JP2003019194A - ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物 - Google Patents

ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物

Info

Publication number
JP2003019194A
JP2003019194A JP2001210493A JP2001210493A JP2003019194A JP 2003019194 A JP2003019194 A JP 2003019194A JP 2001210493 A JP2001210493 A JP 2001210493A JP 2001210493 A JP2001210493 A JP 2001210493A JP 2003019194 A JP2003019194 A JP 2003019194A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hyaluronic acid
carboxymethyl cellulose
gel composition
carboxymethylcellulose
crosslinked gel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001210493A
Other languages
English (en)
Inventor
Osamu Yamamoto
修 山本
Toshihiko Umeda
俊彦 梅田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Denka Co Ltd
Original Assignee
Denki Kagaku Kogyo KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Denki Kagaku Kogyo KK filed Critical Denki Kagaku Kogyo KK
Priority to JP2001210493A priority Critical patent/JP2003019194A/ja
Publication of JP2003019194A publication Critical patent/JP2003019194A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Materials For Medical Uses (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 なんら化学的架橋剤や化学的修飾剤を使用す
ることなく、安全性及び生体適合性を有し、更に生体内
滞留時間が長い医用材料を提供すること。 【解決手段】 ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロ
ースを含有するpH3.5以下の水溶液を凍結し、次い
で解凍して製造される、中性の25℃の水溶液中で1日
でのヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロースそれ
ぞれの溶解率が50%以下であることを特徴とするヒア
ルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋
ゲル組成物を構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒアルロン酸およ
びカルボキシメチルセルロースを含有するpH3.5以
下の水溶液を凍結し、次いで解凍して製造される、新規
な難水溶性のヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロー
スからなる共架橋ゲル組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ヒアルロン酸は、β−D−N−アセチル
グルコサミンとβ−D−グルクロン酸が交互に結合した
直鎖状の高分子多糖で、種及び臓器特異性をもたず、生
体に移植または注入した場合であっても優れた生体適合
性を示すことが知られている。このヒアルロン酸を医用
材料として生体に適用する場合、易水溶性で生体内滞留
時間が比較的短い点を改良するため多種多様なヒアルロ
ン酸の化学修飾物が提案されてきた。これらの代表的な
ものとしては、ジビニルスルホン、ビスエポキシド類、
ホルムアルデヒド等の二官能性試薬を架橋剤に使用し
て、得られた高膨張性の架橋ヒアルロン酸ゲルを挙げる
ことができる(米国特許第4,582,865号明細
書、特公平6−37575号公報、特開平7−9740
1号公報、特開昭60−130601号公報参照)。し
かしながら、従来の化学的な改質方法では、ヒアルロン
酸が化学的に修飾されるため、その生理作用や生体適合
性が本質的にヒアルロン酸と同等であるとは言い難かっ
た。また、ヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩
をジメチルスルフォキシド中で、トリエチルアミンとヨ
ウ化2−クロロ−1−メチルピリジニウムを加え反応さ
せ、ヒアルロン酸のカルボキシル基と水酸基でエステル
結合を形成させる方法も開示されている(欧州特許03
41745A1)。しかしながら、この方法では、活性
化剤等を用いるため、得られた物質中での残存が安全上
問題となりうる。
【0003】可溶性セルロース誘導体は、メチルセルロ
ース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル
セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等が知
られている。その中でカルボキシメチル基が導入された
カルボキシメチルセルロース(以後、一般的呼称に準じ
てカルボキシメチルセルロースはカルボキシメチルセル
ロースナトリウムを指す)は代表的なものであり、その
粘弾性を利用して食品分野や吸水材等で広く利用されて
おり、その用途は医療分野にも及んでいる。これまで、
例えばカルボキシメチルセルロースの粘弾性等の材料特
性を向上させるために特開平10−251447号記載
のグリオキサールによる化学架橋カルボキシメチルセル
ロース、特開昭63−37143号記載の多価金属イオ
ンとの混合をおこなったカルボキシメチルセルロースゲ
ル、特開平7−090121号記載の二価、又は三価金
属塩によるカルボキシメチルセルロースゲル、さらには
特開平11−106561号記載の塩基性酢酸アルミニ
ウムの添加によるカルボキシメチルセルロースゲルなど
が考案されている。しかし、こうした修飾カルボキシメ
チルセルロースは、化学架橋剤の使用や金属イオンが添
加がされており、医療品として用いる場合には安全性の
観点からこれらを含まない材料が望まれていた。
【0004】本発明者らは、ヒアルロン酸のみからなる
