JP2003019543A - 鋳造用金型および部品の鋳造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 中子ピンの表面粗さや表面積に関係なく、抜
き勾配をゼロにしても金型との離れ性が良好な金型の中
子ピン構造を提供することを課題とするものである。 【解決手段】 中子ピンを軸線方向に二分割し、分割面
５ａ，６ａを互いに接触するテーパ面とし、分割された
二つの中子ピース５，６を金型２，３の両側からそれぞ
れ挿入・抜出して穴抜きを行うようにしたので、中子ピ
ンの表面粗さや表面積に関係なく、抜き勾配を付けずに
金型からの離れ性を向上させることができる。そのた
め、鋳造後に部品の穴加工をする必要がなく、部品のコ
ストを低減することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は鋳造用金型の中子ピ
ンの構造に関し、詳しくは、中子ピンの抜き勾配をゼロ
にすることができる鋳造用金型に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、鋳造により部品を形成する場合、
鋳造後に金型から部品を取り外す際、金型に部品をとら
れないようにするため、また、取り外す力を小さくする
ため金型に抜き勾配を付与するのが一般的である。特
に、中子ピンに抜き勾配を付けて長軸穴を鋳抜く場合、
鋳抜かれた穴は他の部品との嵌合や摺動案内部等、内径
部に勾配があっては不都合な場合が多く、鋳造後に切削
等の加工を加えて勾配を除去しなければならず、加工費
が増加するとともに、加工代を付けるため材料の歩留ま
りが悪くなる等、製造コストの増大となる要素を有して
いた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】そこで、穴の鋳抜きの
ための中子ピンの抜き勾配を付けなくとも部品との離れ
性のよい安定した鋳造を可能にする技術としては、特開
平６−３３５７６１号公報において公開されている。前
記公報によれば、ダイカスト用中子ピンの表面粗さを特
定することにより、抜き勾配をつけなくても部品との離
れ性が良く、安定した鋳造を可能にする、としている。
しかしながら、表面粗さを小さくして表面を滑らかにし
た中子ピンでも、鋳造回数の増加とともに表面が粗くな
り、部品との離れ性が悪化するのは否めない。また、中
子ピンの外径寸法および軸長が比較的大きい表面積の大
きな中子ピンの場合は、表面粗さを小さくしただけでは
抜き勾配を無くすことは困難である。そこで本発明は、
中子ピンの表面粗さや表面積に関係なく、抜き勾配をゼ
ロにしても金型との離れ性が良好な金型の中子ピン構造
を提供することを課題とするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】前記課題の解決を目的と
してなされた請求項１の発明は、穴抜きを行うための中
子ピンを有する鋳造用金型において、前記中子ピンは軸
線方向に二分割され分割面が互いに密着するテーパ面で
ある二つの中子ピースからなり、該中子ピースを金型の
両側からそれぞれ駆動手段により挿入・抜出して穴抜き
を行うことにより、前記中子ピンの外周面の抜き勾配を
無くしたことを特徴とする。

【０００５】

【発明の実施の形態】本発明の望ましい実施形態につい
て図面を参照して説明する。図１は本発明の一実施形態
に係る鋳造用金型の鋳造直後の正面概念図および側面概
念図で、図２はその金型の中子ピン引抜時の概念図で、
図３はその金型で鋳造される部品例の側面図および正面
図で、図４は長尺部品用金型の概念図である。はじめ
に、本発明の一実施形態に係る鋳造用金型により鋳造さ
れる部品例について説明する。図３において、自動車の
サスペンション部品を回動可能に保持するための部品で
あるサポータ１の中央部は、不図示のブッシュが圧入さ
れるブッシュ穴１ａが穿設されている。サポータ１の両
側にはサポータ１を車体に固定するための２箇所のフラ
ンジ１ｂ，１ｃが設けられ、フランジ１ｂ，１ｃにはそ
れぞれ取付穴１ｄ，１ｅが穿設されている。

【０００６】ブッシュ穴１ａは内径が約６０ｍｍ、軸長
が約３８ｍｍと比較的径大で軸長が比較的短く、内径に
対する軸長の比は小さいので１つの部品で考えるなら
ば、中子ピンの抜き勾配による内径の左右の寸法差はさ
ほど大きくならないように思われる。しかしながら、図
１に示すように、生産性を確保するためサポータ１は複
数個取りすると、金型に使用される中子ピンの長さは長
くなり、抜き勾配により最右端と最左端のサポータ１間
の内径寸法差は大きくなる。図４は長尺部品用金型の概
念図で、部品２１の抜き穴２１ａの長さが内径に比べ極
端に長いため、中子ピンの全長も長くなり、抜き穴２１
ａの抜き勾配による内径の寸法差は大きくなる。そのた
め、中子ピンの抜き勾配は極小に抑える必要がある。

【０００７】次に、鋳造用金型について説明する。図１
において、金型の可動型２，固定型３の分割面２ａ，３
ａ上に、部品（サポータ）１を鋳造するための４箇所の
キャビティ４が刻設され、キャビティ４の中央には部品
１のブッシュ穴１ａを形成するための半割り状の中子ピ
ース５，６が挿入される中子穴７が金型の可動型２，固
定型３を貫通して設けられている。中子穴７には、中子
孔７の軸線方向にその軸線と所定の角度を有するテーパ
面により分割された２つの中子ピース５，６が、金型の
両側から白矢印方向に挿入され分割面５ａ，６ａが合わ
さり外周面が金型の中子穴７に保持されて、円筒状の中
子ピン１２を構成している。中子ピン１２の外周面には
抜き勾配は付けられていない。

