1の車両灯具用レンズ体を成形するための成
形用金型を示し、(a)はその平面図、(b)は(a)
のIIb−IIb線に沿う断面図である。
【図3】図1の車両灯具用レンズ体を成形するための製
造方法の説明図で、スライド駒のセット工程を示し、
(a)は金型全体の断面図、(b)はその要部拡大断面
図である。
【図4】図1の車両灯具用レンズ体を成形するための製
造方法の説明図で、一次モールド工程を示し、(a)は
金型全体の断面図、(b)はその要部拡大断面図であ
る。
【図5】図1の車両灯具用レンズ体を成形するための製
造方法の説明図で、一次モールド工程と二次モールド工
程の中間工程を示し、(a)は金型全体の断面図、
(b)はその要部拡大断面図である。
【図6】図1の車両灯具用レンズ体を成形するための製
造方法の説明図で、二次モールド工程を示し、(a)は
金型全体の断面図、(b)はその要部拡大断面図であ
る。
【図7】この発明の他の実施の形態としての車両灯具用
レンズ体の断面図である。
【図8】この発明のさらに他の実施の形態としての車両
灯具用レンズ体の断面図である。
【図9】従来のレンズ体を車両灯具に適用した状態の概
略断面図である。
【図10】従来のレンズ体を成形するための成形用金型
を示し、(a)はその平面図、(b)は(a)のVII
Ib−VIIIb線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1 レンズ体(車両灯具用レンズ体) 2 カバー部 2a 正面部分(カバー部の) 3 光学部 4 ランプハウジング 4a 開口部 8 ゲート 9 スライド駒 16 全キャビティ 17 キャビティ(光学部の) 18 キャビティ(カバー部の) 19 温度調節用ヒータ 20 金型(成形用金型) 21 段部 R 樹脂材(透明樹脂材)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B29L 31:34 B29L 31:34 Fターム(参考) 4F202 AG03 AH17 AH73 AK09 AR06 AR08 CA11 CB01 CB27 CK06 CK54 CN01 4F206 AG03 AH17 AH73 AK09 AR064 AR082 JA07 JB25 JL02 JM04 JN12 JN43 JQ81

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ランプハウジングの開口部を覆う薄肉の
    カバー部と、このカバー部に厚肉に形成される光学的に
    作用する光学部とを有して透明樹脂材を用いた射出成形
    で一体形成されてなる車両灯具用レンズ体であって、 前記カバー部および光学部の内いずれか一方は、他方の
    樹脂材の金型のキャビティ内の固化後に、前記キャビテ
    ィの残容量の全体に充填された前記透明樹脂材により形
    成されることを特徴とする車両灯具用レンズ体。
  2. 【請求項2】 請求項1の車両灯具用レンズ体の成形用
    金型であって、 前記キャビティのゲートは、前記光学部のキャビティに
    対して進退動するように取り付けられ前進して前記光学
    部のキャビティの根本部分を閉塞すると共に後退して前
    記光学部および前記カバー部の各キャビティを含む全キ
    ャビティの全容積を連通させるスライド駒に設けられて
    おり、かつ前記スライド駒は、前記光学部のキャビティ
    へ前記ゲートを介して樹脂材を充填するために前進する
    と共に該樹脂材の固化後後退するように移動制御されて
    いることを特徴とする車両灯具用レンズ体の成形用金
    型。
  3. 【請求項3】 請求項2の車両灯具用レンズ体の成形用
    金型であって、 前記光学部のキャビティの周辺の金型部分には、前記キ
    ャビティへの樹脂材の充填の際に前記金型部分を部分的
    に加熱する温度調節用ヒータが、内蔵されていることを
    特徴とする車両灯具用レンズ体の成形用金型。
  4. 【請求項4】 請求項2または3の車両灯具用レンズ体
    の成形用金型であって、 前記光学部のキャビティの根本部分の周縁部に、前記ス
    ライド駒の先端部が突き当たる段部が形成されているこ
    とを特徴とする車両灯具用レンズ体の成形用金型。
  5. 【請求項5】 請求項2〜4のいずれか1項の車両灯具
    用レンズ体の成形用金型であって、 前記キャビティのゲートが、ピンポイントゲートで構成
    されていることを特徴とする車両灯具用レンズ体の成形
    用金型。
  6. 【請求項6】 請求項1の車両灯具用レンズ体の製造方
    法であって、 前記射出成形は、前記キャビティのゲートが、前記光学
    部のキャビティに対して進退動するように取り付けられ
    前進して前記光学部のキャビティの根本部分を閉塞する
    と共に後退して前記光学部および前記カバー部の各キャ
    ビティを含む前記キャビティの全容積を連通させるスラ
    イド駒に設けられている成形用金型を用いた2色成形法
    で、前記スライド駒が前進した位置での前記ゲートを用
    いた一次モールドにより前記光学部を形成固化した後、
    前記スライド駒が後退した位置での前記ゲートを用いた
    二次モールドにより前記光学部の内側部分および前記カ
    バー部を含めたレンズ体の残余部分を形成するようにし
    たことを特徴とする車両灯具用レンズ体の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項6の車両灯具用レンズ体の製造方
    法であって、 前記一次モールドは、前記二次モールドと比較して、前
    記光学部のキャビティの周辺の金型部分を高温に設定す
    ると共に、樹脂材充填速度を低速に設定して前記光学部
    を形成するようにしたことを特徴とする車両灯具用レン
    ズ体の製造方法。
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