生体適合性や成形性に優れた生体内分解性を有する化学
的架橋剤や化学的修飾剤を用いない難水溶性ヒアルロン
酸ゲルを既に見出した(PCT/JP98/0353
6)。
【0005】医用材料として有用なヒアルロン酸にさら
に高分子を加え改質する検討が行われており、例えば特
表平5−508161号、特表平6−508169号の
ヒアルロン酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロース
をカルボジイミド類で修飾したヒアルロン酸組成物の報
告が挙げられる。しかし、これらはヒアルロン酸及びカ
ルボキシメチルセルロースの分子中に架橋物質を内包
し、その生理作用や生体適合性、安全性が本質的にヒア
ルロン酸及びカルボキシメチルセルロースと同等である
とは言い難い。
【0006】しかしながら、ヒアルロン酸及びカルボキ
シメチルセルロースが本来持っている優れた生体適合性
の特徴を最大限生かすために、なんら化学的架橋剤や化
学的修飾剤を使用することなく、生体適合性医用材料と
して使用可能な、生体内滞留時間が長いヒアルロン酸と
カルボキシメチルセルロース共架橋ゲル組成物は未だ開
発されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記目
的を達成するために、ヒアルロン酸とカルボキシメチル
セルロース自体の物理化学的性質を鋭意検討してきた。
その結果、ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロース
の水溶液を特定のpHに調整し、該水溶液を凍結し、次
いで解凍することを少なくとも1回行うことによって、
ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロース共架橋ゲル
組成物が得られることを見出した。そして、こうして得
られたヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロース共架
橋ゲル組成物の水中での溶解速度が極めて遅く、医用材
料として理想的な生体適合性、貯留性を有することを見
出した。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、(1)
ヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロースを含有す
るpH3.5以下の水溶液を凍結し、次いで解凍して製
造される、中性の25℃の水溶液中で1日でのヒアルロ
ン酸及びカルボキシメチルセルロースそれぞれの溶解率
が50%以下であることを特徴とするヒアルロン酸とカ
ルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物、
(2)ヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロースを
含有するpH3.5以下の水溶液を凍結し、次いで解凍
して製造される、中性の37℃の水溶液中で12時間で
のヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロースそれぞ
れの溶解率が50%以下であることを特徴とするヒアル
ロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲ
ル組成物、(3)(1)又は(2)記載のヒアルロン酸
とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成
物を含有することを特徴とする医用材料、(4)医用材
料が癒着防止材、関節用人工軟骨、眼科手術補助剤、創
傷被覆材、人工皮膚、関節注入剤、止血剤、又は人工細
胞外マトリックスからなる群より選択した1種であるこ
とを特徴とする(3)記載の医用材料である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるヒアルロン酸は、動物組織から抽出
したものでも、また発酵法で製造したものでもその起源
を問うことなく使用できる。本発明に用いられるヒアル
ロン酸の分子量は、約1×105 〜約1×107 ダルト
ンの範囲内のものが好ましい。また、上記範囲内の分子
量をもつものであれば、より高分子量のものから、加水
分解処理等をして得たものでも同様に好ましく使用でき
る。なお、本発明にいうヒアルロン酸は、そのアルカリ
金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムの塩
をも包含する概念で使用される。
【0010】一方、本発明に用いられるカルボキシメチ
ルセルロースの分子量は、特に規定される物ではない
が、約1×104 〜約5×105 ダルトンの範囲内のも
のが好ましい。また、上記範囲内の分子量をもつもので
あれば、より高分子量のものから、加水分解処理等をし
て得たものでも同様に好ましく使用できる。また、カル
ボキシメチルセルロースのもうひとつのパラメーターで
あるエーテル化度については、以下の処理でゲル化が起
こる範囲のものが利用できる。なお、本発明にいうカル
ボキシメチルセルロースは、そのアルカリ金属塩、例え
ば、ナトリウム、カリウム、リチウムの塩をも包含する
概念で使用される。
【0011】ヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロ
ースの水溶液のpHを調整するために使用する酸は、p
H3.5以下に調整できる酸であれば、いずれの酸も使
用することができる。酸の使用量を低減するために、好
ましくは強酸、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等を使用する
ことが望ましい。
【0012】凍結、解凍はヒアルロン酸及びカルボキシ
メチルセルロースの調整された酸性水溶液を、任意の容
器に入れた後、所定の温度で凍結させ、凍結が終わった
後、所定の温度で解凍させる操作を少なくとも1回行
う。凍結、解凍の温度と時間は、容器の大きさ、水溶液
量によりヒアルロン酸の酸性水溶液が凍結、解凍する温
度と時間の範囲内で適宜決められるが、一般には、氷点
以下の凍結温度、氷点以上の解凍温度が好ましい。
【0013】凍結、解凍時間を短くできることから、更
に好ましくは−5℃以下の凍結温度、5℃以上の解凍温
度が選ばれる。また、時間は、その温度で凍結、解凍が
終了する時間以上であれば特に制限されない。
【0014】ヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロ
ースの調整された酸性水溶液を凍結し、次いで解凍する
操作の繰り返し回数は、使用するヒアルロン酸及びカル
ボキシメチルセルロースの分子量、水溶液濃度、水溶液
のpH、凍結及び解凍の温度と時間、並びに生成する共
架橋ゲル組成物の強さ等の諸特性により適宜決められ
る。通常は1回以上繰り返すことが好ましい。また、凍