【０００８】図５、図６、図７は中子ピンの駆動例を示
す。図５は中子ピン駆動方法として油圧式シリンダを利
用したものである。金型２５を保持するダイベース２６
には油圧式シリンダ２７が固定され、シリンダ２７ａ内
を油圧により左右方向に移動するピストン２７ｂが中子
ピン６に連結されている。油圧の切り替えによりピスト
ン２７ｂが左右方向に移動して中子ピース６を破線の位
置まで移動させる。なお、中子ピース５にも同一の油圧
式シリンダ（不図示）が連結され油圧式シリンダ２７に
同期して中子ピース５を左右方向に作動させるよう構成
されている。

【０００９】図６は中子ピン駆動方法としてストローク
同調式両作動油圧シリンダを利用したものである。ダイ
ベース２６にはストローク同調式両作動油圧シリンダ２
８が固定されている。シリンダ２８ａ内を油圧により左
右方向に移動するピストン２８ｂは連結部材２８ｃを介
して中子ピース６に固定されている。反対側のピストン
２８ｄも不図示の連結部材を介して中子ピース５に連結
され、シリンダ２８ａ内の油圧の切り替えにより同期し
て両中子ピース５，６を破線の位置まで作動させるよう
構成されている。

【００１０】図７は中子ピン駆動方法としてモータを利
用したものである。ダイベース２６には減速機付きまた
は油圧式のモータ２９が固定されている。モータ２９の
出力軸２９ａにはピニオンギア３０が固定され中子ピー
ス６に固定されたラック３１と噛合されている。ピニオ
ンギア３０の回転によりラック３１が左右に移動され、
中子ピース６が破線の位置まで作動されるよう構成され
ている。なお、中子ピン５にも同一機能を有するモータ
が連結され同期して中子ピース５を作動させるよう構成
されている。図１にもどり、金型のスタンプ８により射
出されたアルミニウム等の溶湯はランナー９を経て４つ
のキャビティ４を満たして部品１を射出形成し、余剰溶
湯はエアベント１０に溢れるよう構成されている。

【００１１】次に、本実施形態の作用について図２を加
えて説明する。図２において、溶湯の射出が終了する
と、上述の駆動手段により中子ピース５，６が白矢印の
方向に抜き出される。この時、分割面５ａ，６ａが傾斜
していることにより間に隙間Ｌができるので、中子ピー
ス５，６は隙間Ｌ方向に移動できるため、抜き勾配が付
けられていなくても容易に型離れする。なお、型離れし
難い場合は、中子ピース５，６に対し駆動手段が作動す
る瞬間に、衝撃または振動を一時的に加えることによ
り、型離れを良くすることができる。なお、部品の鋳抜
き穴（ブッシュ穴１ａ）の表面には傾斜した分割線が残
るが、一部分であるので他部品との嵌合には支障を来た
すことはない。どうしても不都合がある場合には、分割
線のみを削り取ればよく、穴加工に比べれば加工代およ
び工数は少なくて済む。

【００１２】

【発明の効果】本発明は上述のように構成されているの
で以下の効果を奏する。すなわち、中子ピンを軸線方向
に二分割し、分割面を互いに密着するテーパ面とし、分
割された二つの中子ピンを金型の両側から駆動手段によ
りそれぞれ挿入・抜出して穴抜きを行うようにしたの
で、中子ピンの表面粗さや表面積の大きさに関係なく、
抜き勾配を付けずに鋳造でき、金型からの離れ性を向上
させることができる。そのため、鋳造後に部品の穴加工
をする必要がなく、部品の製造コストを低減することが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係る鋳造用金型の鋳造直
後の正面概念図および側面概念図である。

【図２】本発明の一実施形態に係る鋳造用金型の中子ピ
ン抜出時の正面概念図である。

【図３】本発明の一実施形態に係る鋳造用金型により鋳
造される部品例の側面図および正面図である。

【図４】本発明の一実施形態に係る長尺部品鋳造用金型
の正面概念図である。

【図５】本発明に係る鋳造用金型の中子ピン駆動手段の
正面概念図である。

【図６】本発明に係る鋳造用金型の中子ピン駆動手段の
正面概念図である。

【図７】本発明に係る鋳造用金型の中子ピン駆動手段の
正面概念図である。

【符号の説明】

１ 部品（サポータ） ２ 可動型 ３ 固定型 ５ 中子ピース ５ａ 分割面 ６ 中子ピース ６ａ 分割面 １２ 中子ピン ２１ 部品 ２５ 金型 ２７ 油圧式シリンダ ２８ ストローク同調式両作動油圧シリンダ ２９ モータ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 4E093 QA04 QB01 QB02 QB03 QB07 QD01

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 穴抜きを行うための中子ピンを有する鋳
   造用金型において、前記中子ピンは軸線方向に二分割さ
   れ分割面が互いに密着するテーパ面である二つの中子ピ
   ースからなり、該中子ピースを金型の両側からそれぞれ
   駆動手段により挿入・抜出して穴抜きを行うことによ
   り、前記中子ピンの外周面の抜き勾配を無くしたことを
   特徴とする鋳造用金型。
2. 【請求項２】 中子ピンによる穴抜きをともなう鋳造部
   品の製造方法において、前記中子ピンは軸線方向に二分
   割され分割面が互いに密着するテーパ面である二つの中
   子ピースからなり、該中子ピースを金型の両側からそれ
   ぞれ駆動手段により挿入・抜出して穴抜きを行うことに
   より、前記中子ピンの外周面の抜き勾配を無くして前記
   鋳造製品の抜き穴の切削加工を廃止したことを特徴とす
   る部品の鋳造方法。
3. 【請求項３】 請求項１記載の鋳造用金型を使用して鋳
   造された部品およびその部品を使用する製品。
4. 【請求項４】 請求項２記載の鋳造方法により鋳造され
   た部品およびその部品を使用する製品。