結、解凍の操作を繰り返すごとに、その凍結、解凍の温
度及び時間を変えてもかまわない。
【0015】ヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロ
ースの調整された酸性溶液の凍結解凍により得られた共
架橋ゲル組成物は、ヒアルロン酸及びカルボキシメチル
セルロースの酸加水分解を避けるために、酸性に調整す
るために用いた酸等の成分を除く必要がある。酸等の成
分を除くためには、通常は水性溶媒によって洗浄する。
共架橋ゲル組成物の機能を損なわないものであれば特に
制限はないが、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液
等が用いられるが、好ましくは、生理食塩水、リン酸緩
衝液等が用いられる。
【0016】また、洗浄方法は、特に制限はないが、通
常は、バッチ法、濾過法、カラム等に充填して通液する
方法等が用いられる。これらの洗浄条件は、洗浄液量、
回数等を含めて、除きたい成分を目標の濃度以下にでき
る条件であればよく、共架橋ゲル組成物の形態や用途に
より適宜選択することが可能である。
【0017】この洗浄された共架橋ゲル組成物は、その
使用目的に応じて、溶媒中に浸漬した状態、溶媒を含ま
せた湿潤状態、風乾、減圧乾燥あるいは凍結乾燥等の処
理を経た乾燥状態で医用材料として供される。
【0018】共架橋ゲル組成物の成形加工等の処理は、
作製時には、仕込み液の調整された酸性溶液の凍結時の
容器や手法の選択によりシート状、フィルム状、破砕
状、スポンジ状、塊状、繊維状、流動状及びチューブ状
の所望の形態の共架橋ゲル組成物の作製が可能である。
【0019】本発明で得られた共架橋ゲル組成物は、一
般の生体内分解性医用材料及びヒアルロン酸及びカルボ
キシメチルセルロースが用いられる分野であれば特に制
限なく使用することができる。例えば、癒着防止材、関
節用人工軟骨、薬理活性物質の担体、創傷被覆材、人工
皮膚、組織置換型生体組織修復材、関節注入剤、外科手
術用縫合糸、止血剤、人工臓器、人工細胞外マトリック
ス又は人工基底膜、診断・治療に用いる医療器具・医療
用具等の生物医学的製品又は医薬組成物への使用が挙げ
られる。
【0020】次に、本発明の医用材料のうち癒着防止材
について説明する。本発明で得られた共架橋ゲル組成物
の癒着防止材は、シート状、フィルム状、破砕状、スポ
ンジ状、塊状、繊維状、流動状又はチューブ状等の形態
で外科手術に用いられる。用いられる形態としては、フ
ィルム状又はシート状として外科手術部位に直接貼付す
るのが好ましい。または、微細破砕状、流動状として注
射器で外科手術部位に塗布するのが好ましい。または、
腹腔鏡の手術にも使用可能である。
【0021】さらに、共架橋ゲル組成物の調整された酸
性溶液に生理活性物質を混合した後に凍結、解凍を行う
ことにより、生理活性物質を包含した共架橋ゲル組成物
を癒着防止材として得ることも可能である。
【0022】本発明で得られた共架橋ゲル組成物の癒着
防止材の投与時期は、術後の癒着を防止できるどの時期
でも良く、手術中又は手術終了時に投与できるが、特に
手術終了の直前に投与するのが好ましい。
【0023】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳しく説明
する。なお、本発明はこれにより限定されるものではな
い。
【0024】実施例1 分子量が2×105 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
と分子量が3.5万のカルボキシメチルセルロースナト
リウム(第一工業製薬株式会社製セロゲンF−SL、エ
ーテル化度0.8〜0.95)を蒸留水にそれぞれ0.
3重量%と0.7重量%になるように溶解した。調整さ
れた水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に調整し
た。酸性水溶液15mlを30mlのガラスビンに入
れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。5日間放置し
た後、25℃で解凍した。その結果、スポンジ状の共架
橋ゲル組成物が得られた。
【0025】実施例2 分子量が2×105 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
と分子量が3.5万のカルボキシメチルセルロースナト
リウム(第一工業製薬株式会社製セロゲンF−SL、エ
ーテル化度0.8〜0.95)を蒸留水にそれぞれ0.
7重量%と0.3重量%になるように溶解した。調整さ
れた水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に調整し
た。酸性水溶液15mlを30mlのガラスビンに入
れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。5日間放置し
た後、25℃で解凍した。その結果、スポンジ状の共架
橋ゲル組成物が得られた。
【0026】実施例3 分子量が2×105 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
と分子量が30万のカルボキシメチルセルロースナトリ
ウム(Hercules社製アクアロン7H3SXF-PH、エーテル化
度0.9)を蒸留水にそれぞれ0.3重量%と0.7重
量%になるように溶解した。調整された水溶液のpH
を、1N塩酸でpH1.5に調整した。酸性水溶液15
mlを30mlのガラスビンに入れ、−20℃に設定し
た冷凍庫に入れた。5日間放置した後、25℃で解凍し
た。その結果、スポンジ状の共架橋ゲル組成物が得られ
た。
【0027】実施例4 分子量が2×105 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
と分子量が30万のカルボキシメチルセルロースナトリ
ウム(Hercules社製アクアロン7H3SXF-PH、エーテル化
度0.9)を蒸留水にそれぞれ0.7重量%と0.3重
量%になるように溶解した。調整された水溶液のpH
を、1N塩酸でpH1.5に調整した。酸性水溶液15
mlを30mlのガラスビンに入れ、−20℃に設定し
た冷凍庫に入れた。5日間放置した後、25℃で解凍し
た。その結果、スポンジ状の共架橋ゲル組成物が得られ
た。
【0028】実施例5 分子量が6×105 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
と分子量が30万のカルボキシメチルセルロースナトリ
ウム(Hercules社製アクアロン7H3SXF-PH、エーテル化
度0.9)を蒸留水にそれぞれ0.3重量%と0.7重
量%になるように溶解した。調整された水溶液のpH
を、1N塩酸でpH1.5に調整した。酸性水溶液15
mlを30mlのガラスビンに入れ、−20℃に設定し
た冷凍庫に入れた。5日間放置した後、25℃で解凍し
た。その結果、スポンジ状の共架橋ゲル組成物が得られ
た。
【0029】実施例6 分子量が6×105 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
と分子量が30万のカルボキシメチルセルロースナトリ
ウム(Hercules社製アクアロン7H3SXF-PH、エーテル化
度0.9)を蒸留水にそれぞれ0.7重量%と0.3重
量%になるように溶解した。調整された水溶液のpH
を、1N塩酸でpH1.5に調整した。酸性水溶液15
mlを30mlのガラスビンに入れ、−20℃に設定し
た冷凍庫に入れた。5日間放置した後、25℃で解凍し
た。その結果、スポンジ状の共架橋ゲル組成物が得られ
た。
【0030】実施例7 分子量が2×106ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
と分子量が30万のカルボキシメチルセルロースナトリ
ウム(Hercules社製アクアロン7H3SXF-PH、エーテル化
度0.9)を蒸留水にそれぞれ0.3重量%と0.7重
量%になるように溶解した。調整された水溶液のpH
を、1N塩酸でpH1.5に調整した。酸性水溶液15
mlを30mlのガラスビンに入れ、−20℃に設定し
た冷凍庫に入れた。5日間放置した後、25℃で解凍し
た。その結果、スポンジ状の共架橋ゲル組成物が得られ
た。
【0031】実施例8 分子量が2×106ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
と分子量が30万のカルボキシメチルセルロースナトリ
ウム(Hercules社製アクアロン7H3SXF-PH、エーテル化
度0.9)を蒸留水にそれぞれ0.7重量%と0.3重
量%になるように溶解した。調整された水溶液のpH
を、1N塩酸でpH1.5に調整した。酸性水溶液15
mlを30mlのガラスビンに入れ、−20℃に設定し
た冷凍庫に入れた。5日間放置した後、25℃で解凍し
た。その結果、スポンジ状の共架橋ゲル組成物が得られ
た。
【0032】比較例1 実施例1に於いて、混合水溶液のpHを調整せず中性の
ままで凍結し、解凍することを8回繰り返した。その結
果、ヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロースから
なる水溶液の変化は起こらなかった。すなわち、ゲル化
しなかった。9回目の凍結後、凍結乾燥を行いスポンジ
状のヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからな
る組成物を得た。
【0033】参考例1 分子量が2×105 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
を蒸留水に0.7重量%になるように溶解した。調整さ
れた水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に調整し
た。酸性水溶液15mlを30mlのガラスビンに入
れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。5日間放置し
た後、25℃で解凍した。その結果、スポンジ状のヒア
ルロン酸ゲルが得られた。
【0034】実施例9 ゲル化率の測定 以下の式で表されるゲル化率を測定することにより、共
架橋の存在について検討した。 ゲル化率(%)=(仕込みHA量−上清HA量)×10
0/仕込みHA量 式中の上清のHA量とは解凍した際に得られる溶液中の
HA量をさす。すなわち、ゲル化率とはゲル組成物の形
成に関与したHAの割合を表す。実施例1と参考例1で
の凍結融解後に、上清に含まれるヒアルロン酸量を測定
した。参考例1では、ゲル化率10%であったのに対
し、実施例1ではゲル化率16%であった。つまり、ヒ
アルロン酸単独でゲル化させた場合よりもカルボキシメ
チルセルロースとともにゲル化させた方がゲル化率が高
かった。これは、ヒアルロン酸とカルボキシメチルセル
ロースの共架橋が生成していることを示唆している。
【0035】実施例10 共架橋ゲル組成物の25℃における溶解性試験 生理的食塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加え、
pH7のリン酸緩衝生理的食塩水を調整した。上記の実
施例1〜8で得られたスポンジ状のヒアルロン酸とカル
ボキシメチルセルロールからなる共架橋ゲル組成物、及
び参考例1で得られたヒアルロン酸ゲルを蒸留水で水洗
し、ろ紙上で脱水した。乾燥重量で150mgのヒアル
ロン酸を含む得られたヒアルロン酸ゲル組成物に対し
て、50mlのリン酸緩衝生理的食塩水の割合で、ヒア
ルロン酸ゲル組成物をリン酸緩衝生理的食塩水中に浸漬
した。また上記の比較例1で得られた乾燥重量で150
mgのヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースから
なる凍結乾燥されたスポンジ状のヒアルロン酸とカルボ
キシメチルセルロースからなる組成物は、これに対し
て、50mlのリン酸緩衝生理的食塩水の割合で、ヒア
ルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる組成物
をリン酸緩衝生理的食塩水中に浸漬した。そして、ヒア
ルロン酸とカルボキシメチルセルロールからなる共架橋
ゲル組成物、ヒアルロン酸ゲル及びヒアルロン酸とカル
ボキシメチルセルロールからなる組成物の溶解性を目視
により求めた。また25℃でリン酸緩衝生理的食塩水中
に溶出するヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロース
の割合を、リン酸緩衝生理的食塩水中のヒアルロン酸と
カルボキシメチルセルロース濃度から求めた。従って、
中性の25℃の水溶液中でのヒアルロン酸とカルボキシ
メチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物の溶解性
は、上記試験により規定されるものである。
【0036】ヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロ
ース濃度の測定 リン酸緩衝生理的食塩水中のヒアルロン酸は、GPCを
使い測定した。つまり、両者の分子量の違いにより分離
して濃度を求めた。但し、GPCにより分離できない場
合は、ヒアルロニダーゼによりヒアルロン酸を低分子量
とした後にPGCに共した。ヒアルロン酸とカルボキシ
メチルセルロースの濃度は、溶出してくるヒアルロン酸
及びカルボキシメチルセルロースを示差屈折率検出器に
より検出し、ピーク面積から求めた。
【0037】上記に従い、具体的に実施例1〜8のヒア
ルロン酸とカルボキシメチルセルロース共架橋ゲル組成
物及び参考例1のヒアルロン酸ゲル、比較例1のヒアル
ロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる組成物の
溶解性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】表1より、例えば、実験No.4の実施例
4で得られたヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロー
ス共架橋ゲル組成物の溶解率を調べると、1日経過後で
は2%の溶解率であり、4日経過後では10%の溶解率
であり、更に10日経過後では24%の溶解率であっ
た。ヒアルロン酸としては、1日経過後では2%の溶解
率であり、4日経過後では10%の溶解率であり、更に
10日経過後では23%の溶解率であった。尚、10日
経過後においてもスポンジ状の形態も保持されていた。
一方、実験No.9の参考例1で得られたヒアルロン酸
ゲルの溶解率を調べると、1日経過後では18%の溶解
率であり、4日経過後では45%の溶解率であり、更に
10日経過後では80%の溶解率であった。即ち、実験
No.4の実施例4で得られたヒアルロン酸とカルボキ
シメチルセルロース共架橋ゲル組成物中のヒアルロン酸
は、実験No.9の参考例1で得られたヒアルロン酸ゲ
ルよりも溶解しにくくなっていた。それに対して、実験
No.10の比較例1で得られたヒアルロン酸とカルボ
キシメチルセルロースからなる組成物の溶解率を調べる
と、1日経過後では、100%の溶解率であり、完全に
溶解した。
【0040】実施例11 共架橋ゲル組成物の37℃における溶解性試験 生理的食塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加え、
pH7のリン酸緩衝生理的食塩水を調整した。上記の実
施例1〜8で得られたスポンジ状のヒアルロン酸とカル
ボキシメチルセルロールからなる共架橋ゲル組成物、及
び参考例1で得られたヒアルロン酸ゲルを蒸留水で水洗
し、ろ紙上で脱水した。乾燥重量で150mgのヒアル
ロン酸を含む得られたヒアルロン酸ゲル組成物に対し
て、50mlのリン酸緩衝生理的食塩水の割合で、ヒア
ルロン酸ゲル組成物をリン酸緩衝生理的食塩水中に浸漬
した。また上記の比較例1で得られた乾燥重量で150
mgのヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースから
なる凍結乾燥されたスポンジ状のヒアルロン酸とカルボ
キシメチルセルロースからなる組成物は、これに対し
て、50mlのリン酸緩衝生理的食塩水の割合で、ヒア
ルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる組成物
をリン酸緩衝生理的食塩水中に浸漬した。そして、ヒア
ルロン酸とカルボキシメチルセルロールからなる共架橋
ゲル組成物、ヒアルロン酸ゲル及びヒアルロン酸とカル
ボキシメチルセルロールからなる組成物の溶解性を目視
により求めた。また37℃でリン酸緩衝生理的食塩水中
に溶出するヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロース
の割合を、リン酸緩衝生理的食塩水中のヒアルロン酸と
カルボキシメチルセルロース濃度から求めた。従って、
中性の37℃の水溶液中でのヒアルロン酸とカルボキシ
メチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物の溶解性
は、上記試験により規定されるものである。その結果を
表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】表2より、例えば、実験No.14の実施
例4で得られたヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロ
ースからなる共架橋ゲル組成物の溶解率を調べると、1
2時間経過後では、4%の溶解率であり、3日経過後で
は14%の溶解率であり、更に8日経過後では33%の
溶解率であった。ヒアルロン酸としては、12時間経過
後では4%の溶解率であり、3日経過後では14%の溶
解率であり、更に8日経過後では32%の溶解率であっ
た。尚、溶解性試験8日経過後においてもスポンジ状の
形態も保持されていた。一方、実験No.19の参考例
1で得られたヒアルロン酸ゲルの溶解率を調べると、1
2時間経過後では30%の溶解率であり、3日経過後で
は85%の溶解率であり、更に8日経過後では100%
の溶解率であった。即ち、実験No.14の実施例4で
得られたヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロース共
架橋ゲル組成物中のヒアルロン酸は、実験No.19の
参考例1で得られたヒアルロン酸ゲルよりも溶解し難く
なっていた。それに対して、実験No.20の比較例1
で得られたヒアルロン酸組成物の溶解率を調べると、1
2時間経過後では、100%の溶解率であり、完全に溶
解した。
【0043】実施例12 ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロース共架橋ゲル
組成物の細胞毒性試験正常ヒト皮膚由来線維芽細胞培養
において本発明で得られたヒアルロン酸とカルボキシメ
チルセルロース共架橋ゲル組成物を非接触下で共存さ
せ、細胞増殖挙動の観察によりその細胞毒性を評価し
た。実施例1の方法で作製したスポンジ状のヒアルロン
酸とカルボキシメチルセルロース共架橋ゲル組成物をリ
ン酸緩衝生理的食塩水に浸漬したのち凍結乾燥体とし
た。その凍結乾燥体を機械的に粉砕したもの20mgを
ファルコン社製のセルカルチャーインサート(ポアサイ
ズ:3μm)中に入れ、細胞を播種した培地に浸した。
また、ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロース共架
橋ゲル組成物非共存下での培養をコントロールとした。
【0044】 培養条件 プレート:細胞培養用12ウェルプレート 培地:DMEM培地+10%ウシ胎児血清,2ml/ウェル 温度:37℃(5%CO2 下) 播種細胞数:1×104 個/ウェル
【0045】培養開始後2日、5日、8日後に、細胞密
度を倒立顕微鏡を用いて観察したところ、ヒアルロン酸
とカルボキシメチルセルロース共架橋ゲル組成物が共存
していてもコントロールと同様に良好な増殖を示し、本
発明で得られたヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロ
ース共架橋ゲル組成物には細胞毒性作用がないことが確
認された。
【0046】実施例13 分子量が2×105 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
とカルボキシメチルセルロースナトリウム(Hercules社
製アクアロン7H3SXF-PH、エーテル化度0.9)を蒸留
水にそれぞれ0.5重量%になるように溶解した。この
水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に調整しヒアル
ロン酸酸性水溶液を得た。このヒアルロン酸酸性水溶液
25mlを、プラスチック製シャーレに入れ、−20℃
に設定した冷凍庫に入れた。5日間凍結してスポンジ状
のヒアルロン酸ゲル組成物が得られた。次にこれを生理
的食塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加えて調整
したpH7のリン酸緩衝生理的食塩水100mlに5℃
で24時間浸漬し中和した後、蒸留水で十分に洗浄し
た。そしてこれを凍結乾燥した。その結果、シート状の
ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共
架橋ゲル組成物の癒着防止材を得た。
【0047】比較例2 実施例13に於いて、混合水溶液のpHを調整せず中性
のままで凍結し、解凍することを8回繰り返した。その
結果、ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースの水
溶液の変化は起こらなかった。すなわち、ゲル化しなか
った。この溶液をプラスチック製シャーレに入れて9回
目の凍結を行い、凍結乾燥してシート状のヒアルロン酸
とカルボキシメチルセルロースからなる癒着防止材を得
た。
【0048】比較例3 Na2HPO4・12H2O1.1gを30gの水に溶解し
2%NaOHでpH10に調整した溶液に平均分子量6
0万のヒアルロン酸ナトリウム0.3gとカルボキシメ
チルセルロースナトリウム(Hercules社製アクアロン7H
3SXF-PH、エーテル化度0.9)を蒸留水にそれぞれ
0.3gを溶解した。塩化シアヌール0.05gを1.
5mlのジオキサンに溶解し、上記ヒアルロン酸溶液に
添加し3時間室温で反応した。その後、透析膜に入れ、
1日間水に対して透析し、その溶液15mlをプラスチ
ック製シャーレに入れ凍結乾燥して、シート状の塩化シ
アヌール架橋ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロー
スからなる組成物の癒着防止材を得た。
【0049】実施例14 ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共
架橋ゲル組成物の癒着防止材のマウス子宮モデルによる
癒着防止効果試験実施例13で得られたシート状のヒア
ルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋
ゲル組成物の癒着防止材を、1cm×2cmの長方形に
裁断したもの、コントロールとして、比較例2で得られ
たシート状ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロース
からなる組成物を1cm×2cmの長方形に裁断したも
の、及び比較例3で得られた塩化シアヌール架橋ヒアル
ロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる組成物を
1cm×2cmの長方形に裁断したものを以下の試験に
供した。
【0050】7週令雌ICRマウス(体重25〜30
g)を腹腔内ペントバルビタール注射で麻酔後正中切開
にて開腹し、子宮角に約10mmの長さでヨードチンキ
擦過塗布により損傷を加えた。各群10匹のマウスにコ
ントロールとして無処置及び、それぞれ上記の実施例1
3のヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからな
る共架橋ゲル組成物の癒着防止材、比較例2のヒアルロ
ン酸とカルボキシメチルセルロースからなる組成物の癒
着防止材、比較例3の塩化シアヌール架橋ヒアルロン酸
とカルボキシメチルセルロースからなる組成物の癒着防
止材の1cm×2cmの長方形のシートを損傷部位に巻
き付けた。そしていづれの場合も5−0デキソンにて閉
腹した。
【0051】術後10日目に、無処置、ヒアルロン酸と
カルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物
及び、ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースから
なる組成物塩、化シアヌール架橋ヒアルロン酸とカルボ
キシメチルセルロースからなる組成物を投与したマウス
を各10匹を頚椎脱臼致死後、腹部を再開腹し、癒着形
成の有無を判定した。癒着形成は、膜状のごく軽度の癒
着は癒着と判定せず、繊維状で厚く、ピンセットで引っ
ぱても容易に引き剥がれない強い癒着を生じた場合を癒
着と判定した。その結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】表3より、実験No.21の無処置で癒着
の形成割合が10匹中9匹の時、実験No.22の単に
ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースの混合液を
中性で凍結して得たヒアルロン酸とカルボキシメチルセ
ルロースからなる組成物が、10匹中5匹、及び実験N
o.23の塩化シアヌール架橋ヒアルロン酸とカルボキ
シメチルセルロースからなる組成物が10匹中3匹なの
に比較して、実験No.24(実施例13)のヒアルロ
ン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル
組成物の癒着防止材は10匹中0匹、と優れた癒着防止
作用があることが示唆された。どのマウスも正常に生育
したが、組織の状態は実験No.24(実施例13)の
ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共
架橋ゲル組成物の癒着防止材及び実験No.22(比較
例2)のヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースの
組成物の癒着防止材が埋め込み局所の組織の状態に異常
は認められなかったのに対し、実験No.23(比較例
3)で得られた塩化シアヌール架橋ヒアルロン酸とカル
ボキシメチルセルロースからなる組成物では組織の軽微
な炎症が認められた。
【0054】実施例15 ラット盲腸擦過モデルにおける癒着防止試験 癒着誘導法 ラット(SD、メス、9週齢以上)下肢に麻酔剤を筋注
し麻酔後、仰向けに固定してイソジンにて腹部皮膚を消
毒後、剪毛を行った。ラット腹筋を正中線に沿って開腹
し、盲腸部分にガーゼをかぶせた回転棒を押し当て擦過
した。擦過部にヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロ
ースからなる共架橋ゲル組成物を原料として作製したフ
ィルム状癒着防止材をあて、盲腸を元に戻して縫合を行
った。また、癒着防止材を処置せず、そのまま盲腸を戻
したものをコントロールとした。こうした処置はコント
ロールを含めた各実験で10匹づつのラットを用いた。
術後一週間程度で剖検し、癒着形成の有無を判定した。
癒着形成は、膜状のごく軽度の癒着は癒着と判定せず、
繊維状で厚く、ピンセットで引っぱても容易に引き剥が
れない強い癒着を生じた場合を癒着と判定した。その結
果を表4に示す。比較例2および実施例13で製造した
組成物200mg/81cm2を試験片として、上記方
法による癒着防止剤としての効果を評価した。
【0055】
【表4】
【0056】表4より、実験No.25の無処置で癒着
の形成割合が10匹中9匹の時、実験No.26(比較
例2)の単にヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロー
ス混合液を中正で凍結して得たヒアルロン酸とカルボキ
シメチルセルロースからなる組成物が10匹中7匹、及
び実験No.27(比較例3)の塩化シアヌール架橋ヒ
アルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる組成
物が10匹中4匹なのに比較して、実験No.28(実
施例13)のヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロー
スからなる共架橋ゲル組成物の癒着防止材は10匹中2
匹と優れた癒着防止作用があることが示唆された。組織
の状態は実験No.28(実施例13)のヒアルロン酸
とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成
物の癒着防止材及び実験No.26(比較例2)のヒア
ルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる組成物
の癒着防止材が埋め込み局所の組織の状態に異常が認め
られなかったのに対し、実験No.27(比較例3)で
得られた塩化シアヌール架橋ヒアルロン酸とカルボキシ
メチルセルロースからなる組成物では組織の軽微な炎症
が認められた。
【0057】実施例16 ゲル創傷被覆材のラット皮膚欠損モデルによる創傷治療
効果試験 7週令(約200g)のウィスター(Wistar)系、雌性
ラットの背部の毛を刈り、エーテル麻酔下で眼科用ハサ
ミを用いて背部皮膚部分を直径2cmの円状に取り除
き、完全皮膚欠損創を作製した。医療用不織布ガーゼ
(40×40mm:2枚重ね)のみを適応した無処置
群、比較例2、3、および実施例13で作製した組成物
(30×30mm)を創面に被覆後、医療用不織布ガー
ゼ(40×40mm:2枚重ね)を適応した処置群を設
定した。各群6匹のラットを用いた。医療用不織布ガー
ゼは粘着包帯で設定し、更にテーピングで固定した。治
療効果は、創面積の経時的変化を測定することで比較し
た。すなわち、初期創面の面積に対する面積比を次の式
によって求め、その経時的変化を調べた。 面積比(%)={(観察日の創面の長径×短径)/(初
期創面の長径×短径)}×100 その結果を表5に示す。
【0058】
【表5】
【0059】表5より、難水溶性となったヒアルロン酸
とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲルシー
トが創傷治療効果を増強することがわかった。
【0060】
【発明の効果】以上、本発明によれば、なんら化学的架
橋剤や化学的修飾剤を使用することなく、ヒアルロン酸
とカルボキシメチルセルロースからなる難水溶性のヒア
ルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋
ゲル組成物が得られる。化学的架橋剤や化学的修飾剤を
使用することに起因する生体適合性への悪影響が避けら
れ、生体内滞留時間が長いので医用材料に有用である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロ
    ースを含有するpH3.5以下の水溶液を凍結し、次い
    で解凍して製造される、中性の25℃の水溶液中で1日
    でのヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロースそれ
    ぞれの溶解率が50%以下であることを特徴とするヒア
    ルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋
    ゲル組成物。
  2. 【請求項2】 ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロ
    ースを含有するpH3.5以下の水溶液を凍結し、次い
    で解凍して製造される、中性の37℃の水溶液中で12
    時間でのヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロース
    それぞれの溶解率が50%以下であることを特徴とする
    ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共
    架橋ゲル組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載のヒアルロン酸とカ
    ルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物を
    含有することを特徴とする医用材料。
  4. 【請求項4】 医用材料が癒着防止材、関節用人工軟
    骨、眼科手術補助剤、創傷被覆材、人工皮膚、関節注入
    剤、止血剤、又は人工細胞外マトリックスからなる群よ
    り選択した1種であることを特徴とする請求項3記載の
    医用材料。
JP2001210493A 2001-07-11 2001-07-11 ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物 Pending JP2003019194A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001210493A JP2003019194A (ja) 2001-07-11 2001-07-11 ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001210493A JP2003019194A (ja) 2001-07-11 2001-07-11 ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003019194A true JP2003019194A (ja) 2003-01-21

Family

ID=19045958

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001210493A Pending JP2003019194A (ja) 2001-07-11 2001-07-11 ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003019194A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012146031A1 (zh) * 2011-04-26 2012-11-01 北京爱美客生物科技有限公司 透明质酸与羟丙基甲基纤维素复合凝胶及制备方法
WO2015053281A1 (ja) * 2013-10-08 2015-04-16 キユーピー株式会社 カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の架橋物およびその製造方法
KR20170117368A (ko) * 2014-11-13 2017-10-23 메르츠 파마 게엠베하 운트 코. 카가아 가교결합된 히알루론산 및 카르복시메틸 셀룰로스 윤활제를 기반으로 한 피부 필러
US9962469B2 (en) 2014-02-05 2018-05-08 University Of Tsukuba Adhesion-preventing preparation comprising composition comprising polycationic triblock copolymer and polyanionic polymer
CN117281260A (zh) * 2023-11-24 2023-12-26 上海威高医疗技术发展有限公司 一种不含有交联剂的凝胶及其制备方法和应用

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012146031A1 (zh) * 2011-04-26 2012-11-01 北京爱美客生物科技有限公司 透明质酸与羟丙基甲基纤维素复合凝胶及制备方法
WO2015053281A1 (ja) * 2013-10-08 2015-04-16 キユーピー株式会社 カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の架橋物およびその製造方法
JP5734536B1 (ja) * 2013-10-08 2015-06-17 キユーピー株式会社 カルボキシメチル基含有修飾ヒアルロン酸および/またはその塩の架橋物およびその製造方法
US9962469B2 (en) 2014-02-05 2018-05-08 University Of Tsukuba Adhesion-preventing preparation comprising composition comprising polycationic triblock copolymer and polyanionic polymer
KR20170117368A (ko) * 2014-11-13 2017-10-23 메르츠 파마 게엠베하 운트 코. 카가아 가교결합된 히알루론산 및 카르복시메틸 셀룰로스 윤활제를 기반으로 한 피부 필러
KR102483607B1 (ko) 2014-11-13 2022-12-30 메르츠 파마 게엠베하 운트 코. 카가아 가교결합된 히알루론산 및 카르복시메틸 셀룰로스 윤활제를 기반으로 한 피부 필러
CN117281260A (zh) * 2023-11-24 2023-12-26 上海威高医疗技术发展有限公司 一种不含有交联剂的凝胶及其制备方法和应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6868314B2 (ja) ヒアルロン酸−カルシウム及びポリリシンを含む創傷被覆材及びその製造方法
KR100730527B1 (ko) 히알루론산 겔 조성물과 그의 제조방법 및 그것을함유하는 의용 재료
US11787922B2 (en) Hydrophobically modified chitosan compositions
US9533005B2 (en) Modified starch material of biocompatible hemostasis
JP3359909B2 (ja) ヒアルロン酸ゲルとその製造方法及びそれを含有する医用材料
CN100379462C (zh) 一种包含难溶于水的可溶性纤维素衍生物的组织包被性医疗材料及其制造方法
US20090214667A1 (en) Medical technical product, method for producing the same and providing the same for surgery
KR101468287B1 (ko) 고분자 조성물 및 이로부터 탄성 창상피복재의 제조방법
AU7626700A (en) Hyaluronic acid anti-adhesion barrier
KR101678402B1 (ko) 창상치료용 알긴산 하이드로젤 및 그 제조방법
EP4640717A1 (en) Polysaccharide-based macromolecule cross-linking agent, polysaccharide-based biological material, and preparation method therefor and use thereof
AU2021312621B2 (en) Anti-adhesion polymer composition
WO2005000374A1 (ja) 脊椎・脊髄手術用癒着防止材
US20100260845A1 (en) Biocompatible and Biodegradable Biopolymer Matrix
JP2004051531A (ja) 水難溶性化したカルボキシメチルセルロースを含有する癒着防止材
JP2003019194A (ja) ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースからなる共架橋ゲル組成物
JP3420851B2 (ja) 癒着防止剤
CN112007202B (zh) 一种可粘附促愈合止血海绵及其制备方法
CN114748677B (zh) 一种抗粘连的水凝胶粘合剂及制备方法、应用
Huang Multifunctional self-healing hydrogels based on natural polymers for biomedical applications
Sarkar et al. Biopolymers in Wound Dressing
Esquivel-Lozano Polymers Sealants and Adhesives in General Surgery
JPWO2001034214A1 (ja) 水難溶性化した可溶性セルロース誘導体の用途及びその製造方法
CZ38923U1 (cs) Sada gelotvorných roztoků určená pro přípravu implantabilního hydrogelu obsahujícího kovalentně zesítěný hydroxyfenylový derivátu hyaluronanu a infuzní léčivé přípravky
JP2000191702A (ja) 成形物の製造方法